部長の楠樹繭美は、一年生達の様子がおかしい事に気付いた。
 この学校のスポーツ部の例に漏れず、テニス部も厳しい練習を課すようなも
のではなく、楽しく体を動かそうというのが目的だった。軟式テニスというこ
ともあって、一年生にも一通りのフォームを覚えさせた後は、五月の連休明け
にはもう球も打たせているくらいだった。
 さすがにコートが少ない(とはいっても3面もあるのだが)ので全員が一度
に練習する訳にも行かず、公式大会に出る上級生を中心としたカリキュラムと
なっている。
 5人の一年生部員の顔は、どれも桜色に染まっている。
 いつもは時々おしゃべりをしながらボールを拾ったり、素振りの練習に興じ
る彼女達が、今日はどこか浮ついているように見える。
 しきりにスカートを気にし、少し動く度に無意識に裾を引っ張って下着が見
えないように隠そうとしている。もちろん、アンダースコートなのだから見せ
てもかまわないし、周りはみな女性ばかりだ。
 彼女達の様子は明らかに変だった。
 それもそのはず、一年生は全員、上も下も下着無しなのだ。大きく跳ねれば、
お尻も恥ずかしい所も丸見えになってしまうのだ。
 あまり動きまわることがないのでわかりにくいが、亜美が動く度に大きな胸
がふるんふるんと揺れ動く。
 練習するうちに、股間がとろとろになってきた。乳首が擦れて、気持ちが良
すぎるのだ。内股気味に歩くだけでラヴィアが擦れて、感じる。
 ラケットを持ち、軽く前傾姿勢でこぼれ玉を待ち構えながら、持っているテ
ニスラケットのグリップを挿入したら気持ちがいいだろうなどと、亜美は性的
妄想で頭の中を一杯にしていた。


 もしここに男性がいたら、どうなってしまうだろうか。
 きっと金網に体を押し付けられ、皆が見ている目の前で犯されてしまうに違
いない。
 逞しい肉棒と、ラケットのグリップの両方を突っ込まれて、繰り返し犯され、
そのまま放置される。そして今度は野次馬が襲いかかってきて、テニスウェア
を破かれて輪姦されてしまう……。
「あっ……」
 ついに腿を伝って淫らな果汁がしたたり落ちてしまった。
 乳首はとっくに尖りきってしまっているし、腰の奥の方にじんじんと痺れる
ような温かい物が発生しているようだ。
 亜美の妄想と感覚は、本来の体の持ち主でありながら今は居候に甘んじてい
る悠司にも伝わっていた。
(あ、くそ、まずいな……なんか変な気分だぞ)
 一番近い感覚は、アダルトビデオを抜きどころを探しながらゆっくりとオナ
ニーをしているといったところだろうか。低いが持続性のある刺激は、徐々に
悠司の理性をも奪い始めていた。
 その時、
「はい、ちょっと集合!」
 繭美が大きな声を上げて皆を呼び集めた。部員達が小走りに彼女のもとへ集
まってゆく。亜美も我に返って、走る。
 全員が揃ったのを見て、繭美が言った。
「一年生。ちょっと今日、全員おかしいわよ。どうしたの?」
「あの……」
「いえ、なんでも……」
 もじもじとしながら、しきりにスカートの裾を気にしている。亜美にいたっ
ては、頬を紅潮させて心ここにあらずといった風情だ。


「瀬野木さん……!」
 背中をつつかれると亜美は一瞬我に返るが、すぐにまた惚けたような笑みを
浮かべて虚空を見つめる。まるで気が触れてしまったような感じだ。事実、亜
美は快感のパルスに身をゆだね、心はここに無かったのだ。
 この時、悠司と亜美の精神はほとんど完全に溶けあっていた。
 無意識にバストに手をやり、つかむ。
「んふっ……」
 小声だが、何人かにはその声が聞こえてしまったようだ。ぎょっとしたよう
な表情で亜美の方を見るが、彼女は全く意に介さない。
 繭美はため息をついた。
「ふう。この分では、今日は練習にならないわね」
 続けて何かを考える風に、軽く首を傾げて言った。
「それじゃあ……部員の相互理解と親睦を兼ねて、特別ミーティングでもしよ
うかしら」
 3年生部員が、その言葉を聞いて顔を見合わせた。驚いているような雰囲気
だ。2年生もやはり驚きを隠せないようだった。
「全員、必ずシャワーを浴びてから部室に来るように。いいわね」
「はい!」
 揃った返事が返ってきた。
 繭美が更衣室の方に歩き始めて、他の部員もそれに従う。
 何人かの1年生が亜美に近寄って耳打ちをした。
「やっぱり、先輩怒らせちゃったのかな」
「そんなことないわよ。でも、布夕(ふゆ)ちゃん、感じてたでしょ。皆に見
られるかもしれないって……」
「もう!」
 握り拳で、軽く背中を叩かれる。
 そして彼女は、亜美に胸を押し付けるようにして囁いた。


「もう、いぢわるなんだから。”お姉様”ったらぁ……」
 ハートが語尾につくような甘えた声だった。
 自分でも胸がときめいているのがわかる。
 悠司は、自分のと亜美の心が徐々に溶け合ってきているのがわかった。
 前に進もうとすると、体もすっと動いた。
 靴の上から痒い所を掻いているような感じだが、ある程度の意思は通るよう
だ。すっと手が動いて、布夕と呼んだ少女のお尻を触る。
「ひゃん!」
 まだ固いが、それでもしっかりと女性らしさを漂わせ始めた丸みを帯びた柔
らかさをしかりと楽しむ。
「だめですよぉ、お姉様ったらぁ……」
 それでも布夕はまるで抵抗しない。背後からはお尻が丸見えのはずだ。
「うふふ、布夕のその顔、ぞくぞくしちゃう。ここで押し倒しちゃいたいくら
いよ」
 亜美の顔をのぞきこんだ布夕の表情が一瞬、強ばる。
 その顔は亜美でありながら、悠司の表情をたたえていた。
「亜美ちゃん?」
「なあに?」
 布夕はまばたきをした。
 そこにいるのは、いつもの亜美だ。さっきのは自分の思い違いだったのだろ
うか?
「ううん、なんでもないの」
 そう言って、小走りに更衣室の方へ走ってゆく。
 あそこがじんじんと痺れていた。
 まるで知らない人に触られていたみたいだった。
 それなのに……気持ちよかった。走るだけで股間がぬるぬると濡れてゆくの
がわかった。
 早くシャワーを浴びなきゃ、と布夕は思った。


 シャワーを浴びた瞬間、亜美は軽く達してしまった。まるで全身が性感帯に
なったようだった。
 悠司にもその衝撃が伝わってきた。かなりの部分、亜美と悠司はシンクロし
始めているようだった。
 悠司の心は、妙に浮き立っていた。
 衆人環視のもとで同級生のお尻を触れた事ではなく、今までの違和感が徐々
に消えてゆくのがわかったからだ。
 不思議だった。
 徐々に体がしっくりしてくるのがわかる。
 張りのある双球の頂きにある蕾が固くしこっているのが感じられる。湯滴は
まるで全身を舐めるように愛撫してゆく。
 だがその一方で、彼は用心を怠らなかった。
 シャワールームは、個室とまではいかないが区切りとカーテンで最低限度は
プライバシーを守れるようになっている。仕切りの下から両隣の人の脚と頭が
見える。顔を仕切りの上から突き出せば他人の裸を覗けるのだが、そんなこと
をする者は当然のことながらいない。
 誰もが無言だ。
 どこかが変だった。
 服を脱いだ時、上級生がこちらを見ていたのも気になる。
 亜美の心のどこかに思い当たる事があるようだったが、悠司にはそれを知る
ことができないのは腹が立ったが、これはしかたがない。
 汗を流し終え、バスタオルで体を拭いて下着の上に直接ジャージを着る。
 既に三年生の何人かはシャワーを浴び終えている。
 急がなければならなかった。


 小走りに先輩達を追い抜いて、部室に集まる。1年生は亜美が最後だった。
思ったよりも長くシャワーを浴びてしまったようだ。布夕という少女が軽く亜
美をにらんだ。
 もう、だめじゃない! と言っているようだ。亜美は両手を会わせて軽く頭
を下げた。それだけで布夕の表情が緩む。
 やがて先輩達も全員揃い、空調の良く効いた部屋で、各個人についての寸評
と、練習メニューについての提案が行われた。
 贅沢な学校だ。教室どころか、廊下にまで空調が効いているのには悠司も驚
かされた。トイレやこんな部室にまで空調が行き届いている。並の設備ではな
かった。さぞや授業料は高いことだろう。
 ホワイトボードの前に立っている部長と副部長は3年生。
 3年生はあと3人いて、2年生は6人いる。1年生も6人だ。合計で17人
のクラブだ。
「以上です」
 副部長に全てを任せ、じっとしていた繭美が副部長の締めの言葉で、一歩前
に出た。
「いつものミーティングはこれでおしまい」
 時刻はまだ2時半。
 これで解散なのだろうかと思いかけた時、繭美が言った。
「さて、これからが本番」
 彼女の顔に、子供っぽい笑みが浮かんでいる。なんというか、悪戯っ子のよ
うな感じがする。
「特別ミーティングは、本当は冬休みのクリスマス会の時にするの。部員の結
束を固めるためと親睦を兼ねてね。そうして一年生は本当のテニス部員になる
の」
 足を横に流すようにして座っていた繭美が、すっくと立ち上がった。


「一年生、立ちなさい」
 弾かれるように6人の1年生が立ち上がった。
 繭美は緊張して立っている彼女達の目の前に歩み寄って言った。
「あなた達、バージン?」
 一年生達の目が点になった。
「は?」
「えっ!?」
「……」
「あ、あの……」
「えーっと、その」
「違います」
 それぞれが違った反応を返した。戸惑っていないのはただ一人、亜美だけだ。
 亜美の言葉に、全員の目が彼女に集中した。
 それを彼女は、うっすらと笑みすら浮かべて受けとめている。
「みんなバージンじゃないでしょう?」
 非難の目で見られるかと思ったが、二人が恥ずかしげにうつむいている他は、
むしろ潤んだような熱い視線を、亜美に送ってくる。
「もう、亜美ちゃんったら……」
 小声で言ったのは、瀬尾杏子という同級生だった。
 うつむいている二人のうちの一人だ。
「亜美ちゃんは……知ってるのよね?」
「ええ。姉様から聞いてますから」
 心が−−痛い。
 これは、亜美の心だ。


 亜美は目の前まで近寄ってきた繭美の手を取る。そして片足を後に下げ、膝
を折り曲げてまるで貴婦人に対してするかのように、彼女の手の甲にキスをし
た。
「特別ミーティングの始まりは、このキスでいいんですよね?」
「やっぱり瀬野木先輩に聞いていたのね」
「ええ。先輩の話も聞いてます。一年の時から二股ディルドーの使い方が凄く
上手だったって……」
 亜美の姉、観夜は四才年上で、同じ学校に通っていた。今年の6月に結婚し
て、現在は妊娠3ヶ月。幸せの最中にある。
 亜美の心に複雑な感情が芽生えるのが悠司にもわかった。
 それは、愛憎。
 彼女にとって姉は愛し、憎しむ対象だった。
 一人っ子の悠司にはよくわからないが、彼女の中にある深い闇は理解できた。
とてつもない大きさで、手で触る事すらできそうな密度の、暗く、血と死の臭
いがする闇だ。
 苦しい。
 胸を切り開いてかきむしりたいほどの苦しみを、今、悠司は初めて知った。
 それでも彼女は心の闇を隠す仮面、微笑みで繭美を迎える。
 殺したいほど憎いのに、誰よりも愛している。姉を守りたいのに、痕跡も留
めずこの世から消し去りたかった。
 悠司は相矛盾する亜美の激しい感情の渦に飲み込まれ、自我を失った……。


 彼女が気がついた時、テニス部の部室は濃密な性臭でむせかえっていた。
 エアコンは効いているが、それ以上の、汗と、吐息と、そして性分泌物が1
5人分。脳細胞を蕩かせる。いずれも美少女と言うにふさわしい少女達が全裸
で睦みあっている様は圧迫感すら感じるが、その中に溶け込んでいる彼女達に
とっては、どうでもいいことだった。
「どうしたの?」
 繭美の胸の中で、亜美は目覚めた。
 自分は起きていたはずなのに、なんで目が覚めたなんて思うのだろう?
「なんでもないです。先輩」
 そういって、目の前の乳首を甘噛みして軽く引っ張る。
 恵理はこれが好きだった。なぜか、何度もこれをねだったものだ。
 でも……恵理って誰だろう?
 少し考えたが、なにしろ百人を軽く越える子猫ちゃんとの逢瀬をもつ亜美の
こと、すぐには記憶から出てこない。
 繭美が顔を寄せてきて、おでことおでこをすりあわせて笑った。
「他の子のことを考えていたんでしょう? 顔に書いてあるわ」
「わかります?」
 答えの代わりに繭美は亜美の顔を引き寄せて、唇を合せた。すぐに舌と唾液
がかの序の口の中に注ぎ込まれる。亜美はそれを味わってから、自分の唾液を
混ぜて先輩の口へと返した。
 淫靡な遊びを何度か繰り返してから二人はようやく顔を離した。
「亜美ちゃん、キスが上手ね。先輩……お姉さんに教えてもらったの?」
 だが亜美は曖昧な笑みで彼女の問いに答えず、反対に彼女に質問をした。
「先輩が経験した男性は、婚約者さんだけなの?」
「そうよ……私の胎内(なか)に入れる男の人は、晶さんだけなの」
「もったいないですね」


「だって、他の男の人に抱かれるなんて考えたくもないもの」
「でも女の子は平気なんですね」
「柔らかいから、好き……」
 繭美が亜美を抱きしめる。
 テニス部でも1、2を争う美少女の楠樹繭美と瀬野木亜美、二人の胸が互い
の体で押しつぶされる。
「肌と肌で触れ合う事が、一番人を理解できるの。先輩もそう言ってたわ。私
も、そう思うの」
 また亜美の心に、鋭い痛みが走る。
 そんな言葉なんか聞きたくない。
 心臓を鷲づかみにされたような苦しみを感じながらも、彼女は笑みを絶やさ
ない。だって、自分に求められているのはそんなことではないから……。
「亜美ちゃんは眼鏡を外さないの?」
「外すとよく見えなくなってしまいますから」
「なんでコンタクトにしないのかな」
「あまり、得意じゃないんです。異物を常に感じちゃってだめなんです」
「じゃあ……これもだめ?」
 手探りで何かを探していた繭美が差し出したのは、二股ディルドーだ。いや、
それに黒いゴムのバンドがついている。
「これで亜美ちゃんを愛してあげるからね」
 ざざっ!
 亜美の背中に寒気が走る。
 二の腕と背中に鳥肌がたってしまった。
 犯されるなんて嫌だ。犯されたくなんかない。
 それなのに、亜美は彼女の言葉を待っていた。矛盾している。
 戸惑いながら、亜美は今度は自分から繭美を抱き寄せてそのまま押し倒す。


「先に、先輩に気持ちよくなってもらいます」
 おおいかぶさるようにしてキスをする。
 脚と脚、お腹とお腹、胸と胸。そして、顔と顔。
 相手の温もりが体に染み渡ってゆく。
「亜美ちゃんって、ひんやりとしてるのね」
「低血圧ですから」
 くすりと笑って、またキスを交わす。ちょんちょん、とつつくようなキスを
何度かしてから、繭美の唇を舐めまわす。唇は甘い香りがする。亜美はリップ
クリームを剥ぎ取るように自分の唇と舌で、繭美の唇を凌辱する。
 片手は繭美の乳房にあてられている。乳首を親指でくじりながら、円を描く
ように揉む。
 長くもつれるようなキスをしながら、亜美の手が繭美の全身を這いまわる。
「ふー……んふぅーっ!」
 前歯や歯茎までも、歯垢を削ぎ落すかのように舐めまわす。
 繭美が舌を突き出せば、受け入れる。今度はお返しに歯を舐めまわされる。
直接的な快感はないのに興奮した。何度もして、されてきた行為なのに、とて
つもなく新鮮な快感のように感じた。
 何分、いや何十分キスをしていただろうか。
 いつの間にか周囲で睦みあっていた少女達が二人を取り囲んで見つめている。
「もう、なんでこっちを見てるの?」
 繭美が膨れっ面で抗議した。
「だって……とってもきれいだったんですもの」
 2年生の部員が、ため息をつくように呟いた。
「だめよ。1年生をたっぷりと愛してあげて。身も心も、私達は一つに繋がる
の。それがこの部の伝統だから……」
 それだけを言うと、また繭美と亜美はいつ終るとも知れないキスを始めた。



 もつれあう二人を見つめる、肩口で髪を切りそろえた切れ長の目の少女がい
る。副部長の長狭瞳だ。
「部長が子猫ちゃんなのは久し振りね」
 と潤んだ目で言う。
「気持ちいい? マユ」
「ええ……とってもいいのぉ!」
 膝立ちになって、前から股間に手を当てられ愛撫されている繭美を、瞳は後
から抱きかかえるようにして胸をつかむ。肩にあごを乗せて、耳に息を吹きか
けた。
「うふぅ……っ!」
 びくびくと震える繭美の耳元で、彼女は囁く。
「いつもマユにしてもらってるから……今日はたっぷり可愛がってあげる」
 耳からうなじにかけて、尖らせた舌でつつ……となぞってゆくたびに、繭美
がかすれた悲鳴をあげる。
「マユの弱い所は全部知ってるもの。ほら……ここはどう?」
 背骨の少し横のくぼみに指をあて、下へと滑らせる。繭美のからだがのけぞっ
た。
「ひぅっ! やだ、やめてよ……」
「うふふふ……」
 いつもの冷たい表情が嘘のような艶っぽい笑みを浮かべる彼女が、突然後か
ら羽交い締めされて引き剥がされた。
「な、何をするのっ!」
「長狭せんぱぁい。私を放ったらかしにしないでくださいよお……」
 ストロベリージャムのようにとろりとした声が彼女の耳元で囁かれる。
 水月布夕(みづきふゆ)だ。


「お姉様達の邪魔をしないでくださいねぇ」
 声は甘いが、どこか嫉妬と怒りの感情が感じられる。布夕は瞳の乳房を後か
らつかみ、乳首を指で撫でまわす。
「先輩の先っちょ、くりくりですよ? お姉様のえっちを見て興奮したんです
か?」
 布夕は耳を舌でなぞったり、息を吹き掛けたり耳たぶを咥えたりする。
「だ、だめ……耳、弱いの……」
 拒否するように体を左右に軽く揺さぶりながら、瞳が崩れ落ちる。
「はぁい。今度は瞳先輩が子猫ちゃんですねー」
 うふふと笑いながら、瞳の上に覆い被さってゆく。
 もつれあう二人を、亜美は茫然として見つめた。
 何か、見てはいけないものを見てしまったような気がしているのに、視線が
外せなかった。初めて見る光景でもないのに、新鮮で、淫靡で、胸の奥がかっ
と熱くなる。こんな感情は、遠い昔に忘れ去っていたかと思っていた。
 姉に自慰のしかたを小学校1年生の時に教わって以来、常に彼女は姉に年齢
不相応な性の知識を植え付けられ、体でおぼえさせられた。
 亜美にとってセックスは単なる技術であり、いつか来る生殖の手段でしかな
かった。
 興奮など、ほとんどしなかった。
 それなのに、今、彼女は舞い上がってしまいそうになるのを押さえきれない
ほど、ときめいている。
 これは本当に自分なんだろうか。
 ぼんやりとしていた亜美の唇を、繭美が奪った。
「だめよ。……今は、私だけを見て」


 そう言って顔を横に背け、恥ずかしそうに腰を下ろしたまま脚をMの字のよ
うに開いてゆく。
 大きく割り開かれた繭美の脚を、亜美は恍惚の微笑みで迎えた。
 大好きな先輩の……。
 とても胸がどきどきする。まるで初々しい処女のように、亜美の鼓動は高鳴っ
ていた。
 相手が先輩だからなのかな、と亜美は思った。
 繭美が腰を左右に軽く振った。まるで催促をしているような仕草に、亜美は
彼女の股間に顔を近づけた。
 せっけんの匂いしかしない。
 ヘアーは薄い。もしかしたら、剃っているのかもしれないが。
 花弁を左右の親指と人差し指で割り広げる。
 とても小ぶりな入口が粘膜の間から顔をのぞかせた。上部にある大粒の肉の
真珠が目に留まって、亜美はそれに口付けた。
「ひぃうんっ!」
 腿で頭を左右から締め付けられるが、気にならない。
 そのまま舌で、粘膜と真珠をていねいにしゃぶり続ける。
「あああ……いいのぉ……亜美ちゃん、とっても上手! 気持ちいいわよ」
 徐々に舌は秘裂の奥へと進んでゆく。もう、呼吸も難しいくらいだ。舌先と
指に感じる繭美の内部構造を楽しみつつ、溢れてくる甘露をすする。
 何回もしたこの行為は、今までやったことがなかった。
 慣れているのに、試行錯誤をして感じる所を記憶してゆく。
 どこかちぐはぐだった。
 繭美の押さえようとしても押さえきれない喘ぎ声を聞きながら、亜美は脚を
押しのけて顔を上げた。


 やめてしまうの? と繭美の目が訴えかけている。
 もちろんやめるつもりなんかはない。
 婚約者がいる彼女の中に熱くたぎる欲望を突っ込み、思う存分蹂躪したかっ
た。妊娠させてもいい。いや、むしろ彼女を孕ませたかった。
 亜美は繭美の腿の間に体を置き、腰と腰を近づけた。
 位置合わせをしようとして、下半身を見る。
 あるべき物が、そこに無かった。

 ……あるべき物って?

 女が女に、妊娠をさせることなどできるわけがない。
 さっきから何かが変だ。半分寝ていてもできるくらい何度もしたはずの愛撫
がとてつもなく新鮮に思えて興奮したり、ペニスバンドに嫌悪感を感じたりと、
歯車が噛み合っていないのだ。
 くぅん、と鼻を鳴らす繭美の声で、亜美は現実に戻ってくる。
「先輩、おねだりですか?」
「亜美ちゃんって意地悪なんだから」
 幼女のように拗ねた表情が可愛らしい。
 こんな風に、相手の表情をじっくりと見たのは久し振りのような気がする。
 亜美は再び股間に顔を近づける。
 舌では長さが足りない。
 指を入れる。人差し指と中指。
 爪は切っていたかなと思って一度指を抜く。
 ああ、だいじょうぶ。ちゃんと切りそろえてある。


 わずかだが、ぬめる液体に濡れた指を、亜美は上を向いて繭美に見せつける
ようにしゃぶった。
 しょっぱい。これが、先輩の味?
 いや。自分の全身にも、うっすらと汗が浮いている。
 先輩と自分が入り交じった味だ。
 たっぷりと指をしゃぶってから、唾液が滴り落ちそうな指をもう一度繭美の
濡れそぼった花園へ挿入し、愛液をまぶしてから繭美の顔へと持ってゆく。
「ん……」
 繭美は顔を突き出して指を舐める。舌の感触がくすぐったい。指を口の中に
含み、熱心に指をしゃぶる彼女の舌技は亜美を興奮させる。
 これでフェラチオをされたら、どんなに気持ちがいいだろう。
 股間に手をやって、亜美はまた心の中で嘆息する。もちろん、ペニスなんか
あるわけがない。
 物足りなさが彼女を自慰に駆り立てる。右手は繭美がしゃぶり、左手は股間
で動かしている。
 股間から広がる熱い波動が全身の皮膚感覚を鋭敏にさせてゆく。
 指が濡れてゆく。指にあたる柔肉の感触が彼女を興奮させ、ひんやりとした
指が温かい蜜に濡れて温もってくる。
 繭美の手が亜美のほおに触れた。
「ほんと、いけない娘(こ)」
 いつの間にか自慰に夢中になってしまっていたらしい。亜美はあどけない子
供のように、にっこりと笑った。
 繭美が触れているほっぺたが熱い。
 まるでそこから何かが注ぎ込まれるような感じがする。
 かあっと顔が赤くなるのがわかった。


 この瞬間、悠司は亜美であり、亜美は悠司だった。
 心と心が溶け合い、ふたりはひとりとなった。
「先輩……せんぱぁぁいっ!」
 亜美は夢見心地で繭美に抱きついた。
 胸が熱い。柔らかな体がとても愛しかった。
 こんなにも、人は暖かく、やさしい。
 繭美は目を細め、どこか悲しそうな微笑を浮かべた。
 一瞬、繭美と亜美の間に不可思議な絆が生まれ、それが何かをつかむ前にふっ
と消えた。
「あなたの中がどんなのか、もう私にはわからないから……」
 彼女が取り出したのは、陰嚢まで模してあるペニスバンドだった。
「だからせめて、これであなたを可愛がってあげる」
 いやだ。
 言葉がのど元まで出かかって、そこで止まった。
 こんな物で貫かれるのは屈辱の極みだと悠司の心は訴え、亜美は反対に受け
入れようとする。
 それでも、繭美がペニスバンドを装着する様子を見ていると、悠司の心も次
第に溶けてゆく。なぜか照れ臭くなって、亜美は後を振り向いて部屋の様子を
眺めることにした。
 信じられないほど淫靡な光景が広がっていった。
 周りは少女の面影を残したハイティーンの少女達が、体を重ねてもつれあっ
ている。互いの股間に顔を埋めている子ばかりかというとそうではなく、二人
かあるいは三人で一人の少女の全身を手で愛撫していたり、かと思えば一人で
二人を相手にして愛撫をしている子もいる。手や舌ばかりではなく、胸や脚、
お腹まで使って全身を駆使していた。


 男と女のセックスとは、全く違うものだった。
 亜美は両腕を交差させ、自分の体を抱きしめる。胸が圧迫される。心臓の鼓
動が腕に伝わってくる。
 温かく、そして、やわらかい。
 これが女の体なのか。
 股間が疼く。
 喉が渇いて仕方がない。
 脊髄から神経と血管をじわじわと這うように何かが全身に巡ってゆくのが、
自分でもわかる。濡れる感覚が、いっそう彼女を淫らにしてゆく。
「お待たせ」
 繭美の声で彼女の方を振り返ると、クリーム色がかった疑似ペニスが繭美の
股間から生えていた。下には袋状のものまでちゃんと作られているが、これは
形だけで、実際には固い物のように見える。
 立ち上がった繭美が、亜美の目の前に腰を突き出す。
 亜美は顔を上げて先輩を見た。
「舐めて」
 声が少し、震えている。
 彼女も興奮しているのだ。
 亜美は心の中にわきあがるわずかな嫌悪感を押さえつけ、目の前のものに手
を伸ばす。見た目ほど冷たくはない。むしろ、ほんのり温かいようにも感じる。
軽く力を入れるとへこむ。実際のペニスよりは固いが、かなり弾力性のある素
材のようだ。
 唇から小さく舌を突き出して軽くつついてみる。
 なぜか、甘いように感じた。
 小さく息を吸い込んで、キスをするようにして先端に唇を当てる。つん、と
2、3度つついてから、意を決して口を開き人工物を口の中に招きいれた。


 実際のペニスよりは少し細身だが、口の中に異物を迎えて、一瞬亜美は胃液
を逆流させそうになった。
 喉の奥を突いたからではなく、まだ悠司の心が拒絶をしているのだ。
 大丈夫よ、と亜美が悠司をなだめる。当然、彼としては釈然としないものが
あるのだが、不思議と納得してしまうのだった。
 気がつくと、床に押し倒されていた。
 繭美が何かを企んでいるような笑みを浮かべている。
「ぼーっとしてちゃダメよ」
 そのまま足の間に体を入れて、両足を抱え持つ。
「じゃあ、いくわね」
 ぶらぶらと上下に揺れるそれを、腰をうまく動かして亜美の入口に狙いを定
める。亜美が軽く息を吐いた瞬間を狙ったように、繭美は腰を突きいれてきた。
「あああああうぅっ!」
 蕩ける……いや、落ちる!
 本能が恐怖し、無意識に手が宙を泳いで繭美の体をつかむ。それだけでパニッ
クはおさまった。
 上から両足を掲げて押さえ込まれるようにディルドーをねじ込まれる。
「亜美ちゃん、気持ちいい?」
「ふぁ、ふぁい……気持ち、いいですぅっ!」
 黒い無機物が引き抜かれると、それを惜しむように、離さないとでもするか
のように亜美のひだがまとわりついて引きずり出される。
「亜美ちゃんのお○○こ、欲張りね。すごい吸い付きじゃない。そんなにこれ
が欲しかったの?」
「はい……私、お○ん○ん大好きなんですぅ! 中でいっぱい出されるのが好
きなんです!」
 体をえぐる無機物が、内側から彼女を責めたてる。痒い所をおもいきり心行
くまでかきむしるような、刹那的な悦びと快感があった。


 もっと苛められたい。
 自虐的な感情が亜美を埋め尽くす。
 今、お前は雌豚だと言われれば、その通りよ! と答えるだろう。快楽を与
えてくれるならば、誰とでも、何とでも交わるだろう。
 いつの間にか体位が変って、バックから獣のように突かれていた。
「先輩。も、もっと激しく突いてっ!」
 前後の運動だけではなく、入れたまま上や左右に腰を動かされたり、回転運
動に、小刻みな震動を与えたりと、繭美のテクニックはなかなか堂に入ってい
た。
 しかし、一気に昇りつめたいのに、どうしても最後の一押しに届かない。
 あと一歩、いや、あと数歩……。
 入れられたまま、身体を反転させられて脚を投げ出した繭美の上に乗っかる
形……変形の対面坐位にされた。どちらかというと騎乗位に近い。
「どう、亜美ちゃん?」
「もっと……もっと太いのが欲しいんです」
 小さな声で囁く亜美の声には、欲情と切なさが固形物として触れそうなほど
濃密にこもっていた。
「もっと大きいの?」
 下から腰を突き上げられると、子宮から脊髄を通って頂点へと快感が走り抜
けてゆく。
「あふぅ! はい、欲しいんです……それでないとイケないんですぅっ!」
 欲しかった。
 一刻も早くこの快楽のスパイラルから逃れたかった。
 一度イケば、そうすれば楽になれる。
 まるで、むりやり射精を堪えさせられているような感じだった。ペニスは震
え、射精したくても精子は発射されない。根元を何かで結わえられているよう
な、狂おしいほどの欲望……。


 亜美も、そして悠司でさえも絶頂を待ち焦がれていた。
 だから亜美は、自分からディルドゥが抜かれたことにさえ気付いていなかっ
た。そして、繭美が持ってきた物に周囲が小さな悲鳴をあげたことにも。
「どう、亜美ちゃん。これなら満足してもらえるかしら?」
 それはまさしく、『凶器』だった。
 亜美は脅えた。いや、悠司だろうか? もはや、どちらなのか区別すること
はできなくなっていた。望んでいたはずの亜美でさえ、恐れを抱かずにはいら
れない凶悪な代物だった。
 二人の様子をうかがっている周りの少女達からも、おびえのような負の感情
が漂ってくるのがわかる。
 赤ん坊の腕ほどもありそうな物だった。それで殴られたら痛いどころではす
みそうもない。長さは軽く40センチはありそうだ。
 大きいだけではない。
 えぐいほどに張り出した傘のような先端は、まるで銛のようだった。突き入
れたら二度と外には出てきそうにもないと思わせるほどだ。それに、緩やかに
反っている胴体の部分にも、いぼが無数にはりついている。これを踏めばその
まま健康器具になりそうだ。
「亜美ちゃん、先に私に、挿(い)れてくれる?」
 繭美が差し出したそれを、亜美は受け取った。
 手に痺れが走った、というのは幻覚なのだろうか。木なのか、それとも他の
何かの素材なのかもわからない赤茶けた凶悪なディルドゥは、亜美の手の中で
跳ね、震えた。
 少なくとも亜美はそう感じた。
 膝立ちになって両脚を大きく広げている繭美の股間に、それを近づける。
「うく……」
 繭美が苦しげに眉をひそめる。大きく息を吸い、吐いた時を見計らって突き
いれてゆく。見掛けは小さな腟口なのに、驚くほど広がり、徐々にではあるが
飲み込んでゆく。


 周囲の部員達も二人の淫儀を、固唾を呑んで見守っていた。
 やがて、半ばまで巨大なディルドゥは納ってしまった。
「ほら、亜美ちゃん。私にこんな大きなおち○ち○が生えちゃったよ?」
 目尻と股間に涙とよだれを垂れ流しながら、それでも気高く繭美は言った。
腰は小刻みにぶるぶると震え、背後の部員には彼女のお尻が何かを堪えている
ように動いているのが見えた。
「これを……亜美ちゃんに入れちゃうんだから。嫌だと言ってもダメよ。もう
遅いんだから……」
 赤ん坊よりもゆっくりと、不器用に繭美が亜美ににじりより、押し倒した。
そのままのしかかるようにして、挿入された。
 裂ける、と思った。
 しかし裂けはしない。それどころか、潤みきった膣口はゆっくりと広がって
巨大な張り型を受け入れてゆく。
「あぅひっ! あひゃぃぃぃっ!」
 表面の突起が入口をえぐいくらいに繭美の最も感じる場所をこすり立てる。
 体を弓のように反らして耐えた。
 気持ちいいとか思う余裕も無かった。頭の中に直接電撃を食らったようで、
自分が何を口走っているかもわからない。
 ゆっくりと抜き差しされるたびに、血液がどろどろと体の外へ出てしまうよ
うな愉悦が彼女を苦しめる。過ぎた快感は、むしろ痛みに近かった。
 時々、繭美の方が抜け、その時は亜美が突く方に回る。
 もはや獣でさえなかった。原始生物のように、二人はどちらがどちらなのか
わからなくなるほど、互いを求め続ける。
 これが、罰なのか。
 これが報いなのだろうか。
 だとすれば、なんと甘美な悪夢なのだろう。
 甲高い悲鳴を上げながら、亜美は蕩けるような悦楽の泥沼の中へと沈んでいっ
た……。



 部活動が終われば、その後は部員が示し合わせて色々な場所へ遊びに行くこ
とになっているようだった。このあたりはスポーツ系の部活動とは言っても、
ずいぶんとのんびりしたものだ。学校の伝統や、通う生徒の気質なども関係し
ているのだろう。だからきつい練習もないし、朝練も個人の裁量にまかされて
いる。
 テニス部もやはり先輩後輩というより、皆仲のいい姉妹のようなものだ。繭
美が「部長」ではなく、ただ「先輩」と呼ばれるのも、その親しみのあらわれ
だろう。
 今日はちょっといつもとは違う展開にはなったが、練習後は七人が駅前のカ
ラオケルームへと足を運んだ。
 このあたりの切替えの早さはただ、驚くしかない。
 その中にはもちろん亜美がいるし、部長の楠樹繭美もいた。他には2年生が
二人と、1年生が三人だ。
 学校を出て、バスに乗る。彼女達の他にも同じ学校の生徒が乗っており、何
人かは座れなかった。だがテニス部員は、全員立っている。これもまたトレー
ニングの一環かと思ったが、どうやらダイエットにもなるかららしい。
 20分ほど揺られると、駅前の繁華街に行き着く。どうやらここが目的地の
ようだ。10階建程度のビルはいくつかあるが、いかにも郊外といった感じの
たたずまいだ。
 部員達はそのビルの一つに入っていった。テナントの半分ほどはカラオケボッ
クスになっていて、後は飲食店とアミューズメントスペースで埋められていた。
 ここのカラオケは1ドリンク付きで最初の1時間が500円、後は1時間毎
に300円というリーズナブルな値段になっている。このくらいだったら、高
校生の財布でもわりと気軽に入れるようだ。他にも、部屋単位で時間貸しもし
てくれる。人数さえ揃えば、割り勘でもっと安くあげることもできた。

「それじゃあ、今日は土曜日だし、たっぷり唄いましょうか!」
 繭美の音頭で乾杯をして、マイクが回される。
 いつの間にかテーブルの上にはスナック菓子が小山のように積まれていた。
持ち込みのお菓子だ。日頃ダイエットと言っているわりには、チョコレートや
揚げ菓子などカロリーが高そうなものが並んでいる。
 マイクを奪い合うようにしているテニス部の仲間の中で、亜美はぼんやりと
思索にふけっていた。
 はたして自分は一体誰なんだろう?
 悠司……いや、亜美だろうか。彼、あるいは彼女は自分の心を持て余し始め
ていた。
 確かに私は瀬野木亜美だ。でも、都築悠司の記憶もある。高校を卒業したし、
大学へも行った。その一方で、同じ名前の家庭教師に勉強を教わっているとい
う記憶がある。
 だが、悠司は亜美の事など知らない。
 亜美は悠司の顔を思い出そうとするが、なかなか記憶がはっきりしない。亜
美の記憶の悠司と、都築悠司の記憶が同一人物だとは確信がもてなかった。
「亜美ちゃん、次〜」
 名前を呼ばれて、亜美は我に返った。
 目に留まった曲の番号を打ち込んで、マイクを握る。拍手が起こった。
 亜美が選んだのは「Tran-S」の歌だった。今月になってカラオケに登録され
た最新曲、「Single Day」だ。
 この Tran-S とは、昨年デビューをして以来、出す曲全てが初登場チャート
1位を獲得するという驚異的な快進撃を続けている女性デュオだ。この曲も、
もちろんチャート1位を独走、初のミリオンセラーとなっている。今は夏のコ
ンサートツアーで全国を回っているところだ。

 アコースティックギターの弾き語りもこなし、総ての曲の作詞作曲、編曲ま
でも自ら手掛けるという才能溢れる二人は、男性誌ばかりではなく女性誌から
もひっぱりだこだ。つい先日出たばかりの初の写真集は、かなりきわどい水着
ショットもあることから、入荷早々に店頭から姿を消し、度重なる重版も需要
に追い付いていないという。
 デュオのハーモニーで聞かせる曲なので、うまく唄う人はそういない。静か
なメロディーラインの曲だが、音域が2オクターブ以上あることと、所々変調
が入るので、カラオケの難曲としても知られている。
 亜美はイントロが始まる前に、繭美にもう1本のマイクを手渡した。
「え、私?」
「先輩、この歌、唄えますよね」
「一応だけど……」
 イントロが流れ始めて、繭美も慌てて小さなステージに駆け上がった。
 まずはハミングから入る。その間に無言の会話が成立し、低音を繭美が受け
持ち、やがてそれは美しいハーモニーとなっていった。
 途中までは自分が次に唄う歌を本でチェックしていた部員達も、アカペラに
近い控え目なメロディーにのせられた二人の奏でる声の迫力に魅せられ、顔を
上げて歌声に聞き惚れた。
 やがて最後のフレーズが終り、カラオケールームは静寂に包まれた。一拍お
いて、拍手が沸き起こった。
「わー、すごいすごい!」
「先輩、素敵!」
「素敵です、お姉様! もう、濡れちゃいますぅ!」
「カラオケでこんなにきれいなハーモニー聞いたの初めて!」
 どさくさに紛れて少々危ない発言をする少女もいたが、おおむね大好評のよ
うだ。

 亜美は繭美と顔を見合わせて、少し照れたように微笑んだ。
 あとはごく普通だった。
 流行のポップスや、人気女性グループのヒット曲、時にはアニメソングまで
飛び出して大いに盛り上がった。
 繭美はこまめにお菓子をチェックし、補充をしたりドリンクの追加オーダー
をしたりしていた。亜美は彼女と唄ったあとは、ずっとみんなの様子を見てい
るだけだった。
 亜美は、こういうところではあまり前に出たくないタイプなのだ。
 カラオケボックスに入って2時間もした頃だろうか。
 繭美が時計を見て、立ち上がった。
「あら、もうこんな時間。私は帰りますけど、皆も遅くならないようにね」
「はーい!」
 声を揃えて返事を返す。
 部長と2年生が帰ると、残った1年生の間にほっとした空気が流れた。
 今日のできごとで部長との大きな垣根はひとまず取り払われたが、やはり一
緒にいるとなにかと気を配ったりして、なかなか思うように楽しめないのも事
実だ。
 亜美はトイレに立つ振りをして、他のボックスの様子を入口からうかがった。
割合としては半分ちょっとだろうか。この時間にしてはそれなりに繁盛してい
るだろう。いくつか覗き見して、彼女はようやくお目当てのボックスをみつけ
たようだ。
 中には三人の詰め襟姿の学生がいた。
「こんにちわ」
 断りもなく扉を開けて、亜美は中に入った。
 一瞬むっとした表情をした三人だが、制服と彼女の顔を見て、まずは驚きの
表情になり、その後は顔を寄せあって何かを話し始めた。

「何のお話をしているの?」
「いえ、なんでもありません!」
 目上だと知っているからなのか、口調は固い。それとも、女性だから緊張し
ているのか、その両方なのだろうか。
 詰め襟の記章を見ると、地元の私立校の生徒のようだ。名門男子校として知
られるこの学校は、旧帝大への進学率が全国でもトップクラスという進学校だ。
そればかりではなく、甲子園にも何度か出場しているし、剣道や柔道、サッカー
やバスケットボールなども強い、文武両道の名門なのだ。亜美達の学校に長刀
部や弓道部があるように、彼らの学校も撃剣術や居合道などの変わった部活動
があるのが特色だ。特に居合道は、真剣を使うことで度々マスコミにも取り上
げられている、この学校の名物でもある。
 だが近年は少子化の影響もあり、志願者が少なくなっているという状況が続
いている。それは亜美の学校も例外ではない。そのため双方の学校で、将来の
合併をも視野に入れた交流が進められている。男子禁制の学校イベントに男子
生徒が来るのが許されるようになり、男子校の対外試合に女子校の応援がつく
ようになったのは、ここ5年ほどの話だ。
「三人だけだとつまらないでしょ。私達と一緒に唄わない?」
「おい、どうする?」
 また三人は顔を突き合わせて小声で相談を始めた。答はすぐに出たようだ。
「御一緒させてください!」
 三人共に直立して背筋をピンと張り、手は指を揃えて垂直に腿に張り付ける
ようにして返事をした。よほど厳しい躾をされているらしい。こんな時でも、
ついいつもの習慣が出てしまうらしい。
「あなた方は何年生?」
「中学3年になります!」

「あら。こんな時間にカラオケに来て大丈夫? 先輩に叱られたりしない?」
「は! 大丈夫であります!」
 生真面目に直立して答える少年達(といっても、たった1歳年下なだけだが)
に、亜美は微苦笑する。
「こっちよ」
 一度彼らの分の精算をさせてから、亜美は三人の背中を押すように同級生達
が待っている部屋へと連れてゆく。
 ドアを開けると、一年生の三人が顔を上げた。
「先輩達は?」
「先にお帰りになったわよ。代金はこちらに」
 おっとりとした口調で答えたのは、亜美と同クラスの倉島観久だ。口調とは
裏腹にショートカットの活発そうな、どちらかというと凛々しいと言った方が
相応しい美少女だ。
「そちらの方は?」
「あ、どもっス」
「おじゃまします」
 頭を下げ、照れ臭そうにしながら部屋の中へ入る。
「きゃ〜! かわい〜!」
「坊主君よっ、坊主君っ! あーん、触らせて〜!」
 一斉にきゃいきゃい言い始める彼女らに、三人の中学生は気圧されたように
上半身を後ろにのけぞらせた。

(おいおい、勘弁してくれよ……)
(いいじゃないの。せ・ん・せ・い!)

 心の中で軽く会話を交わし、亜美は後ろ手にドアを閉める。この会話は言葉
にすればこうなるというだけで、実際にこの通りの言葉を交わした訳ではない。
既に二人の心はかなりの部分で融合しているようだった。
 だから、今なら亜美の気持ちが悠司にもなんとなく理解できる。
 体の芯に、まだ何かが凝り固まっているようなのだ。歯の間に食べかすが挟
まったよりも、もっと切実なもどかしさが体を責めたてる。心は拒絶している
のだが、心行くまで生身の男にえぐられ、溢れるほどに精液を注いで貰ったら
どんなに気持ちいいだろうかと考えている自分に気付き、悠司は複雑な気分に
なった。
 昨晩のフェラチオをしてしまった記憶を思い出すだけで、気分が悪くなって
くる。あの夜の一件で、いかに男の妄想が身勝手なものなのかを思い知ったの
だ。精液は目に入れば染みて痛いし、髪の毛につけばなかなかとれない。飲ん
でおいしい物ではないし、それを強要されるのは男の身勝手以外の何物でもな
い。普通はそうしない物を飲ませる事で制服欲を満たすためなのだろう。
 乱交なんて、休む間も与えられない。ひっきりなしに挿入されて気持ちがい
いだろうなんてのは男の理屈だ。
 強烈な感覚は、傍観者にさせられてしまった悠司にも、望まずとも伝わって
きてしまっていた。胸を捻りつぶすようにする男、尻を叩く男、アヌスに執着
する男、顔射することにこだわる者、精液を飲ませたがる者。様々だ。通常は
しない行為をあえてする事によって、刺激と征服欲を満たすのだろう。
 中にはピアスや、タトゥー(刺青)をさせようとする者もいた。
 己の精液を流し込み子を産ませる事ではなく、代償行為としての手段を彼女
に求める男の何と多いことか!
 わずか一晩で、悠司は男の身勝手さを悟ってしまった。
 その一方で、下腹部に熱い塊が生じているのも自覚している。

「じゃあ、まずズボンと下着を脱いで」
「へ?」
 亜美の口から出た言葉に、三人の目が飛び出た。
「あの……ズボン?」
「と、下着」
 亜美が右手を口許に当てて、いつもの笑みを浮かべる。
「それを期待してたんでしょう? 私達とエッチなことができるかもしれないっ
て」
 図星をさされて身をすくめる。それでも、三人は動こうとしない。
「剥いちゃおっか?」
 布夕が目を悪戯っ子のようにきらきらと輝かせ、わざと彼らに聞こえるよう
に亜美の耳元で言った。
「それもいいかもしれないわね」
 くすくすと笑う。
 これは、亜美の台詞なのだろうか。
 心踊る光景なのに、どこか醒めて、げんなりとしている自分がいる。
 三人を下半身裸にして立たせ、それを眺めるのは悠司には苦痛でしかない。
他人の性器を見て興奮する趣味は、悠司にはない。ましてや少年のである。だ
が彼のそんな思いとは裏腹に、五人の女性達は目を潤ませながら、彼らを品定
めするように見つめ続けた。
 しかし悠司もまた、どこか心の奥底でアブノーマルな倒錯に興奮しているの
だった。
 気がつけば、三人の少年は股間を手で隠すようにして突っ立っていた。
「ね、どう思う?」


「やっぱりちゅーぼーのお○ん○んって、かわいいよね」
「やだ、たった1歳年下なだけじゃない」
「1歳の差は大きいわよ。男と女だともっと大きいかもね」
「あ、あのー……」
 下半身を両手で隠すようにして所在無げに立っている彼らの中で、一番大き
い少年が会話に割って入ろうとした。
「なに?」
「い、いえ。何でもないっス」
 両脇の二人が同時に肘撃ちをかました。だが、彼らにも目の前の女性達が放っ
た殺気のような視線に脅えていた。その証拠に、股間のモノは無残にも縮み上
がってしまっている。
 逃げようにも、ズボンもバッグも、彼女達にしっかりと握られてしまってい
る。声を上げて助けを呼んだとしても、男が女に襲われたなどと、誰が信じて
くれるだろう?
「ねえ、君達。彼女はいるの?」
「いねっス」
「いません」
「前はいたんですけど、今はいない……です」
 今度は亜美達から見て左端の少年が、二人から肘撃ちと背後からの蹴りをお
見舞いされた。
「じゃあ、キスは?」
 三人とも首を横に振る。
 亜美は一番小柄な左端の少年の前に立った。丸刈りだが線が細く、どことな
く女性のような雰囲気を匂わせている。
 亜美は彼を両手でぎゅっと抱きしめた。


 愛しいという感情が涌き上がってきて戸惑う。亜美と共にいる悠司に、間違っ
ても同性愛の気はないのは確かだ。それでも彼の心の中に、嫌悪とともに、言
いようのない母性愛が芽生えているのだ。
 少年は亜美の豊かな胸を押しあてられ、顔を真っ赤にしてしまう。
「わ、立った立った!」
 女性陣がきゃらきゃらと笑った。
「あんなかわいい顔してても、男の子ってちゃんと立つのね〜」
 少年は腰を引いて、勃起してしまったあそこを必死で隠そうとしていた。隣
の二人は羨ましそうな、それでいて同情するような複雑な表情を浮かべて亜美
達の様子を見ている。
 亜美は抱きつくのをやめて、彼の顔を見た。
「こういうの、嫌?」
「嫌じゃ……ないですけど」
「じゃあ」
 亜美は少年の両頬に手を添えると、顔を傾けて唇を重ねた。彼は全身を強ば
らせて、目をつぶった。体が震えているのがわかる。
 長い一分間が過ぎて、亜美はようやく唇を離した。途中からは彼の口の中に
舌を忍ばせて、舌も絡め合わせたのだ。ぎこちない舌をもてあそび、少年の口
の中に残っていたスナック菓子のかすかな味わいさえ感じ取っていた。
「ふふっ、ごちそうさま」
「ああ! 亜美ちゃんずるいぃっ! みんな亜美ちゃんがファーストキス貰っ
ちゃう気でしょ」
 背後で布夕が声を上げた。

「それは許しがたいですわね」
 観久がどことなく嬉しそうな表情で続く。
「私も欲しいなあ。ファーストキス……」
 どこか夢見るような表情のセミロングの少女は、那賀乃瑠璃だ。亜美のクラ
スメートで、中等部からの気のあった親友でもある。フリルがついた服が似合
いそうな雰囲気だ。
「でも、あと二人だけしかいないけど、どうするの?」
 三人の視線が、空中で火花を散らした。
 無言でじゃんけんを始めた彼女達をよそに、亜美は胸のリボンをほどき始め
た。そして、少年達を見ながらブラウスのボタンを外し始める。
 やがて現れた水色のブラジャーに、少年達の目は亜美のそれに釘付けになっ
た。
「亜美ちゃん、また抜け駆けしようとしてるぅ」
 じゃんけんを終えた布夕が膨れっ面で言った。どうやら彼女が負けたようだっ
た。
「うふふ。じゃあ私も脱いでしまいましょうか」
 観久は立ち上がって帯飾りを外すと、スカートのホックも外して床にに落と
した。こちらはふわふわとした感じの淡いピンクのショーツだ。
「ええっと……私も脱ぐの?」
 といいつつ、瑠璃も嬉しそうにブラウスを脱ぎ始めた。
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