近年ずっと伸び悩んでいたのは同年代の奴らに比べ身体的な能力に劣っているからだと、薄々は気付いていた。
 でも、それを認めてしまっては、俺は水泳を続けられなくなる。
 だから、人一倍必死で練習していた。

 牛乳もいっぱい飲んだ。でも、背は小学6年の頃からたいして変わらず。
 プロテインも飲んでみた。でも、筋肉が目立ってつくこともなく。

 そんな俺を見かねてか、クラブのコーチが声をかけてくれた。

「強化合宿……ですか」

 コーチ曰く、身体改造をかねて短期集中で行うらしい。
 メニューも教えてくれず、少し不安はあったものの。
 悩んでいた俺は、藁にもすがる思いで参加を承諾したのだった。

 そして、目が覚めた時には、俺の身体は見ての通り、女にされていた。
 男子選手としてこれ以上の活躍は望めないが、女子選手としてなら可能性はある――と、そう判断されてのことらしい。

 当然怒り狂ったが、どんなやり方でも大会に出れるようになりたいと望んだのは俺自身だと言われてしまった。
 ……確かに、合宿の話を聞いた時、俺はそう答えた。

 まさか、こんな方法を取られるなどとは思ってもみなかったけど……。

 そして、今。まずは手慣らしにと、競泳用のプールではなく、人の多いレジャープールで泳いでみることになった。
 当然、女子用の水着を身につけるのは、初めてだ。ぴっちりとした生地に包まれて、なんだか落ち着かない。

「……女子は、いつもこんなの着てたのか……」

 見下ろせば、二つの膨らみがたわわに実っていて、心なしか先端は尖りを主張しているようにも見える。
 ウエストのラインも、ヒップの膨らみも、水着では隠すことも出来ずに全て浮かび上がっていて、どうも落ち着かない。

 ちゃぷん、プールに浸かると、少し肩が軽くなった気がした。
 それまでは胸が重かったのだと気付けば、小さくため息が出た。

「こんな邪魔なもんついちまって……これじゃ、泳ぐのに邪魔だろ……」

 視線を下に向けると、嫌でも視界に飛び込んでくる二つの丘。
 少し動いてみると、ふるふると震えて邪魔なことこの上ない。

「ん……?」

 視線を感じて顔を上げると、周囲の視線が集まっているのに気がついた。
 ……こっちを見ているのは、男ばかりだ。下卑た視線が、胸や腰、尻のあたりに容赦なく注がれている。

「……うげぇ」

 男にそんな目で見られるなど、気色悪いにも程がある。
 場所を変えようと、歩き出したその時だった。

「ねぇねぇ、お嬢ちゃん一人なの? 俺達と遊ばない?」
「やっ……!!」

 突然肩を掴まれ、甲高い声が出た。元々低い声ではなかったが、今ではすっかり女の声にしか聞こえない。

「やかましい、軟派ならお門違いだ。失せろ!」

 声を荒げたところで全く凄みもなく、返ってきたのは男達の嘲笑だった。

「威勢いいねぇ。でも、あーんま生意気なこと言われると、いくら温厚な俺達でも、ちょっとかちんと来ちゃうんだけど」
「うっ、やめろ、離せ……!」

 突然腕を捕まれたかと思ったら、次の瞬間、男の一人に抱きしめられていた。
 もう一方の腕で胸を鷲掴みにされ、ズキリと痛みが走る。

「すっげーおっぱい……こんな身体して、一人でプールなんて、男漁りか何かだろ?」
「んなことするか!! 俺は――」

 男だ、と言おうとして、口を噤む。
 そんなこと、言ったところで信じてもらえるはずもない。
 だが、沈黙を別の意味で捉えたのか、男達はにやにやと笑いながら俺を取り囲んだ。

「やっ……!?」

 二つの胸を同時に揉みしだかれ、電流のような刺激が走る。今まで味わったことのない感触。それもそのはず、女の胸など今までなかったのだから。

「なんだよ、その気なんじゃねぇか」
「やめろ、ばか……!」

 男の指が水着の中にまで入り込むと、腕を振り回して逃げようとした。だが、必死の抵抗も男の力にやすやすと阻まれてしまう。
 ……男だった時より、筋力落ちてんじゃねーか、これ。全く抵抗出来ない自分が情けなくて、涙が出そうだ。

「ほら、乳首なんかもうおっ立ってんじゃねーか」
「――――っ!」

 男の指が乳首を摘まむと、じん……と熱さが広がった。
 男にこんなことされるのも悔しかったが。

 何より、自分の身体が反応していることが、悔しかった。

「お前ら、何をしている――!」

 プールの監視員の言葉に、男達は声をあげて立ち去って行った。
 どうやら、近くに居た人が呼んできてくれたらしい。

「……はぁ」

 いまだ、胸はじんと熱さを訴えていて、どこか落ち着かない。
 俺は人の目から逃れるように、そそくさとプールから上がって、更衣室へと向かった……。
タグ
×

この広告は60日間更新がないwikiに表示されております。

管理人/副管理人のみ編集できます