探索者達が神剣の破片を得て、地上に戻ってきた次の日のことです。
探索者たちがいる部屋に、どこからともなく紫色の蝶が舞い込んできました。
蝶はヒラヒラと飛び回ると、すうっと消え去りました。
気がつくと、蝶が舞っていた場所に1通の手紙が遺されていました。
これは世界を終末に導こうとする神々と、それに抗う人間達の物語。
世界の終わりまで、残り5日。
発見された置き手紙
手紙が発見される頃には、わたしはもう負けてしまっていることでしょう。
手紙は"あさどり"に任せたものだから、届く時には驚いてしまうかも知れないわね。
用件はいくつかあるわ。
まず、急ぎ鳴神村に戻り、物部和他利(もののべ わたり)に逢いなさい。
神剣を鍛えなおす為の儀式は、手筈は全て整えてあるわ。
決戦の地は島根、いずれ現れる黒き大ピラミッドにて行われるでしょう。
恐らく、多くの魔術師と、怪物が立ちふさがることになる。
だから、貴方達は出来る限り残った力を結集させなさい。
敵は強大だけれど、それでも、抵抗を止めなかった者達は残っていると思うから。
……わたしは人外の者であるけれど、人の美しさと気高さを知っている。
黄昏の天使、この世界に災厄を撒き散らす破滅の種子。
あれが正しく<降臨>に成功してしまったら、その力は最早天災に等しくなる。
ただ振り下ろした腕で大地は砕け散り、天は二つに引き裂かれることになるでしょう。
例え、どんな怪物を退治できると自負する優秀な『英雄』でも、夕泊蘭子には適わない。
例え、地球をすら砕いてみせる程に強大な『怪物』が相手でも、夕泊蘭子に傷を負わせることは出来ない。
夕泊蘭子より強い『英雄』や『怪物』がいても。
その『性質』上、夕泊蘭子より強いものは、彼女を止める可能性となることが出来ない。
……けれど、貴方達は、英雄でも、怪物でもないわ。
ただの人間……だからこそ可能性は残る。
大丈夫。可能性がある以上、貴方達は負けない。
今までと変わらない。今まで通りに、やれる限りをやりなさい。
さあ、行きなさい。アナタの心が赴くままに。
私はもう共に歩むことが出来なくなってしまったから。
例え、この身は星空に溶けても、ずっと貴方の傍に居るわ。
例え、私の呼吸が止まっても、貴方の中で私は生きているの。
だから行きなさい。貴方の答えを成就する為に。
自分を疑った時は思い出して。私はずっと貴方を信じていることを。
何もかもを疑った時は思い出して。私は貴方と共にあることを。