「…ばっばかっ下ろせっ!」
「…暴れんな」
「下ろせっ!誰かに見られたら」
「…下ろして、それで一人で立てんのか?」
「たっ…立てるっ」
「…ウソつけ」
「いいから下ろせってば!」
「…暴れるな。危ない」
 軽々と薫を抱き、スタスタと歩みを進めていた直人は、いつの間にか階段を下り始めていた。
 思わず右横を見た薫は、階段の空中に浮いているような感覚にびっくりして口をつぐみ、
胸元で両手を“ぎゅっ”と握って、
まるで母親に抱かれた赤ん坊のような姿で“ぎゅっ”と目を瞑った。
 今、直人が自分を落としたら…。
 そう思うと、本当に怖かったのだ。
 だがこうしている間にも、直人の匂いが、体臭が、濃密な汗の香りが、薫を包み、侵してゆく。
 膝裏と背中で抱いているために、薫のミニスカートは下着が見えるままになっていた。
 今、階下から誰かが上がってきて、そのミニスカートの中を覗き込んだとしたら、
クロッチ部分が驚くほどびっしょりと濡れ、
布地越しにある楚々とした肉の割れ目までもがハッキリと見えてしまっただろう。
 そしてそこからは、今も“とろり…”と熱い蜜が溢れ出ていた。
 それに、おっぱいはパンパンに重たく張りつめ、
絆創膏を貼り付けた乳首は痛いほど硬く勃起しているのだ。
『ぷちゅ…』
 キスするような、密やかで粘液質な水音。
 それを自分の股間が立てるのを、薫は確かに聞いた。
 それはなんて破廉恥で、そして媚びるような響きだったろう。

 ――自分のあそこは、膣は、子宮は、直人を求めている……?

 それに思い至り、薫は声も無く、
ただ後はもう直人の腕の中で身を縮こまらせる事しか、出来なかった。

■■【10】■■
 特別教室練の1Fにある保健室へと薫を送り届けると、
直人は「鞄を取ってくる」と言って再び出て行った。
 実はそのまま帰ってしまうのかと思っていた薫にとって、それは意外な行動だった。
 薫がいきなり体調を崩して床に座り込んでしまったことを、
彼は自分のせいかもしれないと思っているらしい。
 その辺りの早計な愚直さというか思い込みの激しさは、
小学生の頃を思い出させて薫を少し楽しくさせた。

 いつもいる保健教諭の篠崎は、何か用事があるのか席を外していたため、
薫は一人、保健室に残って扉をロックした。
 一応、窓のカーテンを引いて外から見えなくしておいてから机の上にあったティッシュを掴んで、
2つあるベッドのうち、廊下側の1つに向かう。
 そしてさらに、ベッドの周囲のカーテンまで引く。
 これで完全に周囲から…グラウンドに面した窓側からも、廊下側からも見えないはずだ。
 そうしておきながら、薫は両手をスカートの中に入れ“ごそごそ”とまさぐると、
意を決したように“ずるっ”とパンツを一気に膝まで引き下ろした。


『うわぁ…』
 思ったとおり、白いパンツはぐっしょりと濡れ、
クロッチの部分は“ねとねと”の白っぽい粘液でべったりだった。
 おまけに、前の方がなんだか黄色っぽくなり、ちょっぴりアンモニア臭い。
『学校でお漏らしなんて…』
 小学校の1年生の頃以来かもしれない。
 薫は涙を拭って鼻を啜ると、小さく溜息を吐いた。
 それから制服のミニスカートを汚さないように左手で捲り上げながら、
ティッシュを何枚か取って少し腰を落とし、股間に当てる。
「…んんっ…」
 まだ尿と蜜に濡れているあそこを、丁寧に拭う。
 だが“ぐちゅぐちゅ”と濡れそぼったそこは、そんな些細な刺激さえ増幅してしまった。
 拭うたびに“むずむず”した刺激が腰にわだかまり“びくんっ”“びくんっ”と薫の体が震える。

 夕暮れの保健室で、汚れたパンツを片手に、
スカートを捲り上げてティッシュで中腰に立ったまま股間を拭く爆乳女子高生…。

 なかなかにシュールな絵だった。
 こんなところ、誰かに見られたら恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
 それより、直人が早いところ鞄を持ってきてくれないと、
ブラもパンツも無い状態ではどこにもいけない。
 代えのパンツは無いけど、体育の時に使った短パンがある。
ミニスカートから少し覗くからみっともないと言えばみっともないけど、
無いより遥かにマシだと思えた。
 または篠崎先生が帰ってきてくれれば何とかなるかもしれないのに、
彼女は一向に帰ってくる様子が無かった。
「――すーすーする…」
 あそこを乾かそうと、ミニスカートをパタパタ扇ぎながら薫はひとりごちた。
 思えば、半袖セーラーの夏服と、紺のミニスカート、
それにハイソックスしか身に着けていないのだ。
 なんて心もとないのだろう。
 男だった頃は、夏なんて家の中も外もタンクトップと短パンだけで一日過ごすのが極普通だった。
 半袖セーラーの夏服・ミニスカート・ハイソックス。
 タンクトップ・短パン。
 数は男だった頃の方が少ないのに、今のこの心細さはどうしたことか。
 それはやはり、女になってから、
肌を晒す事は恥なのだと「常識」として身に染み込まされてきたのと、
スカートは短パンのように下が「閉じて」いないからなのだろう…と、薫は思った。
 ロックをかけているから大丈夫…とは思いつつも、
ベッドのカーテンから“ひょこっ”と顔だけ出して様子を伺い、誰も来ていない事を確かめる。
 そして保健室備え付けの洗面所まで行き、急いで汚れたパンツを洗った。
「ふう…」
 直人が離れた事で、だいぶ体の中を荒れ狂った嵐は沈静化していた。
 あれは、どういうことなのだろう。
 ひょっとして、直人の匂い…というか体臭とか皮膚感覚とか、
そういうものが自分とめちゃくちゃ相性が良いということなのだろうか?
 クラスメイトの松瀬志宇(しう)が、前に言ってた事がある。



「ちょっとフェチっぽいかもしれないけど、私は男の子の外見とか仕草とかより、
匂いとかの方がメチャクチャ興奮するわね。汗の匂いとかもそうだけど、
特に整髪料とかじゃない髪の匂いにビンビンくる。
特に、気になってる男子の2〜3日洗ってない頭の匂いとか嗅いじゃったりすると、
それだけで濡れちゃうことあるわ。
え?や〜らしい?まあ、カオルちゃんもそのうちわかると思うけどね〜」
 正直、その時はそんなヘンタイチックな性癖なんか、わかりたくもないと思っていた。
 でも今は、それが嫌というくらいにわかる。
 …わかってしまった。
『だけど、ここまでスゴイものなのかな…』
 だが自分は、まだ他の男の誰とも“そういう関係”にはなっていない。
 つまり今まで、男の匂いとかルックスとか仕草とか言葉とか
“普通の女の子が惹かれるような男の魅力”とかには、さっぱり反応しなかったのだ。
 なのに、こんな急に…しかも直人に対してこんな風になってしまうなんて…。
『それって、僕がナオタの事を好き…って…こと?…』
「ぁ……」
 パンツを洗いながら直人の事を考えていたら、
またあの感覚が蘇り、お腹の中で何かが“ぬるっ”と動いたような気がした。
 そうしてそう思った途端、すぐに“つう…”とあそこから太腿を伝い落ちるものを感じた。
 薫は慌てて手に持っていたパンツで拭い、「せっかく洗ったのに…」と顔を顰める。
『なんか…“多い”のかな…僕…』
 蜜の多さは、まるでその手の漫画みたいだった。
 現実には、あそこまでダラダラと犬の涎みたいに垂れる事なんて無いのに。
 学校の保健室でノーブラ・ノーパンのままいるというのが、
この異常な興奮状態が続いている原因の一部にもなっているのだろうか。
 ひょっとしたら自分は、露出狂の気がある変態なのかもしれない。
 そう思って、すぐに否定する。
『別に…ノーブラで教室に帰ったんだって、みんなに見て欲しかったから…ってワケじゃないし…』
 それにしても、乳首が透けていたのを男子が気付いたのなら、女子も当然気付いていたに違いない。
 でも、誰一人として教えてくれなかった。
 きっとそれは、みんなで面白がって黙っていたに違いないのだ。
『貞華も志宇も友香も、教えてくれればいいのに…薄情なヤツら…!…』
 薫はむくれて頬を膨らませ、パンツをぎゅっと絞って水気を切ると、
それをハンカチで包んで、直人が来てもすぐにはわからないように洗面所横の箱の陰に置いた。
「ナオタ…遅いな…」
 口に出して呟くと、その音の響きで、再びあの“むずむず”が腰の辺りにもやもやとわだかまった。
「ぅあ…」
 ここまでくると、もう立派な変態だ。
 直人の匂いや皮膚感覚や声を思い出すだけじゃなく、
名前を口にしただけで濡れそうになるなんて…。
 自分で性衝動をコントロール出来ないなんてのは、男だけだと思っていた。
陰茎の勃起などはその最たるもので、
特に年頃の男子の場合は水着グラビアを見ただけで反応してしまうのだ。
そしてそれは止めようと思って止められるものではない。
 薫は過去に男の体でそれを経験しているから、それが女の体でも起こる事に驚いていた。
『それとも…これって僕だけなのかな…』
 だとしたら、それは男の脳を、
クローンニングして性変換した女の肉体へと移植した弊害なのかもしれなかった。


■■【11】■■
 保健室には、急に生理が来た女子生徒のために、
ある程度の量の、代えのショーツと生理用品が常備されている。
 たちの悪い男子生徒などに見つかって悪戯などをされないように、
大抵そういうのは保健教諭の管理の元に保管されているもので、
その辺の戸棚などを適当に開けても簡単には見つからないようになっていた。
 薫は、保健室で“そういうもの”を借りるのが凄く嫌で恥ずかしいため、
今まで一度だって借りた事が無い。
 だからその保管場所もわからず、仕方なく洗面所のタオルを借りて厚く畳み、
ベッドに敷いてそこに座っていた。
 だが、スカートが汚れないように、剥き出しのお尻をその上に乗せて座ったため、
早くもタオルは蜜が染み込み、しっとりと濡れ始めている。
 今日持ち帰って、洗って返せばいいだろう…とは思うものの、
まさか洗濯籠に無造作に入れておくわけにもいかないから、
風呂に入った時にでも石鹸で洗えばいいかもしれない。
 カーテンの引いた窓からは、グラウンドで練習する野球部員達の元気な声と、
ボールを叩くバットの金属質な音が聞こえてくる。
 なんとなく“ほっ…”とした途端、ただ待っているだけの時間がひどく長く感じられた。
『あ、そうだ…』
 直人が鞄を持ってきたら、短パンを履くついでにブラも着けよう。
 そう思い、薫はセーラー服を捲り上げて、
子供の頭ほどもある豊満な重たおっぱいを“ぶるん”と露わにした。
 南国の椰子の実みたいな乳房の先端に、2枚を×の形に貼り付けた、普通サイズの絆創膏がある。
 大きいサイズが無かったから応急処置で4枚も使ってしまった。
“直人が来る前に、これを両方とも剥がしておこう”
 単純にそう思ったのだ。
 薫はまず右のおっぱいを左手で持ち上げ、右手で“びっ!”と一息に引き剥がした。
「いっっ…」
 …むちゃくちゃ、痛い。
 充血してパンケーキみたいに膨らんだ乳暈が、真っ赤になっている。
 薫は思わずおっぱいに舌を伸ばし、そのまま嘗めた。
 そうしておいて、それが出来てしまった事に驚き、
馬鹿みたいに自分の唾液で濡れた乳首を眺める。
 アダルトビデオなどで自分の乳首を嘗める巨乳女優とかを見たことはあったが、
まさか自分がそれをしてしまえるとは思ってもみなかったのだ。
『だめだってば、そんなの』
 “うず…”と体が疼く。
 『出来る』とわかれば、『したくなる』のが人間であり、
好奇心旺盛な思春期であればそれは致し方ないことであった。
 右手の指が“ぴくっ”と動いた。
 しばらく躊躇った後、右手で右のおっぱいを持ち上げ、
舌を伸ばして硬く勃起した乳首をおずおずと嘗めた。
「んっ…」
 “ぴりっ”と、きた。
 そのまま、子猫がミルクを嘗めるように“ぴちゃぴちゃ”と微かな水音を立てて何度も嘗める。
「…んっ…んふっ…ぅふっ…ふっ…」
 “ぴくんっぴくんっ”と体が震え、どんどん鼻息が荒くなる。
 薫はついに“はむっ”と、大きく勃起した乳首を“ぷっくり”した乳暈ごと口に含み、
“れろれろ”とキャンディをそうするように舌で乳首を転がした。


『うあっ…きもちいいっ…きもちいいよぉ…』
 頭が陶然となり、おっぱいの熱がそのまま全身に広がってゆくような感覚…。
 馬鹿になりそうだ。
“…ぴちゃ…ぴちゃ…”
“くちゅ…くちゅ…”
“ちゅぷぷっ…”
“ちゅばっ…”
 誰もない保健室に、密やかな水音が途切れる事なく流れる。
『…おっぱいって……すごい…』
 薫だって、自慰はする。
 女になってしばらくは手を触れるのも怖かった陰唇を、
ゆっくりとしたペースでパンツの上から擦り、
陰核の隠れた包皮を軽くノックするみたいに押したりして、
腰から子宮から尾骨から広がる甘い“むずむず”した感覚を愉しんだりしたりもするのだ。
 少し怖かったから、まだ一度も膣内に指を入れたりはしていないが、
指に唾を付けて乳首を“くりくり”と転がしたり、軽く摘んだりは経験済みだった。
 でもこうして、「舌」というあたたかくてやわらかくてざらりとしたもので思うままに嬲ったり、
“ちゅうちゅう”と吸ったりするのがこんなにキモチイイものだとは知らなかった。
『もしこれが…ナオタの…』

 ――口だったら。

「くっ…ぅふあぁ…ぁ…あ…」
 その瞬間、一瞬で、頭が真っ白になった。
 何が起こったのか。
 目の前でカメラのフラッシュを焚かれたように、目がチカチカしていた。
 吸い立てていた乳首から思わず口を離し、薫はそのまま後向きにベッドへ倒れ込む。
 ギシギシとパイプベッドが安っぽいスプリングの音を立てて軋み、
仰向けの体の上で椰子の実おっぱいが“たっぷん”“たっぷん”と盛大に揺れ動いた。
『そんな…』
 ナオタの事を考えただけで…ナオタが自分のおっぱいをこうして嬲ったり吸ったり嘗めたり、
時々甘く噛んだり…そんな想像をちらっとしただけで、
今まで経験した事のない感覚が脳裏を真っ白に染め上げたのだ。
 ひょっとして、これが『イク』ということなのだろうか?
 イッてしまったのだろうか?
 初めてだった。
 信じられなかった。
 今までは自慰をしていても、なんとなく気持ち良くなって体があったかくなって、
あそこの“むずむず”が長いこと続いて…そうしてゆっくりとその感覚が
おさまるのを待つというような、そんな感じだった。

 でも、コレはなんだ?

 一瞬で神経を焼かれたような、目の前が真っ白になって、真っ暗闇に落とされて、
果てしなくどこか遠くに落ちてゆくような、ちょっと怖くも感じる不思議な感覚…。
 自分はどうなってしまうのか?
 どうなってしまったのか?
 どうなっていくのか?
 想像だけでコレだ。もし本当にナオタにあんな事をされたら、自分はどうなってしまうのか。
 想像するだけで恐ろしい。
 怖い。


『…ほんとうに?…』
 薫はベッドにあられもなく横たわったまま、自問する。
 捲くり上げた制服はそのままに、豊満でずっしりと重たそうなまあるい椰子の実おっぱいを晒し、
とろとろにとろけて蜜のこぼれるあそこを広がった脚の間に覗かせて。
 呼吸が荒い。
 乾いた喉を、唾を飲み込んで潤し、薫は熱っぽく潤んだ瞳で保健室の白い天井をぼんやりと眺めた。
 まるで、レイプされた後のような乱れようだった。
 確かに怖い。
 恐ろしい。
 でも、本当にそれだけだろうか?
 本当は、あのあまりにも激しい気持ち良さに身を任せて、乱れてみたいと思っていないだろうか?
『…馬鹿じゃねーの…』
 本当にそうか?
 ナオタに“ぎゅっ”と息が苦しくなるくらい強く抱き締められ、
呼吸が止まるくらい激しいキスをされて、おっぱいをいいようにめちゃくちゃに弄られ、
指で、口で、あそこを“可愛がって”もらえたら、
さっきよりももっともっともっともっと「上」の快楽が簡単に手に入るのではないだろうか?
『…そんなわけない。僕は男だったんだから、男にえっちなことされたって…』
 本当にそうなのか?
 今は女じゃないか。
 おっぱいがあって、膣も子宮もあって、男根はもう影も形も無い、完全な女じゃないか。

 ――本当は抱かれたいんだろう?

 “ずくん”と…お腹の奥の方で、男には無い器官が震えた気がした。
『ちがう―』
 “きゅうん”と子宮が収縮し、
膣がうねって膣口が“何か”を求めるように“きゅきゅきゅん”と幾度も痙攣するように締め付けた。
 自分の中のもう一人の自分が囁く悪魔のような甘い言葉が、薫の意識をどんどん侵してゆく。
 知らぬ間に、震える右手をそろそろと伸ばし、広げた脚の間に“そっ”と当てた。
 “ぬるん”と、そこはこれ以上無いくらいに濡れそぼり、
お尻の下に敷いたタオルが用を成さないのではないか?とさえ思えた。
 目の前にその手をかざし、指の間を“つうっ”と繋ぐ銀色の糸を見た。
『ぐちゃぐちゃ…』
 いやらしいおっぱい、いやらしいあそこ、いやらしい……こころ…。
 自分は、どこもかしこも「いやらしい」。
 もったりと広がりながら、それでも高く山を形作る重たいおっぱいが、呼吸に合わせて上下する。
 頂上の乳首は、パンケーキみたいに“ぷっくり”と膨らんだ乳暈の上で、
はしたなく充血して勃起している。
 それは確かに『誰かに』嘗めて、吸って、摘んで、噛んで欲しそうに見えた。
『…誰に…?…』
 決まっている。

 それは…

「…!?…」
 不意に聞こえたノックの音に、薫は“びぐんっ”と身を震わせて全身を硬直させた。

コンコン!…コンコン!…

 聞き間違いかとも思ったが、ノックは続いている。


「誰?ナオタ?」
 声を上げると、ノックの音は更に大きくなった。
「…ナオタなのか?……篠崎先生?」
 誰何の声にも、ノックの主は何も答えない。
 薫が黙っていると、その人物は扉を開けようとしてガタガタと音を立て始めた。
 そのせっかちな感じに、薫は声も無くベッドから起き上がった。
「…なんだよ…誰だ?って聞いてるのに…」
 “たゆんっ”と揺れた剥き出しのおっぱいを慌ててセーラー服に仕舞い込み、
ふらつく脚で床に降り立って、しっとりと湿ったタオルで股間を綺麗に拭う。
「…んっ……んっ……」
 拭うだけでクリトリスが刺激を感じ、腰が震える。
 セーラー服の裏地に絆創膏を剥がした右乳首が擦れ、“ぴりっ”と痺れが走った。
 イッた後で、体中が敏感になっている。
 乳肉が揺れるだけで、陰唇が捩れるだけで胎内を甘い波が走るのだ。
「ちょ…ちょっと待ってぇ………待てよっ!」
 甘ったれた、鼻にかかった声が自分の唇を割って出た事に驚き、薫は殊更に強い口調で言い放った。
 男に媚びるような、抱いて欲しくてたまらない欲情した女のような、そんな声だった。

ガシャガシャガシャッ!

 引き戸に嵌められた擦りガラスが割れそうなくらいの激しいノックに、薫は顔をしかめた。
 ひょっとしたら、誰かが部活で怪我をして、痛みで声も出ない状態なのかもしれない。
 だとしたら、ロックをしてしまったのはマズかった。
 さっきだって、ロックをした事で安心して“あんなこと”をしてしまったのかもしれないのだから。
「待てって…」
 扉まで行きかけた所で思い止まり、グラウンド側のカーテンと窓を全部開放してまわった。
 夕暮れの風が舞い込み、部屋に篭った濃密な“オンナの匂い”を拭き流してゆく。

ガシャン!ガシャン!ガシャン!

「もうっ!今、開けるからっ!」
 扉を廊下から、苛立ったように乱暴に叩く人物へ、薫は舌打ちしたい気分だった。
 間が悪いというのはこの事だ。
 もう少し早ければ、ベッドであんな事しなかっただろうし、
もう少し遅ければこの体の中を吹き荒れる嵐も治まってくれたに違いないのに。
 ほら。
 この乱暴なノックの主が直人かもしれないと思っただけで、
御主人様の帰りを尻尾を振りたくって喜ぶ犬のように、腰が“うずうず”してたまらない…。
 理不尽な怒り(逆恨み?)に憤慨しながら、
薫は重い腰のままのろのろと扉に近付き、ロックを外した。
「…いい加減、やめろよな。ガラスが割れたらどうす」
 開いた扉の向こうに立っていた人物「達」に、薫は言葉の途中で息を飲んだ。
「よう」
 白い歯を見せながら人懐っこそうに笑顔を浮かべたのは、
クラスメイトの坂東正志(ばんどうまさし)だった。
 大型犬が立って歩いているような威圧感を感じる柔道部の強面だが、
先週、部活中に脚の腱を痛めたとかで、今は部活を休んでいるはずだ。
 その後には後髪を半分だけ金髪に染めた山口浩次(やまぐちこうじ)と、
長い茶髪を尻尾のように首の辺りで縛った谷崎真一(谷崎真一)もいる。
2人とも、いつも坂東とつるんでいる悪友同士だった。


 乱暴な言葉遣いで罵倒してもちっとも動じない、
だからこそ気兼ね無くふざけあえる、薫の男友達でもある。
「なんだよお前ら…」
「なんだよは無いだろ?お前の鞄、持ってきてやったんじゃねーか」
 “人間に良く似たグレートハウンド”のような顔で邪気の無い笑みを浮かべ、
鞄とサブバックを差し出す坂東に、薫は眉を潜めた。
「ナオタはどうした?」
「ナオタ?」
「あ、えーと…岡島」
「岡島?名前、ナオタだっけ?」
「いいんだよそんなの。で、どうしたんだ?」
「ああ、なんか職員室に呼ばれていったぜ?転入時の手続きとか、連絡網の確認とか…」
「今頃かよ」
「まったくだ。抜けてんよなコウちゃん」
 「コウちゃん」というのは、
担任の浦瀬孝太郎(うらせこうたろう)の、生徒の間だけの渾名だった。
「ほれ」
「ん、さんきゅ」
「あ、ちょっと待った」
 鞄とサブバックを受け取った薫が扉を閉めようとすると、
坂東は扉を手で押さえて申し訳なさそうに右手を顔の前に立てた。
「すまん、ちょっと消毒薬とガーゼ取ってくれるか?」
「どうしたんだよ」
「陸上部で神戸(かんべ)が怪我してさぁ」
「またかよ」
「県大会も近いし、張り切ってんだろ」
「しょうがないな…」
 溜息を吐いて、薫は扉から離れた。
 そして、薬品棚まで歩き、オキシフルを探す。
 違和感を感じたのは、その時だった。
「…むがっ…」
 天地がぐるんっと逆転した。
 背後から床に引き倒され、押さえ付けられたと気付いた時には、
声を上げようとした口を両側から強引に開かれ、無理矢理汗臭い布を押し込まれていた。

 何が起こったのか、わからなかった。

 目だけを動かすと、両手と両脚を、坂東と山口と谷崎が押さえ付けていた。
 床に引き倒された時に軽くぶつけた後頭部がジンジンと痛み、鼻の奥が少しキナ臭かった。
 全身から汗が噴き出し、口の中に押し込まれた布がハンカチだと知ったのと、
3人に保健室の奥まで、床を屠殺した豚を引き摺るようにして
移動させられたのがほぼ同時の事だった。
 ベッドの陰の埃っぽいリノリウムの床で3人の男達に押さえ付けられ、
薫の中の本能が警鐘を鳴らす。
 頭から冷水を浴びせられたかのように、一気に血の気が引いた。
「んんっ!んーーーーーーーっ!!」
「うるせえよ。黙れ」
 見上げた坂東の顔が、さっきの邪気の無い笑顔が幻だったかのように醜く歪んでいた。
 目がギラギラとして赤らみ、上唇が捲くれ上がっている。
 興奮で赤黒く充血した顔が昔話の赤鬼に見えた。


「俺達を挑発するのも、いい加減にしとかないから、こうなるんだぜ」
 谷崎が長い茶髪をかき上げ、興奮気味に鼻腔を膨らませる。
 薫は彼の言っている意味が理解出来ず、一度、鼻で深く深呼吸した。
 だが、どうあっても理解出来ない。
 どうして急にこんな事をするのか?
 いつもの悪ふざけだとしても度が過ぎる。
『お前ら、どういうつもりだ!?』
 薫は目に力を込めて、思い切り彼等を睨み付けた。
「俺達、香坂に頼みがあるんだ。今から、ちょっと付き合ってくれよ」
 山口がニヤニヤと笑う。
 めちゃくちゃイヤな笑みだった。
 ワケが分からないままに、全身に冷や汗が吹き出る。
『ふざけんな!離せよ馬鹿っ!!』
「ふふぁふぇんっ!ふふぐぐっ!ふごっ!」
 必死にそう言って暴れたが、男達の腕は万力のようにガッチリと薫を床に縫い止めていた。
「何言ってんのか、わかんねー……よっ!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!〜〜〜っ〜!」
 「よっ!」という声と共に、捲れかけていたセーラー服を一気に襟元まで引き上げられた。
 “ぶるんっ!”と、細い体には甚だ不似合いな、
重たく、まあるい椰子の実おっぱいがまろび出て外気に晒される。
「うひょっ!でっけーー!!」
 あまりの事態に体が硬直し、薫は一瞬、我を忘れた。
 その一瞬を、ほんの1秒あまりを、男達は見逃さなかった。
 両脚を“ぐいっ”と引き上げられ、M字に固定されて、
折り曲げた右足をまずガムテープでぐるぐると巻かれたのだ。
 暴れる隙も無かった。
 身を捩る間もあらばこそ、左足もあっという間にぐるぐると巻かれ、
脚を押さえていた山口と谷崎がおっぱいにくっつくくらい薫の体を折り曲げる。
 それは、ひっくり返ったカエルのような、
おしめを代える赤ん坊のような、体の中心の大切な部分を何もかも晒した姿だった。
「ん〜〜〜〜〜ッ!!!んん〜〜ッッ!!!」
 その自分の姿に、薫は羞恥より先に恐怖が立ち、首を振りたくって暴れた。
 それでも、両手と両脚を押さえつけられ固定された体は少しも動かない。
「コイツ、ノーパンだよ」
「…なんでノーパンなんだよ。露出狂か?」
「しかもぐちゃぐちゃ。もうワレメが開いてんじゃん」
「おいおいおい、すでにヌレヌレで準備オッケーかよ」
「クリ、ちっちぇーなぁ。チチは馬鹿みたいにデカイのに」
「陰毛が薄いな。ケツ毛もすげー薄い」
「ビラビラはまだ伸びてないぜ?」
「色もピンク色だな」
「すげーやらしい匂いだ」
「なんか、ションベン臭くねぇ?お前嗅いでみろよ」
「漏らしたのか?」
「それより汁が垂れてきてるぞ?」
「なんだ?感じてるのか?」
「いや、オナニーしてたんじゃね?」
「ケツの穴、ココアみたいな色だな」
「ちょっと濃い?」
「こんなもんだろ」
 股間にあるものを克明に観察され、次々と口々に評されて、
薫は恥ずかしさと悔しさと怒りで死にそうになっていた。


 涙が盛り上がり、ボロボロと頬を伝ってこぼれた。
 友達だと思っていた。
 ふざけあって笑い合い、時には尻を蹴ったりしながら下らない事に一喜一憂する、
気のおけない男友達だと思っていた。
 それが、裏切られた。
 そう思った。
「香坂さ、俺達の頼み、聞いてくれよ」
 山口が薫に向かって再び口を開く。
 “さわさわ”と、剥き出しのお尻を撫でる手が、吐き気がするくらい気持ち悪かった。
「俺達、ずっと思ってたんだ」
 谷崎が、包皮に埋もれるようにして隠れたクリトリスをピースの形にした指で剥き出した。
「お前を抱かせて欲しいってさ」
 その言葉が心に染み込むにつれ、今度こそ薫は、
目をいっぱいに開いて“いやいや”と激しく首を振りたくって泣いた。

■■【12】■■
 半分くらいのクラスメイトが2年生の時から持ち上がりみたいに同じクラスになった中で、
彼等は、3年進級のクラス編成時に初めてクラスメイトになった者達だった。
 思えば、たった二ヶ月ではクラスメイトという意識も薄いし、仲間意識なんてものがあるはずもない。
 そもそも、長い入院生活で勉強が遅れ、学力が著しく低下した薫が編入試験で
そこそこの得点を取る事が出来た時点で、この学校の学力偏差値もわかろうというものだ。
その中でもこの3人は、いつも教師に嘆かれているくらい学力が超低空飛行している連中なのだ
(もっとも、薫も彼等の事を笑えないくらいの低空飛行ではあったのだが)。
 そんな連中と、たった二ヶ月一緒に過ごしただけで、
もう仲間意識を持って無防備に馴れ合っていた薫の方が迂闊だったとしか言いようがなかった。
しかも今日は、制服の下で窮屈そうにノーブラで揺れ動くおっぱいも、
セーラー服に浮かび上がる乳首も見られた後だったのだ。
 破廉恥な格好で男を誘う頭の悪い便所(ヤリマン)女。
 何も知らない男が見たら、即座にそう思っても仕方の無い格好だ。
 それなのに、他に誰もいない保健室の扉を無警戒に開けて背中を向けてしまった。
 襲ってくれと言っているようなシチュエーションではないか。
 たとえそれが顔見知りの、友人と思ったクラスメイトだとしても、
彼らは「男」で、薫は今や非力な「女」なのだ。
 レイプやストーカーの被害にあった女性の供述によれば、
その犯人の大半が知り合いや友人、顔見知りだという。

 ――レイプ。

 そうだ、これはレイプなのだ。




 薫は自分が元は男だったということを忘れていない。
 だがそれゆえに「彼女」は、生まれながらの女性が、
成長するにつれ徐々に異性に対しての『性的サイン』の抑制(コントロール)を
身に付けて行くのに対し、まるで思春期以前の子供の如き無自覚で、
無意味に周囲の男達に対してそれを発信し続けてきた。
 「パンツが見えるのもお構い無しにミニスカートで走り回る」
 「むやみに相手の体に触る」
 「相手の目を真っ直ぐ見てにこにこ笑う」
 「飲みかけのジュース缶に平気で口を付ける」
 「下着や生理や体の話でも、聞かれれば誰にでも話してしまう」
 「気を抜くとすぐに脚を開いて座ってしまう」
 「キャミを着ずにセーラー服を着る」
 「男の目の前でスカートをバタバタと扇ぐ」
 全て、思春期の男子に対しては不用意な行為だった。
 今までは周囲も薫が『リヴァース・プロジェクト』被験者である事を知り、
「元は男だった」という事実がブレーキになって男子からの性的アプローチは、
ほとんど皆無と言って良いほどされてこなかった。
 だが、それは単に運が良かっただけだ。
 薫はそれを今、イヤと言うほど思い知り始めていた。
「んんっ!!!」
 薫の眉が苦悶の形に潜められ、腰が“ビクッ”と震えた。
 谷崎が、剥き出した敏感なクリトリスを人差し指で無造作に捏ねたのだ。
「お?感じた?」
『そんなワケあるか馬鹿野郎ッ!!』
 女の陰部…特に、包皮に包まれたクリトリスは特にデリケートなパーツだ。
 濡れてもいないそこを、濡らしてもいない荒れた男の指が前触れも無く嬲ったのだ。
 感じるどころか、まるでヤスリがけでもされたような痛みしかしなかった。
「んっ!んんっ!んっんっんっ…んっんっ…」
 それなのに、勘違いした馬鹿の山口は、
可愛そうな震えるクリトリスを“くりくり”と何度も弄った。
 こんなヤツらに対して弱味など見せたくないのに、
痛みと恥ずかしさで涙が後から後からあふれて止まらない。
 ちょっと押さえ込まれただけでこれっぽっちも抵抗出来ない非力な女の体が、
この時ほど恨めしいと思った事は無かった。
「よっ…と」
 坂東が薫の上半身を起こし、
薫が痛みに耐えている間に両手をガムテープでぐるぐるとまとめる。
「…んんっ…んっ〜〜!…ッ…」
 それでもう、薫は完全に手も足も動きを殺された事になった。
「へへっ…」
 薫の腕がすっかり固定されてしまったことを確かめると、
坂東はおもむろに彼の大きな手にも余り、溢れてこぼれる薫の白いおっぱいを
両手で背後から掴んで思うさま“むにむに”と揉み立てた。
「香坂よう…俺達が完全人畜無害な道徳的クラスメイトだとでも思ってたのか?
毎日毎日、俺達の前でデケぇ乳揺らしやがってよ。ずっと我慢してた俺達の身にもなれってんだ」
 重量感たっぷりなおっぱいを好き勝手に揉まれ、
勃起した乳首を“くにくに”と中指と親指で摘まれ、引っ張られ、こねくり回された。
 鈍い痛みと、苦しみと、それにほんのわずかに混じる甘い感覚に、薫の顔が真っ赤に染まる。


「こっちは全然使ってないみたいだな」
 脚の間では“くぱぁ”とあそこを指で広げられ、
サーモンピンクに濡れる粘膜を、体の中を見られていた。
 同時に、“カシャッ”“カシャッ”“カシャッ”と、何回も何回も、
電子的に合成されたシャッター音が耳を打つ。
 あそことおっぱいと顔が同時にフレームに入る位置から、
谷崎がニヤニヤと笑いながらケータイで撮影していたのだ。
 その様子が、薫からは山のような乳房と曲げたままガムテープでぐるぐるに巻かれた両脚の谷間の、
下草のように茂った陰毛の向こうに見えていた。
 こんなアングルで素裸の股間を見られたら、きっと男でも恥ずかしいと思うに違いない。
「んんっ!!ん〜んっ!!んっんっ!!
「おとなしくしねーと、この写真、すぐに他の男子に回すぜ?」
 その言葉に、薫の頭から血の気が引いた。
「おい、おっぱい出せ、おっぱい」
「お前、ホントに好きだよな、香坂のデカパイ」
 坂東が下がりかけていたセーラー服をたくし上げ、
突出したおっぱいに引っ掛けるようにして、薫の胸が全て光の下に晒される。
「揺らせよ。動画撮るから」
「チチ揺れ〜」
 谷崎の言葉に、坂東がそう言いながら薫の量肩を掴み、前後左右に揺らした。
 大きくてやわらかくて白い、たっぷりと身の詰まった豊乳が
“ゆさゆさ”“たっぷんたっぷん”と面白いように揺れ動く。
 散々揉まれ、弄られ、嬲られたおっぱいはピンク色に染まり、
乳首は痛々しいほど硬く勃起していた。
 決して性愛で感じたわけではない。
 だが自慰によって一度は高みに昇りつめ、敏感になった体を嬲られたのだ。
 心では嫌悪し、否定し、怒りと屈辱に燃えていても、
一度火の点いた体は容易には刺激に対して鈍感にはなれなかった。
「ひっ…んひっ…」
 ハンカチを押し込まれた口内から嗚咽が漏れる。
『誰か助けて…父さんっ…母さんっ……先生…………』
 近しい人達の様々な顔が浮かんでは消える。
「あ〜あ、泣き出しちゃったよ。谷崎ってひでぇヤツだな」
「おいおい、俺のせいかよ!?」
「泣くなよボケ。これから気持ち良くしてやろうってんだぜ?」
 ゲラゲラと笑いながら、男達は薫の頭を小突き回す。
 感情が飽和し、どうしようもなくなって、薫は泣きじゃくった。
 逃げたかった。
 こんなヤツらに体を自由にされるのは絶対にイヤだった。
『…誰かっ…』
 絶望が心を塗り潰そうと体の一番奥深い闇の中からじわじわと押し寄せてくる。
 その中にありながら薫は、潤んだ瞳できょろきょろと周囲を見回した。
 見えるのは自分を取り押さえ周囲を囲む、いやらしく欲望にまみれた男達の顔。
 そしてその向こうに見えるのは、ベッドを覆うベージュ色のカーテンだった。
 廊下側からは見えない。
 グラウンド側からも、部屋を覗き込んだくらいではカーテンの向こうで
何が行われているのか窺い知る事は出来ない。
 なにより、身動きも取れず、声も上げる事も出来ないこの状況で、
誰が気付いてくれるというのか。


 だがその時、自分でも思いもよらない顔が鮮明に脳裏に浮かんだ。
『…ナオタ!…ナオタ助けてっ!ナオタっ!!…』
 その顔は、昔の面影が残らないほど精悍になっていたが、
寝顔だけはどこか無邪気な幼さを感じさせる、直人の顔だった。
「香坂、お前、ヴァージンか?」
 不意に名前を呼ばれ、薫は涙がいっぱいに溜まった瞳で、声の方を見やる。
 口に指を突っ込んだ山口が、その指を“ぬらっ”と出した。
「俺らがもらってやるからよ」
 指にはべっとりと唾が纏わり付き、気持ち悪かった。
 その指を、山口は薫のあそこに塗りつける。
『…や…やだっ!やだぁあ〜!!』
 逃れようと腰を揺すっても、固定されてしまっていてはそれも叶わなかった。
「…んんーーーーッ!!!」
 “べとべと”“ぬるぬる”とした気持ち悪い粘液が、
オンナノコの大切な場所に無遠慮に塗り付けられていくたび、そのあまりのおぞましさに、
まるでそこから腐っていってしまうような嫌悪感が全身を巡り、身震いした。
「へへっ…感じてるよ」
 その嫌悪の震えを快感によるものだと再び勘違いした馬鹿な男に、
薫は自分の方こそ唾を吐き掛けたい気分だった。
 彼らは自分達の身勝手な指では女を悦ばせることなんて出来ないのだと、
どうしてわからないのか?
 ましてや、こんな風に無理矢理弄くられて、誰が感じるものか。
 薫は、神話のゴルゴンのように視線で人が殺せるのであれば、
すぐさまその効力を発するような目付きで山口を見上げた。
『え…!?…うそっ…』
 その目が、再び恐怖に歪む。
 山口がズボンのベルトをカチャカチャと外し、トランクスごと摺り下げたからだ。
 半分皮を被った陰茎がガチガチに硬く勃起して、先端から先走りの粘液が垂れ落ちている。
 その凶悪さ、醜悪さはどうだ。
 赤黒い、つるりとしたゴムのような質感の亀頭。
 浅黒い皮膚には太い血管が浮かんでいる。
 その根元には、タワシのように“もしゃもしゃ”とした真っ黒な陰毛。
 自分が男だった時にはそんなこと思いもしなかったのに、
今こうして女の目で見る陰茎の、なんてグロテスクなことか。
 こんなものを自分の体の中に入れようとする、その感覚が信じられなかった。
 こんなものを入れられたら、おぞましさで本当に膣から腐ってしまいそうだ。
 薫は“ひゃくっ”としゃくり上げると、
涙をボロボロとこぼしながらものすごいイキオイで首を振りたくり、イヤイヤと目で懇願した。
 もう、恥もプライドも無かった。
 やめて、やめてと心の中で何度も叫び、
少しでも逃れようと先ほどの比ではない激しさで腰を揺すった。
 それでも、坂東達は全くといって良いほど気に留めない。
 たかが女の力、もう絶対に逃げられはしないと、完全に侮っているのだ。
「コウ、俺が先だろうが」
「俺、もう我慢できねーよ!」
「てめぇ…俺が誘わなきゃさっさと先に帰ってたくせに、ふざけんな」
「…ちっ…」
「抱いてろ」
 嗚咽を漏らし泣きじゃくる薫を抱き起こし、坂東は彼女の背中を“とんっ”と押した。


 そのまま薫は、膝立ちの状態で山口に抱き止められる。
「へへっ…いーにおいだな」
 髪に顔を埋め、首筋に鼻をつけて息を吸うその感触に、薫の肌が粟立った。
 前傾気味になり、豊かな乳房がさらに豊かに見える角度だった。
「おお〜たぷたぷだな」
 重さを量るように右手で薫の左乳房を“たぷたぷ”と持ち上げ、
山口の顔がにやにやといやらしく崩れる。
「うはは、重てぇ!」
「結構な重さだよな。いったい何グラムあるんだか」
 右の乳房に手を伸ばしながら、谷崎が感心したように言う。
「うつ伏せにしろ」
「いきなり後からかよ」
「女はな、バックでハメるのが一番なんだよ」
 膝立ちの薫のミニスカートを捲くり上げ、坂東は白くてすべすべした、
そのシミ1つ無いお尻を撫で回した。
 薫の左右のおっぱいは、山口と谷崎のおもちゃだった。
 山口は薫の肩を押さえながら左の、
谷崎は体を床と水平にしたために自重でどうしようもなく垂れ下がった右のおっぱいを、
笑いながら弄くった。たっぷりとした重さを確かめ、
硬く勃起した乳首を、牛の乳を搾るように引っ張り、指で弾き、おっぱいの中に押し込む。
 痛みで薫が身を捩っても、
おっぱいの揺れ動く先どこにでも2人の手は追い縋って同じ事を繰り返した。
 なぶりものだった。
 男達に寄ってたかって体中を撫で回され、おもちゃにされる。
 その激しい屈辱と魂を引き裂かれるような羞恥と果ての無い嫌悪と無力感に、
薫は今にも気が狂いそうだった。
「お?誘ってんのか?待ってろよ、今入れてやっから」
 少しでも挿入を遅らせようと腰を捻ってお尻を振ったのを、
坂東は自分勝手に解釈してベルトを外しながら笑った。
 もう駄目だ。
 逃げられない。
 ボクはこいつらに犯されるんだ。
 犯されてしまうんだ。
 汚されてしまう。
 身も心も汚く穢されてしまう。
 絶望が、真っ黒に心を塗り潰してゆく。
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