夢に美女が現れる。
 これは夢だ。こんなに美しい女性が、僕の理想そのものの姿をした女性が現実にいるわけがない。
 色白で張りのある若々しい肌。わずかに幼さの残る丸顔に穏やかなたれ目。
 ストレートの黒髪は長めのボブカットで、濡れたような光沢を放っている。
 細い首と華奢な肩、浮き出た鎖骨。対照的に豊満に実った乳房は僕の顔を片方だけで覆ってしまうほど。それでいて先端の桜色をした部分はあくまで可憐。
 すっきりした贅肉のない鳩尾から下腹。左右に広い腰から下はしっとりと肉が乗っており、腰のくびれから尻の丸み、太腿の肉感が魅惑的な曲線を描いている。
 これは夢だ。夢に現れる美女――サキュバス。
「あ、あぁ……あぁ……」
 僕は朦朧とする感覚のなか、逃げようと体を動かそうとした。
 しかし、自由に動かないのが夢の常。イモムシのようにもがくのが精一杯だった。
「怖がることないのよ、ボウヤ。これからたっぷりと、いい夢を見せてあげる」
 サキュバスは微笑むと、僕の股間に顔をうずめてきた。
 魅惑的な肢体にすでに反応していた僕のペニスに舌を這わせ、上目遣いに見つめてくる。
 その妖艶な舌遣い。たちまち肉棒はこれ以上ないほど膨張し、早くも透明な液を漏らしていた。
 舌が裏筋を上る。唇が時折軽いキスをするように肉棒のあちこちに触れ、そのたびにペニスが痙攣して先走りが下腹にこぼれる。
「うぁ……あぁ……あぁぁ……!」
 数秒前まで僕を襲っていた恐怖はすでに消え去り、僕は彼女の口元を期待に満ちた目で見つめていた。
 そしてサキュバスはにやり、と笑い亀頭にキスするとそのまま膨張しきった男に吸い付いた。
「ああぁ……あ、あぁぁ……!」
 唇がカリの溝に密着し、舌が亀頭を這い回る。さらに吸引と細かな上下動が加わり、僕はその快感に瞬く間に屈服した。
「ああ、あぁぁ……!」
 どくどく、どくどく……。
 精液が溢れる間、吸引は続く。まるで生命を吸い取られているように、射精の脈動のたび、自分の腹がへこんでいくのが見えた。
 腹だけではない。胸板も薄く、手首が細くなっていく。
 吸われている。僕が吸われている……。
「ふふ……まだよ、ボウヤ。もっと気持ちよくしてあげる。いい夢はまだまだ終わらないわ」
 サキュバスがそう言って僕の腰を抱きかかえる。
 胸元に引き上げられた股間が彼女の豊満な胸に埋まり、その甘美な感触に男が息を吹き返す。
 しかし、完全に勃起した男の証は、彼女の乳房に包まれまったく見えない。
 彼女は胸を寄せ上げもしない。ただ僕の腰を抱き寄せただけで、僕のペニスをすっぽりと包み込んでいる。
 それどころか乳房の弾力と重みが、四方八方から男の証を圧迫し、早くも快楽を搾り出していく。
「あぁ……あぁ……うぁぁ……」
 女の胸に包まれた男の象徴が、苦しげに痙攣を繰り返し、先走りを垂れ流す。
 甘い感触に悶え呻く僕をサキュバスは笑みを浮かべながら見下ろしていた。
 不意に、彼女の二の腕がきゅっと狭まり、双房に圧力が加わる。
 すでに射精寸前だった僕は、乳房にペニスを押し潰される刺激に思わず腰を揺さぶってしまう。
 あまりに圧倒的な快感から逃れようとしたのか、あるいは本能的に敗北を認めて白旗を揚げたのか――
 腰の揺さぶりに、圧迫されていた乳房とペニスが擦れ、その刺激で僕は再び射精した。
「あっ……あっ……あぁっ……!」
 びくり、びくり、と腰をひくつかせ、そのたびに手足が細く縮んでいくのが見えた。
 長い射精が終わると、サキュバスは僕の腰を解放し、覆いかぶさるように僕の顔を覗き込んだ。
 いつの間にか僕の手足は、細く華奢に見えた彼女よりも貧弱になり、体格自体が彼女よりも小さくなっていた。
「ふふ……さぁ、いい夢は見られたかしら? いい夢はこれでおしまい。ここからは、悪夢の始まりよ」
 両手を彼女に押さえ込まれる。胸に乳房がのしかかり息がつまる。
 押しのけようともがいても、微動だにしない。
 そしてサキュバスは、腰を艶かしく振り、股間と股間を擦り合わせる。
 連続の射精にすっかり萎えた僕のペニスは、しかし、彼女の女陰に吸い込まれるように収まった。
 熱く粘つく感触に圧迫感。無数のヒダが絡みつき、いつの間にか僕は三度勃起していた。
「うぅ……うぅ、あぁ……!」
 悪夢。たしかに快感はある。だがそれ以上の喪失感、虚脱感。
 大切なものが奪われていく感覚。捕食される恐怖。
 サキュバスが腰を振る。もはやそれが快感だと認識するよりも先に、粘液が暴発する。
 もうやめてくれと、体が降伏を示したのだ。
 それでも悪夢は終わらない。
 射精した僕を見下ろし、笑みを深めたサキュバスは腰の動きを止め、引き離した。
 ずるり、と引き抜かれる感触。
 彼女が僕の首に手を添え、頭を引き起こす。
「あ、あぁ……!」
 悪夢だった。
 僕の股間にあったはずの男の証はなく、やせ細った股間には筋が一本。
 そして、サキュバスの股間には、暴力的に張り詰めた肉棒が。
「ふふ……まだよ、ボウヤ……いえ、お嬢ちゃん。悪夢は、ここからが本番よ」
 膝立ちになったサキュバス――もうインキュバスだろうか――は僕の上半身を引き起こし、僕から奪ったペニスを僕の口元に突きつける。
 元は自分のモノでも、ペニスを口に入れるなんて……閉ざした口元はしかし、鼻先をかすめた匂いに、力が抜けてぽかんと開いてしまった。
「うぐぅ……!」
 その隙にサキュバスはペニスを僕の口にねじ込んだ。
 口中に広がる、見知った匂い。しかし、今の僕にはそれが、香ばしく甘美なものに感じられた。
 唾液が溢れ、反射的に吸い付く。咀嚼するように舌を絡め、喉を鳴らす。
 そしてサキュバスが腰を振り始めた。
「む、うぅ……うぅ……」
 苦しい。息ができない。なのに放せない。
 激しいピストンに匂いが濃密になり、そして爆ぜた。
 濃厚な粘液が溢れだし、本能的に飲み下す。息苦しさも忘れて夢中になった。
 熱い粘液が食道を通って胃に落ちると、熱が広がってやせ細った体に滋養がいきわたるのを感じる。
 しばし忘れていた呼吸を再開する。一呼吸ごとに痩せて骨の浮いた手足に瑞々しい肉がついていく。
 手足だけではない。いや、むしろ手足よりも顕著に、胸が柔らかに肥え、乾いた肌が潤いを取り戻し始めた。
 奪われた生命力が還元されているのか。しかし、戻され体に宿っていくのは男のモノではない。
「くっ……あぁ……!」
 骨格の軋む鈍痛に息が乱れる。精を奪われ縮んだ骨格が成長……いや違う、変形していく。
 腰骨が広く、高い位置に。同時に股関節も変化したのか、内股になる。逆に肩幅は狭く縮んだようだ。
 女の体。奪われた股間にふさわしい体へと変化していく。
 悪夢はまだ終わらない。
「ふふ……意外に、イイわね、あなた。さぁ、次は胸よ」
 指で顎先を突かれると、僕は仰向けに押し倒され、膨らんだ胸が広がった。
 サキュバスは僕の胸をまたぐようにして腰を沈め、固いままの肉棒を膨らみに擦り付ける。
「あ、あぁ……!」
 その瞬間、僕は電流を浴びたように体を痙攣させた。
 気持ちいいのだ。乳首でもない胸の膨らみを男根で触られるのが。
 さらに彼女はペニスを胸に押し付ける。先端から透明な粘液があふれ、胸に塗り付けられていく。
 無意識に僕は胸の膨らみを両手を寄せあげ、ペニスを抱えようとしていた。
 だが彼女の男根は太く長く、僕の乳房は小さかった。掌で膨らみを寄せ、指でペニスを胸に抱える。
 それが精一杯。とても彼女のようにはいかない。
「いいのよ、それで。ふふ……ちゃんとできたら、その分だけご褒美をあげるわ」
 そう言って彼女は腰を前後し始めた。
 固く熱い肉棒が僕の胸に擦れる。透明な粘液が大量にあふれ、胸全体がぬめる。
「あっ、あっ、あっ……」
 突き上げの快感に声が漏れ、乳房の肉量が徐々に増えていく。
 僕の乳首が鮮やかに充血した。
 女の体に変えられ、胸を犯され、僕は感じているのだ。
 悪夢だ。禁断の快感に溺れていく背徳感と罪悪感。
 胸の膨らみは彼女のペニスを挟み込めるほどに大きくなり、僕は空いた両手の指を勃起した乳首に這わせる。
「はぅぅ……あぁ……あぁ……」
 味わったことのない強烈な刺激に思わず腰を揺さぶる。擦り合わせた太腿がじっとりと粘ついていた。
「ふふ……イイわね、あなた。ご褒美よ、ちゃんと受け止めなさい」
 腰の動きが早まり、胸がムクムクと膨らんで男根の先端を包みこむ。
 そして熱い粘液が噴き出した。
 胸の谷間からこぼれる白濁を反射的に掬い取ってしまう。
 あぁ……だめだ、これを受け取ったら、また体が女になってしまう。
 なのに体が言うことをきかない。吐き出された粘液を胸の谷間に受け止め、飛び出して顔にかかった液も舌を伸ばして舐め取った。
 谷間に粘ついた白濁が肌に浸透していく。粘液に侵された胸がじんじんと熱を持ち、また大きく膨らみだす。
「あぁ……」
 ムクムクと両腕でも抱えきれないほど。片方だけでも自分の顔よりも大きく。
 彼女の胸にも負けないほどの大きさ。肌にはプリプリとした張りがあり、瑞々しい弾力に満ちた女の肉が芸術的な球体を形作っていた。
 乳房の重みで華奢な胸板が圧迫される。息が苦しい。
 しかし、僕は両乳房を腕で抱えるように寄せ上げ、媚びる視線をサキュバスに向けてしまう。
 もう一度してほしい。またこの胸に肉棒を突き入れ、白濁を浴びせてほしい。
 そんなことされたくないのに、快楽の染み付いた体が勝手に求めてしまう。
 これ以上胸が膨らんだら、自分の胸の重みで押し潰されてしまう。そんな恐怖と、そうなってもいいと思えるほどの渇望感。
 自分の胸が膨らんでいくさまを思い出すと、腰がビクつきあふれた粘液が太腿にぬめる。
「ふふ……また胸でしたいの? でも、本当に欲しがってるのは、ここでしょう?」
 言って、サキュバスは僕の両膝に手をかけ、グイと脚を開かせた。
 自分の胸に遮られ、まったく見えないが、太腿の間に粘液が糸を引く感触があった。
「だ、だめ……そこは……それだけは……」
 胸を犯されただけでこんなにも求めてしまうようになったのだ。それを許したら、自分は完全に男を喪失する。二度と後戻りできない。
「あなたに私を拒否できると思って? それに、私は十分愉しんだわ。これが終わったら、あなたのコレ、返してあげてもいいのよ」
 言って、僕の右手にぬめった肉棒を握らせる。
 返してもらえる? ふってわいた希望と、快感への期待が重なり、僕は彼女を受け入れた。
 股間の異物感。粘膜同士が擦れる痛みと快感。
「あぁ……あっ、あぁっ……!」
 彼女が動く。決して早い動きではなかったが、体内で粘膜が摩擦する未知の快感に僕は翻弄され、そして溺れていく。
 彼女が突き上げるたび、腕に抱えた乳房がユサユサと波打ち、自分の物とは思えない妖艶な声が漏れる。
「ふふ……とてもいい姿になったわ。特別よ、種を注ぎ込んであげるわ。ふふ……」
 下腹部に膨れ上がる熱。彼女の男根から熱い何かが注ぎ込まれていく。
 そして、彼女は僕から離れた。股間に挿入された異物感が徐々に薄れ、あるべきものが戻った感覚。
 しかし、膨らんだ胸も、細くなった肩も、広くなった腰や内股になった脚も、そのままだ。
 そして何より、注ぎ込まれた熱が下腹部で渦を巻いている。
「ほら、よく見なさい。あぁ、胸が邪魔で見えないかしら?」
 いつの間にか仰向けの僕の枕元に移動していたサキュバスが、僕の両脇を抱えて上体を起こす。
 両脚を投げ出したまま、彼女に後ろから抱きとめられる。
 サキュバスよりも華奢になった僕の体は、その両腕にすっぽりと収まり、小さな背中は豊満な乳房に包まれてしまう。
 そして彼女にうながされるまま、下を向く。
 サキュバスにも負けないほど大きく膨らんだ乳房が視界をさえぎる。巨大な肉量をたたえた両乳房はしかし、重力に負けることなく美しい球体を前方に突き出していた。
 体をよじり、胸をよけて体を観察する。
 白くすらりとしたわき腹から尻まで、ひょうたんのようなくびれと膨らみのラインを形作っている。
 そして股間には、そこだけ男を主張するペニスが存在していた。
 力を失い萎れているものの、陰嚢とともにちゃんと戻っている。
「あら、そこじゃないわ。もうちょっと上よ」
 サキュバスが耳元で囁く。疑問符を浮かべた僕はさらに上半身をよじり、胸に隠れていた下腹に視線を移した。
「え……?」
 下腹が、ぷっくりと膨らんでいた。
 まるで妊婦のように。そしてその膨らみは、徐々に大きくなっている。
「サキュバスの種をあなたの胎内に注いだわ。今あなたのお腹にいるのは私たちの赤ちゃんよ」

つづく
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