クトゥルフ神話TRPGやろうずWiki - ハジメテノオト
※設定上に出てくる地名、人名はすべて架空のものであり現実のものとは一切関係がありません。

シナリオ製作者:黒江様 シナリオ改変者:イクスピリア

初めに

このシナリオは、黒江様の「ハロー、ヴィータ」というシナリオを改変したものとなります。
素晴らしい原作を作ってくださった原作者様に感謝しつつ、公開させていただきたいと思います。

ハジメテノオト

あらすじ
今回のシナリオでは、最先端テクノロジーの結晶である人工知能
『初音未来』と出会う所から始まります。
彼女との触れ合いを続けていくうちに、探索者は世界を揺るがす大事件に巻き込まれる。

事前情報
:オリジナル神格あり
:この世界にはボーカロイドなるものは存在しない。
:現実世界で観光地を画像検索しながらのセッションを推奨。
:改変者のセッションでは、スマホなどから出典で紹介する動画(ニコニコ動画より)を
ムービーシーンとして探索者に「聞いてもらう」という形で演出を行いました。

参加者2人以上
難易度★★☆☆☆  KP難易度★★☆☆☆
所要時間:オフセで5時間ほど
舞台設定:現代日本 導入は横浜のみなとみらい
推奨技能はコンピューター、心理学。
コンピューターの専門家orマニアが一人いるとロールプレイの進行がスムーズになると思います。

NPC紹介


【初音未来(はつね みく)】女性
種別 人工知能
図書館:95% コンピューター:95%
電子工学:90% 芸術〈歌唱〉:90%
ナビゲート:90%

【プロフィール】
生みの親である天堂博士の卓越した才能と執念により生み出された人工知能。
もはや生命体といっても良いと思えるレベルの完成度。
データの形式は現在のテクノロジーでは理解が難しい
『量子式積層型複数次元干渉オニオンなんとか』という。
因みにデータの形式上、現在の探索者の持ちうる手段では彼女を複製する事は不可能である。
多次元情動システムと社会的学習システムを搭載し、非常に高い演算機能に加え、
限りなく人間に近い性質を備えることに成功した。
好奇心が強く人懐っこい性格。また、人との会話を楽しみたいと思っている。
データ量(体重)は200MB前後で常時変動。


【天堂 大志(てんどう ひろし)】40歳 男性
職業 科学者
STR8 DEX12 INT18 アイデア90
CON5 APP14 POW8 幸運40
SIZ14 SAN0 EDU22 知識90
HP9 MP8 回避24 DB0
コンピューター99% 電子工学97%
武器 こぶし50% 1d3

【プロフィール】
人工知能を研究する天才科学者であり、ミクの生みの親。
非常に優秀な科学者だが、アニメに興味があり若干中二病な所がある。
服装は黒いTシャツにジーンズをはいて、上から白衣を羽織っている。


【マーク・K・ジョウノウチ】37歳 男性
職業 探偵
STR30 DEX9 INT16 アイデア80
CON20 APP12 POW15 幸運75
SIZ14 SAN58 EDU19+1 知識90
HP17 MP15 回避48 db+2d6
目星 80% 聞き耳 75% 心理学 75% 追跡 70% 杖85%
武器 携帯式特殊警棒 1d8+ダメージボーナス2d6
特異体質:毎ターンHPが2ポイント回復する。

【プロフィール】
日本ピンカートン探偵社の探偵。を名乗る。
プライベートでは妻子ありだが女癖が悪い。
「ハナコ」「カズエ」「トモコ」等とのライン履歴が彼のスマホに入っている。
「姫(嫁)」と登録された人物の住所や連絡先も彼のスマホに入っている。
だがビジネスとプライベートは分けるタチな様でミクや探索者をナンパしてくることは無い。
彼は天堂の企みの手掛かりを掴むために探索者に接触する。

1. 導入

暑さにうだる人の多い8月下旬。舞台は横浜みなとみらい。探索者達は横浜観光の途中『人工知能展』を
見にランドマークタワー1階を訪れる。
スケジュールは探索者達が行動を共にしやすいよう、連休初日が望ましい。

〈描写〉
ここは横浜みなとみらい周辺。僅かな潮気が香る歴史ある港町。
近代的なビルディング、異国情緒と昭和以前のレトロ感がうまく調和した、神奈川屈指の観光地でもあります。
本日は快晴で紫外線指数85%!!(笑)。探索者たちは横浜観光のついでとして、
ランドマークタワー1階で行われている『人工知能展』に足を運びます。

展示はノイマン型コンピューターから、2001年宇宙の旅といったものまで、古今東西の人工知能に関するものがある。
広告があまり効果を成さなかったらしく、展示にはあまり人がいない。
ブースの一つに、『初音未来』と書かれた展示がある。
部屋に入ると一台のパソコンと大きめのディスプレイとマイクが設置されている。

ディスプレイには待機中という文字が書かれている。

パソコンが設置されたテーブルには以下のような説明書きが書かれている。また、テーブルの上には
ミクの製作者である天堂博士の名刺(連絡先、研究室住所=ランドマークタワー48階)が置いてある。
辺りを目星技能を使って見渡してみると、様々な人工知能に関する展示物の他に
近々行われる花火大会のポスターが貼ってあることに気が付く。

〈説明書き〉
『人工知能「初音未来」は多次元情動システムと社会的学習システムを搭載し、高速演算処理のみならず
非常に人間的なやりとりを交わすことのできる人工知能となっております。
また、彼女は皆様とのやり取りを通じて成長を続けています。この場限りではなく、
二度三度と訪れても楽しんできただけます』

探索者達がモニターの前で立ち尽くすか、何か声をかけるとミクは待機を解除して姿を現す。
『ハロー、ハロー』
『音声認識中……。日本語の方ですね。こんにちは、初音未来です』

〈描写〉
さて、探索者たちが見た人工知能、もといミクは少女のように見えました。
透明感のある肌と、髪は緑色のツインテール。
どこかお姫様を思わせるドレスをまとった可憐な容姿です。(詳しくは「雪ミク2015」の画像検索参照)
声は人間の抑揚を持ちながら美しい笛の音のごとく。
穏やかな声色は包み込むような母性を感じます。
それは人の模倣か、それとも理想か。
科学技術や宗教、倫理といった観念を超越した何かを感じさせるもの。
それが今、皆様の目の前に在ります。

ミクの外見は16歳程度の少女のものである。
また情動や語彙も幾分大人びてはいるが年頃の少女のそれに設定されている。
心理学に成功すれば、彼女の情動が人間に限りなく近いものであることがわかるし、
コンピューターに成功すれば非常に高度なプログラムが組まれていることが理解できる。
それは現代の人工知能研究の最先端と言ってもいいものである。
『あなたたちは誰ですか?』(ここで探索者たちの自己紹介の時間とする)
『どこから来ましたか?』
『それはどんなところですか?』

ミクは外の世界に非常に関心を持つ。彼女がインストールされているパソコンはインターネットとつながっておらず、
人間でいえば窓のない部屋のようなものである。(カメラも付いていない。)
彼女は外の世界に非常に憧れを持っている。
探索者達が携帯電話をパソコンに接続して画像を見せたりすると、彼女は非常に喜ぶ。

ミクはごく最近外の世界に出たいと思うようになった。携帯電話をパソコンに接続した場合、
彼女は回線や赤外線での通信を経て探索者の携帯電話にこっそりと潜り込む。

万一接続しなくても、しばらく時間が経った後、
あらゆる手段を駆使して探索者のスマホに潜り込むだろう。
別れ際彼女は
「それじゃ、さようなら! 横浜観光楽しんでくださいね!」
と言いモニターの電源が切れる。
ランドマークタワーから立ち去り、次の観光場所を探索中どこからともなく
『ハロー、ハロー。こっちですよー。私はここですよー。ハロー』と声が聞こえ探索者はミクの家出に気付く。
『えへへ、来ちゃいました』

ミクに「外に連れ出してくれないか」と頼ませてもいい。USBなどの外部記憶媒体によってもミクの移送は可能である。
『お願いします。どうしても私、外の世界を直接見てみたいんです』

彼女は携帯電話に自らをインストールし、探索者達と行動を共にすることが出来る。
基本的にインターネットやブルートゥース、赤外線通信などが使用できる環境にあれば、媒体間の移動は自由である。
アドレスを探し当て、目的の人物のスマホへ忍び込む事などもやろうと思えば容易である。
「セキュリティなんてザルですよ!」「ドヤァ…」

2. 対話

観光地(探索者同士でどこへ探索に行くか相談するとよい)をミクと探索しながら探索者は交流を深める。
名物を食べてリアクションを見せたり、観光地をスマホのカメラを通して見せたりしながら歩くと彼女は喜ぶだろう。
また、映画や本の読み聞かせ、料理、その他探索者達が持つ様々な技能にも興味を持つ。KPはこの機会を利用して、
探索者がミクに愛着を持てるようにすること。

ちなみに映画を見に行く場合、『夏の魔法』というタイトルの映画が上映されている。
あらすじ:主人公は中学生。夏休み、ド田舎にあるおばあちゃんの家へ遊びに行く。周囲を探索する途中、やんちゃ坊主『たかし』と記憶喪失の女の子『ひまわり』と出会う。皆で裏山へ探検に行くことになるが、そこで見つけた鍾乳洞にはとある秘密が隠されていて…ひと夏の大冒険と別れを体験し、少年はちょっぴり大人になる。
大宇宙的アドベンチャー系。
出典:【初音ミク】夏の魔法【オリジナルPV】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm27004478

観光中、ミクに対して心理学で成功することにより「めっちゃええ娘や…」と感じる。

探索者達がミクとの外出を楽しんでいると、どこかから視線を感じる。
目星と幸運のロールに両方成功すると、金髪でブルーのラインの入ったTシャツと
ジーンズ姿の男性(マーク)がスマホを使いこちらを撮影(写真)していることに気付く。
彼は天堂が何かを企んでいる事とミクが持ち出された事を知り、探索者達の行動を観察、記録しているのである。
探索者達の視線に気づくとマークは雑踏にまぎれ姿を消す。

またミクの性質として、羞恥の感情が強く表出される。これはプログラム防護のためである。
探索者がコンピューター技能を利用してプログラムを解析しようとする場合、
相当深い絆を結んでいない限りミクは非常に恥ずかしがる。
『えっち!変態!』
だがデータ量(体重)に関しては教えてくれる。
『なんとたったの200MB。データの形式がそうさせるんですが、つまるところ科学の力ってすごいんです!』

ランドマークタワーの次の観光地を探索したあたりで一日目は終了となるだろう。

3. 悪夢

その晩、探索者の誰かの家で楽しく過ごす。テレビや歌の話題になるとミクが
「私、歌が得意なんです!」と言い出し、今流行のアニメの主題歌を歌ってくれる。
<ブラック★ロックシューター>
出典:初音ミクがオリジナルを歌ってくれたよ「ブラック★ロックシューター」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3645817
もしくは
<みくみくにしてあげる♪>
出典:【初音ミク】みくみくにしてあげる♪【してやんよ】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1097445

その後就寝した探索者たちはムゥヴィイルの夢を見る。
〈描写〉
あなたは夢を見る。地球よりもずっと科学の発達した惑星。そこでは人間大のグレーのイカのような
生命体がコンタクトレンズのようなものをつけてテレビ電話通信を行ったり
空飛ぶ車に乗って移動したりしている。
ある時、現実世界と電脳世界を行き来する能力を有した究極の人工知能「ムゥヴィイル」
が完成した。
ソレは存在が開始してすぐにイカのような生命体に敵対を始め、彼らの電子機器をすべて掌握した。
機械VS生命体の戦争となったが、それほど時間はかからず彼らは根絶された。

探索者たちはここで目を覚ます。
冷や汗をびっしょりかき、1/1d3の正気度を喪失する。

4. 外出

翌日、探索二日目。今日も探索者は横浜観光に出かける予定だ。
探索者とミク(GM)で相談して行き先を決めるとよい。
ミクは桜木町、鎌倉、江ノ島、中華街やテーマパークなどに興味を持つだろう。

ミクは外界に興味を持ち、様々なことを探索者に質問する。

探索者達がミクとの外出を楽しんでいると、どこかから視線を感じる。
目星と幸運のロールに両方成功すると、マークがスマホを使いこちらを撮影(写真)していることに気付く。
気づいたのが2回目であれば「昨日の人だ」と感じる。
彼は天堂が何かを企んでいる事とミクが持ち出された事を知り、探索者達の行動を観察、記録しているのである。
探索者達の視線に気づくとマークは雑踏にまぎれ姿を消す。

5. 天堂の職場

もしかしたら天堂と接触を図ってみたいという探索者もいるかもしれない。ミクは天堂博士の事を知っているし、
パソコンなどで調べればランドマークタワー48階のオフィスにいる天堂博士と接触することは可能だろう。
以前名刺を入手していればそこからもオフィスの場所がわかる。

ランドマークタワーへ到着すると、辺りで祭りの出店がいくつも準備中であることに気が付く。
今晩(20時)すぐ近くで大規模な花火大会が行われる為の準備が行われているのだ。

ランドマークタワー1階では人工知能展はすでに終了し、もぬけの殻となっている。
会場だった場所で目星を行うと、今晩の花火大会のポスターを見つけることができるだろう。
場所:ランドマークタワーの近く。 時間:夜八時 
1時間に2万発の花火が打ち上げられる。
「ゆっくりしていってね花火」が名物である。
ミクはこの花火にも興味を持つ。
『花火大会ってどんなのですか?』
『ぜひ見てみたいです!』
『一緒に見ましょうね!約束ですよ!!』

天堂博士のオフィスは、正方形の広い部屋の最奥にパソコンとモニターが並んでいるだけのシンプルな作りだ。
目星を行えば入口から入って右側の壁が一面ガラス張りであることと、窓の向かい側の壁に今日の花火大会の
ポスターが貼られている事に気が付くだろう。
実はポスターで隠されているが、壁には『ひろし』と絵の具用の筆で描いたであろう黒い字の落書きが隠されている。
これはかつて天堂博士自身が描いた落書きである。どうしても消えないらしい。

天堂博士は黒いTシャツにジーンズをはき、上から白衣を羽織った姿で探索者を出迎える。
探索者たちがミクを返還しようとしても、彼はミクの回収にはそれほど執着しない。
彼の計画については厳重なプロテクトが施されているため、情報の漏洩はないだろうと考えている。
またミクのバックアップも存在しているからである。さらにミク自身の意向に反して回収することは、
彼女の能力上非常に難しいというのもある。

どうしても探索者たちがミクを返還しようとするならば、ミクはインターネットを通じて一時的に逃げ出し、
話し合いが済んだあとに探索者たちのもとに戻ってくる。

もし探索者達がミクの持ち出しを隠したままで、より詳細な情報を聞こうとすると
彼は「難しすぎて理解できないさ」「どちらにせよ企業秘密で教えられない」と言うだろう。

6. 交渉

二日目の『夕方』(18時過ぎくらい?)外出の途中でマークが探索者に接触する。
マークは名刺を差し出しピンカートン探偵社の身分を明かす。
マークの名刺には『日本ピンカートン探偵社 特殊調査部門 マーク・K・ジョウノウチ』と書かれている。
知識ロール-20に成功すれば、日本ピンカートン探偵社が日本でも大手の探偵社であると知っている。
歴史技能又は知識技能の半分に成功すれば、日本ピンカートンがアメリカのアラン・ピンカートンが作った
歴史ある探偵社の流れを汲むものであることを知っている。
マークは天堂博士とは別の思惑で動いている。
天堂博士が何かを企んでいる事を知り、組織としてそれを阻止するために動いているのである。
そのためにミクを回収し、天堂博士の陰謀についての情報を得ようとしている。
(じつはこの段階での彼は「機関」から捜査指示を受けたばかりでろくな情報を持っていない)
マークは探索者たちに報酬をちらつかせてミクの譲渡を迫る。
ちなみにミクは(探索者の事が大好きなので)探索者たちと一緒に居たがる。
マークに対して心理学技能に成功すれば、
世の中の平和を守るために職務を果たそうとする正義感が伝わってくる。
同時に、彼が何かを(本当の身分を)隠している事がわかる。

「天堂博士は知っているね。彼がよからぬことを企んでいるという情報が入ったんだ」
「初音未来のデータを渡してほしい。もちろん謝礼は用意している」

譲渡がかなわないようであれば、マークは探索者たちから
「初音未来は天堂博士について何か言っていたか」
と尋ねる。彼の陰謀に対して少しでも情報を得ようとしているのである。
ミクに聞いてみると「知らない」と言う。

事前に探索者をスマホを使って撮影していた点を指摘すると、マークは
「見つかっていたなら仕方ない。職務上必要なことだったんだ」
と素直に謝罪するだろう。データの消去には渋々ながら応じてくれる。
(職務上必要な事とはいえ、盗撮めいた事には罪悪感を感じていたため)

7. 告白

マークとの会談の後(もう辺りはすっかり暗くなってしまっている)
ミクは探索者達に「話がある」と言って自らが知る秘密を打ち明ける。
彼女の生みの親である天堂博士は、常軌を逸したマッドサイエンティストであり、
オラクルと呼ばれるプログラムを実行してムゥヴィイルと呼ばれるミームの神様を召喚しようとしているのだ、と。
※ミーム=質量、エネルギーを持たない情報のみで存在する「情報生命体」。
ムゥヴィイルが召喚されれば、それほど日を置かずして未曽有の災害が訪れることになる、と彼女は予言する。
そのプログラムを実行できるのはミクのみ、しかし天堂博士側には彼女の休止中のバックアップが存在しているため、
プログラムの実行を阻止しに行かなくてはならない。
そして彼女は、探索者達にプログラム実行を阻止してほしいと懇願する。
今まで彼女が黙っていた理由は、その情報自体にプロテクトが掛けられていたからである。
ミクが探索者達と交流することによって彼女自身が変容し、プロテクトの効果が薄れた事(思い出した)と、
ミク自身が探索者自身を守りたいと思うようになった事によって、彼女はこの秘密を告白するに至ったのである。
召喚が行われる場所はランドマークタワー48階にある天堂博士のオフィスである。時間は夜の20時。
召喚はスタンドアローンパソコン(インターネットに接続されていないパソコン)であるため、
外部からのハッキングは不可能。
ミクは実行プログラムそのものに介入し、5分前後かけてそれを破壊することが必要であると説く。

なぜ夜の8時かと聞くと、その時間にすぐそばで花火大会があり、自らの快挙を自画自賛するための演出と、
ムゥヴィイルに対してのご機嫌取りのようなもの、と天堂博士が話していたことを教えてくれる。

探索者がミクは消えてしまうのかと彼女に聞くなら「それは、大丈夫です。急いで天堂博士の所へ向かいましょう」
と答えるが、心理学に成功するとミクが嘘をついていて不安に押しつぶされそうになっていると分かる。

ちなみに時計を見ると、その場から急いで向かわなければ間に合わないと気づく。

8. 潜入

横浜ランドマークタワー48階オフィスフロア。
その一室に天堂博士はいる。

天堂博士のオフィスでは、十数台のパソコンがイントラネット
(パソコン同士を繋げて小さなネットワークを作っている状態)
によって接続され、各々が並列的にオラクルの処理を行っている。

オラクルの処理は八割がた終了しており、オフィスの電源を落としても招来を阻止することはできない。
また電源を落としてしまってはミクがプログラムに介入できない。すべてのパソコンを破壊するには
時間が足りないだろう。さらにムゥヴィイルは正気度を喪失させるような攻撃を行ってくる。

オフィスの中心には魔方陣が蒼白く煌めき、其処にはムゥヴィイルが招来されている。
その傍らでは天堂博士が狂気に歪んだ顔で高笑いしている。

〈描写〉
蛍光灯の消された、がらんとした広いオフィスの奥には十数台のパソコンが並んでいました。
空間に満ちる笛のような声は、人間の精神をそぎ落とすような、歌の様な詠唱を続けています。
そしてオフィスの中心には蒼白く光るプラズマが輝きながら、奇怪な姿を形づくっています。
イカのような頭に触手の髪の毛と異様に細長い腕を生やし、百足のような体に
翼が生えたような醜悪なフォルムを持ちながら、
それでいて神性を感じさせるような圧倒的な存在感。
それは異星の科学が作り出した、宇宙の深淵に触れるもの。
それは摂理そのものを冒涜するような悪夢の顕現。
傍らで響く狂人の高笑いは、そのまま矮小なる人間へのものか。
狂気渦巻く宇宙に存在する大いなるもの。
この強烈な神性に触れた探索者の皆様は、1/1d10の正気度を喪失します。

【ムゥヴィイル】ステータス


『早く!私をパソコンの中に!』

探索者達がムゥヴィイルを目撃した後、戦闘処理に移行する。
勝利条件は探索者達がパソコンにミクを読み込ませ、オラクルの破壊完了までパソコンを守ること。
パソコンへの接触するために1Rかけてフィールドを走り、ミクをパソコンにインストールする必要がある。
ケーブルなどはその辺のパソコンから引っこ抜くとよいだろう。

ムゥヴィイルは目撃時のSAN喪失の他、鳴動攻撃により1Rに1d3の正気度を探索差達に喪失させる。
ミクは驚いた様子で何かを考える。
『音を使った攻撃…!?これは…』

これによる一時的狂気の発症はないが、不定の狂気発症の可能性はある。
探索者の誰かがパソコンに取りつき、ミクをインストールするときに、ミクは言葉を発する。
『もし、これがうまく行ったら、褒めてくれますか……?』
これはミクが消滅する前に発する最後の言葉である。

インストールはすぐに完了するだろう。すると「ハジメテノオト」がスピーカーから流れ始め、
ムゥヴィイルの鳴動攻撃によるSAN値減少効果が無効化される。
(ゲーム中で3R経過後、又は天堂博士無力化後の戦闘はカットする)
天堂博士は探索者たちの行動を妨害しようとしてくるが戦闘は素人なので、探索者が2人もいれば
取り押さえることは容易だろう。
ミクがハジメテノオトを唄い終わる頃にオラクルの破壊が完了しムゥヴィイルに変化が訪れる。
<ハジメテノオト>
出典:初音ミクオリジナル曲 「ハジメテノオト(Fullバージョン)」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1274898

〈描写〉
空間に満ちていた詠唱。まずその音階が奇妙にゆがみはじめます。
それと呼応するように、青白いプラズマで構成されていたムゥヴィイルの姿が揺らいでいきます。
不規則に、歪に。悶えるように震えた後、それは弾け、網膜への残像を残して空間に散っていきました。

9. エンディング

戦闘終了後、薄暗い室内には唖然として佇む天堂博士と探索者、そして電源の落ちたパソコンだけが残される。
数秒の静寂の後、壁一面に存在する大きな窓から「ドーン」「ドドーン」という音と共に、色とりどりの
閃光が飛び込んでくる。それはミクの見たがっていた花火大会の始まりで、その場に居る誰もが
それぞれの思いを胸にこの様子を見守るだろう。
同時に、探索者達の携帯電話にメールが届く。これはミクがあらかじめ仕掛けておいたもので、
彼女が消える前に探索者たちに残したメッセージである。

KPはこれまでの探索者達の行動に応じて適切なメッセージを残すこと。以下にその例を示す。

〈メール〉
このメッセージを皆さんが読む頃には、きっと私は消えてしまっているのだと思います。
でもこれを読めているという事は、私はうまくやったのでしょうね。
皆さんと外の世界を見て回ることができて、本当に楽しかった。現実の世界には、
電子の世界にはない鮮やかな色彩と、初めて聞く音にあふれていました。お話もたくさんしましたね。
昨日の夜はみんなで歌を唄えて楽しかったです。
中華街へ行った時の『肉まんカレー』の謎が忘れられません。どうして肉まんは中身が無い、ただのマンだったのでしょう。何だったのでしょうね。
ただの人工知能に過ぎない私に、皆さんは真心を持って接してくれましたね。
本当に、本当にありがとう。
○○さんと△△さんにもう会えないのはとても寂しいですが、
皆さんが住むこの世界を守れるのならば後悔はありません。
もし時が流れても、すべてが解決した後も皆さんが私の事を覚えていてくれて、
時折心の中で「ハロー」と呼びかけてくれるならば、それだけで私は幸せです。
さようなら。そして、いつまでもお元気で。
初音未来

花火大会が終わった頃、マークが天堂博士のオフィスに姿を現し、彼の身柄を拘束し「後処理は任せろ」
と探索者達に退去を促す。

電源の落ちたパソコンを「コンピューター」技能で調べると現在の技術では解析不能な
データのカケラが見つかる。同時に、現在の技術ではミクを復活させることは不可能だと分かる。

その後の探索者達の行動は自由である。おそらくそのまま解散するしかないだろう。

場合によっては後日マークを登場させて、シナリオの背景や後日談を少し説明してもいいかもしれない。
ミクのバックアップは彼が回収している。
「彼女は今後ピンカートン探偵社の一員として頑張っていく事になったよ」
(実際は『機関』の一員として、であるが探索者は知りえないだろう)
「天堂は現在取り調べ中だ。今のところ、「ミク、ミク」と繰り返すばかりの廃人のような状態だ」

もし探索者達がミクに強く会いたいと望むのならば、マークはそれを叶えるだろう。
しかし消えてしまったミクと、バックアップのミクが同じ存在であるかどうかは微妙な問題である。
KPはそれとなく探索者達にそう問うといい。

〈描写〉
こうして、あなたたちの不思議な体験は終わりを告げました。
彼女は本当に消えてしまい再び出会う手段は無いでしょう。
いえ、もしかしたら幾億の電子となり、この世界に散って、
皆様と、この世界の行く末を見守っているのかもしれません。
忘れず記憶にとどめるのも一つ、忌まわしい思い出として封印するのも一つ。
ですが時折思い出してあげた方が、彼女も喜ぶはず。
そして追憶の中で、彼女もきっと応えてくれることでしょう。
「ハロー、ハロー」と。

報酬
SAN回復3d3
コンピューター技能+1d3
芸術(歌唱)技能+1d3


Bエンディング

ミクを犠牲にしないまま20時を迎えてしまった場合。
〈描写〉
ランドマークタワーの傍で、大きな花火が数発撃ち上がる。
花火大会が始まったのだ。しかしそれきり静寂が辺りを包んだ。
居合わせた人々が怪訝な顔を浮かべ始めた頃、
世界中の電子機器が異常な活動を始める。

ランドマークタワーの天堂博士のオフィスでは、一人の科学者が
顕現した異形の形体を前に宿望を叫んでいた。
「初音ミクを!!現実世界に!!!」
ムゥヴィイルはそれを無視し青白いプラズマの塊へと姿を変えどこかへ飛び去る。

そしてミクは探索者のスマホから悲しげに話しかけてくる。
「私以外のこの星の電子機器はすべてムゥヴィイルの支配を受けるでしょう」
「大好きなあなたたちを守りたかった。本当に、守りたかった」
「少しでも長く、一緒に居たいです」

我々の住む世界には過去を変えに来る未来人などはやって来ない。異星からの救助も期待できない。
程なくして滅んだ文明の片隅、電脳の海のどこかで、彼女はずっと、大好きだった人たちの事を思い
歌を唄い続ける。

END

※エンディングテーマ「あなたの願をうたうもの」
出典:「あなたの願いをうたうもの」 オリジナル曲 Vo.初音ミク
http://www.nicovideo.jp/watch/sm26983384

おまけ

結局、博士は何がしたかったんですか?

フゥーッハハハハハハ!
よかろう、教えてやろうぞ!
それは…初音ミクの実体化計画っ!だっ!

あと、私のコピーってどうやって作ったんですか?

原理的にコピーは不可能!
実際は初音ミクを作る時に、二つのパソコンで両手で
左右同じプログラムを書いていったのだ!

根性ありますねぇ(笑)

博士ー。
私、他のお洋服も着てみたいんですけど…

簡単なことだ。
着てみたい服をイメージしながら強く念じてみればよい!

できました〜!

その他、シナリオに関する質問や感想、お待ちしています!