セネアが少し体を起こし、自分の胸元を滑らせるように手をかざすと、
途端に服が霧にように消えて、その見事な肢体が惜しげもなくさらけ出される。
だがその白い肌に令が見惚れる間もなく、彼女は令に固定するようにのしかかったかと思うと、
その手をつうっと令の体にそって撫でるように下に降ろしてゆく。
ただそれだけの事なのに、令は体をぞくぞくした感覚に襲われ、息が荒くして耐えねばならなかった。
その手は胸から腹、そのまま横にずれて腰のあたりで止まる。
セネアがやりたい事はすぐにわかった。令は逆らう事なく尻を浮かせると、
すぐにセネアの手がパジャマのズボンを脱がせてゆく。
最後に足を軽く持ち上げられ、それがあっさりと抜き取られた。
すると今度はその足を下からなぞるように、セネアの手がなで上げてゆく。
「ふあっ……やぁ……くふうぅぅッ……」
いくら息を殺しても、そのぞくりとした感覚に声を押える事ができない。
令はまるで足全体が性感帯になってしまったような錯覚すら覚えていると、
セネアの手がその付け根あたりまでやってくる。だがそのまま令の神聖な場所に触れる事はなく、
ふとももの内側や上を巧みな手つきで撫でまわし始めた。
「ふふっ、令ったら足を触ってるだけなのに、どうしたのかしら?」
息を荒くする令にセネアがからかうような口調で問いかける。その間も手は内股、
付け根、そしてへそのあたりと、肝心な場所を避けるようになで続ける。
ある意味これは直接的な刺激よりも遥かに耐えがたく、そして効果的だった。
セネアの手が体をなで上げるたびに、令は体をくねらせ刺激から逃れようとするが、
巧みに与え続けられる微弱な快楽は直接的な刺激と異なり、
多少リズムを崩そうとも簡単には収まらない。
もどかしいほど緩やかに、しかし確実に体に蓄積されてゆく快楽の波に、
令の汗ばんだ肢体がびくびくと震え悲鳴を上げる。

「やあっ、こんなのって……ふあああぁっ! ひゃああん!」
体はどんどん高まっていくのに、その勢いが微弱すぎて、決して絶頂まで達する事ができない。
そんな苦しみとも悦びともつかない責めに令は翻弄され、弄ばされる。
そしていよいよ心が屈服しかけた時……ようやくその手がショーツの端あたりで止まった。
「令ったらずいぶんもの欲しそうな目をしちゃって……どうしたのかしら?」
セネアが令を悪戯じみた笑みで見下ろす。だが巧みに高められた快楽がしっかりと体に
染み込まされており、蹂躙が終わってなお令の体の熱はなかなか収まろうとしない。
「何をして欲しいのか、言ってごらんなさい」
人を巧みに責めたて、それ以外の答えを発する選択肢を無くしておいてなお、
セネアはそれを聞いてくる。つまりそれを令の方から言わせようという腹なのだ。
それがわかっていてなお、セネアの望む言葉以外のものを発する事ができそうにないのが
令には少々悔しかった。
「……いじわる」
火照る体をいさめながら、令はそれでもちょっとひねくれた答えを口にする。
そういう答えが返ってくると思っていなかったのか、セネアは一瞬固まったあと、くすりと笑った。
「それは、これをこのまま続けていいという事? それとも……」
セネアの指がのの字を書くように令のおなかを撫でる。それすら微妙な力加減で、
再び令の体に微弱な快楽が流し込まれてゆく。ほんの僅かな言葉の反抗は、
結局すぐに音を上げるという結果にしかならなかった。
「……を……て」
「あら? よく聞えなくてよ」
明らかに楽しんでいる視線で、セネアは令の言葉に文句を言う。当然その間も責めの手は緩めない。
恥かしさと快楽の二重の圧迫に顔を真っ赤にして悶える令だったが、それも無駄な抵抗だった。
「……せて! お願いだから僕をイかせて! もっと……もっとめちゃくちゃにしてえぇぇ!!」

ついに令は声を振り絞ってセネアに懇願してしまう。いや、懇願させられてしまった。
この快楽を形容するならば、それは痒いところに手が届かないのを何百倍も苦しくしたような、そんな感覚。
それほどまでにこの快楽は狂おしく、そして耐えがたいものだった。
ようやくその言葉を引出せたセネアは、艶っぽく、そして満足そうに笑う。
「ふふふ、いいわよ。令の望み通りにしてあげる。貴方がそれを望むのだから仕方がないわね」
「そん、な……セネア……さんが……ひゃっふううぅッ!!」
令が言葉を最後まで言い終える前に、セネアの手がショーツの中に差し込まれる。
途端に令は体をびくんと跳ねさせ悲鳴を上げた。
強引にこれまでにないほど高まった体、蓄積された快楽……そこに一番敏感な場所への刺激が追加された途端、
令の中の悦びが信じられない勢いで昇ってゆく。
暴れる令の腰をセネアは強引に左手で抱え込んで押えつけ、さらに右手をショーツの中で
執拗に動かし続ける。先程とはうってかわり、直接的で激しい責めを令に加えていた。
今度はすさまじい勢いで令の中に快楽を注ぎ込みながらも、令がそれから逃れようとするのを
強引に押え付け、快楽の波に縛り付ける。全てはセネアの目論見通りだった。
「ひああああぁぁ――ッ!! ダメっ、どうしてえぇぇ!! こんな……こんなあふッ!!
熱くて……んあぁっ! はああぁ!! やああぁ……あああああぁ―――ッ!!」
令はこれまでにないぐらい、狂ったように声を張り上げ、汗のにじんだ腰や足をばたつかせていた。
だがそれでも決してセネアの腕の中から逃れる事はできない。
狂おしいばかりにセネアの腕の中で跳ね回る白い肢体……今、令は体の中を、
これまで決して達しえなかった領域の快楽に蹂躙されていた。
令の体は、先程までの微弱でゆっくりと加えられる快楽によって高められている。
そのため体は絶頂までの距離が果てしなく遠いものだと覚えこまされた。
そこへこの急激な変化である。体は一度覚え込んだ絶頂への記憶をなかなか捨てる事ができず、
本来の快楽の頂点を越えてなお、体はイく事を許さない。

男の時とは比較にならない女の体の快楽、その女の快楽を本来達し得ない領域まで高められてしまっては
元々男だった令に抗う術はない。いや、たとえ元から女であってもこの快楽には逆らえなかっただろう。
「ダメえぇ! ダメえええぇぇぇぇ!! 僕もう……セネアさん僕もう!! んあああぁ!!!」
「がんばったわね令……いいわよ、イきなさい! 思いっきりイっていいわ!」
令の限界を知った途端、秘部に指し込まれたセネアの指の動きがさらに激しくなり、
愛液が尻を伝ってショーツの間からぼたぼたとベットこぼれ落ちる。
さらに激しい指責めを数度加えられた瞬間、ついに令は限界に達した。
「ダメぇ、イッ……くあああっ、あああああああぁぁぁぁぁ――――ッ!!!!」
白い肢体をびくんと反らして、令はあまりに早い2度目の絶頂の叫びを上げる。
まるで全身が溶けてしまうような快楽が令を支配し、やがて静かに引いてゆく。
それから一瞬の間をおいて、弓なりになった腰がどさりとベットに落ちると同時に令は荒い息をはいた。
まだ頭がぼーっとしている。令は体を脱力させながら、信じられない快楽の余韻に酔っていた。
「どう、令? いままで味わった事のない領域の絶頂は?」
「こんなの……すごすぎる……よ……」
令は女になってから、何度も絶頂を経験している。そして最近は女の快楽にも少しは免疫ができたと
思っていた。だがまだまだそれは本当の頂点ではなかったのだと改めて思い知らされる。
「男では絶対に辿り付けない悦楽の領域……貴方は元々男であった以上、これを一度味わってしまうと、
肉体は二度とこの快楽を忘れられないはず。なにしろ本当は絶対に味わう事のかなわない快楽だもの……」
荒い息が収まらない状態で、令はなんとかセネアの言葉の意味を考える。
二度と忘れられない快楽−つまりこれが”肉体に快楽を刻み込む”という事なのだろう。
最初にイってしまった時のように、一度これをされてしまうと快楽を与えてくれた対象を肉体が
忘れられなくなるとセネアは言っていた。つまり今、令の体は抱かれるごとに、
快楽の主導権をセネアに奪われているのである。
後悔してももう遅い。少なくとも令の体はすでに2回目の絶頂の領域まで確実に調教されてしまったのだ。
それに……今の令には後悔する必要がない。

「こうやってセネアさんは……僕が逃れられないようにしていくんだね。
いままで覚えた”女”を、全てセネアさんの色が塗り潰していくんだ……」
「そうね、でも……令はそれが嫌?」
誰かに自分の何かを奪われて行くという感覚に限って言えば、それが好ましいわけはない。
だが令は、今感じている気持ちが嫌悪ではない事をわかっている。
「イヤじゃ……ないよ」
言葉を途中で切って、令は無言で体を起こした。セネアが少し不思議そうな顔をする。
−こっちからするのは……初めてかな?−
そのまま令は唇をセネアと重ねる。もう何度もキスを交わした相手のはずなのに、
緊張で顔が真っ赤に火照っているのが自分でもわかった。
「セネアさんだから……いいよ」
令は自分でもちょっとくさくて恥かしいかなという言葉を口にしてみる。
だがそれは思った以上に衝撃を与えてしまったのか、その言葉を聞いた途端セネアは
令をぽかんと見つたまま絶句し、頬を真っ赤にして固まってしまった。
が……しばらく間をおいたあと、令は唐突に押し倒されセネアに唇を奪われてしまう。
簡抜入れずに舌が挿し込まれ、そのまま激しい動きで令の口内を蹂躙する。
あまりに衝動的なキス……だが令は必死にそれに答え、逆に求めるようにセネアと舌をからめてゆく。
貪り合うような熱い絡まりを何度も繰り返した後、セネアはようやく唇を離した。
興奮冷めやらぬという顔で熱い息をはきながら、セネアは口を開く。
「令、貴方は私に魅了の魔法でもかけているの? 貴方の言葉一つ、仕草の全てが私を狂わせるわ。
やっぱり貴方は最高よ……もう絶対に離さない。決して逃れられないように、
あらゆる悦びを貴方の体に刻み込んであげる……」
妖艶な笑みが令に向けられる。その言葉は令を奪い尽くすという意味に等しい。
だが令は、それに恐怖など感じない。
いや、恐怖どころか正反対の感情すら浮かんでいるのを否定する事ができなかった。
そう、令の体はすでにセネアが自分に与えてくれる快楽をどうしようもないほど望んでいるのだ。
そしてセネアは体を上げ、令をまたぐように膝立ちする。

「それじゃあ令、もう……いいわね?」
問いかけるような言葉とともに、セネアは自身の股を隠すように両手を当てる。
令はそれを見てセネアの言葉の意味を悟った。一瞬戸惑うようにそして自分を見つめるセネアを
見上げた後、覚悟をきめたようにこくんと頷く。
令の同意を確認したセネアは、静かに流れるような”力ある言葉”を口にした。
そう、これは予想通り魔の秘術。令の意識が初めてセネアに抱かれた時の記憶と重なる。
股に掲げた腕の中に紫色の光が集まり、風もないのにセネアの髪が静かに揺れ始める。
令には理解できない言葉を発するたびにセネアは額から汗を流し、
その汗が白い肌を伝って流れ落ちる。その姿があまりに淫靡で、そして美しい。
「……!」
最後の言葉を吐いた瞬間、セネアの体がびくんと震えた。同時に手の中で輝いていた光が
静かに収束していく。
そして荒い呼吸が整うのを待ってから、セネアはゆっくりと手を離した。
「うぁ……」
その手のがどけられると想像通りのものが中から現れ、令は感嘆の言葉を漏らす。
”それ”は言うまでもなく男の性器。セネアの秘部からぬらぬらとした液体で濡れたペニスが、
始めから張り詰めるような勃起をともなって生えていた。
ただ前と違うのは、それがクリトリスを擬態化させたあの肉の棒ではなく、
袋が無い事を除いて完全な男性器の姿をしていた事だ。その先から微かに分泌物が顔を出している事が、
”それ”が生殖器として一番重要な機能までを完全に備えているのを意味していた。
「どう、令? これを見るのは随分と久しぶりなのではなくて?」
「あ……う、うん、まぁ……」
セネアがそれを見せつけるように手で軽く持ち上げるが、令は曖昧な返事をするしかなかった。
和真のを見たとも言えないし、それにあの男たちにレイプされたのはセネアも知っているはずだから。
セネア思わず顔を傾ける。令の態度が想像以上には期待外れなものだったからだ。
だが、その困ったような顔を見て、セネアはようやく”令が”別な事”を考えているのを悟った。

「そういう意味じゃないわ。男のモノならあの工場跡で犯された時にも見たでしょうに」
「……え?」
「私が言いたいのは、これが”令にとって”懐かしいものじゃなくて? といってるのよ」
セネアの曖昧な言葉の遊びを、令は必死に汲み取ろうと思案する。
あえて答えを言わないという事は、セネアは令の側から気が付いて欲しいという事なのだろうから。
−僕にとって? それが僕にとってという事って……僕……僕以外の人には……僕にだけ…………!?!−
思考があっさりと恐ろしい仮定を導きだす。一瞬何を馬鹿なという否定も浮かぶが、
そうであったと仮定した場合、実に見事にセネアの言葉との整合が取れる。
令は目を見開きセネアを見上げた。
「……ま、まさかそれって!!」
そんな令をを見てセネアがようやく気が付いた? とばかりにくすりと笑った瞬間、
令はその事を確信した。そう、こんな角度で見た事は一度もなかったが、これは間違いなく……
「そう、元々は貴方のだったものよ。まごう事なき”男の令”のペニス……」
それは思いがけもしない、あまりに唐突な自分自身との再開。
令は言葉を失ったまま、セネアの秘部から生えたそれを呆然と見ていた。




なにか信じられないものを見るように、令はしばらく固まったまま”それ”を凝視していた。
そんな令に、しばらくは見られるがままにしていたセネアだったが、
さすがに何もしない令に痺れを切らしたのか、その手を引いて体を起こさせ
ベットの上に正座するような形で令をひざまずかせる。
「さわってみたら? 元々貴方のものだったんだから、恐がる必要もないでしょうに」
セネアが兆発するように腰を令の眼前に持ってくる。
そのペニスが自分の眼前に添えられ、令は自身の動悸が自分の耳にも聞えるぐらい
激しくなっていくのを意識した。
−僕の……ペニス……?−
震える手を少しずつ前に進めるも、どうしても躊躇が生まれてしまう。
これまでの人生では感じた事もない葛藤が、令の意識をこれ以上ないぐらい混乱させていた。
そもそも”他人のペニスに触る”という行為自体が、まだ男の価値感を残している令にとって
強烈な拒否衝動を生む。しかしそれが元々自分のモノであったという事実、
そして今はセネアのものであるという事実がそれを曖昧なものにする。
元々自分のものとはいえ、あえてそれを触りにいく……?
今はセネアのものであるとはいえ、自分からペニスに触れようとする……?
そんな葛藤が令の頭の中で堂々巡りし、その両手はあと少しという所で
震えて止まったままであった。
が、そんな令の手を突然セネアがぱっと掴んだかと思うと、
有無を言わせる間を与えず自身のペニスに添えさせてしまう。
「……あっ!」
一瞬反射的にびくんと手を跳ね除けようとする令だったが、
時すでに遅く、指でしっかりとペニスを包み込むように触れてしまっていた。
そしてゆっくりとセネアが手を離すが、令の指はペニスから離れる事はなかった。

「これが……僕の……」
結局触れてしまった途端、令の手の震えは止まってしまった。
令の中の葛藤が触れたという結果の前に全て無意味なものとして消えうせてしまったからだ。
そして久しぶりに触れた”それ”に、令の心が奇妙な感慨に捕らわれる。
「そう、令にとっては溜まった夜にベットで握り締めて何度もオナニーした時を思い出す、
懐かしい触りごこちでしょう?」
「そ、そんな事……! ある……わけ……」
からかうようなセネアの言葉に反論しようとするも、そのまま声は小さくなってしまう。
令も当然相応の年齢だった訳だから自慰を経験していない訳もないし、
今感じている感慨に”感触”がないという訳でもなかったからだ。
そういう反応を経験がある相手には決して誤魔化せないのを、皮肉にも令はよく理解している。
結局は動悸が収まらぬまま、視線を再び自身の手に戻した。
−すごい……硬くて……びくびくふるえてる……−
改めて”それ”の感触を意識すると、自然に鼓動が高まってゆく。
かつて自分のものであったそのペニスが、今はセネアのものとして令の前にある。
実際には肉体を略奪されたに等しい光景。だが令の心に空虚な気持ちが浮かぶ事はなく、
それどころか奇妙な感情が動悸となって鼓動を高めてゆく。
−すごく……熱い……−
それは自分のものへの懐かしさ、セネアへの愛しさが混ざり合ったような奇妙な感情。
色々な感情が入り混じって、令の心が形容しがたい興奮につつまれる。
そして令は、静かに手を動かした。
「……っつ!」
セネアがかすかに身をよじる。それが合図のように、令はゆっくりと手を前後に動か始めた。
「ふあっ……れ、令ったら、そんなに……懐かしい?」
軽く息を切らせ、セネアが令にからかうような声をかける。

だが令は、その声にいつもの余裕がない事を無意識のうちに感じ取る。
これまで散々なぶられたが故だろうが、性的な興奮を与えられる側の立場の事は手に取るようにわかる。
ほんの少しの声と息が、これまでとまったく違うものであるのが令にはすぐ理解できた。
そう、間違いない……セネアはこの快楽を完全には制御できていない。
「そんなに……ふっ! は、激しくしなくても……いいのよ……んっ……」
強がってはいるが、セネアは明らかに今まではない艶が混じった息を吐いている。
だが令の手はその声を聞く度に何かにとり付かれたかのように勢いを増していく。
−もしかして僕が……僕がセネアさんを悦ばせてあげられる?−
よもやセネアがそのような鱗欠を見せるなどとは考えもしなかった。
だが、今セネアは間違いなく感じているのだ。令の心に最初は驚きが、そしてその後歓喜が沸き起こる。
その興奮が頂に達した頃、令は唐突にその手を掴まれ、それを止められてしまった。
「もう……いいわ。次は令を……」
笑みを浮かべながら、セネアは令を制止する。しかし興奮していた令の意識は、
”それ”を止めたくないという思いで溢れていた。
手を押えられている、しかしそれは手でなくては出来ないものでもない。
いや、それ以上の方法が……ある。
しかしそれは男としての拒否反応や羞恥心が邪魔をする。だが今を逃してはチャンスはない。
自分の怪我した指を舐めるようなものだ、まして相手は……そう、それはセネアのものなのだから。
そんな風に沸き上がった葛藤を興奮が全て肯定的なものに変えてしまう。
「……令?」
固まってしまった令にセネアは不思議そうに声をかける。そんなセネアを軽く見上げた後、
令はゆっくりと顔をセネアのペニスに近づけていった。
「れ、令!? ……はううぅッ!!」
令の舌が軽くセネアのペニスに触れた途端、セネアはびくんと体を震わせる。
そのまま令は多少の躊躇を見せながらも、ゆっくりとそれを口にふくんだ。

「そんな……れ、令! やめなさ……ふああっ!! や、やめ……ッ!!」
静かに抽挿を開始すると、セネアは今まで聞いた事もないような甘い声を出す。
それがまた令をどうしようもないぐらい興奮させていた。
−僕がセネアさんを……セネアさんを鳴かせている!!−
久しぶりに責める側の歓喜を体感した令は、そのままさらに責めを激しくする。
当然こんな事をやった経験なそ無いが、どうすればいいのかはわかっていた。
かつて自分が自慰の時に思い浮かべていた事、自分はどうして欲しかったのかを考えれば良いのだ。
裏スジ、カリと、令の舌が優しく舐め上げてゆく。自分の気持ち良かった場所を思い出しては責めてゆく。
一方のセネアは意外な事態に慌てていた。
こと、”性感”というものに関しては完全に制御が可能なぐらいの経験と能力を持っている自分が
何故か快楽を制御できないのだ。原因は簡単、このペニスである。
とはいえ、こういう淫術によるペニスの快楽に慣れてないという訳ではない。過去にこのような
性交を何度も行った事はあるし、当然その時にこのような事態はなかった。
だが今回は、一つだけ違う事があったのだ。
それが令のペニス……つまり童貞の持ち物であったという事。
いくら快楽制御の術を知っているセネアであっても、”童貞の快楽への脆さ”までは制御できなかった。
自然に腰が落ち、ベットに尻をつく。手で令の頭を押しのけようとするも力が入らない。
それどころかいつのまにか押し付けるような形になってしまう。
「やめなさい令……あくうぅッ、駄目、この……ままじゃ……ふあっ! やめ、やめて!!」
ついにセネアは令に懇願してしまう。だが初めてみるセネアの脆い部分に令は興奮し、
それを止めないどころか一気にペースを上げて、とどめとばかりに責めたてる。
そして限界があっさりと訪れた。
「ふあぁっ、そんな、私がこん……なこと…………くっ、ふあああああぁぁッ!!」
「……んふッッッツ!!」
セネアが悦びの声を上げた途端、腰とペニスがビクンと震え、令の口内に熱いものが注ぎ込まれる。

しばらく快楽の余韻に荒い息を吐いていたセネアだったが、射精が落ち付いてきたころに
令の頭から静かに手を下ろした。
そして令は口内に注がれたセネアの精を自らの意思で飲み干し、静かに顔を上げる。
−自分の……じゃないよな。あくまでセネアさんの精だから……−
そんな事を考えながら、令は呆然としているセネアを見つめる。
しかし……セネアの顔に少しずつ表情が戻ってきた途端、令は−もしかして自分はとんでもない事を
やってしまったのでは?−と思い始めていた。嫌な予感が背筋を駆け巡る。
思わずこのまま逃げ出そうかと思って腰を浮かせた瞬間、セネアに勢いよく飛びかかられた。
「……やってくれたわね令。私にあんな声を上げさせるなんて……」
案の定、セネアは凄い形相で令を見下ろしていた。”凄い”というのは、それをどう言っていいのか
わからないからだ。怒りと笑いを合成したような、そんな妖艶な感じと言えばいいのだろうか。
だが令はこんな顔を知らなくはない。前に静奈の着替えを見てしまった時に
彼女が事態を把握した後に浮かべたあの顔……あれと同じ顔だ。
もっともあの時は直後にモンキーレンチが飛んで来て、次の日の朝まで意識がなかったのだが。
つまり事態は決して令にとって良い方向ではないという事。そんな顔でセネアがゆっくりと口を開く。
「本来なら私に恥辱を与えた者など生かしておかないわ。だけど……」
セネアは意味ありげに言葉を切る。結局雰囲気に耐えられず令は口を開いた。
「だけど……?」
「貴方は当然殺さない……けど、もう許さない……今日はもう手加減なんかしてあげない!」
いつのまにか”楽しんでる”顔になって、セネアは令を見据えていた。
「気絶するぐらい感じちゃったら、さすがに止めてあげようと思ってたけど、もうダメよ。
今夜は日が昇るまで絶対に止めないわ。時間の続く限り鳴かせ続けてあげる!」
セネアは令のお尻に手をかけたかと思うと、そのままショーツを掴んで一気に引きぬき投げ捨てる。
さらにパジャマの上着も抜き取られるように脱がされたかと思うと、
そのまま足を左右に広げられ、上に圧し掛かられた。

セネアの見事な手際で、令は一気に全てを晒す事となる。それ自体は今更な事だと思った令だが、
やはり内心恥かしいという気持ちを捨て切れないのか、無意識に顔が火照るのを止める事が出来ない。
そんな赤く染まった令の顔に、セネアがゆっくり顔を近づける。
「さあ令、契るわよ。覚悟はいい?」
その言葉に、令は唐突に忘れていたこの行為の意味を思い出す。
そう、これが最後の一線。これを越えると多分もう戻れない。
それをあえて聞くのは、単なるセネアの気まぐれか?
もしかしたら、令が拒否すれば彼女は行為を止めてくれるかもしれない。
しかし……もう答えは決まっているのだ。令はゆっくりと口を開いた。
「……いいよ、セネアさん……きて……」
令はセネアに答えるように、微笑みながら静かに頷いた。




「……んふッツ!!」
秘部にペニスが当たる感覚に令は息をつまらせる。
これから訪れるのは、もう何度となく経験してきた”抱かれる”という感覚。
男の自我が一番恐れるのがこの感覚だとすれば、逆に令の男を一番崩壊させたのもこの感覚だ。
どんなに理性を保とうとも決して抗えない圧倒的な快楽、それがこの”抱かれる悦び”だった。
そして……いよいよ”それ”が令の中に侵入を始める。
さすがにもう何度も経験した感覚ゆえ、痛みや恐怖は感じない。
抱かれる感覚に慣れたという事自体、令の”男の意識”にとって不本意ではあったが、
それ故せめて最初の挿入が終わるまでは声を出すものかと、シーツを握って喘ぐのを耐える。
だが、そんな意識に反して突然、令の体がびくんと跳ねた。
−な……! なに……これ!!−
同時に信じられない感覚が令の体を襲い、その身が総毛立つ。
セネアが少しずつ令の中に入ってくるにつれ、体が信じられない勢いで発情していくのだ。
今までも奥まで挿入された瞬間に軽い絶頂とをともなうような快楽が襲う事はあった。
だがセネアは今、令をいたわるようにゆっくりと挿入をしている途中にすぎない。
いつもの感覚ではない……この交わりは何かが違っていた。
「あふっ、あ、ああぁ、やぁああ――ッ!! せ、セネアさんこれって……ひゃあああぁあッ!! 
や、やめ……お願い止めてえぇ!!!」
腰をびくびくと震わせ、狂ったように首を振って令は絶叫する。
だがセネアは令の懇願を無視し、腰をしっかりと押えてゆっくりと令の中に侵入を続けた。
−違う……か、感じすぎる! このままじゃ…………そ、そんな! 入れられただけで!!−
「ああぁ……ッ! あ、やめ……セネアさ、あ、あああああぁぁ――ッ!!」
あまりに急激すぎる高まりに、令は言葉を発する事すらままならない。
そしてセネアのペニスが歩を進めるごとに、それは確実に増幅されてゆく。
それは今まで令が経験した、どの快楽とも違っていた。

女の体は快楽の頂点こそ男よりも遥かに深いが、それが燃え上がるまでのスピードは男より遅い。
それでもセネアや静奈のような技巧を持ってすれば、ある程度勢いよく絶頂まで導く事は可能だ。
だがこれはあまりに異質……早漏の男でもかくやという次元の速度だ。
令は女の快楽をこのように急速に高まるなど、とても信じられなかった。
だが自身の体は紛れもなくそれを感じている。このままでは……
そんな令の心を見透かすかのように、セネアが令を見下ろしていた。
令がそれに気がついた途端、セネアはくすりと笑う。
そして一瞬間を置いた後、令の体にずんっ! という衝撃が走った。
「ふああぁっ! ああああああああああぁぁ――――ッ!!!!」
刹那、令は体を弓なりに仰け反らせて絶叫する。
それは紛れもなく達した雌の悦びの叫び。令の体は本当にたった一突きで絶頂まで導かれてしまった。
子宮がきゅうっと収縮する感覚にびくんびくんと体をふるわせ、その口から一筋の涎が落ちる。
あまりに急激に与えられた絶頂に、頭がその快楽を理解しきれていないようだった。
次々に与えられる未知の快楽、これこそが令を女の悦びに縛り付ける肉の記憶となる。
しかし……令は時が経つにつれ、それがまだ終わっていない事に気が付いた。
−あ、熱いのが……熱いのが収まらない!! こんな……こんなのって!!−
頂点まで達した快楽が、全然体の内から引こうとしないのだ。
体がイった時の熱を持ったままの状態で、令の悦楽は固定されてしまっていた。
「あぁ……セネアさん、これ……これは何……なの? 熱い……熱いいぃぃ!!
ぼ、僕の体が……あくうッツ! あふううぅぅ……ッ!」
「頂点から降りられないんでしょう? 当然よ、なにしろこれは”令のモノ”なんだもの……」
「ぼ、僕……の……?」
今なお収まらない快楽に身悶えさせながら、令は意味ありげなセネアの言葉に問う。
「令、貴方は身体の相性がある事を知っていて?」
「あうッ、くうぅっ……身体のあい……しょう? はふぅんッ!!」

なんとか応対するも、頂点に近い快楽を体に抱えた状態では思考もままならない。
そんな令の状態を察してか、セネアはそのまま言葉を続けた。
「男と女の身体って相性があるのよ。俗な人間は男なら大きさとか長さ、女なら名器がどうって言うけど、
そんなものを超越した身体の相性がね。これの前にはどんな技術や経験も霞んでしまう事があるわ。
ところがね、性を変えた相手には確実に最高の相性を与えられるものがあるのよ」
そこまで言われて令にもようやく話が見えてくる。
セネアがあえて令のペニスを使ったのは、ただのからかいや心理的な嬲りのためではなかったのだ。
セネアの言う相性……つまり今まさに令を貫いている自身のペニスがこの状態を作り上げているという事。
「人の身では決して味わう事のかなわない至上の相性が織り成す快楽よ。効果の程は……言うまでもないわね」
令を見つめ、セネアは淫靡に笑う。奥まで挿入されて身体を震わせて快楽に耐えている今の令は、
肌に触れるだけで達してしまうのではないかというぐらいの雰囲気をただよわせていた。
「けどね令、貴方は多分勘違いをしているわ」
「……?」
セネアの言葉に令は息絶えだえになりながらも耳を傾ける。
「この快楽はあくまで肉の相性によって底上げされた底辺にすぎない……どういう事かわかる?」
その言葉に嫌な予感と期待が同時に背筋を走った。こういう風にセネアが意味ありげな問いの後、
令の身体に与えられるのは大抵決まっているからだ。言葉だけで体がびくりと震え、
思考がおぼつかなくなる。もう令の身体はすでに答えを知っているようだった。
そして思考の方でもようやくその意味を悟る。
−つまり……この状態からさらに”絶頂”に向って快楽を与えられる……?−
信じられなかった。いや、信じたくなかった。今でも気が狂わんばかりの快楽に翻弄されているのに、
そのさらに上の快楽など与えられてはどうなってしまうのか……かすかな恐怖が令に走る。
だが……それと相反するように令の中で”期待”が生まれている。
そして令がそれを悟ったのを察したセネアは、静かに口を開いた。
「さあ令……悦びなさい!」


セネアの腰が動き抽挿が開始される。その途端、令の身体が再び発火した。
「ふあッ! あああああぁぁ――ッ!! ダメ、こんな……ひゃふッツ!! ああああああぁぁ――――ッ!!!」
抽挿のたびにとてつもない快楽が令の身体を蹂躙する。
これまで絶頂を迎える次元だと思っていた領域の快楽を底辺として、令の身体に襲いかかったのだ。
それは挿入のたび、子宮口を突かれるたびにイってしまうようなもの。
だがイきたいのにイけない。意識が絶頂を感じているのに身体がそれを絶頂だと思っていないのである。
そしてそれを証明するかのように、身体はさらなる領域に向って高まっていく。
それはオルガスムスが束になって上乗せされるような、そんな感覚。
−こんなっ!! こんな快楽……僕、壊れ……壊れちゃううぅ!! あくッ、ふあああぁッツ!!−
もはや心の中ですら喘ぎを上げる事しかできないぐらい、悦びが令の身体を侵食してゆく。
耐えず獣のような叫びを上げ続けさせられ、突かれるたびに身体がベットの上でバウンドする。
もう令の全てがセネアから与えられる快楽に支配されていた。
「ふふっ……どう令? 貴方の今まで感じてきたものなど所詮はお遊びだって事が理解できたでしょう?」
セネアの言う通り、すでにこの快楽は次元が違う。白い光が何度も爆発するような感覚の中で、
令はこの信じられない快楽に過去のあらゆる肉の記憶が書き換えられてゆく錯覚を覚える。
女になってすぐ、令は自慰で女の悦びを知った。
それは男の絶頂など比較にならぬ快楽。その直後、令はセネアに処女を奪われた。
その後、様々な形で女の悦びを身に浴び、何度となくイき、そして果てた。
そして今、再びセネアに抱かれている。これまで令に刻み込まれたありとあらゆる快楽を下地にして、
その全てを上回る悦びを与えられて……。
二度と消す事の適わない絵の具を身体に染み込まされていくようなイメージが心に浮かぶが、
もう令の身体はそれを否定する事は出来なくなっていた。
「きゃふううぅッ!! あっ、あ、あ、あああああぁ―――ッ!! ふひゃうっ! きゃうぅ!!」
もう身体が言う事を聞かない。爪がシーツに食い込み、足の指が突かれるたびに握られる。
腰と首がバネ仕掛けの人形のように跳ねるたびに汗が落ち、そのふくよかな胸がぷるんとふるえる。

口から悦びの叫びが漏れるたびに、その白い足が痙攣するようにびくんびくんと暴れ、ぴんと伸びる。
「可愛いわよ令……くッ……すごくいやらしい顔してるわ……あふッ……」
「そ、そん……きゃああぅッ! ひゃあっ、あ、ああ、ああああああぁぁぁ―ッ!!」
もう簡単な反論すらままならない。令のありとあらゆる感覚が、女の悦びに支配されていた。
そんな暴力的な悦楽の宴が延々と続くかに思われたが……
白濁した意識の中、令はいよいよ”それ”が近づいているのを悟った。
頭の中、幾重に爆発する小刻みな絶頂の光の中に、今までにないぐらい強く発光する小さな光が浮かんでいる。
それが少しずつ大きくなるにつれ、身体がいよいよ限界を訴え始めたのだ。
多分その光が、この積み重なる快楽の絶頂であると令は無意識のうちに理解する。
今ですらギリギリのところで意識を保っているのに、この快楽が爆発したら……
そう思った刹那、不意にセネアが令を呼びかける。いつのまにかセネアの息も随分と荒くなっていた。
「さあ、令……もう、すぐ……イクわ。んっ……あ、貴方にとって……」
セネアが息の続かない状態で必死に言葉をつむぐ。あまり見られないセネアの顔……
ほんの微かな沈黙の後、令はふとその事に気が付いた。
今、至高の相性を持って体を交じらわせているのは自分だけではない。
相手にそれを与えるという事は、自身もそれに晒されるという事。
交わりの悦びに身体を暴走させられていたのは、令だけではなかったのだ。
そんなセネアが必死になって言葉を発しているのを、令はなんとか意識を保って聞き入る。
「貴方にとって……これが……最後の、あくぅッ! ……選択肢よ。時間は……ない……わ」
朦朧とする意識の中、令はセネアの言葉の意味を必死に理解する。
最後の選択……この行為の最後に待っているのは、契約の施行。
令に女である事を求めるそれは、この契りの果てにセネアを受け入れる事で完了する。
そしてその選択権を、土壇場でなお令に委ねているのだ。
それを理解した途端、令の中にあった”男としての自分”が叫びを上げた。

−時間がない……今ならまだ間に合う……早く、早くその女を押しのけろ……!−
それはもう一人の”自分”からの命令だった。いや、その声の主こそ本来の令なのかもしれない。
令の手がぴくりと動き、握っていたシーツから離れる。
−早くしろ! 急げ、急げ!−
快楽に必死に抗いながら足を静かに折り曲げる。全ては無意識の行動だった。
それは抵抗できないと思われた女の悦びすら跳ね返しかねない力を持って、
令の体を動かしにかかる。
−早く!早く!!!−
令の意識はすごい勢いで”男の自分”に引き戻されようとしていた。
それは当然の流れ、当然の感情だろう。元に戻りたいという心を否定する事などできない。
さらにこれは最後のチャンス、これを逃せば多分その機会は二度と訪れない。
ましてセネアも令にその選択を委ねたのだ。それはその選択を許すと言っているに等しい。
迷う必要なんて……ない。あるはずがない。
しかし…………それを決断したかに見えた令の動きが突然止まった。
「僕は……僕は……」
動くのを止めた事に、男の意識が悲鳴を上げるように令の心に突き刺さる。
何故止める、何故拒絶しようとしないのだと。心が葛藤で押し潰されそうになる。
しかし令の気持ちは、もう決まっていたのだ。
「セネア……さんっ!!」
引いた手足を、令は一気にセネアに絡めた。腕をセネアの背中に回し、足を腰の裏でクロスさせる。
それは最後の選択を……セネアを受け入れる事を了承したという証。
その”気持ち”は、男の令の意思すらはねのけた。そう、それはセネアが好きだという気持ちだ。
セネアが最後、自分にそれを委ねてくれたがこそ、令はその気持ちを踏みにじりたくなかった。
そしてセネアはそんな令に一瞬驚いたように、そして涙を浮かべて優しく笑う。
「そう……ありがとう令。じゃあ…………いくわよ!!」

そのまま一気にピストンが加速する。令の中に浮かんだ光が、いよいよ限界まで脹らんできた。
互いに荒い息を上げながら、いよいよ最後の瞬間にむけて互いを高めてゆく。
「あッ!あああぁッ!! もうダメっ!! イく……セネアさん僕もう!! ひゃふううぅッツ!!!」
「私もっ……もう限界よ……イくわ、令の中にいっぱい出してあげる!!」
二人の声とともに、激しく腰を打ち付ける音が部屋に響く。
もう戻れない。全てを雌の本能に委ね、令はしがみつくようにセネアに抱き付いた。
息が一気に荒くなる。声のトーンがさらに上がり、身体が頂点が近いのを感じて奮えだす。
そして令を貫いているセネアのペニスが、いよいよ限界の鼓動を刻む。
「令っ! れいっッ!! ……くあぁっ、さ、さあ、イって……しまい…………なさいっ!!!!」
全てを見計らって、セネアがとどめの一突きを令の中に叩きこんだ。
刹那……令の”女”がついに爆発した。
「ふああっ、ああああああああああぁぁぁぁ―――――――ッッツ!!!!!」
子宮に熱いほとばしりを受けた瞬間、腰を弓なりに仰け反らせ獣のような叫びを上げる。
令はついに、この果てしない悦びの頂に連れてこられてしまった。
精が注ぎ込まれる感覚に、膣が喜ぶようにきゅうっと収縮してセネアのペニスを締め上げる。
これまで受けたあらゆる快楽を上回る悦びが、令の頭の中から足の先まで一気に駆け巡り、
全ての感覚が快楽に置き換えられ、支配された。
悦びで体が震える……身体が、そして心が雌の悦びに歓喜しているのだ。
令はその手でセネアを痛いほどに抱きしめる。子宮が満たされる感覚に
言い様のない満足感を感じながら、ようやく女の悦びを理解したような気がした。
そして絶頂の快楽が静かに引き始めると、糸が切れたようにどさりとベットに脱力する。
荒れた息を吐きながら視線を上げると、セネアが満足そうに令を見下ろしていた。
「これで……契約は成立よ。貴方はもう私のもの……」
「うん……そうだね……」
セネアの言葉に令は優しく頷く。そう、これは令が選んだ道なのだ。
男の人生に未練がないと言えば嘘になるかもしれない。しかし今、令にはそれ以上に大切なものがあった。

見下ろすセネアに、令は返すように微笑む。そう……後悔はしていない。
「セネアさん…………好きだよ」
自然と言葉が口から出た。セネアはそんな令に優しく笑う。
しばしの間、二人は静かに、そして優しく見詰め合っていた。
が……突然令は腰を掴まれるや否や、一気にうつ伏せにされるたかと思うと後ろから抱きおさえられる。
甘い雰囲気から一転して突然の行動に及ばれた令は、派手に慌てふためく。
「せ、セネアさん!? な、何!?…………!!!」
首を後ろに向けてセネアの顔を見た途端、令はそれに気が付いた。
あの顔、そしてあの瞳……そう、セネアの瞳はいつのまにかあの”獲物を狙う目”をしていたのだ。
「さて令、私言ったわよね……今夜は許さないって。時間の続く限り鳴かせてあげるって」
「あ……」
指摘され、令はようやくあの悪戯心がやってしまった愚行を思い出した。
絶頂の悦びの中ですっかり忘れてしまっていたが、なにしろ淫魔であるセネアに、
性的な部分でプライドを傷つけたのだ。セネアは覚えていて当然だろうし、許してくれる訳などあろうはずがない。
そんな青ざめた令を無視するように、セネアのペニスがピタリと令にあてられる。しかしそこは……
「そ、そこ違うっ! それに……ダメ! まだ、まだ身体が……すぐはダメえぇ!!」
ペニスがあてがわれたのは、なんと菊門だ。しかもまださっきの絶頂の余韻が冷めていない。
まだ敏感なままの身体にこれ以上の快楽を加えられるなど、絶対に耐えられそうになかった。
「駄目って言ったのに止めてくれなかったのは誰かしらね? 大切な人のお願いを無視する人には、
罰が必要だと思わない?」
何故かセネアは嬉しそうに笑っていた……いや、見た目だけで多分怒っている。
自分の事を棚に上げて……などとは言えるはずがない。ギャクでも言える雰囲気ではない。
ある意味ストレートに怒られるのより100倍恐い状況だ。
「ご、ごめん! もう、もうしないから……セネアさん、だから……ね?」
「ふふふ……駄目!!」
「まっ……やあああああぁぁぁ―――ッ!!!」

セネアが(青筋浮かべた)笑顔のまま容赦なく令の後ろを貫いた。
途端に令はびくんと身体を仰け反らせ、軽くイってしまう。
「さあ、朝まで何回イけるか試してあげる! まずはお尻で……イっちゃいなさい!!」
「やああぁぁッ! いきなり激しくしな……あくううぅっ!! あああああぁぁ―――ッ!!」
セネアが腰を振り始めた途端、令はもう鳴かされイかされ続ける以外に何もできなくなった。
当然そのまま絶頂まで一直線。結局この晩、令はあらゆる体位で何度となくイかされ続ける事になる。
セネアに貫かれ、喘がされながら、令はちょっぴり自分の判断を後悔したくなった。




朝の光がカーテンの隙間から差し込んでくる。少し気だるい、静かな朝。
少しずつ覚醒する意識の中、令は目をこすって視線を時計に移す。
−7時……か。起きなきゃ……学校、遅刻しちゃうもんな……−
寝ぼけた意識で静かに身体を起こすと、かけてあったタオルケットがはらりと落ちた。
見ると自分は寝ていたのにパジャマを着ていない。それどころか下も履いていなかった。
−あ、あれ? 僕……何? なんで?−
いつもの朝とは違う奇妙な自身の状況に戸惑いつつ、なんとか平静を保つ。
寝ぼけた頭でなんとか記憶を整理し、どうして自分がこんな状況にあるのかを考える。
−えっと、昨夜は……その……学校から帰って…………帰って? あれ?−
なにか大切な事を忘れているような気がして、大げさに頭をかかえてみた。
そして唸るように首を傾げた途端、視界の端に見慣れぬ何かが一瞬姿をかすめる。
静かに、そしてゆっくりとそちらの方に首を向け……ようやく令は、全て思い出した。
「おはよう、お寝坊さんなお嬢様」
セネアが妙に嬉しそうな顔で令をからかうように挨拶する。どういう原理かわからないが、
セネアはベット脇の明らかに何もない空間に足を組んで”座って”いた。
「起こそうかなって思ったけど、寝顔があまりに可愛いだもの。時間を忘れて見入ってしまったわ」
どこまで本気かわからない口調でセネアはくすくすと笑う。
最初は昨日の艶事を思いだして顔を赤くしていた令だったが、
結局寝坊の原因を作ったのがセネアである事までを思いだし、そのままふくれる。
「まったく……誰のせいなんだか……」
「もう、怒らない怒らない」
ふてくされた令の唇に、セネアがつい立てをするように人差し指で触れる。
そのまま二人は無言で見詰め合っていたが……結局令が根負けした。
諦めをアピールするように溜息をつき、しょうがないなという感じで苦笑する。
そんな令にセネアは満足そうに頷いた。

「ま、起き掛けで不機嫌はしょうがないわね。コーヒーでも持ってきてあげるわ」
「あ……う、うん、お願い……」
軽くとんっ! と宙から足を下ろすと、セネアは軽い足取りで部屋を出ていく。
扉がぱたんと閉まってから、令はその違和感にようやく気が付いた。
−ここ……僕の家だよね?−
令はまるで自分の家であるかのようなセネアの振るまいにちょっと呆れる。
らしいと言えばらしいのだが、納得していいやらどうなのやら……。
まあ好意の行動には違いないのだからと納得し、令はベットを降りた。
そのまま脇の着替えが入っているタンスの前に立ち、引き出しを開ける。
さすがに裸のままではちょっと恥かしいから、セネアが来る前に着替えておこうと思ったからだ。
しかし……開けた途端、令はそのまま絶句し、間を置いて深い溜息をつく。
「姉さん……以外いないよな。こんな事するの……」
着替えを取り出そうと、いつもの引き出しを開けた令の視界に飛び込んできたのは、
綺麗に並ぶブラとショーツだった。
一瞬見なかった事にして引き出しを戻そうとしたが……少し思案した後、
結局その中から一番手前のブラとショーツを取り出した。
−姉さんに、手抜かりがあるはずないしな……はぁ……−
多分もう静奈は、この部屋にあった男モノの下着なんかはみんな隠すか処分してしまっているだろう。
もう令がこの部屋から出るには、裸か女モノの服を着るしかないという状況ではなかろうか。
やるからには徹底的にやる、そういう姉の性格は令が一番良く知っている。
それにもう……悲しいかな、こういう女モノの下着を着るのにも慣れてしまった。
恥かしさや葛藤は相変わらずあったが……。
観念して令はショーツに足を通した。このピタリとしたフィット感は相変わらずだ。
そのまま次はブラのストラップに手を通し、背中に手をまわす。
「後はこれを……あ、あれ? えっと……」


ところがうまくホックがかからない。困った令は部屋を見まわし、あの大きな鏡の存在を思い出した。
そのまま鏡の前に立ち、反対に写る自分の姿に悪戦苦闘しながら何とかホックを止める。
「ふぅ……」
ようやく一息ついたという感じで令は肩を落とす。その時、ふと視線が鏡に向いた。
そこに写っているのは、まぎれもなく一人の女の子。
「これが……僕、なんだよ……ね……」
鏡に映る自分の姿に、何か言い難い複雑な感情が交錯する。
ほんの数日前に狂ってしまった人生のベクトル、その結果がこの姿だ。
だけど今はその事を恨めしく思っている訳でもない。昔の自分に未練がないと言えば嘘になるが、
今ではこれも悪くないと思い始めている。昨晩の気持ちに嘘はない。
もう十何年も男として生きてきたから、この心を完全に女にするっていうのは難しいし、
多分これからも当分はこの身体の感覚に翻弄され続けるだろう。
それでも令の心にはあまり不安はなかった。
「あまりに突飛な人生だっていうのは確かだけど、まあ悪くもないのかな?」
鏡の中の自分に語りかけるように何気なく自分に問い掛けてみる。
令はそんな常識ではありえない事態にも冷静にいられるようになった自分が少し可笑しかった。
何かを納得するように軽く頷いた後、令は壁にかけてある制服のインナーシャツを手に取る。
そしてそれに袖を通そうとした時……唐突に食器が割れるような音が下から聞えた。
「あれ……セネアさん?」
一瞬令は不慣れな台所でセネアが粗相をしたのかと考えたが、それにしては音が派手すぎる。
それにセネアはそういうドジをするようなタイプにも思えない。
何かイヤな予感がした。そう、何か大切な事を忘れていたような気がする。
令は急いでインナーシャツだけを羽織ると、そのまま慌てて部屋を出た。
昨夜の疲れでもつれる足をなだめるように階段を下り、居間への扉を開ける。
そのまま現場である台所に駆け込んだ時、令はようやく自身が失念していた事を思い出した。


「あ……」
目の前でセネアと静奈がテーブルを挟んで対峙している。当然仲良く世話話などという雰囲気ではない。
セネアは多少嘲笑じみた笑みで静奈を見やり、対して静奈は露骨な怒りの顔でセネアを睨んでいた。
そして静奈の手には、日本人にはテレビや映画の中でしか縁のない道具……拳銃が握られている。
静奈がどこでそんな物を手に入れたのかはわからないが、少なくとも玩具ではないだろう。
何よりセネアの左後ろにある食器棚の皿が爆発したように砕けているのがそれを証明していた。
「ね、姉さん! いったい何を……!」
「令……こいつがセネアなんでしょう? あなたを変えた張本人の」
銃口が静かにセネアの方に向けられる。静奈の目は本気だった。
「あなたが何者かは私は知らない。令は悪魔だと言っていたけれど、そんな事はどうでもいいわ。
ただ……あなたは危険すぎるのよ!」
爆音が部屋に響く。刹那、今度はセネアの右側の食器棚のガラスが砕け散った。
一瞬間を置いて、令はようやく静奈が発砲したのだと理解する。
「姉さんやめて! そんな物騒なもの降ろしてよ!!」
令は叫ぶが、静奈は動じない。彼女は令の方に向き直る事なくセネアを睨みつけていた。
「令、この女は危険すぎるわ。あなた自分の身体に起こった事がどういう事なのか理解している!?
こんな事ができる存在など、人が関わってはいけないのよ!!」
今度は明らかにセネア自身に照準を合わせ、静奈は叫ぶ。
間違いなく静奈はセネアを殺す気だ。その目がそれを雄弁に語っていた。
だが、目の前の人物に生殺与奪の権利を握られているはずのセネアは、
相変わらず余裕を持った笑みで静奈を見据えているだけだった。
そんなわずかな膠着時間の後、セネアが口を開く。
「……だとすれば、どうだと言うのかしら? それに貴方が私に殺意を向ける理由は、
それだけでは無いのではなくて?」
「理由……ですって!? 身内を奪われかねない状況以上の理由なんてないはずよ!!」


「あら、そうかしら? 貴方の令への態度は、それ以上のものが感じられるのだけれど」
「ふざけないで!!」
余裕あるセネアの態度にいらつくように静奈が怒鳴る。令はここまで怒った静奈を今まで見た事はない。
逆に言えばこの修羅場は、もう令の予測できないぐらい危険な領域まできているという事だ。
こういう事態を令自身予測しなかった訳でもない。しかし現実問題として起こってしまったら、
もう令自身が止められるような雰囲気ではなかった。
出来る事は……制止を呼びかける事だけだ。
「お願いだから、二人ともやめてよ! 姉さん、手を下ろして!!」
「令のお願いだから、私は止めてもいいんだけどね。貴方のお姉さんは、止める気はなさそうよ?」
セネアの指摘通り、静奈は今まさに引きがねを引かんかという状況だった。
なんとか静奈を説得しようと令が声をかけようとした瞬間、今度はセネアの髪が揺れた。
「それに私も……私に殺意を向けた者を見逃す程愚かではないわ!」
突然吹き上がるような殺気を放ったかと思うと、今度は静奈の後ろにあった棚のコップが爆発する。
それはセネアの”お前如きいつでも殺せる”という力の警告だった。
だが静奈は微動だにしない。とてつもない殺気と殺気の交錯で、令は部屋が凍り付くような錯覚を覚える。
もう止められない……あまりに圧倒的な闘気のぶつかり合いに、令は言葉を発することすらできない。
ほんのわずかの、しかし令には永遠にも思える凍りついた時間の中で、
これから始まる絶望的な宴の結果を想像し、令は感じた事のない恐怖を覚える。
しかしその恐怖の膠着は、突然の闖入により中断された。

ピンポ――ン!!

あまり場にそぐわない唐突な呼び鈴。突然の事だったので、セネアは思わず魔力を行使しかけ、
そして静奈は引きがねを引きかけ、互いに寸でのところで思い止まった。
怪訝な顔で3人は顔を見合わせる。


僅かな沈黙の後、再び鳴らされた呼び鈴の音に令はようやく我に返った。
「ふ、二人とも動かないで待っててよ! すぐ戻るから、早まっちゃダメだからね!!」
取りあえず制止の言葉を残して令は玄関に駆け出す。とはいえ令はこの事に少しだけ感謝していた。
とてもじゃないが、あの状況を令一人では打破できなかっただろう。
何であれ事態を引き伸ばせただけでも幸運と言えた。
「はーい! 今開けますから!」
玄関まで来た令はそのまま鍵を回してドアノブを捻る。普段ならドア越しに相手の確認なりなんなり
をするのだが、今回は慌てていた事もあってそのままドアを開けてしまう。
そこに立っていたのは、制服姿の杉島瑞稀だった。
「おはよう令くん。」
「み、瑞稀さん!? こ、こんな朝から……何?」
あまり予想できなかった人物が居たので、令はちょっと面食らう。
「一緒に学校行こうかなって思って……って、令君、私だからいいけど、その格好で人前に出るのは
ちょっとどうかなーって思うんだけど……」
「え? ……っ! ああっ! いや、その!」
指摘されてはじめて気がついたが、令は今、下着の上に制服のインナーシャツを羽織っただけの状態だった。
確かにこれで宅急便や新聞配達のお兄さんの前に出た日には、へたすりゃ襲われかねない。
令は思わず顔を赤くして、そのまま身体を隠すように手を交差させてうつむいてしまう。
「ふふっ、まあ”女の子同士”だからいいでしょ? 着替えるの待っててあげるから、一緒に行こ」
いつもながらの屈託のない笑みで瑞稀は笑う。
「あ……う、うん」
状況はさておき、とりあえず頷いて令はそれに同意する。そして当面の問題はさておき、
何はともあれ着替えなくてはと踵を反そうとした途端……瑞稀の顔が突然凍り付いた。
理由は聞かなくても大体想像が付く。なにしろ突然刺さるような視線が背中に浴びせられているのを
令も感じたからだ。


案の定、予想した通りの人物……静奈の声が後ろから聞えた。
「ふぅん……朝から随分と熱心ね。杉島さん、どういうつもりか説明してもらえる?」
「あ、あの……その……お、お姉様、こここれは…………その……」
瑞稀がじりじりと後ずさるにつれ、背中からの視線がさらに強くなる。
その狼狽っぷりは見ている方が気の毒なぐらいで、きっと当人は静奈の事を”お姉様”と呼んでいる事すら
意識していないだろう。もっとも令だってそんな状態の静奈に逆らえる訳がない。
結局瑞稀は絶えられなくなり、振り向いて逃走しようとした途端……何故か玄関の扉が
勢いよくばたんと閉じてしまった。瑞稀は必死にドアノブを回すが、ドアはびくともしない。
令には誰の仕業なのかすぐに察しがついた。何しろ背中の視線が二倍に痛くなったから。
「無駄よ、そのドアはもう決して内側からは開かないわ。しかし令ったら人をほうっておいて、
ずいぶんじゃなくて?」
また予想通りの人からの声。しかも今度は令を指名だ。
もう瑞稀は涙を浮かべてふるえている。そりゃそうだろう、相手はあの静奈とセネアなのだ。
覚悟を決めて令はおそるおそる振り向くと……案の定、般若のような形相をした二人がいた。
「ね、姉さん、セネアさん、そそその、ここ、これは……」
口がうまく回らない。令は先程瑞稀の呼び鈴に感謝したが、それは実はさらなる地獄への音だったのだと
今更ながら後悔した。二人がじりじりと距離をつめるにつれ、冗談ぬきに死が頭をよぎる。
と、そこへ再びあの音が響いた。
ピンポーン!!
「先輩いぃ! 一緒に学校へ行きませんかぁ!!」
”内側から開かなくなったはずのドア”が突然”外から”開けられたかと思うと、呼び鈴の音とともに
さわやかな笑顔にちょっと顔を赤くした比良坂和真が勢いよく入ってきた。
「ちょっと早いですが、少しぐらいなら…………って、あれ?」
入ってきてしばらくしてから、和真はようやくその場の異様な状況に気が付くものの、
状況が飲み込めないのか不思議そうな顔できょろきょろと玄関にいる一人一人を見渡す。


なんて間が悪いんだと、令はこれ以上ないぐらい和真の運の悪さに同情した。
そしてようやく事態を把握しかけたか否かという所で、再び背後の扉がばたんと閉まる。
「あ、あの先輩? こ、これって何……なんでしょうか?」
ようやく場のヤバさに気がついて、慌てて令に声をかけてくるがもう遅い。
「比良坂君、運がなかったね……」
「え? ええぇぇぇ!!?」
露骨に”あきらめろ”的な返事をする令に和真はようやく事態の深刻さを理解する。
まあ、あの殺意放出魔人二人を前にしては説明する必要もないだろうが……。
「一匹見たら10匹いるって言うけど……ねえセネア、増長がすぎるお馬鹿さんには
一度身をもって理解してもらう必要があると思わない?」
「あら、気が会うこと。私も同じ事を考えていてよ」
何か10年来の友人のような口調で二人は声を交わし、ゆっくりと3人に近寄る。
「もう!なんであんたドア開けたままにしとかないよの!! ああもう! バカ! ドジ!」
「ななな、そ、そんな事言われても!!」
瑞稀がやけくそで和真を締め上げるも、もう後の祭り。考えて見れば今のが最後の逃亡チャンス
だったのかもしれない。最後の奇跡を彼らはみすみす逃してしまったのだ。
だったらもう一度ぐらい誰かきてよ……−半ば投げやりに令は心の中で思う。
が……どういう運命の悪戯か、その”奇跡”は再び訪れた。
ピンポーン!ピンポーン!!
「ちわーっす!! 新聞ですけど、今日は配達と一緒に集金もいいっすかぁ!?」
ありがとう、普段はうっとおしいとすら思う不幸な新聞配達の人。
さすがに今度は見逃さない。3人は開いた扉の隙間から脱兎のごとく逃げ出した。
「あ、あれ? あれ? お、おい……なんだまったく……って、う、うわあああぁぁ!!」
背後で銃声と爆発音と新聞配達の兄ちゃんの哀れな悲鳴が聞えるが、振り向く余裕はない。
「こら令! 待ちなさいってば!!」


「令! 逃げたら容赦しないわよ!」
背後に静奈とセネアの制止の声を聞きながら、令達は一目散に朝の町を駆け出す。
いつにないほど、騒がしい朝だった。

ちなみに三人とも、結局この日登校する事はかなわなかったそうである。




 あれからもう2ヶ月程が過ぎた土曜日の朝、三木原家はいつもの朝を迎えていた。
そう、ほんの2ヶ月前から「日常」となってしまった週末の朝である。
「ひあああぁぁん! ダメぇ、そんな……そんなに突き上げないでえぇ!!」
ベットの上であられもない声を上げてよがる女と、それをさらに責めたてる女。
「朝からはげしすぎ……ひゃふうっ! あぁっ、イくッ、またイっちゃううぅぅ!!」
「あははっ、いいのよ令、遠慮しないでイってしまいなさい!!」
ベットの上で交わる二人……令とセネアは声を張り上げて互いをむさぼっていた。
セネアが上に乗る令を下から突き上げるたびに、令は甘い声を上げさせられてしまう。
そして何度目かの突き上げと同時に、令の膣に熱いものが注がれる。
途端、その満たされる感覚に反応したかのように、令の身体がびくんと奮えた。
「ふあっ、ああああああああああぁぁぁ――――ッ!!!」
絶頂を迎え、令は身体を弓なりに反らせて悦びの声を上げる。
起きて1時間も経っていないのに、今日早くも3度目の絶頂だった。
全てが白濁した感覚……その頂が過ぎると、令は糸が切れたかのようにふっとセネアの上に倒れこむ。
そんな令の頭をセネアは優しく撫でて微笑んだ。

結局あの騒ぎの後、セネアは済し崩し的に三木原家に居付いてしまった。
当然始めのころは静奈が反対したが、結局大学やらなにやらで家を空ける事が多かったが故か、
結果としてそれを阻む事はできなかったのである。
何故か近所の人達は、いつのまにか増えた家族に何の違和感もなく接していた。
どういう理屈かはわからないが、まあそれも多分セネアの”力”か何かなのだろう。
向いの家のお婆ちゃんが通り様に庭で涼んでいるセネアに挨拶し、
それに笑って手を振るセネアの姿なんかを見ると、まるで最初からこの家に居たかのように思えるぐらい、
今ではこの家に馴染んでいる。
そして三木原家には、もう一つの別な日常が生まれた。それは当然、令の事である。

いつのまにか学校、そして近所でも令の生活基準はすっかり女になっていた。
無論表向きは「三木原 麗」なのだが、すでにそういう事を意識しているような者はいない。
あのクラスには令の代わりにやってきた麗がいるのが日常になり、
この三木原家には静奈とセネアと、そして麗がいるのが日常となっていた。
突然の変化もそれが続けば、それはただの日常になる。ましてその変化を感じる事がなかった場合、
それに今までとの差異を見付ける事はできない。
結果として今、それが変わった事を意識しているのはごく一握りの人間だけであった。
当然その中には、当事者である令本人も含まれる。

「令ったら、朝からずいぶんと激しく感じれるようになったわね。
もうすっかり女の子の悦びを覚えちゃったんじゃない?」
傍らで余韻覚めやらぬ息を吐く令を見下ろしながら、セネアがからかうように語りかけてくる。
「身体は本当にもうすっかり女の子よね。それなのにまだ女ものの下着や洋服には免疫がなくて
赤くなるんだから、不思議だこと」
「そりゃ……そうだよ。いままでの人生ずっと男だったんだから、ちょっとやそっとで
いきなり心まで女になれなんて不可能だもの。へたをすれば、一生心は変わらないかもしれないよ」
少々困ったように令はセネアに答える。それは令の最近よく考える事だ。
令自身としては、セネアを受け入れるのを決めた時に覚悟はできていたのだと思う。
そう、心まで女に変わってもかまわないという覚悟が。
ところが実際には、令の心はいつまで経っても男の頃のままだった。
身体が女になってすぐの頃、心が肉体に引きずられるような錯覚に脅えていたのだが、
いざ時が経ってみてもそのような事はなく、相変わらず価値観は男のままであり続けた。
正直最近は心も女になれた方が気が楽なのにとすら思える程、不思議と男の価値観が揺るがないのである。
それ故今でも相変わらず女の身体が生み出す快楽には翻弄され続けていた。
もっともSの気のあるセネアには、それはそれで嬉しいらしいのだが……。


そんな令にセネアは優しく微笑む。
「大丈夫、時が来ればきっと貴方も母性に目覚めてるはずよ」
「…………。」
セネア意味ありげな言葉で令をさとすが、令にもその遠まわしな意味は理解できる。
それは令がセネアの子をなす事。令が本当に女になる事だ。
しかし、令はそれを聞いて微かに顔を曇らせる。
「でも……可能性、低いんでしょう?」
それはセネア自身から聞いた事だった。いくら令が適合者とはいえすぐに子をなせる訳ではなく、
それどころか受胎する可能性は限りなく低いらしい。常人と違い「ゼロではない」というだけ
なのだそうである。淫魔が子をなすとはそういう事らしい。
セネアに初めて精を注がれたあの日の覚悟は、令の豪快な一人相撲だったのである。
「そうね、その通り…………」
セネアも少々気落ちしたように令を撫でる……が、突然その手が令の足に伸びた。
「……だからこそ、その可能性を少しでも上げる努力をしなくてはいけないわね! 
さあ、今度は何分でイっちゃうのかしら!?」
突然片足を抱え上げられたかと思うと、そのまま一気に身体を滑り込まされる。
あまりに見事な姿勢の入れ換えに令は身体を動かして抵抗する間すら取れない。
「ま、待ってセネアさん! イったばかりだからまだ……もうちょっと待ってよぉ!」
「だーめ! だって令たら、学校行ったら休み時間やら放課後やらに、瑞稀や和真としてるんでしょう?
だから貴方が家にいる間は何があっても手加減してあげなくってよ」
「な! そ、それは……」
鋭い指摘に令は一瞬言葉に詰ったが、すぐに諦めた。どういう言い訳であれセネアが止めるはずがないし、
なによりセネアが言ったそれは嘘でもない。瑞稀と休み時間に話していたり帰りに家に寄ったりすると、
何故かそういう行為に及ぶ流れになってしまう事があるし、和真も今だ諦めきれないという様子で
偶に雰囲気に流されて体を預けてしまう事もあった。
当然これも一種の浮気、それをセネアに指摘されては令に反論の余地はない。


「それに令、今日は昼までに10回はイかせるって約束したじゃない。まだ3回目よ?」
「そ、そんな違う! 朝は5回って……」
「あら? しっかり覚えてるのね。ま、約束の回数にはまだ達していないんだし、
3回で音を上げようとしたペナルティでやっぱり10回ね」
「やあぁ! 待って、待ってってばぁ!!」
令は身をよじって嫌がるが、セネアはそんな令の足を嬉しそうに持ち上げて令の動きを封じる。
そしてそのまま挿入……かというところで、突然部屋の扉が勢いよく開く。
「ああもう! やっぱりまた約束破ったわねセネア!」
勢いよく令の部屋に飛び込んできたのは静奈であった。
静奈はベットで戯れる二人を見るや否や、怒ったというよりふてくされた顔で歩み寄ってくる。
「セネア! 週末は私が帰ってくるまで待ってるって約束でしょう!」
「ふふっ、ごめんなさいね。でもやっぱり令の寝顔を見ると我慢できなくて」
さして詫びれる様子もなくセネアはちょっと御立腹の静奈に形だけ謝る。
しかし静奈もそれに怒るような様子もなく、ふてくされた顔のまま上着のボタンを外し始めた。
「まったく自分だけ先に楽しんで……気持ちはわかるけどずるいわ」
不満をぶつぶつと口にしながら、静奈は次々と服を脱いでゆく。傍から見ればちょっと異様な光景である。
だが令は、この突然の来訪者を見ても慌てる事もなく、脱力するような溜息をついただけだった。
なにしろこれも”週末のいつもの日常”になってしまった事なのだから。
そう、結局当初は反目していた二人だったが、いつのまにやらこんな調子の関係になっていた。
令にしてみれば”似たもの同士で気が合った”のだと思う。
当初は確か「どっちが令を本気で愛せるか」などという意地の張り合いで、
令が失神するまで交互に抱かされ続けたのがきっかけだと思ったが、細かい経緯は忘れてしまった。
そもそも性行為=愛っていう公式もちょっと違うんじゃないかと令は思うが、
この二人にそんな理屈は通用しない。
ともかく今は週末になると静奈が帰ってきてコレである。


初めは互いに「自分の目の届く範囲でなら」みたいな事を言っていたような気もするが、
どうも最近は「二人で令を責める」事を楽しんでいる気がしてならない。
喧嘩されるよりは良いとはいえ、令にとっては災難以外の何者でもなかった。
なにしろ唯ですらそういう事に長けた二人である。
その二人が同時に令を責めるのだから、これはもう楽しめるレベルの快楽ではない。
最近ではもう週末ごとにフルマラソンでも走っているような気分であった。
「そういえばセネア、ようやく”アレ”が出来たわ。さっそく試してみましょう」
「あら? 意外に早かったのね」
すっかり服を脱ぎ捨てた静奈が嬉しそうに持ってきた鞄をあさり始める。セネアとの奇妙なやりとりに
令は興味半分で何が出てくるのかを見ていたが……取り出された”それ”を見た途端に脱力する。
静奈の手に握られていたのはディルドーだった。多分バンドに付けるタイプだ。
「なに? 令ったら突然溜息なんかついて……嬉しくないの?」
「いや、姉さんらしいというか何というか……。それに姉さん、そんなの沢山持ってるじゃない」
「ふぅん……そういう事言う」
呆れたような令の視線に静奈は一瞬ムっとするが、そのまま意味ありげに笑うと
セネアの脇に立ち、そのディルドーをセネアの秘部から生えた肉棒の横に持ってくる。
意味ありげにディルドーを揺らしてセネアのそれと比較させるような静奈の仕草で、
令はようやくその真意に気がついて顔を青くする。
「そ、それってまさか!」
それはかつてセネアの秘部から生える自身のそれに気がついた時と同じ類の驚き。
そう、多分そのディルドーは……そんな令の反応に二人は満足そうに笑った。
「静奈に前、令が一番感じるモノの話をしたのよ。そうしたら……ね。
令も内心、嬉しいのではなくて?」
「ななな!、そ、そんな事ないってば!!」


何故か思わず慌てて否定する令だったが、そんな令に静奈が悪戯じみた笑みを浮かべる。
「あらそうかしら? じゃあ今から試してみましょう。とりあえず昼まで20回って約束だものね」
「そ、そんな! ち、違うってば!! 5回っていうのをセネアさんが無理矢理10回って……」
吹っ掛けられた回数の更に倍を言われて狼狽し、令は必死に反論するも、
それの解答は静奈の予想の範疇だったようだ。慌てる令に静奈は意味ありげにくすりと笑う。
「だからセネアが10回、私が10回でしょう? さあ令、お昼までは時間がないから
連続でイかせてあげる。覚悟なさい!」
「そ、そんなぁ! 無理、絶対に無理だってば!」
令はあまりの提案にベットからの逃亡を図ろうとしたが、腰を浮かせた途端セネアに素早く抱きしめられ、
その動きを封じられてしまう。男の時ならともかく、今ではこのメンバーの中で一番華奢な令に
それを振りほどくだけの力はない。
だが、セネアはそのまま無理矢理に事を進めるような真似はしなかった。
「令、本当に嫌?」
「え……」
セネアは唇を眼前まで近づけ、優しく令に語りかける。
「本当に令が私達を望まないなら……無理強いはしなくてよ。私も令が嫌がる事を進んでしたくはないもの」
そんなセネアの静かで優しい口調に、令は何故か逆に罪悪感のようなものを感じてしまう。
令としても別にセネア達を拒んでいるわけではないのだから。
「いや、その……そういう意味じゃなくて、その……」
「じゃあ、どういう意味なの?」
「その……ね、僕はまだその……女の子の感覚に慣れてないから、もうちょっと手加減して欲しいなって……」
まとまらない思考の中で令は曖昧に言葉を濁すように答えるが、結局その言葉が墓穴を掘ってしまった。
それを聞いた途端に、セネアと静奈は申し合わせたように笑う。
「聞いた静奈? 令ったら、女の子の感覚に早く慣れたいそうよ」
「あら、それならお手のものよ。令ったら、それなら遠慮せずに言えばいいのに」


露骨に邪悪な笑みを浮かべる二人を見て、令はまたやられれたと心の中で絶望する。
実はいつも二人が揃うとこんな調子で、結局今日もまた、二人の手の平の上で踊らされるハメになってしまった。
毎度の事だが今回も令に選択権は無さそうだ。いや、多分今後もないだろう。
とはいえ、それが判かってなお不快な感じはしなかった。
強引とはいえ、それが自分を好いていてくれているが故の行動なのだから。
多少悔しくはあったが……。
結局令は今日もあきらめた。抵抗が全て無駄に終わるなら、受け入れた方がいい。
それに正直に言えば嫌いでもなかった。女の子の快楽が……次々と新しい悦びを二人に教えられる事が。
二人ともそんな令の気持ちを見透かしてはいるのだろうけど、好きなんだからしょうがない。
諦めたように溜息をつくと、そのまま令は二人に微笑んだ。
「もう……やさしくしてよ? 二つ同時とかって乱暴は嫌だからね」
突然しおらしく笑った令に、セネアと静奈は一瞬狐につままれたかのような顔をするが、
その淫靡な空気が一瞬で晴れてしまったためか、二人同時にくすくすと笑い出した。
「わかったわよ令ったら、そんな顔で言われると嫌だって言えないじゃない」
と、セネアは優しい顔で令を見据える。
「反則技よね。だから余計に苛めたくもなっちゃうんだけど……」
静奈も少し拗ねぎみに笑う。結局3人とも、なんとなく場の空気で笑い出してしまった。
そしてしばしの笑いの後、静奈がゆっくりと令に抱き付いてくる。
「じゃあ次は私からでいいわね? このディルドーは初めてだから、
最初は令の方で調整できるように私が下になるわね」
「あ……う、うん」
小さい声で返事をすると、静奈はそのままベットに横になる。
その股からは当然……セネアの、いや”男の令”を模した擬似的な男根が反り上がるように立っていた。
令は顔を赤くして静奈の上にまたがると、ゆっくりと秘部をディルドーの頭頂にあてがう。
当然の恥かしさはあるとはいえ、昔なら自分からなんてとてもできなかった行為だ。


なにしろそれは自分が女である事を認める事にほかならない、抱かれる事を望む行為。
だが今では心の価値観がどうであれ、いいかげん令も身体が女である事に慣れてしまった。
それ故だろう、最近ようやくこうやって”女の子を楽しむ”事ができるようになった気がする。
漠然とそんな事を考えながら、一瞬の躊躇の後、令は静かに腰を落とした。
「ひうっ……あ、ああ……あ、あ、ああぁッ!! ダメ、これダメえぇっ!!!」
が、腰がその途中で奮えるように止まる。手に力を入れてこれ以上のディルドーの侵入を阻むが、
快楽が手や足、そして腰に逃げるための力を加える事を許さない。
「なんか……本当に効果覿面ね。まだ半分も入ってないのに、令ったらもうイきそうじゃない」
と、静奈は新しいディルドーの成果に関心したように呟く。そのまましばし令のあえぐ様を見ていた。
「でも令、まだ私が一回も動いていないのにイくなんて許さないわよ。それでイっても
さっきの回数には入れないからね」
「そ、そんなっ……姉さんのいじわるっ!!」
「じゃあ我慢しなさい。さあ、いくわ……よっ!!」
声と同時に静奈は腰を突き上げ、同時に令の腰に添えた手を一気に引き落とす。
ずんっと子宮を突き上げられた衝撃が令の全身を貫く。ひとたまりもなかった。
「ふあっ、はあああああああああああぁぁぁ――――ッ!!!!」
びたりとディルドーが鍵のように膣の中におさまる。さすがにセネアのモノのような肉感はないが、
それでも”それ”が貫く感覚は令を絶頂に導くには十分だった。
「すごい、本当に一突きでイっちゃった……」
静奈が関心したように自分の上で脱力してもたれ掛かる令を見る。
「だから言ったでしょう? これ以上の相性は存在しないって。令を悦ばせるんだから、
やっぱり一番令が悦んでくれるモノを用意しないと」
と、セネアがその成果に満足そうに笑う。そのまま静かに令の顔を見入るが……
「あらら、よっぽど良かったのね。気絶しちゃってるわ」
見れば令はくたりと静奈に身を預けて静かに息をはいていた。
しばし待ったが起きそうにもなく、結局静奈は名残惜しそうに令をベットに寝かせる。


「幸せそうな顔しちゃって……。セネア、どうする?」
ちょっと不満そうに静奈はセネアに問う。それに一瞬考えるような素振りを見せたセネアだったが、
令を顔を見るなり諦めたように頷いた。
「起こしちゃ可哀想だし、このまま令と寝ちゃうわ。貴方はどうするのかしら?」
「当然、そういう事は譲らないわ」
静奈がセネアの問いに即答すると、二人はわかっていたとばかりに苦笑する。
結局二人は申し合わせたかのように、仲良くベットの真ん中で眠る令を抱きとめるようにして、
静かにベットに身を預けた。
しばしの無言……そしてようやくセネアに睡魔が訪れた頃に、静奈が唐突に口を開く。
「セネア、今更だけどあなた令の事……」
「本気でしてよ。気持ちだけなら貴方にも、世界の誰にも負けない自身はあるわ」
「悪魔なのに?」
「悪魔だから……よ。本来持ち得なかった感情なのだから、人間より余程ピュアだと思うわ」
よくわからない理屈だが、静奈は何故か納得した。多分それは理論以前に、
セネアの口調から紛れもない本気……本当に令を愛してるという気持ちが読み取れるからだろう。
そして今度はセネアが問いかけてきた。
「貴方はどうなの? 本来であれば、その感情を持つのは許されざる立場ではなくて?」
「本来であればね。でも気持ちは本物……。それにそもそも私を狂わせたのは、
間接的とは言え原因はあなたなのよ? 多分令が男のままだったら、私は一生いいお姉さんで
終わっていたでしょうに」
「”いい”お姉さん?」
「悪かったわね……」
セネアの皮肉に静奈はむくれるが、それは険悪なものではない。
そんな問答を二人でしばし繰り返していたが、いよいよもって二人とも眠くなってきた。
「じゃあ……起きたら第二ラウンド開始ね…………負けないわ……よ……」


言葉とぎれに静奈が言う。その目はもう虚ろだったが、不思議と笑っていた。
「それはこっちの……セリフでしてよ。瑞稀や和真……貴方にも…………負け……ないわ……」
セネアもそれに、どこか嬉しそうに答え……そして二人とも静かに目を閉じる。
二人とも宝物を抱える女神のように令を抱きとめ、幸せそうな顔で眠りに落ちてゆく。
そんな二人に抱きとめられた”宝物”は、一番幸せそうな顔で優く寝息を立てていた。

三木原 令(仮) 完
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