僕は変わってしまった。
去年の中学校の卒業式のあとのことだった。
僕はまったく知らない奴らに実験台にされた。
理由は「卒業式のあとで浮かれていて僕は死んだ」とか言い訳できるかららしい。
死ぬかもしれない実験はクスリのテストだった。
まぁ、こうやって振り返ることができてることからもわかるようにおかげ様で死なないで済んだ。
いや、でも、あの時までの僕、[真間 蓮](しんま れん)は死んだ。
複雑に思えるかもしれない、でも実際はこうだ。
実験のクスリは本来何を目的に作られたのかは知らないけど、僕のカラダを女にした。
クスリを打たれて意識を失った僕はどこかの建物に運ばれていた。
目が覚めると目の前に鏡があった。
寝ている人の真上に鏡なんてなかなかない発想だよな、とか思いながら見てみると、無い物があり、あるべき物が無かった。
立ち上がって直視しても無い、触っても無い、逆にいえば何をしてもあった。
それからまた僕は気を失う。
再び気付けば家にいた。




僕の両親はもういない。
叔父さんが僕を引き取ってくれたが、毎月10万のお金が振り込まれてくるだけだ。
幸い、両親が唯一残してくれたアパートがあったからそこに住んでいる。
もちろん家賃収入もあるから生活には困ってなかった。

そんな僕に降りかかった災難。
家で再び目を覚ましたとき、テーブルには作り変えられた戸籍のコピーと一枚の便箋、その他女性としての必需品が置いてあった。
便箋には、
・実験は失敗した
・もともと殺すつもりは無かったので元に戻そうとしたがダメだった
・極秘のプロジェクトなのでお金と交換に黙っていて欲しい、お金は口座に振り込んだ
とかそんなことが書いてあった。
何が極秘なんだか…、と思いながら捨てようと便箋を持ち上げると下に診断書と書かれた紙があった。
内容は男には戻れないということが書いてあった。
それでも生憎僕はさみしい人って訳じゃ無い。
幼馴染の[西河 大士](さいか たいし)がいる。
とりあえずわかっていてほしい、そう思って呼び寄せた。
「おーい、蓮、来てやったぞーって…」
ドアホンも無しに入ってくるこいつが幼馴染だ。
まぁ、今はそれどころじゃないみたいだけど。
「キミ…さ、誰?まさか…蓮の恋人なのか?」
「まぁ落ち着いて聞いてくれ押入れの使わない枕の中にエロ本を入れてる大士くん」
「ちょっ…な、何で知ってるんだ?」
「その理由がエロ本みたいな感じの夢を枕を交換したら見れるかもしれないからエロ本パワーを枕内に溜めているってことまでは知りません」
「っく…わかったよ!聞きゃーいいんだろ?」
やっとか、早くサッサと聞く姿勢を作れっつーの。
大士は床に座っている、当然だけどね。
「さて、まずは結論からいこう」
大士の目が早く話せと睨みつけてくる。
「真間 蓮は死んだ」
空気が変わる、話辛いなぁもう。
「死因は卒業式の帰りに失敗したクスリの実験台にされたから。結果、男としての真間 蓮は死んだ。
そして、僕は女になっていた。名前は真間 恋、れんはれんでも恋っていう字だ」




それからはすんなりいった。
すべてを説明し終わったあと大士は
「お前が生きてることに変わりはないんだろ?それならいいよ」
と言った。
その時、ほんの少しだけ嬉しくて泣きたくなった。

「それでお前…いや、今まで通り呼び捨てでいいよな、恋はこれからどうするんだ?」
「戸籍だって変わってるんだから女として高校に行くに決まってるじゃん」
「だけど…ホントに恋はそれでいいのかよ?」
「決めたんだからいいんだよ。あー、でもこのことを知ってていいのは大士だけだからな?バラすなよ?」
一応仮にも極秘らしいし。
「そんなことはわかってる、そうじゃなくて女としてなんて気持ち的にいいのか?」
「いい訳無いだろ」
それだけは即答した。
「じゃあ大士。お前は僕を元に戻せるか?医者だって戻せないって言ってるものを」
常識的に考えて中学校を卒業したようなガキに治せるレベルの話じゃないんだ。
「心配してくれるのはとても嬉しいんだ。だけど心配してくれるなら高校でのことの方が現実的だよ?」
「……そうだな、ゴメン」
「うん、でも、こんなに僕のことを考えてくれて…嬉しかった…」
素直にそう思ったから。
長い間一緒に付き合って来たから、ってのもあるのかもしれないけど女になってしまったような気持ち悪い奴をこんなに真剣に考えてくれる大士に感謝したかった。
そう思っていつの間にか立ち上がっていた大士の目を見て話した。
少し恥ずかしかったけど。
「……お前さ、可愛いのな」
「へっ?」
予想外すぎる返事に気が抜けてしまった。
「その上目遣いは反則だろ…、どんな男でもこれには…なぁ…」
「な、なんでそんなこと言うんだよっ?女になった僕なんて気持ち悪いだろうが!」
「違う、気持ち悪くなんてない。俺が保障しよう、よし結婚しよう」
「はぁっ?おかしいよっ?って、てかさ、可愛くなんてないから!結婚とかあり得ない?」
「恋さ、Cカップだろ?」
「え?う、うん、確か貰った下着にはそうやって書いてあったかな……って…はっ!」
ヤバい、乗せられた!
「うんうん、胸のカップも俺の好みだぁ…ふぅん、恋ちゃんはCカップかぁ……」
「う、うるさいなっ!帰れよっ?」
もういたたまれなかった。つい数分前にこいつのことをカッコいいかもとか思った自分を殴ってやりたいくらいに。




その日の夜、大士からメールが来た。
内容は、例の件を大士のご両親に話してもいいか、というものだった。
大士のご両親にはお世話になってるから極秘とか関係なく、仮に避けられることになったとしても話しておくべきだと思い、大士にお願いした。


…のが10分前のこと。


ピピピピピピピピピピピピピンポーン

必需品の中にあったパジャマに着替えてベッドの上でウトウトしていたらドアホンが連打された。

こういうことをするのはあの人だけ。



「恋ちゃん!私よ、バカ大士の母よ!」
なんか心無しか激しく女の子扱いされてる気がしたけどとりあえずはドアを開ける。


「こんばnわぷっ!」
決してウケを狙った訳じゃない。おばさんの豊満なおっぱいに顔を埋められたからです。
「恋ちゃん…かわい……いや、可哀想にっ!ホントに肩にかかるかかからないくらいのサラサラな髪も綺麗だし、顔もすっごく可愛いし、スタイルもいいなんて可哀想ね?」
うん、ちょっとなにいってるかわかんない。
「は、はぁ」
「とにかく、何かあったら私を頼りなさい。いいわね?」
「はい、では御言葉に甘えて。なんか申し訳ないです」
「いいのよ、あと大士に襲われたら叫ぶのよ?」
「あははっ!大丈夫ですよ、ありがとうございます」
あいつに限ってそれはないよな、なかなかのへタレだし。
「そう?じゃあこれで、おやすみ、恋ちゃん」
「はい、おやすみなさい」

そうして嵐のようなおばさんは去って行った。

「はぁ…疲れたよ、ありがたいんだけどね」
そう呟いて一息つくためにも風呂に入ることにした。




まぁわかってたけどねっ?
いざ脱ぐと恥ずかしい。だが僕も元男。気合いで行ってやる…!

「なんて思っていた時代が僕にもありました」
入った瞬間に鏡に映る裸体。
もう恥ずかしくて話にならない。
しかし僕は気付いた。そうだ、シャワーでカラダを洗えば曇って鏡も見えない、と!目を瞑ってシャワーすれば何の問題もないしね。
思い立ったらすぐやろう。
まずシャワーを持つ。温度確認。目を瞑って…お湯を出す!

暖かいお湯がカラダを流れる。すごく気持ちいい。
その時だった、油断していた。
シャワーのお湯が乳首らしき場所に直撃した。
「ひゃんっ?」
思わず口から出て来てしまった言葉に驚いたと同時に一瞬で得られた快感をもう一度、今度は長い間感じてみたいと思ってしまった。
カラダは自然と動く。欲望には忠実なんだな、とどこかで客観的に見ている自分もいた。
まずはさっきの気持ちよかった場所の乳首を弄る。どちらかというとおっぱい全体かな。
「んっ…はぁんっ……あっ…」

足りない。

カラダが叫んでいた。僕だってこんな中途半端なのじゃ満足できない。


今までに得た知識を総動員して自分を慰める。
当然、手は下にもいく。
そしてその手がクリトリスと呼ばれる場所に触れた時、快感が倍になった。
「ひゃああっ!…すごいっ!…ああっ…んあっ?」
気付けば僕のアソコはぐちゃぐちゃに濡れそぼっている。
もっとしたい…!
「あっ、あっ、んんっ!…くるよぉっ、おっきいのくるぅうっ?」
待ち望んでいた快感。できればこんな子を男のときに見たかった、と思う自分が最後、クリトリスを大きく弾いた。

「ひゃあああっ!…あああああああっ?」

息も絶え絶えにすっかり曇りも取れた鏡を見ると、映る自分が少し笑ったように見えた。
でも…も…う…限界………。


差出人:大士
件名:無題
本文:昨日はお楽しみでしたね

------------END---------------- というメールが朝起きると届いていた。



全僕が泣いた。
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