まずは4日間お疲れさまでした。初回&原作者が見学と、KP自身も結構緊張した状況であり、少なからずご迷惑をおかけしたのではないかと思います。にもかかわらず、終了後には有り難いお言葉をいくつもいただき、感謝に堪えません。
元々私がとても気に入っているシナリオでありますが、そのまま回したのでは単なる劣化番になるだけかと思い、私の持ち味としている時代卓に改変するという、やや博打勝負ではありました。しかしながら、終わってみると皆様の協力もあり上手くいったのではないかと思っております。今回のセッションでは自分なりの反省点や改善案も見つかりましたので、次回以降は今回とはさらに違った雰囲気になるかもしれません。そういった意味でも初回は皆様だけの特別なセッションとなるでしょう。
皆様のTRPGライフの1ページに、今回のセッションが少しでも残るようであれば幸いです。また機会があれば、よろしくお願いします。
KPによる後日談
豊饒の加護を失ったイルマ村は、また不作不漁が続くことになるだろう。また指導者を欠くことになり、全体的な舵取りに支障をきたすことは想像に難くない。そんなことを考えながら、少女は煤煙で濁ったロンドンの空を眺める。
とてもこの空が故郷に繋がっているようには思えない。ここはあまりにも世界が違い過ぎる。まるで世界中の人間を集めたかのようなにぎわいを見せる街路、見たこともないような様々な機械、華やかな文化。人伝には聞いていたが都会とはこんなものだったのだ。最初の頃は義父の付き添いなしでは、近くの買い物ですら迷子になりそうだった。幸いにもあの事件の際に知り合った人々が、気にかけて引っ切り無しに様子を見に来てくれたおかげで、義父が仕事中で手が離せない状況あっても不都合を感じることはなかった。故郷もそうだったが、どうやら自分は人の縁に恵まれているらしい。誰かがいつも助けてくれるおかげで、本当に困った事態になったことがないのだ。それに気付いたのは、ロンドンに来てからだと言うのは皮肉なものである。
過保護過ぎる義父は有り難くもあり迷惑でもあった。育ての親である祖父とは違ったタイプだが、同じくらい大切に思ってくれているのだろうことは理解できる。だが、娘とは言えさすがに17歳になる少女に過剰なスキンシップを求めてくるのは辞めてほしい。まぁ、今の状況は彼のおかげなのだから、多少の不満はあっても、以前のように家出をするわけにもいかないのだが。
大学に通うには、本年中の入試には間に合わなかった。早くても来年になるが──そもそも自分の学力で合格するかが問題になる。まぁこれも、あのお節介な知人たちが協力してくれるので、その期待に応えないわけにもゆくまい。しかもそのうち一人は一緒に入学するとまで言い出しているのだから。初めての場所に知人──いや、友人がいると言うのはそれだけで心強く感じる。彼女と一緒に学び舎に通えることは、何よりの励みになるだろう。
一見無愛想な医師は実は一番心配症なのだろう。暇を見つけては、何かしら適当な理由でやや強引に自分を誘い出し、困ったことはないか、助けは必要ないかと質問攻めにしてくる。必要ないと言うと、かえって長引くことに気付いたので、最近はほどほどに頼ることにしたが……それならそれで、もう少し愛想よくして欲しいのが実のところ、一番の要求かもしれない。人の事を言えた義理でないのは重々承知だが。
もう一人は忙しいのか、他と比べれば直接会う機会は少ない。それはそうだ。彼女にとっては売り出し中の今こそが、一番大事な時期なのだから。だが忘れた頃にやってきては、高価なチケットを渡してくれる有り難い存在だ。都会の流行などにも敏感なようで、そちらのアドバイスも貰えるのは──特にこの点では義父はまったく頼りにならないのだから──非常に助かっている。また、生い立ちが特殊な彼女は他よりも自分の境遇に共感できるのだろう。
と、自分が物思いに耽っていることに気付き、ペンを取り直す。分かれる前に仲直りのできた、故郷の従姉のような友人に宛てた手紙を書いている最中だった。田舎と違って様々なことがあり過ぎて、書きだしたらキリがないだろう。それに自分の性分から言っても、素っ気ないくらいで充分だ。いつか──数年は先になりそうだが──直接顔を合わせて語り合うことができた時のために、話したいことは取っておけば良い。それまでに故郷がどうなってしまうのか不安はあるが……今は、振り返るわけにはゆかない。だから、手短に近況を説明した後に一言だけ付け加えておくのだ。『また会う日まで』と。