クトゥルフ神話TRPGやろうずWiki - ジキル博士とハイド氏と…(シナリオページ)
クトゥルフ神話TRPGシナリオ「ジキル博士とハイド氏と…」
Ver1.0 投稿


はじめに

このシナリオはヴィクトリア朝ロンドンを舞台としたクトゥルフ神話TRPGのソロ(または2人用)シナリオです。タイトルの通りスティーブンソンの作品「ジキル博士とハイド氏」をモティーフにしたシナリオです。原作の知識は必要ありませんが、読んでおくとシナリオの雰囲気や原作との違いに驚いて楽しめるかもしれません。プレイ時間はテキセで4〜6時間ほど。何度もガスライト卓を経験している方には物足りないかもしれませんが、KPの雰囲気づくりなどでどうとでもなるような気はします。特に終盤の汽車での戦いはスリリングなものとなるでしょう。バランス調整はKP各自で自由に行っていただいて構いません。

使用・改変等に許可は必要ありません。シナリオについての改善点、ご意見などありましたら気軽にメッセージをください。
セッションやリプレイ作成以外での目的でこのシナリオの内容を外部サイトにそのまま転載することは禁止しております。

Starbuck

探索者について

以下のサンプルキャラクターを使って探索してもらうことになります。
2人以上いる場合は、2人目は助手や入り浸りという設定にして参加してもらうことになります。
また探索者の特徴はシナリオ途中で明らかになります。

サンプル探索者・ロンドンの事務弁護士

探索者の特徴・KP情報

シナリオ概要

舞台設定

あらすじ

1892年、秋ごろのロンドン。日の出は遅くなり日没は早い。
すでに肌寒く吐く息は白い。コートが無ければやってられない。
産業革命によって都市は拡大され人口は増大。その弊害として近郊の工場からあふれ出る煙が街を包みこむ。、
いわゆる「霧の都」と評されるようにこの頃のロンドンは非常に視界が悪い。
ガス灯の明かりをもってしてもその闇をすべて照らすことはかなわない。

探索者はそんな都市の一角、パディントンで下宿の2階を借りて暮らしている。
普段は時折噂を聞いてやってくる依頼人の調査依頼をこなして、生計を立てている。
調査のために探偵事務所には大きな本棚がたくさんあり、部屋にいながら街や人についてある程度のことは調べられるようになっている。

ある日友人であるディレッタントのリチャード氏とロンドンの街を散歩していた時のことである。
たまたまソーホーの近くを通りかかったところで、泣きじゃくる小さい少女に出くわして…。

シナリオの真相・KP情報

ネタバレ注意

NPC・用語解説

ヘンリー・ジキル

エドワード・ハイド

ヘンリー・プール

チャールズ・ディケンズ

フードを被った女

その正体

登場神話生物

その正体

???

導入

シナリオは探索者がソーホーの街を通りかかったところから始まる。時刻は夕方。探索者の友人であるリチャードと日課の散歩でもして楽しんでいたところ、ソーホーに面した通りで泣きじゃくっている少女に出くわす。少女は転んでしまったのか体中を泥や煤だらけにしていて、見かねたリチャードは彼女に近づこうとする。彼女は泣いてばかりいて、こちらとまともに取り合ってはくれない(あるいは探索者の機転で口はきけるようになるかもしれない)、困っているとそこにソーホーに住む浮浪者の男が近づいてきて「エドワード・ハイドに突き飛ばされたのさ、かわいそうに」とうめく。リチャードもまた、ハイドという名前に覚えがあるのか「ああ、あの乱暴者か、噂には聞いているよ」と答える。ここでは探索者のアイデアは自動成功する。探索者はハイドという名前に心当たりがあるからだ。その名前は探索者の自宅で管理されているジキル博士の遺言状に書かれた相続人の名前なのだ。

リチャードや浮浪者の男にハイド氏の評判について話を聞くことができる。彼らのいうことは一致して、その男は一見して小柄だが、猛獣のような野蛮さと残忍さを持った憎悪に溢れた相貌をした悪漢である、ソーホーのどこかに根城を所有しているという。探索者の知っているジキル博士とは対極に位置するような人間像なのである。ソーホーはイーストエンドと並ぶ無法地帯であり、辻強盗や売春婦、時折悪漢同士の諍いが起こる血なまぐさい街でもある。スコットランドヤードの警官であっても、あまり近寄りたがらない。そのせいでハイド氏のような悪漢が多く住み着いている。

先ほどのアイデア成功に伴い探索者にはある疑念が浮かぶ。これほどの人物がなぜハイド氏に遺産を相続するほどの面倒をかけているのか、と。そしてKPからはハイド氏の素性を調査し、その正体を明らかにしていくことがシナリオの目的であると説明する。

ジキル博士の遺言状

探索者がシナリオ開始時前から把握していること

このシナリオでは友人であるジキル博士と、ハイド氏の関係について調べるという性質から、探索者がジキル博士の最近の動向についてある程度知っている時点からスタートすることになる。
探索者がジキル博士の動向について知っていることで、探索において重要になる情報は以下のとおりである。
  • ジキル博士は以前よりも探索者に距離を置くようになっていて、最後に顔を合わせたのは遺言状を受け取った時のことである。
  • ジキル博士は医学、民法学、その他の学問においてそれなりの権威をもつ人物で学会方面にも顔が広いと言われている。
  • さらにこの時代では珍しい心理学についても研究しており、肉体と精神の関係など特徴的な論文を発表したこともあった。

調査でわかること

以下は探索者がシティの様々な場所や施設で得られる情報を記す。
調査を終えて日が経過した後、殺人事件のイベントが起こるまでは順不同で調査しても問題が無く、シナリオ中に上がった全ての候補地を回る必要がない。
ある程度の取りこぼしは許容できるので、探索者の提案に応じてKPは書く場所で描写・情報の提示・適宜足りない情報のフォローをしていけばよいだろう。
KPはPLの提案に応じて、新たに探索場所を追加したり情報を与えたりして、最終的にはゴースト・クラブに導いてやるのがよい。

KPの負担を減らすために一日を午前・午後・夜と三つのパートに分けるものとする。
また時間帯によって一部の場所に変化があるので留意されたし。

ヘンリー・ジキル博士の邸宅

ジキル博士の邸宅はソーホーの隣の地区メイフェアにある。
裕福な上流階級などが多く住む地で、中央にバークレースクエアと呼ばれる公園があるのどかなところである、

ジキル博士の邸宅を訪ねると、代わりに執事のヘンリーが出てくる。そしてここからは午前と午後、または夜かでジキル博士がいるかどうかが決まる。それぞれの分岐は以下に記す。
午前・午後パートに訪ねる。
ヘンリーは探索者をジキル博士に取り次いでくれる。
ジキル博士は渋い顔をするが、それでも一応は応接室で探索者をもてなしてくれる。
彼はしきりに探索者に早く帰ってもらいたいと思っているからだ。
探索者がハイド氏とジキル博士がどのような関係にあるのかを尋ねると、以下のように話す。

ジキル博士・会話例


これ以上についてジキル博士から語ることは何もない。
博士はついに探索者を邸宅から追い出してしまうだろう。
夜に訪ねる。
夜に訪ねると、ヘンリーは一言「出かけている」とだけ説明し、入れてはくれない。
最近のジキルの様子について尋ねるとヘンリーは「博士に新しい友人ができたようだ」と教えてくれる。

執事 会話例


また執事はジキル博士の行き先について心当たりがないかと尋ねられれば、「最近はカムデンの大衆酒場でやってる『ゴーストクラブ』という集会がお気に入りのようだ」と答えてくれる。
パブの名前は「コシュタバワ」といい、執事は場所も教えてくれる。

ソーホー

ソーホーを歩いてでハイド氏との邂逅を企むのであれば幸運を振る。午前の場合は自動失敗だが、午後の場合は通常の値、夜の場合は自動成功となる。
通りから浮浪者たちが逃げるように離れていき、そのあとエドワード・ハイド氏がふてぶてしく歩いて、自身の自宅と思わしきアパートに入っていくのが見えるのだ。

ハイド氏の容貌は大変悍ましく、憎悪に満ちている。
髪の毛は伸び放題で、口から見える歯は黄色く染まり、あごひげをはやしている。
初めて見た者であれば、その悪の権化とも例えられる野獣のような視線に0/1d3の正気度を失うことになる。

ハイド氏に話しかけることもできる。ジキル博士との関係について尋ねれば以下のように答えるだろう。また探索者が彼を呼び止めた場合、ハイド氏はどうして自分がハイドであるとわかったのかを探索者に逆に尋ねるだろう。

ハイド・会話例


ハイド氏は探索者の会話にも素っ気なく、アパートの扉をさっさと閉めて閉じこもってしまう。
探索者がソーホー周辺でハイド氏のことを訪ねようとすると、彼がアパートの中で何をしているのかはまったくわからないのだという。

エドワード・ハイド氏の自宅

探索者がハイドの不在時にそのアパートに入り込むことに成功した場合には、その簡単なワンルームの様子を見ることができる。部屋の中には粗末なベッドだけが置かれていて、部屋の片隅にはステッキが置かれている。ステッキにはヘンリー・ジキル博士の名前が彫られていて、病院からの感謝のしるしに贈られてきた時のもののようであった。

ゴースト・クラブ

イギリス式の大衆酒場では、お金をもってカウンターに行きマスターに注文を伝える。そのあとグラスを渡されて、自分でグラスにエールを注いで飲むというのが通例となっている。

ゴースト・クラブの集会は夜に行われている。探索者が入会希望だと伝えれば、クラブ会長のチャールズ・ディケンズ氏に会わせてもらえる。近頃ゴースト・クラブでは「心霊体験」が流行っていて、ジキル博士も以前にここで体験したのだと言われている。ディケンズ氏も心霊体験をすでに経験しているようで、いわく「心霊の世界を覗き見ることができる」のだとか。今日もパブのステージで心霊体験は行われるのだという。

ステージに上がったのはフードを深くかぶった女性だった。彼女の説明と共に、十数名ほどの会員たちは輪になり、手をつないで目を閉じる。マスターの声で灯りは落とされ、パブは静かで真っ暗になる。

フードの女・会話例

心霊体験

心霊体験に参加した者であれば、目を閉じているにも拘わらず、自身の目の前に新しい世界が広がっていることにきがつく。

荒廃した地下都市のような空間で、それはともすればロンドンの街に似た建造物も散見される。
埃と霧の舞う非常に匂いのきつい場所で、なぜか頭がくらくらしてくる。
そしてレンガの壁の裏側から、ひょっこりと顔を出したのは子どもくらいの姿かたちをした裸で白熱したように明るい気味の悪い生き物だったのである。
赤ん坊のような甲高い声で鳴き、母にすがるように両手が宙を彷徨っている。
頭部に髪の毛はなく、脳がむき出しのようにも見える。
そのような姿の「神の使い」がそこらじゅうに、何人何十人とひしめいてるのである。

この心霊体験により、探索者は1/1d4の正気度を失う。またMPを1d6減らす。

心霊体験が終わると、参加していた者たちの中には「今日もダメだったか」などとの声も聞こえる。
実は今回の心霊体験でこの現象を目撃できたのは探索者だけなのである。
正気度を喪失するほどのショックを受けた探索者の様子をフードを被った女性はしっかりと見ていて、「どうやら成功したようですわね」と話しかけてくる。
「いかがでしょうか、心霊の世界は?
 神の使いたる姿にさぞや興奮なされたのではないでしょうか」

彼女は自身の名前を教えてはくれない。彼女は自身を通りすがりの占い師であり、フランスの方から来ただとだけ伝える。彼女は探索者の持っている魔術的資質について示唆し、心霊に目を付けられぬようにと忠告する。探索者がジキル博士の名前を伝えれば、彼も探索者と同じように資質があったと語り、近頃は姿を見せないので心配していると答えるだろう。彼女の言うには目をつけられてしまった者は、少しずつその精神と器を裏側の住人と入れ替わるようになってしまう。

フードの女・会話例


フードの女性は基本的に自身のことについてしゃべりたがらないが、探索者のことを気に入ることがあれば自信を「アン・シャトレーヌ」と名乗る。その他のいかなる脅しに屈することもなく、ただ静かにその場を去ってしまう。酒場を出たところを追いかけたところで、彼女の姿はまるで初めからいなかったかのように消えている。

殺人事件

ある程度探索者が調査をしたところでこのイベントを発生させる。
新聞にてダンヴァース・カルー卿という高貴な人物の殺害事件が起こったと記事にあるのだが、
その事件の容疑者としてエドワード・ハイド氏の名前が挙がっているのが探索者の目に留まる。
ある夜ハイド氏と思われる人物が道端でカルー卿に襲い掛かるところを、近くにいたメイドが目撃してしまったのだ。

この事件以降、エドワード・ハイドはソーホーのアパートに現れなくなり、鍵も開いたままで自由に出入りできる。またアパートで見つけることのできるジキル博士の杖は警察に押収される。

脱走

この事件が起こった後執事のヘンリーが大荒手で探索者の元を訪ねてくる。

ヘンリーが言うには、事件直後の時間帯にジキル博士がシャツを血で汚して現れたとのことで、何か事件に関係しているのではないかとひどくおびえている。現在ジキル博士はそのまま着替えもせずに自室に籠ってしまった。とのこと。説得して出てきてもらえないかとヘンリーは探索者に懇願する。

ジキルとハイド

ヘンリーに呼ばれてジキル博士の邸宅に向かうと彼は自室に籠ってしまい、出てこようとしない。聞き耳+30に成功した場合、呼びかけに応じる声がジキルではなく、ハイドのものになっていることに気が付く。ハイド氏は奇声をあげつつも、何か聞きなれぬ文言をぶつぶつとつぶやき、次の瞬間部屋の中で強い光と風が起こる。

部屋に押し入ると、そこにジキル博士の姿は見えない。ハイド氏の姿も見えなかった。部屋は荒らされており、床には慎重2メートル以上はあろうかという人の巨大な足跡がある。その足跡は漆喰のはがれてレンガの露出した壁に向かって続き、突き当りで消えていた。

煉瓦の壁に触れると、探索者の指は水面に突っ込むかのように、吸い込まれていく。

煉瓦の向こうへ

ここからはイゴーロナクが普段根城としているロンドン市街の裏側の世界になる。ゴースト・クラブの心霊体験で見たような光景が眼下に広がり、そんな荒廃した地下都市のような世界に探索者は立っていることに気が付く。SANチェックを行い1/1d6の正気度を失う。裸の大きな足跡はそのまま続いている。跡を追うと、廃墟の小屋にたどり着く。正面に扉がついているだけの粗末な小屋で、中からは何かの物音が聞こえる。聞き耳に成功した場合、その声が赤ん坊の泣き声に似ていると気が付く。

KPは望むならこのレンガの向こうでの出来事に手を加えて、探索者をさらなるクトゥルフ的な事象の何かに陥れることも可能だろう。

ヴィクトリア駅

小屋に入ると、再び表の世界に戻ってくる。
気が付くとそこは国鉄駅のレンガの壁の前であり、時間帯は探索者がジキル博士の邸宅に着いた頃から少ししか経っていない。

目星に成功すると、ジキル博士の姿をした男を見つける。彼は今にも出発しそうな貨物列車に乗ろうとしていた。
彼を追いかけて列車に乗り込むことでシナリオは最後のシーンへ向かう。

汽車での決闘

貨物車両は幅4メートル、長さ15メートルほどの平たい木の床の上に、周囲に高さ1メートルほどの簡単な柵のついた天井の無い場所である。
列車はすでに出発してかなりの速度が出ていて、飛び降りたり、落ちたりなどすればただでは済まないだろう。

ジキル(の姿を借りたイゴーロナク)は、探索者が追いかけてくることに気付くと前方の車両に向かって逃げようとする。貨物車両まで逃げたジキルを追い詰めるていくうちに、彼の姿は豹変する。ジキルの体はじわじわと痩せ気味の小男になり、その優しそうな紳士の顔は憎悪に満ちた怪物の姿に変わり果てていく。白熱した体を持ち、裸で、頭部がなく、その両腕には乱杭歯の並んだ口が笑みを涎を垂らしてこちらに気味の悪い笑みを浮かべていた。イゴーロナクへの豹変を目撃した探索者は1/1d20の正気度を失う。

探索者このイゴーロナクとの戦闘に貨物車に置いてある様々なギミックを利用できる。例えば目星に成功などすれば、ここに置かれている貨物に引火性の高い燃料や火薬の類があり、拳銃による狙撃などで爆発し、ダメージを与えられるということに気付いたりできる。

脱出

探索者を追い詰めようと襲い掛かるイゴーロナクであるが、数ラウンド戦うか、耐久を大きく減らしたところで事態が急変する。線路際に、最初に出会った浮浪者の男が立っていて、ポイントを切り替える。分岐を変えられた列車はそのまま山林の方へ進んでいき、やがて川で隔てられた断崖絶壁に突っ込んでいくことになる。

「脱出しろ!」とポイントを切り替えた浮浪者の男が叫ぶ。なおもイゴーロナクは探索者につかみかかろうとするが、探索者の機転でこれをかわし、列車から脱出することができれば、煉瓦の無い場所でイゴーロナクは逃げ遅れ、列車と共に谷底へ沈んでいく。探索者が切り替えられたポイントの方を探してみても、浮浪者の男はすでに消えていた。

その後

列車の一件は不慮の事故として扱われ、谷底からエドワード・ハイド氏の死体が発見される。彼は殺人事件の犯人であるとされ、逃亡の末に死亡したと報道される。一方でジキル博士といえば行方不明として扱われ、その他の彼の豹変などの話は一切触れられずに彼の人生は終わることになる。そのことについて知っているのはもはや探索者のみ。

アン・シャトレーヌはその後フランスへと渡る。銀の黄昏その指導者として再びロンドンを訪問するのは、とある人物の申し出によって再び交霊会に現れるその時だろう。

後に探索者の探偵事務所に一通の手紙が送られてくる。

ジキルの告白

報酬

探索者は3d6の正気度を回復する。
また執事のヘンリー・プールの計らいにより、信用に+5%
そして今回の事件をきっかけに探索者は3%のクトゥルフ神話技能を得る。