高校生にとって五百円は大金である。
 と言うわけで、缶ジュースを買おうとして落としてしまった貴重な硬貨を追いかけ、宗介は
必死になって夜の坂道を駆け下りる。
 なんだか童話の導入部みたいだな、と多分滑稽に見えるであろう自分の様子を心の片隅で
自嘲しながら。

 そして、それが虫の知らせだったのかも知れないとは夢にも思わず。

 「って言うか往生際悪いよな、お前っ!」
 決して真っ平らでは無いアスファルトの上。途中でバランスを崩して止まるだろうと踏んで
いた大きなコインはチャリンチャリンと高い音を立て何度も跳ね上がりながらも真っ直ぐに
順調に逃亡を続行中。このまま行くと坂の下にある四車線の幹線道路に飛び出すのだだが、この
勢いでは車道で撥ねられでもしない限り反対側まで飛び出してしまいそうだ。
 そうなってしまうと信号のタイミング次第では宗介は大切な財産の一角を永遠に失う羽目にも
なってしまいかねない。
 「!!」
 そんな嫌な未来像が実現しませんようにと祈りながら目を上げた宗介の視界に映ったのは、
あと十メートと無い先で輝く真っ赤な信号灯と、四つの横断歩道に囲まれた十字路の中央を
照らし出すヘッドライトの明かりと、その真ん中で立ち尽くす女の子の姿と……
 「お、おいっ!?」
 宗介の意識の焦点は一瞬で硬貨から少女へと移った。いわゆる火事場の馬鹿力効果という奴なのか、
接近する車のクラクションの音が遠ざかり周囲の動きも自分の動作も急激に速度を失っゆく不思議な
世界の中で宗介は五百円を追っていた速度を更に増速し、坂道でバランスを崩して転倒してしまう
危険や、少女を突き飛ばすなり抱きかかえて逃げるなりの余力や余裕が自分にあるのかという疑問が
表層思考に浮き上がるよりも先に交差点に飛び込んだ。

 「ありがとうございます、お兄さん」
 そうして少女の体をキャッチし、轢かれるにしても転げ回るにしても避けることは叶わないで
あろう衝撃を覚悟しながら目を閉じた次の瞬間、何処か面白がってるような場違いな声色でお礼を
言われ、思わず目を開けてしまった。
 「あ、あれ?」
 すると、そこは上も下も無い真っ白な空間。音どころか空気の流れさえ感じない。
 「……もしかして、死後の世界ってやつじゃ……?」
 「はい、ご名答ですよ」
 「ってマジなのっ!?」
 「と言っても、お兄さんの魂は私が捕まえていますから今は『あちら側』に流されないで済んで
ますけどね。つまりお兄さんに分かるように言葉を選べば、ここは三途の川の丁度真ん中辺りで、
私が手を離しちゃうと成仏まっしぐらって状態なんです」
 いつの間に……というよりいつから居たのか宗介の数メートル前で綺麗な少女が宗介と同じように
白い空間に漂っている。さきほど宗介にお礼をいったのがこの女の子なのだとしたら、二人揃って
助からなかったという事なのだろうか。
 「いえ、私一人なら……お兄さんに分かるように言うと……当分は現世に帰れませんけど力を
蓄え直せば元に戻れるから殆どノープロブレムなんです。つまり御陀仏なのはお兄さんお一人だけ
だったりします」
 「なっ!?」
 なんだコイツ、というか何者なんだよ!?
 「月並みな言葉で分かりやすく言っちゃうと悪魔みたいな物ですね。お兄さんが身を挺して庇って
くれたお陰で全壊だけは免れたんですけど、魔界から持ってきた構成物質の大半を破壊されちゃって、
依り代の精神を支配することも人体の維持も無理っぽくなっちゃったから帰らないと駄目なんです」
 「か、帰るって……僕は!?」
 「そう、そこが一番大切なポイントなんです!」
 何故か得意顔になる悪魔少女。
 「お兄さんにも一応選択肢があります。一つ目はこのまま成仏することですけど、見ず知らずの
私を助けるために死んでしまった訳ですから極楽往生は先ず間違いないと思います」
 「ちっとも嬉しくないよっ!」
 「それもごもっともです? では二つ目として私と一緒に魔界に行って魔界の儀式で体を再構成する
という方法があります。もっともお兄さんの希望とは少々違う姿形になってしまいますし、お兄さんは
只の人間ですので現世に戻るのは永遠に無理ですし、なんの力も無ので召使いとして常に私の側に
居ないと他のモノに速攻で食べられちゃって一巻の終わりですけど」
 「それも嫌だって!」
 「じゃあ最後の選択肢として、私の新しい依り代となって私の手持ちの構成物質で体の破損箇所を
繕えばとりあえず私もお兄さんも現世に帰還が叶います。そうして、後はお兄さん自身の治癒能力を
使えば時間はかかりますが完治も夢ではありません。けど……」 
 「……けど?」
 「まず私が体を失って一人じゃ何も出来なくなってしまいます。あとも霞を食べて生きてるわけ
じゃありませんから、お兄さんが私無しで生きられるようになるまで私を手伝ってもらう必要が
あります。つまり共生関係みたいなものですね」

 「……………」
 良く分からないけど相手は悪魔だ。何を手伝うのか事前に確認しておかないのは明らかに拙いだろ
うけど、聞きのもなんだか怖い気がして思わず口ごもってしまう宗介。
 「具体的にはセックスですね。何故かというと人間の精気というか生命力が目当てなんですけど、
肉体的に最も活性化して全身に気が満ちてチャクラにタップリ充填された時に直結して吸い取るのが
一番効率が良いからです。あと、イッる間は心身共に無防備ですから奪うのも簡単ですし」
 「え? そ、それって……」
 「あ、別に死ぬまで吸うわけではありませんから大丈夫です。若い人なら疲れて眠ってしま程度の
量ですから。きっと本人も気持ち良すぎて夢中になったからだと勝手に納得して満足してくれると
思いますよ。実際、凄く良くなっちゃう訳ですし」
 ……もしかして、そっち系の悪魔?
 「まぁ、そう思って頂いても特に不都合はありませんから問題ないと思います。こんな形ですけど
中身は本物だというのはお兄さんが一番良くお分かりだと思いますけど」
 そう言われて改めて悪魔少女の姿を確認してしまう宗介。数メートル先で自分と同じように浮かん
でいる少女はキラキラと腰まで伸ばした金髪に黄金の瞳、やや色白だが不健康と言うより可憐で清楚な
イメージの彼女が身に纏っているのは真っ黒なワンピース。
 年の頃なら……
 「……小学生? というか、こんな子だったっけ?」
 助けに行かねばと思った時に見た姿は何故か何も覚えていないのだが、綺麗な髪とか外人のような
子だとか、なんで小さな子が夜に一人で出歩いているのかとか考えかったような気がする。こんなに
目立つ容姿なら強烈な第一印象が残っているはずなのに。
 着ていた服が真っ黒なら尚更に。
 「ああ、普段は人間社会に溶け込みやすいように日本人っぽい体に擬態していましたから。ちなみに
今の姿が本来の私です」
 「……なるほど……」
 「と、事情は大まかに説明しましたけど他に聞きたいことはありませんか? この空間にお兄さんと
二人で留まるだけでも、それなりに魔力を消費しますし私はそろそろお暇したいのですけど」
 「じゃあ……えっと、改めて聞くけど二人が融合するとして、僕は本当にセックスするだけで良い
んだよね?」
 経験無いけど。
 「それだけで問題ありません。それに経験があろうとなかろうと私と融合していれば本能的に相手が
悦ぶ方法がわかりますから百戦錬磨の達人と同様に満足させることが出来ますし、身体的にも性行為に
もっとも適した状態を常に保てるのでお兄さん自身も楽しめます。極端な話、慣れてくれば初対面の
獲物を服の上から愛撫するだけで乗り気にさせて、指だけで昇天させ吸い取っちゃうのも楽勝になる
こと請け合いです」
 「そ、それなら……」
 年齢イコール彼女居ない歴とは言え、宗介だって健康な少年である。女の子を性的に自由に操れるっ
ぽい能力という美味しい餌を逃す選択し以外を選ぶ理由など無い。
 相手が悪魔、という一点が微かな棘となって心の片隅に引っかかってはいるが、多少の裏があろうと
なかろうと今すぐ死ぬより酷い目に遭うことなど有り得ないのだから問題ない。
 「決まったようですね。では時間もありませんし今すぐ融合を始めます」
 言うが早いか、少女の体が真っ白な空間を滑るように近づいてくる。
 「わ、わかったけど僕は何を?」
 「何もしなくても構いません。というより雑念がない方が楽なので目を瞑ってセックス三昧の日々に
思いを馳せていてくれますと助かります。そもそもお互いに実体ではないので痛感もありませんし痛くも
痒くも重くもありませんから心構えすら要りませんし」
 「わ、わかった!」
 そうして言われるままに目を閉じた次の瞬間、生暖かい微風のようななにかが宗介の体の中を通り
過ぎるような感触がして……

 「おい、居たぞ!」
 「ンだよ、手間かけさせやがってつか! てか気ぃ失ってるんじゃね? あっちで事故とかあった
みたいだけど、まさか……」
 「アホか、あそっからココまで撥ね飛ばされたらバラバラだろフツー?」
 「走り疲れただけだっつーの! 擦り傷一つねぇじゃねぇか、このアマ」
 男達の話す声と、少し遠いサイレンの音。そして冷たい夜風が頬を撫でる感触で覚醒した宗介が
目を開くと、
 「よォ、みつけたぜ」
 ぶっちゃけ、同じ男としても余り関わり合いにはなりたくないタイプに分類される物騒な連中。明ら
かに勉強が出来なさそうで素行も悪そうな男達に上から見下ろされていた。
 そして付け加えるなら、こんな不良共に囲まれ不気味な笑みで迫られるような身に覚えは宗佑には
全くない。
 「あ、あの……」
 なんなんですか!? と至極真っ当な質問を声に出す途中で宗佑の口は塞がれた。
 頭の中で。
 『いまは喋らない方が賢明です。直ぐに立ち上がって奥の方に逃げて下さい』
 そう何処からともなく聞こえてくるのは、さっきの悪魔少女の声。
 『え? ちょっと、なにがどうなってるんだよ? 立ち上がるって? 奥って何!?』
 『ここは先程の交差点から少し離れた公園の芝生の上です。そして私達は仰向けに倒れた状態なので
早く起き上がって人気のいない公園の奥に向かってくれると助かります。あとは走っている間に説明し
ますから急いで!』
 『わ、わかったよ!』
 聞きたいことは山ほど有るし正直、訳が分からないが今は目の前の連中から逃げ出すのが最優先だ。
 とにかく四肢に力を込めて立ち上がろうとする宗佑。
 「えっ!?」
 すると急激に視界が反転し、フワリと浮き上がる感触に全身が包まれる。体が軽くなったのか、と
思った次の瞬間には宗佑はカンフー映画のスターのように華麗なバク転を決め男達の包囲の外に音も
なく着地していた。
 「な!?」
 「お、おい……」
 「ンだよ、いまのは!?」
 「おいおいおいおい!」
 思わず呆気にとられてしまう男達。
 「な、ななななななななななっ!?」
 そして彼ら以上に驚いた宗佑は反射的に自分の体を確かめようと、
 『いまです! そのまま奥の噴水の方へ逃げて下さい!』
 「って、なんだよこれ!?」
 宗佑の目に映っているのは細くて白い腕と、強く握っただけで壊れてしまいそうな小さな手。そして
スカートとしか思えない布を身につけた自分の下半身。

 「っめぇ! 舐めたマネしてんじゃねぇぞオルァ!!」
 その細くて華奢な腕が、気を取り直して駆けつけたらしい男のゴツゴツとした男の手で乱暴に掴まれる。
 「うわっ! や、止め……!!」
 逃れようと咄嗟に腕に力を振るう宗佑。とは言え、飽くまでも自分で理解している自分の腕力では勝ち目が
ないながらも何とか脱出しようと試みた消極的な動きだったのだが……
 「うおおっ!?」
 偶然にも不意を突けたのか、男は勝手にバランスを崩して前のめりに。宗介から手を離して派手に転んで
しまう。
 「うわわわっ!?」
 『ぼーっとしてると次が来ますよ! 早く逃げて下さい!』
 「う、うん!」
 次も都合良く行くとは思えない。頭の中に勝手に沸き上がってくるイメージに従って、宗介は噴水がある
らしい方角へと走り出す。
 が……
 「うわうわうわっ!?」
 駆けだした途端に信じられない程の加速が付き、恐怖で逆に足が竦んでしまう。
 『なにやってるんですか! しっかり前を見ていれば怪我をしたりはしませんから、追いつかれないように
急いで下さい!!』
 「だ、だってこんな……」
 と言いかけた宗介の言葉は背後からの怒声で遮られてしまう。振り返らなくても、男達が怒りを露わにし
ながら追いすがってくる様子が手に取るようにわかる。
 『とにかく逃げて下さい! さっきも言いましたけど説明はしてあげますし、頭の中で会話するだけなら
走りながらでも出来るでしょう!?』
 「うっ……」
 刹那の間で逡巡しても他に方策などない。まだ釈然としない物を色々と抱えながらも、頭の中に住み着いた
らしい悪魔少女が送ってくるイメージナビゲーションを頼りに気を取り直す宗介。深呼吸でリズムを取って
から真っ直ぐ前方を見据えて全力で走り出すと、まるで自転車に乗っているような高速で周囲の景色が流れて
ゆくが、今度は慌てふためくことなく疾走できた。。
 『そう、その調子で……こっちです!』
 「う、うん!」
 とは言え、自分の夜目が桁外れに良くなっていることに気付くだけの余裕は無かったが。

 「それで、なんなんだよあいつ等は!?」
 更に付け加えれば全力疾走しながら自然に喋れる異常にも、まだ気付かない。
 『あの四人は、宗介さんに分かるように言えば今夜の晩ご飯みたいなモノです。駅前の裏道で物色して
いたらいきなり触ってきたので好都合と思い誘惑しただけですよ?』
 「晩ご飯? 誘惑ってなんなんだよ? あと、なんであんなに怒って追いかけてきてるんだ! しかも、
この格好って言うか姿は一体何なんだよ!?」
 『質問は順番に、説明しやすい流れを考えてからお願いします。先ず晩ご飯というのは私の精力補給の
獲物の事です今晩のセックスの相手です精力というか元気が無駄に有り余ってそうだった上にオツムが少々
弱くて簡単に誘導できそうだったので選びました』
 「せ、せせせせせセックスって、あいつらと!?」
 『あ、そこを曲がって下さいね……っと、精力補給にはセックスが一番適しているという話については
融合する前に宗介さんが納得して質問がなくなるまで充分に説明して差し上げましたよね?』
 「そりゃ……そうだけど……だって、あいつは男で僕は……」
 『私、人間の概念で言えば女性ですし融合した今では宗介さんの体も女性化して……というのは先程
視認して頂いたようなので省略しますけど、以上の理由から精力補給目当てのセックスに男性を選んでも
何の不思議もありませんよね?』
 「そりゃ見た目だけなら確かにそうだけど、でも僕は元々男で……聞いてないって言うか……」
 『最後に確認したときも質問されませんでしたし、私の外見を見た上で融合なさる以上は全て理解して
いるのだと思っていましたが、どうやら意思の疎通に若干の問題があったようですね。どの道、もう
手遅れなのは同じですけど』
 「て、手遅れって……」
 『融合してしまった以上、、もう引き返せないと言うだけの事です。でも私の説明に嘘偽りは一つも
なかった筈ですし、齟齬は全て宗介さんの一方的な思い込みと確認不足が招いた結果ですから自業自得
以外の言葉は見つからないと思いますけどね』
 『う……うわぁぁぁぁぁ騙されたぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
 走りながら、そう叫ぶしか無かったが脳内の同居人に邪魔されて今度も声にはならなかった。
 『騙したとか人聞きの悪いことを大声で吹聴しようとしないでください。何度も繰り返しますが全て
宗介さんの自己責任の範疇ですし、男性どころか普通の女性でも味わうことが出来ない至高の快楽を
思う存分に際限なく楽しみ放題な上に生き返ることが出来たんですから私的には感謝感激雨霰くらいの
言葉は欲しいところなんですけど?』
 『そ、そんな詐欺紛いの手口で僕の体を……この悪魔ぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
 『はい悪魔ですけど何か?』
 頭を抱えて絶叫したい衝動を必死に抑え込みながら走り続ける宗介は、その速度が悪魔少女の力で
微妙に操作され、追ってくる男達と一定の距離を保ちながら深夜の公園の中で最も人気が無い中央噴水
へと自分が向かっていることにも全く気付いていなかった。



 大きな噴水が設置されている大きな広場。
 昼間なら多くの利用者の憩いの場になっているであろう公園の中心部も、いまはひっそりと静まり
かえり、追いかけてくる男達を除けば宗介以外の人影は全く見当たらない。
 「ほ、ほんとに女の子になっちゃってる!」
 噴水の周囲に点在するコンクリート製の前衛オブジェ。その一つの背後に男達からは死角になるよう
隠れてから改めて自分の体を確認すると、どこぞの学費が高そうな女子校っぽい制服を着た宗介は、自身
と同じくらいの背丈の女生徒になってしまっていた。
 「ひ、ひどいよぉ……」
 何度も頭を振ったり、繰り返し手足を動かしてみたりペタペタと上から下まで自分の体を手で触って
確かめても結果は同じ。胸は膨らんでるし腰は細くなってるし、なんだか痴漢をしているような罪悪感を
感じながらスカートの上から股間を押さえてみると、あるはずのモノが消えて無くなってる。あと手足が
細くなっているのに柔らかくてスベスベで同じ人体とは思えない触感に変貌してしまっている。
 『ちなみ顔も可愛いですよ? バストもヒップも平均値より盛ってますし、少し手前味噌ですが学校に
通えばモテモテ間違いなしの美少女ですね」
 「誰も頼んでないだろ!?」
 『この姿は宗介さんと会う前からですから当然です。さっきも言いましたけど、駅前の裏通りから此の
場所まで誘導している途中で酒気帯び運転の被害者になりそうになった訳ですから』
 「誘導って……追いかけられてるようにしか思えないんだけど!?」
 『はい、そう仕向けましたから』
 「し、仕向けたって……」
 『道を間違えちゃったけど、どうしよう……という風を装って歩いていたら横路地から現れて、ありき
たりな台詞と一緒に剥き出しの細腕を掴んできたのが、あの連中です。どうやら人数を頼りに取り囲んで
威圧して私が怯えて動けなくなった所で路地か、ツテがある場所に連れ込んでレイプするつもりだったの
でしょうね。しかし私の方としては騒ぎになりやすい街中は余り都合が良くなかったので、汚物を見るよう
な目で「汚い手で気安く触らないで下さい下衆っ!」と横面を張って下着がチラ見する高さまで足を上げ
股間を蹴り上げて誘惑し……』
 「それは誘惑じゃなくて挑発だろ!?」
 『……多少の表現の差異は横に置いておくとして、後は宗介さんがご存じの通りです』
 そんな真似をしたら地の果てまで追いかけられて輪姦されるに決まっている。
 「それで、これからどうしたら良いいかな?」
 『それは勿論、折角目撃者も通報者も防犯カメラも警官もいない場所まで誘導してきたのですから、
まとめて頂くに決まってるじゃないですか?』
 「……たぶんだけど、あっちも同じ事を考えてるんじゃないかな?」
 『レイプって良いですよ? ムードも前戯も無しでの速攻で始めてくれますし、こちらは寝転がって天井の
染み……というより、この場合は星の数でも数えていれば勝手に精気が手に入りますから』
 正直、全然嬉しくない。

 「ぼ、僕はそんなの嫌だからね? 初めてなんだよ、色々な意味で?」
 オブジェの影から慎重に顔を出してみると、暗闇で宗介を見失ったらしい男達は広場の入り口辺りで
キョロキョロ周囲を見回して宗介……というか目当ての女生徒を目で探している。
 「それに、これからも僕の体が回復するまでは一緒なんだろ? 別にいますぐ急いでセッ……精気を
補充しなくても構わないだろ?」
 せめて心の準備をする時間と、もう少しマシなシュチエーションが欲しい。
 『まぁ、確かにそうですけど……』
 頭の中で渋々ながら頷いてくれてる気配。
 「じゃあ、それで良いよね?」
 宗介ほど夜目が利かない男達は完全に行き詰まったらしく、自分達が観察されていることに全く気付
かないまま見当違いの方角をアチコチ指さしながら相談している。どうやら纏まって行動しても埒が
あかないと判断して分散して探すことに決まりそうな感じだ。
 「バラバラになってくれれば、何とかなるかも知れない!」
 先程走ったときの位の脚力があれば夜の雑木林を利用して、不健全な生活を送っている男一人振り切る
くらいは難しくないだろう。これはチャンスだ。
 やがて互いの携帯電話の状態を確認し合った男達が思い思いの方向に移動を開始し、宗介が隠れている
方角への注意が疎かになったタイミングを見計らって……
 「よし、今だっ!」
 『おっと、ここで運悪く躓いてしまいました−』
 「って、ちょっとぉぉぉぉっ!?」
 明らかな棒読みと共に頭の中で足を引っかけられ、スタートダッシュの勢いで飛び出した宗介は芸人の
リアクション並みに豪快なポーズで転倒して地面を転げ回ってしまう。
 「痛っ、いたたたたたっ……!」
 陸上選手も顔負けの勢いで加速中にコケれば簡単には止まれない。体中を擦って打って砂まみれになり
ながら数メートル転がって、やっと宗介は止まった。

 そして多少なりとも外灯が存在する開けた公園で、テレビの演出でも滅多にお目にかかれないような
派手なリアクションを披露して発見されないわけが無い。
 「いたぞ! こっちだ!!」
 一瞬にして元の木阿弥である。
 「あ、あの……」
 と言いかけた所でまたしても頭の中で口を塞がれた。
 「近づかないでって言っているでしょう、このウジ虫! あなたたちのように下賤で卑しい社会不適合の
底辺者と同じ空気を吸っているだけで肺が汚れるというのに、そんな汚臭塗れの腐った手で私に許可無く
触れることなんて絶対に許されないんですからねっ!!」
 『って、僕の口で何勝手なこと言ってるんだよ!?』
 そして頭の中で頬を寄せてきた悪魔少女が宗佑と入れ替わって過激な単語を流暢に連射する。
 「な、な……ンだとぉ!?」
 仰向けに倒れた華奢な小娘に思いっきり罵倒され、男の脳内の重要な何かが音を立てて切れた。
 『お、終わった……』
 『ですよねー? これはもう覚悟を決めるしかないですねー?』
 『ぼ、僕にだって好きな子がいるのに! まだキスもしたことないのに! 悪魔を助けた所為で女の子に
されて夜の公園で不良に囲まれてレイプが初体験だなんてあんまりだぁぁぁぁぁ!!』
 『こうなった以上は不幸な事故か、野良犬に噛まれたと思って前向きに……』
 『なれるわけないだろぉぉぉ!!』
 宗佑が脳内で泣き叫んでいる間にも男達は怒りに身を震わせながら大股で近づいてくる。
 「おい聞いたかよ。このお嬢様は俺達と同じ空気吸ってるだけで肺が汚れちまうんだとよ?」
 「しかも許可が無いと触れないとか言ってたよなー?」
 「あ!? ンじゃ高そうな制服をビリビリに破いてケツに突っ込んで、孕んだガキが溺れちまうまで下の
口に注いでやったらどうなっちまうんだろうなぁ、おい?」
 「バチとかあたっちうまうんじゃね? ぎゃははははっ!」
 追い詰めた得物を再び逃がさぬよう、舌舐めずりしながらジワリジワリと包囲する男達。
 「な、なによ! こんな事をして、後で絶対に後悔するわよ!!」
 それでも宗介の口を乗っ取った悪魔少女の迫真の演技は続く。
 というか明らかに煽ってる。
 「そりゃ大変だ! へへっ、俺達は後で後悔するらしいぜぇ?」
 「おー怖い怖い」
 「怖すぎておっ勃っちまうなァ」
 「ンなのはどうでも良いからよォ。そのピーピーうるさい口を誰か塞げっての!」
 「ちょ、ちょっとあななたち! 本当に後悔するわよ! わかってるの!?」
 人気の無い夜の公園で仰向けに這いつくばり、震えながら精一杯の虚勢を張る制服姿の美少女。
 しかも育ちが良さそうで気が強いとくれば、それだけ男達の劣情を誘うには充分。
 『あああ、犯される! 僕、本当に犯されちゃうんだ……』
 『と見せかけた和姦……いえ、最終的には逆レイプに近くなりますけどね』
 『うわぁぁぁぁ嫌だぁぁぁぁぁ!!』

 ごつごつとした手が一斉に伸びてきて宗介の手足を捕まえる。
 「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
 勝手に可愛らしい悲鳴を上げる宗介の唇。
 「ほれほれ、もっと暴れていいんだぜ? その方が面白れぇしな!」
 「へへへ、全然痛くねぇっての!」
 自由を奪われた体を必死に動かし、細い足で蹴り返し拳で殴っても大柄な男達の拘束は全く
緩んだりしない。それどころか余った腕で制服を無茶苦茶に引き裂かれてしまう。
 「見ろよこれ! 生意気な割には結構なの持ってるじゃねぇか! こりゃ後で思いっきり
ぶっかけてやんないとな!」」
 「ンなのより下を早く剥いじまえよ! 下ァ!!」
 「いやいやいやいやぁ! 誰かっ、誰か助けて……ママーっ!!」
 「ぶははははっ、ママだってよ! ダセぇなおいっ!」
 「た、たまんねぇ……! 口に突っ込んで良いぁ? 良いよなっ!?」
 「グダグガ言ってねぇで早く塞げっての!」
 「お、おうっ! じゃあ……」
 男の一人が片手で腕を引っ張りながら、もう片手で器用にズボンを脱ぐ。すると中からは
浅黒くて醜くて先端から粘液を垂れ流す男性の象徴が。
 「ひぃっ……!?」
 『中々に使い込まれていますね。これは期待できそうです』
 「いやだぁ! そんな汚いモノ近づけないで! 止めてよぉ!!」
 悪魔少女が引っ込み、声こそ変わらないが口調が宗介のそれに戻る。
 「だったら、そのキレーなお口で掃除しろってんだよ!!」
 が、異常なまでに興奮している男達は全く気付かない。
 「いやだっ! いや……、むぐぅぅぅぅっ!?」
 「歯ァ立てやがったら絞め殺すぞ!」
 「うぐぅぅぅぅぅぅぅっ!?」
 睾丸を唇に押し付けられる程一気に突き込まれ、宗介の瞳孔が一瞬で萎縮する。 

 『な、なにこれ!? 喉が気持ち良いっ!?』
 が、宗介の体は悦んでいた。固くて太くて異臭だらけの固形物で気道を押し広げられ苦しいどころか
気持ち良すぎて背筋を震わせてしまう。
 喉をペニスでいっぱいにされ擦られるのが快感なのだ。
 『偶然にも罵詈雑言で誘導したのが功を奏しましたね。先に口を塞いでくれたお陰でヨガリ声と
悲鳴の区別が付かなくなりますから』
 『な、なんで? なんで苦しくないの? なんで気持ちいいんだよ!?』
 『そういう構造になっていますから当然です。あと呼吸の必要もありませんから』
 『嘘っ! でもこれゾクゾクするよぉ!!」

 
 「おぶっ! ふぶっ! おごごごごっ!?」
 「こ、こいつの口の中いいじゃん! 信じらんねぇくらいに喉柔らかいって!!」
 遠慮無しに腰を使い、宗介の口から唾液を掻き出しながら歓喜の声を上げる男。
 「あ!? なに口に突っ込んで喜んでんだよお前! 童貞かっての!!」
 「こいつ、マジでダッセェ!」
 「だ、だってよぉ! なんか吸い込まれそうで……うわぁっ!」
 「ンなことより調子こいて窒息させんなよ! 気絶させちまったら楽しめねぇだろうが! あと
お前等もしっかり持っとけよ!」
 宗介の足の間を陣取ったリーダー格らしい男の一喝。それを合図に宗介の両足が割り広げられ、
スカートに続いて白く輝くレースの下着が無残に破り取られてしまう。
 「あぶぶっ! いやらっ、じゅぶぶっ……ひゃ、ひゃめてぇぇぇぇ!!」
 そうして露わにされてしまう美しい処女丘。丁寧に処理され最低限の陰毛が疎らに残っただけの
秘唇はぴったりと閉じ、無垢なまま門を閉じていた。
 「ひょーっ、ちっけぇーっ!」
 「全然濡れてねぇじゃんか。大丈夫かよおい?」
 「お、俺等も後で使うんだからぜ? 無理に突っ込んで裂けたりさせねぇでくれよ?」
 「お前等がしっかり開帳させときゃ大丈夫だろ! グダグダ言ってねぇで、もっと広げろよ!」
 「お、おぅ……」
 「んんーーーーーーっ!?」
 左右の男が力を入れると、宗介の両足は体操選手のように水平まで広がってしまう。口の中の
モノを頬張って吸引しながらも体を揺すって拒絶の意思を示す宗介だが、乱暴に扱われても痛みは
全くなかったりする。

 『い、嫌だ! それだけは嫌だって!』
 『いよいよメインディッシュですね。演出上、派手に出血しますけど単なるフェイクで痛みは全く
ないですから心配は無用です』
 『そんなこと聞いてないからっ!』
 『それはさておき、随分と美味しそうに召し上がってますね。そんなに一生懸命、自分から吸い
ながら拒絶しても説得力の欠片もありませんから」
 『そ、それは体が……美味しいし気持ち良いって感じるんだからしょうがないだろ!』
 これはセンズリとは次元が違う。体内の性感帯を継続的に刺激され絶え間なく快楽を与えられる
心地よさを初めて知った宗介は、早くものめり込んでしまっていた。
 「まぁ楽しんで頂けているようで何よりですが……この体だと膣そのものも性感帯として機能しま
すし感度は喉の比ではありませんから入れてもらっただけで昇天してしまわないよう心構えをお願い
しますね。先程も言いましたけど、人間の女性でも体験し得ない快楽ですから』
 『そ、そんな……』
 殆ど喉自慰を化している現状だけでも信じられない位の快感だというのに、それ以上の刺激を同時に
受けたら大切な何かが音を立てて崩壊してしまう。
 『大丈夫ですよ。私と融合している限りショック死することはありませんから」
 『や、やっぱり嫌だぁぁぁぁぁぁ!!』



 せめてもの抵抗にと体を揺すり続ける宗介だが、両腕両足を掴まれ上下に腰を振っている姿は男達を
喜ばせる意味しか持たない。
 「なんだお前、涙流して欲しがってンのかよ?」
 ユラユラ揺れる女子高生の真っ白な臀部。その中央にたたずむ小さな穴は股を裂かれた所為で僅かに
綻び、まだ汚れを知らない薄桃色の内臓を微かに覗かせている。
 「う……お……!」
 その奥の暗闇、鼓動に合わせて痙攣する様、漂ってくる甘酸っぱい香り、それら全てにいつの間にか
魅了され男の視線は釘付けだ。和姦強姦を問わず数え切れないほどの女体を味わい尽くし、屈服させて
きた猛者といえど、人智を越えた悪魔の前では童貞と変わらない。

 「は、早くしてくれよ!」
 「後がツカえてんだよ! 入れるんだったら早くしろって!」
 「う、うっせぇよ! 今入れるっつってんだろ!?」
 いままで味わったことの無い興奮と喉の渇き。底なし沼に手を突っ込むような不吉な予感を何処かで
感じながらも、股間は痛いほどに漲って欲している。仲間の急かす声に背中を押され、リーダー格の男は
目を瞑り大きく息を吸って、悪魔が宿る少女の入り口に一気に押し入った。

 ぶちゅっ!

 「うわぁ……っ!?」
 悲鳴を上げたのは宗介ではなく男の方。信じられない程簡単に処女膜を貫通したと思った次の瞬間には
狭過ぎる穴に吸引され、引っ張られるようになりながら根元まで挿入した。
 というより吸い込まれてしまった。
 「な、何だよ変な声出しやがって!」
 「って、なに一気に全部入れてンだよ! 思いっきり血ィ出てるしてるじゃねぇか! 内臓イッてたり
したらコイツ死んじまうんだぞ、おいっ!?」
 「……す、すげぇよ!」仲間の非難も何処吹く風。トロトロと大量の破瓜の血を垂れ流しながらも自分を
丸ごと銜え込んだ少女の内側は、信じられないほど男と一体化してウネウネと律動している「すげぇよ、
ずげぇ! こいつ、信じらンねぇくらいにすげぇよ!!」
 そのまま、相手の体などお構いなしに理性を失ったように激しく動き出す。
 「すげぇ、すげぇ! マジですげぇって!!」
 もう他の言葉を継ぐだけの思考力は残っていない。どこまで押し込んでも完璧に形を合わせ、キュウキュウ
と更なる奥へと誘う底なし沼に根元まで沈んでしまった男の脳内は完全に上塗りされ、この少女の体内だけが
宇宙の全てと化していた。
 「すげぇ! すげぇすげぇすげぇすげぇすげぇっっっ!!」
 少女の大量出血を物ともせずに腰を振り、自分の下半身まで真っ赤に染めながらも焦点の合わない目で
同じ言葉を繰り返し続けるリーダー格の異常な姿に恐怖を感じ始める二人。
 「お、おい! おいって!!」
 「こ、こいつヤバくね? つか俺たちもヤバイんじゃ……」
 そんな二人も、少女の口を犯している仲間が今は一言も発せず白目を剥いて少女に貪られている様子に
全く気付いていない。

 『こ、こんなの知らないよっ! 良いっ、信じられないくらい気持ち良いっっっ!!』
 一方の宗介の脳内も無数のフラッシュで埋め尽くされていた。挿入された内臓器官の隅から隅までが
既知の最も敏感な場所よりも遙かに気持ち良く、途絶えることの無い無数の快感を感じ続け神経組織の
処理限界を超える寸前なのだ。
 『もっと! もっと欲しい!!」
 更に口から相手の精力を吸い上げると全身に力が満ちてゆくのを感じる。食欲と性欲を同じ器官で
同時に満たす悦びは想像を絶していた。
 『あらあら、あっという間に一人潰してしまいましたか……』
 その宗介の横で溜息を漏らす悪魔少女。精液と共に精力を際限なく吸われ、最初の男は力尽きる寸前だが
初めての快感に酔っている宗介は気付かず舌を絡めて責め続けている。
 『お腹っ! お腹の中掻き回されながら吸うのも凄いよっ! お腹の奥から気持ちよいのが全身に
広がって指の先までビリビリ痺れるぅ!!』
 一番威勢が良かった男もこの調子なら、あと一分もしない内に射精させられ萎える暇も無くで全部吸い
取られて果ててしまうだろう。
 『まぁ最初に加減を教えていなかった私の責任でもありますけど、此処は「後で後悔しますから」と
言っても全く聞き入れなかったのが方々に責を負って頂くことにしましょうか……」
 これ以上負荷を掛けると手に入れたばかりの依り代が焼き切れてしまいそうだ。
 悪魔少女は宗介の性感の一部を自分に切り替えつつ、再び表層意識の主導権を乗っ取る。
 



 「あぐぅあっ!?」
 と最後に呻いたリーダー格は、天から伸びた糸で操られる人形のように不自然な動きでガクガクと
全身を震わせて力尽きた。
 「……………」
 そして口を楽しんでいた筈の男は目を裏返したまま、こちらも間接を不自然な方向に曲げながら後ろ
向きに倒れ動かなくなってしまった。
 「こ、これって……」
 「ま、マジヤバイって! 逃げ……」

 「けぷっ」

 少女の口から発せられたらしい満足そうなゲップの音。
 恐る恐る、顔を見合わせていた二人が視線を落とすと……
 「だから言ったでしょ、後悔するって?」
 瞳を深紅に輝かせ、白濁液で口の周りを汚しながらも勝ち誇った目で見上げてくる少女の底知れぬ
表情。その生気に満ち汗一つ浮かべていない余裕の悪魔の笑みだけで、遅まきながら自分達が相手を
間違えたことに二人は同時に気がついた。
 「あ、あの……」
 「お、俺ら……その……」
 「とりあえず……邪魔ね」
 組み敷かれたまま、少女が軽く腹を蹴ると一番大柄だったリーダー格が声も出さずに数メートルは
吹っ飛び、壊れて打ち棄てられた人形のように転がりながら照明の外に消えて失せる。
 「「ひぃっ!?」」
 信じられない光景に腰を抜かしそうになる二人の腕は、既に少女の細い指に絡め取られていた。



 自己嫌悪、という言葉しか浮かばない。
 『何を落ち込んでるんですか? 死なずに済んだ上に良い思いが出来たんですから
一石二鳥の万々歳じゃないですか』
 「そんな訳ないだろっ!」
 頭の中に響く悪魔少女の声に、思わず声を出して反論してしまった宗介。
 初めてのセックスの余りの気持ちよさに我を忘れ、あのまま残る二人のチンピラ
にも自分から吸い付いて跨り、血の気が失せ意識を失って昏倒してしまうまで
精気と精液を吸い上げ続けたのは黒歴史以外の何物でもない。
 「……あいつら、まさかあのまま死んだりってことは……」
 『その心配はないと思いますよ。急激とは言え単なる消耗ですから、あのまま
数日間放置でもしない限り命に別状はない筈です。きっと今頃は朝の散歩で通り
かかった犬か通行人にでも発見されて救急車で搬送されているでしょうね』
 「そ、そっか……」
 『という訳で、罪悪感を感じる必要もなくなったところで早速次のターゲットを
見つけて欲望の赴くままに爛れたセックスライフを思う存分』
 「楽しまないからねっ! っていうか今日も学校だからっ!」
 『えー』
 「えー、じゃないしっ! 必要最低限の協力しかしないって約束だったよね!?」
 絡んできたチンピラを全員昇天させた後に元の姿に戻してもらい(念のために
公園内のトイレの鏡で確認した)家族の目を避けるように自室に逃げ込んで全てが
夢でありますようにと願いながら寝たのだが、残念なことに無駄だった。
 頭の中に居座った居候は朝から口喧しいことこの上ない。
 『居候ではなく同居人ですから』
 「だから思考を勝手に読まないでくれって!」

 そんな調子だったが、なんとか言い聞かせて登校まで漕ぎ着けた宗介。
 『なんか家を出るまでずっと姉ちゃんに睨まれてたような気がするし、
ひょっとして何か気づかれたかなぁ』
 『仮にそうだとしても、単に宗介さんがオドオドと所在なさげだったのが
気になっていただけではないですか? 別に後ろめたさを感じる心当たりも
ないというのに、もっとドーンと構えていて頂かないと余計なところから
ボロが出ますよ?』
 校舎に着いて上履きに履き替える頃には幾分慣れて、何事もない風に歩き
つつ言葉に出さず悪魔と意思を疎通できる程度のことなら簡単に出来るように
なった宗介は平静を装いつつ廊下を進む。
 『そりゃそうかも知れないけど、僕的にはショッキングな出来事の連続
だったんだし昨日のアレだって罪悪感ゼロって訳にはいかないよ。それに
家族に秘密持つっていうのも、やっぱり抵抗あるし……』
 『やれやれ、繊細というかタマが小さいというか……面倒な物ですね』
 『昨日の今日で忘れてる筈なんてないと思うけど、そもそも君を助けようと
思って車道に飛び出したのが発端で…………あ!』
 『ん?』
 階段の上、宗介と擦れ違うように女生徒の一団が談笑しながら降りてきた。
 『ほう?』
 その中の一人。髪の長い大人しそうな少女に宗介の視線がロックオンされ
ているのに気付いた悪魔が感心したような、そして面白がるような声を出し
ながら意味ありげな横目で見つめている。
 『な、なんだよ?』
 『いえ、宗介さんのお目の高さに感心していただけですよ? 育ちが良く
色白でも健康そうなタイプがお好みですか。でしたら早速、そのような姿に
擬態して男漁りを……』
 『自分がなりたい訳じゃないからっ!』
 などと頭の中で言い合っている間に通り過ぎてしまった女生徒達。
 『……もちろん冗談ですよ? あの雌を押し倒して剥いで舐め回して
性的に征服し尽くして孕ませたい訳ですよね?』
 「…………………」
 この悪魔は自分から持ちかけた契約の相手に恨みでもあるのだろうか?
 『まぁ、それはさておき今の接近遭遇で嗅覚的に幾つかの情報を得た
訳ですけど聞きたいですか? 聞きたいですよね?』
 『それって、瀬戸の?』
 『はい、宗介さんの現在の片想いの対象である一年A組の瀬戸岬さんに
関するプライベートな事柄です。しかも主に性的な部分についての』

 岬と宗介は友達どころか知人ですら無い赤の他人。当然ながら自分には
一瞥もくれずに去って行く岬の後ろ姿を目で追い続ける宗介。
 『ちなみに良い知らせと悪い知らせがあります。宗介さん的には、どちらを
先に聞きたいでしょうか?』
 『……ど、どうせ聞きたくないって言っても頭の中じゃ耳も塞げないし逃げ
場もないし無理矢理聞かされるに決まってるから…………悪い知らせの方から
お願いするよ』
 最後で落ち込む方がダメージが大きそうだと判断した。
 『では、仰せの通りに』頭の中で悪魔がほくそ笑む気配『嗅覚だけなので
進度までは分かりかねますけど、あのメ……岬さんには既に特定の相手が居て
性的な経験もあるようですね』
 「はぁっ!?」
 思わず声に出して驚いてしまった宗介。隣のクラスと言うことで自分なりに
チェックもしていたし、噂にも聞き耳を立てていたのだが彼氏が居るなどと言う
話は全くの初耳だ。
 『あの瀬戸が? あんなに大人しくて真面目そうなのに? 一年なのに特定の
男が居て性的な経験って……』
 『と、ここで良い方の情報ですが……聞いてますか?』
 『ないないないないないない有り得ないって!』
 『こちらは確定情報ですが、まだ生娘ですね。男を引っ張り込んでおいて完食も
せず膜を残しているなんて情けないというか呆れ果……』
 『ほんとに!?』
 『……意外にタフというか、立ち直りが早いですね宗介さん』
 『そんなことはどうでも良いから! ホントに処……経験無いんだね!?』
 『発散してる匂いからして間違いないですよ。青臭くて小水を連想させる不快な
フェロモンをプンプン撒き散らしてます。そんなに日照ってるなら活きが良くて
適当な雄を捕まえて跨がってサッサと搾り取ってしまえば良いのに』
 

 この際、頭の中の同居人の口の悪さは後回しだ。
 『……と、とにかく付き合っていても処女だって言うことは……そこまで許せる
程に好きじゃない男かも知れないし、処女を守る為にしかたなくスケベなことを
させられている可能性だってあるじゃいないか! それなら僕の方にだって十分な
チャンスがあるぞ!』
 単に学生だから自制してるとか、男の方がプラトニックで岬から積極的に挑発
している最中と言った方向に全く想像力が働かない宗介。
 また何も分かっていない現状で、現在の交際相手から奪い取って自分の物にして
しまいたいという年不相応な衝動から考えても体を共有している悪魔に早くも魂を
毒され始めている可能性が高い。
 『そんなものなんですかねぇ?』
 『それをこれから確かめるんだ! 手伝ってくれれるよね?』
 そして調べる、ではなく確かめるという言葉を無意識に使っている。
 『えー』
 心底嫌そうな感情を隠そうともしない悪魔。
 『なんでそんなに嫌そうなんだよ!?』
 『なんでもなにも、雌は面倒くさいからに決まってるじゃ無いですか。無駄に
シュチエーションに拘るし、射精とか分かりやすい放出がないから精気は集めに
くいし、その割には性欲だけは旺盛でねちっこいし良い事なしなんですよ?』
 『だからなんでセックスするのが前提なんだよ!?』
 『あれ? 寝取るんじゃないんですか? モノにしても美味しく頂かないんで
すか種付けしなくていいんですか? どこにも射精できない良いお友達だけで
いいんですか? それで満足できますか?』
 『そ……それは……時期を見て、そういう流れになったら……』
 『そんな草食系志向でどうするんですか! どうせ何時かは雄の性欲のはけ口に
なって程良い大きさまで広げられ開発されて女の幸せとか言う自己陶酔に浸りながら
最後は自分から跨るようになって孕まされるのが落ちなんですし、それなら他の野郎に
食われる前に俺の肉棒で支配してやるぜ〜くらいの男気というか気合いや積極性が
無くてどうするんです?』
 『だからっ! 乗り気があるのか無いのかどっちなんだよっ!?』
 岬を口説く手伝いは気に入らないと言った舌が乾く間もなく、然るべき段階を踏んで
進もうとする宗介を煽る悪魔の思惑が全く掴めない。
 『つまりですね。積極的にお手伝いをしたいとは微塵も思いませんけど、条件次第で
は考えも変わるかも知れない……ということなんですよ宗介さん?』



 翌日の放課後。 
 「……で、これが交換条件?」
 (駄目じゃないですか宗介さん。ちゃんと女の子らしい言葉遣いをして頂かないと
折角の擬態が台無しですよ?)
 女体化して指示に従って精気を補充させてくれれば等価交換で力を貸しても良いし
妙案も授ける。
 その言葉に渋々従った宗介の今の姿は同じ年頃の少女。とは言え制服の上に大きな
ダッフルコートを纏ってフードを深く被り、伊達眼鏡で素顔を隠した形は明らかに
普通ではない。
 「……………」
 (さぁさぁ、遠慮せずにずずずいっと入店してくださいな?)
 そして何故か怪しげな雑居ビルの三階に店を構える薄暗いアダルトグッズの専門店の
前に立たされていた。
 「き、気が進まない……」
 (そんな意気地の欠片も無いへっぴり腰でどうするんですか! 変装どころか完全な
別人に変身してるんですし、どれだけ恥をかいても痛くも痒くも無いんですよ! これ
以上のお膳立てがこの世にあると思いますか?)
 「そりゃそうだけど……」
 (それとも岬さんのことは綺麗さっぱり諦めますか? 何処の馬の骨とも分からない
雄の所有物になって体の中も外も精液まみれにされてもいいんですか?)
 「うぐ……ぐぐぐぐぐ……」
 (嫌ですよね我慢出来ませんよね自分で処女膜破りたいですよね? だったら私の
指示通りに行動して下さい。ナウ!)
 最終目標が微妙にズレているような気がしないでも無いが、悪魔の話術に嵌められて
しまった宗介には従う以外の選択が存在しない。
 「わ、わかったよぉ……」
 (わかりました、ですよね女の子なら?)
 「……わかりました」
 (では、しゅっぱつしんこー!)

 そうして女生徒の姿形で入店した宗介は脳内ナビゲーターに従って真っ直ぐに……
 (ほらほら見て下さい宗介さん。意外と凝ってますよねぇ?)
 「はうっ!」
 (こっちは……なるほどなるほど、こういうのは興味ありませんか?)
 「うううっ!」
 (最近は、こういう路線もアリなんですか。次はコレで行きましょう)
 「っっっ!!」
 ……真っ直ぐ進むどころか数歩毎に興味を示して勝手に足を止める悪魔に振り回されて
店内を隈無く探索する羽目になり、目的のポイントに辿り着く頃には茹で上がったタコの
ように真っ赤になり湯気を上げ憔悴し尽くしていた。
 (その顔、恥ずかしさに耐えられない乙女そのもので可愛いですよ?)
 (誰の所為だよっ! っていうかコレを狙ってたんだね!?)
 (それはさておき、どれが良いと思いますか宗介さん?)
 「うううっ!」
 目の前にズラリと並んでいるのは男性器を模した乾電池で動く玩具。所謂電動ディルド
と呼ばれる代物が整然と陳列されている。
 (お、女にされた挙げ句に、こんな物を買わされるなんて……)
 (素の姿で買うよりは遙かに良いと思いますけど?)
 しかも先程から幾つもの視線が体に突き刺さっているのを肌で感じる。悪魔と同化して
感覚が鋭敏化したのか、断じて気の所為ではないと言い切れるほどにハッキリと。
 「ほ、他のお客さんに注目されてる……」
 あからさまに正体を隠そうとしながらも少女が制服をチラチラ見せながらアダルト
ショップの中を徘徊して注意を引かない訳が無い。やはりというか、コートの裾から覗く
制服のスカートと純白のニーソックスの効果は抜群だ。
 (良い感じに観察されてますよ? しかも一人残らずギンギンに勃起している辺りが
本当に素敵ですっ!)
 「も、もう逃げたいよぉ……」
 宗介には知る由もないが、店内を歩いている間に体が特殊なフェロモンを撒き散らして
男性客達を興奮させていたのだ。でなければ聖域に異性の侵入を許した男達が揃って
鼻息を荒くしながら見つめたりはしない。普通なら逆に萎縮してしまう者もいなければ
おかしいというのに。
 (仕方ないですね。少し食べ足りないですけど宗介さんの精神的な限界も近いみたい
ですし、そろそろ頃合いですから適当に何個か見繕ってレジに向かって良いですよ)
 (た、助かった……)

 悪魔に指示されるまま、用途の明らかな玩具を幾つも抱え込み人目を避けるよう小走りに
レジに向かう宗介は背徳的な自慰中毒の少女か、質の悪い男に誑かされて羞恥プレイを
強いられている被害者にしか見えない。
 そんな宗介の小さな背中を、幾つもの男が目で追い足を動かし始めていた。
 あたかも食虫植物の香りに引き寄せられる補食対象のように。
 「これ、全部買うの?」
 決して安くはない商品を何個も、しかも何処から見ても学生としか思えない少女に差し
出されたレジ担当の店員の質問は至極真っ当だった。
 「は、はいっ!」
 だが悪魔に指示されている宗介は顔を逸らしながら頷くしかない。
 「そっか。じゃあ全部で……えっと……」
 本人の意思を確認した店員はビジネスライクな表情に切り替え、視線をレジスターに移して
計算を始める。その様子に幾分ホッとした宗介は普段と同じようにズボンのポケットから財布を
取り出そうとするが。
 「さ、財布は……あれ? あれっ?」
 当然ながら着ている服も擬態。スカートにポケットなど無い。
 「じゃ、じゃあ胸ポケット? シャツのポケットは? ええっ!?」
 無い、何処にも財布が無い。全身に脂汗を浮かべながらコートや制服のアチコチをまさぐるが、
どこからも財布は見つからない。
 「どどど、どこだっけっ!?」
 声に出してしまう程に慌てながら頭の中の悪魔に尋ねるが。
 (さぁ? どこでしたっけ?)
 何処吹く風、と言いたげな顔で白を切られてしまう。
 「そんなっ! ひょっとして鞄の中は……ないっ!」
 文字通りの孤立無援。いや、それどころか、
 (やられたっ!!)
 騙されたと気付いたときには手遅れだった。訝しむ店員の視線に耐えられなくなった
宗介には、すぐに脱出する以外の道は残されていない。
 (別に万引きとかじゃないしっ! 財布を忘れただけですって素直に言えば恥ずかしい
思いをするだけで済むだけだ! だから急いで謝ろう!)
 「ごごごごごめんなさいっ! うっかり財布を忘れちゃったみたいだから全部お返し
します! 本当にすみません!!」
 大袈裟に頭を下げ焦りに焦りながら通学カバンを胸に抱えて店から逃げ出す宗介。
 だが、
 「ちょっと君、待ってもらえるかな?」
 「あうっ!?」
 入り口(出口)まであと一歩、というところで後ろから腕を掴まれて引き戻された。

 「ち、違います! 万引きとかじゃなくて本当に財布がなくて……」
 「それは後で聞くとして……君、その制服は西高のだよね? ちょっと話を聞かせて
もらってもいいかな?」
 「!!」
 (補導員!?)
 (みたいですねー。運がないですねー宗介さん。うわーかわいそーですー)
 (すっごい棒読みだったよね今の! というか、どうするんだよこれ!)
 どうやら巡回で偶々店に立ち寄っていた補導員に見咎められたらしい。一見すると何処に
でもいるサラリーマン風の地味な背広の中年男性だが、その眼差しからして職務に忠実な
男だと思って間違いなさそうだ。
 
そして、いかがわしい商品を大量に購入しようとする少女を密かに包囲していた他の客達は
補導員という予想外の妨害者を目にして音も立てずに霧散していった。

 「ちょ、ちょっと! そういうの店先でやられると困るんスけど!?」
 顔面蒼白で怯える宗介と、その姿を冷静に見下ろす補導員の間に店員の焦った声が割って
入った。店の出入口で騒ぎを起こされると即、客足に響くのだから無理もない。
 「……じゃあ君。ここに居ててもお店の迷惑になるし、色々確認したいこともあるから
商店会の事務所まで一緒にもらうけど良いよね?」
 「い、いえ! あの……」
 「ここで騒いで話が大きくなると困るのは君だよ? 心配しなくても交番に行ったり
する訳じゃないし、話を聞くときには女性の方にも立ち会って貰うから」
 「そ、そうじゃなくて……」
 「こういう所は未成年者立入禁止だって知ってるよね? 今回が初めてみたいだから
学校には黙っててあげるし、一応鞄の中を確認した名前と連絡先だけ確認してお家の方に
来てもらうだけで良いから、ね?」
 踏ん張っても大人の男性の腕力には敵わない。焦る宗介はズルズルと引きずらるように
店の外へ連れ出されてしまう。
 もちろん、宗介の味方など何処にもいない……訳ではない筈なのだが。
 (これ、どうしたら良いのか教えてって! 君の指示に従った結果なんだけど!)
 (………………)
 (え? ちょっと何黙り込んでるんだよっ! こっちは大ピンチなんだけど!)
 (……完了です)
 (は?)
 (少し交代して頂けますか? 任せて頂ければスルッと窮地を脱して見せますので)

 店から引っ張り出してエレベーターに向かう途中で少女の様子が急に変わった。
 「ごめんなさい! ちょっと興味があっただけで……もう二度としませんから誰にも
言わないでくださいっ!」
 ぎゅっ、と厚着越しでも触感が伝わるほど豊かに育ったバストを押し付けるように腕に
抱きつかれ、らしくもなく驚いてしまった補導員。
 「き、君、何を!?」
 「本当に反省してるんです! 黙ってて頂けるんでしたら何でもしますから学校にも
家にも連絡しないでください! お願いです!」
 右腕で抱きつき迫真の涙目で懇願しながら左手でフードを上げて素顔を晒す少女。
 「!?」
 そして目が合った瞬間に固まってしまった補導員。
 (え? なんであんなに驚いてるんだ? ひょっとして予想外に可愛いからとか?)
 (それもありますけど、手首を握られている間に頭の中を覗いてみると娘がいるよう
でしたので、少し顔を作り替えて娘によく似た感じにしてみました)
 (は?)
 (と言っても、まだ小学生らしかったので私なりにアレンジを加えてありますけどね。
この位の年頃まで成長したら、という感じになってます)
 (はぁっ?)
 (そして、この状態で魅了の魔力を浴びせるとどうなるでしょうね?)
 (な、なんて悪趣味な……)
 ぐふふふ、と哀れな美少女を演じながら頭の中で底意地の悪そうな笑みを浮かべる
悪魔。その全身から放出された不可視の力が触手のように補導員の体に絡みついてゆく
様は、体を共有する宗介にはハッキリと感じられる。
 「お願いだから先生やお母さんには黙ってて下さい! 」
 「え? あ、ああ…………」
 頭の中で描いていた一人娘の将来の姿そのものの美少女と、その瑞々しいバストの質感で
僅かに動揺したところに悪魔の力を浴びてしまった男は困惑したまま頷いてしまう。
 「内緒にしてくれるんですか? でしたら……あの、こちらに来てくださいますか?」
 泣き顔から儚げな笑みに、更に恥じらいの顔になった少女は再び補導員を両腕で捕らえて
同伴出勤するホステスのように廊下の奥の非常階段へと連れ込んでゆく。

 薄暗く、湿っぽい異臭が漂う屋内非常階段の踊り場。
 雑居ビルらしく様々な物が放置され埃を被っている中、補導員を荷物の影に誘い込む
ことに成功した悪魔は大人しそうな演技から一転。興味と恥じらいが入り交じった照れ
笑いを浮かべ艶っぽい上目遣いで男の目を見つめながら、ゆっくりと上半身の肌を露わに
してゆく。
 「お、おい君……!?」
 「もぉ! おっきな声出したらダメ、でしょ?」
 ぷつん、と背中のホックを外し最後の覆いを取り払うと真っ白な乳房が解放され
歓喜を表現するように大きく揺れて跳ねる。
 (うわっ!?)
 自分自身のバストの大きさと美しさに驚いてしまう宗介。
 (どうですか宗介さん、女の子の体って良いでしょう? しかも変化自在、不老不死の
オマケ付きなんですから遠慮無く感謝して下さっていいですよ)
 ご機嫌な様子で自画自賛状態の悪魔。若々しく張った二つの果実を両手で持ち上げる
ようにしながら男ににじり寄って隅へ隅へと追い詰めてゆく。
 「や、止めなさい! 君みたいな子が、こんなことをしては……」
 「『こんなこと』って、どんなこと? もしかして、こぉ〜んなコトかなぁ?」
 汚れた床に膝を突き、背広のズボンの上から上半身ごと抱きついて胸を押し付けると
弾力に満ちた双丘がムニュリとひしゃげて形を崩す。
 「おとーさん、大好きっ!」
 「おと……な、何を言っているんだ君は……君は……千穂……? いや……そんな
馬鹿な……」
 全身を絡め取った魔力がジワジワと男の内側を浸食し始める。鼻孔から入り込んでくる
甘酸っぱく危険な香りが脳内を溶かしてゆく。
 「おとーさん、チホのこと分からないの? 大きくなったらお嫁さんにしてくれるって
約束してくれたから頑張って大きくなったんだよ、チホは?」
 「千穂? しかし、そんな……千穂……千穂……」
 「うふふっ。チホのおっぱいで大きくなっちゃったの、おとーさん?」
 「なっ!」
 そして成すがまま勃起させられてしまった。
 「苦しそうだよ。いま出してあげるね?」
 完全に魔手に堕ちてしまっては思考力も殆ど働かない。男は自分の娘そっくりの少女の
為すがままにベルトを外され下半身を露出させられてしまう。
 「きゃん! おとーさんの、逞しくて元気いっぱいだね?」
 (これはこれは……予想以上に溜め込んでますね色々な意味で。正直言って余り期待して
いなかったのですが、これは掘り出し物だったのかも知れませんよ宗介さん)
 (ち、近くで見ると気持ち悪……)
 (それは単なる先入観です刷り込みです。見た目に惑わされず、私の嗅覚を使って
精気の匂いを嗅ぎ取れば美味しそうに思えてくる筈ですよ)
 (そう言われても……)
 (それに先日は自分から吸い付いて美味しそうに頬張ってたじゃないですか。あの時の
味と喉を拡張される快感を思い出せば簡単ですよ)

 宗介との脳内会話と平行して男を責める手も休めない悪魔。小悪魔の笑みと瞳で男の
視線を釘付けにしながら先端に顔を近づける。
 「私を作ってくれたとこ、キスしてあげる……んちゅっ」
 「おおっ!?」
 先端に軽く口吻。そのまま可憐な唇から先走りの糸を引きながら顔を動かし小さな
舌先で裏筋を丹念に舐め回し始める。
 「……ちょっと、しょっぱいかも……んんん」
 「おおおっ!」
 「でも素敵。固くてトクトクしてて……エッチな匂いがいっぱい……」
 完全に虜となった男の瞳から理性の輝きが消え失せる。棒立ちのまま勃起だけを
震わせて与えられる快感に酔いしれている。
 (では、そろそろ本日のメインディッシュといきましょうか)
 (ま、まさか! こんな所でセックスするの!?)
 (残念ながら違いますよ。余り大きな音を出したくありませんし、折角気合いを入れて
作ったのですから胸を使おうかと思います。宗介さんにも、この体での胸の良さを教えて
差し上げたいと思いますし)
 (それって……)
 (まぁ粘膜同士ほどではありませんが精気も吸収できますし、肌の感度を上げれば結構
楽しめますからお勧めですよ。あと、この男くらいの大きさがあれば先端の匂いも堪能
できますし)
 自分の唾液に塗れ濡れ光る男を舌舐めずりしながら見つめる悪魔。
 「おとーさんが育ててくれたおっぱいで、いっぱいしてあげるね。んしょっと」
 男の意識を自分に向けるよう、わざと声に出しながら位置を調整して身長と比較して
アンバランス気味な程に発育したバストで包み込む。
 「んんっ」
 「おおおおおおおっ!!」
 只でさえ柔らかい女性の体の中でも最も多く皮下脂肪を蓄えた象徴。押し付けられた
乳房は両手で挟み込まれ形を変え、男のペニスを隙間無く圧迫して四方八方から柔肌で
吸い付く疑似性器となって双方に快感をもたらす。
 (うわわわわわっ!?)
 (どうですかどうですかゾクっと来ましたよね?)
 (っていうか熱っ! 固くてヌルヌルで脈打ってて……)
 (女の子の方も気持ちいいでしょう? まだまだ序の口ですからね? 動かしたら
もっと良くなりますよ?)

 (も、もう良いからっ! これ以上気持ちよくならなくてもいぅっ!)
 強く挟んだまま擦られると胸の芯をビリビリと電流が駆け抜け全身に響く。
 (そうそう、その調子で感じて良いんですよ宗介さん。いまは女の子ですから思う存分
良がって構わないんですからね?)
 (ちょ、ちょっと動かしただけなのに……うぅぅっ!)
 性感帯のみならず胸部の肌の感度も上げられている所為で、標準的な女性以上にパイスリで
快感を得てしまう宗介。あっという間に尖ってしまった先端まで疼かせる羽目に。
 (この味、しっかり覚えてくださいね?)
 (くぅぅぅぅぅぅっ!)
 情け容赦なくムニムニと動かす悪魔に頭の中で言い返す余力すらない。

 そして調子づいてきた悪魔の奉仕……という名の搾取で精気を吸い取られている男の
脳内は快楽信号で真っ白に染め上げられ限界すら見え始めていた。
 「ち、千穂……こんな……千穂……っ!」
 「おとーさんの気持ちよさそうな顔、可愛い! チホのぷりぷりのおっぱい気持ち良い
でしょ? 良いよね? おかーさん、こんなことしてくれないもんね?」
 「それは……お母さんは……っ!」
 「おかーさん、おとーさんには口うるさい癖に平凡なセックスだけもんね。それだって
最近はご無沙汰なんて可哀想。つまんないよね、あんな女?」
 「そ、そんな言い方は……!」
 「普通のセックスも満足にさせてくれないおかーさんと、お口で舐めてあげたり胸で
ご奉仕してあげるチホと、どっちが好き? どっちが大事? チホは娘だしチホの
半分は、おとーさんの精液で出来てるんだよ?」
 「うぅっ!」
 「おとーさんが好きって言ってくれないんだったら、クラスの適当な男の子にバージン
あげちゃおっかなぁ? チホだって子供じゃないんだし、早くセックスしていっぱい
気持ち良くなりたいんだもん」

 小学生低学年の娘は父親にとって最も可愛らしい盛りで、まだ素直に懐いてくれる貴重な
年頃だ。
 そんな娘と自分をオーバーラップさせ、育児とパートで忙しく性生活を敬遠しがちな
妻に感じている微かな不満や、いまは無邪気で愛らしい娘を他の男に渡してしまわなければ
ならない将来をチラつかせて男の欲望を煽る悪魔。
 「く……くそっ!」
 そして、呆気なく悪魔の誘惑に屈してしまう男の精神。娘に似た姿に擬態した悪魔の裸の
両肩を手で掴み、自分から腰を振って所有宣言をする。
 「あははっ、おとーさんってば動物みたい! でも素敵、大好きだよっ!」
 ローションポットの様に次々と唾液を生産して胸の谷間に垂れ流しながら肉食獣の瞳で
男を嘲笑う悪魔。人間離れした高温の粘液を絶え間なく亀頭に浴び、底なしの弾力を持つ
乳房で隙間無く圧迫され搾られる快感は、実の娘との和姦という非現実的にして至高の
スパイスによって底無しに深まってゆく。
 「千穂っ! 千穂っっ!!」
 「チホも気持ちいいよ! このまま、おとーさんのお嫁さんにしてっ!」
 (さ、さっきよりも太くて固くてなって……!)
 (欲求不満と独占欲のコラボのお陰ですね。肌を通して精気がどんどん流れ込んで来てる
のがわかりますよね?)
 (ししし、痺れるぅ!)
 例えるなら、入浴で体が温まる心地よさが一番近いのだろうか。
 だが熱量も速さも全然違う。精気が熱い奔流となって肌も皮下脂肪も素通りして乳房の
芯に集まり全身に供給されてゆく快感は、口内や膣内で受け入れた時ほどではないにしろ
宗介を夢中にさせてしまうそうな程に大きくて強い。
 (ねぇ宗介さん、そろそろ放ちそうな雰囲気ですけどフィニッシュは何処がお好み
ですか? 胸の中に熱いの浴びたいですか顔面パックで匂いを堪能しますか?)
 (あ……!)
 (それとも……最後の一滴まで吸収してゴクゴクして自分の物にしたいですか?)
 (…………)
 ごくり、と思わず喉を鳴らしてしまう宗介。
 (なるほどなるほど。では仰せのままに)
 悪魔が器用に首を伸ばすと、胸の谷間から顔を出す真っ赤な先端が独特の臭気と一緒に
近づいてきて……

 先日と同様に獲物を昇天させた悪魔は上機嫌そのもの。どことなくリズミカルな口調で
一方的に喋りまくっている。
 (補足になりますが精気の吸収というものは量ではなく質なのです。つまり劣情の強さと
言うか欲望への執着心が強固であれば一人からでも大量に吸い取ることは可能です。という
ことで当初の予定からは大きく逸脱してしまいましたが、今日の獲物は溜めに溜めまくった
性欲に加えて子供に対しての庇護欲というか独占欲を上手く誘導できたので……)
 「……はぁ……」
 (……溜息なんかついて、どうしたんですか宗介さん? もしかして諭吉さんお二人じゃ
物足りませんでしたか?)
 (そういうことじゃないからっ! っていうか失神している人の財布から勝手に抜き取る
なんて犯罪じゃないか! 何考えてるんだよ!?)
 (何言ってるんですか。可愛い一人娘に化けてあげた上に失神するほど気持ちが良い極上の
パイズリを体験させてあげたんですから正当な報酬に決まってます。だいたい今時、たかが二枚
程度で現役JKに生でパイズリさせて最後に生フェラ口内射精なんて破格ですよ?)
 (その前に『そういう』前提で始めた訳じゃなかったよね? むしろ逆レイプって言うか
君が一方的に迫って問答無用でパイ……したよねっ!?)
 (ところで今日も精液美味しかったですか、宗介さん?)
 (っっっっ!!)
 結局、先日のチンピラ相手ほどではないが補導員が意識を失うまで口で吸い上げて
補導という窮地から脱することが出来た宗介。

 それだけなら釈然としない物を抱えつつも多少は悪魔に感謝も出来たかも知れなかったが、
この同居人は宗介が胸奉仕と飲精と精気吸引の快感の余韻に浸っている間に補導員の背広を
まさぐって財布から現金を抜き取り、その後に別の少女の姿に擬態して涼しい顔でビルを
あとにして悠々と夕暮れの街を闊歩している。
 (それにまぁ、あの雄もお金を盗られて『悪い女に引っかかった』で自己完結した方が
精神衛生上も宜しいかと思いますよ? いくら相手が子供に似てて可愛かったとは言え、
補導した未成年に誘惑されて最後は自分から腰を振って思いっきり射精しただなんて末代
までの恥でしょうし、家に帰っても家族に合わせる顔がないでしょう)
 (そ、それはそうかも知れないけど……そもそも君が……)女の子の姿にさせてアダルト
ショップなんかに、と言いかけて宗介は思い出した(……そうだ! そもそも僕が協力する
って言ったのは君が瀬戸の件で手を貸してくれるって約束したからだよね? それは忘れて
無いよねっ!?)
 (…………………………ちっ!)
 (なにその舌打ちっ! 良いアイデアも出してくれるんだよね!?)
 (もちろんですよーわすれてなんかいませんよーまかせてくださいー)
 (…………)
 説得力の『せ』の字も無い。
 (だから冗談に決まってるじゃ無いですか! 早速ながら妙案を伝授して差し上げますから
耳かっぽじって良く聞いて下さいね? つまり現状で宗介さんは瀬戸さんと付き合ってる雄
とか進度とか寝取る糸口とか色々知りたいことが山盛り状態なんですよね?)
 (まぁ……ね)
 (では、それらの情報に最速でアクセスして閲覧し放題にする為の最初の一手を教えて
あげましょう。それは……)
 (そ、それは?)
 (ズバリ、瀬戸さん本人に直接聞いちゃいましょう!)
 (………………………は?)
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