世間一般の反応
其処にたどり着ければ安泰な生活が有る。
そういう噂を携えた居留地が有ることが人々の間で噂された。
滅びるしか無い世界で、緩やかな滅びの道すら天は歩ませてはくれない。
緩慢な死へと向かう生活を送る居留地に、命を毟り取るが如く下位奉仕種族が
強襲を仕掛けてくる。その都度、まるで桜の花が散るように多くの命が散っていく。
せめてもの緩慢な死を求めて、人は口伝の居留地へその足を向ける。
青くねじ曲がる水の都市を横目に人間達のキャラバンが進む。
最初は2−300人位居たそれも今では数十人に減っていた。
住む場所を追われ、明日にも死を享受せねばならない状況の中
僅かな希望に縋って口伝の居留地に向かった人々。
早ければ今日にもその地に辿り着ける筈だった。後方から迫り来る黒い泥濘さえ現れなければ。
キャラバンに居た少女は、彼女を庇った父親が泥濘に飲まれるのを見守るしかなかった。
父親は既に伸ばされた右腕しか見えず、その右腕も泥濘から転がり落ちる。
少女の目から光が失せ、少女の顔からは色が失せ、壊れた笛のような声が口から漏れる。
多くの人間を取り込んだ泥濘が、次の犠牲者に狙いを定めた時に・・・その娘は現れた。
買い物袋を抱えた黒い服の美しい娘。眼前で広げられる惨状に目を留めその柳眉が寄る。
目線に静かな何かを湛えて、黒い泥濘を見やる。黒い泥濘はその娘にもお構いなく、
等しく死を与えようと体の一部を持ち上げる。
黒い服の娘はどうしたかというと、空を見上げて一言二言呟いた。ただそれだけ。
黒い服の娘の動きに合わせて空を見上げた少女は、次の刹那、空に何かの影が走るのを見た。
影が走った後に、晴れた空にも関わらず雨が降り注ぐ。雨はキャラバンの人々、黒い服の娘、泥濘に・・・
いや、最後の泥濘には雨以外の何かが降り注いた。空から目前に戻した少女の視線が捉えたものは
十重二十重の銀の槍に刺し貫かれた姿の泥濘であった。数刻後、泥濘は静かに溶けていく。
泥濘と共に銀の槍も形を失い溶けていく。その様を見て少女はそれが氷でできた槍だと気づいた。
命は助かったものの、父親を失ったことを認識した少女の意識は其処で失われる。
地面に投げ出されるはずのその体は、なにか柔らかいもので受け止められていた。
居留地で目覚めて当人を目の当たりにする迄は、少女は黒服の娘にその身体を支えられていた事を知らずに居た。
人の利用しなくなった巨大図書館に聖女が居る
そのような噂が近くの人間居留地にて囁かれる。
事実、カリーナエ付近の居留地の下位奉仕種族襲撃率が激減する。
このため、僅かな安寧を求め、他所からの流入が増えてきているのも事実。
人が多くに集まる場所なので、それを狙って来る存在も少なくはないのだが
聖女には化け物を喰らい取り込む獣が付き従っているという。そういう噂もある。
居留地で語られるのは終焉を静かに迎える人類をただ、安らかに見守る聖女と、それに従う獣の話。
人類は最後の最後まで、自分本位で話を作る種族であると思われる。
その実際
カリーナエに居を構え、私達は色々と生活に取り組んだ。
龍の力の制御も終わり、私に関する問題はほぼ解決した。
この辺りから、私も少々エスカレートするようになる。
「近隣の”人類の居留地”に干渉…ですか?。」と小首を傾げるキリエさん
コクリと頷く私。事に関してはショゴス型の下位奉仕種族の被害に合う居留地に対する所見だった。
「力の格上げを精神修養だけでなく別方面からも取り入れたくてですね。」と提案する私。
説明する内容を理解し、キリエさんはその表情を暗くする。賛成に頷けないそれだ。
自らが持つ、龍の力とカリーナエに残っている人類の技術遺産を組み合わせ、私は付近の
遺跡区域からの遺産の回収に勤しんでいた。水という媒体を道具として利用できる様になった
事で、それを用いてのシールド工法等、旧時代の技術と組み合わせ、効率的にそれを進めてきた。
文化遺産らしきはケタス=ルゥルイエ側に、流通通貨は人類の居留地にて使用する。
情報、技術関係はカリーナエにてチトセさんに吟味してライブラリに登録する。
半年間の時間が色々と環境を変えた。終わった世界が私に及ぼした影響は、私の心を壊したこと。
壊れた心は狂気に囚われるが、元来私の心は壊れていたらしく、その点に関しては都合よく働く。
よって、私は狂人であるものの理知的に、冷静に判断できる術を備えている。
が、今回ばかりはその冷静さ、理知を以ってもキリエさんの賛同を簡単には得れなかった。
以前に、私と同化し、一度死んだ私を蘇生させた龍を取り込み、自分の力に変えた件。
あれを、下位奉仕種族で試そうと提案してみたのだ。カリーナエの立入禁止区域でそれに近い情報を購入
過去、神話性物と化した人間の前例を調べ、以前私が龍に対抗すべく行った事を今度は下位奉仕種族に対して行う。
3人が帰還した際に使用した”門”の術式も既に取り込み済みで、現段階で単独次元跳躍が可能となっている。
この術式と、土地神(龍)が元来持つ結界を組み合わせ、被験体を仕舞いこむ次元牢を編み出した。
それから半年、この次元牢で近隣の居留地を襲う連中を取り込んでは実験していた。その顛末を話したのである。
「碧さんはどうにも急ぎすぎる傾向があります。」と静かに。
ただただ黙ってキリエさんの言を聞くしか出来ない私。
キリエさんのお勧めはやはり真っ当な道を経ての己の神格?の格上げとのこと。
作業工程に人類の技術を取り入れるやり方はフレキシブルで構わないと思うけれども
下位奉仕種族を取り込もうとする行為は思い切り反対された。
「その行いは、まさに彼等と変わらず・・・結果碧さんは彼等と同じになります。」とも
私は一言「判りました。」とだけ呟き提案を取り下げることにする。
そんな私にキリエさんは「明日、買い出しに行きますから遺跡の帰りに迎えに来て頂けますか?。」と。
「はい・・。」と生返事で返す私。そういえば忙しくてこの数日キリエさんと一緒のご飯を食べてない事を思い出す。
多少面倒な状況になっていた。10−20人程の人間達がキリエさんを遠巻きに囲むようにして拝んでいる。
キリエさんといえば、失神した小さな女の子を抱き支えているようだ。つい先程、キリエさんから『手を貸してください』と頼まれた後の結果だ。
近隣の人間の間ではキリエさんをちょっとした聖女扱いらしい。私も面倒なことは嫌なので水天宮碧の姿でキリエさんに近づき、手を貸す。
彼等を近隣の居留地まで見送り、其処で別れる。人々の畏敬を込めた視線がキリエさんに集うのを感じる。
結局少女はその後に目を覚ます。キリエさんに一言二言会話を交わし、頭を下げていた。それから、私達は人間の居留地を離れる。
別れた後はキリエさんを抱きかかえ、カリーナエまで一瞬で跳ぶ。キリエさんは大量に生活用品を買い込んでいた。
その日の夜は久々に2人で一緒に食事をした。
今日がキリエさんが皆を見つけた日から丁度1年らしい。
キリエさんはオムライスを作ってくれた。
今度はきちんとケチャップでハートを書いてくれていた。
そこで、私はこの数ヶ月、自身が見失っていたものを取り戻した気がした。
”研究”に関しては無期凍結。捕獲した奉仕種族は影響の及ばないところで開放した。
数日後、私はキリエさんとチトセさんに、カリーナエで勤務する人間の司書案を提案することとなるが、それはまた別のお話。
PLより
KP様及びPL様方々9日(10日)間お疲れ様でした。碧の中の人です。
オンラインセッションもこれで36回目の参加と相成ります。
今回、人外okと言う事でwiki竜人を自分解釈で作った所、
人間より人間っぽいキャラになった気がしました。
最終的にはもう人とかそういうもの超えましたが。
キャラの最後としましては客観的にBAD END風ですが、
個人的にはこれ以上はないGoodENDで満足しております。
シナリオに関しましては独自の世界観を包されており、結構開始が
楽しみなシナリオでした。実際始まってみると、こう物憂げな感じが
素敵な終末ライフを送れました。時にはこうしたCoCもいい物と思います。
出来うればこの世界観で長期で遊びたいなとも思います。
参加者各位も其々にキャラ立ちされており、とても楽しませて頂きました。
他の方々とは世界を異なる終わり方でしたけども、
縁があればまたお会いできるといいなと思います。
最後になりますが、機会ありましたらまた遊んでやってくださいませ。
改めまして『お疲れ様、ありがとう。』でした。
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