――痒い、体中が痒い。

「……んっ、か……痒い、くすぐったい……」

目を開ける、見慣れた学院の実験室の光景だ。
いつだったか、平和だった頃にふざけて寝てみた処置室の台座だ。
正面から照らす手術室にある様なライトが眩しく、視界が白一色に染まっている。

ここは天草バイオテクノロジーIA社立第3天草学園のナマモノを扱う教室だ。
進んだバイオテクノロジーや工学技術、人体学や生命倫理やらといった事を学ぶこの生物工科棟は、
男と女が制圧戦争を始めた今となっては、忘れ去られた異邦の地であった。

つまり、この部屋を含む教室は女子生徒に占領され、支配されている訳である。
どうやら俺は、捕虜にされてしまったらしい。

「おやまあ……君、もう起きていたんだね?」

そこに居たのは影、こちらに歩み寄ってくると光の中から整った輪郭が現れる。
長い茶髪に抑揚のあるボディ、そしてアルビノ特有の赤い瞳――
まごう事無く学院内女子勢力の実質的支配者、生徒会長の諏訪部だった。

その諏訪部は、手や上半身を縛られ宙吊りにされている俺の頬に手を添え笑みを浮かべる。

「簡単な話をしよう、君は男か?」
「あ、ああ男だ。」

単純な問いに、構えていたのが馬鹿らしく思える。
裸にされている身体が台座に触れて冷たく、いやらしいひんやりさを感じさせる。
そして、そんな風に冷たい水面にも良く似た諏訪部が口笛を吹いた。
“とおりゃんせ”、何故かは知らないがそれと共に彼女の配下の姿も顕になる。
どうやら、やはり俺は囲まれている。囚われの身に落ちたらしい。

「……そう。――はじめて」

その声に、女子生徒二人がこちらに歩み寄ってきた。

「や、やめろっ!! おおお、俺になにをするつもりだ!?」
「知らなくていいわ、知る時が今だもの。」

そういって、諏訪部が注射器を投げつける。
戦闘仕様に着弾と共に麻酔を注入するそれは、即座に身体を骨抜きにした。

「お、俺はモルモットじゃ……ね、ぇ……」
「そうか、君は可愛い小動物に見えたのだがね? 違うか? いいや、違わないね。」

そうして、俺の脚にふりるがついた可愛らしいパンツが通される。
しかし、大事な所に当る場所にはなにやらゲル状の水銀みたいなのが纏わりついていた。
それから、逃げようにも逃げられず、ついには胸にブラジャーまで着けられてしまった。
それも乳首の部分には白銀のダークマターが溜まっている。
しかし、それらはぴったりと身体を締め付けるように密着する。

「ひゃっ!!?」

冷たい感覚、そしてペニスの穴や乳首から入り込むように強引に巻き起こる快感。
揺らぐ意識の中、股間と乳首を犯した冷たさはやがて熱に変わり、
身体の奥底を含む全身へと食指を伸ばした。
本来女性用下着であるそれは、運動部で鍛えた不釣合いな身体を飾り、
申し訳程度に恥じるべき場所を隠していた。
しかし、それが狂気と世紀の大実験の始まりであると、
諏訪部の淡白な笑みは冷酷に告げていたのだった。


「ふふっ、まったく面倒な連中だよ男というのは。私を散々、僕に作り変えていたと言うのに」

ボク、どうやら彼女の経歴も並大抵の物では無いらしい。
髪は染めているものの、アルビノを隠さない彼女は凄いと思う。
普通は、意味も無く避けられたりして嫌な思いをするものなのだが、
それを遠ざけるだけのカリスマを彼女は持っていた。いや、手にしていた。

「さて、次――はじめてくれ」

その声に、今度はスクール水着の様な物を持った学生が前に出てきた。
同時に身体を開放され、地面に降ろされるが、麻酔で動く事すらままならない。
そのまま、四肢にラバー状の水着モドキを通され、これまた着せられてしまう。
布が摺れて不気味ながらも小気味良い胸と股間、それに上乗せして胴や身体を覆うラバー。
その感覚になんともいえないもどかしさを感じた。

「さて、君は――どんな顔をする? いや、している。かな? くすっ。」
「や、やめろ! たっ、助けてくれえええええ!!」
「助けてあげるよ。僕な君を、拭い去ってあげるよ! あははっ!!」

電撃の様な痺れ、ペニスの下を摺る様な感覚と、持ち上げて押しつぶすような重圧。
ラバーから分泌され始めた液体に、麻酔を受けているにも関らず股がきゅうっと閉じてしまう。
むしろ、閉じなくてはいけない気がした。
そうしないとまるで自分が自分じゃなくなるような・・・…、そんな恐怖があった。

胸を襲う掬い上げ、絞り上げる様な圧迫と吸引。
思わず身体を蝦反りにしたり縮込ませながら必死に耐えた。

「いいよ、出力振り切らせて。150overで良い、後ピンクよろしく頼む」

そう助手学生に言うと、渡された注射器を太腿と二の腕につき立ててきた。
痛みに顔をしかめると、別の感覚にそれどころでは無くなった。

「う、うにゃああああああ! うわぁ、うわああああああああああっ!!」

木霊する断末魔はニアソプラノ、仰向けのまま胸が跳ね回る。
AAA、AA、A、B、Cとサイズが膨らんできたのが確かに見える。
窮屈そうに水着が締まるのが確認できた、全身が総毛立ち戦慄する。
そう、それは股間にも訪れた。

「い、いっ、いやだ! いや、いや、いやいやいやいやいやあああああああああっ!!」

ニアソプラノ、近しい何かだったそれはソプラノに変遷する。
股間にあるペニスはいつしか形を無くし、摺れるクリトリスの存在を快感が裏付ける。
鈍い痛みが走り秘所から液が滴る。しかし、色が以上だ。そう、身体の中で“それ”は暴れた。

「きゃああああああああっ! や、やあっ、やめて! やめて! いやああああああっ!!」

ボンっと爆発したようにそれは溢れ、ずるりと生理の様に滑りでた。いや、それは生理だった。

――そして、俺の意識は闇へと堕ちる。

「あれ……ここは?」
「おはよう、私の可愛いモルモット。なあ、君は男なのかいモルモット?」
「さあ、わかりません。自分は一体どっちなのですか?」

白い肌、小柄な碧眼の美少女がそこで目覚めた。
身長はそれなり、胸も平均、なにより引き締まったウエストが美しい雑なセミロングの女の子。

「なら君は、望むように生きればいいさ」
「はい、私……そうします!」           FIN(次回作あるかも?)
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