ご当地マッドサイエンティスト (前編)


「街に怪人が出た?」
「ああ、お前も速く逃げろ、じゃあな」
「…いやいやいや」

本当だった。


越してきて半年ながら、いつも通りの日曜日。
ゲーセンでワンコインを堪能し終わり、昼飯を食いに行く、いつも通りの道すがらだった。
同じアパートに住む同じくゲーマーののあいつの忠告を無視して向かった先には怪人がいた。
ちょっと寂れた街の商店街広場、中央に顔の長い…馬っぽい顔と顔以外は妙な装飾がごてごてついた鎧の男。
右手で女性?を釣り上げて「ヒヒーン!」とか。シュールだなあ。
遠巻きに眺めている人もいるが商店街の人はあまり気にしていないような。
「いやぁっ!」「ヒヒーン!」「助けてぇ!」「ヒヒーン!」「あぁん、下ろしてぇ!」「ヒヒーン!」
ご当地ヒーロー待ち?よく見れば両手を釣り上げられた白衣の女性が時折り上下しているのは、
足が地面についてるし、たぶん疲れないように休んでいるのか。そういや観客も男性が多いのは、そうかそういうことか。
一応念のため行きつけの定食屋のオヤジに聞いてみた。

「あー、あれねー、助けてあげるといい事あるよー」(ニヤニヤ)
「ご当地ヒーローとかそういうのですか?」
「いやー、名物だけどヒーローではないなあ、お兄ちゃん越してきたばっかりだし一度助けてみるといいよー」(ニタニタ)



「あのー、その人を放してください」
「ヒヒーン!!」
うわ、馬の人嬉しそうだ。
「ちょっと!もっと力強く!男の子でしょ!」
小声とはいえ捕まっている人にダメ出しされた、なんだ、あれか撮影とかしてて紹介ムービーに使われるんだろうか。

「そっ、その人を放せぇ!」
「助けてくださいぃ!!」
振りほどいて、というか普通に下ろされた白衣の女性が僕の後ろに回りこみ背中にすがっている。
あ、これはちょっと楽しいかも。
「さあ、これを使って!あの淫獣を懲らしめてください!」

…はい?インジュー?いんじゅう?
改めて怪人を見ると捕まっていた女性の白衣で見えなかったが、股間部分には立派な一物がそそり立っていた。
俺よりでかい、っていうか馬並ってヤツですかァー!
顔を見上げてみると、近づいたおかげで解ったがこの馬面は被り物じゃなくて素、っぽい。おい、ガチかよ。

「ヒヒーン?」
明らかに脅えの色を見せた俺に馬の人が首をかしげている、「大丈夫?」って感じだ。いや、まて台本よこせ、どうなってるんだ。

「大丈夫、これを使えばあいつに勝てるはずだから!自分の力を信じて!」
白衣女性に渡されたのは真っ赤なカチューシャだった。
「さあ、それをつけて変身よ!」
「え、あ、はい」
まあなる様になるか。つけてみた。


異変は一瞬だった。
頭にはめた瞬間に白衣の人でもない声がカチューシャから聞こえてきて僕の視界は真っ白になった。
(装着確認適正可変換準備開始最適類型検索完了変身防護壁展開変身実行)
着込んできた服の重みがなくなる感触、素肌が外気に触れる感触、非物理的な熱さがカチューシャから発生し、それがそのまま頭全体、首、脊椎と伝わっていき全身に行き渡る感触。衣擦れの感触。
言いようのない、でも小さくなる感覚、かつての自意識の思う体格から小さく、男でもない、少女の手足のような感覚
いつのまにか伸びた髪がまとめられ、肩と胸元が覆われ、股間と腰周りが覆われ、足にはブーツの手から肘までもロングの手袋に包まれる。
全身から熱さが溢れだしたピークのあとは、またカチューシャから涼しさが拡がり手足の先までが落ち着きを取り戻す。
(全項目完了遮断解除)
その次に聞こえてきたのは歓声だった。

「ぉぉおーー!!キターーー!!」「ヒヒヒ───ン!!」「イヤッホーーーウ」「このために生きてるゥ!」

やや大きくなったように見える馬の人が非常に嬉しそうだ。うわ先走りが噴出して竿がぬらぬらしてる。

「(情熱に燃える赤き信念!レッドデルタハート!って言って)」
「え?」
「(だから、情熱に燃える赤き信念!レッドデルタハート!って言って)」
「じょうねつに燃える赤き信念れっどでるたはーと」
「もっと元気良く情熱的に、ね?情熱に燃える赤き信念!レッドデルタハート!って」
「情熱に燃える赤き信念!レッド!デルタ!ハーート!」

「うおおおぉぉぉ!!!!」「新キャラキターーー」「赤髪ツインテーーーール」「レッドちゃんかわゆひぃぃいっぃい!!」「ヘソだしヒャホーイ!」「ヒヒヒ───ン!!」

観衆に見守られる中、無意識にポーズを取っていた。良くわからないけどなんかいけるような気がする。

「博士を捕まえ街を騒がす怪人め!レッドデルタハートが許さない!」
博士って誰だ?、でも正義の味方だから当然だよね。うん、…うん?
自意識は上の空のまま口と体が勝手に動き怪人との戦闘がはじまっていた。
一蹴りで怪人の顔の高さまで飛び上がり左右パンチ二連で牽制してから右足で蹴り上げ上がった蹴り足で即座に蹴り下ろす。
軽い牽制パンチはヒットしたが蹴り上げは避けられ返す刀の蹴り下ろしはガードされてしまった。が即座に重心を移しガードに使った相手の左腕を踏んでさらにジャンプ、
丁度昼時の太陽に隠れ上からの強襲は成功し馬面に全体重を載せたストンピング。
よろめき膝をつく馬の人。行ける!構える僕に白衣の人が叫んだ。

「さあ必殺技よ!」
「・・・?」

なぜかうなずく僕。
(淫獣を倒すためにはデルタハートの聖なる力で浄化する必要があります。これは必要な儀式です、協力してください。)
カチューシャの声がする。ああ、良くわからないがやってやるぜ!ああ、カチューシャに操作されていたのか、なるほど。
だが正義のために戦う僕には些細なことだった。戦闘の構えを解き馬の人に近づく。
浄化技は射程が短いため接近する必要があるのだ。
馬面の鼻息がふとももにかかるぐらい近づき技を開始する。まずは右手を真上に掲げ、左手で左下を指す。
「オープン!」
三角形を描くように右手で右下へ直線に動かし、左手は先ほどまで右手で指していた頂点へ直線で動かす。
「デルタ!」
右手と左手をベルトのあたりで蹲踞の様に左右でそろえスカートとパンティ止めも兼ねたスナップボタンを外す。えっ?
「ハート!」
両手の親指と中指でハートマークを形作りながら、人差指でおまんこを開く。…ちょ、えっ?
(レッドデルタハート、動揺してはいけません!聖なる力を魅せつける必要があります。)
「ヒ、ヒーン」
あ、本当だ弱ってる。え、でもその、これって、うそでしょ?
内心の動揺を他所に秘所を自分の指で広げたまま腰を突き出し、ガニ股のままじりじりと馬に近づいていた。

「だって、…うそ、なに、えっ、いや」

観音様を魅せつけたまま、意思に反してじりじりと近づく。よわよわしく頭を振った馬面の鼻先がふとももの内側にぺち、ぺちと当たる。
接近に気付いた馬の人が顔を上げると…

ぺちょ


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