今日もまた、苦痛と快楽の入り混じった時間が訪れる。
 ムラタが持参してきたアルミのケースを開けると、中には医療器具が詰まっていた。
 ねめ回すような視線を感じてカイトは無意識のうちに尻込みしていた。
 これからムラタによる「診察」が始まるのだ。
「準備にとりかかりなさい」
「はいはい、オレがやります!」
 我先に、少年たちがカイトに群がり、たちまちのうちにブルマとパンツを脱がせてしまった。
 カイトは必死に暴れ、うっすらと恥毛に覆われた秘部を隠そうとした。すると、浩司がすかさずTシャツの下に手を入れてきて、乳首に付けられたチェーンを引っ張りあげた。
 乳房がゆさりと持ち上げられ、胸の先端が鋭く痛んだ。
「いたっ、痛いっ!」
 カイトは悲鳴をあげて両手でチェーンを掴み、苦痛を和らげようとする。
 自然と下半身のほうは剥き出しになってムラタの前に晒された。
「ふむ……」
 ムラタは産婦人科の使うような筒状の器具をカイトの秘所に近づけてきた。
 つぷっ……
 異物が挿入される。
「くぅぅぅ……」
 押さえようとしても呻き声が出てしまう。
 体内に異物を挿入される感覚がカイトは大嫌いだった。
 大嫌いだ、と思えるくらいにその感覚はカイトにとって馴染みのあるものになりつつあった。
 そして、挿入された筒がゆっくりと二つに分かれた。
 ムラタはまるで実験動物でも相手にしているように冷静に、割り広げられた女性器を観察している。
 ムラタの視線を感じたせいか、はたまた異物挿入への防衛反射か、秘裂の奥からとろりと愛液が分泌されてきた。
 それをムラタは無造作にガーゼでぬぐった。


 ムラタよりもむしろ浩司たちのほうがその光景に興奮している。
 愛液を拭いたガーゼは少年たちの手に渡り、それからカイトの鼻先に突きつけられた。
「どうだよ、自分の愛液の臭いは? 自分で自分の臭いに興奮しちゃったりすんの?」
「ふ、ふんっ……」
 カイトはただそっぽを向くことで意思表示をした。
 ムラタはひと通りの検査を終えると、器具を引き抜いた。下半身に入っていた力も同時にすっと抜ける。
「どうやらまだのようですね」
「…………」
 ムラタの言っているのは「生理」のことだった。
「でも君の肉体は申し分なく健康に保たれてますからね。これをご覧なさい」
 ムラタが見せてきたのは、カイトの体温を測定したグラフだった。それがいわゆる基礎体温表だということはカイトにも分かる。
 折れ線のグラフは、規則性のあるカーブを描き始めていた。
「おそらく次の周期では排卵と、それに伴う月経が見られるでしょうね。心の準備をしておいたほうがいいですよ、カイト君」
 ムラタの手がカイトの下腹部に触れた。
 きゅっとその部分を手で押される。それに呼応して腹の奥がジンと疼いた。
「子宮の位置ですよ。もうじき君は月に一度、そこから血を垂れ流すようになります」
「血……」
「君がどうあがこうと、その体は男の精を受け入れて妊娠するための準備を始めているといことです」
「冗談だろ……妊娠、なんて……」
「フフ。生ませる側から生む側の性に生まれ変わったのを実感できますね、もうすぐ。生理前になったら感情が不安定になったり、乳房が張ったりして自覚症状もあるはずですよ」
 ムラタは小さく笑ってカイトの乳首につけられたピアスを指で弄んだ。


 すぐさま刺激に反応して乳首が固く尖り立った。
「やめろォ!」
 カイトは胸を掌で押さえて刺激から逃れようとした。
 胸を弄られると、とてつもなくイライラした。屈辱感と不安感と無力感と、その他わけの分からない感情が一緒くたになって襲ってくる。
「なかなか女の子らしい反応をするようになってきたね」
 そう言ってムラタは手を引っ込めた。
 同時に本校舎でチャイムが鳴る。
 じわり……
 チャイムの独特の音色を耳にしたとたん、カイトの秘所が濡れてきた。
「!?」
 あわててカイトはそれを手で拭き取ろうとしたが、ムラタの反応のほうが早かった。
 脱脂綿をあてがわれ、濡れた股間を拭かれた。
「パブロフの犬みたいですね」
「なんでだよ!」
「それは条件反射ですよ。いつも鐘の音を合図に性的な刺激を加えてましたからね。肉体がそれを覚えて、自動的に愛液を分泌してるんです」
 その説明の間にもまた新たに液体が染み出てきた。
「順調に性の人形化が進んでますよ、君は。この調子なら遅延なしに完成段階へ持っていけそうだ」
「オレは……絶対あんたの思惑通りになんかならないからな!」
「うんうん。その反応は好ましいですよ」
 ムラタは器具を消毒してケースに戻すと、離れた場所で椅子に腰下ろした。
 入れ替わりに浩司たちがカイトを取り囲んだ。
「あっちいけ!」
 と吠えるカイトを誰ひとりとして怖れる者はいなかった。
「御奉仕の時間だぜ、カイトちゃん」
 浩司のペニスが突き出される。
「この変態ども」


「おやおやぁ。オレのチンポ前にして濡れてきちゃってるカイトちゃんは変態じゃないのかなぁ?」
「くっ!!」
 カイトは屈辱に震えながら腿をとじ合わせた。意思と関係なく濡れてしまった股間のあたりがヒヤリと冷たい。
「ま、いいんだけどね。御奉仕しないってんなら、またメシ抜きになるだけだし」
「卑怯ものォ……」
 くくっ、と笑いながら浩司は手にした菓子パンをちらつかせた。
 浩司を殺しそうな目つきで睨むカイト。
 だが体のほうはパンの臭いに反応してしまう。ぐぅ、と腹の虫が鳴り、口中には涎が溢れた。
 食べ物は一昨日の昼にパンを口にして以来だった。
 昨日もこの「奉仕」をこばんだばかりに食事にありつけなかった。
 夜に訪ねてくる葵も、ムラタの目を盗んで持ってきたという飴玉を差し入れてくれるのが精一杯だった。
 目の前にパンをちらつかされて、空腹感に目が回りそうだった。
「どうもカイトちゃんは今日も断食したいらしいぜ」
 そう言って浩司はパンを後方で待機してた仲間に放り投げた。
「あっ……!」
 思わずカイトはパンの行方を目で追ってしまう。
「うめぇ、うめぇ!」
 ハネダががつがつとパンをたいらげた。
 急速に募る飢餓感がカイトを責め苛んだ。
「おっと。ソーセージパンがもう一本あるんだっけ」
 浩司はそういってポケットからひしゃげかけたパンを取り出した。ビニールパックが破られたとたん、パンとソーセージの匂いが漂い出して飢えたカイトの五感を直撃した。
「う、うう……」
 食い物すら自由にならない惨めさにカイトは嗚咽しそうになり、必死で歯を食いしばった。


「ほらよ……」
 浩司がパンを差し出してきた。
 カイトがそれを手にしようとした瞬間、ひっこめられてしまう。
 代わりに、浩司の下半身が近づけられた。
「世の中タダなモンなんてないんだぜ。ソーセージパンが食いたいんだったら、まずオレのソーセージから味わって貰おうか?」
「この……カス野郎……」
「んん、なんか言った?」
「………………」
 カイトは目を瞑り、ゆっくりと浩司のペニスに顔を近づけた。
「舐めて気持ちよくしてくれよ。ほんとは口の中に突っ込んでやりたいとこだけど、万が一噛まれたりしたらたまんないからさァ」
 突き出した舌の先端が熱く張り詰めた肉茎の表面に触れるまでにずいぶんと時間がかかった。
 ぴちゃっ。
 妙にイヤらしい音がして、カイトは舌をひっこめそうになってしまった。
「時間内にイカせられなかったら、パンはやらないぜ。制限時間、あと5分!」
 浩司の言葉がカイトを縛りつけた。ここまでやって、食べ物が得られなかったら元も子もない。
 必死でカイトは舌を動かした。
 嫌悪感をこらえ、かつては自分の手下だった少年のペニスを舐め回す。浩司が陰部を清潔に保っていたのがせめてもの救いだった。
 ぴちゃぴちゃと動物のような音を立てて、少年のペニスに文字通り奉仕をする。
「んんっ……残りあと2分だよ。だいじょうぶ〜?」
「!!」
 浩司のペニスは舌の刺激で屹立してはいるものの、いまだに射精の兆候はみえない。
「カイトの喘ぎ声とか聞いたら、オレすぐにでもイッちゃいそうだけどなぁ〜」
「オレに……そんな器用なことできるわけないだろ!」
 浩司はひょいと手を伸ばしてカイトの乳首を摘むと、絶妙な力加減でそれを擦りあげた。


「あっ、はぁぁぁっ!」
「そうそう、そういう声で鳴いてくれりゃいいんだよ……おっとあと1分30秒!」
 幾分息の荒くなってきた浩司がニヤリとする。
 カイトは早くことを終わらせたい一心で、とぎれとぎれの媚声を出した。
「アンッ、アッ……アッ、アッ、ハァン……」
「そうそう……」
 舌を動かすリズムに合わせて、いつのまにか自然に鼻にかかった甘い声が出ていた。
 そのときカイトの後ろに回り込んだカジが、無防備にさらけ出されたままだったカイトの秘所にバイブを突き立てた。
「あ、やめっ……はうううっ!」
 カイトが慌てて制止するより先に、バイブの先端が潜り込んできた。
 ずにゅううう……
 肉をかきわけて異物が入ってくる挿入感。そして、クリバイブの部分が敏感な突起にあてがわれる。
「スイッチ、オン!」
 ヴンッ……
 低いモーター音がして強烈な刺激がカイトの下半身を襲った。
「あ、あ、あ……」
 腰がくだけ、舌を動かすことも一瞬忘れてカイトはバイブを抜こうとした。
「そのまま! おっと、あと40秒だ」
「あああっ」
 男のペニスに奉仕させられてるという事実と、下半身を責め立てるバイブの刺激。両方の相乗効果でカイトは頭の中が真っ白になっていった。
「あと30秒……」
 ペニスの根本を細い指で掴むと、カイトは思いきってそれに口づけた。亀頭をかすかに舌で刺激し、次にペニスの裏筋の部分へ顔をもぐらせ、舌先を何度も往復させる。
「おぅ……いい…………」
 さすがに浩司の体が力んできた。


 同時にカイト自身もバイブに刺激されて、演技でなく甘い喘ぎ声をもらしていた。
 となりでカジやハネダたちが何やら作業をしていたが、カイトにはそれを確かめようとする思考力さえ残ってなかった。
「はぁっ、はぁっ……」
 浩司の呼吸が激しくかつ単調になってくる。そして、睾丸のあたりがひきつるような動きをみせた。
(お願い、イッてぇ!)
 最後の瞬間、カイトは夢中でペニスを頬張っていた。唇と舌で包み強く吸った。
「うっ……!」
 浩司が呻いて、大量の精液をぶちまけた。
 カイトの頭に手をつき、しばらく放心したようになる浩司。
 しばらくして、唾液にまみれたペニスが引き抜かれた。そのときのカイトには、ペニスを噛みきろうという考えすらなかった。
 ただひたすら頭の中が真っ白だった。
「やべぇ……気持ち良すぎて最後のほう、時間見てなかった」
「なっ!」
「ま、いいや。サービスで合格にしといてやるよ。おっと、ちゃんとザーメンは飲み込めよ」
 浩司の放った濃厚なザーメンは喉の奥にからみついていつまでも感触が消えそうになかった。
 そして挿入されたバイブを抜こうとしたとき、浩司が逆にバイブを奥へと突き入れた。
「んうっ! な、なにしやがる……」
「オイオイ! まだオレの番が終わったばっかじゃん。この場にあと4人もいるんだぜ?」
「次、オレぇ!」
 ハネダがいそいそとズボンのジッパーを下げた。
 カイトの目の前が暗くなった。たかがパン一個のために、この場にいる少年たち全員のペニスをしゃぶらなければいけない……。




「待てよ、ハネちゃん。折角新ステージ用意したんだから、そっちに移動してからやったらどうだ?」
「ん、それもそうか」
 ハネダはうずくまったカイトの胸のチェーンを掴んで立ち上がらせた。
 少年たちの中では頭ひとつぶん上背のあるハネダなので、チェーンを握った手を少し上に持ち上げるだけでカイトは爪先立ちにならざるをえない。
「こっち来いよ、カイトさん」
 乳首につけられたチェーンで引き回されるという屈辱的な姿は順番待ちの少年たちによってビデオに撮られていた。
 教室の一角で机と椅子をとりのけられていた。
 さきほどカイトが浩司に「奉仕」していたとき、横合いで少年たちが作業していた場所だ。
 見ると木の床には細い溝が掘られ、そこにカーテンレールが埋め込まれていた。
 床に置きっぱなしになっていた工具類を足で払いのけ、ハネダはそこにカイトを連れてきた。
「まずはこれだよなぁ」
 革製の足枷を持ってきた浩司がカイトの両足首にベルト状の枷を固定した。
 カイトが抵抗のそぶりを見せたとたん、胸のチェーンでハネダに引き寄せられた。
「なあ、カイトさん。あんたには色々と世話になったよなあ」
「そ、それがどうした。弱い奴が強い奴にいたぶられるのは当然だろ」
「あ、そう……」
 コツッ!
 カイトの秘所からずり落ちかけたバイブの尻をハネダが爪先で蹴り上げた。
「はひゃうっ!!」
 再びバイブが根本まで挿入され、カイトは息を詰まらせた。
「俺の目の前でアケミを犯したの覚えてる? なあ、カイトさん」
「……へっ、あのときお前まだ童貞だったんだよな……」
「あんたにボコボコにされて目の前で好きだった女を犯られたんだぜ? 俺は止めに入るどころか、殴られた痛みと恐怖でガタガタ震えてたよ」


 不意にカイトの顔に残忍な笑みが浮かんだ。
 女にされて囚われてなお、カイトの中にはそういう部分が残っていた。
「他人の女をモノにすんのは格別の快感なんだよ。特にヘタレな奴の目の前で犯ってやんのはな!」
「そしてあんたはあっさりアケミを捨てた。アケミは、妊娠してたんだぜ!」
 一瞬ハネダの目が危険な光を帯びたが、すぐにそれはやわらいだ。今のカイトが強がってるだけなのは誰の目にも明らかだったからだ。
「……俺もカスみたいな人間だけどよぉ、あんたはもっとクズだよな。他人を好きになったことなんてないんだろうからな」
「道徳のお時間か? 反吐が出るぜぇ」
 カイトの吐いたツバが少年の顔にかかった。
 ハネダは平然とちり紙で顔を拭いた。
「お喋りはこのへんまでにしとくか」
 ハネダは両手でカイトの首根っこを捕まえ、頭を下げさせた。
 剥き出しになった胸からチェーンが垂れる。それをハネダは足で踏んづけた。
「ぐあっ!」
 カイトはたまらず両手を床につき、四つん這いの姿勢になった。ハネダの足がしっかりとチェーンを踏みつけていて、カイトはその姿勢のまま逃げることも立ち上がることもできない。
「ちょーっと待ってろよ?」
 ハネダは屈み込むと、チェーンのたるんだ中央の部分を床に埋められたレールのランナーに南京錠で固定した。
 カイトはハネダの意図を悟って青ざめたが、もう手遅れだった。
 胸のチェーンに続き、足首に巻かれた枷もそれぞれ短いチェーンでレールへと繋がれてしまった。
「これでよし、と」
 四つん這いになったカイトの股間から突き出すバイブの底をハネダは指で押した。
「はあぅぅぅっ」
 女性器への刺激から逃れようとカイトはもがく。


 だが、レール上のランナーに繋がれた身では、四つん這いでレールに沿って動くことしかできない。
 這って進むたびに胸が無様なほどゆさゆさと揺れた。
 いつのまにか前方にハネダが回り込んでいる。
 唐突に視界にハネダのペニスが入ってきた。
 ハネダは椅子に座って大股を広げている。
「来いよ。そのお口でペロペロしてもらおうか?」
「うっ、ううっ…………」
 我知らず後ずさろうとして、ハネダに首根っこを掴まれ前方へ引きずり出された。
 そのまま少年の股間に顔を埋めてしまう形になった。
 ペニスの先端が頬を叩き、先走りの露が糸を引いた。
「俺は浩司の奴より厳しく、時間制限は3分といくぜ。レディ・ゴー!」
 カイトは内心の激情を堪え、半分皮をかぶった陰茎をしゃぶり始めた。
「その調子だ、しゃぶり姫!」
 糞! 糞! 糞!
 胸の内で何度もハネダを罵った。それでも舌を休めるわけにはいかなかった。
 手でペニスを支えようとすると体のバランスを保てなくなるので、犬か猫のように舌だけで奉仕することになる。
 ひたすら亀頭と皮に覆われた側面の刺激を続けるうちにペニスがさらに膨張していった。皮がぺろんとめくれる。
 ぴちゃぴちゃと奉仕を続けていると、自分の立てている卑猥な音とバイブの刺激によって次第にカイトのほうも昇りつめていく。
「あと一分〜」
「ううっ」
 カイトは思いきって顔を突き出し、裏筋の奥深くへと舌を這わせた。
 ハネダの腰が浮き上がりぶるりと震えが伝わってきた。
(こ、ここを責めれば!)
 カイトは自分自身が達してしまいそうになるのを必死で堪えた。


 亀頭から裏筋を辿り根本まで舌を這わせ同じ経路を辿ってまた亀頭まで戻る。それを数往復繰り返したところでハネダが短く吠えた。
 生暖かい精液がピュツピュッとカイトの顔に飛んできた。頬をドロリと液が垂れていった。
 息が切れそうだった。
「ふうっ、ふうっ、ふうっ……」
 無理な体勢でペニスをしゃぶったこともあるが、それ以上にバイブの刺激に追い詰められて息があがっていた。
 上半身を支える腕が震える。
 いまにもエクスタシーの波がきそうだった。
 快感に抗うことをあきらめ、カイトは目を閉じた。
「あ、あ…………」
「おっと!」
 ズルリッ。不意に強い刺激とともにバイブが抜き去られた。
「うぅ……?」
 イキそこねた奇妙な脱力感を感じながら、カイトは後ろを振り向いた。
 ハネダがどろどろに濡れたバイブを投げ捨てた。
「フゥ〜〜。さぁて、そろそろメインディッシュ行かせてもらうかな。今日は俺、ムラタ先生に許可貰ってんだよね〜!」
「あ、ああ……近寄んな!」
「カイトさん怯えてんの? へへへ……」
 ムラタの股間は早くも勢いを取り戻していた。
 レールに繋がれたカイトは、否応なく股間をハネダにさらけ出した格好になっている。体の向きを変えることすらできない。
 後方へ突き出した形になってる尻に指先が触れた。
(また犯されるッ!!)
 本能的な恐怖に支配されてカイトは足掻いた。
 必死で前方へと這って逃れる。ジャッジャッと音を立ててランナーがレールを滑った。
「ヘヘヘッ……」
 ハネダはおかしそうに笑っていた。


 ハネダから見ればカイトはジタバタと手足を動かしてほんの一寸向こうへ移動しただけである。
 白く張りのある尻をハネダに向けたまま、カイトは必死になって無駄な努力をしている。
 すぐレールの端へと辿り着いてカイトは呻いた。
 それ以上前進しようにも胸のチェーンが引っ張られてしまい、身動きがかなわない。
 再び尻をさわられた。今度は逃れられない。
 やわらかな尻の肉をもみしだくように掴まれた。そのままハネダが重なってくる。
 メスの獣のような姿勢で犯されようとしていることをカイトは身震いと共に悟った。
 無防備な秘所に熱い欲望の塊が触れた。
 四つん這いの姿勢では腿をとじ合わせたところで男の侵入を拒むことは不可能である。
 ハネダは膝を床につけて体位の調節をした。まるで物のようにカイトの腰を掴み、低い声で言った。
「行くぞ」
「うあああっ、やめろォ! 今すぐ、やめろォ!」
 カイトの叫びを合図としたかのように挿入が始まった。
「うあああ!!」
 侵入者から逃れようとむなしく床を掻きながらカイトは貫かれていった。
 ずにゅっ、ずにゅうう……
 卑猥な音と陰肉の擦れる感触。充分すぎるほど濡れていたそこは、殆ど抵抗無くペニスを迎え入れていた。
 力ずくでペニスをねじ込まれるという信じられないほどに屈辱的な仕打ち。
 自分でも知らない内にカイトは涙をこぼしていた。
 ハネダが快感のあまりため息をこぼす。
「女の裡って、ホカホカとあったかいんだなぁ」
「あっ、はあっ、はあっ……」
 ペニスを根本まで打ち込まれてカイトは全身を小さくわななかせた。
 すぐに大きなストロークのピストン運動が開始された。
 バイブの震動とは異質な肉壁をこすられる刺激。



 ハネダはカイトの腰を掴んで自分が気持ちよくなるよう位置を微調整する。ハネダの行為に、カイトの人格は微塵も考慮されていない。
 快楽発生の装置としてカイトは肉体を犯されていた。それは同時に心も踏みにじられることだった。
 肉棒を突き込まれるたびに喘ぐ自分自身の声に、カイトの男としてのプライドはボロボロと崩れていった。
 何より屈辱的なのは、ダッチワイフ同然に犯されながら、それでいて肉体は快楽を覚え始めているという事実だった。
 カイトの抵抗をあざわらうようにハネダの腕がカイトの腰を強引に引き寄せる。
「ああああっ!」
 深々とペニスが埋まり、男の鼠径部が複雑にクリトリスのあたりを刺激した。
 我知らず快感にのけぞっていた。腕の力が抜け、ぺしゃんと上半身が床に崩れ落ちた。胸のふくらみが床に押しつけられてひしゃげる。
 その体勢でますます尻を高く突き出すようになり、ハネダにとっては好都合なようだった。
 ボロボロと涙が落ちた。
 自分でもどうして泣いているのか、分からない。男の意のままに犯される無力感からか、それとも犯されて感じてしまう肉体への呪わしさからか……。
「おぅ……そろそろ……イキそうだ……」
 乱れた息遣いに混じってハネダは言った。
 カイトの腰を掴む手が力んでいることと、ペニスの根本の張り詰めきった感触がハネダの言葉を裏付けていた。
「ばかやろ……勝手にイクんじゃねェ……」
「…………」
 ハネダはもはや無言になって機械のように腰を振り続けた。
 腰をがっしりと固定されてカイトは身を任せるほかに術はない。なによりカイト自身が深い快楽の崖っぷちに立たされていた。
 激しさを増したピストン運動にカイトの口から微妙な呻き声が漏れる。ハネダへの怒りと、女として本能的に口をついた快楽のうめきが入り混じった声だった。

 白く霞んだ視界で、そのとき凌辱劇を見守るムラタと少年たちの姿をカイトはおぼろげに認識した。
 不随意に喘ぎ声をもらすカイトを指さして意地悪くほくそ笑むクラスメイトたち。
 ムラタは感情を押し殺した仮面のような表情でじっと見守っている。ムラタの瞳の奥でわずかに揺れた感情の色は、それは……。嘲笑でも憐憫でもなく、カイトの知らない不思議な眼差しだった。
 ずんっ。快感の塊が門をノックする。
(またこいつらの前で……イカされるのか……?)
(いやだ。いやだ。いやだ。犯されてイッてしまうなんて惨めすぎる!)
(いやだ……誰か助けてくれ!!)
 無意識のうちにカイトはつぶやいていた。
「……たすけて……」
 それを聞きつけた浩司が鼻で嗤った。
「ハハッ。あんたを助けてくれる奴なんて誰もいないぜ。誰もな」
(誰も……)
 そのときハネダが爆発した。
 カイトの腰をきつく引き寄せたままハネダの腰がビクンビクンと痙攣した。
 体の奥深くに男の精を流し込まれていることをカイトは実感した。
 力で少年達の上に君臨してきたカイトが、いまでは売女以下のダッチワイフのように彼らの性欲処理にいいように使われている。
 いまだ挿入されたままの肉棒の感触がその現実をいやでも教えてくれる。
 一部始終を見ていた浩司がハネダを揶揄した。
「ハネダぁ、おまえ早漏だな。もうちょっとだったのに、カイトちゃんぎりぎりでイキ損ねちゃったみたいだぞ?」
「ハァハァ……んなこと言ったって、こいつの中、良すぎでさァ」
「ま、そうなんだけどな」
 ペニスを挿入したままハネダの脱力した上半身がくたくたとカイトにのしかかった。上半身だけでも男の体は重かった。
「くはあ、気持ちよかった……」


「お、おりろっ。重い!」
「あー?」
 カイトはイキきれなかったフラストレーションに腰を動かしそうになってしまうのを必死で堪えた。
「つれないこと言うなよ、カイトさん」
 ハネダはカイトの背中に体重を預けたまま、カイトの乳をまさぐった。
「はあっ、ああっ、ダメ……だ!」
「うへへへ……」
「くううっ、やめぇっ、あひぃぃ!」
 床に押しつけられていた乳首を探り当てられ、まさぐられると電流が走ったような鋭い快感が走った。エクスタシー寸前まで持ち上げられたことで体が敏感になっている。
 乳首を摘まれると、歯の根が合わずカチカチといってしまうほど感じてしまった。
 ハネダはひとしきり乳首を弄んでカイトの反応を楽しむと、それから重そうに体を起こした。
 ずるりとペニスが引き抜かれる。その摩擦も甘い刺激となって脳天を打った。
 女陰がヒクヒクとわなないているのが自分でも感じられた。そして、それをハネダに見られている。
 いつになったらこの悪夢は終わるのだろうとカイトは思った。
 そのとき膣口に愛液とは違うドロリとした液体が溢れてくるのを感じた。
 もちろんそれは、腹の中に思う様ぶちまけられた若い男の精だ。
 カイトがそれをぬぐい取ろうとするより一瞬早く、バイブが突っ込まれた。
 ズンッと奥まで響く衝撃で思わず女のように甲高い声で叫んでいた。
「ほら、こぼしたら勿体ないだろぉ〜カイトさん? それスイッチオン」
「やめ、やめろって……あああう畜生ぉぉぉぉぉ!」
 ヴヴヴと虫のような音を立てて震え始めるバイブ。モードは最弱に設定されているようで、いままでの刺激と比較すると弱々しすぎるほどの震動が伝わってくる。
 一定間隔で震動を停止しては、また思い出したように動き出すバイブ。それはいまのカイトにとってあまりにももどかしい刺激だ。
 そして、ハネダの手によってパンティとブルマが元の位置に戻された。


 二枚の布の下でくぐもった音を立ててバイブが働く。
「こんなもの!」
 ブルマを脱いでバイブを取り出そうとしたカイトだったが、それより先に寄り集まってきた少年たちによって手枷をはめられ、それを胸のチェーンに繋がれてしまった。
 胸に取り付けられたチェーンと足首の枷で床のレールに繋がれ、カイトは四つ足で這ってレール上を移動する以外の自由を奪われてしまった。
 形の良い乳房を揺らしながらのそのそと這う姿はこれ以上ないほど見世物めいている。
 おまけに埋め込まれたバイブが静かに震えてカイトを責め苛む。
(バイブ……バイブだけでも外さないと、気が変になる……)
 必死で手を伸ばすが、手枷のせいで手が届かない。
 ヴヴヴヴヴヴ……
 容赦なくバイブが動き出す。いっそ、否応なく絶頂に達させられるほどの刺激であったほうがまだマシだった。弱く断続的な刺激はまさに「生殺し」に他ならない。
 なんとかバイブを振り落とそうと腰を動かしたが、ぴっちりとブルマまで履かされたじょぅたいでは、逆にバイブが食い込んでくるだけだった。
「はあああ、くそぅっ」
「見ろよ、カイトちゃんが腰振りダンスしてるよ」
「!」
 はたと顔を上げてみると、少年たちはカイトの必死の努力を嘲笑っていた。
 それでもバイブが静かに震え出すと、その甘痒い刺激から逃れようと、自然と腰がくねってしまう。
 そんな姿態が少年たちにエロティックな興奮を与えている。
 股間をふくらませて自分を指さす少年たちを見て、カイトは自分が場末のストリッパーにでもなったように思った。
 けれど……
「はーい。次は僕の番だよね?」
 と、新たにまた一人の少年がペニスを突きつけてくる。
 カイトは口を近づけてそれを舐めてやるほかなかった。


 完全にストリッパー以下だ。ストリッパーならまだいい。いまのカイトはセックス人形だ。たかがパンひとつのためにここまでいいように弄ばれてしまう。
 四つ足で繋がれたカイトをさらに二人の少年が性欲処理に使った。
 精液を顔にぶちまけられながら、その間もバイブに反応して腰がくねってしまう。
 自分の姿の浅ましさを考えただけで頭が痺れそうだった。
 全ての少年が性欲を満足させると、浩司がポンとカイトの尻を叩いた。それだけでカイトはびくんっと反応してしまう。
「泣きそうな顔でケツをフリフリしてるカイトちゃんも可愛いな。そろそろ時間だけど、また可愛がってやるよ」
「待て! ぬ、抜いてけよ!」
「ん……何を?」
 問い返されてカイトは一瞬返答を躊躇った。
「あ、その……バ、バイブを……」
「ハハッ。女の子の口からバイブなんて聞くと興奮すんなぁ。で、バイブをどこから抜いて欲しいの?」
「く……」
 意地悪く問いながら浩司の手はカイトの胸をいじって感触を楽しんでいる。
「バイブを抜くって、ど・こ・か・ら?」
「あ、あそこからだよ」
「アソコ? アソコじゃ分かんないなぁ」
「くそっ!!」
 カイトは自由にならない手で床を叩いた。
「オマンコだよ! オレの……オレのオマンコから早くバイブ抜いてくれ!」
「アハハハハ!!」
 浩司をはじめ少年たちはカイトが自身で「オマンコ」と口にするのを聞いて、全員が愉快そうに笑った。
(クソ野郎ども……)
 カイトは自分自身でも後悔していた。自分が女になったことを自ら認めてしまったことになるからだ。


「よしよし、良く言えましたね、カイトちゃん」
 と、浩司がカイトの頭を撫でる。
「だけど!」
 浩司はカイトの後ろに簡単に回り込むと、電気アンマの要領でカイトの股間をグリグリと足蹴にした。
「はああああああ!? あっ、あっ、いやああああ!!」
「カイトちゃんのオマンコはもうしばらくソイツをくわえ込んでたいってさ!」
「そんなこと……はわあああああ!!」
 グイグイと大事な場所を踏みにじられて、苦痛と、それに倍するほどの甘い快感が迸った。
「アンッ、いやあ、もうだめぇ、それ以上……うぅぅ……!」
 少年たちの手が一斉に伸びてカイトの乳房や剥き出しの脇腹、背中、そして太股や尻をいやらしく揉みし抱いた。
 股間への責めも続く。
 抗いようもない性的刺激の大波が押し寄せた。
「くふぅぅ……ああああっ!!?」
 堪えようという僅かな理性の抵抗をいとも簡単に押し流し、絶頂の洗礼が全身を浸した。
 どこまでも溺れていくような感覚の中でカイトの全身は脱力していった。
 少年たちの悪意に満ちた愛撫によって、女としての絶頂を味あわされてしまったのだ。
 床にうずくまって動けないでいるカイトのそばにムラタがやってきた。
「……女として、セックス人形になるのも悪くはないと思うようになったか?」
「………………」
 声が出ないので、代わりに首を振って問いかけを否定する。
「まだ心は男のつもりでいると?」
 そうだ。オレは男なんだ。たとえどんなに体にされたとしても!
 声にならない声でカイトはそう叫んだ。
「素晴らしい。その意固地なまでの強い自我を歓迎しますよ」
「あ……?」
「ですがこれからあなたには、確実に性奴隷へと堕ちてもらいます。ええ、確実にね」


 カイトにとっては空恐ろしい言葉を置きみやげに、ムラタと少年たちは部屋を出ていった。
 囚われ肉体を変えられてから、もう何日が過ぎただろうか。
 叔父夫婦もいまではカイトが失踪したことに気付いてるだろう。しかしカイトに暴力を振るわれ、金をせびられていた叔父夫婦はハッキリとカイトを憎んでいた。
 彼らが積極的にカイトを探してくれることはないだろう。
「誰か……誰か助けてくれ……」
 そう呟いた瞬間、ハネダに突きつけられた言葉が耳に甦った。
 ……あんたを助けてくれる奴なんて誰もいないぜ。誰もな……
 絶頂後の疲労に意識を蝕まれるまま、カイトは目を閉じた。
(オレ、友達なんていなかったな、そういえば)
 ハネダに指摘されるまでもなく、助けにくる誰かなどいるわけがなかった。
 眠りに引き込まれながらカイトは呟いた。
(助けなんていらない。オレはきっと自分でここを抜け出してみせる……)
 突っ込まれたままのバイブが再び控え目な震動を始めたが、それよりも先にカイトの意識は闇に落ちていた。



 澄みきった碧いガラスのような空だった。どこまでも高く遠く続くような空。
 乾いた風が渡っていき、髪がさらわれた。
 地上へと目を戻すと、黄金色の小麦の穂が一面に広がっている。もうすぐ収穫の季節だ。
 不意にあたりが翳った。
 空気を震わすような爆音。
 カーキ色の軍用機が低く空を飛んでいた。
 無遠慮な騒音がようやく遠くのものになったとき、誰かが名を呼んでいるのに気付いた。
 振り返ると、黄金の絨毯の向こうでひょろりと背の高い青年が手を振っていた。
 逆光で顔は見えないけど、すぐに誰だか分かった。
 あれは……
 ……………………

 そこで夢は途切れ、カイトはぱっちりと目を開けた。
 奇妙な夢だった。
 夢の光景がどこだったか思い返そうとしたが、目覚めた途端、夢の内容は砂が指の間からこぼれ落ちるように記憶から失われてしまった。
 そして暗い現実が舞い戻る。
 胸に感じる奇妙な重量感。そっと手をそこにやると、男にはないはずのやわらかな乳房の隆起がある。
 そして敏感な乳輪をなぞり乳首の先に触れると、そこには冷たいピアスが取り付けられている。
 顔を動かすたびに耳朶で揺れる重いピアスも、カイトに「女」を思い知らせるため取り付けられた代物だ。
 自分がいかに不自由な拘束状態にあるかを思い出してカイトは改めてこんな仕打ちをしたムラタたちを呪った。
 左右の乳首の間に取り付けられたチェーンが床のレールに接続されていて、チェーンの許す範囲以上に体を持ち上げることすらできない。
 おまけに両手首・足首もそれぞれ繋がれているので、結果的に短いレールに沿ってもぞもぞと這って移動する自由しか与えられていないことになる。

 見世物の獣に対するような仕打ちだ。
 悪態をつこうとして、そのとき初めて口が塞がっていることに気付いた。
 シリコン製と思われる細長い物体が口腔を塞いでいて、喋ることはおろか口を閉じることもできない。
 口を塞ぐ異物は、首の後ろに回されたバンドでしっかりと固定されて吐き出すこともかなわない。口の中を占めるそれは男根をかたどったディルドータイプのギャグだった。
 人工の男根を無理やりくわえさせられているのである。
 ヴヴヴヴヴヴ……
 女としての器官に挿入されたままになっていたバイブが唸り始める。
 もどかしい性的刺激にカイトは身悶えた。
 バイブはいつも突っ込まれてたものより小さめで、底の部分を残してすっぽりと膣内に潜ってしまうサイズである。その上からパンティとブルマを穿かされている。
 股間の布をずらせば、まだバイブを体外に落とすこともできるだろう。しかし手足が拘束された現状ではそれすらままならない。
「んんんん、んうーっ……」
 眠りについてからどれだけ時間が経過していたのか。バイブの電池はまだ衰える様子もない。
 なんとかバイブから逃れようとカイトは拘束された身ではかない抵抗を続けた。
 まるで男を誘うように腰をくねらしてしまい、この場に浩司たちがいたならしこたまそれを揶揄されたことだろう。
「んっ、んっ、んぅ!」
 苦し紛れに腿をすり合わせたりしても、余計な性的刺激を感じてしまうだけで徒労に終わってしまった。
 口腔を占有するギャグの横からみっともなく涎がこぼれてしまう。
 最弱に設定されたバイブの震動は、決して一気に絶頂へと運んでくれるようなものではないが、かといって無視できるほどの弱い刺激でもない。
 ある意味、煉獄のような責め苦といってもいい。とろ火で焙るようにじわじわと女の身をとろかされ、それでいてエクスタシーという解放は与えられないのだから。


 なによりカイトにとって辛いのは、下腹から伝わる異物の震動が、絶えず女として犯されている実感を伴っていることだった。
 目をつぶっていてもバイブの存在と甘ったるい快感に、女の体を実感させられてしまう。
 男だったときの身体感覚がどんどん遠くなっていくようだ。
 そっと太股をとじ合わせてみる。そうすると改めて男性自身の喪失を思い知らされ、代わりに股間の奥で挿入された異物の蠢めく感触が伝わってくる。
 腿をぴったりととじ合わせていると、バイブが震えるたびに女としての快感がじかに流れ込んでくるようだった。
 まるで女として自慰しているような気になってしまい、慌ててカイトは両脚を開いた。
 バイブが休止期に入ると、カイトはため息をついて体の力を抜いた。
 この責めはいつまで続くのだろうか。明日、ムラタたちがくるまで延々と焦らされ続けることを思ってカイトは青ざめた。
 そのとき、教室の戸を優しくノックする音がした。
 首だけで振り向くと、磨りガラスの向こうに葵らしきシルエットが見える。
「入るわね……」
 と控え目な声で告げる葵。
(来るなっ!!)
「んんっ」
 とっさに叫ぼうとして、口に押し込まれたギャグのせいで不明瞭な呻きを発してしまった。
 こんな家畜同然の姿を葵に見られてしまうことに激しい抵抗感があった。
 だがカイトの願いもむなしく、葵は戸を開けて教室へと入ってきてしまった。
「カイト君、どこ?」
 昨日までの位置にカイトがいないため、葵は首を傾げている。
(そのまま、そのまま帰ってくれぇ!)
 心の中でカイトは祈った。
 四つ足で繋がれた姿を葵の目から隠そうにも、どこにも逃げ場はない。


 きょろきょろとあたりを見回していた葵が、床に小さくうずくまるカイトの姿を見出して、近づいてきた。
「そんなとこにいたんだ」
「………………」
「ねえ、どうしたの。具合でも悪いの?」
 カイトは俯いたまま無言。
 と、そのとき休止期に入っていたバイブが活動を始めた。条件反射的にカイトは腰を浮かせてしまう。
「あっ!」
 葵が小さく叫んで口に手を当てた。
 床から体を浮かせたせいで、カイトがレールに繋がれている様子がはっきりと葵の目に映ってしまったのだ。
 カイトが喋れない状態なのも、近くで見れば一目瞭然である。
 葵は無言でカイトの受けている拘束を確認しているようだった。乳首に取り付けられたチェーンで上半身を繋ぎ止められているという屈辱的な姿が葵の前に晒されてしまった。
 男としての自我を保とうとするカイトにとっては、これ以上ないほどの辱めに他ならない。
 突き刺さる視線にカイトは悲鳴を上げた。
(見るな! 見るな! こんな姿を見ないでくれ!)
 もっとも実際に口から出たのはそれこそ獣のような言葉を為さない唸り声だけである。
「……かわいそう、カイト君」
 葵はため息をつくように呟いた。
 そうやって葵に同情の眼差しで見られることは、ある意味浩司たちに嘲られるよりもよほど辛い。
「ねえ、カイト君……」
「んー、んー!」
 さしのべられる手から逃れようとカイトは身をよじった。もっともその結果はチェーンに引っ張られて形の良い乳房が変形しただけだった。


 葵は最初、カイトの口に嵌められたペニス・ギャグを取り外そうとしたが、金具がロックされていて鍵がない限り外れない仕組みになっていた。
 胸のチェーンとレールを結ぶ小さな南京錠や、手枷・足枷も全て、葵がどうこうできるようなものではない。
「ごめんねカイト君。ねえ、私どうしたらいい?」
「…………」
 どう答えたらいいか分からず、また答えるすべもなく、ただカイトは力なく左右に首を振った。
「どこか痛かったりする?」
 この問いにもカイトは首を振った。不自由な姿勢を強要され続けていることによる体の苦痛など、精神的苦痛に比べればないも同然だった。
 葵の手が所在を求めるようにカイトの背中を何度も往復した。獣をそっとなだめるような、優しい手つき。
 その優しい触り方は、これまでずっと強引に性感を開発されてきたカイトの肉体にとって、性的な刺激となってしまった。
「ん……」
「こうしてると少しは気持ちいいの?」
 快感を押し殺そうとした呻き声を、葵は自分なりに解釈してますます積極的に触れてきた。
 カイトはしばらくの間、性的刺激を堪えながら葵に触れられるままになっていた。
 葵に触れられるたびに、不思議とボロボロになった心が少しだけ救われるような気がしたからだ。
(こいつは奇妙な女だ。オレに一度助けられたことがあるってだけで、どうしてここまで親身になったりできる?)
 もしカイトが葵の立場なら、何人もの女をいたずらに犯してきたような人間の屑に同情したりしないだろう。少なくとも自分はそんな屑だったという自覚がカイトにはある。
(いや……こいつは単に世間知らずなお嬢様で、オレのことを大して知りもしないんだろうな。そうさ、だから孤児院に寄附して善人面する大金持ちみたいに、オレを憐れんでみせることで自己満足してるんだろ!)


 自分なりの結論を見出すと、カイトは身をよじって葵の手を避けようとした。
「んんっ!?」
 不意をつかれる形で、バイブの運動が開始された。
 既に感じ始めていたカイトの体は、淫らな震動を吸収して発情した。
「んぁぁ…………」
 うっとりとした声を出してしまってカイトは自分の欲情しきった声音にぎょっとした。このままではいけないと、情欲を鎮めようとする。
 両脚をなるべく左右に開いて深呼吸し、股間の疼きを忘れようとする。
 バイブの動作はちょうど絶妙な具合だった。一気にカイトを翻弄するでなく、それでいて淫らな感覚を持続させるには充分な刺激が繰り返されるのだ。
 ヴヴヴヴヴヴ……
 カイトは両手をぎゅっと握って、己の蜜壺への刺激をやり過ごそうとした。
「この音……。もしかして」
「んー。んんーっ」
 葵が表情を変えた。バイブの音に気付いたのだ。
 音だけでなく、カイトは自覚がないままもじもじと腰を揺すっていた。
「カイト君。あそこに……その、アレを、入れられてるのね?」
「んんんぅ……」
 その場に鏡があればカイトは自分のあまりの淫靡な姿に仰天していただろう。
 四つ足で拘束された美少女が、目を潤ませ、バイブの動作に合わせて腰を突き上げ震わせ、必死で快感に耐えているのだから。
「そっか……それで、苦しそうだったんだね」
「ん……」
「今、取ってあげるからね」
 葵は素早くカイトの後ろに回り込むと、ブルマの上から手をあてがってバイブの震動を確かめた。
 バイブの基底部が布越しにぽっこりと浮き出ている。葵の指がそれを確かめた。
 カイトは大きく身をよじることもできず、されるがままだった。


 一刻も早く生殺しともいえるような刺激から解放されたいという気持ちと、バイブを埋め込まれた姿を葵に見られることを恥じる気持ち。両者がカイトの中でせめぎ合っていた。
 カイトの中の葛藤を知るはずもなく、葵はブルマの縁に手を掛けた。
「んぅーーっ!!」
 自分の意志すら明確でないまま、カイトは叫んでいた。
「すぐ済むから、動かないで」
「んんっ!」
 下半身を剥き出しにされることへの抵抗感からカイトは自然と葵の手から逃げようとしていた。
 葵は難なく追いついて、ブルマを捲りながら膝の当たりまで引きずり下ろした。
 あとは男だったカイトにとって頼りないほどにちっぽけな布きれに感じられるパンティが一枚残るだけ。それをも葵は容赦なく脱がした。
(ああ……見られ……てる……)
 カイトは喘いだ。
 女の細い指が尻の肉をかき分け、膣に差し込まれた樹脂製の異物を発見した。葵がそれに手をかけた途端、タイミング良くバイブが震えだした。
「んぁっ!」
「大丈夫。カイト君、ゆっくりと息吐いて、そこの力を抜いて。ね?」
「ん、う……」
 葵はゆっくりとバイブを引き抜こうとする。
 長い間膣に収まっていたそれは、まるで安住の地を見つけてしまったように引き抜こうとする力に抵抗していた。
 葵が力を入れて引き抜こうとするたびに、妙な具合に力が働いて膣壁がこすられて甘い疼きをもたらした。
 膣口が別な生き物のようにひくひくと動いて葵の邪魔をしているみたいだった。まるでお気に入りの玩具を手放そうとしない駄々っ子のように……。
「緊張しないで。ゆっくりと息を吸って、吐いて」
 カイトはぎこちなく頷いた。
 ここまできたら、もう葵の言うとおりにするほかなかった。


 息をゆっくりと吸って、ゆっくりと吐く……
 葵は一定のスピードでバイブを引っ張り出した。
「んぅ…………」
 温かい体液にまみれたバイブが完全に引き抜かれた瞬間、ぶるりと体が震えた。
「これでよし、と」
 葵はティッシュを床に敷いて、その上に小型のバイブを置いた。
 責め苦から解放されてカイトがほっと息をついたときだった。葵はなぜかさらにティッシュを取り出した。そして、それをカイトの股間へと運んだ。
 そのときカイトは理解した。膣内部から、男の精がとろとろと逆流していたのだ。
 ハネダによって膣内に射精されたあと、蓋をするようにバイブを差し込まれていたから、いまさらのように饐えた匂いのザーメンが垂れ落ちてくる。
 葵は何事もなかったようにカイトの股間を拭いたティッシュを折り畳んでバイブの横に重ねた。
 そうやって世話をされている間、カイトは死にたいと思うほどの屈辱を感じていた。
 と同時に体の奥でカイトの意思と関わりなしにわななく器官がある。
 ひくっ……ひくっ……
「!」
 女の体になって何日も経ついまでは、カイトにもはっきりと自覚できた。雌の器官が物欲しそうにひくついている……!
 一度自覚してしまうと、体の火照りは誤魔化しようがなくなった。
 中途半端にたかぶらされた女体が、行き着く先まで行くことを求めているのだった。
 女の体の本能で、完全に無意識のうちにカイトは両腿をすり合わせていた。
 腿をぴったりと合わせてこきざみに擦ることで快感を得ることができる。もどかしく、遠回りな欲望の解放ではあるが。
 女体という器に囚われて、カイトはどうしようもなく雌として発情していた。目が潤み、触られてもいないのに乳首がツンと尖った。
 葵はすぐにカイトの様子に勘づいたようだった。


「そっか……ずっとあんなモノ入れられてたんだもの。苦しかったよね? いま楽にしてあげるから」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 カイトの花弁にまとわりついた蜜を指にまぶすと、そっとその指を秘裂の中へと挿し入れてきた。
 ギャグをかまされていなかったら、カイトは大声で悲鳴をあげていただろう。
 完全に予想外の葵の行動だった。
「んぅぅぅぅ……」
 拘束された身でよたよたと這って逃げる。もっともカイトに許された自由はレール上のほんの数十センチに過ぎない。すぐにレールの端で身動きがとれなくなった。
 カイトの尻をまるで物乞いするように葵に向けて突き出されている。
 葵はやすやすともう一度指を挿入してきた。
 一度、二度指が出し入れされると、カイトは目の前で星が飛び交うほどの快感に直撃された。
 葵はやがてもう一本指を増やして、繊細な動きでカイトの体内の門をノックした。
「こうしないと……いまのままじゃ、つらすぎるでしょ?」
 葵による愛撫は続いた。
 カイトは一切抵抗できず、ただただ黙って快感に打ち震えるだけだった。
 真っ白になっていく頭の片隅でカイトは、大人しそうな顔をした少女の指先一つでここまで翻弄されるのかと愕然としていた。
 指が出し入れされるたびに無尽蔵のように蜜が溢れた。ちかちかと目が眩む。
 細くしなやかな指がつぷりと差し込まれ、その指の腹で蜜壺の壁がこそりと掻かれる。
 刺激される場所がだんだん核心に近づいているようだった。
「そろそろ、いいかな」
 ぞろり。
 葵の指先がくねるように動いて、いわゆるGスポットと呼ばれる部位を掻きだした。
「んぅっ、んぅっ、んぅっ!!」
 自分でも意味不明な切羽詰まった声で反応してしまう。
 後戻りのきかないジェットコースターに乗せられたようなものだった。


 あとはひたすら滑り落ちていくだけだった。
 無心に指を動かし続ける葵。
 カイトは……
 真っ白な光に包まれて女としてのエクスタシーを迎えた。
 何度も膣が収縮して挿入されたモノをしめつけようとする。それは本来、男のペニスを刺激して精を絞り出そうとする女体の機能だ。
 カイトが深いエクスタシーに達したのを見て取ると、ようやく葵は指を抜いた。
 カイトはうつぶせに倒れ、肺にたまっていた空気を弱々しく吐き出した。いまだ体と心に浮遊感が残っている。
 もたらされた恍惚感の中で、カイトは自分が狂ったように甲高い声で啼いていることに気付いた。犯されて悦びよがる女の声だった。
 カイトがまだぐったりとしているうちに葵が濡れた秘部を拭いて、ブルマを穿かせてくれた。 カイトは小さく鼻を鳴らして、そのことに謝意を示した。
 時間が経つうちに、飛びかけていた意識がようよう戻ってくる。
 ずっと体の中に溜まっていたもやもやは消し飛んでいて、すっきりとした気分になった。不本意ではあったが、葵の処置は効果があったのだ。
 葵はカイトの回復を待ってずっと傍らに腰を屈めていた。
 顔をあげると思いがけず葵と間近で目があってしまい、カイトは顔を逸らした。
 葵のしたことが結果的に間違ってなかったとしても、ことの直後に彼女の顔を正視する気にはなれなかった。
「カイト君は女の子のこと嫌い?」
 不意に彼女にそう訪ねられたとき、カイトはなんら答えを持ち合わせてなかった。
「女の子になった自分を嫌いにならないで。それだとこの先、カイト君自身が余計つらくなってしまうから……」
 葵の真意が掴めず、カイトは曖昧に首を振った。
「私は女の子になったカイト君を好きでいられるから」
 そう言って葵はカイトに寄り添うようにひざまずき、チェーンを気づかいながらカイトを抱きしめた。


 女同士で頬がこすれた。桃のようないい匂いがするとカイトは思った。桃よりもまだ瑞々しく滑らかな肌が触れ合うと、純粋に心地が良かった。
 カイトの心の中ではずっと一つの疑問が堂々巡りをしていた。
(どうしてこの女は、オレを好きだなんて言えるんだ? そんな奴は偽善者か、頭がおかしいだけなんじゃないのか……?)
 その疑問に答えが与えられるのはずっと後のことになる。
 葵の抱擁はカイトが戸惑うほどに長く続いた。
 やがて体を離した葵は、なにげない手つきでカイトの乳房に触れた。
「んぁっ!?」
 愛撫というよりは医師の触診のように、乳房の下端から乳首へ向かって触れていく。
 二、三度それを繰り返すと、葵は呟いた。
「少し張りがあるみたい。近いかもね」
「んんう……?」
 何が、と尋ねようとしたそのニュアンスは葵に伝わったようだった。
 一瞬口ごもってから葵は口にした。
「……生理」
 ぞわっと全身の肌が粟立つようだった。
 喉元に刃を突きつけられる感覚にも似ていた。もうすぐお前に生理が訪れる、と宣告されるのは。
 すっと葵が立ち上がる。
「女の子である以上、それは避けられないものだから……」
「…………!」
「だから、それは合図になってるの。フェーズ2へ移行する」
「?????」
 どう反応していいか分からないでいるうちに葵はいつものように「また来るから」と言い残して立ち去っていった。
 彼女の言葉の真意は分からないままだった。
(クソッ! 考えても頭が混乱しやがるばかりだ!)
 カイトは考えることを放棄し、拘束の範囲内で身を横たえた。
 体の中に仄かに残る温もりの正体は、セックスの名残ではなく抱擁のときに伝わってきた葵の体温だった。



「立てよ、カイト」
 いつものようにムラタの監視の下、カイトへの責めが与えられる。
 古びた教室のひび割れた黒板には『祝! カイトちゃんの初潮まであと1日』と大書された紙が貼られ、その上から日数の数字が貼り付けられている。
 毎朝測定されるデータをもとにムラタが予想したカイトの初潮は明日だった。
「おまえさあ、特別に性教育の授業受けたんだろ? ナプキンの付け方とかちゃんと覚えたか?」
 そう言って浩司はお気に入りの玩具のようにカイトの胸を下からたぷたぷと持ち上げた。
 カイトは赤くなって、胸をかばった。
 性教育のビデオは強制的に見せられていた。ムラタはわざわざそのためにテレビモニターを教室に運んでこさせている。
 小学生女子用のビデオ教材で、女性の二次性徴から生理の仕組み、生理用品の使い方、さらには避妊についての考え方まで、教え込まれていた。
 ムラタがそばにいてその場でテストされ、答えられなかったり間違ったりすると即座に杭の責め具で貫かれるという罰が待っていた。否応なくビデオの内容を頭に叩きこまないわけにはいかなかった。
「恥ずかしがってるってことは、どうやら色々学習したみたいじゃん。オレたちさ、介意とちゃんの初潮を祝うために特別サービスで赤飯のパック買ってあるんだぜ。楽しみにしててくれよな」
「ゴチャゴチャうるさい!」
 カイトは羞恥心を隠すように大声で叫んだ。
 イライラする気分を自分でも抑えにくくなってることにカイトは気付いてた。ムラタに教えられた通りだ。
『生理中や直前の時期などに、情緒不安定に陥ることがある』
 それがいまカイトの身に起きている。どんなに女にされたことを拒もうとしても、体のほうは忠実に女としての生理活動を続けていく。自分自身の体が「女であること」を無言のうちに突きつけてくる。
「なにぼうっとしてんだ。おトイレの時間だろ、カイトちゃん」

「放せよ。便所くらい一人でいける」
「堅いことゆーなって。俺らがエスコートしてやっから遠慮すんなよ」
 いつものように服の下に手を入れられて胸のチェーンを引っ張られると思ったカイトはとっさに両手を胸の前に引きつけてガードした。すると、浩司は舌打ちして、代わりに首輪のほうを掴んだ。
「あうっ!」
 グイと引っ張られると踏ん張ろうとしてもあっさり力負けして引き寄せられてしまう。
 女の華奢な体では、男の腕力の前にまるで歯が立たない。どんな意に染まないことでも、腕力で強制されてしまいそうだ。
 首輪で引き回されて連れて行かれた先は、男子トイレだった。
 ここしばらくは毎度女子トイレで用を足すことを強要されて、女であることを思い知らされてきたというのに。
 トイレ内に入ると、カイトは個室を開けようとした。
 もはや小用であっても、個室のほうへ向かう癖がついてた。しょせんいまのカイトは立って用を足すことなどできないのだから。
 ところが、個室の戸が開かない。よく見ると、全ての個室の戸に南京錠が掛けられていて、入れないようになっている。
「……どういうつもりだ?」
「別に。先にションベン済ませなよ。したら、個室の鍵開けてやるから」
 わけのわからない命令にカイトは戸惑った。
 女の体の構造で立って放尿することがいかにままならないか、もう身に沁みて知っている。
 またいつかのようにカイトが立ち小便できずに尿を漏らしてしまうのを観察するつもりなのか……。
 尿意がこみあげてきて、カイトはわけがわからないままブルマをずらした。
 しかたなく腰を屈めて朝顔との距離を近づけようとすると、「待った」と声をかけられ、背後から股の間に指を突っ込まれた。
「あっ、ひうっ、なにする!」
「すっかり女の子のオシッコが身に付いちゃってまあ……でもな、今日は立ってやってもらうよ、カイトちゃん。昔みたいに男同士の連れションといこうや」


 花弁の間に割り入れられた指をクイと持ち上げられ、カイトは小さく叫んで立ち上がった。
 浩司の指がぬるんと膣の中に入ってくる。それだけでカイトの体は男を受け入れる態勢になって、蜜を分泌し始めた。
 浩司と一緒にいた少年たちは心配そうに浩司に詰め寄った。
「オイ、消毒してないのに指突っ込んだりして、またムラタに怒られても知らないぞ?」
「そ、そうだな。いまのは黙っててくれ」
「黙っててもいいけど、代わりにこの調教はボクにやらせてくれよ。なんだか最近、浩司ばっか調教役でずるいよ」
「はぁ? おまえらだってローテーションでこいつの穴にチンポ突っ込んでんだろ。文句言うなよ」
「でも……」
「カイトをいたぶるのは俺の役目だ。お前らは黙って手伝ってりゃいいんだよ! おこぼれに預かって童貞捨てれたんだ、おとなしく見てろ!」
 不満そうな少年は浩司に胸ぐらを掴まれて黙ってしまった。
 元々カイトの被害者だった者が集まってるのだが、気弱ないじめられっ子タイプが多い中で浩司はまともにカイトと喧嘩をして叩きのめされたクチだった。当然、他の少年達に睨みがきく。
「お待たせカイトちゃん。ションベンしちゃいなよ」
「そんな……こぼれちゃうだろ……」
「おっとと。そうかぁ、カイトちゃんチンポないもんなぁ」
 浩司はこれみよがしにカイトの隣で朝顔に向かって放尿した。カイトは尿意を催しているのに出すものを出せずもじもじとしている。
「へへへ、いいモンがあるんだ。コレ使いなよ」
 浩司は透明なシリコン製の張り型を取りだした。ペニスの根本にあたる部分が漏斗状になってて、その中央から管の先端が飛び出している。


 その意図は明らかだった。
 管の部分を尿道口にさしこんで使えというのだ。
「こんなのいるか。もう、普通にやらせろよ!」
「『私女の子だからしゃがんで用を足させて』って可愛く言ったら許してあげるけど? 自分が身も心も女の子だって認める?」
「オレはっ……オレは男だ」
「じゃあ、証明してみせないとな!」
 カイトは手渡された模造品のペニスを見た。そんなものを使うのは最悪の屈辱だ。かといって、もう我慢が辛いほど尿意が差し迫っている。
「くっ!」
 カイトはやむにやまれず模造ペニスを握りしめた。
 もう片方の手で股間をまさぐり、可憐なサーモンピンクをした花弁を自らの指で押し開いた。
 おお、とどよめいてギャラリーの少年たちがカイトの股間に顔を寄せる。
(見られてる! ああっ、見られてる!)
 羞恥心で紅潮しながらカイトは模造ペニスの管を女性器にあてがった。
 女の体にされてから、そこの部分をまともに自分で確認したことはない。いままでの排尿では、正確にどこの部位から尿が出てるかなど気にしたこともなかった。
 指でまさぐり、穴の部分に管を入れた。
(あ……)
 カイトは誤りを悟った。
 挿入のときの感触が、いままでバイブやペニスを突っ込まれたときと同じだったのだ。ということは尿道口ではない。
「ん〜。そこ、違うんじゃないのォ? カイトちゃんがソコ好きなのは知ってるけど」
 ニヤニヤしながら浩司が指摘する。
 カイトはムラタから受けた性教育の特別授業を思い出した。女性器の構造についても無理やり図解を見せられていた。


 膣から真っ直ぐ上に指を這わせると、もうひとつの穴があった。触れた瞬間、本能的にそこだ、と分かった。
「そうそう。オシッコの穴はそこじゃん」
「う、うるさいっ!」
 管の位置をずらして尿道口へとさしこんだ。膣に挿入されるときと違う奇妙な感触にカイトはブルリと震えた。
 完全に模造ペニスを所定の位置にセットしてしまうと、まるで股間に男のモノが戻ったかのようだった。ペニスを掴んでいる懐かしい感覚に不覚にも涙してしまいそうになる。
 だが、カイトの姿は浩司たちから見れば、もっとエロティックなものだった。下半身をはだけた美少女がシリコン製のペニスを股間にあてがって感動しているのだから。
 束の間男に戻った錯覚に浸っていたカイトだったが、突然後ろから胸を揉まれて現実に引き戻された。
 後ろから体を密着させた浩司に胸を鷲掴みにされ、いやらしくこね回された。カイトに自分の立場を教え込むように執拗に胸を弄られる。
 胸の中に敏感な芯でもあるように、乱暴に揉まれるとジンジンと痛みを感じてしまう。
「くふぅ……ああっ!?」
 チョロチョロと尿が流れ出した。
 女の体だと、ほんの少しの刺激だけで尿が漏れてしまう。一度放尿が始まってしまうと自分の意志で止めることはできない。
 黄色い液体がシリコンの模造ペニスを通って放出された。
 その間にも浩司は気持ちよさそうにカイトの胸をもみしだく。揉みたくりながら、ときおり布越しに乳首のあたりをつつき、ピアスとチェーンの存在をカイトに確認させようとする。
「やめろォ……人の胸、さわんな。アンッ!」
「チンコに集中しとけよ。こぼしちまんぜ?」
 胸を揉み回す手を休ませず、浩司は耳元で囁いた。耳元の声にカイトは性的な快感を覚えてしまった。
 胸を掴んだ指を固定し、ブルブルと震わせる責めは快感を増幅させた。


 浩司によって弄ばれたまま、カイトは排尿を終えた。
「そのシリコン・ペニスは自分で洗っとけよ。今後も使うかもしんないからな!」
 股間からシリコン・ペニスを引き抜くと、尿とは違うぬめった液でシリコンと股間の間に糸が引いた。
 いっときの戯れのために持たされた模造品のペニスだったが、それを取り外して再び両脚の間がツルンと何もなくなってしまうと、改めて女の身体を与えられたとを自覚せざるを得ない。
 トイレの時間が終わると、カイトは今日セックスの権利を持つ少年に股を開かされた。
 相手の少年は、製薬会社社長の息子で、カイトにとっては「財布」同然の存在だった。髪を掴んで頬を叩くと、叩いた回数だけ万札が出てくる。そういう相手だった。
 その少年にいまはカイトが性処理係として奉仕している。
 包茎のペニスを手でしごいて勃たせると、ゴムをかぶせていく。
 ゴムの利用は、ムラタからの指示でもあった。また、知りたくもなかった知識で、カイトはいまの自分が「妊娠」の可能性すらあることを、実感は伴わないものの頭では理解していた。
 いつものように顔をギラギラとさせた少年がカイトを犯し、それを他の者たちが見物した。
 ひ弱な少年にも腕力で勝てなくなったカイトはただひたすら嵐が過ぎるのを待つように少年の未熟な腰使いに身を任せ、犯された。
 そして、これまたいつものように授業時間が始まると彼らは引きあげていく。
 一人になって、カイトは自分の胸をそっとさわってみた。
 自分の胸なので気を付けて、ゆっくりと優しく触った。乳房がいままでより腫れぼったいようだ。乳首を少し触るだけでいやな痛さが残る。
「くそ、これが胸が張ってるってやつなのか……」
 たまたま目に入った黒板には、『祝! 初潮まであと1日』とある。それが正しいとしたら、明日には生理がきてしまうのだろう。そして体の変調はそれを裏付けてる。
『君の体は男の精を受け入れて子を孕むための準備を始めてるんだ。君の心とは関係なくね』
 ムラタが口にしていたおぞましい言葉だ。


 カイトは腹を押さえてうずくまった。
「孕むための準備だって? 悪い冗談だ! やめろ、やめてくれ!」
 腹の奥で子宮のベッドに眠る卵子の存在が感じられるようで、恐ろしかった。これから毎月、毎月、カイトの体が子を孕むための準備を繰り返すのかと思うと……。
「オレは男でいたいんだ……」
 地に向かってつぶやいたカイトの声は震えていた。
 その晩、訪れた葵にカイトは自分の体に生理がいつくるのかと尋ねた。
「そのときがくれば分かるから」
 としか葵は答えなかった。またそれ以上分かるはずもなかったろう。
 カイトはなおも葵に食い下がろうとして、不意にある違和感を覚えた。
 葵がいつも漂わせてるシャンプーと石鹸の清潔そうな香りに混じって、違う匂いを感じ取ったのだ。
 海……潮……違う、これは!
「血……の匂い?」
 不思議そうにカイトはつぶやいた。
 するとなぜか葵が恥じ入ったような素振りをみせた。
「やだ、カイト君……」
「なんでだ? いま一瞬、たしかに血の匂いがしたんだ」
「それは、その……」
「おまえも感じたか?」
「それね、たぶん私。いま、生理の最中だから……」
 言いにくそうに葵は告げる。カイトは頭をブン殴られたような衝撃を受けた。
「昨日の夜から始まったの。やっぱり女の子同士だと分かっちゃうんだね」
「そんな……」
 いままで一度として匂いで誰かの生理が分かったことなどない。女という同族になったことで、生理の匂いに敏感になった。そういうことだというのか。


「カイト君の体も生理前でしょ。そういうときって、女の子は血の匂いとかにすっごく敏感になるの。女の子同士で一緒に暮らしてると、生理が伝染っちゃったりするっていうしね……きゃっ!?」
 カイトは乱暴に葵の胸をつかんで、ねじった。
 自分が浩司にやられたように葵の胸のふくらみをこねあげる。大きさこそカイトの胸よりこぶりだが、ピンと張りのある胸だ。
「や、やだ、カイト君? どうしたの、急に!」
「忘れたのか? オレは男なんだぜ。女を見りゃ、こうして自分のものにしたくなるんなだよ!」
 セリフこそ男そのものだが、細く甲高い声でカイトは言う。
 葵のブラウスのボタンを引きちぎると、その下のブラをずらし、カイトは荒々しく葵の胸にむしゃぶりついた。乳首を口に含んで、本能的に女が感じるようなやりかたで口中転がした。
「い、いやぁぁっ!」
 葵は必死でカイトを押しやると、胸を隠して二、三歩あとずさった。
「……行けよ!」
 カイトは叫んだ。
「カイト君、どうしてこんなことするの?」
「早く行けよ! オレに押し倒されたいか? 早くオレの前から消えやがれっ!」
 自分の口調がヒステリックになっていくのをカイトは抑えられなかった。
「ごめんね……」
 なぜか謝罪の言葉を口にすると、葵は追い立てられるような足取りで教室を出ていった。
 葵を追い出すと、カイトはそうっと椅子に腰を下ろした。乱暴に座っただけで生理がきてしまうような恐怖感がある。
 自然とため息が出てきた。自分の取り乱した姿に。
 葵がそばにいるだけで、自分まで彼女の同族と化していくような気がした。彼女と二人でいるのが「女同士」なのだと認めたくなかった。その心理のために葵を追い出したのだ。
「はぁ……。なんでオレはオレなのに、体だけこんなに『女』になってくんだ……」
 窓ガラスには、怯えた少女の姿が映っていた。



 それは早朝だった。
 といっても閉めきられた旧校舎の中だ。ただ、小さな隙間から差し込む陽光の角度で早朝と分かるだけである。
 カイトは夢うつつの状態で、下腹に鉛でも詰められたような不快感を味わっていた。
 寝苦しくなって寝返りをうったときだった。
 ヌルリ……
 生温かいモノを股間に感じた。
 漏らした覚えもないのに下痢でもしてしまったかのような感覚。
 一瞬にしてその正体を悟ったカイトは跳ね起きた。
 いつものように起き上がるだけで耳のピアスと胸のふくらみが揺れる。
 それに加えていまは、股間にヌルリとしたものを感じる。
 何かの間違いであってくれと祈りつつカイトはパンツを降ろしてみた。
「うっ……」
 パンツにはっきりとついた赤いシミ。それを見てカイトは言葉を失ってしまった。
 そこへ再び内臓を締め付けられるような痛みがあって、しばらくしてトロトロと股間から血が出て内腿に伝った。
 排泄行為と違って、その出血はカイトの意志では全くコントロールできなかった。一方的にただ、流れ出てくる。
 その場にあったポケットティッシュをむしり取って、カイトは内腿の血をぬぐった。
 もう一枚ティッシュをとって、股の間に当てた。しばらくするとティッシュに赤いシミが広がっていった。
 その赤い色と生臭い血の匂いは、誤魔化しようのない現実だ。
 カイトに、いま女としての生理が訪れたのである。
 あれほど嫌がりながら、ムラタの予言通りの日程で生理が始まってしまった。仮にも自分の体なのにカイトよりムラタのほうがこの女体を知悉している。
 ……そう考えると、まるでムラタの掌で女としての肉体を弄ばれているようでぞっとする。
 カイトは心の底から男に戻りたいと思った。
 血を拭くために女性器にティッシュを当ててると、自然とその構造が頭に入ってくる。外陰唇に小陰唇、それらを広げたところにある膣口……。

 小陰唇……ラビアに触れると、それが以前よりも腫れぼったく感じた。特別授業で覚えさせられた知識の通り、生理期間中に見られる症状の一つだ。
 女陰から流れ出てくる血を指ですくうと、自分が女として生かされている事実をこれ以上ないほどに実感させられてしまう。
 男だったときは想像したことすらなかった。
 女の身というのが、こんなにも頼りなく傷つきやすいものだとは。
 細い腕。か弱いからだ。その頼りなさは、女の身になってみてはじめて実感できるものだった。
 生理による出血は、しばらく止まったように見えて、しばらくすると不意にまたヌルリと流れ落ちてくる。
 出血量がさほど多くないのが救いだが、それでも初潮でしかもまだ一日目である。
 カイトは自分が生理用品を使っている光景を想像して身震いがする思いだった。そして、数時間後にはそれが現実のものとなる。
 
 ムラタが朝礼前の時間に訪れたとき、カイトは廃教室の窓際で所在なさそうに立っていた。
 座ったり何かによりかかったりすると、生理の出血が余計衣服に付きそうで、立っているしかなかったのだ。
 もうティッシュは使い切っていて、仕方なくパンティに血が染みこむままにしていた。
 ムラタは真っ直ぐカイトのもとへと歩み寄ってくる。カイトはやましいことでもあるみたいに目を逸らした。
 生理が訪れていることをムラタに知られたくなかった。
「私をあまり手間取らせないように。君が自分から協力すれば、毎朝の身体チェックはよほど楽になるんですがね」
「都合のいいことを言うな」
 カイトは首輪の鎖が許す限りムラタから離れ、机を盾にした。
「オレを女にして、いたぶって、あんたに何の得がある!」
「自分が女の子だと認めるんですか?」
「話を逸らすな。オレが質問してるんだ」


「それを君が知ってどうするんですか。事情を話せば君が進んで協力してくれるとでも?」
「オレには知る権利があるはずだ」
「ないね。君にはいまや人権すらないんですよ。私の胸先三寸で君の運命は決まるんです」
「絶対思い通りになんて、なってやらねぇ!」
「そうですか。ところで、私の見立てでは今日にも君の月経周期が始まるはずですが。もしかしたらもう初潮が訪れてるんじゃないですか?」
 ムラタの言葉に呼応するように子宮がわなないて、ヌルリと粘度の高い血が股間に落ちてきた。
 無力感を覚えながら、カイトは虚勢を張った。
「生理なんて一生来るか! 余計な心配すんな!」
「生理が来ないと次のステップに進めなくて困ってしまいますが……」
 ムラタはすたすたとカイトに近づいてきた。
 机を挟んで対峙したところでムラタは腕を組んだ。
 見下した冷たい目でムラタが命じる。
「下半身の着衣を脱ぎなさい」
「いやだ!」
 カイトは泣きそうになって叫んだ。
「手荒なことをしてあなたを怪我させたくないんです。私の命令に従いなさい」
「オレが憎いなら、手荒なことでもなんでもすりゃいいだろ。オレが壊れたってあんたは少しも困らないんだろうよ!」
 そのときカイトはムラタの目線に気付いた。じっとカイトの内腿を見ている。
 赤茶けた色の血が一筋、つうっと腿を滑り落ちるところだった。
(見られた……!)
 とっさに手でこすっても、血の跡が白い太股に残った。
 ムラタの眼はレンズ越しに鋭くそれを捉えていた。


「******!」
「……あ?」
 ムラタは聞き取れない言葉で何かを口走った。英語だったのかもしれないが、カイトには判別できない。もっと響きの違う異国の言葉のようでもあった。
「……見せたまえ。まさか怪我などではないでしょうね!?」
「いや、見せない!」
「君と議論するつもりはありません」
 ムラタは白衣の内側から小型の拳銃のようなものを取りだした。ぎょっとするカイトだったが、ムラタの拳銃には、銃身がついてなかった。
 ムラタは拳銃のような物体をカイトの首筋にあてがうと、ためらいなく引き金をひいた。
 パシュッ!
 ほんのかすかな音がしただけで痛みはまるでなかった。
 代わりに、猛烈な脱力感がカイトを襲った。
「てめぇ……マスイを……」
 呂律も回らなくなり、後ろ向きに倒れ込みそうになったところをムラタが抱きかかえた。
「本当は無闇に薬品を用いたくないんですがね……」
 カイトの意識はすでにぼやけ始めていて、ムラタが何を言ってるのかもよく分からなかった。
 するすると下半身の着衣が脱がされていく。
 パンティは生理の血でべったりと汚れていた。ムラタはそれを確認すると、今度は器具を使ってカイトの膣を調べていく。
「良かった。どうやら、間違いなく初潮のようですね」
「うう……」
 悔しくてカイトは涙を流した。
(こいつに予告された通り……生理がくるなんて……)
 まとまった思考もできなくなって、すぐにカイトは眠ってしまった。
 寝息を立てるカイトを、ムラタは丁重にマットレスに寝かした。


 ムラタは携帯を取り出すと、研究所へと電話をかけた。
「……ええ、私です。予定通りの進行でした。そちらでの受け入れ準備を整えておいて下さい。特にリングの調整。頼みましたよ」
 携帯をしまうと、ムラタは改めてカイトの寝顔を見た。
「……おまえはいまどんな夢を見ている?」
 そっと愛おしそうな手つきでカイトの顔にかかった前髪をかきわける。
 カイトに意識があったなら、全身に鳥肌を立てて逃げ出していただろう。
 やがて顔をあげたムラタの口元が奇妙に歪んだ。
 ひとしきり発作のような哄笑がおこって、止んだ。
「どんな悪夢よりもどんな淫夢よりもなお苛酷な現実を君には送りますよ。せいぜい力一杯あがいてくださいね」


 カイトが薬品による眠りから目を覚ましたとき、ムラタの姿はもうなかった。
 そばに置かれていた紙袋に替えの下着と、生理用品が入っていた。
 起きて確認すると、マットレスとの間に挟まれてたタオルに、股間からの血がシミを作っていて、カイトはため息をついた。
 どんなに努力したところで生理による出血を自分の意志で止めることはできない。下半身が血塗れになりたくなければ、生理用品を使う以外に選択肢はない。
 紙袋にはタンポンとナプキンが両方入っていた。
 特別授業で、両者の違いについては習っている。
 カイトは迷わずナプキンのほうをとった。タンポンは自分のあそこに挿入しなければいけないという点で敬遠したかった。
 ナプキンを包装から取りだし、説明書きの通りパンティに取り付けた。実体験するのは初めてなので取り付け位置に関しては不安だったが、とりあえずナプキン付きのパンティを穿いてみた。
 膣の位置に合わせて二、三度ナプキンの場所の微調整をした。ナプキンに赤錆のような血の跡が女性器の形をスタンプしたみたいに残るのがリアルだった。
 ナプキンをつけた上で下着を身につけると、いままで感じていた下半身の気持ち悪さはおおかた解消した。
 代わりに、股間に感じるナプキンの感触によって常時、自分が生理を迎えた女だということを意識させられることにもなる。向こう何日か、昨日の葵と同じように血の匂いを振りまいて生活することになるのだ。
 ナプキンの包装紙をくず入れにほうるという自分の行為に、カイトは強い違和感を覚えた。あまりにも荒唐無稽だとカイトは思った。自分がナプキンを使っているなどと。
 無意識のうちに胸のふくらみの下側を手の甲でさすっていた。
 このところ身に付いた癖だった。痛む箇所を自ら刺激してしまうように、女にされてしまった自分の肉体を再確認するように乳房を触るのが癖になってしまったのだ。
 自分の胸にある奇妙な立体感。それを触って確かめずにはいられなかった。
 ぴっちりとしたブルマを腰まで上げ背筋を伸ばすと形のいい胸が誇らしげに突き出る。鏡代わりの窓ガラスに自分の姿を映すと手足のすらりと長いスタイル抜群の美少女がそこにいる。


 カイトが腰に手を当てると、鏡の中の美少女も同じポーズをとる。
 鏡の美少女が自らの胸に触れると、カイトの手にも乳房の感触が伝わってくる。
 以前はこうして鏡の向こうに美少女を見ていると、自然にペニスの幻覚が生じていた。
 ところが今は股間にナプキンが当たっているためか、幻覚でもそこにペニスを感じることはできなかった。
 目を瞑っても自分の体を男としてイメージできない。いつのまにか自己イメージがかつての自分ではなく少女としてのいまの外見に引きずられている。
 女を犯している自分の姿よりも、男によって犯されている自分の姿のほうが強くイメージできてしまう。
「反吐が出そうだ……」
 女らしい声には不似合いなセリフを呟く。
 しくしくと下腹部が痛んできて、カイトはマットレスの上で体育座りした。
 また少し血が下ったようだがナプキンのおかげであまり意識することはない。腹に手を当て、自分の膝に抱きつくような格好で休んだ。
 その姿勢では膝で乳房がつぶれてしまうが、もうそういった感触で驚くことはなかった。不本意であっても女体の身体感覚には馴れつつある。
「……月経期は3〜7日で個人差がある、だったか? ちくしょう、最悪こんなのがあと一週間も続くのかよォ。あン!」
 そばにあったナプキンの箱を八つ当たりで蹴飛ばした。とっさに黄色い声が口をついてしまうのを自分でもどうしようもできない。
 ときおりやってくる下腹部の痛みを散らしながら時間が過ぎていった。
 一時間ほどして、ナプキンを取り替えた。
 本来はもっと長く使えるはずだが、初めてのナプキンなので気になって早めに取り替えることにしたのである。
 使用済みのナプキンは説明書の通りに折り畳んで元の袋に入れて捨てた。
 新しいナプキンをパンティに固定して身につける。まるでオムツでもしてるみたいな屈辱感があるが、不随意にアソコから血が出てしまうので、選択の余地はない。
 カイトは女にとっての生理用品のありがたみをたった一日で、いや初潮が訪れて半日と経たずに身に沁みて学んだ。


 そうこうしている間に、昼休み。待ちかねたようにカイトのことを知る男子生徒が旧校舎へと姿を見せる。
 坊主頭の小柄な少年が今日、カイトを抱く順番だった。坊主頭なのは以前カイトの手で髪に大量の接着剤をぶちまけられた後遺症である。
「カイト君。君は僕にひどいことをした罰を受けなくちゃ駄目なんだ!」
「うわ、よせ、近づくな! 今日は絶対駄目なんだ!」
 鼻面をカイトに叩かれて少年はたじたじと下がった。
 カイトは焦っていた。いま下を脱がされるのだけは嫌だった。
「まあ待てよ。カイトちゃん、今日はやけに抵抗するなァ」
 浩司は意味ありげにチラリと黒板を見た。「祝! 初潮まであと1日」の張り紙がそこにはある
「そういやあ、今日が予定日じゃん? もしかして……あの日? カイトちゃん?」
「死ね、この色ボケ野郎!」
「おやぁ図星だった? 言っとくけどオレを色ボケにさせてんのはカイトちゃん、あんたのそのお色気満点のカラダなんだぜ」
「見るなよ! テメェ、オレの舎弟だったくせに……」
「フゥ。やっぱまだまだ男の心が強いんだなぁ。もうちょっとしおらしくなってならないといいセックス人形になれないぜ?」
 浩司がパチリと指を鳴らすと、二人の少年がカイトを取り押さえ、例のレールのところに運んで胸のチェーンをそこに繋いだ。
 四つん這いの格好でカイトの腰が少年達の眼前に突き出される。カイトの力ではそれをどうしようもない。
 誰かの手がカイトの尻を撫で回した。
「尻もいい形してるよな。おまけにピッタリしたブルマ穿いて、女子高生モノのAVだよ、まるで」
「おまえそんなAV借りてんの?」
「いや、最近は借りてないよ。カイトちゃんが性欲の捌け口になってくれるから」
「そりゃそうだよな。カイトがいりゃオレたち、AVいらずじゃん。ハハハハ……」

 ひとしきりカイトの尻を撫でたり揉んだりした後、彼らは本来の作業に取りかかった。
「やめろォ! 脱がすな! 脱がさないでくれ!」
 カイトは青くなって懇願する。
 あまりにも一方的な立場に立たされ、虚勢を張るだけの余裕もなかった。
「ご開帳〜♪」
 浩司は言うなり、ブルマに手をかけた。
「やめろってば!」
 繋がれたままどこにも逃げられず身悶えするカイト。
 ゆっくりとブルマがずり下げられていく……
 やがて……
 一斉に少年達が感嘆のため息をもらした。カイトは真っ赤になって顔を床に埋めた。
 カイトのつけていたナプキンは白日のもとにさらされ、剥き出しの股間と一緒に少年達に凝視されていた。
「「せーの。女の子の日おめでとう、カイトちゃん!!」」
 事前に打ち合わせをしていたのだろう。彼らは声を揃えて偽りの祝いの言葉を口にした。それを耳にしたカイトが屈辱に身を切り刻まれるのを十分に知った上で。
 耳を塞ごうとすると、腕を掴まれ、耳元で囁かれた。
「おめでとさん。これであんたさ、ガキを産めるカラダになったわけだね。よっ、オトナの女!」
「このゲス野郎どもぉ……」
「アハハハハ。カイトのやつ、涙目になってやんの! やっぱ女の子になると涙腺ゆるくなっちゃうの?」
 つつぅ……
 新たな生理の血がひとすじ、内腿を伝い落ちていった。
「おおスゲー。ほんとに血が出てる! オレ、女の生理って初めて見たよ」
「ナプキンで拭いてみろよ」
「おっ吸収した吸収した。でもCMと違って血糊みたいなのは表面に残るんだな……」
「うわあんま人の顔に近づけんなよ。グロいじゃねーか!」
 カイトの生理は完全に玩具にされていた。


 カイトは泣き声にならないよう腹に力を入れて口を開いた。
「もういいだろ……元に戻せよ」
「は?」
 と浩司はとぼけた。
「パンツとソレ、元に戻せよ!」
「ソレって、何?」
 ニヤニヤと意地悪く言葉尻をとらえる浩司。カイトは渋々「……ナプキン」と口にした。
「そうだよな。カイトは生理期間中の女の子だもんな。ムラタ先生にも優しくしてやれって言われてるよ」
「余計なことはいい。早く!」
「で・も・さ」
 ぴしゃん、と浩司は裸の尻を叩く。
「くっ!」
 ぴしゃぴしゃと叩いてヒップが揺れる様を楽しんでるのだ。
「このまま使い古しのナプキンをあてがうのも気持ち悪いだろ?」
 浩司はカイトの使っていたナプキンをぽいと屑籠に投げ込んでしまった。
「誰かカイトをレールから外してやって」
 浩司の指示でカイトは床に這いつくばった姿勢からは解放された。もっとも首輪に紐をつけられているので大して変わらない。
「まず、このナプキン1ダースは没収だ」
 ガサッ! 浩司はナプキンの大袋を廊下のほうに向かって蹴り出した。
「なにしやがる!」
「おっと。オンナノコがいつまでもオマンコおっぴろげてるもんじゃないぜ」
「う……」
 女としての本能が、その部分は男の視線から隠さないと危険だと告げてくる。カイトは思わず内股になって秘部を手で隠していた。
 パンティを穿きたいのだが、そうすると生理で汚れてしまう。
「浩司! ナ……ナプキン返せよ……」
「没収だって言ったろ。代わりにアレがあるじゃん」


「アレって……あっ! あ、あれは……」
「嫌ならそのままパンティ穿いちゃえばぁ? オレは別にどっちでもいいよ。ヘヘ」
 アレというのは、ナプキンと一緒に差し入れられてたタンポンのことだ。
 ナプキンが手元にない以上、タンポンを使うほかない。
 恐る恐るタンポンを手にしたカイトに声がかかる。
「オレらの前でそいつを装着してみろよ。生きた性教育ってヤツだ」
 一斉に注目を浴びてカイトはがくがくと震えた。
 下半身に服を身につけるためには、見世物にされてると分かっていてもタンポンを使うほかない状況だ。
 しかたなく包みを破って殻入りのナプキンを取りだした。ネコジャラシの穂ほどのサイズだ。
「あんなんでオマンコの穴埋められんの?」
 と素朴な質問が飛び出す。
(バカタレ……中の綿みたいなヤツが水分吸って膣内で膨らむんだよ!)
 心の中で罵倒するカイト。タンポンなど実物を見るのも触るのも初めてだが、とりあえずの使用法は頭に入っている。
 覚悟を決めると、カイトは左手を自分の秘所に添えた。
 そうっと陰唇を指で左右に開き、膣の穴を露出させる。
 少年たちが異様に目をぎらつかせて詰め寄ってきた。カイト自身の目線からは殆ど見えないが、いま少女の性器が彼らの前に丸見えになっている。
 外野は見ないようにして、右手でタンポンの先端を膣に合わせた。
 殻(アプリケータ)の先端を挿入したいのだが、初めての作業で勝手が分からない。角度を間違って挿入しようとすると乾いた膣壁にひっかかって妙に痛い。
 カイトが手間取っているとブーイングが飛んできた。
「なにやってんだよ! いつもみたいにズボッと挿れろよズボッと! バイブ突っ込む要領だよ!」
 と外野は適当なことを言っている。
 ちょうどそのとき午後の授業開始の予鈴が鳴った。


「!」
 チャイムの音声をトリガーとする調教を受けていたカイトの体は、自然と愛液の分泌を開始した。
 多少なりとも入り口が潤ったおかげで、何度目かの挑戦でヌルリとアプリケータの先が呑み込まれた。子宮へと向かう膣の形に合わせて正しく挿入が行われたという「実感」があった。
 あとは作業としては簡単だった。
 アプリケータの中に入っているタンポンの本体をところてんのように押し出すだけである。
 ほとんど感覚もないが、注意を凝らすと膣の中にタンポンらしき物体が収まった感触がある。アプリケータを抜き取ってしまえば作業は終了だった。
 ナプキンと違ってタンポンだと、半日から一日程度は交換の必要がない。
「いやあ、いい見物だったよ、うん。女って大変なんだね」
 浩司は横からカイトを抱き寄せると、カイトの股の付け根からちょろりとのぞいているタンポンの紐を指でつついた。
「きゃっ……余計なことするなァ!」
「この紐カワイイよなぁ、プラプラしてて」
「汚い手で触んなァ! 雑菌が入ったら……」
「膣炎になっちまうってか?」
「う、く………………」
「ハハハハ。分かったよ。オンナノコの『そこ』はデリケートだもんな」
 浩司の手が離れた隙にカイトは手早くパンティを引っ張り上げた。その上からブルマを穿いても露出度では大して変わらない。ただただ愛玩される少女としての姿格好だ。
 もう一度浩司の腕がカイトを抱いた。
「ほんと。カワイイよ、あんた」
 衝動に突き動かされるように浩司はカイトの首筋に顔を埋めた。
「はぁぁン……」
 感じやすくなってる場所にキスをされてたまらずカイトは甘ったるい嬌声を出してしまった。


 浩司の顔が離れたかと思うと、今度は唇をむさぼられた。
 唇同士の接触だったのが、やがて舌までがカイトの中に入ってきた。
(やだ……やだ……男にキスされるなんて…………)
 カイトの中で男としての意識が悲鳴をあげた。男相手に力でかなわず強引にキスされてそれを拒めなかったという無力感と汚辱感。
 こりまで男性器官に舌で奉仕することを強要されることは毎日のようにあったが、処女のように抱きすくめられて唇を許してしまったことはなかった。
 浩司に騙されて抱かれてしまったときですら、こんな形でキスを許したりはしなかった。
 浩司を突き飛ばそうとしたが、力が入らない。
 キスが深まるにつれ、ゆったりとしたリズムで胸を揉まれた。
 胸を回すように揉まれ、ときおり乳房の下側をくすぐられる。
(生理中で乳腺張ってて……胸痛いから、やめれぇっ)
 そう言いたくともあいにくと唇は塞がっている。
 そして、恐ろしいことに痛い筈の刺激が徐々に快美感に塗り替えられていく。
 固くしこった乳首の先端を服の上からボタンを押すように指の腹でいじられると、気が遠くなりそうな甘い疼きがそこから生まれた。
「くふぅぅん……」
 思わず鼻から甘えたような吐息が漏れ出てしまう。
 男にキスをされてるというのに全力で抵抗できていない自分が信じられなかった。
 ……認めたくない。認めたくないけれどもカイトは、唇を吸われて「うっとりと」していた。
 まるで恋を初めて知った乙女のようにキスに酔っている。
 そのせいで抵抗できない。
(男の力強い腕……荒々しいキス…………身を任せると、心地いい…………)
 男としての自意識が屈辱に震える一方で、心の別な部分は浩司の青臭い愛撫に堕ちようとしていた。
 唇の快感が、全身をとろかすような波紋の源になっている。
(強い男に所有されるのも……悪くない……)
 酔いが回るように、抵抗しようという気力が消えていく。


 二人の唇が離れたとき、カイトの腕は無意識のうちに浩司を放すまいとして動いていた。寸前で理性が戻って、カイトはあわてて手を引っ込めた。
「……なにしやがる。男にキスして嬉しいかよ」
 湿った唇をぬぐい、いまさらのようにカイトは吠えた。
「……別に。つい、出来心」
「出来心ォ?」
「ちっ。シャレでキスしてやっただけだよ」
 なぜか怒ったようにいうと、浩司はプイとカイトから離れていった。
 普段なら昼休みの間にフェラチオ奉仕で少年たちの間をたらい回しにされるのだが、もう午後の授業が迫っているので、それは免除された。
 代わりにディルド・ギャグが用意されていた。
 リアルなペニスの形をしているそれは、少年たちの平均サイズに比べると、一回りおとなしいサイズに見えた。
「こいつは、カイトさんの元のカラダから型取りして作った代物だってさ。ムラタ先生もマメだよなぁ」
(ちゃんと測ったのかッ!?)
 疑問を口にする前にディルド・ギャグをかまされ、言葉を封じられてしまった。
「どう? 自分のペニスくわえてる気分は。気分が落ち着くんじゃないか? アハハハハ!」
「うぅぅぅぅぅ!」
 抗議しようとして口の端からみっともなく涎が垂れてしまった。
「しばらくそいつをしゃぶって、フェラテクの自習しときな」
 カチリとギャグの錠が首の後ろで締まり、ギャグから伸びたチェーンが逃亡防止のため床の金具に繋がれた。
 繋がれた場所より遠くへ行こうととすると、自分自身のペニスの形をしたディルドが喉の奥にまで侵入してきてカイトを責めるようにできてる。
「んぅぅぅ……」
 カイトは浩司や他の面々、そして何より彼らの背後にいるムラタを呪った。
 その晩、ディルド・ギャグで口を塞がれたカイトの前に初潮を祝う赤飯の皿が運ばれてきた。


 頭にきたカイトは皿を蹴飛ばしてひっくり返した。こぼれた中身を怒りにまかせて踏みつけようとしたカイトだったか゛、それ以上暴れると生理中の下っ腹に響くため、断念せざるをえなかった。
 望まなかった生理。
 望まなかった女としての体の反応。
 初めての生理の第一日目は、戸惑いと形のない憤懣の中に過ぎていった。

 翌日から、カイトの扱いに小さな変化があった。
 見方によれば、それは大きな変化だったかもしれない。
 まず地べたに置かれたマットレスの代わりに、簡易寝台ながらベッドが廃教室内に運び込まれた。
 下着や衣服、ベッドのシーツは毎日、替えが与えられた。
 日課となっていたフェラチオによる奉仕だけは続行されたが、セックスは中止された。
 全体的に、カイトの肉体的な健康面を気づかった変化である。食事の質や量も向上して、定期的に食料が与えられた。
 旧校舎を訪れる少年たちもきつく言い含められているのか、体に負担の掛かる形でカイトをいたぶることはしなくなった。
 それらの変化にカイトはホッとすると同時に、不気味なものを感じていた。
 ムラタは時折、信じられないほど冷徹な目でカイトを見る。機械を組み上げるのに必要なネジの一本を見るように冷たい目つき。
 そのムラタがカイトのことを「セックス人形に堕とす」と口にしていた以上、それをあきらめたのだとは到底思えなかった。
 しかしともかくも表面上、何事もなく時間が過ぎていった。
 生理が始まってから四日目のことだった。
 朝起きてナプキンを取り替えようとしたとき、カイトは出血の量がごく少なくなってることを知った。
 ピーク時はナプキンでも数時間毎にまめに取り替えないと気持ちが悪かったのだが、いまの出血量ならタンポンを入れれば丸一日は持ちそうだった。
 生理痛や体のだるさも、とれつつある。


 明らかに、生理期間が終わりに近づいてるのだろう。
 ムラタもまた同じ見解だった。
「どうやら、明日には常態に戻りそうですね。君の体は健康な28日周期の生理サイクルを見せていますよ」
 膣検診を終えたムラタがいった。
「こんな女の体なんていらない……生理なんてこないように、いつかブッ壊してやる」
「そんな勝手は許しませんよ。君は明日にでも、研究所へ運ばれるんです。晴れて第二ステージへと進むためにね」
「研究所って……そこで何をするつもりだ」
「ふむ。まずは徹底的に君の肉体と精神をいじらせてもらいますよ。楽器の調律をするように精密にね」
「嘘だろう……これ以上、まだ何かするつもりかよ……」
「明日になれば分かることです」
 まだ何も終わらない。悪夢の時間は続く……
 不意にカイトは金色の絨毯の中に立っていた。風にそよぐ見渡す限りの小麦畑。
 透き通った空を見たこともない軍用ジェット機が飛んでいく。空気が揺れて、かぶっていた帽子が飛ばされていった。
 幻の情景の中でカイトは叫んでいた。
 次の瞬間、あたりは元通りの廃教室に戻っていた。
 驚いたことにカイトはムラタの胸に顔を埋めていた。むしろ、ムラタがカイトをかき抱く格好だ。
 カイトは全身にうっすらと汗をかいていた。鮮明な幻視のせいか、体に疲労感が残っていた。
「あ……オレはいま……?」
「幻でも見たんですか。どんな内容でした?」
 なんでもない、とカイトは答えた。どんな形であれ、ムラタに協力するのはまっぴらだった。
 ムラタが立ち去ると、カイトは束の間の安息に体を弛緩させた。
 さきほどの幻。目にした光景自体はどうでも良かった。


 問題なのは、幻の中で立っていたカイトが女だったということだ。
 自分の姿は見てないが、身体感覚や服の感触からいって明らかにカイトは幻の中で自分を女としてイメージしていた。
「こんなんじゃ駄目だ!」
 カイトは懸命に女を犯してる自分をイメージして自己イメージの修復をはかった。
 ヌードの女を想像して、そのイメージで興奮できることを再確認する。それの繰り返し。
 女の体を持ついまのカイトにとっては、虚しい作業だった。どんなに興奮しても固くなったペニスを握ることすらできないのだから。
 イメージトレーニングにも疲れてきて、カイトはベッドにごろりと転がった。
 生理が軽くなってるので、あまり下半身を気にせず寝返りをうてる。
 カイトの言葉を何度も思い返した。
 どうやら生理期間が終わり次第、ムラタの研究所へと移される手はずになってるらしい。
 もし研究所に監禁されたら今以上に脱出が難しくなるだろうことは容易に想像できた。
「なんとかしないと……」
 なんとかしないと、ムラタによってセックス人形に作り替えられてしまう。
 この先毎日のように男に犯されながら生きるなんてまっぴらだった。
 いままでそれを許してきたのも、隙を見て逆襲に出る心積もりがあればこそだ。
 改めてカイトは首輪や鎖が緩んだりしてないか調べてみたが、徒労に終わった。
 もどかしく時間ばかりが過ぎていく。
 その晩も葵がやってきたが、カイトが研究所のことを尋ねても口をつぐむばかりだった。
 生理用品の扱いなどの質問には答えてくれるのに、肝心な話題になると俯いて言葉少なくなってしまう。
 葵が立ち去った後、カイトはナプキンを新しいものに替えた。もう出血はとまっていて、これが最後の交換になりそうだった。
 生理が終わったのは嬉しいが、それはつまり明日体を調べられればいよいよ研究所送りになってしまうということだ。
 途方に暮れてカイトはベッドの上で膝を抱えた。
 そのとき、深夜の廊下で人影が動いた。


 一本だけ灯った蛍光灯に背後から照らし出された人物は、葵ではなかった。
「カイト」
 と呼びかけてきたその人影は、浩司だった。
「こんな時間に何の用だよ」
「逃がしてやりにきたんだ」
 浩司がベッドに近づいてくると、カイトは反対側の端へ後ずさりした。
 ここに囚われてからというもの、男が近づいてくるのは決まってカイトの体をいじるためか、さもなければペニスを突き出して奉仕を強要するためだった。
「怯えるなよ。そうやってると、処女っぽいぞ。ヤリまくりなくせに」
「好きでヤラレたんじゃねぇ!」
「ま、いいや。とにかく、時間を無駄にすんなよ。今度はほんとに逃がしてやるから」
 カイトは、浩司の顔に向かってツバを吐きかけたが、かわされてしまった。
「今度はマジだって」
「信じられるか! お前がオレを助けようとするわけないだろ」
「あんたはオレの女なんだ」
「……はぁ?」
 カイトはポカンとした顔で聞き返してしまった。すると浩司はもう一度同じ事を言った。
 浩司は真剣そのものという顔つきで、カイトを自分の女呼ばわりする。
「あ、あのなあ浩司……」
「だからオレ、あんたはムラタに引き渡したくないんだ。研究所なんかに引き取られたら、二度と出てこれなくなっちまう」
「ヤツの研究所について何か知ってんのか?」
「詳しくは知らないけど、あそこはキナ臭いんだ。どっかの国の軍事予算から金が出てるって話もあるし。地域の警察もいざってときはあの研究所に協力するらしい」
「冗談だろ……警官にまで目ェつけられたら、逃げきれないぞ!?」
「だから、ほとぼりが醒めるまでオレの知り合いのやってる町工場に匿ってもらう。話はつけてあんだ」
 思いがけないほど熱い調子で喋る浩司にカイトは戸惑った。
 浩司には一度痛い目に遭わされてる。


 だが今の浩司が嘘をついてるようにはどうしても思えなかった。
「オレ、あんたを自分の女にするって決めたんだ」
「な、バカッ…………」
 カイトは自分の中にわけのわからない感情がこみあげてくるのを感じた。なぜか顔が真っ赤になってる。
「ほら、掴まれよ」
 と浩司が手を差し伸べてくる。
 カイトは決断を迫られた。
 残るか。それとも、誘いに乗るか。
 残れば、ムラタの研究所へ送り込まれる。
 それならいっそ……
 蜘蛛の糸にすがるような思いでカイトは浩司の腕にしがみついた。
 浩司の持っていたキーで首輪の鎖が外され、カイトは自由の身となった。
「おまえの胸の感触、たまんねぇ」
「こんなとき、へんなこと言うな」
 浩司の腕にしがみついてると、ハリウッド映画のヒロインにでもなったような気分だった。
 その上、浩司が服の下にあいた手を突っ込んできて、カイトの胸を撫でていく。
「あくっ……ダメ、そこ敏感だからッ……」
 耐えかねてカイトはフルルと身を震わせてた。
 浩司は軽々とカイトを支えてベッドから降ろした。
 素足のままだったカイトのためにサンダルまで用意されてる。
「いこうぜ」
 浩司に手をとられ、カイトは廊下へと出た。
 廃教室から一歩でも足を踏み出すのは数週間ぶりだった。
 ずっと運動してなかったので、早足で歩くだけでも息があがりそうになる。
 はたと気が付いてカイトはいった。
「沼作のヤツ……あいつが見張ってんじゃないのか?」


 浩司は首を振って、意外なことを口にした。
「沼作さんがオレに教えてくれたんだ。あんたを助け出すなら今日がラストチャンスだって」
「あいつが!?」
「沼作さんはオレらの味方なんだよ。っていうより……ムラタの敵って言ったほうが正確か。小汚い用務員ってのは演技らしいな」
「信じらんねぇ……」
「あのカイトがこんな美少女になったほうが信じられねぇよ」
 照れくさそうに鼻の頭をかく浩司の仕草に、カイトは怒る気力も失せてしまった。
 階段を降りて一階の通用口にいくと、二人はそこから外に出た。
 校舎外に出たとたん、涼しい風がカイトの頬を撫でていった。
「外だ……」
 芝生の青臭い匂いが懐かしかった。
 頭上を見上げると、夜空にぽっかりと明るい月が出ている。
「女の生理の周期って、月の満ち欠けに連動してるんだってさ。ほら、昔の人は生理のことを月のものって読んでたらしいじゃん」
「嫌なこと思い出させるな、バカ」
 肘で浩司の脇腹を小突くと、お返しに乳首を指で弾かれた。
 胸のピアスが金属質の音を立ててしまい、カイトは胸を押さえた。
「こっちだ」
 と浩司は用務員用のプレハブ宿舎を指さした。
「直接正門にいかないのか?」
「しっ!」
 突然浩司に押し倒された。
 草の生い茂る地面に顔を押しつけられる。
「きゃっ……!」
 悲鳴の途中で浩司の手が口に覆い被さった。
(また騙された!!)
 そう思って死にものぐるいで暴れるカイトに、浩司が耳打ちしてきた。



「落ち着けよ。あっち見てみな」
「あァ?」
 そろそろと顔を上げ、そちらを見ると、木立の中の暗がりをチラチラと光るライトが移動していた。
 誰かが懐中電灯を持って歩いてるようだ。
「この時間、警備のために職員が見回ってる。沼作さん以外はみんな、研究所の息がかかってる連中だ」
「げ……」
「だから朝になるまで沼作さんのプレハブに匿ってもらうんだよ」
 カイトたちは見回りの人間が通り過ぎるまで身を伏せたままじっと待った。
「ビクビクした顔のカイトも可愛いよなぁ……」
「るさいっ」
 カイトにしてみれば、研究所へ連れていかれることを想像しただけで身震いがする。
 女の体は暴力に対してあまりにも無防備だ。男のときには味わったこともない心細さを感じる。
「心配すんなよ。いざとなったらオレが守ってやっから」
「……うん」
「え、えっ!?」
「な、なんだよ。そんなビックリしたみたいに」
「いやぁ……あまりに素直な反応だったんで」
「しょうがないだろ。こんな体にされて、男に力でかなわないってのはイヤってほど身にしみてるからな」
「オッケー。オレに任せろよ。よし、そろそろ通り過ぎたみたいだな」
 起き上がって草を体から払うと、二人はプレハブ宿舎へ向かった。
 プレハブの小窓からは明かりが漏れていた。壁越しに小さくテレビの野球中継の音も聞こえる。
 浩司はプレハブの戸をノックした。
「オレです。浩司です」
 反応がなくて心配になってきたとき、ガラリと戸が開いた。


 戸口に立っていたのはまぎれもなく沼作だった。
 ねっとりとした視線を感じてカイトは身をすくませた。
「入んな」
 そう言うと沼作はさっさと奥に引っ込んでしまった。
「お、お邪魔します……」
 まず浩司が、続いてためらいながらカイトが中に足を踏み入れた。
「こっちだ」
 と沼作が二人を招く。
 入り口近くの部屋はちゃぶ台とガスコンロ、テレビがあるだけの質素な部屋だった。が、その奥にもう一部屋あった。
 沼作はその奥の間から二人を呼んでいる。
 カイトはまだ躊躇っていたが、浩司に手を引かれて強引にそちらへ連れて行かれた。
 奥の間は最初の部屋とは全く違う趣になってた。
 思わずカイトはつぶやいた。
「こういうの、どっかで見たことある、オレ……」
「ああ、アレだ、999の機関室とかだろ」
「うん。似てるな」
 薄暗い部屋で大量のモニターや計器類が照明の代わりのように光っていた。
 インターネットの画面らしきものもある。思いがけずここはIT化された場所のようだ。
 モニターの一つは見覚えのある場所を映し出してた。
 カイトの囚われてた廃教室だ。
 ネット経由の映像らしく秒間数コマの割合で変更されてる。が、カイトがいないいま、映像に変化は殆どない。
「こんなカメラが……」
「ケケケ。隠しカメラってやつよォ」
 カイトの反応に気付いた沼作が嬉しそうに相好を崩した。
「おめぇさんの映像にゃ世話んなったぜぇ。なんせ寂しい独り身でなァ」
 沼作が部屋の隅を指さすとカートン単位でティッシュの空き箱が山積みになってた。
 気のせいか部屋の空気が精液臭い。


 通りすがりの女子高生が校門で作業をしていた沼作を指さして「近くにいるだけで妊娠しそう」と顔をしかめていたことがある。彼女らの気持ちがいまのカイトにはよくわかる。
 沼作はカイトに顔を近づけると小鼻をふくらませ、やがてニンマリと笑った。
「女子高生の体育着臭がしやがる。たまらんなァァァ……」
「…………」
 女として身の危険を感じ、カイトは浩司の後ろに隠れた。
 沼作はそんなカイトの反応に肩をすくめると、一度奥の部屋を出て、茶を淹れて戻ってきた。
「今晩は二人ともここで寝るといい。そこに俺様の布団があるんで、それを使いな」
「ありがとうございます」
 浩司はぺこりと頭を下げた。
(掛け布団の上で寝よう)
 とカイトは思った。沼作の布団に入ったりしたら、それこそ妊娠させられかねない。
 沼作がいまにも涎を垂らしそうな顔をしてカイトの姿をじろじろ見ているので、カイトは気持ちが悪くてしかたがなかった。
 沼作がもうもう一つの部屋にいってくれたときはカイトは思わず胸を撫で下ろしていた。
「ったく、気味の悪い野郎だぜ」
「そういうなよ。沼作さんのおかげであんたを助けられるんだから」
「でも、あいつはムラタの手下じゃなかったのか?」
「演じてただけだよ。内偵って奴」
「内偵?」
「沼作さん、国家機関のエージェントなんだってさ。もちろん詳しい身分は明かしてくれなかったけど」
 うさんくさいと思ったがカイトは黙ってることにした。
 それより、明日以降のことで頭が一杯だった。
 一度家に帰りたかったが、そこはムラタに監視されてる恐れがある。
 するとやはり浩司の知り合いがやってる工場とやらにいくのがベストなのか……
 茶を啜りながら、あれこれと思案していた。


 プレハブの外に人がきたときはビクリと身を固くして息を殺したりしたが、沼作がうまく応対してくれて、カイトの存在が疑われることはなかった。
「やることもないし、寝るか」
 浩司が布団を指した。
 カイトを守ると宣言した通りに、浩司は今晩ここでカイトと共に一夜を過ごすつもりのようだった。
 カイトは敷き布団と掛け布団を分割し、自分は掛け布団の上に陣取った。
「その……まだ一応、生理中だから。襲うなよ」
 実際にはもう完全に出血は止まってるのだが、生理を口実にカイトは釘を刺しておいた。
 浩司は案外あっさりとうなずいてみせた。
「わーってるって」
 カイトはおそるおそる、浩司に背を向ける形で横になった。
 鎖に繋がれずにこうして横になるのは実に久しぶりのことだった。
(襲うなよ、か……。完全に女の発想だよなァ)
 最前の自分の言葉を思い返してカイトは複雑な気持ちになった。ごく自然に「襲われる」ことを意識してたのだ。
 そして、「生理中だから」という言い訳をまさか自分が使うことになるとは思ってもみなかった。
 かといって、こんなときまで浩司に犯されるのはまっぴらである。
 カイトは浩司が突然後ろから襲いかかってきやしないかと用心していたが、数分もしないうちに浩司はいびきを立て始めた。
 カイトはほっと体の力を抜いて、体を仰向きに直した。
 幾つものモニターが薄暗い部屋の壁に光を投げかけている。
 この異様な部屋は、沼作がただ者でないことを証明している。あの外見からは想像しにくいが、国家機関のエージェントという話もまんざら嘘じゃないらしい。
(となると……国家機関に見張られてるムラタのほうこそ何者なんだってことになるよな)
 ムラタの研究所についてカイトは、山奥で怪しい研究をしてる(らしい)ところという以上には知らない。





 カイトは気が付くと、薄暗くひっそりとした教室の床に寝かされていた。
 窓には全て板が打ちつけてある。そこは、放棄された旧校舎の一室だった。机や椅子はすっかりホコリをかぶっている。
「オレは……」
 とつぶやいた声で、たちまち現実に引き戻された。
 悪夢はまだ終わっていない。
 確かめるまでもなく、カイトの身体は女のままだった。
 素肌の上にいつのまにか着せられた男物のワイシャツは、胸のところで明瞭な曲線を描いて持ち上げられている。
「おやおや、姫がお目覚めのようだ」
「貴様!」
 カイトは教師を殴りつけようとして立ち上がったものの、足がもつれてしまう。
「無理はいけませんよ。君は文字通り、腰が抜けるほど犯されたんですからね」
「殺す。絶対、殺す……!」
「ふむ。ひと休みして憎まれ口を叩けるぐらいには回復したというわけですか」
 そのときカイトはとてつもなく奇妙な感触を覚えた。股間の奥から、ぬるりとした「何か」があふれ出る。
「あ、あ、あ……」
 ぽたり。
 体液が伝い落ちて床にしみを作った。
 男によって凌辱され、犯されてしまったという確かな証拠。
 ムラタは勿論、それを見逃してはいない。ニヤニヤと笑って、カイトの反応を楽しんでいる。
 こぽっ……
 音にするならちょうどそんなだろう。
 女性としての器官の奥に注ぎ込まれたオスの体液がもう一度、逆流してきた。無意識に股間の割れ目を覆った手のひらに、白濁した液が垂れた。


「いやだーーーーっ!!」
「フフフ……ハハハハ……」
 恐慌状態に陥ったカイト。それとは裏腹にムラタは実に愉快そうに笑っていた。
「心配するなよ。そいつは生理食塩水とデンプン質の混合物だ」
「え……」
「疑似精液だよ。どうやらそいつを注ぎ込まれた頃には意識が朦朧としてたようだが」
 そう告げられたからといって、慰めになるものでもない。ただ、ムラタの妙に落ち着いた低い声のせいで、直前までのパニック心理は脱することができた。
「人の心なんて脆いね。クズどもの群れでリーダー格だった君が、少女の肉体に移されただけで、生まれたての子鹿のようにふるえて、泣き叫んでる。じつに興味深いよ」
「あ、あんたは、自分の研究のためにオレをこんな目に遭わせたのか!」
「まさか。趣味に決まってるじゃないか。こんな臨床例を学会発表するわけにもいかないだろう?」
 つかつかとムラタが近寄ってきて、カイトの目の前で足を止める。
「オイオイ、色っぽい格好をしてるな」
「!」
 指摘されるまで、カイトは自分が横座りの姿勢でふとももや、大事な場所を晒したその格好に自覚してなかった。慌てて足を引き寄せ、体育座りのような姿勢になる。そんな自分の反応が、恨めしかった。男の視線を意識させられていることそのものが屈辱だ。
「フフ……君は僕のオモチャなんだよ、カイト君?」
 ムラタの指で顎を持ち上げられ、無理やり視線を合わせられてしまう。


 カイトはだだをこねるように首をふって逃れようとした。
 ちらりとムラタの指に結婚指輪が見えた。
「君の手下……元・手下どもと違ってね。別に性欲処理の相手に困ってるわけじゃない。
 ただ狩りの獲物が欲しいと思ってたんだ」
 そのとき、ムラタの顔にべちゃっとツバがはきかけられた。カイトの精一杯の反撃だった。
 ムラタは落ち着いて、ブランド物のハンカチで顔を拭う。
「それだよ。君のその目。その粗野な反抗心。クズどものリーダーに収まってたという、ちんけなプライド。
 それが狩りの獲物さ。君の精神がその肉体の器に完全に収まるまで、何度でも追い詰め、屈服させてやるよ。すぐに屈服するようじゃつまらない。その点、君は獲物としては上々の部類だよ、カイトくん」
「この……この、キチガイ! てめぇのケツの穴に首突っ込んで死んじまえ!」
「くくく……美少女が下品な言葉をさえずるのもまた悪くないね」
 カイトは歯噛みした。
 どんなに口汚く罵っても、カイトの喉からこぼれ落ちるのは美少女と呼ばれるに相応しい細くて可憐な声音なのだ。小学生の頃、どんなに練習してもリコーダーの高く音が吹き漏れてしまったときのようなもどかしさだ。
 そのとき廊下のほうで人の気配がした。
 職員が見回りにでもきたかと思ってカイトは助けを呼ぼうとした。いまは体面にこだわっていられるような状況じゃない。
 しかし……


 たてつけの悪くなった戸をがたぴしと開けて教室に入ってきたのは、しばらく前に入れ替わりカイトを犯した同級生たちだった。
「先生。言われてたモノ、持ってきましたよ」
「御苦労」
 軽く頷くと、ムラタは生徒から紙袋を受け取った。
 ムラタが中から取り出したのは、大型の犬につけるような鋲付きの首輪だった。普通の首輪と違うのは、小さな錠前が取り付けられている点だけだ。
「まさかそれをオレに!」
「フフ……」
 いち早く察してカイトは手足をばたつかせた。
 走って逃げたいのに、いまのカイトにできるのはせいぜい、もそもそと床を這って後退ることくらいだ。
「そんなに嫌がるなんておかしい子だ。お洒落なチョーカーじゃないか」
「変態! 変態教師ッ!」
「君みたいに淫乱な女の子に変態呼ばわりされてもね」
「オレは……!」
「ディルドに貫かれて、快感のあまりよがり声をあげたのは誰だったっけ?」
「やめろっ、聞きたくねぇ!」
 ムラタの言葉を聞いて、かつての同級生たちが下卑た笑いを浮かべてる。屈辱のあまり心臓が爆発しそうだった。
「そらっ」


「ああっ!?」
 カイトの心が乱れた隙に、ムラタは手早く首輪をカイトの首に巻きつけた。ガチャリと音がすると、それきり首輪は外せなくなった。いくら引っ張ってみても、ビクともしない。
「ケケケ……」
 笑いながら、同級生のひとりが近づいてきた。カイトがさんざん「パシリ」としてコキ使ってきたヤマセという少年だ。
「立ちなよ、カイトくん!」
「うぐっ」
 首輪を掴まれ、無理やり立たされた。
 カイトは首に手をやって呻きながら、ヤマセの動きに従うほかなかった。ヤマセの腕力が凄まじく強く感じた。全く抵抗できる気がしない。自分がいかに非力になったか思い知らされ、愕然とするカイトだった。
「へへへっ、カイトくん……カイトのオッパイは最高に気持ちいいぜぇ」
 そういいながら、ヤマセは乱暴にワイシャツの上から乳房をまさぐってくる。
 触られると吐き気がしてくると同時に、犯されたときの高ぶりが体の奥で目覚めかけた。
 少年の手を払いのけようとして、カイト自身の手が胸にめりこんだ。カイトがこれまでセックスしてきたどんな女よりも柔らかくてふくよかな感触だった。
「へへ……もう顔が赤くなってやがる」
「やろっ……いい加減に、んんっ!?」
 突然口を塞がれてカイトを目を白黒させた。


 ヤマセに強引に唇を奪われたのだ。その上、ヤマセは強引に舌を割り込ませようとしてくる。
「んーっ、んーっ!」
 カイトは涙目になって抗議するが、しっかりと抱き寄せられて抵抗できない。
 いやだ。
 こんなカスみたいなやつにディープ・キスなんて!
 ……内心の叫びはむなしい呻き声にしかならない。
 いましもヤマセの舌が割り入ってこようとしたときだった。
 ムラタがヤマセの肩を掴むと、驚いて振り向いたヤマセの顔面に拳をめり込ませた。
「あばっ……!!?」
「このカスがっ」
 ペッ、とツバを吐き捨てると、ムラタはヤマセの顔と腹を交互にブン殴った。
 たまらず悲鳴をあげ、鼻血を流しながらヤマセは尻餅を付いた。
「先生……」
 ムラタを止めようとした同級生はひと睨みでびびって口をつぐんだ。
「誰がカイトくんを自由にしていいと言いました?」
「ヒィ。ご、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!」
「フン。クズはクズらしく僕の指示にだけ従ってればいいんだ」


 カイトはあっけにとられて成り行きを見守っていた。
 ムラタは向き直ると、カイトを上から抱えるように腕を回してきた。
「なにしやがる!」
「いいかい、今日からこの教室が君の飼育小屋だ。明日もここで、たっぷり犯してあげるからね」
「ふ、ふ、ふ……」
 ふざけるな、と怒鳴ろうとしたが、声が震えて言葉の形をなさなかった。
「さて、そろそろ帰らないと妻に怪しまれてしまう。君も消耗してるだろうから今日はもう休みたまえ」
 言葉と相前後してチクリと首筋に痛みを感じた。
 妙な薬品を注射されたのだと気づいたときには、既に抗いがたい睡魔に捕まっていた。
 カイトはフラフラとその場で床に倒れ込んだ。
「おやすみ、カイトくん。明日もまた楽しませてもらうよ。フフフフ……」
 寝息を立て始めたカイトは薄っぺらなマットレスの上に移され、上からタオルケットを一枚だけかぶせられた。
 こうして、凌辱の日々が始まった……。


 だだっぴろいダイニングで、たった一人の朝食。
 父親はとうに出勤している。そもそも家に帰ってたかさえ怪しい。
 母親は仏壇の遺影の中だ。
 テーブルの上には、家政婦がつくってくれたサラダがのってる。
 野菜は嫌いだからサラダには手をつけることはない。それでも毎朝サラダは食卓に載ってる。カイトの父親に指示されたことを家政婦がひたすら機械的に実行してるからだ。
 カイトはあくびをしながらトーストを口に運んだ。
 何の味もしない。
 何の匂いも。
 全ての感覚が曖昧になって……

 夢は、そこで途切れた。
 目を開けると、そこは薄暗い旧校舎の教室だった。
 壁の時計は壊れていて針が止まったままだ。ただ、窓を塞いだ板の隙間からわずかな光が射し込んでいるので、朝になったとわかる。
 もぞもぞと動いてマットレスの上に身を起こした。
 そうっと胸に触ってみる。
 ボリュームのある胸は、いまのカイトの性別を否応なく思い知らせてくれる。身じろぎしただけで胸が波打つように「ぷるん」と揺れた。同時に、昨日の悪夢が甦ってくる……


 プラスチックの張り型を突っ込まれ、手下に過ぎなかったはずの同級生たちによってたかって体をおもちゃにされた。
 股間には、いまだに棒きれでも突っ込まれてるような異物感が残ってる。そこを手で探ると、決定的な喪失を再確認させられた。
 心細さのあまりぎゅっと手を握りしめた。
「オレはこのまま、あいつらの奴隷にされちまうのか……?」
 震える少女の声でそうつぶやいた。
「くそ、あの変態野郎の思い通りになってたまるか。絶対にあの野郎をぶちのめして、元の体に戻ってやるんだ」
 そうやって虚勢で自分を支えないと、本当の女みたいに泣き出してしまいそうだった。
 ふと見ると、窓のガラスにしわだらけになったワイシャツをはおっただけの美少女の姿があった。それが、いまのカイトの姿なのだ。
 首には支配されるものの証である首輪が巻かれている。
 そのとき初めて首輪から鎖が伸びてるのに気づいた。


 それに触れると、ジャラと音がした。
 それほど太くはないが、頑丈そうな鎖だ。少なくとも少女の腕力でどうこうなる代物ではない。その鎖の先は、床に埋め込まれた金具に取り付けられていた。鎖の長さは2メートルほど。つまり、その半径2メートルだけがカイトに与えられた自由だった。
「人をなんだと思ってやがる!」
 カイトは力まかせに鎖を引っ張ったが、びくともしない。手が痛くなるだけだった。
 大型のペンチでもあれば鎖を切り離すこともできるだろうが、周りにあるのは使い古された机と椅子くらいだ。
 あきらめて手を離すと金属の鎖が胸のふくらみにこすれた。たったそれだけの刺激でゾクリと背筋が震えた。
 もう一度窓ガラスに目をやる。
 そこには、乱れたシャツを着て鎖につながれ、息を弾ませてる少女の姿が映ってる。ひどくエロティックな姿だった。
「これが……オレ、なのか?」
 そのままペタリとマットレスの上に腰を落とした。
 シャツ越しに胸を掴むと、男の体では感じたこともない奇妙な快感が生まれた。
「はぁぁぁ……」


 意図せず、切なげなため息がもれていた。
 ガラスに映った美少女の姿が、カイトを興奮させていた。
 やわやわと胸のふくらみをこねくり回す。それは、ガラスの中の少女に対する行為だった。自分でなく、ここに誰か知らない少女がいる。その少女の肉体を弄んでる。……そう思いこもうとする、無意識的な現実逃避のあらわれだった。
「すげぇ、やわらかい……」
 思いあまって胸を鷲掴みにすると、甘く痺れるような感覚と、それを上回る鋭い痛みが走った。
「いたっっ!」
 思わず小さな悲鳴をあげていた。
 カイトの大好きな、嗜虐心をそそるか弱い少女の悲鳴だった。そのくせそれは、カイト自身の喉から出ているのである。
(どうした、もっと鳴いてみろよ!)
 カイトは両掌に左右の乳房をおさめ、乱暴にこね回す。
「あっ、あっ、アン!」
 自分の口から出てる吐息混じりの嬌声をカイトは、想像の中の少女の声として聞いていた。見知らぬ少女を嬲る空想の中にいる限り、現実から目を逸らしていることができる。


 そうやって刺激しているうち、掌に固い先端がツンと当たるようになった。
(乳首が立ってきたのか。いやらしい体だぜ。そんなに気持ちいいのかよ?)
 固くしこってきた乳首をつまみ上げると、あまりにも強すぎる甘い疼きが襲ってきた。刺激が強すぎて、ほとんど痛覚と変わらない。
「アアアッ、いたァ!」
 息を乱した少女の悲鳴。
(たまんねぇ……)
 下腹部で、剛直の持ち上がるような気配があった。
(犯す! 犯してやる!)
 カイトは帆柱のように持ち上がったペニスを握ろうと手を股間にやった。
「あ……」
 カイトの空想の世界はそこで終わりを告げた。
 固く勃起してるはずのペニスは、そこに存在していなかった。
 モノが怒張する感覚を確かに感じていた。けれどそれは、仮想の感覚に過ぎなかった。
 事故で手足を切断したものが存在しない部位の痛みをリアルに味わってしまう「幻肢」と同じ現象である。
 いまカイトは、存在しないペニスの疼きをリアルに感じていた。そのくせ、それを掴もうとしても手は虚空を泳ぐだけなのだ。
「あああ……!」
 雌の肉体にペニスを突き立て、張り詰めた欲望をぶちまけたい。それなのに肝心のモノを見失って、カイトは焦燥感に喘いだ。


 そのとき指先が濡れた部位に触れた。
 そこは熱く、潤っていた。
 ぴちゃ、と淫猥な水音が聞こえたような気がした。
 そしてカイトは理解した。……理解せざるを得なかった。熱い疼きを感じてるのは「そこ」なのだと。その部分の疼きが空想の中でペニスの感覚に変換されていたのだ。
 目眩がするほどの喪失感。
 けれど、股間の疼きは消えない。男の脳は、早く射精しろとカイトに命じてくる。少女の肉体では物理的に実行不可能な命令だ。
 どうしようもなくって、ただむなしく腰をくねらせるしかなかった。その動きはカイト自身を挑発するみたいに卑猥な動きに見えた。
(くそぉ、なんでちん●が無いんだ……あああっ苦しい……)
 せっぱつまって腿に力を入れたとき、奇妙な快感が生まれた。
 ぴくんっ!
 電気が走ったように一瞬、体が痙攣した。
 両腿に力を入れて、無いはずのペニスを挟むようにする。すると、股間の濡れたところがわずかに圧迫さ、甘い快感が生まれる。
 ペニスから生まれる強くてハッキリとした快感とは少し違う。モヤモヤとした全身に広がるような快感だ。それでも、なにがしかの解放感を伴っている。


「ああ……はぁっ、はぁっ……」
 カイトは必死に、その快感にしがみついた。
 頭の中は、限界まで張り詰めた欲望を放出することで一杯だった。
 自身では意識しないまま、カイトは一生懸命両脚をすり合わせていた。
 その姿は未熟な少女の自慰そのものである。
「あっ、ふうっ……」
 自然と息も荒くなっている。
 男の肉体と違い、股間に生じた快感は爆発的に上昇してはくれない。じらすような快感がゆっくりと脊髄を染め上げ、やがて脳に達した。頭の中が桃色の靄に覆われる。
 ゆっくりと快感が全身に染み渡り、そして高ぶりが頂点に達した。
 頭の中が白く洗われる……
 生まれて初めて味わうソフトなエクスタシーを、カイトはそう感じていた。
 ムラタたちにいたぶられたときの苦痛にも似た追い詰められるような絶頂感とは別物だった。もっと温かな、もっと……安らぎを伴った感覚だった。
「はぁぁ……」
 ゆっくりと息を吐き出すと、力尽きるようにマットレスに横たわった。それでも不思議と、男の自慰につきまとうような脱力感とは無縁だった。全身がほてって、快感の残り火が頭の芯でくすぶってる。


 呼吸をするたびに胸が上下し、椀型のふくらみがそのたびに形を変える。そのふくらみの上に手を置くと、妙に心地が良かった。
「あれ? もう起きてたのか?」
 男の声に、カイトはがばっと跳ね起きた。
 その余波でジャララと鎖が鳴った。
「てめぇ……ヤマセ!」
「ハハ、おはようさん。しかし何度見ても信じらんねぇなぁ。こんな美少女の中身があのカイトさんだなんてよぉ」
「ブチ殺すぞ」
「そんな姿で鎖に繋がれながら凄んでも説得力ないっス」
「くっ……」
 屈辱に震えるカイトの前でヤマセは何やら取り出した。パンとミルク、それに銀色の深皿。
「ほんとはカイトちゃんに朝の一発抜いて欲しいんだけどよ、先生の許可無くやるとまたぶっとばされちまう」
 ヤマセは深皿にミルクを注ぐと、パンのビニール包装を開けた。
「何のつもりだ?」
「へへ、エサだよ。エサ」
「何ィ?」


「きのうから何も食ってなくって腹減ってんだろ。先生に命令されたんだよ、あんたにエサ運ぶようにって。ったく、生きたダッチワイフはメンテが大変だよな」
「だ、だ、誰がダッチワイフだ!」
「ハァ? あ・ん・た・がダッチワイフだけど……何か?」
 ジャラジャラッ!
 ヤマセが強く鎖をたぐりよせると、カイトは意志と関係なく引き寄せられた。
 少年のゴツゴツした手がカイトの胸に伸び、荒々しくそこを掴んだ。
「い、いてぇっ!!」
 乳房を絞られてカイトは悲鳴をあげた。自分でそこを掴んだときとは比較にならない激痛だった。
「イイカゲン自覚しなよ。あんたもう、うちのガッコの王様じゃねぇんだよ」
「うぐ……放せ……」
「あんたは漏れたちに惨めに犯されるだけの公衆便所になるんだよ。おわかり?」
 もう一度カイトに悲鳴をあげさせてから、ようやくヤマセは手を離した。
 胸をかばうようにして両腕を交差させたのは、無意識の動作だった。
「あ、カイトちゃん、もう涙目?」
「うるせー!」
 どんな相手と喧嘩したときも感じたことのないような強い恐怖を感じる。いままでパシリに使ってたヤマセ相手にだ。そのことが自分で許せなくて、カイトは歯噛みした。


「とにかく痛い目見たくなかったら大人しくしてな」
 ヤマセはパンをちぎっては深皿のミルクの中に落としていく。
 食べ物の匂いに刺激されてカイトの腹がぐぅと鳴った。ヤマセがにやりと笑う。
「がっつくなって。エサの調理は終わったからよ」
 反論しようとしたとき、ヤマセの手が伸びてきてカイトの手首を掴んだ。もう片方の手も掴まれ、両手首を背中側にもっていかれた。
「なにを……!」
「いいから、ててから」
 ガチャリと、両手首に手錠がはめられた。
 ヤマセが手を離したときには、もはやどんなに暴れても手錠を外すことはできなくなっていた。背中側で手錠をかけられていて、一切手が使えない。
 そんな状態のカイトの前に、先ほどの「エサ」が差し出された。
「食ってよし!」
 意地悪くニヤつきながらヤマセが言う。
「てめぇぇぇ!!」
 怒りのまま、くってかかろうとするカイト。だが、首につけられた鎖がピンと張ってカイトを引き戻す。そしてバランスを崩したカイトは無様に床に転がってしまった。手が使えないため、起き上がるのも容易ではない。
 じたばたともがくカイトの姿を見下ろして、ヤマセは腹をかかえて笑っていた。


「ほらカイトちゃん。愉快なことしてないで、さっさとメシ食っちまえよ」
「こんなモン、食えるか!」
「食わないなら、それでもいいんだぜ……」
 ヤマセは銀の深皿を鎖の届く範囲の少しだけ外側に置いた。
「食わないんだろ?」
「…………」
 ごくり、とカイトの喉が鳴った。
 一度胃腸が目覚めてしまうと、空腹感は深刻だった。ヤマセの言う通り、昨日から何一つ口にしてないのだから、それも当たり前だ。
 本校舎のほうでチャイムが鳴り響いた。朝の予鈴だ。
「おっと。早く戻らねぇと遅刻しちまわぁ。へへへ」
「待てよ……」
「じゃ、俺はこれで」
「待てっつってんだろ!」
「ん? まだ何かあンの?」
 カイトは苦々しく舌打ちした。
 ここで意地を張るより、とにかくメシを食って体力をつけておきたい。いざというときに腹ペコでは脱走もままならない。ここは我慢だ。カイトは自分に言い聞かせた。
「……わかった。そいつを食ってやる」
「んん? 聞こえないぜぇ」
「この野郎。だまってその皿、寄越しやがれゴルァ!」


 ガシャン!
 床に置いてあった皿をヤマセが蹴倒した。ミルクが床にこぼれて乳色の水溜まりができた。
「なんだその口のききかたは!」
「な……」
「アタシに食べさせてください、だろうが。ホラ、言ってみろ」
「……食べさせて……くだ……い……」
「ああん? 聞こえねえっつーの! アタシに食べさせてください、だろ!」
「あ、あ……アタシ」
 カイトの中で大切な何かにヒビが入っていく。
「つづきは?」
「食べさせて、ください…………」
 フン、とヤマセは小馬鹿にしたように頷いた。
「そういうことなら…………そこにこぼれたモン、勝手に食いな。ギャハ!」
「そんな……もう一度皿に……」
「甘ったれるんじゃねーよ。俺だって忙しいんだ。それとも、雑巾にしみこませて飲ませてやろうか?」
「ううっ…………くそぉ…………」


 怒りと屈辱に震えながら、カイトは床に顔を近づけた。
 手を戒められていては、こぼれたミルクを手ですくって飲むことすらできない。
 舌をつきだしてミルクを舐めるしか方法はなかった。
 ポロポロと大粒の涙が頬を滑り落ちて初めて、カイトは自分が泣いていることを知った。涙なんて流したのは、記憶にある限り初めてだった。
 ぺろ……
 一度舌を這わせると、あとは舌が勝手に動いた。
 ぴちゃっ、ぴちゃっと獣じみた食事の音がする。
 その様子をヤマセがハンディカムで撮影していた。
 途中で撮影されてることに気づいたカイトだったが、それをやめさせようと無駄な努力を重ねることはしなかった。
(野郎……いまに見てろ。俺は絶対お前らに復讐してやるからな!)
 内心の煮えくりかえる思いを押し殺し、カイトはひたすら犬のような食事を続けた。
 やがて本鈴がなるころにはヤマセの姿もなくなっていた。


 屈辱の食事を終えたカイトは、両腕を後ろ手に拘束された不自由な状態でなんとか起きあがり、椅子に腰を落ち着けた。
 女の体で目覚めた当初のパニック心理からはようやく抜けられそうだった。
 深呼吸して落ち着くと、カイトは逃亡の算段について思案を巡らせた。
 ムラタたちに復讐したいし、それ以上に元の体に戻りたい。しかし、まず最初に考えないといけないのは、彼らの手から逃れることだった。
 首輪に取り付けられた鎖が当面の曲者だった。
 顎を引いて調べてみると、鎖と首輪は南京錠のようなもので繋ぎ止められていた。針金でも使えばあるいは錠を開けられるかもしれない。
 だが両手の自由がない今は、どうしようもない。それに針金なんて都合良く手に入るとは限らないし、手に入ったとしても錠前開けなど、いままでやったこともない。
 むしろ、セキュリティホールがあるとしたらムラタたちの心理的な部分にあるだろう。
 カイトの頭の中でひとつのアイデアが思い浮かんだ。
 そうこうしてる間に時間が過ぎ、再びチャイムが鳴った。一時間目の授業が終わった合図だ。
 今度もやってきたのはヤマセだった。
「よう。いい子にしてたかい……ん?」
 ヤマセは眉をひそめた。
 床に、不自然な姿勢でカイトが倒れている。
 ミルクをこぼした跡に、血の色が混じっている。
 毒に当たって吐血したまま意識を失ったように見える。
「お、おいっ! どうしたんだよ!」
 ヤマセはあわてて駆け寄った。
 倒れているカイトの手首を掴み、とりあえず生きていることを確認した。
 髪をつかんで顔を引き寄せると、カイトはかすかに喉を鳴らした。
「これ、どうしたんだよ。血ィ、吐いたのか?」
 カイトは弱々しく頷いた。
「なんでこんな……」
「腹が痛い……病院に…………」


 最後の力を振り絞るようにカイトは訴えかけた。
「やべっ。ムラタ先生に見せねぇと!」
「うっ……!」
 カイトは身を折って咳き込んだ。
 ぴちゃ、と血の飛沫が飛ぶ。
「ひぇぇぇ!」
 ヤマセは動揺し、カイトを担いでムラタのもとまで走ろうとした。鎖が邪魔なことに気づき、ポケットから鍵を取りだして南京錠を開いた。
 鎖がカシャンと床で跳ねた。
 今度こそヤマセはカイトの体を持ち上げた。少女の体のなめらかな感触は、相手があのカイトだということをしばし忘れさせるほどだった。
「ヤマセぇ……」
「ちょっと待ってろ! すぐに運んで……」
「廊下に……ほら……」
「あ? 誰かきてるのか?」
 ひょいと廊下のほうを振り向くヤマセ。
 その瞬間、カイトは生気を取り戻していた。
「なんだよ、誰もいないじゃ…………ぐふぁ!?」
 強烈な頭突きをくらってヤマセは悲鳴を上げた。両腕でカイトを抱えていたから、防ぎようがなかった。
 さらにもう一発。鼻柱を狙って頭突きがいった。
「ぎゃっ!!」
 ヤマセはたまらずカイトを放り出し、顔を覆った。
 ストンと着地したカイトは、狙い澄ましてヤマセの股間を蹴った。
 非力な少女の力でも、その効果は絶大だった。今度は悲鳴をあげることもできず、ヤマセは悶絶して倒れ伏した。
 容赦なくさらに数発、金的蹴りを浴びせると、ヤマセは泡を吹いて失神した。
「ケッ」
 カイトは血の混じったツバをヤマセの顔に向かって吐き捨てた。
 吐血の演技をするために、唇の内側を噛みきっていたのだ。


「テメェごときが俺に逆らうからそうなんだよ」
 カイトは拘束された手のかわりに足先で器用にヤマセのポケットを物色した。すぐに手錠の鍵も見つけ、両手を自由にすることにも成功した。
「ふう……」
 ふとヤマセの姿を見下ろすと、意識を失ったヤマセの下半身で、股間の部分だけが元気良く突っ張っていた。如意棒だけが激しく自己主張している。
「こいつ、ヘンな趣味でもありやがるのか……?」
 それを見ていると、いいように弄ばれた記憶が生々しく甦ってくる。あそこに震えるバイブを突っ込まれ、胸の先端にあてがわれたストローで強烈に乳首を吸われ……。
 嫌悪感にカイトは身震いした。
 と、同時に下半身がわなないた。
「!?」
 奇妙な感覚に驚いて股間に手をやると、生温かい湿り気が指についた。
(これが「濡れる」ってやつ……?)
 カッと顔が紅潮した。
 弄ばれた感触を思い出して女みたいに「濡れて」しまったなんて絶対に認めたくなかった。
「畜生、おまえらのせいだ!」
 カイトはそばにあった椅子を振り上げると、それでヤマセをめったうちにした。
 最後にとどめと言わんばかりに、ヤマセの股間を踵で徹底的に蹴りつけた。
 ヤマセの全身がピクピクと痙攣を始めたあたりでようやくカイトは攻撃を中止した。
 意識不明のヤマセを残してカイトは廊下に出た。
 旧校舎には前にも忍び込んだことがある。出口のだいたいの方向は把握してた。
 肝試しの舞台のような旧校舎を横切り、進んでいく。
 階段を降りてからしばらく廊下を行くと、昇降口だった。
 昇降口自体は封鎖されてて、その横の職員用の通用口だけが旧校舎への出入り口になっている。
 通用口の戸に手をかけたとき、はたと自分の格好が気になった。
 サイズの大きすぎるワイシャツを着ているだけで、下半身には下着すらつけてない。それよりなにより、女にされてしまった姿を他人に見られることには強烈な抵抗感があった。
 その抵抗感をあえて払いのけ、カイトは戸を開いた。


 一歩外に出ると、強い陽射しで目が眩んだ。ずっと薄暗い中に置かれていたせいだ。
「アハハ、自由になってやったぞ!」
 旧校舎を囲む金網にもたれ、カイトは一日ぶりの外気を胸一杯吸い込んだ。
 旧校舎のあたりは普段あまり生徒たちが立ち寄る場所ではない。授業中ということもあって今は周りに人っ子ひとりいなかった。
「さて、と……」
 カイトの眼が危険な光を宿した。
 このまま教師なり一般生徒なりに助けを求めるという考えはなかった。それでは、ムラタたちに復讐する機会を失いかねない。
 カイトは旧校舎の隣にある用具室に目をつけた。
 錆だらけの扉をこじ開けて中に入ると、カビ臭い用具室で武器になりそうなものを物色した。
 刃物は見つからなかったので、金属製のスコップを手にした。
 得物さえあれば、こんな体になっててもムラタたちに喧嘩で負けるつもりはない。不意をつけばさっきのヤマセのように軽く叩きのめせる。喧嘩の場数を踏んできたカイトには、自信があった。
「おい、そこで何してる」
「っ!」
 焦って振り向くと、用具室の入り口に中年の男が立っていた。
「あんたは……用務員の沼作!」
「へへへ。わしも意外に有名人なんだな」
 女としての人生経験を持たないカイトは、沼作の視線が自分の体を舐め回していることに気づいてなかった。
「……そこ、どけよ」
 ぶっきらぼうにカイトは言った。
 沼作といえば、学校の敷地を管理するため、旧校舎近くのプレハブに住み込んでる用務員だ。いつ洗濯してるのか垢にまみれた作業服で時折、敷地内の見回りをしている。噂では、学校内で逢瀬を楽しむカップルを覗き見るのが沼作の趣味なのだという。
「これは、これは……どこへおでかけかな?」
「あんたにゃ関係ねぇ」
「ところが、関係あるんだな。カイトちゃん」


「なにっ!?」
 不意に名前を呼ばれてカイトは動揺した。この用務員がなぜカイトの名を知ってるのか。
 沼作が自分の監視役だったという結論に到達するやいなや、カイトは手にしたスコップを振り上げて沼作に襲いかかった。
「むっ!?」
「死ねぇ」
 ガンッ!
 金属が頭蓋にぶち当たる鈍い音。
 女の腕力にはなっていても、それなりに強烈な一撃だった。
 だが次の瞬間、カイトは立ちすくんだ。
 沼作がニヤリと笑ったのだ。
「わしの頭は特別、石頭にできててなぁ」
「このクソ親父がっ!」
 沼作の金的を狙って蹴り上げた足は空中で、掴まれていた。
「手癖の悪い娘っ子だ。ヒヒヒヒ……」
 足を掴まれ、力任せに投げられた。カイトの体は用具室の壁に激突して、その場にくずおれた。
 中年の脂ぎった男の腕力と、か母沿い少女の力では、はなから喧嘩にすらならなかった。そこには絶対的な力の差があった。
 また、沼作が若い頃、“ジプシー沼作”として三流プロレス団体で地方興行をしてたと知ってたなら、カイトの対応もまた違うものになってただろう……。だが、全ては手遅れだった。
「どれ、よっこいせ……」
「あぐぅっ!」
 沼作はカイトの首輪に手をかけると、無造作にそれを持ち上げた。当然、カイトは首吊りのような状態で持ち上げられてしまう。
 カイトは爪先立ちになって必死で耐えた。
 すると沼作は携帯を取り出して、片手でどこかへ連絡をとった。
「おう。わしじゃ。ムラタさん、ちょいといいかい?」
 ムラタの名を耳にしてカイトは必死でもがいたが、沼作が首輪をさらに持ち上げることでいとも簡単にその抵抗は封じられた。


「ああ、そうじゃ。例のカイトちゃん。フラフラとお外に出てきよったんで、捕獲しときましたぜ」
 電話の向こうで、ムラタが何やら指示を出してるようだった。
「へへっ、そうしときますよ。御心配なく」
 沼作は通話を終え、携帯をしまった。
「てめぇ……ムラタの野郎とグルなのか!」
「へっへっ、そういうこった。そのまま逃げられるとでも思ってたかい?」
「くそったれ!」
「へへへへ……」
 沼作の生臭い息が顔にかかってカイトは吐き気を催した。
「そぉら」
「うわっ!」
 首輪を掴んで思いきりブン投げられ、カイトは体育用のマットの上に投げ出された。
「そのマットに両手ついてケツをこっちに向けな!」
「なんのつもりだよ!」
「いいから早くしやがれ!」
 沼作は近づいてくると、カイトの尻を思いきり叩いた。
「ひぃんっ!」
 押し殺したはずなのに、怯えた少女のような悲鳴が口から漏れてしまった。
「ほら、こうするんだよ!」
 世話が焼ける、と言わんばかりに沼作はカイトの手を取り足を取り、マットの山に向かせて注文通りのポーズを取らせた。
 極端に前のめりの姿勢にされ、否応なくマットの山に両手をつくしかなかった。非力になっているせいで、その姿勢から腕力だけで上体を持ち直すことができなかった。
「フヘヘヘ、こんな上玉は久しぶりだぜぇ」
「くそっ!」
 身をひねって逃げようとしたカイトだったが、その前に節ばった男の手でがっしりと腰を掴まれていた。万力で固定されたみたいに身動きがとれない。


 青臭い男の精の臭いが鼻腔に侵入してくる。男が下半身を空気に晒したのだ。女の肉体は敏感に男の放つ臭気に反応する。そのむせるような臭いにカイトは身もだえした。
「クネクネと腰をふりやがって。もう、たまんねぇな!」
 言うなり、熱く張り詰めた突起物が押し当てられた。
「あああっ!!」
「いくぜ……」
 火傷しそうなほど熱い剛直。
 ヌルリ……
 両腿の間にそれが侵入してくる。
 ヌルリ、ヌルリ……
 あまりにもグロテスクな感触に、本能的な動作で両腿をぴったりととじ合わせた。それがかえって男を悦ばせることになった。
「へへへへ、ヒッヒヒヒヒ……」
 熱くヌルヌルとしたペニスが敏感な腿の肉を押し割って進む。
「ひぃぃぃ……」
 おぞましさに、カイトは叫んだ。
「ああ……いい声で鳴きやがるぜ……」
 男の腰がカイトの尻に密着した。玉袋が押し当てられる感触まである。
 次にすうっとペニスが後退していった。ほっとする間もなく、それはすぐに突き押す運動に変わる。
 やがてカイトは、機関車のようなピストン運動に晒された。
 男の息がハッ、ハッと弾む。いつしかカイト自身もそれに合わせるように息をしていた。
「やだ……もういやだ! やめてくれぇ……」
「ヘヘ、でるぜ……」
 吐息混じりに男がつぶやいた直後だった。
 カイトの腿に挟まれた男のペニスが一瞬、信じられないほどにふくらんだ。そして、熱い男の精を吹き出した。
「あっ、ああああ…………」
 精を放たれ、太股に熱くぬめる液体の感触が広がった。ぬめぬめとその液体が伝い落ちて膝のあたりまでを汚した。


「ふぅ、スッキリしたぜ……。まったく、こいつが元々は男だったなんて信じられないぜ、ヒヒ」
 男の腕から解放されたカイトは、その場で膝を折り、汚された部分を手でぬぐった。
 べったりと男の濃い白濁液が手に付いた。
 欲望の捌け口。ただそれだけのために、意志と関係なく体を使われてしまったのだ。これほどの悔しさと無力感をカイトはいままで知らなかった。
「ほら、なにぼけっとしてやがる!」
 沼作に乱暴に首輪を掴まれた。そのまま引きずられるようにしてカイトは薄暗い旧校舎に連れ戻された。


「カイトくん。君には『お仕置き』が必要そうですね」
 ムラタのメガネのレンズが冷たく光った。
「僕の手から逃げようとしたばかりか、あまつさえクラスメイトにあんな怪我をさせて」
「勝手なこと言うな!」
 カイトが暴れようとすると、鎖がやかましく鳴った。カイトは沼作によって、あの鎖に繋ぎ直されていた。
 それからしばらくして昼休みになると、ムラタが訪れたのだ。
「可哀相に、ヤマセくんは緊急入院ですよ」
「すぐにあんたも後を追わせてやるさ」
「やれやれ……反省の色、なしですね」
 芝居がかって肩をすくめてみせるムラタ。
 ムラタは隣で作業をしていた生徒たちに声をかけた。
「準備はできてますか?」
「はい。言われた通りに設置しました」
「よろしい」
 ムラタはその「装置」に目を移す。
 それは木製の奇妙なオブジェにも見えた。
 木の枠組みがボルトで床に固定され、その枠組みの中央には垂直に伸びた棒が突き出している。


「運びなさい」
 そうムラタが命じると、三人の生徒がよってたかってカイトの手足を捕らえ、鎖から外して装置のもとまで運んだ。
「放せ、この、放しやがれ!」
 抗議は冷ややかに無視され、カイトの体は装置の上に運ばれた。
 左右にある踏み板の上に立たされると、ちょうどその中央にある棒をまたぐような格好になった。
 二人の生徒がカイトを押さえつけ、一人が棒の根本にあるハンドルを回した。すると、股の下にあった棒がせり出し、ちょうどカイトの女性器に頭を突っ込んだあたりで止まった。
「うっ、く!」
 柔肉にめりこむ異物の固さにカイトは呻いた。
「どれ……」
 ムラタが屈んでその場所を調べ、棒の先端を膣口へとあてがった。
「いいですよ。手を離してやりなさい」
 ムラタが命じると、カイトを押さえつけていた生徒たちが離れた。
 途端にそれまで支えられていた体重がかかり、踏み板が沈んだ。
「あうっ!」
 体が沈んだぶん、棒が膣内に侵入する。
 棒の太さは、大人の親指ほど。昨日のバイブに比べれば細いといえるが、それでも異物が体内に侵入してくるおぞましさに違いはない。
「〜〜〜〜〜〜〜!!」
 声にならない悲鳴だった。
 体重で少しずつ踏み板が沈んでいく。そのたびに棒……いや、巨大な張り型が胎内へと突き上げる。
 カイトにできるのは陸に上がった魚のようにただ口をパクパクさせることだけだった。
 やがて5センチほど沈んだところで、棒の侵入は止まった。たった5センチとはいえ、カイトにとってそれは全身を貫かれたにも等しい衝撃だった。
「フフフ。まるでカカシみたいですね」
 貫かれたまま身動きのできないカイトにそんな言葉が投げかけられた。


「脱走なんて企てるから、そうなるんですよ」
「あ、うぅ……」
「そんなに逃げたいんだったら、そこから逃げてごらん。鎖にも繋がれてないんだ。好きにしたらいい。フ、フフフ……」
 カイトは異物感と必死に戦っていた。
 男の身には存在しない器官。それを貫かれ、体内に異物が侵入している。そしてカイトの肉体はそれを受け入れるように形作られている。肉体から送られる感覚に、脳が、精神がパニックを起こしていた。
「どうした? 口もきけなくなったのかい?」
 ムラタが装置を蹴ると、その衝撃がじかに膣へと伝わり、カイトは身悶えした。
(こんなこと! こんなこと、あっていい筈がないっ!)
 ムラタたちへの怒りだけを支えに、カイトは砕け散りそうな精神を支えた。
 ムラタたちは油断している。
 そしてカイトをつなぐ鎖はない。
 ということは、反撃のチャンスではないか。
 そそり立つ張り型からなんとか逃れようと、カイトは意志の力を総動員して体を動かした。小刻みに震えている足を持ち上げ、踏み板から降りようとする。
 すると、片方の踏み板だけに体重がかかった瞬間、がくんと板が沈んだ。
 たちまち、張り型がさらに深くカイトを突き上げた。
「きゃああああっ!!」
 無意識に口を衝いた叫びはまさに悲痛な少女の悲鳴だった。
 装置の踏み板は、両方に均等に体重がかかっていない限り、沈みこむような仕掛けになっていたのだ。自転車のペダルのように片方が持ち上がり、片方が沈み込む。
 カイトがあわてて上げていた足を下ろすと、踏み板は元の高さに戻った。
「ふわっ……!」
 深くまで侵入していた張り型が少しだけ、引き戻された。引き戻されながら張り型のふくらんだ先端は膣壁を摩擦していく。
 周到に計算され、女体をいたぶるように造られた装置なのだ。
「ヨーロッパのバスク地方で中世、魔女の拷問に考案された器具だよ。多少、改良してあるがね。そいつに貫かれたら最後、自力では抜け出せなくなる」


 得意げに解説をしたかと思うと、ムラタはくるりと踵を返した。
「そのまま惨めな姿を晒してるといい。二度と逃げようなんて気が起きなくなるまでね」
 ムラタは足早に教室を出ていった。
 カイトは自分を貫く杭から逃れようと何度ももがいた。すると、生徒の一人、浩司がニヤついて言った。
「その棒の先端にさァ、特殊な薬品が染みこませてあるらしいぜ」
「なっ!」
「だからよォ、そんなにモゾモゾ動いてると、そのほら、アソコの中ですみずみまで薬が染みこんじまうんじゃないかねぇ」
 カイトは絶句してしまった。
 薬品……
 こんな拷問器具に塗られる薬品があるとすれば、それは……
 気のせいか、部屋の気温があがっているような気がした。
 素肌の上に来ているワイシャツがじっとりと汗ではりついている。
「うっ!」
 そのとき体の奥で灯った、小さな「火」。カイトはつとめてそれを無視しようとした。
「カイトちゃん、なんだかホッペ赤くなってない?」
「う、うるせぇ。さっさとどっか行きやがれ!」
「ケケケ。なんだかハァハァしちゃってない? カイトちゃん」
「うるせえっつって……くっ!」
 力んだ拍子に体が揺れ、張り型の先端がぞろりと体を内側から刺激した。
 少しずつ、少しずつ、体の芯に灯った火は強くなっていた。それを顔に出さないだけで、一苦労だった。
 少年たちは欲情に目をぎらつかせながらも、直接は手を出してこない。恐らくムラタにきつく注意されてるのだろう。その代わり、執拗に言葉でカイトをいたぶる。
「見ろよ、アレ!」
「ハハッ、カイトのやつ、乳首立ててやがる!」
 クラスメイトたちの喚声からカイトは顔をそむけた。


 さっきから、ワイシャツの布地を持ち上げてピンク色の蕾が固くしこっていた。シャツの表面に飛び出た二つの小さな突起。誰の目から見ても、カイトが乳首を固くしているのは丸分かりだった。
(くそう……なんでこの体はこんなに敏感に反応しちまうんだ!)
 虫けらのように思っていたクラスメイトが、自分のことを見世物にして楽しんでいる、あまつさえ欲情の対象にさえしている。そのことが我慢ならなかった。
 だが少しでも身じろぎすると、内側からは張り型に刺激され、外側からは乳首の先端を布地に擦られ、危うく甘い声をあげてしまいそうになる。
「ムラタのクスリってすげぇ効果だよなぁ」
「どうかな。カイトちゃんが淫乱体質なのかもしんないぜ」
「あはははっ、そりゃ言えてるぜ」
「いいザマだぜ。アソコに棒っきれブチこまれて、身動きできないままハァハァしてるんだからな」
「ま、お前の鼻息もかなりハァハァとウルサイけどな」
「ちっ。オマエモナー!」
 聞きかじった2ちゃん用語を振り回す少年たちに冷笑を浮かべる余裕さえ、いまのカイトにはなかった。彼らがあげつらうように、カイトはハァハァと乱れた呼吸をしていた。
 体に無理やり産み付けられた甘い疼きを押し殺すためには、自然とそういう呼吸になってしまう。
 昼休みの終わりとともに、クラスメイトたちは本校舎へと戻っていった。
 けれど、カイトは悪魔の拷問器具から解放されはしなかった。
 たった一人残された教室で、カイトは孤独に肉の疼きと戦っていた。
「あぁ……はぁ……はぁ……」
 何とか装置から逃れようと、カイトは何度もあがいた。
 たった一本の杭によってカイトは惨めに拘束されているのだ。
 逆にいえば、この杭から飛び降りることさえできれば、自由の身になれる。
 踏み板の上で爪先立ちになろうとすると、不安定な支点で支えられた踏み板は斜めに傾いでしまう。そのたびにカイトは張り型の突き上げに悲鳴をあげることになる。足の裏で均等に体重をかけてないと、踏み板は安定しないのだ。
 おまけに時間とともに、カイトの全身は誤魔化しようもないほど火照ってくる。


 汗にぬれたワイシャツはその下の白い肌や、しこった乳首さえも透けて見えてしまう。その猥褻な姿を、床に置かれたビデオカメラがひたすら録画してる。カイトが意志に反して演じさせられているエロティックなショーは全て記録されてしまう。
 ほんの数歩先にあるビデオカメラさえ、いまのカイトにはどうすることもできない。そして、汗をかくほどに薬品は全身に浸透していくようだった。
(ああ……早く、早く抜け出さないと、おかしくなっちゃう……)
 心の中にさえ、甘い匂いの靄が立ちこめ始めた。
「ま、負けてたまるか……」
 食いしばった歯の間からつぶやく。
 たった一本の杭によって、まるで何かの展示物のように人格も何もかも奪われた。そんな状態に甘んじるわけにはいかなかった。
 左右の踏み板の上でそろりそろりと体重を移動させる。もう何度目かもわからない、虚しい行為の繰り返し……。
 少しずつ、つま先を伸ばし、忌々しい張り型から体を浮かせようとする。
 そのときだった。
 授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。と同時に、装置に変化が生じた。
 ブゥゥゥゥゥン…………
 チャイムの音に連動して、張り型の基底部に取り付けられたモーターが振動を開始した。
 その振動はもろにカイトの「女」の部分を直撃した。
「あっ!! あああああああああああ!!! い、いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 もとから薄氷を踏むようなバランスで欲情に耐えていたカイトだった。
 不意の刺激に理性のダムはあっさりと決壊した。そして甘い快楽の洪水が肉体と精神を丸呑みにした。
「あん、あん、あんんん、はぁぁぁぁぁぁん!!!」
 鼻にかかった声で喘ぐと、カイトの背筋が弓なりに反り返った。
 「女」の器官は何度となく収縮を繰り返し、暴れる張り型をくわえこんだ。「受け入れる」側の性本能がカイトの体を操る。
 気が付くとカイトは快感に張り詰めた乳房をかき抱き、腰を蠢かせていた。
「あはぁ…………」
 一気にからだを持ち上げられるようなエクスタシーの奔流だった。


 最初の波が引いていったとき、自己嫌悪が頭をかすめた。
(俺は負けたのか……)
 もっとも、それはカイトが後に経験する屈辱と屈服に比べれば、ほんの些細なものではあったが……。
 すぐに次の波が押し寄せ、カイトの思考は泡となって砕け散った。
 女の肉体は、エクスタシーの余波がくすぶるうちに次の快感を運んでくる。
「あ、あ、あ、ああああ…………いやぁ…………」
 ビデオカメラは静かに一部始終をテープに収めていた。
 チャイムが鳴り終えると、張り型の振動も停止し、カイトはがくりと首を垂れた。
 口の端から透明な涎が糸を引いた。
 それ以上に下の口から分泌された蜜は、しとどに杭を濡らしていた。


 カイトがようやく意識をとりもどそうとしていた頃。
 ムラタは、平然とした顔で授業を進めながら、カイトの有様を思い浮かべていた。
(ククク。その躰で悦びを経験するほど、淫らに発情する雌の躰になっていくんですよ……)



 放課後の鐘が鳴る。
 ムラタが旧校舎の教室に顔を出したとき、カイトは貫かれた張り型の上でぐったりとしていた。
 そこから逃れようとする試みは全て徒労に終わり、囚われ展示される獲物としての哀れな姿をムラタの前に晒すことになってしまったのだ。
「少しは身に沁みましたか?」
 ムラタは真っ直ぐカイトの前までやってくると、服の上から階との乳首を摘んだ。
「ひゃうっ!」
 その鋭い刺激で、繰り返す快楽の波に濁っていたカイトの目が、いくぶん生気を取り戻した。
「あれほど逃げてもいいと言ったのに。どうやらカイト君はひどくこの器具がお気に入りの様子だ」
 ムラタがモーター部のスイッチを入れると、カイトを貫いた杭はまたあの振動を開始した。
「あ、あああんんっ……」
 小刻みなバイブレーション。既に何度も快美感を刻印されてきた肉体はいともたやすく反応してしまう。その様子に、ムラタは眼鏡を押し上げ満足そうに頷いた。
「クク……」
「やめ……もうっ、やめてぇ…………」
 哀れったらしく懇願するカイトの姿に、王様然として君臨してきたかつての面影は微塵も残っていない。
 ムラタがさらに力を入れて乳首をひねりあげると、カイトは喘ぎ、仰け反った。腿のあたりがわなないている。乳首を弄られただけで軽くイッてしまったのだ。
 ムラタは少女の花弁を貫くその杭に顔を近づける。「そこ」がどうなってるかを充分知ったうえで。
「おや……これはすごい。杭がびしょ濡れになってるじゃないか。それにこの甘ったるい雌の匂い。まさか、これは君の匂いじゃないだろうね?」
「あ、ああ……」
「どうなんだい。君は男の子なんだから、よもや愛液を垂れ流してメスのフェロモンをあたりに充満させたりはしないよね?」


「うう……ちくしょう……」
 カイトは唇を噛んで、顔をそむけた。
 食ってかかる気力すら残されてはいない。ムラタの手が胸をこねくり回しても、されるがままだった。ときどき堪えかねたように切ない鼻声をあげたりする。
 拷問器具にかけられて放置されてから、学校のチャイムが鳴るたびにカイトは凄まじい女体のエクスタシーに晒されてきたのだ。心身が回復しかけた頃に、次の鐘が鳴り渡る。その繰り返しで、カイトの精神は崩壊寸前まで追い詰められていた。
「安心しなさい。まだまだそんなものじゃない。肉体に馴染むにつれ、君は本物の女体の快楽を覚えることになるのだから」
 ムラタの言葉は死刑宣告にも思え、カイトは身震いした。
 いまでさえ息絶え絶えだというのに、女の肉体の快楽は本来もっと凄まじいというのだ。そんなものを体験してしまったら、脳が焼き切れてしまう。
「もう、いやだ……お願い、だから……」
「おねだりなら、それなりの作法があるでしょう? 本当にお願いしたいことがあるなら、僕に隷属する証のキスをしなさい」
 ムラタの顔がカイトの前に迫った。
 整ってはいるが、レンズの向こうの瞳は氷のように冷たい光を宿している。
(キス……?)
 ぼやけたカイトの思考の中でいくつもの声が飛び交った。
(これで許してもらえる)
(キス?)
(キスすれば)
(楽になれる)
(隷属の証……)
 カイトは自由にならない身で精一杯顔をあげると、ムラタの唇を求めた。
「あン……」
 ぴちゃ。
 瞳を潤ませたカイトのキスを、ムラタは受け入れた。
 だか、突然ムラタの顔が険しくなった。
 さっとカイトから身を引き離す。


 二人の唇の間に、絹糸のように細い血の糸が引いた。
「……危ないところでしたよ」
 唇を押さえ、ムラタはつぶやいた。
「く……そ……」
 ムラタの唇には小さな傷ができていた。
「油断してたら、噛み千切られていた、というわけですか」
「俺を……甘く……見るなよ…………」
「……フフ、そのくらい足掻いてくれなければ、獲物として期待外れというものです」
 ムラタは舌なめずりをして言った。
 廊下のほうから、今日も凌辱の宴に参加できることを期待してカイトのクラスメイトたちがやってきた。浩司、ハネダ、カジの三人だ。
「お前たち。カイト君を台の上に寝かせてあげなさい」
 力仕事は生徒たちに任せ、ムラタはクラスメイトたちにぐったりと身を任せたままのカイトを鑑賞していた。
 机を並べた上にマットレスがひかれ、即席のベッドが作られていた。そこにカイトは横たえられた。
 どさくさに紛れて少年たちはカイトの胸や尻を触ったが、カイトは疲れ果てていて暴れるどころではなかった。
「一時間ほど休息をとらせなさい。それから始めますよ」
 限界に達していたカイトは、マットレスに突っ伏して泥のような睡眠を貪った。
「……まだ『レベル1』ですよ。頑張ってくださいねカイト君。期待してますよ」
 眠りこける少女の耳にムラタはそっと囁いた。


 きっかり一時間後。カイトは再び慰みモノにされていた。
「男性への奉仕のしかたを基礎から覚えてもらいますよ」
 ムラタは顎をしゃくって少年たちに指示を下すと、自分はゆったりと椅子に腰掛け、眼鏡のレンズを拭いた。
「このクサレチンカス先公! テメェには絶対吠え面かかせてやるからな!」
「うむ、元気があってよろしい」
 文庫本を片手で持ちながら、余裕しゃくしゃくであしらうムラタ。
 カイトは少年たちの手によって手足に拘束具をつけられていた。
「……媚薬もだいぶ抜けてきて、頭がハッキリしてきたみたいですね。君たち、カイト君の扱いは慎重にね。くれぐれ油断しちゃいけませんよ」
「分かってますよ。なんたって、こいつの中身は『あの』カイトなんですからね」
「そういうことです」
 カイトに手枷と足枷が取り付けられ、両手と両脚は肩幅より少し広く広げられた。枷と枷の間を鉄棒で連結さるれと、四つん這いのその姿勢のまま自力では起きあがれなくなる。かろうじて床を這うことはできるが、二本足で起きるのは不可能だ。
 枷をつけられたままカイトは机を並べた台の上に乗せられた。
 家畜同然に四つ足で立たされてると思うとカイトの心は屈辱に燃え立つのに、なぜか下腹の奥が甘く疼いて微量の蜜が沁みだした。その生理現象を悟られまいと、カイトはニヤニヤ見守るかつての手下たちに罵詈雑言の限りをぶつけた。
「では、始めましょう」
 ムラタが椅子から立ち上がった。
「ヘヘ、俺が一番手でいいですか?」
「許可します」
「ありがてえ!」
 浩司がカイトの鼻先に立ったかと思うと、やおらズボンのジッパーを引き下ろした。
「きっ、汚ねえモン見せんな!」
 カイトは小鼻に皺を寄せて唸った。
 少年の股間はちょうどカイトの顔と同じ位置にある。ジッパーから「モノ」がまろびでると、それは勢いあまってカイトの頬を叩いた。
「っ……!」


「おっと、失敬、失敬。へへ……ひとつ、ひとのちん●にビンタされ、ってな」
 少年のペニスは根本まで皮の剥けた完全体だった。
 カイトはその場から離れようとしたが、拘束具をつけられて狭い台に乗せられた身では、それもままならなかった。
「なにをぼうっとしてるんですか」
 ムラタの叱責が飛んできた。
「彼のペニスに奉仕するんですよ、カイト君」
「冗談……」
 カイトの顔が引きつった。ゴクンと喉が鳴る。
「口には含まなくていいよ。食いちぎられちゃたまんねぇからな。それより、舌でぺろぺろやってくれよ」
 さも当然のように腰に手を当てて浩司は完全体ちん●をググッと突き出した。
 その先端からは早くも透明な先走りの液体が顔をのぞかせている。
 若いオスの分泌物がほとんど直にカイトの鼻腔に飛び込んできた。咽せそうになる臭気だ。
 沼作のときより濃厚で、甘い麝香臭の成分が強く感じられる。
 カイトは顔をそむけようとして、オスの匂いに惹かれている自分に気づいた。これ以上ないというほどのおぞましさを感じてるのに、鼻先に突きつけられた若々しいオスの性器を無視できない。
 また喉が鳴った。
 先ほどとは微妙に違う、生唾をのむ音だった。
 カイトの意志とは関係なく、さかんに生唾が湧いていた。
(こんなモン、近づくのもイヤなのに……)
 意志の力でそれから目を逸らそうとしても、匂いに反応してつい惹きつけられてしまう。
 男のモノを見せられて何度も生唾を呑み込んでる自分が信じられなかった。
「葛藤してるようですね」
「そ、そんなことないね……」
「それも当然ですよ。あなたの、そのメスの肉体は、異性の放つ性フェロモンに惹きつけられる仕組みになってますからね」
「ヘッ! こんな粗チンに誰が惹かれるってんだよ」


「おや……。カイト君の持ってた『モノ』に比べれば充分に立派だと思いますけどねえ」
「うわあっ、なんてこと抜かしやがる!」
 ハネダがさっと挙手した。
「先生、カイトのアソコは大人でしたか、子供でしたか?」
「……可愛らしいレザーアーマーを装備してましたよ」
 クイッと眼鏡を持ち上げてムラタは質問に答えた。
 どっとクラスメイトたちが爆笑する。
「うわぁぁぁぁん!」
 女にされたうえ、男としてのプライドまでガタガタにされ、カイトは泣き叫んだ。
 すると、カイトの涙に反応してか、浩司のモノがクンッと上向いた。
 ぎょっとするカイト。
「うへへ、盛り上がって参りましたーっ」
「このチンカス野郎が……」
「ちん●も持ってない女の子に言われてもこたえないね」
 ついに浩司のペニスは水平以上の角度にそそり立った。
 たちこめるオスのフェロモンにカイトはクラクラと目眩を覚えた。肉体が勝手に反応して、心を置き去りにしていく。
「舐めなさい」
 冷たくムラタが命じる。
「それとも、もう一度あの杭の上にまたがりますか?」
「い、いやだ! アレだけはもうイヤだ!」
「だったら、手間どらせないでさっさと奉仕を始めなさい」
「あうう…………」
 浩司のペニスに少しでも顔を近づけると息を吸い込んだだけで、全身が火照った。
(しかたない……いまは大人しく従うフリして…………)
 観念したように目を閉じると、カイトは舌先を少しだけ突き出した。
 カイトのその表情に、浩司のペニスはさらに仰角を増す。
(ままよ!)
 やけくそのようにカイトは舌先を伸ばした。
 ちょんっ。



 熱くヒートした肉棒の表面に触れた瞬間、カイトは舌を引っ込めた。
「あひぃっ!」
「オエエエッ!!」
 二人の声が同時に響いた。
「も……もうだめぽ〜〜〜〜!!」
 浩司の体がびくんびくんと痙攣し、その男性器の先端から液を迸らせた。
「ぎゃっ!」
 ねばっこい液体はモロにカイトにかかり、ワイシャツの胸元を汚した。
「あははは〜〜…………でちゃった」
「この役立たず!」
 ビシッ!
 ムラタに蹴飛ばされて浩司は転倒した。
「それじゃ奉仕にならないだろうが、ヴォケ!」
「ひぃぃぃ。だって、溜まってたんだよぉ」
「もういい。次!」
「押忍!」
 カジが張り切って浩司にとって替わった。
「さあ、舐めてくれやカイトちゃん」
「調子乗りくさって……あっ」
 カジのペニスが突き出されると、またもやカイトの肉体は意志を裏切った。敏感に空中のフェロモン臭に反応して、乳首までしこってくる。
「王様カイトも、女になっちまったらしおらしいもんだよな」
「俺は女じゃねぇ!」
「ほらよ」
 カジの黒々とした得物が固く勃起して差し出された。意に反してカイトの目は釘付けになってしまう。
「ペロペロやってくれや」
「こ、この借りは100倍返しにして……」

「早くしろ!!」
 カイトはもう一度目を閉じると、舌を出した。
 命令に従うフリをして油断させてやるんだ。そう自分に言い聞かせ、そっと舌を男のものに近づけた。
 最初は舌の先端で、ほんの少しだけ触れた。浩司と違ってカジは、まだ余裕があるようだった。
(こんなこと、早く終わりにしてくれぇ!)
 カイトは内心叫びながら、もう一度舌を突き出した。
 そのときである。
 下半身のほうで思いがけない痺れるような快感が走った。
「ひゃああああんっ!」
 思わず振り返ると、ムラタがカイトの剥き出しの股間の前に立っていた。電動のローターを持って、それを秘部に押し当てている。充血していた花弁は甘美な振動を受けて、ざわざわと反応していた。
 カイトの反応に気づくと、ムラタはローターを離した。
「何をしてるんですか。奉仕を続けなさい」
「でも!」
「杭にまたがりますか?」
「ちっ……」
 渋々、カイトはカジへの「奉仕」を再開した。
 するとまた、秘部にローターが押し当てられた。
「あっ、あっ、それダメ……気持ち……」
 気持ちよすぎる、という言葉をかろうじて呑み込んだ。刺激に反応して腰を振りそうになってしまう。
「奉仕を続行しなさい」
 冷たく響くムラタの声。
 カイトは声を殺してローターの刺激に耐えながらペニスに舌を這わせた。
(俺、どうしちゃったんだろ……)
(男のちんぽしゃぶらされて、なのにこんな体が火照ってるよ……)
 ぺろ、ぺろ……


 色黒のペニスの表面を舐める。
 干物のようなすえた匂いさえ、カイトには媚薬に等しかった。
 嫌悪からではなく、恍惚感からうっとりと目を閉じてクラスメイトのペニスを舐め上げた。
 下半身にはローターの刺激が心地よく響いてる。
(男だぞ、俺は男だぞ)
(でも)
(こんな気持ちいい……)
 いつのまにか、甘ったるい鼻声を出しながらペニスにむしゃぶりついてる自分がいた。
 それを見計らったようにムラタが言った。
「奉仕のたびにこうして性感を刺激してあげますよ。パブロフの犬を知ってますか? カイト君、やがて君は男のモノを目にしただけで体がこの快感を思い出して欲情するようになります」
「い、いやだっ!」
「君の意志なんて関係ありません」
 カイトがさらに抗議しようとしたとき、カジが「うっ」と低く呻いて精液を吐き出した。カイトの顔一面にねばつく液がまとわりついた。
「ふぅ……なかなか良かったぜ」
 カジは犬か何かのようにカイトの頭を撫でた。
「後始末も頼むわ。きれいにしてくれ」
「……せいぜい今のうち楽しんでな」
 虚勢を口にしてから、カイトはカジのペニスに残る精液を舐め取った。その行為に連動して、ローターが押し当てられる。
「ふあああっ……ああっあん!」
 そのときの刺激でカイトは軽いエクスタシーに達してしまった。ヴァギナがヒクヒクと緩やかに痙攣した。女としてのエクスタシーをまだ充分に自覚できないカイトは、下腹部で内臓が裏返ったような感覚にパニックを起こしかけた。
「君はずいぶんと可愛い逝き方をしますね」
「ちが……」
 ムラタの指が秘裂の内部にさしこまれた。


「ひんっっ!」
「膣が周期的に締め付け運動をしてますね。ペニスに快感を与えて少しでも多くの子種を絞りとるためのメスの体の生理反応ですよ」
「ち、ちがう、絶対にちがう!」
 だが、ムラタのその指摘でカイトは下半身に生じた感覚を正確に理解できたのだった。
「否定しても無駄ですよ。僕の与えたこの体は完全なメスの肉体で、君の意志なんておかまいなしに生理だってくるし、精子を注ぎ込まれればちゃんと妊娠だってするんですよ」
 冷酷な言葉がカイトを打ちのめす。
 悪夢のような……悪夢以上に酷い現実だった。
「なんなら今、試してみますか?」
「!」
 これまで感じたこともない種類の恐怖が背筋を駆け抜けていった。
「それがイヤなら、大人しく奉仕を続けることですね」
「………………」
 カイトは押し黙ってカジのペニスに残った汁を舐めた。
 塩辛い体液が絡みつくようにいつまでも舌に残った。
「ぅぇぇぇ……」
 カイトに「後始末」をさせてるうちに早くもカジの分身は硬度を取り戻していった。
「おっと、復活しちまった。悪いけど、もう一ラウンド頼むわ!」
「してあげなさい」
 カイトは震えながら奉仕を再開した。


 少年たちは入れ替わり立ち替わり、カイトの前に立ち奉仕を強要した。
 ティーンエイジの際限ない性欲のせいで、彼らは一度精を吐き出してもしばらく休むと元通りに回復してカイトの前に戻ってくる。
 無限地獄のように感じられた奉仕は、三時間にも及んだ。
 少年たちはまだ続けたがったが、カイトの感度が鈍ることを懸念したムラタが途中でストップさせたのだ。


 ムラタにとっては、これもカイトの肉体に男性への奉仕と肉欲を関連づけさせるための機械的な手順に過ぎなかったのだ。
 手枷と足枷が外され、カイトは元の鎖に繋がれる。
 舌の使いすぎで顎が痛んだが、精一杯の強がりでカイトはムラタを睨んだ。
「何か?」
「先生よぉ、浩司たちにやらせるばっかだけど、あんたのちん●はほっといていいのかよ」
「下らないことを気にしますね」
「人のモノをバカにしてたけど実はあんた、インポじゃねぇの? それとも、とても人前に出せないほどの包茎短小とか?」
 悔し紛れにカイトは挑発した。
「やれやれ……お喋りなダッチワイフですね」
 芝居じみた仕草で肩をすくめるムラタ。
「そんなに僕のモノに興味があるんですか?」
「へっ。さぞかしお粗末なブツなんだろうな。出し惜しみする奴に限って、そうなんだよ」
「そうですか……」
 ムラタがカイトの前にやってきた。
 カイトはてっきり、ムラタがジッパーを下ろしてペニスを取り出すものとばかり思っていた。
 ところが、ムラタはカイトの姿を見下ろして眉をひそめた。
「ひどい格好ですね」
「なんだって?」
「精液まみれじゃないですか。質の悪そうなDNAの臭いがプンプンしてきますよ」
「ばっ、バカ野郎、誰のせいでそうなったと思ってやがる!」
「……早く洗い流してきなさい」
 ムラタが顎をしゃくると、浩司たちがすぐさま反応した。
 カイトの首輪から鎖を外し、代わって犬の散歩用の手綱を首輪につけた。
「ついてこいよ」
 浩司が力まかせに手綱を引っ張ると、首輪がカイトの頸にくいこんだ。
「うっ、ゲホッ!」

 従わないわけにはいかなかった。長時間の「奉仕」でガクガクと膝が笑いそうになるが、なんとかカイトは後ろに付き従った。
 少年たちはトイレに入っていった。
「ほんとはカイトちゃんは女子トイレ入んなきゃいけないんだけどな」
 浩司が手綱を持ち、ハネダが水道の栓をひねった。ホースの先から錆の混じった水が勢いよく噴き出す。
 浩司が手にしていた手綱を配管に結びつけてから、ハネダのほうに回り込んだ。
「ちょーっと冷たいけど我慢しろよ」
 ハネダがホースの先を向けると、冷たい水流がモロにカイトを打った。
「ひっ、こらイキナリなにすんだ!」
「キレイキレイしましょうねえ♪」
 洗車でもするみたいにバシャバシャと水流を浴びせてくる。水流から逃れようとしたが短い手綱がすぐにピンと張って首輪が喉に食い込んだ。
「ぐえっ」
 そこへ少年たちが笑いながら水流の狙いを定める。
 そうやってさんざん弄ばれ、彼らがようやく蛇口を止めたときにはカイトは体温を震えてブルブルと震えていた。
 もう一度手綱を引かれて教室へと戻る。
 濡れ鼠のカイトを一瞥すると、ムラタは紙袋から乾いたバスタオルを取り出してカイトに手渡した。
「それで体を拭きなさい」
「でも……」
「何か?」
 この場で脱ぐのは……と言いかけて、カイトは口をつぐんだ。
 それではまるで、女として恥じらってるみたいではないか。
 濡れてシースルー同然になったワイシャツ。裾の部分が腰まで覆ってるとはいえ、その下の素肌が露出しているも同然……あるいはかえってそれ以上にエロティックである。
 カイトは無造作に濡れたワイシャツを脱ぎ捨てた。
 浩司たちの喚声は聞こえない振りをした。


 裸になると、胸の二つの膨らみのリアルさ、脇腹から腰にかけてのなめらかなラインがいやでも目に入ってしまう。望みもしないのに押しつけられた少女の躰だ。
 あまりにも細くて非力な躰が心細くて、カイトはバスタオルを羽織った。
「ヒュー、ヒュー。色っぽいぞ、カイトちゃーん」
「カイトたんハァハァ……」
 少年たちの野次を務めて無視し、濡れた体を拭いていった。男ときの感覚でタオルを使っていくと、思いがけず胸や尻の隆起がタオルにこすれる。特に、胸の先端の敏感な部分が擦れたときは危うく声を出してしまうところだった。
「さて。カイト君もさっぱりとリフレッシュしたところで、君にプレゼントをあげることにしましょう」
「どうせまたロクでもないもんだろ!」
「とんでもない。これでも、お金をかけてるんですよ」
 カイトはバスタオル一枚肩からかけた格好のまま、椅子に座らされた。
 ムラタは紙袋の底から何かを取り出そうとしている。
 隙をついて脱走する機会を窺ったものの、抜け目無く浩司が手綱を握っていてそのチャンスはなかった。
「これがプレゼントですよ」
 ムラタは宝飾店で指輪やネックレスを入れるような小箱を取り出すと、カイトの目の前で蓋を開けてみせた。
「……なんだこりゃ」
「強いていえば、君が他人の所有物になることの証、でしょうかね」
 小箱の中には金色に輝くリングと、ビー玉大のイヤリングらしきものが入っていた。リングもイヤリングもそれぞれ二つずつ並んでいる。
「まさか、これを俺に……」
「ほかに誰がいるっていうんですか?」
 椅子を蹴って逃げ出そうとしたカイトは無情にも手綱で引き戻され、三人がかりで椅子に座らされてしまった。
「君たち、そのまましっかりと押さえてなさい」
 三人に頭、肩、腕としっかり固定され、カイトは椅子の上で微動だにできない。
 ムラタの手にはいつのまにか注射器と消毒用の脱脂綿があった。


「やめろォォォォ!!」
「少しは静かにしたまえ」
 なおも喚こうとするカイトの口にすっぽりとボールギャグがかまされた。
 それを境に、カイトはただ苦しげに呻くことしかできなくなってしまった。
 ムラタは淡々とカイトの耳たぶを消毒し、そこに注射針を刺した。チクリと鋭い痛みがあって、それから徐々に耳たぶの感覚が麻痺していった。
 ムラタは小箱からイヤリングをつまみ上げる。ピアス式で小さな金属球を吊るような形のイヤリングだ。銀色のボールの上下には金属の輪が幾つも重なっていて、ちょっと揺れるだけでチャラチャラと音がする。
「これを耳に飾ってみたいと思うでしょう?」
「んんっ! んーっ、んーっ!!」
 カイトの叫びはくぐもった呻き声にしかならない。
「イヤならイヤとハッキリ言わないと。イヤです、と言えたらやめてあげますよ」
「んむうーっ! んんんっっ!!」
 小さな口にゴルフボール大のギャグをくわえ込まされて喋れる筈もない。ムラタは残酷な冷笑をたたえてカイトの無駄な努力を見守っていた。
「……どうやら異議なしのようですね」
「んーーーーーっっ!!」
 抗議の声を張り上げようとしても、ギャグの穴からむなしく唾液が漏れるだけだった。
 ピアス穴をあけるための器具が耳たぶに当てられた。耳の感覚は麻痺していても、ムラタの手の動きで、穴を開けられていることが分かる。
 まず、右耳に穴が貫通した。間をおかずに左も。
「知ってますか? ピアス穴を開けたら、穴が固定するまでの数ヶ月、ピアスを外しちゃいけないんですよ」
 ボール型のイヤリングがゆっくり近づいてくる。カイトは恐怖に目を見開いた。
 イヤリングの発する小刻みなチャラチャラという音が耳のすぐ横で聞こえた。今まさにピアス穴にリングが通されているのだ。
「……もっとも君の場合は、一生ピアスをつけたままなんですがね」
 リングの切れ目を繋ぐビーズが取り付けられていく。そしてリングが閉じられると、大型のペンチでビーズを圧迫する。


「こうするとネジ穴が変形して、二度とピアスを外せなくなるんです」
 ムラタはさも楽しそうに告げた。その言葉はカイトの脳裡で何度となく繰り返し響いた。
 そして他方の耳にも同じようにしてリングが固定された。
 事が終わると、カイトの口に突っ込まれていたボールギャグが外された。
「ああ、思った通りだ。とてもよく似合ってる。かわいらしいよ」
 耳からぶらさがる銀色の球をムラタは指先でピンと弾いた。高い音が響いてイヤリングが揺れる。
「そのイヤリングが揺れるたび、音を鳴らすたびに思い返しなさい。君が誰かに所有される快楽のための道具に過ぎないということを」
 少女のピンク色の唇はわななくだけで言葉を発することができずにいた。
(殺す)
(コロス)
(ブッコロス)
(惨めすぎる……)
(道具?)
(カイラクノタメノドウグ……)
 カイトの頭の中は赤黒い色のペンキをぶちまけたように混乱した負の感情が渦巻いていた。
「残りの二つはまた次の機会にプレゼントしてあげますから」
 そう言ってムラタは小箱を閉じた。
「さあ、今日はここまででいいでしょう。出ますよ」
「うぃーす」
 ムラタの走狗となり果てた三人の少年たちは声を揃えて返事した。
 カイトは引きずられて鎖に繋がれた。
 少年たちは去り際にひとりひとり、イヤリングに触れていった。
「一段と色っぽくなったぜ!」
「ピアスでおめかしとは、さすが校則違反のカイトさんだよな!」
 少年たちの手で弄ばれるたびに耳から吊されたボールはユラユラと揺れ、金属環がチリチリと音を立てた。



「あばよカイトちゃん。明日も漏れたちの性欲処理、頼むぜ」
 去り際の浩司の言葉が、カイトを絶望的な気持ちにさせた。

 ひとり残された教室の中でカイトはがくりとうなだれた。
 動作に合わせてイヤリングが揺れ、耳障りなチリチリという音を立てる。
『そのイヤリングが揺れるたび、音を鳴らすたびに思い返しなさい。君が誰かに所有される快楽のための道具に過ぎないということを』
 ムラタの言葉が耳に甦り、カイトは指が真っ白になるほど拳を握りしめた。
 怒りの感情と同じくらい、あるいはそれ以上に……ムラタの思惑通り生きたダッチワイフに作り替えられてしまうことへの恐怖があった。
 毎日こんなふうに責められたら、そう遠くない未来、ムラタの前に完全に屈服してしまうのではないか。
 ……そんな考えに恐怖している自分が情けなかった。
「殺してやる、殺してやる」
 ムラタたちへの殺意を口にすることでかろうじて精神の均衡を保てる。
 けれど物騒な文句をつぶやく声は、甲高い少女のそれになっている。それが悔しくて口をつぐむと、あとは心の中だけで同じ言葉を繰り返した。
 どれだけそうしていただろうか。
 隙間から射し込んでいた外界の光は途絶え、廊下で灯る一本の蛍光灯だけが光源となった。
 時間とともに激しい感情が幾分収まってくると、空腹と肌寒さを感じた。
 特に寒さのほうは深刻だった。夜になって旧校舎の空気は冷え込んでいた。少なくとも、湿ったバスタオル一枚では過ごしにくいほどに。
 あたりを見回すと、手の届く範囲内に衣類らしきものがコンビニのビニール袋に入れて放置されていた。ムラタたちが去り際に置いていったのだ。
 袋の口を広げると、まず体操着が目に付いた。肌寒さに耐えきれなくなっていたカイトはそれを引っ張り出して身に着けた。首と首輪の隙間を通してなんとか上半身に綿生地の体操着を着ることができた。
 ふと見下ろすと、胸の部分に校則通りゼッケンが縫いつけてあり、カイトの名が書き込まれていた。

(いちいち手の込んだことしやがる……)
 そう思いながら袋に残ったもう一枚の衣類を取り出すと、それはショートパンツではなく女子用のブルマだった。
「あの野郎っ!」
 思わず黄色い声で叫んでいた。
 ブルマを投げ捨てようとして寸前で思いとどまった。
 すっぽんぽんの下半身から寒気が上がってくる。たとえブルマでも背に腹は替えられないという状況だった。
 それに、男性のシンボルを失った己の下半身をいつまでも直視していたくはなかった。下半身丸出しにしていても、どうせ浩司やカジたちを悦ばせるだけである……。
 意を決して、ブルマに足を通した。
 コットンのやわらかな布地が脚を這い上がっていくとき、なんともいえない心地よさにため息が出た。
(ああ……なんでこの体、こんなに敏感なんだよぉ)
 伸縮性のある布地はすっぽりと腰にフィットした。
 股間に何もないため、ぴったりと布が押し当てられて、閉じ合わせた腿との間に小さな逆三角形の空間を形作っている。
 それに、こうして布地に包まれてみるとキュッと盛り上がったヒップの形がより強調される。カイトは無意識にぷにぷにと弾力のあるお尻を触っていた。
 はたと振り返って窓ガラスを向くと、勝ち気そうな美少女がブルマ姿でカイトを見返していた。
 チリチリとイヤリングが音を立てる。
 カイトは一瞬、我を忘れてガラスに映る女の子の姿に目を奪われていた。
 ゆっくりと、それが己の鏡像に過ぎないという事実が頭に染み渡る。
「こんなの……俺じゃない!」
 そう否定してみても、カイトが胸に手をやるとガラスの中の少女も同じ仕草をする。そして、胸のやわ肉の感触が手と胸の両方で生じる。
 鎖に繋がれた少女の姿。それは恐ろしくエロティックだった。
 カイトの価値観の中で、女とは征服し屈服させる対象だった。いまガラスに映る囚われの少女の姿は、そんなカイトの嗜好にぴたりと合致していた。


 少女は戒めの鎖を持ち上げ、それを外そうと虚しく抗う。非力な腕で、無駄と分かっている行為を繰り返す……
「ああ……」
 屈辱感にまみれた吐息を、カイトはガラスの向こうにいる少女の声として聞いていた。
 下腹部に灼熱のような熱い疼きを感じた。熱い塊が剣のように持ち上がる、男だけの知る昂揚感。
(犯したい……)
 これほど純粋に女を犯したいと感じたのは、生涯で初めてだった。
 たまらずそそり立ったペニスをしごこうとして……
 そこで否応もなく現実に引き戻された。
 ブルマの下の喪失感。自己主張している筈の剛直は影も形もない。
 カイトの「男」は奪われてしまったのだ。……それも、恐らくは永遠に。
 いまのカイトは男に組み敷かれて犯されるのを待つ、囚われの少女だ。
 それなのに、欲情した男としての心は、目の前の少女にペニスを突き立てろとカイトをせき立てる。
 ……どうやって?
 この受け身の肉体でどうやって女を貫けというんだ!?
 心と肉体の矛盾にカイトの心は引き裂かれそうになった。
 つるんとした股間を虚しく手が行き来する。その間、脳は犯せ、貫け、突き立てろと喚く。灼熱のような欲望はたしかに感じるのに、この肉体はそれを解き放つ器官を有していない……。
 気の遠くなるようなもどかしさ。
 もがくように手を動かしたとき、指先が股間を押した。
 くちゅ……
 布地を押してやわらかな秘部に指が食い込んだ。
 瞬間、電気が走った。
 今度はそうっと、意識して指を折り曲げた。
 花弁のあたりを押すと、ピアノを弾くように七色の快感が躰の芯を駆け抜けた。
 ずっと感じてる熱い塊まで、あと一歩だった。


 そっと指を動かし、その部分をなぞるように上へと進む。やがて、小さな小さなふくらみへと行き当たる。
 思いきってそこを指で触れた。
「ふぁぁっ……!」
 痛覚に近いほどの鋭い快感が脳天まで突き上げた。
 間違いなくそこが欲望の凝固するポイントだった。
 もう一度指の腹でそこを撫でると、甘く痺れる快感が全身を駆けめぐった。
 立っていられなくなり、マットレスの上に横になった。
 目を閉じ、できるだけそうっと秘部に指を滑らせる。
「あぅぅ……ふぅ…………」
 ゆっくりと指を前後させる。
 目を閉じていると、ペニスをしごいてるという仮想現実に浸ることができた。
 淫らに喘ぐ少女と、それを犯そうとしているカイト。
 見えないペニスを突き立てるようにカイトは腰を振った。自分の口から出る喘ぎ声を無理やり犯してる相手のものと思いこむ。
 だが、やがて快感が高まっていくうちに、いつのまにか仮想現実の中でまでカイトは少女の姿になっていた。
 仮想の中で逆にカイトは男のペニスに貫かれていた。
 こんな筈じゃない、と抗議しようとしたとき、快感が臨界点を突破し、爆発的に広がった。
 身をよじってカイトは強烈なエクスタシーの波を耐えた。
 長く尾を引く絶頂感と浮遊感。
 バイブや拷問器具の杭によって強引に与えられた快感と違い、解放感を伴ったクライマックスだった。
 まだくすぶる恍惚感の余波に浸りながら、カイトは女としてのオナニーをしてしまったことをホロ苦く後悔していた。
(こんなの間違ってる……俺は男なんだぞ!)
 そのとき、廊下のほうから聞こえる物音にカイトは跳ね起きた。
 オナニーしてしまった直後の呆けた姿をムラタにだけは見られたくなかった。
 足音が近づいてくる……


 しかしその足音は、妙にしずしずとしたものだった。
 やがて戸の磨りガラスの向こうに小柄な人影が立った。
 誰だ……?
 カイトは用心深く身構えた。
「入るわね」
 そう断って戸を開けたのは、制服姿の少女だった。
 彼女は鎖に繋がれたカイトを見ても怪しむことなく、まっすぐに近づいてきた。
「誰だ、あんた?」
「桜花女子一年4組の村田葵……」
「隣の女子校の奴か!」
 言われてみれば見覚えのあるような顔だ。どこかですれ違ったことがあるのだろう。
「こんなとこへ何しに……いや、それよりいますぐ外へ行って人呼んできてくれ!」
「ごめん。それはできないわ」
 葵は悲しそうに首を振った。
「なんでだよ!」
「ごめんね、それはお兄ちゃんが許してくれないから」
「どういう……」
 ハッと気づいてカイトは息を呑んだ。
 村田葵。
 村田……ムラタ……
「あんた、あのムラタの妹なのか!」
「ええ」
「そういうことなら……」
 カイトはやおら葵に躍りかかった。
「きゃっ!?」
 葵の背後から首に腕を回し、ぐいと自分のほうへ引き寄せる。
「く、苦しいわ……」
「我慢しな。あんたには人質になってもらうぜ」
 この少女を人質にとればムラタを脅して自由の身になれる……カイトはとっさにそう判断したのだった。


 体が密着してるせいで葵の背中に胸が押し当てられてひしゃげたようになってる。葵が身じろぎするたびに、胸がこねくり回される奇妙な感触に耐えなければならなかった。
「お願い、落ち着いて」
「俺は充分、落ち着いてるぜ」
「私を人質にしたって、お兄ちゃんを脅すことなんてできないわ……」
「やってみなきゃ分かんねぇだろ!」
「ううん……お兄ちゃんにとって私はどうでもいい存在なの。私、バカで役立たずだから。私なんかを人質にとっても無駄なんだよ」
 背後から拘束されながら、葵は淡々と告げた。
「本当にそうなのか試してみるまでだ」
「ダメ。そんなことしても、あなたがヒドイことされるだけだよ」
「俺のことを心配してくれるってか? 信用できないね! あんたは奴の身内だ!」
「違うの。私はあなたの身の回りの世話を申し出ただけで……お願い、信じて」
「信じろって……こんな目に遭わされて、何を信じろっていうんだよ!」
 泣きそうになりながらカイトは叫んだ。
 そのとき不意に腹の虫が鳴った。その場の問答に不似合いすぎる、ギュルルルという滑稽な音は葵の耳にも届いていた。
「……ちゃんと御飯食べてないんだね。私、食べ物持ってきてるから」
 まるで葵に返事をするみたいに、もう一度腹の虫が騒ぎ立てた。
「逃げたりしないから、この手を離して。ね?」
「う……」
「あなたが私を信じられない気持ちは分かるけど、あなたに害を加えるつもりなら、私ひとりで来たりはしないわ」
 さんざん迷った末、カイトは恐る恐る葵を解放した。
「とりあえず、お前のこと信用してやるよ」
「ありがとう、カイト君」
「ふん……いいからメシ、持ってこいよ」
「うん、分かった。ちょっと待っててね」
 葵はひょこひょこと廊下に出ていった。
(まさか、このまま逃げたりしないよな……?)



 疑念が首をもたげかけたとき、葵は再び戻ってきた。中身の詰まった小型のリュックを手に提げている。
 そのリュックの中から葵は握り飯を取り出した。
 コンビニで売ってる、ビニール包装のおにぎりである。シャケ、おかか、明太子と用意されている。
 シャケの握り飯を受け取ると、カイトはビニールシートを剥がすのももどかしそうに、ガブリと食いついた。
 その横で葵は水筒からコップにお茶を注いでいる。
「ごめんね、私、料理下手だから……」
「たしかに、そりゃ役立たずかもな」
 無神経な受け答えに葵は一瞬、傷ついたような顔をした。カイトはそんなこと意に介さず、がつがつと握り飯を食らった。
「次!」
 一個目の握り飯をたいらげてカイトはさも当然のように手を出した。
「おかかと、明太子とどっちがいい?」
「どっちでもいいよ! どうせ全部食べるんだから」
 どちらを渡そうかと迷ってる葵の手から握り飯をひったくり、カイトは大口を開けてかぶりついた。事情を知らない男がその光景を見てたなら、美少女が台無しだと嘆いたことだろう。
 やがて、三個目の握り飯にとりかかったところで、カイトは大きなゲップをした。
 そして、胃のあたりを手で押さえ、不思議そうに目をぱちくりさせた。
「なんでだ? 腹が一杯になってきたなんて……コンビニのおにぎりなんて、三個や四個、楽勝で食えるはずなのに」
「それはそうだよ。女の子の体になったぶん、胃袋だって小さくなってるんだから」
「マジかよ……」
 食いかけの握り飯を置くと、カイトは茶を流し込んだ。
 腹が満たされたおかげで、ともかくも人心地がついた。
 カイトは横でちょこんと正座してる葵に向かい合った。
「なあ。お前、こいつの鍵は持ってないのか?」
 ジャラジャラと首輪につけられた鎖を鳴らしてみせる。

 葵は首を横に振った。
「私が力になれるのは身の回りの世話とかだけだから……」
「なるほどな」
 カイトとしてもそこまで安易にことが運ぶとは思ってなかった。それに、例えこの旧校舎を逃げ出したとしても、前回のように外へ出た途端、沼作に捕まっては意味がない。
 満腹したおかげで、そういったことを冷静に計算するだけの余裕が生まれていた。
「ところでだ……」
「うん」
「お前の兄貴は、あいつは何者なんだ!」
「え……」
「脳移植って何なんだよ……なんでこんな田舎の研究所が、SFに出てくるみたいな実験してるんだ!?」
 カイトの知ってるムラタは、学校で週に一度生物の授業を担当してる非常勤講師だ。普段は学校の裏手にある研究所で働いてるというのも知ってる。
 けれど、生徒を拉致してSFのような生体実験に使ってるなどとは、想像の埒外もいいところだ。
「あの研究所はお兄ちゃんのための研究所なのよ」
「どういうことだよ?」
「ある国がお金を出してあの研究所を作ったのよ。その国の機関はお兄ちゃんの頭脳をすごく高く評価してて、当時一方的に大学を追放されてたお兄ちゃんを助けてくれたわ。非公式の援助だから、目立たないように田舎の村に研究所が作られたの」
「それって、軍事目的の研究とかしてるってことか?」
「詳しいことは私は何も……。お兄ちゃんが話してくれないから」
「そのお前のクサレ外道兄貴のせいで俺はこのザマだ!」
 カイトは胸に手を当てて抗議した。
「……お兄ちゃんを悪く言わないで……」
 葵は複雑な表情で言う。
 カイトは言い返そうとして思いとどまった。
(この女を怒らせるより、なんとか丸め込んで味方にできれば……)
 一度深呼吸をしたカイトは、宥めるように猫なで声で声をかけた。


「わかったよ。言い過ぎた」
「お兄ちゃんはね、本当はとっても優しいんだ」
 どこがだ!
 と叫びたくなるのを必死に堪えるカイトだった。
「お兄ちゃんがこんなことするのはきっと、やむを得ない事情があったんだと思う……」
(どういう事情があったら、いたいけな高校生男子を拉致って女の体に脳移植するんだよ!)
「きっと男の子に戻れるから、いまはヤケを起こしたりしないでね」
「わ、わかったてるよ……」
 と、神妙に肯いてみせる。
 葵を人質にとるよりも手なずけて味方にしたほうが、現状の打開策としては確実だろうという判断だった。
「そういやあんた、まるで俺のこと知ってるみたいな口振りだが」
「うん……カイト君は私のことなんて覚えてないよね」
「あ? どっかで会ったか?」
「…………」
 葵は一瞬傷ついたように目を伏せた。
(やば、好感度が……)
 慌ててフォローしようとしたとき、葵は笑顔を浮かべて言った。
「気にしないで。私、もともと目立たないほうだから」
「い、いや……」
「前にね、カイト君に助けてもらったことがあるの、私」
「へ? そ、そうなのか?」
「カイト君にとっては何でもない、ちょっとしたことだったかもしれないけど、私はそのときのこと一度も忘れたことないわ」
 カイトは相変わらず何も思い出せず、適当に相づちを打つことしかできなかった。
「お兄ちゃんが研究所の人と話してるのを聞いてカイト君がこうなってることを知ったの。だから私、お兄ちゃんにお願いしてカイト君の面倒をみさせてもらうことになったのよ」
「飼育係ってわけか……」
「え、何?」


「いやなんでもないぜ。あんた、じゃなかった……葵ちゃんは優しいんだな」
「そ、そんなこと……」
 と、葵は頬を赤らめて俯く。
 あまり世間ズレしてないお嬢様タイプ、とカイトは冷静に値踏みをした。
(こいつを突破口に……)
 葵を利用する算段を立てているそばで、彼女はカイトに気遣わしげに視線を投げかけていた。
 葵の目線がカイトの胸の双球に注がれる。
 バストのサイズでは明らかに葵よりも上だ。
 視線に気づいたカイトは気恥ずかしくなって身をよじった。
「な、なんだよ、ジロジロと」
「体操着の下、何も着けてないのね?」
「いいだろ、別に!」
 ロケットの先端のように突き出したバストの先端で、体操着にくっきりと乳首の形が浮き出てた。布地がこすれたせいで敏感に勃ってしまった。そのことに気づいてカイトは狼狽えた。
「下着がなかったら、居心地悪いでしょ?」
 葵は同性の気安さでカイトの胸をじろじろと見る。
 彼女のいう通り、一度意識してしまうと身動きするたびに胸が好き勝手にプルンプルンと揺れるのは気になってしかたなかった。おまけに体育着の裏地が乳首を擦ったりすると、突き刺すようなくすぐったさに襲われてしまう。
「あら、ちゃんと用意されてるわ」
 そういって葵は置いてあったコンビニのビニール袋からブラジャーとパンティを引っ張り出した。
 カイトは敢えて無視していたが、体育着と一緒に女物の下着も用意されていたのだ。
「ブラの着けかた、きっと分からないよね。私が着けさせてあげる」
 葵は迷いのない手つきでカイトの体育着をめくりあげた。ぽろん、とこぼれるように踊り出す色白の双乳。
「きれいな胸……」
 呟きながら、葵はブラを着けさせようとした。慌てたのはカイトだった。


「こら、待て! なに勝手なことしようとしてんだ! 殺すぞ、このアマ!」
 びくっと葵が身をすくませ、怯えた顔でカイトを見た。
(まずい! こいつを敵にしちゃ元も子もないんだった!)
 カイトは葵にヘラヘラと愛想笑いを振りまいた。
「怒ってるの、カイト君?」
「んなこたーねーけど」
「よかったぁ〜」
 胸を撫で下ろしたかと思うと、葵はもう一度ブラを手に取った。
「女の子の体形なんだから、下着つけてたほうが絶対楽だよ。ほら、ブラはね、こういうふうに着けるの」
「お、おい……」
 葵はカイトの背後に回り込んでブラを引っ張った。ブラのカップが胸に覆い被さってくる。さらに胸の肉を葵のやわらかい手がすくって、ブラのカップに詰め込んだ。
「ンッ!」
 乳房をこね回されると自然に鼻に掛かった喘ぎ声を出してしまう。
 パチンッと背後でブラの留め具が合わさり、肩紐の位置も調整された。
「これでいいわ。あと、パンツもはかないと、衛生的に問題よね」
「あーうー……」
 断る方法が見つからないうちにパンティのほうもなし崩しに穿かされていた。
「これでいいわね。どう動きやすくなったでしょう?」
「………………」
 カイトは内心憮然としていた。
 ただ、ブラジャーにすっぽり胸が包まれたおかげで乳房の重みが支えられ、それまでより体が楽になったのは確かだった。スースーする股間もやわらかなシルクのパンティに包まれて快適になった。
 女の体形に女物の下着が合うという事実は認めざるを得なかった。
「私、そろそろ戻らないとお兄ちゃんに怒られちゃう。また……明日も来るからね?」
「ああ。頼むぜ、葵ちゃん」
「……うん」
 カイトに男っぽい口調で名前を言われると、葵は顔を真っ赤にして頷いた。


 葵はぺこりと頭を下げると、逃げるようにタタタと走り去っていった。

「……ヘンな女だぜ」
 カイトはため息をついた。
 ヘンな女だろうと、脱出への唯一の糸口には変わりない。
 葵につけられたブラを外そうとしたが、背中に手を回しても留め具がどうしても外れなかった。思いあまってブラの紐を千切ろうとしたが、内部に針金が通っていてビクともしない。
 カイトはあきらめて体育着の裾を下ろした。
 ブラに支えられた胸はいよいよツンと飛び出して自己主張している。めりはりのついた凹凸がセクシーで、それと学生っぽい体育着のゼッケンがミスマッチだった。
「ちくしょう、なんでこんなエロいんだ……」
 しみじみと己の体の凹凸に手を這わせるカイト。
 エログラビアでも滅多にお目にかかれないようないやらしい女の体に、つい昨日まで健全な男子高校生だったカイトがムラムラしない筈がなかった。
 股間でちん●が勃ちあがるような気配がしたが、それは虚しい幻覚だった。
「ああくそ、たまんねえ。犯してーよ……」
 自分の声のハスキーな色っぽさもますますカイトの性衝動を刺激した。
 たまらず腰をくねらせてしまう。見えないペニスを突き立てようとするかのように……。
「やめだ、やめ!」
 自分の姿の滑稽さに腹が立ったカイトは、怒鳴ってマットレスの上にうずくまった。
 葵も去って静まりかえった廃教室でカイトは懸命に高ぶる気持ちを鎮めた。


 一方、葵は自宅に戻るとダイニングルームの食卓をチェックした。
 兄のために用意してあったレトルト尽くしの夕食はきれいに片付いている。
 そうっと二階に上がると、クラシック音楽が耳に入ってきた。
 兄が自室のコンポでCD鑑賞しているのだ。
 突然、音楽が止んだ。
「……葵か?」


「うん」
「そうか、カイト君の様子を見に行ってたのか」
「おにぎり、食べさせてあげたよ」
「彼は、もともと綺麗な顔をしてたけど、女の子にしてあげたらそれはもう美少女になったよ、フフ」
「うん、とっても綺麗だった。それに、男の子のりりしさも残ってて……」
「葵は、男だったときの彼とセックスしたこと、あったのかい?」
「え!? ううん、そんなことないよぅ……」
 葵は困った顔で俯いた。
 カイトとの出会いは、葵がバイト先のファミレスでレイプされかけたのがきっかけだった。
 葵をトイレに連れ込もうとしてた高校生グループを、たまたま先客としてトイレにいたカイトが叩きのめしてくれたのだ。そのときのカイトの姿は葵の瞼に焼き付いている。
 その後、ときどきファミレスにやってくるカイトにさりげなく接近を試みたりしたのだが、カイトのほうは葵のことを特に意識してないようだった。
「でも……お兄ちゃんはどうしてカイト君を被験者に選んだの?」
「お前が詮索するようなことではないだろう?」
 冷たく言い放つムラタ。葵はあわてて兄に謝った。返事はなく、再びクラシック音楽が流れた。
「私、またお兄ちゃんを怒らせちゃった……」
 葵は自分の部屋に入ると、制服を脱いでベッドに横になった。
 廃教室でのカイトの姿、声が甦ってくる。
 姿はたしかに女の子なのに、カイトの仕草や喋り方は初めて彼に会ったときそのままだった。その倒錯的なイメージが葵の心を刺激した。
「カイト君……」
 呟きながら葵はそっと自分を慰めた。


 監禁されて二日目。
 カイトは閉ざされた窓の隙間からこぼれてくる陽射しで夢から醒めた。
 起き上がった途端、両耳に取り付けられた隷属の証のピアスがチリチリと音を発した。
 同時にブラで胸を支えられる感覚と内腿に感じるブルマの肌触りがカイトを現実を認識させる。
 夢の中でカイトは、男として葵の体を貪っていた。だが、目覚めてみれば現実のカイトは犯される側のか弱い女だった。
 カイトはブルリと身震いした。
 寒かったわけではない。尿意を催したのだ。昨晩、葵にお茶を差し入れられたおかげで尿がたまっていた。
「ああくそっ、トイレどうしたらいいんだよっ!」
 カイトは丈夫な鎖に八つ当たりした。これに繋がれている限り、半径数メートルの範囲から外へ出ることはできない。
 次第に強くなってくる尿意。カイトは腿をすり合わせるようにして耐えた。
 そこへ、ムラタと浩司たちが姿を見せた。
「おはよう、カイト君」
「へへへっ、カイトさんのブルマ姿が見れるとは思わなかったぜ」
 浩司が近寄ってきて、強引にカイトの体操着の裾をめくりあげた。
「や、やめろ!」
「おーっと、律儀にブラまで着けてるじゃん! ……カイトちゃんって実は、そのケがあったんじゃねーの?」
「なわけないだろ! 放せよ!」
「えへへ……」
 嫌がるカイトの反応を面白がって浩司はブラの背中側の紐を何度も引っ張った。そのたびにボリュームのある胸がフルフルと揺れた。まるでそういう玩具のように。
 カイトは浩司のイタズラから逃れられずにいた。
 下手に暴れると小便を漏らしてしまいそうだった。男の体と違って、ちょっとした衝撃で尿が漏れてしまいそうな感覚なのである。


 抵抗が少ないのをいいことに、浩司は次にブルマを摘んで引っ張り上げた。カイトのプニプニとした股間にきゅっとブルマの布地がきつく食い込む。
「ひぃっ!」
 カイトが尿を我慢しようと、せつなさそうに腿をすり合わせる。その仕草を見落とすムラタではなかった。
「どうやらカイト君はおしっこを我慢してるみたいですね」
 浩司はそれを聞いてブルマを弄る手を止めた。
「なーんだ、そうならそうって言ってくださいよ、カイトさん」
 わざと、カイトの手下だったときのように「さん」づけで浩司は言った。
「君たち、このダッチワイフをトイレに連れて行ってあげなさい。何をさせればいいかはもう説明しましたね」
「分かってますよ、へへへ」
 カジ、ハネダもひひひ、と笑った。
 少年に三人がかりで引っ立てられ、カイトは抵抗のチャンスもなくトイレに連れ込まれた。
 もちろんそこは旧校舎の男子トイレだった。
「そういや前にここで、カイト君にリンチされたことあったっけ」
 ハネダは皮肉っぽく言うと、二の腕に残る根性焼きの跡を見せた。もちろん、それはカイトに煙草の火を押しつけられた跡である。
「そんなこもあったかな。ザコをいたぶったことなんて、いつまでも憶えちゃいないな」
 カイトはハネダに向かってツバを吐きかけた。
「このやろっ……!」
「よせよ」
 浩司がハネダを制止した。
「ダッチちゃんの強がりにイチイチむきになんなって。それより、ショーの始まりといこうぜ」
「ああ、そうだったな」
 カイトは男子の立ち小便用の便器の前に立たされた。
「なあ、カイトさん。あんたにはひとつ、男らしく立ちションで用を足してほしいなぁ。まさか男の中の男のカイトさんが立ちションひとつできないなんて言わないよね?」


「テメェら……!」
「立ちションができたら、解放してやってもいいってムラタ先生、言ってたぜ。でも立ちションできなかったら罰ゲームだってさ」
 カイトはぎりぎりと歯噛みした。
(できねぇって知ってて無理やりやらせるつもりかッ!)
 浩司たちの意図は明らかだった。男の象徴を失って、もはや立って用を足せなくなったカイトを辱めたいのだ。
「早くしろよ〜カイトちゃん。ここで我慢したらもうトイレ行くチャンスないんだぜ?」
「ったく、じれってー!」
 カジがカイトのブルマに飛びついてずり下げると、足先からパンティごと抜き取ってしまった。
 剥き出しになった下半身にひんやりとした冷気が触れる。
 必死で堪えていた尿意がそこで限界を越えてしまった。
 下腹部が冷えてブルッと震えた。それが引き金となって尿が溢れてしまった。
「やっ!」
 手で股間を押さえようとするが、浩司たちがそれを許さない。
 チョロッ……
 温かな液体が流れ出た。
 一度出てしまうと、女の肉体構造ではどうやってもその流れを止めることは不可能だった。
 たまっていた尿は、だらしなく太股を伝いながら落ちていった。
「アハハハハ! ダセー!」
「へぇー。オンナの立ちションってこういうふうになっちまうんだ!」
 チョロチョロと尿が出続ける。
 カイトは実感として理解させられた。女の体では、足を開いてしゃがんで用を足すほかないということを。
 不意に、浩司が万年筆大の筒のようなものを取り出すと、それをカイトの股間に突き立てた。
「なにしやが……いぎゃっ!」
「えへへへ。実験、実験」
 尿道口のあたりにゴムチューブのような医療器具が押し当てられた。


 すると、尿はそのゴムチューブを通って便器へと放出された。
「これならオンナノコでも安心して立ちションできるってわけだ!」
「ふざけんな!」
「これ、カイトちゃんにやるよ。男の立ちションが懐かしくなったら、遠慮なく使いなって。ゴムチン●さ。ま、セックスにゃ使えないのが残念だけど」
 浩司はカイトの傷ついた顔を見て声を立てて笑った。
 尿ができると、濡れ雑巾が手渡された。それで足を拭け、ということだった。
 元通りブルマをはかされると、カイトはムラタの待つ廃教室へと連れ戻された。
 浩司たちの報告にムラタは一言、こう言った。
「では、罰ゲームですね」
「卑怯だぞ!」
「みなさん。カイト君を例の杭の上に」
「うわぁぁ、いやだァァァ!!」
 カイトは必死に暴れたにもかかわらず軽々と体を持ち上げられ、杭を使った拷問器具へと運ばれてしまった。
「やめろ! クソ、離しやがれ!」
「うん。離すよ」
 杭の先端がカイトの女性器に合うように調整されると、カイトを支えてた力が緩んだ。
「は、離すなーっ!」
「観念しなさい、カイトちゃん♪」
 体重で体が沈み、杭に貫かれていく。
 ズブリ……
 柔肉を押し広げて異物がカイトの内側に侵入した。
「新鮮な媚薬をたっぷり染みこませてあるから楽しみにして下さい」
「やめ……ろ……」
 カイトは掴みかかるように手を伸ばしたが、浩司たちは余裕で身をかわした。
 横にずらされたブルマとパンティの隙間から、容赦なく杭がめりこんでくる。
 たちまちカイトは身動きができなくなった。
 体重移動させようとするとますます深く杭に貫かれてしまう装置の上では、どんなにもがいてもその場を動くことはできない。


 展示物のマネキンのように固定された杭の上で身悶えすることしか許されない。
 早くも杭から染み出す媚薬が効果を発揮しだしていた。
 カイトは体の芯が熱く高ぶってくるのを感じた。
 ちょうどそのときチャイムが鳴り出すと、連動して杭が震えだした。
 一瞬にして頭が真っ白になるほどの衝撃だった。
 カイトは歯をカタカタ鳴らしていたがついに耐えきれず、甘い鼻声をもらした。
「あああああ……いやだぁ、これでイクのはいやだよぉ…………あああん……でも……こんな気持ちい……い……」
 自分で何を言ってるのかさえ分からなかった。
 ムラタがくすりと笑った。
「淫乱なお嬢さんだ」
「すげぇ反応ですよね、先生」
「肉体に馴染みつつある証拠だ。日毎に、彼の心は女の快感に浸食されていくさ」
「なんだか分かんないけど、スゲェ」
 チャイムが鳴り終わってしばらくすると、杭は振動を止めた。
 それまで背筋をエビぞりさせていたカイトの全身ががくりと弛緩した。
「うぅ……」
 イク直前で振動が止まってしまい、カイトの肉体はさらなる刺激を求め、勝手に蠢いた。
 満たされない欲求が心にピンク色の巣を張っていく。それが媚薬のせいだということは分かっていても、どうしようもなかった。
 本校舎へ戻るクラスメイトたちが去り際に胸を触っていったが、その乱暴な愛撫にさえ感じてしまい、甘い吐息をついてしまう始末だった。
(まずい、このままじゃホントに女にされちまう!)
 持ち前の反抗心が頭をもたげかけたところで再びチャイムが鳴り、杭の振動が甘い疼きへと変換された。
 せっかくの理性がこなごなに吹き散らされるほどの快感だった。
「うぐぁぁぁぁ!!」
 体を蝕む甘い衝動に身をよじる。
 ほどなく振動がやむと、今度はやるせない疼きが体を支配するようになる。


 その繰り返しで、カイトの理性は崩壊していった。
(あああ……逃げる算段立てなきゃいけないのに……これじゃ、もう、あああああんっ!!)
 杭が静かなあいだは、カイトは大事な部分を貫かれたままグッタリと頭を垂れていた。
 そうしていると、時間をおいてまた杭が震え出す……
 何度めかの絶頂でカイトは気を失っていた。

 気付いたときは、数人の少年によって胸を揉まれていた。
「ん……」
「あれ、カイトの奴、起きたみたいだぜ」
 カイトはハッとして目を見開いた。
 廃教室に五、六人の少年がきていた。その後ろで浩司たち三人組がニヤニヤしている。どうやら彼らが仲間を呼んだらしい。
「うはぁー。オレ、女のオッパイ触ったの初めて!」
「これで本物の女だったら良かったんだけどさ」
「でも一応、肉体的には女らしいよ」
「でもさぁ、中身があのカイトだからなぁ……」
 カイトに群がる少年たちは大半がクラスメイトだった。それも、いままで手ひどく虐めたことのある相手ばかりだ。
「ねえ。君、ほんとにあのカイトさんなの?」
 山田がカイトの乳房を揉み上げながら尋ねる。
「知るか……くふぅ」
「あ、ちゃんと感じてるんだ?」
 さんざん杭と媚薬に晒されてきた躰は、極端に感じやすくなっていた。クラスメイトの小汚い手で乱暴に揉まれているだけなのに、胸に甘い快感が走ってしまった。
「も、もうっ、やめろ!!」
 少年たちから逃れようとしたが、しょせん杭に貫かれている展示品の身ではどこへも逃れようがない。


 こりこりと固くなった乳首のあたりを指でつつかれると、カイトはさすがに声を抑えきれなかった。
「いやああっん!!」
 自分で聞いてゾクッとするほど甘い喘ぎ声を出してしまい、それを聞いた少年たちはどよめいた。
「効いてる、効いてる!」
「あのカイトがおっぱい弄られてアンアン言ってるよ!」
 少年たちは面白がって乳首を責める。そのたびに敏感に反応してしまう肉体をカイトは呪った。
 弄ばれるうちにブラジャーがずれ、ぽろりと乳房がこぼれてしまった。
 そのとき、いつのまに来ていたのかムラタが手を叩いた。
「君たち。今日のフリータイムはここまでですよ」
「ちぇー……」
 少年たちは残念そうに鼻を鳴らしながら、カイトの体から手を離した。
「カイト君、いつまでも丸出しにしてるのは、その立派なオッパイを自慢したいのですか?」
「くぅっ!」
 カイトは殺意のこもった目でムラタを睨みながら、体育着を引っ張って胸を覆った。
「恥ずかしがることはありませんよ。その立派なオッパイに相応しいデコレーションをしちゃいましょう。君たち、出番ですよ」
「うぃす」
 ハネダとカジが椅子から立ち上がり、カイトの前までやってきた。
 いつもこの二人と一緒に行動してる浩司の姿は見当たらなかった。
「浩司はヘタレだからこなかったぜ」
 カジは言った。
 ハネダがカイトの両腕を背中に押さえつけ、カジが正面に立った。
 昨日ムラタの持ち込んだ小箱から、金色のリングピアスが取り出された。指輪には大きすぎる、十円硬貨程度の大きさをしたリングだ。
「まさか、それ付けるんじゃ……」


 カイトの声は震えていた。
「そりゃ付けるよ。でかいオッパイを取り回ししやすいように取っ手付けてやるんだ。感謝しろよな!」
 カジはムラタに渡された麻酔注射の針をカイトの乳首の真ん中に刺した。
「いたいっ!」
 左右の乳首に順番に麻酔が打たれた。十分もすると、胸全体の感覚がぼうっと麻痺してきた。
 それを見計らって、キラキラと光るリングが近づけられた。
「ヒィッ!」
 ピアスを突き刺される恐怖に怯え、カイトは身をよじって逃げようとした。だが、その行為は杭でヴァギナをイタズラに掻き回されるだけだった。動転してるカイトは杭の上でもがいて失笑を買ってしまう。
 無情にも、ピアス穴貫通用の器具が剥き出しにされた左乳首にあてがわれた。
 指で摘んだりされると乳首はカイトの心を裏切ってあっというまに固くなってしまった。
 ゆっくりとそこへ器具が貫通していく。
 血の滴が染み出したところを消毒され、軟膏を塗られた。軟膏で乳首がぬらぬらと光った。
 右の乳首も同じ手順でピアス穴を開けられてしまった。その間、カイトは何一つ逆らえず、歯を食いしばりながら貫通の様子を見守るしかなかった。
 貫通したピアス穴にリングが通される。
「自分が商品に過ぎないことを自覚しなさいカイト君」
 両乳首に金のリングがぶら下がった。
 さらに両リングの間にチェーンが渡された。乳房と乳房の間をチェーンがブラブラと揺れる。
 カイトの見ている前でピアスリングに留め具がネジ止めされ、さらに念入りにペンチで潰されてリングは固定された。
 解放された手でカイトは真っ先にリングを外そうと試みた。
「畜生、畜生!」
 頑丈なピアスリングがカイトの努力をせせら笑うように胸の先端に鎮座し続けた。



 カイトが暴れるほどにバストが揺れ、そこに固定されたチェーンが目立った。
「どれどれ……」
 ムラタがチェーンを引っ張った。
 麻酔が残ってるのに、ジンと痛みが走った。
 ムラタが手を離すと、引っ張られていたチェーンが乳首の弾力でピシャッとカイトの胸を打った。
「あはははっ、パチンコみたいだな!」
 ムラタの真似をしてカジとハネダはかわるがわるにチェーンを引っ張っては弾いた。それがカイトにどんな屈辱をもたらすか、よく知った上で。
「あなたはもう、一人前の人間なんかじゃない。他人に弄ばれるためだけに存在するオモチャなんです。そろそろそれが身に沁みてきたでしょう?」
 ムラタの合図でカイトは杭の上から降ろされた。
 だが今度は首輪で繋がれる代わりに、胸のチェーンにさらに鎖がくくりつけられて自由を奪われた。
 外へ逃げようとすると、チェーンに胸を引っ張られて動けなくなってしまう。これ以上ないほどの屈辱を与える拘束の仕方だった。
 鎖に逆らうたびに自分が快楽の為の道具であることを突きつけられる仕組みになっている。
 ムラタの手によってブラジャーをもう一度着けさせられた。
 チェーンの部分だけが胸の谷間から顔を出している。
「なんで俺だけこんな仕打ちを受けるんだ! 俺よりもっと悪どいことしてた奴なんて、他にいくらでもいただろ!」
「フフ、分かってないですね」
 ムラタはカイトの胸から垂れ下がるチェーンを手にとって口づけした。
「君のように粗暴でありながら、天使のような顔を持って生まれた少年なんて他にいないですよ。……それに、君の姿がこの世から消えても気に掛けるような者がいないというのも都合が良かったですしね」
「教えてくれ……あんたは俺をどうするつもりなんだ」

「さてね、フフフ。楽しみにしてなさい。そうそう、これだけは保証しますよ。君の運命が決まる頃には、君は肉体に相応しく心の中まで淫乱な奴隷女に堕ちていることでしょうね」
「く……」
 いまのカイトには、ムラタの言葉は脅し以上の重みを持って感じられた。
「もっと構ってあげたいところですが、あいにくと僕も研究で忙しい身でね。また来ますよ」
 ムラタが教室を出ていくと、クラスメイトたちも名残惜しそうに引きあげていった。
 カイトは繋がれた床の上でガクガクと体を震わせた。己の体を抱きながら、カイトは歯を食いしばって渦巻く感情に耐えた。
 油断すれば涙がこみあげそうになるのを必死で堪えた。この上、涙など流したらそれこそ女になったことを認めてしまうような気がしたからだ。
 昨日と同じ時間に、葵がやってきた。
「お待たせ、カイト君。お腹、減ってるでしょ?」
「べ、別に……」
 強がってみても、カイトの腹はしきりと空腹を訴えていた。
 葵の差し入れは、サンドイッチとウーロン茶だった。
「このサンドイッチはね、自分で作ったんだ。これくらいなら、なんとか私でも手作りできるから」
「ふうん」
 サンドイッチには、不格好に切られたハムやチーズ、それにレタスが挟まれていた。
「……美味しい?」
「まあまあかな……あ、いや割と美味いぜ」
 味などどうでも良かったが、葵を手なずけておくという目的を思い出してカイトは精一杯の社交辞令を口にした。
「ほんと? 良かったぁ」
 葵は素直にカイトの言葉を信じたようだった。
 サンドイッチを褒められてはしゃいでいた葵が、ふとカイトの胸に目を留めた。
「それ……?」


 ブラジャーと服の上からでも小さな変化に気付いたのは、女ならではの観察力だった。
「ちょっと見せてね」
「…………」
 カイトが迷っていると、葵はカイトの胸をそっと服の上から触った。
 固い手応えが葵の手にも伝わる。
 葵は顔を曇らせてカイトの体操服をめくり上げた。ブラと胸の隙間からチェーンが垂れ下がってるのを見て、葵はさらにブラの位置もずらした。
 葵が息を呑む気配が伝わってきた。
「これって、ボディピアス?」
「あんまりじろじろ見るんじゃねぇよ……」
 カイトはムラタに弄ばれた証のピアスから目を逸らした。もっとも、その動作で今度は耳につけられたピアスが揺れるだけだった。
「かわいそうに……痛かったでしょ?」
「別に」
「女の子の大事な場所なのに」
 突然、胸に奇妙な感触があった。
 傷を舐める動物のように、ピアスを取り付けられた胸の先端に葵が舌を這わせていた。
 ちろり、ちろりと温かく湿った舌先が患部を舐める。
「あ、ああ……」
 身を引こうとすると、葵の手がカイトの背中に回された。少女の力でカイトは簡単に動きを封じられていた。
 一時的にカイトの乳房から顔を上げた葵が尋ねる。
「どう? 少しは楽になる?」
「楽に、っていうか……なんだか変な感じ……ふぅっ!」
 再び葵の顔がカイトの胸に沈んだ。
 左右の乳首を均等に舌で清められた。
 その刺激で乳首が固さを増すのを自覚した。男のときと違ってその場所は刺激に対してとてつもなく敏感になっている。
「も、もう、いいだろう?」


 言ってるそばから、なめらかな舌で乳頭をなぞられてカイトは仰け反りそうになってしまった。
「カイト君、気持ちいいんだね」
「ばっ、バカ言え!」
「不思議……あの男らしいカイト君におっぱいがあって、それを私が……」
「はうぅっ!」
 そっと乳房にキスをされてカイトはビクビクと震えた。
「おっぱいにキスされて、カイト君が、感じてる」
「ば……ばかやろう……」
 吐息混じりにカイトはつぶやいた。
 ようやく葵が顔を離す。
 最前までの行為で葵の着衣は乱れていた。制服のブラウスの襟がずれてブラの紐が覗いていた。カイトの位置からだと、襟の隙間からほのかな胸のふくらみが見えた。
 その瞬間、カイトの欲情に火がついた。
 カイト自身の自覚はなかったが、胸の性感帯を責められたことで欲情させられていたのである。
 上気したような葵の顔を目にしてたまらなくなったカイトは、先ほどと逆に葵に覆い被さっていき、強引に床に押し倒した。
「きゃっ!」
 有無を言わせずキスをした。
 いつも女を犯すときのように葵の手を頭の上でまとめさせて床に押さえつけ、体を密着させた。
「あ……」
「!?」
 二人の胸が重なって柔らかく形を変えた。その感覚がカイトを現実に戻した。
 葵を押し倒して腰を振ったところで、女を貫くための器官は喪われているのだ。
 どうしたらいいのか分からず、カイトは呆然と動きを止めてしまった。
 カイトの下で、葵が心配そうに見上げていた。
「かわいそう……まだ、混乱してるんだね」
 葵がカイトの頬に手を当てる。


「綺麗な顔。私なんかよりずっと綺麗」
 葵の手はカイトの首筋をなぞりつつ、下に降りていった。胸のふくらみをそっと撫でていく。
「やめろ、触るな……」
「それに、可愛らしい声。スタイルだってこんなにいいし」
「へ、へんなこと言うなよ」
 葵は不意に両手をカイトにからめてきた。そのままきゅっときつく抱きしめられた。
 セックスするときの抱擁ではなく、それは女同士で情愛を確かめ合う抱擁だった。
「カイト君」
「葵……」
「本当に女の子になっちゃったんだね」
「違う!」
「受け入れないと辛いだけだよ、きっと。心配しないで、私が女の子のこといろいろ教えてあげるから」
「俺は男なんだぞ!」
 葵を突き放そうとしたが、力では葵のほうが上だった。
 逆にいっそう強く抱きすくめられる。やわらかな躰が溶け合うように重なる。女同士での抱擁だけが持つ感触だった。
「ねえ、カイト君。もっと低い声で、葵って呼んで。男の子の真似をして」
「俺は、男だって……」
「いまは女の子だよ。男らしくって凛々しい……女の子」
 葵のほうからキスをしてきた。
 反射的にカイトはそれを受け入れた。
 唇と体を重ねることで、心も重ね合わせる女同士のキス。
 自分でもしらないうちにカイトは女としてのキスに酔っていた。それは男のときの、支配欲にかられたキスと違って、全身が熱くなるほど気持ちのいいものだった。
「私、生まれて初めて女の子とキスしちゃった」
 陶然として葵はつぶやいた。
 カイトはガラス窓に映った二人の姿を目にしてしまった。二人の少女が抱き合う花のような姿を。もう、葵に反論はできなかった。


 葵はようやくカイトから離れると、頬を上気させたまま着衣の乱れを直した。
「また明日も来るね。身の回りのもので欲しい品物があったら……きゃっ!」
 カイトは素早く葵の肩を掴むと、爪先立ちをして強引にキスをした。
 今度は荒々しい男としてのキスだった。
 唇を離すと、カイトは宣言した。
「俺は男だ。葵、お前はいつか俺の女にしてやるからな!」
「カイト君……」
 葵は突然のことに目をぱちくりとさせた。
「俺はもう寝る」
 そう言うとカイトはごろんと横になって目を閉じた。
 眠りに引き込まれるまで、ずっと葵が側にいる気配がしていた。

……翌朝。青いの姿はもうない。
「おはようございますカイト君。今朝は君にいいニュースがあります」
 上機嫌で語りかけてくるムラタ。
 カイトはそっぽを向いたままだ。
「今日、君の破瓜の儀式をすることに決まりましたよ」
 相変わらず、カイトは無反応。
「ああ、ごめんなさい。無学な君に破瓜なんていっても分かりませんね。要するに、処女喪失してもらうんですよ」
 無視を決め込んでいたカイトの顔がこわばる。
「おや、そんなに嬉しいですか?」
「て、てめえっ!」
 処女喪失とムラタが言う意味はカイトにも分かった。
 バイブやローターなどではなく、男とのセックスをさせると言われているのだ。
「フフフ。きっと思い出に残るような素敵なロストバージンを演出してあげますよ」
「ふざけんな! てめぇの粗チンなんか近づけてきたら噛み千切ってやる」


「強がりも可愛いですけどね。でも、君が嬉々としてペニスを受け入れて腰を振ってる様が僕には見えますよ」
「誰が、そんなこと!」
「君の初めてのお相手は僕じゃありませんよ。君も知ってる人ですけどね。その人がどうしても君のバージンが欲しいって言っててね」
「まさか……」
 用具室でカイトにふともも間にペニスを擦りつけてきた沼作の脂ぎった顔がまざまざと脳裡に甦った。
「君がどんなに抗ったところで、今日、君は男に抱かれて本物の『女』になるんですよ。フフフ、ハハハハ……」
 そこへカイトの「世話係」ともいえるカジとハネダがやってきて、カイトの鎖を手綱に付け替えた。
 朝晩一度ずつカイトに許されたトイレの時間だった。
「さっさと歩けよ」
 手綱を引っ張られると、胸のピアスにまで力が届いて乳首が痺れるように痛んだ。
 自分でも驚くほど従順に手綱にしたがうほかなかった。
 カジたちはわざと男子トイレのほうに入った。
「どっちでも好きなほうを選びな」
 そう言われてカイトは立ちすくんだ。
 小用の便器と、個室の和式便器のどちらかを選べと言われてるのだ。
 トイレに入ってから、急速に尿意は高まってる。
 かといって、男性用の朝顔を使おうとすれば、昨日のような醜態を晒すだけだ。
 選択の余地もなく、カイトは個室へと入った。
 カジたちがニヤニヤと見守っている。
 ブルマとパンティを降ろすと、つるんとした股間が露わになった。他にどうしようもなく、カイトはその場でしゃがみこんだ。
「おやおやぁ、座っておしっこするなんて、まるで女の子みたいだねぇカイトちゃん?」
「うるせぇ!」
 立ち上がって叫んだとき、ちょろちょろと尿が流れ出した。
「!」


 女の体は、男に比べて排尿のタイミングが操作できない。
 あわててカイトは腰を屈めた。
 排尿の間は、立ち上がることすらできない……。
 カイトは悔しさに顔を真っ赤にして尿が出尽くすのを待った。
 そんなカイトを嘲笑うようにペニスを突き出したハネダが横合いからカイトの便器に小便をしてきた。
 ジョボジョボと威勢のいい音が響く。
「は〜〜、立ちションすんのは男の特権だねぇ」
 カイトは飛沫がかからないように身をよけると、ペーパーで己の股間をぬぐった。
 カジたちがその様子を揶揄する。一般に男は小用でペーパーを使うことは少ない。
 だが、女の体で用を足してみると、尿道口の周辺が濡れていて拭かずにはいられなかった。
 カイトは黙って侮辱に耐えながらペーパーを股間に押し当てた。
 これから、毎日こんなふうに屈辱に耐えなければならないと思うと、気の遠くなる思いだった。
 教室に戻ると、カジたちは授業の用意があるといってそそくさと本校舎のほうへ引き返していった。
(そういや、今日の一限って体育だっけ……)
 頭の片隅でカイトは思った。
 つい一昨日まで普通に授業に出ていたのに、それが何年も昔のことのように感じられる。
 カイトは鎖の届く範囲でうろうろと行ったり来たりした。
 一人にななると、ムラタの言ってたロストバージンの儀式とやらが気になって仕方なかった。
 いまにも沼作がやってきて、あのすえた臭いのする性器を突き立ててきそうだった。
 カイトはブルマの上から性器のあたりに触れてみた。
 指で押すと、やわらかく盛り上がった肉を押し分けるようにして指が沈む。
 ブルマとパンティを引き裂かれ、その部分に硬いペニスを押し当てられたら……。
 カイトは腹を押さえた。
 体の内側にモノが突き刺さる感触を生々しく想像できてしまった。


 それは、自分の体が受け入れ側のものであることを無意識に自覚してしまったことでもあった。
 そして、沼作の野太いペニスが自分の中に入ってくるところを想像すると、それだけで全身に冷や汗が浮かんだ。
 気色悪い。怖い。壊されそう……
 女しか感じない種類の感情だ。
 不安に苛まれカイトは行ったり来たりを繰り返す。
 何度も鎖の範囲を超えそうになって胸のチェーンが引っ張られ、足を止めたりもした。
「ああもうっ、この鎖が!」
 服の中に手を突っ込んでチェーンが外れないか試す。もちろん外れる筈もない。頑丈な素材のリングピアスでしっかりと胸に固定されている。
 そこを指でさぐったりすると冷たく固いピアスが胸にめり込む。
 激しく動くと耳にぶら下がる飾り玉も揺れて、耳元で音を立てる。
 あがけばあがくほど、女であることを意識させられるようになっている。
 ため息を付いて椅子に腰掛けた。
 逃げられないのなら、せめて沼作に反撃してやろうとカイトは考えた。
 沼作のことを考えると股間が無防備に感じられて、無意識にきつく膝をとじ合わせてしまう。それがひどく女らしい仕草であることにカイトは気付いてなかった。
(あの用務員野郎がきたら、最初は大人しく従うふりをして……)
 猿ぐつわでもされて押さえ込まれたら、何一つ抵抗できなくなってしまう。
 沼作とのあいだの体格差や腕力の差が信じられないほどあることは、以前の経験ではっきりと分かっている。
(あいつが油断してちん●をしゃぶらせようとしてきたら、噛みちぎるの一手だな。そうじゃなくても、キンタマを蹴り潰してやったら白目剥くだろ)
 沼作が鎖を外す鍵を持ち歩いてればよし。そうでなくとも、むざむざ沼作に犯されてやるつもりはなかった。
(犯される、か……)
 そんな心配をしてる自分がおかしくてカイトは思わず、くくく、と自嘲気味に笑っていた。
「ん?」


 不意に廊下のほうに気配を感じて首をめぐらせた。
 ことり……
 小さな足音を立てて入ってきたのは、沼作ではなく、浩司だった。
「カイト……」
 浩司は呼び捨てでカイトの名を口にした。以前は同級生でありながら「カイトさん」と呼ばせていた浩司が。
「なにしに来たんだよ。授業中じゃねぇのかよ」
「フケてきたんだ」
 浩司は落ち着かない様子で廊下のほうを窺った。誰もいないかどうか気になってる様子だった。
「聞いてるか、カイト」
「何を」
「今日、おまえ男とセックスさせられるって」
「ああ、聞かされたよ。わざわざそれを言いに来たのか?」
「カイトはそれでいいのかよ?」
「あん?」
「わけの分かんない奴にちん●ブチ込まれて平気かって聞いてるんだよ」
「てめぇなんかに心配されたくねーな」
 プイとそっぽを向いてカイトは言った。
 すると浩司はわざわざ回り込んできた。
「俺さぁ……カイトが他の男のチン●突っ込まれるなんて嫌なんだよ」
「はぁ??」
 浩司の告白にカイトは目を丸くするばかりだった。
 浩司は妙にもじもじしながら言葉を口にした。
「その……俺……女のカイトに、なんていうか、惚れちゃったみたいで……」
「オイオイ!」
「中身があのカイトだって分かってても、どうしても気持ちが抑えられねーんだ」
 そんな告白を聞かされて、カイトは絶句してしまった。
 まさか、パシリの浩司に「惚れた」などと打ち明けられるとは思ってもみなかった。


「ムラタ先生がおまえのバージン、沼作の奴にあげるって話してたの聞いて……こんなのバレたら半殺しにされそうだけど、俺、ムラタ先生に無断で来ちまった」
 浩司はまっすぐカイトの目を覗き込む。
 妙にどぎまぎするような気持ちになってカイトは身じろぎした。
「頼む。カイトのバージン、沼作なんかじゃなくて俺にくれっ! この通りだよ」
 浩司は深々と頭を下げた。
「なっ……ちょっ……」
「俺、童貞なんだ……」
「知るか、そんなこと!」
「きのうからカイトのことが頭から離れなくて……。なあ、沼作なんかにヤらせるぐらいなら、俺の童貞きってくれよ。俺さ、マジであんたのこと好きになっちまったんだ」
 浩司がそばによると、発情した若い牡の臭いがふっと鼻腔をくすぐった。男だったときは気付いたこともない体臭のシグナル。
 その臭いを吸い込んだ途端、カイトは腹の奥に異変を感じた。子宮がきゅっと収縮する感覚だった。
 自分の体の勝手な反応にカイトは慌てた。そんな気持ちを知ってか知らずか、浩司はさらに畳みかけてくる。
「カイト。俺を受け入れてくれたら……カイトのこと俺が守ってやるよ」
「畜生、なに生意気な……」
 言いかけてカイトは口をつぐんだ。
「俺を守るって、どうやってさ?」
 浩司の真剣な眼差しを見ているうちに、はたと自分の立場を悟ったのだ。
 女の武器が使えるという、いまの立場に。
「俺、その鎖を外す鍵の在りか、知ってるんだ」
 カイトの全身が耳になった。
「俺、ムラタの奴からあんたを助けてやってもいいと思ってんだ」
「浩司……」
 カイトの中で、脱出への希望が一気にふくらんだ。
 葵と違って浩司は鍵の隠し場所を知ってる。
 もし浩司をその気にさせることができれば、鎖を外させることもできるだろう。


 問題は旧校舎を見張ってるらしい沼作の存在だが、もし浩司が協力してくれるなら、充分に突破は可能だ。
「……やっぱ、俺じゃダメ?」
 カイトの返事がないことに落胆して浩司は肩を落とした。
「そうだよな、童貞なんて格好悪いもんな。沼作の奴はああ見えても、セックステク凄いらしいし……俺なんて……」
 後半はブツブツといじけた呟きになっていた。
 そのまま浩司がとぼとぼと引き返してしまいそうな気配にカイトは焦った。
「待てよ、浩司!」
「なに?」
「ダメだなんて、言ってないだろ」
 カイトは唇を湿らせ、次のセリフを考えた。
 とにかく、浩司を繋ぎ止めておく必要がある。そのためには、忌々しいがムラタに与えられた女の肉体を武器として使うのもやむを得なかった。
「おまえ、童貞だったんだな、ハハ……」
「もういい、俺かえ……」
「ぬ、抜いてやってもいいぜ!」
 浩司は振り返ってまじまじとカイトを見つめた。
 カイトはペニスをしごくようなジェスチャーをしてみせた。
「特別に、一発抜いてやるよ」
「…………」
 浩司は恨めしそうな眼差しを向ける。
「そんな口調で言われたら、まるで男のカイトさんに馬鹿にされてるみたいで、俺……」
 しまった、とカイトは内心舌打ちした。
 つい照れが先に立って、ことさら男っぽい口調になっていたのだ。
 しかし浩司が惚れているのは、あくまで女のカイトだ。
 もし浩司を手玉に取るのなら、それ相応の演技が必要ということらしい。
(クソ、ここは忌々しいが、浩司の童貞野郎をおだてなきゃいけないのか)


 深呼吸をして覚悟を決めた。
「浩司……くん」
「カイト!?」
 甘ったるく名前を呼んでやるだけで浩司の鼻息が荒くなった。
(単純な奴。やっぱ童貞だわ)
 内心を押し隠し、カイトはなおも演技を続けた。
「オレも……沼作なんかより、浩司、くんのほうがいい……」
「えっ!」
 その気になると、自分でも驚くほど可憐な少女のような声音が出た。
 もともと、意識して男っぽく喋らなければ、ピッチの高い可愛らしい声が出るような声帯なのだ。
「それ、マジで?」
「浩司、くん、がオレを助けてくれるなら、この体、好きにしてもいいよ」
 胸に手を当てて、そう告げた。
(オェェェ……なんで浩司ごときに色目使ってんだ、俺は!)
 浩司は気付いてないようだったが、カイトの内心の葛藤は凄まじいものがあった。
「ほんとに、ほんとに好きにしてもいいの!?」
 コクリと頷くと、間近に迫った浩司の鼻息が腕にかかって熱いくらいだった。その上、先ほどからカイトを悩ます牡の体臭もさらにきつくなっている。
「オレも浩司、くん、にだったら抱かれてもいいって思うから……」
 浩司の鼻息が最高潮に達した。
 ふと見下ろすと、浩司の股間がこんもりとタワーを立てていた。
(オレ、そんな色っぽいのか? ……色っぽいんだろうな)
 何度もガラス窓に映る自分自身の姿に欲情した身としては、浩司の反応も納得できた。
 同時に、浩司の股間でいきり立つ男の象徴が自分にはないことを痛感して、ひどく虚しい気分にもなった。
「……オレのこと、触ってみるか?」
「悪い、オレじゃなくって『あたし』って言ってくれないか」
 浩司はそう言って頼み込むように手を合わせた。


「初めての相手が元・男だったってこと、意識したくないんだ。だから今だけでもいいから、あたしって……頼むよ、な?」
 浩司の必死の嘆願にカイトはため息をついた。
 ここまで来ると、童貞のささやかなロマンにおかしさすら感じる。
「分かったよ。オレ、じゃなかったアタシ。これでいい?」
「いい。いいっス! すげぇ可愛いよ、カイト!」
「きゃっ!」
 突然浩司に抱きしめられて、カイトは演技でなく少女らしい悲鳴をあげてしまった。
「ちょ、ちょっと浩司、くん! ここで……その、ヤっちゃうのか?」
「鍵、手元にないから。俺もう、我慢できなくて……ダメなのか?」
 おあずけをくった犬のような目つきがたまらなくおかしくて、カイトは吹き出してしまった。
「いいよ。好きにしな……して」
「はぁはぁ……好きなんだ、カイト」
 はじめのうち、浩司はカイトの身体を抱きしめるばかりだった。
 そうこうするうち、浩司の股間のふくらみがグリグリとカイトの腰に押しつけられてきた。
(うわっ、男のアレってこんなふうに感じるのか!)
 力任せの抱擁の中で固くなりながらカイトは押し当てられるモノの感触を分析していた。
 やがて浩司は果物の皮でも剥くみたいにカイトの体操着を脱がしていった。
 シャツのほうは乳房の上まで捲りあげられた。
 ブラジャーのホックは外れなかったので、浩司は乱暴にブラをずり下げ、押し出されてきたたわわな果実にむしゃぶりついた。
「ンッ!」
 胸の谷間のあたりにキスをされてカイトはピクリと震えた。
 いつのまにかカイトは机の上に座らされている。
 女の本能からか、カイトの膝はぴたりと閉じられたままだ。
 浩司の愛撫はまず、胸に集中した。
 乳首に取り付けられたピアスを弄ばれる。リングを掌で転がされ、軽く引っ張られたりする。


 その刺激に反応してたちまち乳首は固く立ち上がっていった。
「すげ、敏感なんだ」
「言うな……あ、言わないで」
 コリコリと尖った乳首を指でいじられると、そのたびに体がわなないた。
「はうっ、そこだけだと刺激が強……ンンッ!」
「そっか、おっぱい全部いじってほしいんだね?」
 一瞬ためらってから、これが「演技」だったことを思い出してカイトは頷いて見せた。
「ねえ、言ってみせてよ。オッパイ弄ってって」
「そんなこと……」
 浩司の手が止まった。
 と同時に浩司に去られて千載一遇の脱出チャンスが流れていく恐怖がカイトを打った。
「お……オッパイを……」
 ゴクリとツバをのみこんでから、もう一度言った。
「オレ……あたしのオッパイ、弄ってください!」
「すげぇ……」
 浩司の口から感嘆のため息が漏れた。
「いまのすげぇエロかったよ」
 ここぞとばかりに浩司が胸に手を伸ばしてきた。
 双つの半球が荒々しく揉まれた。ぐにぐにと音が聞こえてきそうなほどだった。
「あふっ……くぅぅぅん」
「もっと、もっとイヤらしく喘いでよ!」
「あんっ、あんっ、そんなにオッパイこねないでぇ!」
 演技だから、と自分に言い聞かせなければいけないほど、自然と口をついてイヤらしい言葉が出てきた。
 エロビデオのAVアイドルにでもなったような奇妙な気分だった。
 そうやって責められているうちに、じょじょに体が火照ってくる。おまけに、ときおり指の腹で乳輪や乳首を擦られると、痺れるような快感が全身に走る。
「女の子ってさ、こういうとこが感じるってホント?」
「ふぇ……?」


 浩司の手が胸から離れ、腋の下をなでてから首筋へと移動した。
「え、え、分かんない……」
「どれどれ」
 浩司は本格的にカイトの後ろに回り込むと、背中から首筋にかけて舌先でツツッと愛撫した。
「はぁぁぁぁんっ!!」
 その愛撫がもたらした電撃のような快感に、カイトは仰け反った。自然と突っ張った足のつま先が折れていた。
「おお、本当にたまらなく気持ちいいみたいじゃん。ねぇ、男のときより気持ちいいの?」
「き、気持ちいいよぉ……はひぃっ!?」
 指で髪を梳かれただけなのに、甘くせつない感覚に囚われ、カイトは我を忘れそうになった。
「わぁ、攻略本に書いてある通りじゃん。やっぱ、髪いじられると快感なんだ、女って!」
 続いて耳の裏にキスをされて、またもやカイトは甘ったるい声で叫んでいた。
(攻略されてる……浩司の思い通りに……)
 心の片隅でそんなことを思っていても、新たな性感体を刺激されるたびに押し寄せる波は、容赦なくカイトを高い場所へと運んでいった。
「カイトはおへそでも感じちゃいそうだね」
 浩司の指が腹を滑ってへその穴に差し込まれ、そこをグリグリと掻き回した。
 信じられないことにカイトの体は反応してしまった。
(そんな! これじゃまるでセックスロボットじゃないか!)
 触れられるたび、愛撫されるたび面白いようにカイトの肉体は敏感な反応を示して浩司を悦ばせた。
 もはや演技がどうこうと言ってる余裕はまるでない。
「あひっ、ひっ、そんなとこ触ったら……あんあんっ、ダメ、いいっ、あああぁぁぁん!!」
 支離滅裂な言葉が口をついてるのにも気付かずカイトは悶えた。


「どう? そろそろオレのチン●、入れてもいい?」
「あ……」
 耳元で囁かれた途端、ヴァギナがひとりでにジュンと濡れた。
 女として「濡れる」感覚をまざまざと味わってしまった。
「ダメぇ……」
 息もきれぎれにカイトはつぶやいた。
 これ以上続けたら、演技ではなく本当に女の感覚に溺れてしまいそうだった。その恐怖がカイトに拒絶の言葉を口走らせていた。
「でもさぁ、気持ちいいんでしょ?」
 浩司はカイトの胸の下に指をさし入れて、下乳をくすぐるように愛撫した。
「巨乳の女の子って、これに弱いんだって。カイトもそう?」
「は……あああああああ!!」
 仰け反って逃げようとしてもまだ執拗にそこを愛撫され、カイトは苦しげに喘ぐだけだった。
 すっと手が引かれる。
 愛撫されて張ってしまった乳は、固く上を向いたままだ。
 今度はやおらブルマの中に手が侵入してきた。
 あっと思って止めようとしたときにはすでに手遅れだった。
「待って! そこはっ!」
「……ここが肝心な場所じゃん」
 ブルマの中で蠢く手がさらにパンティを潜って、ついに秘所へと到達した。
「すげ……ぐちょぐちょにヌレてんじゃんっ!」
 狂喜にも近い浩司の反応に、カイトは顔を真っ赤にした。
 ぬるっ!
 粘液に覆われたスリットの中に指が入り込んできた。
「ひぃっ!」
 カイトは思いあまって浩司の腕に抱きついていた。いままさに愛撫を続けているその腕に。
 指はまず、確かめるように花びらの表面をなぞった。


「ああ、あああっ!!」
 その刺激だけで言葉も喋れなくなってカイトは腕に抱きつき、がくがくと震えるばかりだった。
「教えてよ。濡れるって、どんな気持ち?」
「い、いや……」
「サイコーに気持ちいいのにチン●がおっ勃たないって、どんな感じなのさ?」
 嬲るように言葉を囁かれると、それだけでトロリと熱い液体が湧いて出てしまう。その女体の感覚はカイトを戸惑わせ続けた。
 浩司の指が浅く入り口の戸を叩いただけで、膣がゆっくりと収縮を繰り返す。カイトの意志などまったくお構いなしに。
 やがて愛液にまみれながら浩司の指は秘裂の上で小さな尖りを見つけ出した。
 カイトも、そこが何であるかは分かっている。
「クリだ……」
 感慨深げに浩司がつぶやくと、カイトはパニックを起こしたように浩司に向かって叫んだ。
 抱きついた腕を引っ張ってブルマから手を出そうとするが、浩司の腕は頑として動かない。
「ダメ、もうそこはダメって!」
「クリってさ、すっげー優しく愛撫しないとダメなんだって。こう……こんな感じかな?」
 ハッと息を呑むカイト。
 次の瞬間、さわさわという愛撫が開始された。
 言葉通り、浩司は繊細にやわらかくそこを刺激してきた。
 ほとんど力を入れず、包皮の上からやわやわと指を上下させるだけである。
 激烈な性感が襲ってくることはなかった。
 けれどそうやって微妙な刺激を加えられているうちに、確実に体の芯に快感が蓄積していた。
「ンッ、ンンッ、ふぁぁぁぁっ!」
「気持ちいいの?」


「いい! 気持ちいいよぉ」
「へぇ。やっぱクリっていいんだ」
「あ……いやだ、気持ちいいのやだぁぁぁ……ふぅぅぅっ、あぁぁぁん、いい、いいよぅ……」
 カイトの混乱した反応に浩司はクスクスと笑った。
 浩司の腕にしがみついてるカイトの様子もひどく可愛らしく浩司の目に映っている。
 しゅっ、しゅっ……
 クリを摩擦しているうちに包皮がはずみで剥けた。
「ひぃんっ!?」
「まだまだ!」
 やわらかな刺激がさらに続いた。
 時折摩擦する方向を変えたり、包皮を巻き込んだりしながら、愛撫は続く。
 絶妙な力加減に、ときどきカイトは腰を浮かしそうになる。
(気持ちいい……でも……これは演技で、浩司を騙す……ため……)
 そんな理屈は既に、快感にとろけそうな自分を誤魔化すお題目に過ぎなかった。
 しゅるしゅるとクリをこする刺激。
 ほんの少し、その刺激が強かったら……と思い、動きに合わせて腰を浮かしそうになってしまうのだ。
「ねえ。挿れて、いい?」
「んんっ……」
 曖昧な反応に浩司はわずかに指の刺激を強くした。もう片方の手で乳房の愛撫も再開する。
「セックスしようぜ」
「せっ……くす……」
「犯してもいい? カイトちゃん」
「あふぅ……お、犯されるのは……」
 どこかトロンとした目つきでカイトはつぶやく。
 すると不意に浩司は愛撫を止めてしまった。
「あン……」


 鼻にかかった吐息をカイトは他人のもののように聞いていた。
 浩司は無言でズボンを脱いでいる。
 たちまち濃厚なオスのエキスを嗅がされ、カイトの心は狂いそうになった。肉体のほうは、一歩先に発情しきっていた。
 さんざん愛撫を受けてしまった躰が疼き始める。
 もっと。
 もっと、もっと!
 快感を求めて自然と腰がくねる。
(なんで止めちゃうんだ……)
 心の中で誰かが囁いた。
(ダイテ……オカシテ…………)
 カイトはいつしか潤んだ瞳を浩司に向けていた。
 浩司の下半身から発散される体臭を吸い込むだけで、頭が痺れてくるようだ。
(ほしい……ほしい……オチンチ●……オレに無いモノ……)
 浩司はニヤリと笑った。
「おねだりしてみて」
「おね……だり……?」
「可愛らしくおねだりできたら、続きをしてあげる」
 かぁっ。元から上気していたカイトの顔は朱に染まって湯気を出しそうなほどになった。
(浩司ごときにオレが!)
(もうなんでもいいから早くシテ欲しい!)
 心の中で二つの声が交錯した。そして、後者の声が圧倒的に強かった。
 カイトはからからに干上がった口を一、二度パクパクさせると、屈服したように浩司の肩にもたれかかり、そこで囁いた。
「お願い、浩司くん……あたしを……犯して……」
「よくできたね」
 浩司はキスをしたかと思うと素早くカイトを抱きかかえた。
 カイトは不思議な浮遊感に身をゆだねた。
 力強い男の腕に抱えられていることが不思議と心地よく感じられた。本能的に。


 カイトはマットレスの上に仰向けに寝かされた。
 それまでぴたりと閉じていた両脚は、浩司によってこじ開けられた。
 両脚の間に浩司の頭が入る形になった。
 そして、ピチャピチャと水を舐めるような音が。
(アソコを舐められてるんだ!)
 自覚するより先にカイトの躰は反応していた。
「あぅぅぅぅぅぅぅぅっ……」
 まるでスイッチでも押されたようにとめどもなく愛液が分泌される。
 そして、強すぎる刺激から逃れようとマットレスの上でじたばたして、浩司に腰を掴まれた。
「処女の滝のぼりにはまだ早いんじゃないの?」
「そんなこと、言うな……ああああっ!」
 秘所への舌を使った愛撫を想像を超える快感だった。
 頭の中で白や黄色の光が弾ける。
「さて……『犯して』あげなくちゃね」
「う、うそ……マジ、で……?」
「いまさら何言ってるんだか」
 下半身を丸出しにした浩司が、カイトの上にのしかかってきた。
 真っ直ぐに顔を覗き込まれるのが気恥ずかしくて、カイトは横を向いた。
「可愛いよ……」
「ひゃうっ」
 そう言いながら浩司は耳たぶを甘噛みしてきた。
 快感に耐えようとしてカイトは夢中で浩司に抱きついていた。
 欲望で張り詰めた熱い塊が、股間に押し当てられた。
「はぁん、ち……ちん●ぉ……」
 喪った物に巡り逢ったような気がしてカイトはつぶやいた。
 だが、その塊はゆっくりとカイトの花弁を貫いて体内への侵入を開始した。
「あ……痛い、痛い……」
 痛いというより、大事な場所に他人の器官の侵入を許してしまう戸惑いから、カイトは腰を浮かせた。


 半ばパニックに陥ってじたばたともがき、ペニスから逃れようとする。
 カイトの躰がマットレスの前方にズレた。
「おいで、カイト」
「あくっ」
 浩司は体重をかけてカイトの両肩をマットレスに押しつけた。
 男の力で制圧されたその体勢は理屈抜きにカイトの抵抗の意志を奪った。
 女の体の本能がカイトを支配し、制圧者である男を受け入れようとする。
 もう一度、ペニスが押し当てられる。
 今度はそれから逃れる自由はない。
「せぇの……!」
「うあっ……」
 ずるりっ……
 男の器官が挿入された。
 膣壁がひくひくと蠢いてペニスを感じた。
「犯される、気分ってどう?」
 ずっ、ずっ……
 さらにペニスが奥深く押し入ってくる。
 カイトは声を出せるような状態ではなかった。
 ひたすら「犯される」というその感覚を味わっていた。自分の存在そのものが誰かによって支配されるような……
 一度挿されたペニスが半ばまで引き抜かれたとき、膣とクリトリスの近くが同時に刺激された。
「い゛っっ…………!!」
 その深い快感が最後の一押しとなって、カイトはエクスタシーに達してしまった。
 低く唸るような声を自然に撒き散らして、全身がわなないた。
 躰の内奥に溜まりに溜まっていた快感が一気に奔流となって解放される感覚。
 男に貫かれることでもたらされたエクスタシーは、人工的に与えられたそれとは激しく違っていた。
 高い塔から突き落とされたような、深い水底にどこまでも沈んでいくような……。


 全身を、そして心の隅々までをも青い波で洗い尽くされていく。
 カイトは自分が浩司にきつく抱きついて爪すら立てていたのを知らなかった。
 そうやってエクスタシーに翻弄されている間にも、浩司は腰を動かしてピストン運動を続けていた。
 ようやく快感の狭間から意識が抜け出してきたカイトの目には、ギラついた目で腰を振り続ける浩司の姿が映った。
(オレ……セックス、しちゃったんだ……)
 悲しみにも似た感情が心をかすめたのに、躰のほうは逆に反応して貪欲に男のモノを求めた。
「ああ、すげぇ、すげぇ……」
 カイトの膣が収縮したことで浩司は白目を剥きそうなほどに快感を貪っていた。
 これが犯されるということなのか。
 カイトの心は醒めた。
 同時に躰は熱くなり、再び頂上へ向けて昇り始めた。
 何度も、何度も、ペニスが躰を貫く。
 男がそう望む限りカイトの躰は快楽を提供し続ける。道具のように。そして、カイト自身もやがて快楽に狂っていく。
 醒めた心でいながら、雌としての本能で男を受け入れ、甘い快感に身悶えするのはこれ以上ないほどの拷問だった。
(犯される、犯される、いやだ、いやだ!)
「ああン、いやっ、そこ、もっと……犯してぇ!」
 心と正反対の言葉を体は叫び、それを止める術もない。
 体内深くに突き刺さる男の器官を感じて、カイトの体は悦び震えた。
「ま、また……きちゃう……」
 行為の最中にまがりなりにも言葉を口走ることができるのは女であるカイトのほうだった。
 浩司はもはや快楽に取り憑かれ、機械のように単調に腰を動かすだけだった。
 いまにも弾けそうな快感の塊に、カイトはむせるような体臭を発する浩司の胸にしがみついた。


 そうやってしがみついてないと、どこか遠くへ流されてしまいそうだった。
「あ……あ……ああああ…………」
 再びエクスタシーの高みへと投げ出され、カイトの心は体に従った。すなわち、波のように重なる快感に呻き、恍惚感に浸った。
(あん、コウジぃ……)
 愛しいもののように浩司に抱きつき、首筋に顔を埋める。
 肉体の支配下におかれた心は、浩司を愛する者と認識していた。
 そのとき浩司の体も硬直し、震えた。
 ひときわ深く挿入されたペニスが信じられないほど膨張し、破裂したかのようだった。
 ピクリ、ピクリと浩司の体が痙攣し、何かをカイトの体内に注ぎ込む。
 そのプロセスが終わると、がくりと浩司の体から力が抜け、カイトの上に体重がかかった。
「お……もい……」
 まだ快感の余波で頭がぼうっとしていたカイトは、うわごとのように呟いた。
 もう少し意識がはっきりしてくると、カイトはのしかかってくる浩司の体を横にずらした。
 結合部からずるりとドロドロの液に包まれた浩司のペニスが抜けた。
 ペニスが抜けても、まだ膣の中に何かが差し込まれたような感覚がわずかに残っている。
「カイト」
「な、なに……?」
「気持ちよかった?」
「う……」
 しばらく迷ってからカイトは正直に答えた。
「物凄く、良かった……って、何言わせんだよ!」
「あはは……ねぇ、もう一度、あたしって言ってくれよ」
「なっ……ダメだ、ダメ。約束通り、一発抜いてやったんだ。あんま調子に乗るなよ」
「ちぇー」
 浩司は起き上がると、下着とズボンを身に着けていった。
 二度も達してしまったカイトは息も切れ切れで、まだ立ち上がれるほど回復してない。


「浩司ぃ、鎖の鍵のことなんだけど……」
「おーい、みんな。入ってきていいぞォ!」
 浩司は廊下に向かって大声で叫んだ。
「なっ!」
 カイトは上半身を起こしたまま硬直してしまった。
 浩司の呼びかけに応じて、廊下からカジ、ハネダ、それに他の数人の少年までが姿を現したのだ。
「なっ……これ……?」
 事態が掴めず言葉を詰まらせるカイト。
 浩司は鼻でせせら嗤った。
「ドッキリカメラ〜、なんてね♪」
 ぞろぞろと少年たちがカイトを取り囲み、その外にはムラタの姿もあった。
「浩司、おまえ……?」
「まだ気付かない? だ・ま・さ・れ・た・の! カイトちゃんは」
 ぱちん、と浩司のウィンク。
「うああああああああああああっっっっっっ!!!!!」
 カイトは顔を覆い、叫んでいた。
 トロッ……
 まるでタイミングを計ったように注ぎ込まれた精液が漏れ出て、白い太股を汚した。
 ムラタが言う。
「言ったでしょう? 破瓜の儀式で君は自分から腰を振ることになるって」
 いまさらのようにカイトはビデオを回す音に気が付いた。
 浩司との一部始終は、テープに収められていたのだ。
「ヘッヘッ、先生、いい絵が撮れましたよ」
「予定通り、あとでインターネットにアップしておきなさい。カイト君の艶姿を全国の皆さんに見てもらわなければいけませんからね」
「ラジャー!」
 カイトはももに垂れた白濁液を手でぬぐった。と、拭うそばからポタリと男の精が落ちてくる。


 カイトはその場にうずくまった。
 惨めに震えるカイトに、カジがとりすがった。カチャカチャとベルトを外す音がする。
「今日の割り当てはオレと浩司の二人なんだ。よろしく!」
「くうっ!」
 言うなり、カジは背後からカイトを犯した。
 後背から割り入ってくる男の侵入に、もはや抵抗することも忘れてカイトは身を任せた。
「うわぁ、気持ちいいぜぇ〜。あんた最高だよ、カイトさん!」
 カジの生臭い鼻息がカイトのうなじの毛を揺らした。
 浩司は皮肉っぽく言葉を投げかけた。
「また次のときも、『あたしを犯して』ってイロっぽく頼むぜ、カイトさん!」
 犯されながらカイトは浩司を睨んだ。
 そうやって睨むことだけが正気を保ってくれるというように。
 一度芯まで快楽を刻まれた体は、カジの単調なピストン運動にも反応してしまう。
「はぁっ……はぁっ……ああっ、くううっ!!」
 たまらなくなったのか、山田が剥き出しのペニスを振りかざしてカイトの前に位置どると、カイトの胸の谷間にそれを送り込んできた。
 前後から二人の少年に所有され、そしてカイトの肉体は快楽を受け入れていた。
「いっ、はあっ、あンっ……うううっ、クソぉ!」
 甘い吐息の合間にカイトは歯を食いしばり、浩司の姿を追った。
「て……めぇだけは絶対コロス!」
「カイトちゃん……腰、くねってるけど、もう限界なんじゃない? イッちゃえよ!」
「ひぐっ……!!!!」
 浩司の指摘と同時に、カイトは三度絶頂の波に襲われた。
 浩司が笑いながら見ている前でカイトは惨めに犯されたうえにイッてしまった。
 全身男の精液にまみれながら、カイトはゆっくりとマットレスに沈んでいった……。
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