さて、日記はあまり書かないので文章が可笑しくないか心配ですね。
ツアーの思い出というと……海ほたる弁当を食べてると天音さんが角を削りだしたのはビビりましたねぇ……雨宮先生には頑張ってほしいですね。本当に。
スミスさんは明るくていい人だし、いつも場を和ませてくれて、とても楽しいツアーでした。
そういえば墨ジュースは月化さんと回し飲みしてましたね。自分は友達同士だと気にしない方だから月化さんもそうだったのかな?
バスの時間がもうすぐだったので走ってたら転んで月化さんに受け止めてもらっちゃったし……あれは恥ずかしかったなぁ。
楽しかったけど、あんな事故が起こって大変でしたねぇ。揺れが酷くて思わず月化さんを庇ったけど、今にして思えばいらぬ心配でしたね。さすが月化さんです。
……事故のせいでたくさんの人が犠牲になって、痛ましいものをたくさん見て、自分の非力を呪うばかりでした。
弁当にはなんか変なもの入ってたのかお腹痛くなるし、身体が勝手に動き出すし……まぁ自分はそういうのは慣れてるんですけどね。
先に進んでたら怪物に男性が襲われてましたね。今にして思えば自分が先走ったから他の皆さんもついてきてしまったのでしょうか?一般人を危険な目に会わせるのは刑事としては如何なものかと……かなり反省です。
いざ戦いになると自分は相変わらず役に立たないし……それに比べて月化さんはすごかったですねぇ。
月化さん、全然帽子を取らないと思ったら人間じゃなかったんですね。少し驚きましたが納得しました。雰囲気があの人に似てましたから。
強い力。人を超えた力。そういうのを持った人は、やはり自然と似てきたりするのでしょうか?
自分もなんとか役に立ちたくて男性を押さえつけてる怪物を挑発してみたりしたけど、慣れないことはするものじゃないですね。雨宮さん達ほどうまい言葉が出てこなかったし、銛を撃ち込まれるし……強がっていたけどあの銛は痛かったです。
でもまぁ月化さんの傷に比べればどうということはなかったですね。あれはあまりに深い傷だったので、自分の視界まで赤くなった気がしました。
頭に血が上っていたのでしょうか?あんなに素早かった敵の攻撃はスローに見えたし、あんなに重かった敵の体が軽く感じました。生まれて初めて、自分は強いのかも……なんて思っちゃいましたね。その時だけだし、月化さんやあの人の足元にも及ばないのでしょうが。
なんとかそいつらから逃げ出したら……まぁそれはいいか。忘れてしまいましょう。男性は無事だったからとにかくそれだけで体を張った甲斐がありました。
その後はあれよあれよという間に救助されてしまって、碌にさようならも言えずに皆さんと別れてしまいましたね。それが心残りでしたが、意外と近くに住んでいたようで……3日後にあっさり再会できました。雨宮さんは見つかりませんでしたが。
色々なことを話して……月化さんは人探しを手伝ってくれるっていうし、スミスさんや天音さん、(たぶん)雨宮さんとアメリカに行こうかって話になって……スミスさんの故郷ってどんなところでしょう?天音さんはパスポートの角も削るのでしょうか?雨宮さんの診療方針は間違っているのでしょうか?どう思います月化さん?
スミスさんの自爆の後始末というか、事件のもみ消しとか天音さんが爆発の隙に作ったらしいミステリーサークルが都市伝説になったり、色々裏工作をして、何やらこの手が汚れてしまった気がしますが……何はともあれ!皆さんにまた会える日が楽しみですね!
弱い自分が嫌いだった。何もできない自分が嫌いだった。非力な体が嫌いだった。
だからずっと探していた。人を超えた存在。人を超える方法。
あの日あの場所にいたのが非力な自分ではなく、もっと強い存在であれば、僕は仲間を失わずに済んだのに。助けられた命があったのに。ずっとそう思ってきた。
あの日見つけた。人を超えた存在。彼女の事を知れば、人を超えた力に近づけるかもしれない。
喫茶店に彼女を見つけた。好機だと思って近づいた。その判断は間違っていなかった。結果は最初期待した物ではなかったが、それよりももっと大切な事に気付けたのかもしれない。
遠回しな物言いは苦手なので思いついたことをはっきり言った。彼女の力について。
彼女の力は生まれつきで、僕が彼女みたいになる方法はわからなかった。だが、彼女の内面を知ることができた。
僕と彼女の考え方はどこまでも正反対で、だから似た者同士になっていた。
磁石のS極N極のイメージが近いかもしれない。性質は反対であるが同質の存在。
彼女は強すぎる力が憎い。僕は非力な体が憎い。でも二人とも他人のためになりたいと思っている。
強き者の弱い部分を見て、僕は何を思ったのだろうか。
失望してはいない。今まで通りというわけでもない。良くわからない。
彼女が何を言いたいのか。彼女に何を言うべきなのか。わからない。
彼女をどうしたいのか。彼女に何をするべきなのか。わからない。
わからない。わからない。
ただ、彼女に似た者同士だって言われた時、とてもうれしかった。
彼女が力を貸すと言って手を差し伸べてくれた時、僕は…………
いや、やめておこう。自分でもよくわかっていないことを書き連ねても無駄に長くなるだけだ。きっとこれから少しずつわかっていくのだろう。
今は、わかっていることだけを、伝えたいことだけを書いておく。
誰かを救いたかった
でも本当は
誰かに救われたかった
あなたのその手に、僕は救われて
あなたが傷ついた時に生まれた思いが、俺が本当に欲しかった物だと思うから
繋いだこの手は、このままでもいいですか?
……なんちゃって?