この世には、時として予想だにしない出来事に遭遇することがある。
彼、一条朔太郎だった人物も『それ』に遭遇した一人である。
彼の場合は……

「まいったな……。」
 清々しい朝の日差しを浴びて、目覚めの一言がこれである。さわやかさの
欠片もない、後ろ向きな言葉である。それは仕方のない、しかし一般人に
しては冷静だと思う。
「どう見ても胸…だよなぁ〜。」
 体を見下ろすとあるはずのない膨らみ。股間の物足りなさ。色々なところが
昨日寝る前と変わってしまっている。
 何となく落ち着かないので視線を離す。視線を上げると別の視線とぶつかった。
「ようやく気がついたか。」
「………ダレデスカ?」
 小柄な女の子がいた。長い黒髪と白い肌が目を引く人形のような子だった。
「我の名はサクシヤだ。悪いが貴様に憑かせてもらうぞ。」
「わかった!これは夢だ!そうに違いない!だから俺が女になってて訳分か
らん奴が出てくるん…あいた……」
「目が覚めたか愚か者。次はこのカッターを投げるぞ?」
 手近にあったものを投げつけて言い放つサクシヤと名乗る女。
「くそっ、お約束の現実逃避ぐらいさせやがれ。」
「だまれ、そんなことではこの先生きていけんぞ?」
 起伏のない胸を反らし、偉そうに語るサクシヤ。正論のような気がするが起き
たら性別が変わっているなんてこと、すぐに受け入れろというのが無理なのだ。
少しは常識ってものを考えてほしい。俺はただの小市民なのだ。



突然のことに言葉を失っていると、
「朔ちゃん起きてる?………えっと〜どなたですか?」
 気まずい沈黙という混沌な状況に新たなる混沌が現れた。哀れな乱入者の名
前は紅葉という。二つ上の大学生で、傍目にはどこにでもいる姉である。ただし、
趣味が呪術というどこにでもいない趣味を持つ、変わり者の姉である。
「よく知らないんだけど朝起きたらいたんだ。悪いけど追い出してく…」
「お前が誰だ。」
 追い出してくれないかと言おうと思ったのだが……最後までしゃべらせてもらえなかった。
「……朔ちゃんはどこ?」
「朔太郎ならそこにいるではないか。まあ、多少姿形が変わってはいるがな。」
「またまたそんな嘘ついちゃって〜」
「この邪神サクシヤの名にかけて断言しよう、嘘ではない。我が手を下したのだ、間
違いは起こらん。なんなら本人に確かめればよいだろう。」
 どうも軽く落ち込んでいる間に話に置いていかれたようだ。邪神だとかそんな物騒
な言葉が聞こえたような気がしたが気にしない。気にしたら負けだ。
「サクシヤって昨日朔ちゃんがくれた本に出てくる神様の名前よね?」
「そうだ。あの本を媒介にこちらにやってきた。こやつに馬鹿にされたのでな、少しば
かり仕返しをさせてもらった。保管してあった呪薬を使わせてもらったぞ。」
 話が見えん。紅葉は何か気づいたようだが、俺にはまったくわからん。
「馬鹿にしたって言われても覚えてないんだが…」
「あれだけ酔えば仕方あるまい。あれほど純度の高い呪薬を飲み干すなど正気の
沙汰ではない。だからこそ力の弱った我にも術が使えたのだがな。」
 呪薬ってあれの事か?紅葉が作る怪しい液体…もといアルコールの入った
ジュースのことか?



「あれって酒じゃないのか紅葉?」
「アルコールなんて入ってないわよあれ……」
「呪薬に酔っているのだ。呪いの効果を設定してないから力が体に溜まって
しまうのだ。」
 ……もう訳が分からん。そろそろ脳もオーバーヒートしてきた。ここで意識を手放し
ても誰にも責められはしないだろう。
「悪い、頭痛いから寝る。」
「つまりあの術薬は成功していたと…」
「あれほどのものはなかなかお目にかかれんぞ。その筋の奴に売ればかなりの
額になるはずだ。」
 当事者がすっかり蚊帳の外か…。もうちょっとかまってくれてもいいと思うんだがな…。




「つまり酩酊状態に陥った俺が、お前のこと…というかお前が作った本のことを馬鹿にし
たと。それでその本の力を見せようと俺をこんなにしたわけか?」
「その通りだ。ちなみに馬鹿にしたのは136ページの術だ。」
 その言葉を聞いてパラパラと本をめくる紅葉。
「あった。えっと……性別反転術だって。」
 そういえばそんなこと出来るわけ無いと笑った気が…
「だから俺の性別を変えて本当だと証明しようとしたわけか。だったらもう戻してくれよ。
なんかすげー落ち着かないんだこれ。」
「えーっ、その体の朔ちゃんも可愛くていいのに〜」
「うるさい。俺は男だ、可愛いといわれて喜べるか。それに顔はあまり変わってない。」
「だから朔ちゃんの顔は、女の子っぽいってことでしょ?」
 くそっ、こいつ人が気にしていることを…後で覚えとけよ。元に戻ったら思い知らせてやる。
「……今はそんなことはどうでもいい。さっさと元に戻してくれ。」
別に気にしてない風を装ってさらっと流す。
「……………」
 何で何もいわないんだこいつ。妙に神妙な顔して……あっ、今目そらしやがった。
「まさかできないなんて事は……」
 沈黙に耐えかね一番考えたくない、しかし一番可能性のある言葉を口にする。
「はは…はっ……ま…まさかな………そんなわけ」
「そうだよな…まさかな……はは」
 引きつった笑みを浮かべ笑いあう二人。そんな二人を見ていた紅葉が、
「要するにできないってことね。」
 言いやがった。認めたくなかったのに、心の準備もできてないのに。
「……すまんな。我もここまで力が衰えているとは思わなかった。」
「戻る方法はないのか?」
 せめてもの期待を込めて聞いてみる。
「それは大丈夫だ。今までお主の体に溜まっていた呪薬の力で術が成功したのだ。だから
それと同程度の力を溜めれば元に戻せるはずだ。」
「つまり紅葉の作る薬を飲み続ければいいんだな?それくらいなら楽勝だ。紅葉、早速作って
くれ。できるだけたくさんな」
 戻る方法があると聞いて、部屋の隅でうなだれている紅葉に声をかける。何故そんなに落
ち込んでいるのだこいつは。



「無理。」
「おいこら。どういうことだ。」
「あれ作るのには時間かかるの。それに今の朔ちゃん可愛すぎて元に戻すのもったいない。」
 な…何を馬鹿なこと言ってるんだこいつ。あまりのことに頭痛くなってきた。
「お…お前いいかげんにしないと怒るぞ?」
「やっぱり可愛い〜。やっぱ怒った顔もいいね。ちょっとカメラ取ってくるからそのまま動かないでね。」
 ドタドタと階段を駆け上がる紅葉。呆れて何も言えない。
「お主も苦労するの。」
「……もう慣れたよ。昔からああだからな、とっくの昔に諦めたさ。」
 何せ紅葉の奇行は今に始まったことではない。物心ついた時から十年以上も弟(という名の
おもちゃ)をやっているのだ。奴の前で常識などないのだ。そんなものあったら女装させて買い物
なんて行かせないし、喧嘩したら裸で閉め出したりしない。あっ…思い出したら気が滅入ってきた。
「お主……その…強く生きろ。」
 勝手に人の心を読まないで欲しい。絶対に他人に知られたくない秘密なのだ。
「それよりも、学校とやらはいいのか?」
 気まずくなったのか話を変えてきた。思ったより話のわかる奴かもしれない。
「あ〜…行けるわけないよなこれじゃ。」
 背丈は縮んでるし、出るとこは一応出てる。絶対に気味悪がられるって…。
「ふむ……一時の感情とはいえ実生活に影響するとなると我の良心が痛むな。」
「邪神にも良心があるのか?」
「茶化す出ない。何とかしてやろうというのだ、素直に聞け。」
「なになに?何の話?」
 戻ってきたのか…。さっさと呪薬を作ってればいいものを。
「ちょっとな…。まだ呪薬は残っておるか?」
「少しだけなら余ってるけど…元に戻すのに使うならあげないよ?」
 ………こいつはだめすぎる。
「元に戻すのには全然足りん。ちょっと生活しやすくするだけだ。」
 もうどうにでもなれだ。やるならさっさとやってほしい。嫌な事は最初に済ましてしまう性質なのだ。
「何でも良いからすぐにやってくれ…。」

こうして彼、朔太郎は非日常へと巻き込まれていった。
果たして彼は元に戻ることができるのか?




「朔ちゃん起きて〜。」
 布団を剥ぎ取られる。4月も終盤に差し掛かってはいるものの、朝は寒いものである。仕方
ないので体を起こす。胸にある重みが、昨日の出来事が嘘でないことを実感させた。
「とりあえず、出来た分の薬持ってきたから飲んで。」
 時間がかかるとか言いつつ、すぐにできてるじゃないか。
「なんだ…もうできてたのか…。」
 いつもの朝と感覚が違う。男の時は、スパッと起きることができたんだけど……。
「ちゃんと起きて飲まないとこぼすよ。ほら、私が飲ませてあげるから。」
「いいって……自分で飲めるか……!!!!」
 柔らかい何かに口を塞がれ、と同時にぬるい液体が口の中に浸入してくる。ドロッとした粘
液が口の中に溜まって、たまらず飲み込んでしまった。さらに、とどめとばかりに動く何かが舌
に絡んでくる。体に染み込むような感覚の後、カッと体温が上がった気がした。
(口移し!?)
「ん…あめ……や…んあ…っ……くるしっ………。」
 状況はつかめてきた。だが、払い除けようとしても、体に力がはいらない。それどころか、徐々
に火照ってきて、思考も浅く同じことを何度も考えてしまう。気持ち良いと。
「……っん……もっ…と………ぷはぁっ………はあ…はあ……。」
 解放され、呼吸が苦しいことに気づく。自分はいったい何をしてたんだろう。
「体…熱い……紅葉…なんとかして……。」

(ふむふむ…これはもしかすると……)
 トロンとした目つきで、懇願する朔太郎。明らかに様子がおかしい朔太郎を見て、紅葉は
ひとつの仮説をたてる。
「知らないわよそんなこと。私は薬を持ってきただけだから。そんなにしたいなら一人でオナニー
でもしてれば?じゃね〜。」
「あっ…。」
 冷たくつき放し部屋を出て行く。朔が切なそうな目で見ていたが、これから起こるであろう
出来事に比べたら、振り切ることは簡単だった。



「行っちゃった…。」
(いつもなら必要以上にかまってくるのに…)
「紅葉…なんで……。」
 紅葉が去り際に残した一言、『一人でしてろ。』という言葉。火照った体と快感を欲する朔太郎
には、とても魅力的な言葉だった。
「一人で…する……。」
 理性など荒れ狂う本能の前には、砂上の楼閣のごとき脆さだった。意識の根底に残っていた
男としての理性が、意地が、矜持が、何もかもが崩れていく。
「…ふぁっ……っん…はっ……あぁ…」
 溢れだした欲望の奔流が、愛液となって秘裂から流れてくる。
「あっ…きもち……いっ…い……。」
 すでに男だったということも忘れ、女としての快楽を貪る朔太郎。ドアの隙間から覗く視線にも気
づかずに。

(やってるやってる…あ〜もうかわいいな〜…もうちょっと意地悪しちゃおうかな?)
「あぁん…いいっ……イクっ……あっ……イっちゃ」
(よし、今だ!)
ドアの向こうでチャンスを窺っていた影、紅葉はドアノブに手をかけた。
「はい!そこで終わり〜!」

「うわぁ!!な…なな…なんで……。」
 あと少しでイくところで、突然の乱入者に思わず手が止まる。
「いやらしいわね〜朔ちゃん。まさか朝からオナニーだなんて…。」
 ニヤニヤと楽しそうに言う紅葉。まるで、そうなることがわかっていたかのような言い回しも(実際
わかっていたわけだが)今の朔太郎には理解できなかった。

「なんで……そんな…見られた…?」
 先ほどまで自分という存在を押し流していた快楽も、今はもうどこにもなかった。最初からなかった
かのように消えている。
「驚いてるところ悪いんだけどこれ、何かわかる?」
 手に持った黒い物体、俗に言うビデオカメラを操作しながら問いかける。
「まさかっ……撮って…たのか?」
「正解〜。これは後でじっくり使わせてもらうね?」
 最悪だ。オナニーを見られただけじゃなく、ビデオにも撮られたなんて。
「………。」
 もうおしまいだ。あれをネタに一生遊ばれ続けるんだろう。
「………うっ……消して…お願いだから……。」
 何故だか涙が出てきた。普段ならこれくらいでは絶対泣かないのに。



「あれっ?うそっ、泣いちゃった?」
 まさか泣くとは思ってなかった紅葉は、あわてて傍にかけよった。
「消して…お願いだから……消して…。」
 泣きながら同じ言葉を繰り返す朔太郎を見て、紅葉はやりすぎたか…と反省する。だけどただ消す
には惜しい。
「わかった、消してあげるから泣くのやめなさい。」
「ひっく……ほんと?」
 ああもうかわいすぎっていうか反則だ。これが元男っていうんだから世の中絶対間違ってる。まあ
男のときからかわいいのは変わってないが。
「ただし!ひとつだけ条件がある。朔ちゃんはこれから朔羅に改名ね。」
「はっ?」
 さすがに唐突すぎたか。そりゃそうか…。
「だから、改名するの、か・い・め・い。朔はそのままで、悪鬼羅刹の羅ね。女の子が太郎っておかし
いもんね。」
「ちょっと待ってよ!無理に決まってるだろ!それに例えが嫌過ぎるよ。」
「大丈夫よ。あなたはもう女の子なんだから。経緯はどうであれ、ね。」
 オナニーまでしちゃったしね…という言葉は飲み込んでおく。また泣いてしまうかもしれない。
「それに、パパたちに頼めば何とかしてくれるだろうし。」
「わかったよ…。もう好きにしてくれ。だから早くそれを…」
「もう消したわよ。なんなら確かめてもいいわよ。気が済んだら返しにきてね。」
 ビデオを放り投げて部屋を出て行く紅葉。振り返った顔がニヤリと笑ったことに朔太郎…もとい朔羅
は気づかない。
(ま、知らないほうがいいこともあるってことね。)

その日の午後、朔羅の体質についての会議が行われた。
紅葉が気づいたその体質とは、「呪薬を飲むと発情する」ということ。
何がどう影響してこうなったかは不明だが、とにかくそういうことらしい。
どうやら朔羅の受難はまだまだ続きそうだった。




(根回しは終わったしやることはもうないかな?)
(それじゃ…最後の仕上げに行きますか。)

 コンコン
「朔ちゃん、入ってもいい?」
 夕方、鮮やかなオレンジが薄暗い紫に追われるように空から逃げ、夜を迎え入れる準備を
始めるころ、私は朔ちゃんの部屋を訪ねた。
「入ってもいいかって聞くなら返事聞いてから入ってよ。」
 窓から差し込むオレンジに照らされた横顔が綺麗で少しドキッとするが、悟られないように
後ろに回り、
「何やってるの?」
と、聞きながら首に手を回す。
 元々小柄で華奢ではあったが、女の子になって一段と小さく感じる。
「勉強してるから邪魔しないで。」
 教科書とノート、参考書とせわしなく視線を移動させ、こちらを少しも見ない。
「勉強なんて後でいいから遊ぼうよ〜。」
 肩をガクガク揺らして抗議してみる。ここで退くわけにはいかないのだ。
「やだよ。テストだって近いんだ。俺は紅葉みたく優秀じゃないからギリギリなんだよ。」
 朔羅から漂う気配は本当に追い込まれた雰囲気だが、それならそれでこちらも苛めたくな
るというものだ。
「勉強なら後で教えてあげるからさ〜、ねっ?」
「ホントか?」
(おっ、もう食いついてきた。だけど…)
「でも…やっぱ邪魔しちゃ悪いから本でも読んで…」
「何して遊ぶんだ?」
 すばらしく早い変わり身で本を閉じ、こちらに振り返る。
「えっとね……実験でもしようかなって」
「実験ってなんの?」
 私の言葉の意味がわからないのか、小首をかしげている。



「そう、朔ちゃんが本当に女の子になったのか実験してみるの。」
 そう言って、不意に抱きつきキス。そのまま体を入れ替えてベットに押し倒す。
「昨日のアレだけじゃわかんないじゃない?」
 昨日のアレを思い出したのか、顔を真っ赤にして目を伏せる朔羅。
「あ…あれはっ……違くて…その…。」
 恥ずかしさのあまり押し倒されたという状況を忘れてしまったのか、抵抗のひとつもない。
「大丈夫、今日は私がしてあげるから。朔ちゃんは何もしなくていいよ。」
 まだ赤面している朔羅を見つめ、シャツを捲り上げていく。
「いくら服がないからってTシャツハーフパンツは誘ってるとしか思えないわ。しかもノーブラ
だし。」
 わざとらしく声を上げてみる。
「しょうがないだろっ!これしか入らなかったんだよ!」
 言葉に気をとられ過ぎである。油断してがら空きになっている双丘に手を這わせて、頂上
の周りを弄ぶ。
「ふぁっ!……どこ触ってるんだよっ!」
 こうして見てみると、普通の気の強い女の子だ。
(この路線に調教していこうかな?)
などとくだらないことを考えて、でもいいかもしれないと思いなおす。
「そんなこと言って強がってても気持ちいいんでしょ?」
 言葉で責めつつ首筋や鎖骨に啄むようなキスをしたり、耳を甘噛みしてみる。
「馬鹿、くすぐったいって…。」
 胸を遊んでいた手も、ツツーっとおなかの上を滑らせて、太ももを撫で回す。
「気持ちよくなってきた?朔ちゃんは淫乱だからもう濡れ濡れなんでしょ?」
「違っ!…なんでそんな……俺は男なんだぞ!」
 手を戻して胸の頂上で膨らんでいる乳首を、力を込めて捻る。
「痛ッ!」
「今は女の子なんだから『俺』って言うのは禁止ね。今度いったらもっとひどいことするから
ね?わかったら返事!」
「わかった!わかったからやめてっ!」
 その言葉を聞いて捻りあげていた手を離す。朔羅の目には少し涙が光っていた。



 それから延々と体を弄り続けて、すでに1時間が経とうとしていた。
「もみじぃ〜…まだやるのぉ〜?」
 2度ほどイかされて体力を奪われた朔羅は、息も絶え絶えといった感じでなすがままにさ
れている。
「まだまだ本番はこれからなんだけど……調子に乗って遊びすぎたかな?」
 そういって、一旦朔羅から離れて服を脱ぎだす。朔羅はぐったりと寝転びながらもその光
景を眺めていた。体は変わっても頭の中は急には変わらないって事だろうか。
「朔ちゃん、お姉ちゃんの裸見て興奮した?」
「ばっ!そんなんじゃ……」
 上気した顔も可愛くて、つい意地悪してしまう。これも朔羅の魅力だということにしておこう。
 意図的に上だけを脱ぎ、下の状態をギリギリまで悟られないようにする。さっきの言葉で
そっぽを向いてはいるが、チラチラとこちらを見ている視線から隠すようにパンツを脱ぐ
「チラチラ見ちゃって…見たいなら見たいって言えばいいのに。」
 脱ぎ終えて再びベットに乗り、朔羅に囁く。
「お姉ちゃんも気持ち良くしてくれるんでしょ?」
 手をとり片手を胸に、もう片方を股間に持っていく。
「ッ!?」
 股間にある、ありえないものに触れて驚きで言葉を失う朔羅。
「驚いた?朔ちゃんには懐かしいものだよね?」
 紅葉の股間に反り立つ肉棒握らされ、それを凝視する朔羅とニヤニヤと眺める紅葉。
「なんで……これが……?」
「朔ちゃんが本当に女の子か調べるために着けたの。おっきいでしょ?」
 それが本来の目的ではないのだが、本当のことを言ってしまうとつまらないので、あえて
ふざけて隠す。教えてもいいがそれでは素の反応が楽しめなくなってしまう。
「やっぱり奥まで調べないとわからないじゃない?」
 言いながら、すでに臨戦態勢にはいっている一物を握らせ、上下に動かす。
「扱い方はわかるでしょ?だったら私を気持ちよくさせてよ。」
「そんな事いったって…」
 驚きと時間を空けたことで快感の波が引いてしまったのか、徐々に冷静になってきてしま
ったようだ。



「手が嫌なら口でしてもらおうかな。」
 朔羅の上に覆いかぶさり、俗に言う69の体勢になる。男女の位置が逆だが。
「やりにくいかもしれないけどしっかり咥えてね。」
「うぐっ……」
 秘裂に舌を這わせると、再び蜜が溢れてきた。
「こんなにすぐ濡れてくるなんてやっぱり淫乱なのね。」
「ひがっ!ほれはっ!」
 淫乱だといわれたことを、必死に否定してる姿を見てさらに虐めたくなる。
「淫乱な朔ちゃんには舌じゃ満足できないよね?」
 体を移動し、足を開いて正上位の形で肉棒を秘裂に押し付ける。
「馬鹿ッ!そこはまずいって!俺は男なんだぞ!」
「俺って言っちゃったね?約束を破るような悪い子にはお仕置きしなきゃね。」
 取り付く島も与えず、次々と捲し立てる。
「お仕置きだから一気にいくよ。」
「ちょ…やっ……お願い…待って!」
 本気でやる気だと感じたのか、血の気の引いた顔をイヤイヤと左右に振って拒否の意思
を示している。
「最初は痛いけど、痛くしないとお仕置きにならないから遠慮はしないわよ。」
 すでに目に涙を溜め、未知なる恐怖に怯え、弱々しく震える体。
「ふふっ…朔ちゃんとっても可愛いよ。」
 呟きとともにその体を沈めていく。
「やめ…っくう……あぅ…い…たいよぉ……」
「やっぱきっつぅ…」
 狭い肉壁を押し広げる感覚とともに、擬似ペニスへの強烈な刺激が襲い掛かってきた。
だがその締め付けからくる痛みも、もはや快楽として理性を攻撃する。
 もう計画なんてどうでもいい。今はこの体を蹂躙することしか考えることしかできなかった。
「これっ……すごい…朔ちゃんホントに淫乱なんだね…絡み付いてきて……」
「やぁ……もう…やめて……ほん…とに……いたいからぁ。」
「だ〜め。まだまだ夜は始まったばかりなんだから。」
 欲望に忠実にただ貪る。傷つける。そこには一匹の獣しかいない。



「朔ちゃんは私のものになったの……いい?私の言うことは絶対よ。」
「なぁっ……はっ…はぁん……ぁう…。」
 紅葉の一方的な言葉も聞こえていないのか、答えはない。破瓜の苦痛か、溢れる快楽か、
あるいはその両方かもしれない。
 男としてのアイデンティティーを粉砕され心まで『女の子』に侵されていく様を見ていると、言
いようもない征服感に酔いしれ、まだまだ足りない、もっともっとと本能が要求する。
「もうだめ……気持ちよすぎて…っくう……イっちゃうっ!」
 次々と欲望が湧き上がってくる。しかし、体のほうは限界が迫っていた。
「中にだすよ朔ちゃんっ!」
 脳髄が痺れ、答えを聞く余裕もない。ギリギリまで耐えていた紅葉は、自らの精を朔羅に注
ごうとペニスを一番奥まで突き刺し、思いや欲望を流し込んだ。
「あぅぁ……なんかきてるぅ…。」
 他人事のように呟き、力なく横たわる朔羅。その朔羅に覆いかぶさるように紅葉も倒れる。
「まだまだよ。まだ朔ちゃんを感じたりないわ。」

 それから三度交わり、精を放出したころにはすでに日付も変わりしばらくたっていた。股間に
生えていたモノは消え去り、いつもと変わらぬ姿に戻っていた。
「疲れた…これはちょっと失敗だったかな……。」
 思い出しただけでも恥ずかしい。まさかあれほど効果があるとは…。
「あの新薬はまだまだ改良の余地ありね。」
 隣で眠る朔羅の表情は穏やかで微笑ましい。少しばかり罪悪感にさいなまれる。
「紅葉……。」
 唐突に名前を呼ばれ驚き、寝言だとわかると安堵する。
 改めて思う。自分は本気で好きなのだと。嫌われたくないと。
(やっぱりおかしいよね、こんなのって。)
 いくら考えても答えは出ない。結局のところ自分を信じるしかないのだ。
「さて、サクシヤちゃんのところに行ってきますか。」
 起こさないようにゆっくりと部屋を出る。朔羅の寝顔を照らす朝日が、何となく羨ましい。紅葉
は振り返り、そう思った。



(早く駅に着かないかな…)
 満員電車の中、押しつぶされないように耐えながら、ただ目的地に着くのを待つ。
(やっぱり薬飲んでくるんじゃなかったな…)
 出かける前に飲んできた呪薬のせいで体が敏感になっている今、満員電車は地獄だった。
(…っ!?……痴漢?)
 さりげなく、撫でる様に尻を触られる。怖くはないので無視。どうせ触るぐらいしかされないん
だろうし、と思っていると手を掴まれる。そのまま熱く、硬いものを握らされた。
(な…こんなところで……)
 意表をつかれ言葉を失う。まさか朝の電車の中で陰部を出している人間がいるなんて。しか
も自分は熱く反り勃ったそれを扱かされているのだ。
 しばらく放心しているとスカートをめくられ、短いうなり声とともにパンツに濡れた感触がした。
(スカートの中に出しやがった!)
「……き、○○駅〜」
 いいタイミングでアナウンスとともにドアが開く。すぐに走って逃げる。痴漢を捕まえるよりも
ネットリとした感触をどうにかしたかった。
「あった!」
 まっすぐトイレに駆け込む。中には手を洗っているサラリーマンが一人。目が合う。…サラリー
マン!?
(しまった!男子トイレに入っちまった!)
「あっ…失礼しましっ…あたっ!」
 振り返り出ようとしたら後ろの人にあたり、弾き飛ばされる。その間にサラリーマンは出て行
ってしまった。
「………。」
 謝ろうと顔を上げると、こちらを静かに見下ろす痴漢がいた。
(ここまで追ってきたのか!?)
「だめだよこんなとこきちゃ。怖いおじさんに襲われちゃうよ?」
 笑顔で話しかけてくる。その表情とは裏腹な言葉が不気味に耳の残る。
「くっ…」
 何をするのか大体予想はつく。何とか逃げなくては。が、それよりも早く引きずられ個室に
連れて行かれる。



「離せっ…!やめっ…て…!」
 抵抗してみせるも所詮は男と女、力の差は歴然である。組み伏せられブラウスとスカートを
取られ、あっという間に下着姿にされる。
「声を出すなら出してもいいんだよ?こんな格好を他の親父たちに見られたいならね。」
 後ろ手に鍵をかけ、体を密着させてくる。
「卑怯者っ!」
 薄ら笑いを浮かべる顔を睨み、振りほどこうとする。
「ほら、人が入ってきた。」
 その言葉と足音に思わず動きを止める。その隙にブラのホックをはずされた。
「…っ!」
(くそっ!これじゃ声が出せない。)
 ブラジャーから開放された胸の先端に、男がしゃぶりつく。
「ひゃっ…んっ……く!」
(声が…薬のせいで感じちゃう!)
 先端を優しく舌で転がし、空いた手で反対の乳首を摘む。徐々に硬くなるのがわかった。
「無理やりされて感じているのか?乳首が硬くなっているぞ?」
 わざわざ耳元でささやく。右手では胸を弄るのを続けたまま、左手でパンツを下ろす。
「こんなに蜜を垂らしやがって、この淫乱メス豚がっ…」
「んふっ…違う……そんなんじゃ…」
 陰唇を撫でられ、さらに力が抜ける。
(このままじゃ犯される。でも体が…!)
「もう抵抗しないのか?本当は犯されたくてここに来たんだろ?」
「そんなことっ…あふっ…っんはぁ……」
(だめ…これ以上は耐えられない。)
 声がでないように下唇を噛み締める。
「だったらなんでこんなに濡れてるんだ?こうしてほしかったんだろ?」
 一言一言耳元で囁かれ、胸と秘裂を弄ばれる快楽で何も考えられなくなる。
「……っは…だめ…きもち……いいっ…」
「やっと素直になったか。ならご褒美にこいつをくれてやるっ…!」
 壁に手をつけさせバックの体制になる。ズボンのチャックを開け、天に反り勃つ肉棒を秘部
にあてがう。



「ありがたく受け取りな!」
「あっ…がっ…。」
 一息に根元まで突き刺され、呼吸が詰まる。
「なかなかいい締め付けだ。もっと遊んでるかと思ったがな。」
「あっ…あはぁ…そんなこと……んいぃ…おっきいの…。」
 後ろから突かれ、胸が前後に揺れる。人が来るかも、ということは気にならなかった。自然
と声がでてしまう。
「時間が無いな…。」
 腰を激しく振り、乱暴に胸を鷲掴みにしながら語りかけてくる。
「そんなにいいのか?なら種も一緒にくれてやる!たっぷり受け取れ!」
「あんっ…膣中はだめ……外に…おねがい……。」
「だめだ!このまま膣中に射精すぞっ!」
 スパートをかけるのか、腰の動きを早くなる。
「…っん…はやいっ…だめ…イクッ…!」
「こいつでイっちまえ!」
 男は最後の一突きで果て、朔羅の膣中に大量の精液を吐き出した。
「はぁ…はぁ…あはっ……イっちゃった…はぁ…。」
 痙攣しながらぐったりと便器に座る朔羅。その秘部からは白い欲望が流れ出していた。

 しばらくして頭が働くようになり、男がいないことに気づく。
「ちっ、逃げられたか。」
 過ぎたことを気にしても仕方ない。今は濡れた制服と下着をどうにかしなければならない。
幸い体育用のジャージを持っているので服は何とかなる。
「下着が乾くの待ってたら…間に合わないよな〜。」
 仕方ないので下着は諦めよう。要はばれなければ問題ないのだ。
(紅葉のおかげでこんなことされてもあまりショックがないな…)
 先日紅葉に襲われ、処女を奪われた出来事を思い出す。きっと初めてだったらもっとショッ
クが大きかっただろう。体質という逃げ道もあるしな。
「ま、なんにしても今はここを出る方法だな…」

 人に見られずにトイレを出るのに手こずり、結局遅刻した朔羅はクラスメートたちにあれこれ
詮索されるのだった。
タグ

管理人/副管理人のみ編集できます