彼の心臓は緊張と期待に高鳴った。
宮殿の中庭には番人はいないようだった。
罠の可能性も考えながら、シルクのスカートでつまづかないように用心して、忍び足でドアを通った。
街へと続く門にも、人影は見られなかった。
再度周りの人影を確認すると、彼は物陰に隠れながら門へと近づいた。
門の下で一度止まると、彼は自分が逃げ出した後の事を考えた。
このことを将軍が知れば、彼はアルタンの故郷の人々を躊躇無く殺すだろう。

彼はためらった。
しかし、彼がこのままここに留まれば、将軍からの性的な攻撃に抵抗できず
近いうちに将軍の情婦になってしまうだろう。
将軍との性行為中にも、その兆候はすでに現れていた。

彼がそこで逡巡していると、突然、宮殿の中から声があがった。
番人が中庭に現れ、彼と目が合った瞬間、アルタンは決心した。
彼はスカートと、彼の弾む胸が許容する限りの速度で走り始めた。


静かな月明かりの照らす道に、追跡者のブーツの音が重く響いていた。
彼は何度も道を曲がったが、彼らは正確に追いかけてきた。

走り始めてすぐに、アルタンは自分がいかに弱い存在かを再確認させられた。
鍛え上げられた戦士であった彼ならともかく、
ただの女である彼にとって、追っ手から逃げ切るのは並大抵のことではなかった。


足音が彼にじりじりと近づき、彼の体力も限界に近づいた時、
彼は逃げるための何かが無いかを探し、回りを見渡した。
そして、音楽を響かせている建物が彼の左にあることに気づいた。
彼は群集の中に入れば、逃げるチャンスが生まれると考え、そこへと駆け込んだ。

スカートを抑えながら彼がドアを開けると、音楽と雑音は一気に大きくなった。
バーのような物と、踊っている女達がそこにはいたが、
飛び込んできた彼に注意を払う者は殆どいなかった。
雰囲気におされ、少し戸惑っていた彼は、すぐ後ろに足音を聞くと、素早く人込みの中へと入っていった。
彼は、なんとか自分の存在を誤魔化そうと、騒々しい部屋へと溶け込もうとした。
突然、彼は何かに引き寄せられた。
彼が反応するより早く、彼は酒臭い大きな男によって抱きしめられ、キスをされていた。
嫌悪と屈辱で暴れだそうとした時、彼の目は、部屋に入り彼を探す番人を捕らえた。


脱走した彼を探して、二人の番人が部屋を見て回り始めた。
ここで騒ぎを起こしたら、彼らに気づかれてしまうことは明白だったので、
彼は男とのキスを楽しんでいるようにせざるを得なかった。
彼が抵抗しないのを見ると、男は気を良くして、舌を入れてきた。
そして、アルタンのストッキングやガーターベルトを撫で始めた。
番人が近づいてきたとき、彼は目をつぶった。
男の手は、スカートの中に入り、パンティを愛撫し始めた。
布ごしに、男の手が布越しに彼の女性に触れた時、彼は思わず声を上げてしまった。

アルタンがそっと目を開けると、二人の番人は、二人の可愛らしい少女によって足止めを食らっていた。
少女達は彼らに体をすり寄せ、何かを囁いた。
番人達は気を良くしたようで、すぐに隣の部屋に少女と一緒に入った。
彼らがいなくなると、アルタンは酔っ払いからなんとか抜け出した。


番人がいない間に、彼はドアに向かって素早く走り始めようとした。
しかし、二人の少女によって突然手をつかまれ、彼の走りは数歩で終わった。
あまりいざこざを引き起こしたくなかったので、彼は少女らに導かれ、部屋の向こう側にある小さいドアをくぐった。
彼がドアを通るとすぐに後ろ手にされ、抵抗したにも関わらず、紐のような物で縛られてしまった。
男だった頃は、女が何十人集まっても彼をこんな風にはできなかった。
そう考えると、彼はあまりに力の無い女の体が憎らしくなった。
彼は、廊下を通り、別の部屋へと押された。
その部屋には、机と、その後ろに座っている老女と、彼女の両脇に立っている二人の大きな女性がいた。


「何故私をここへ?」アルタンは聞いた。
「すぐにこの縄をほどいて下さい。」
老女が立ち上がり、アルタンへ近づいた。
彼の顎に軽く触れながら、品定めするように彼の美しい顔を覗き込んだ。

「あなたがあの兵士達をここへ連れてきたことは分かっています。」
「あなたにはそれについての損害を支払ってもらいます。」
彼女はアルタンの胸へと手を滑らせた。
「ちなみに、あなたが本当は誰であるかはこちらの耳に入っています。」
女性は再び机の向こう側へと腰をおろした。
「私はマデリーンといいます。」
「兵士を帰すには多額の金が必要でした。」
「あなたの所為で損をするつもりはありません。」
「つまり、あなたには損害を支払う義務があります。」
彼女が横にいる女性に向かって頷くと、彼女はアルタンの束縛を解いた。
アルタンは、このまま力ずくでここを去ることは不可能だと分かっていたので、なんとか交渉しようとした。
「どうすればいいのですか?」アルタンは半ば諦めながら聞いた。


「まず、私は金貨を二人の兵士へと支払いました。」
「また、何人かの客が、彼らに怯えて帰ったことによる損害もあります。」
「したがって、あなたには一万の金貨を支払ってもらいます。」
「今すぐに払えないのなら、別の方法で支払ってもらいます。」
「どういう意味ですか?」気が滅入りながら、彼は聞いた。

「あなたは若く、魅力的な女です。」
「あなたの容姿を見れば、あなたを求める客は沢山いるでしょう。」
「客一人あたり金貨100枚ではどうです?」
「色々を考慮に入れると、あなたは約一年間ここにいてもらいます。」


「そんな馬鹿な!」アルタンは叫んだ。
「もちろん、あなたには拒否することもできます。」
「しかし、拒否した場合、あなたはどうなるか分かっているはずです。」

「そんな事をするつもりは全くありません。」アルタンは言った。
「それも一つの選択です。」彼女は答えた。
「では、あなたに見てもらいたいものがあります。」
彼女は隣の女性に合図を出した。
その大柄な女性は、部屋から出て、一人の少女を連れてきた。

「彼女はジャニーヌです。」マデリーンは言った。
「残念な事に、彼女は業績が前より落ち込んできています。」
「したがって・・・・


女は手を伸ばし、少女を掴んだ。
そして、気持ち悪くなるような音と共に少女の首を折った。
アルタンは突然の事に驚き、恐れた。
動かなくなった少女はドアへと引きずられていった。
数秒後、彼女は別の少女と共に帰ってきた。

「彼女はセラナですが・・・」
マデリーンは護衛へ合図を出した。
アルタンは、マデリーンはただ彼の決定を覆すためだけに少女を殺そうとしている事を理解した。
彼は、自分の近くに居る人が、彼のために殺されることを見ていられなかった。
護衛が少女の首をつかんだその時、
「待ってください!」と叫んだ。
マデリーンは護衛の動きを止めさせた。
「では、私の出す条件を呑むのですね?」
ため息と共に、彼は黙認をうなずいて示した。


アルタンは、これが現実に起きているとはとても思えなかった。
彼は将軍から逃げた代わりに、マデリーンに捕まっただけだった。
女にされてから、彼の人生は滅茶苦茶になってしまった。
彼はそれを元に戻す必要があった。

「賢い選択です。」彼女は言った。
「しかし、いくつか警告があります。」
「あなたは客に対して好意的に接するとは思いますが、
 そうでないのなら、私は対策を考えなければならないでしょう。」
アルタンには言われなくても、「対策」が多くの人の死を含んだものであると分かっていた。
マデリーンは、机から立ち上がり、アルタンの回りを歩いた。
彼女は手を伸ばして、アルタンの露出した肩と、胸をゆっくり撫でた。
「このドレスは素敵ですが、あなたにはもっと適切な物を着させましょう。」
護衛の一人へと振り向いて言った。
「ヘレンに彼女の世話をさせなさい。」


アルタンは、護衛により部屋の外へ連れ出された。
彼女は廊下をいくつかを通り、衣服と化粧台と、着替え中の少女が数人いる大きな部屋へと連れてこられた。
彼は目の前の光景にたじろいだが、彼のドレスが少女によって脱がされ始めたとき、彼は我に返った。

半ば反射的に、彼は少女を止めようとしたが、護衛に平手を打たれ、彼は今の立場を思い出した。
「これはあなたのためよ。」少女は言った。
彼は恐らくこの少女がヘレンであると考えた。


ヘレンは、ストッキングとガーターベルト以外の服と下着を脱がせた。
多くの女性の前で裸になるのは不愉快なことだった。
彼の体は美しい女だったが、彼の心はまだ大部分が男だった。
彼に着せられた物は、長く赤いドレスだったが、下着は無かった。
アルタンがためらいがちにこれに文句を言うと、
下着を着るとドレスの上に線が出てしまうと彼女は言った。
そのドレスはとてもタイトで、彼の女性の体のあらゆる曲線を余す所無く見せていた。
胸の谷間が大きく強調され、スカートは足首まであるような長いものだった。
ヘレンに爪を赤く染められ、化粧をされるのを彼は黙って見ていた。
彼女は特にアルタンの唇に時間を掛け、色気を演出した。
化粧が終わると、ヘレンは建物の案内を始めた。


幾つかの説明の後、アルタンはベッドがある部屋へと連れられた。
そこは彼が「客」の相手をする部屋であった。
また、毎日自分で化粧をすることと、客からのチップは全て自分へと渡すことを彼に命じた。
ここでの彼の立場は、新入りの情婦であり、ヘレンに逆らう事は許されていなかった。
彼女の話が終る頃には、彼は自分がいかに弱い立場にいるかを再認識した。

その後、ヘレンは彼を大きな部屋へと連れて行った。
そして、テーブルで大声で喋り、酒を飲んでいる男達のグループを指し示した。
アルタンは他の三人の少女と男達への所へと行くよう言われた。
彼は男の注意を惹くことが無いように、少女達の後ろについてテーブルへと向かった。
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