「はーい、佐藤さん、はいりまーす。」
ADさんの声に、僕はいよいよやってきた瞬間に緊張で体をこわばらせる。
周りでは、多くのスタッフが撮影の準備万端で男優の入りを待っている。

僕は、広い部屋の真ん中に置かれたベッドの上、
花柄のワンピースに身を包んでちょこんと座っている。

採光用の鏡に映る自分は、黒くて綺麗なストレートの長い髪を持った少女で、
栗色のぱっちりした目が現実世界の僕を見つめ返す。
18歳の少女らしい、薄い化粧は、プロの手によるものだけあって、
女の自分から見てもはっとするほど綺麗だった。
しかし、メイクのおかげではない。すらりとした腕は透き通るような限りなく白に近い肌
色で、お嬢様座りの足をすこし動かすだけでワンピースのスカートからは、細くて、
しかしさわり心地のよさそうな滑らかな脚の間が覗きそう。

そして、その先には・・・
まだ男の気持ちが残っている僕は、鏡をみると、未だに性的な想像をめぐらせてしまう。

今日は、僕がAV女優「井川桜子」になって、はじめての撮影の日。
女の子にされて、そして、全国のさびしい男たちのオナペットになる、
AVアイドルとしての僕の人生が、本格的に始まる一日だった。

どうして、こんなことになってしまったのだろう。
どこから狂ったのか、僕の人生は、もう、女として、後戻りできないところまで来てしまった。

そう、僕は、もともと男だった。

ドアを開いて入ってきた男は、有名なAV男優で、僕も男だった頃は何度もその姿をビデオで目にした。
その男が、今、僕の目の前に座り、差しさわりのない会話の後、
僕を優しく抱き寄せて、口づけを求めてくる。
あぁ、このかんじは・・・とっても、安らぐ・・・
ビデオの中で、たくさんの綺麗な女の人がこの男に好きなように扱われてよがり狂っていたその理由を、
ぼくは一瞬にして理解した。

とろけるようなキスが、僕の舌を、口の中を蹂躙し、それだけで全身を快感が駆け抜けた。
ふと、鏡に目が行った。


さっき真っ白だった美少女の頬はもうピンク色に染まり、
いつのまにか腕は男の顔の後ろにまわっていた。
まったく無意識のうちに快感がそうさせたのだった。

僕は、自分が、選ばれた人間になったことを実感した。

周りには多くの男が、僕のセックスを撮るためにさまざまな役割をこなしている。
カメラの向こう、無数の男たちは僕が気持ちよくなるのを見て、興奮し、オナニーする。

僕の胸に手を伸ばしてきたこの男優だって、同じことだ。
僕が気持ちよくなるところを撮影するためにここにいる。

この場にいる男たち、そして、カメラの向こうで僕の痴態を見つめている男たちの中で、
僕だけが、特別だった。

「あなたも、選ばれた人になってみる?」

その一言から始まって、ここまで来てしまった僕が、
ようやくその意味が理解できた瞬間だった。
男の手が、ワンピースの下から股間に伸びてきた・・・

どうしてこんなことになってしまったんだろう・・・

僕の名前は、梶原亮・・・だった。

この春、志望の大学に入ることが出来て、東京にやってきた。
高校は、進学校にしてはサッカー部が強かった。僕はそこのレギュラーだった。
と、いっても、右サイドバックでようやく出番をもらっていた程度だったが。

高校3年のときは総体には出られたが、秋の大会で県の準決勝で負け、
最後の冬の全国大会にはいけなかった。
そこから受験勉強を始めた僕にとっては・・・
すぐに大学に受かることは無理で、結局一年浪人してしまった。

それでも、一年を経て、大学に受かった僕だったが、
とんでもない情報を耳にしたのは、引越しを目前にした3月の後半のことだった。



「えっ?これは・・・」
地元の大学に進んだある同級生が、新人AV女優の情報をメールで送ってきた。
その月にデビューすることになっていたのは、僕の小学校からの同級生で、
中学、高校ではサッカー部のマネージャーをしていた、如月真優ちゃんだった。

「真優・・・いや、でも・・・」
最初信じられなかった。
真優は、幼なじみでもあり、僕のよき理解者でもあった。
学校一の美少女となったことに気づいたときには、「腐れ縁」の仲になっていた。
僕は中学校ではサッカー部のエースだった。そして、高校に入っても、
同じようにサッカー部で頑張った。

真優は、僕のことが好きなわけではなくて、サッカーが好きだったから、
マネージャーをやっていたのだ。そう、いつも言っていたし、そのとおり、
高校を卒業するまで、彼氏の一人も作ることがなかったような純真な美少女だった。

受験して、東京の名門女子大に進み、一年がたった。
最初の何ヶ月間かは連絡があったが、この半年ほどなにをしているのか知らなかった。
それが、こんなことになっているとは・・・

そして、東京に行って、真優に・・・そんな、
僕の受験勉強を支えた思いが、崩れ去ってしまっていたことに、
気づくのには時間が必要だった。

この一年間、真優のいない毎日はなによりもそのことに違和感を感じていた。
ずっと、秘めてきた、自分でも気づかなかった思いを、東京に行って伝えようと、
思っていた。でも・・・こんな・・・
いや、僕が浪人したから・・・彼女を守ってやれなかったからか・・・

引越しの日まで、僕は上の空だった。
だが、引っ越した日、アパートの近くのレンタル屋に行った日、
学校一の美少女だった真優のAV女優「安藤しずか」としての
デビュー作が何枚も並んであるアダルトビデオの棚を見たときに、
残っている最後の一枚に手が伸びないほど、我慢強い僕ではなかった。

目の前の、真新しい小さな液晶テレビの中で、幼い日からずっと隣にいた美少女が笑っていた。
僕の知っているプロフィールとは微妙に、いやかなり違う自己紹介をして、「緊張してます」といって、笑う。


そして、AVではよく見る男優、佐藤某が僕のあこがれの人であり、
幼なじみであった女性の後ろにまわり、キスを交わす。

そこから先は、ボウゼンと見ていることしか出来なかった。
オナニーすることなど出来なかった。ずっと、僕の肉棒は反り返ったまま、
こらえきれずに我慢汁が何度もあふれ出してはいたが、
最後のプライドが僕にオナニーを許さなかった。

最後には、真優は真っ赤な下着をつけたまま、
後ろから突かれそして口では他の男の肉棒を必死でしゃぶり、
僕のよく知ってるあのかわいらしい声で狂ったように喘いでいた。
涙が止まらなかった。

上の空のまま数日が過ぎたが、初めての一人暮らしだ。
日常生活を何とかこなしているうちに、
少しずつ真優のことを忘れることのできる時間もできてきた。
そんなある日、一人で初めて渋谷まで行ってみた日のことだった。

「亮・・・?梶原君じゃない?」
デパートの一階にあるキャッシュカードの機械に向かって暗証番号を打っていた僕に、
懐かしい声が語りかけた。

「えっ?」
目の前には、AV女優安藤しずか・・・
いや、僕の幼なじみでありあこがれの人であった、真優が立っていた。
その瞬間・・・見違えるほど綺麗になった真優に僕は一瞬言葉を失い、
時間が止まったと思ったほどだった。

何も変わっていない。彼女は、ピンク色の春物のコートの下はジーンズで
化粧もほとんどしているかどうかわからないほどだ。
地味な、清楚な、純真な美少女のままだった。
しかし、確実に、驚くほど綺麗になっていた。

なにを話したかは覚えていない。
だが、とにかく次の日彼女と会うことになった。
渋谷から何駅か神奈川のほうに向かった私鉄の駅で、待ち合わせた。

「ね、亮。せっかくだからうちにおいでよ。」
つい半月前までだったら、そんな言葉は信じられなかったかもしれない。
はぐらかして、彼女の部屋に上がる前に、「恋愛」の段階を踏もうとしたかもしれない。


でも、目の前にいるのが真優であると同時にAV女優だという事実は、
妙な期待を僕に抱かせた。

「さっ、こっちだよ。」
そう言って僕の腕を引っ張って真優は歩き出す。
今日の真優は、昨日と同じコートの下はミニスカートだった。
一年ぶりに見たその綺麗な足と、すこしも変わらない真優の匂い・・・

そして、いつのまにかAV女優になっているという事実。
そんな女は簡単にやらせてくれるかもしれない。
複雑な感情は抜きにして、そんなことを考えた僕は、正常だっただろうか?
今となっては、男の感情のことは・・・全てはわからない。

僕は受験勉強で覚えた世界史の知識を思い出して、
股間の高鳴りを抑えることに精一杯だった。

なにがおきるのか期待と不安でいっぱいの僕を待っていたのは、
信じられないような「転落」への序章だった。

立派なマンションの一室、ふかふかのソファに座った僕にコーヒーが出てきた。
真優は、僕のことをよく知っているから、ブラックのまま、砂糖もミルクもつけなかった。
一口、そのコーヒーに口をつけた僕が、その一口目を飲み込むのを確認してから、
真優は切り出した。

「知ってるんでしょ・・・?わたしの・・その・・・」
真優が僕に笑いかけた。
意味を理解した僕は、答えた。
「う・・・ん・・・」

真優は、すこし恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべた後、
「見てくれた?私のビデオ・・・」
そう聞いてきた。
「見た・・・でも・・・」
「でも・・・なに?」
「・・・」
いえなかった、でも、オナニー出来なかった、とは。

長い沈黙がその場を包む。
真優はまっすぐな目で僕を見つめる。
僕は耐え切れなくなって、コーヒーカップを手にとって、二口目を口に含む。


「あたしね・・・」
そういうと、真優は立ち上がって窓の方へ歩き出し、この一年の話を始めた。


女子大に入って最初の3ヶ月、普通の生活を続けていた真優の運命が変わったのは、
7月の初めのことだったという。
「中野・・・中野駿先輩が、合コンしようって、言ってきたの。」

中野駿・・・高校のひとつ上で、サッカー部のエースストライカーだった。
彼が10番を背負ったサッカー部は、全国大会で準決勝まで進んだ。
先輩はユース代表の候補にまでなるほどの選手だったのに、受験して東大に現役合格した。

格好よくて、サッカーがうまくて、これもまた、僕の憧れでもあった。
右サイドバックとして僕が全国大会の晴れ舞台、国立競技場のピッチに立つことが出来たのも、
中野先輩のおかげだった。

「あたし、実は、ずっと・・・中野先輩にあこがれてて、その人の誘いに、舞い上がっちゃって・・・」

知っていた。
真優が彼氏を作らないのは、中野先輩が好きだからだと。
そして、サッカー部マネージャーとしてのけじめから、中野先輩とも付き合おうとしなかったことを。

「それで、告白されて、すぐにOKしちゃったんだけど・・・」
僕は、すでに壊れかかっていた心を再びかき乱された。サッカーではかなわないとわかっていた。
だから、右サイドに転向して、二年生のときからレギュラーになった。
その中野先輩に、真優をとられてしまったことに・・・複雑すぎる感情がわいた。

「合コンに来たほかの女の子・・・みんな私が声をかけたんだけど・・・みんな中野さんにはまっちゃって・・・」
ここら辺から、話が一気にAV女優に向かって進み始めた。
「駿・・・中野先輩がAV女優のスカウトみたいなことをやってたなんて知らなくて・・・
その女の子たちが次々に女優になっちゃって・・・」

僕はただただあっけにとられて聞いていた。

「で、私は、そんなことやめてって、頼んだんだけど・・・」
そういうと、再び僕の前に座って、黙ってしまった。
長い沈黙の後、おそるおそる僕が聞いた。
「それで・・・?」
真優は幾つかの言葉を飲み込むようなしぐさをした後、こう答えた。
「気づいたら、私もAVにでることになってたの・・・」


彼女の話は堰を切ったように続いた。
AV女優にスカウトしたほかのたくさんの女の子とも、
中野先輩は肉体関係を持っていたこと、それを責めて別れようとしたこと、
でも、彼が追いかけてくると拒めなかったこと、
他の女の子のほとんどはいわゆる「企画女優」で、
真優は単体の「アイドル女優」に仕立て上げられたこと・・・

「どうして、そんなになるまで・・・僕に言ってくれれば・・・」
僕は涙を流しながら、頭をかかえてしまった。

「どうして?しょうがないじゃない・・・だって、好きだったんだもん・・」
信じられない言葉はなおも続いた。
「何度も別れようと思った。でも、ダメなの。彼が好きで仕方がないの。
駿のそばにいたい。駿に抱いてほしい、だから、カラダをささげても後悔してない。」

「こんなことをしてて、恥ずかしくないのか!」
「あなたも、私と同じね・・・この仕事を差別してる・・・」
「な、なにを・・・」
「私のこと、汚らわしいと思う?」
「そ・・・そんなことは・・・ないよ・・・」
「本当?じゃあ、この場で私とセックスできる?」
「えっ・・・?」

そういうと、彼女は僕に体を寄せてきた。
僕はその体を跳ね除けた。
「やめろ!」
「きゃっ!」
真優が手を突いたのを見て、はっとわれにかえった。

「ごめん・・・でも・・・」
「わかってるよ。亮はいくじなしだもんね。」
「違うよ!」
僕はむきになって叫んだ。
「僕が言いたいのは・・・どうして、そんな・・・綺麗なのに、
可愛いのに・・・神様から選ばれた美少女だったのに・・・」

「神様から選ばれた・・・?」
真優は、僕の言葉にすこし驚いたようだった。
僕は、真優のことよりも、中野先輩がそんなことをしているということが、信じられなかった。


僕から見れば、何もかもかなわない、それこそ神のような存在だった。神に選ばれた存在だった。
僕はフィールドでも彼の考えを汲み取るように右サイドを駆け上がり、時には中央に切れ込み、何度も怒られながら・・・
でも、全国大会の準決勝で決勝点をふくめて中野先輩の二つのゴールをアシストしたときに、先輩が僕の手を取って、ウィニングランのランデブーをしたことが、僕のサッカー人生で一番の思い出だった。

頭もよくて、サッカーもうまくて、Jリーグからも誘いのあった先輩が・・・神に選ばれたような人がそんなことを・・・

「亮・・・あなたも神に選ばれた人になってみる?」
真優が意味不明な一言を発した。

「どういう・・・こと・・・?」
そう僕が聞き返すと、後ろでドアの音がした。

ばたんと閉まる音から数秒の沈黙、3口目でぬるくなりかけのコーヒーを一気に飲み干したとき、
ドアを開けて部屋の中に入ってきた男は、真優の話を証明する人だった。

「中野先輩・・・」
「駿、待ってたぁ〜」
真優は、まるでAVに出ていたときのような、
僕の聞いたことのない声で中野先輩に駆け寄って、抱きついた。

さっきまでの深刻な表情はどこかへ行ってしまっていた。
「よう、梶原。久しぶりだな。」
「先輩、一体どうして・・・真優を、真優を放して、解放してやってください!」

「うん?真優、話したのか?」
「うん、だいたいね。」
僕の言葉にはまるで答えずに、二人はそう会話を交わした。

背の高い中野先輩に、150センチ代後半の真優は抱きついたまま見上げて話す。
その光景自体がショックだった。真優は完全に先輩にメロメロといった感じだった。


「それじゃ、こいつの運命についても?」
「あ、それはまだ。話そうとしたら、駿が来たから・・・」
「ふうん・・・そうか。」
中野先輩は僕を見ていたその目線をすこしずらして、何かを確認した。
今考えれば、コーヒーカップが空になっていることを確認したのだろう。

「じゃあ、俺から言うか・・」
そういうと、さっきまで真優が座っていた位置に先輩がやってきてこう言った。

「梶原。お前には今日から女になってもらう。」
「は?」
それまでのショックを一気に打ち消す、それこそ意味不明の発言だった。
「聞いただろう。おれは、今AV女優のスカウトをやってるんだ。
これがとっても儲かる。ま、俺の腕なんだけどな。」

真優の話を裏付ける先輩の自白・・・再びショックが僕を襲う。
そのショックはここからどんどん大きくなっていくことになる。

「ところが、真優ほどの美少女はそう簡単には引っかかってこない。
こいつは天才なんだ。高校を卒業するまで処女だった清純さと、
セックスするときの反応のよさ。もちろん、この真っ白な肌も、端正な顔立ちもな。」

そういうと、中野先輩は真優を抱きかかえて、きていたシャツをスカートから出して、
軽く服の下から胸を触った。

「あぁん・・・」
真優が悦びとじらされたことへの不満の混じった声をあげた。
AV女優にまでされてしまった清純だった真優が、それでも
中野先輩から離れられない、そのときの僕には「理解できない」状況をしっかり示していた。

僕はこのショックな状況の中で、それでも男としての生理反応を示してしまった。

「ふふ、お前も男としてはその程度だな。自分がずっと好きだった女をAV女優にまで落とした男が、
そのアイドルを目の前で陵辱する姿はどうだ?その粗チンはしっかり反応したみたいだけど。」

悔しさで・・・頭がいっぱいだった。歯を食いしばりながら、的を射た先輩の指摘に、
動くことが出来なかった。飛び掛ることも出来なかった。



「話を元に戻そう。だから、俺は決めた。トップのAV女優を俺が作るって。」
「それ、どういうことですか・・・?」
僕は精一杯の理性で敬語を使って聞いた。
「俺の知り合いに、男を女に変える技術を持った医者がいるんだ。
遺伝子レベルで男を女に変えちまうわけ。
もともとは、性同一性障害の治療のために作られた技術なんだけど、
あまりにうまく行き過ぎて、公開できないんだって。で、俺に話を持ってきたと。」

「な、なにをいっているんだ・・・」
ここらへんから、僕の意識は朦朧としてきた。
「わかんないか?男を女に変えるときに、性別だけじゃなく、
遺伝子操作で容姿も肌の色も、それこそ味覚からなにから自由に作り変えられるんだってさ。
だから、最高のAV女優を作ってやろうと思ったってこと。そして・・・」

意識が途切れ途切れになっていった。
最後まで何とか起きていようとしたが、中野先輩の屈辱的な話を半分くらいしか理解できなかった。

「おまえが選ばれた・・・と。・・・真優が、お前がいいって言ったんだ・・・
次におきたら、生まれながらの天才・・・俺がAV女優としてのお前を、
カラダの構造からプロデュースするんだ・・・」

そこまで覚えている。

次の瞬間・・・
後から知ったことだが、正確には25時間と32分後、
僕は目を覚ました。朦朧としていたはずの意識がウソのように頭がはっきりしていた。
コーヒーに仕掛けられた睡眠剤で眠らされた後、僕は先輩が「プロデュース」した
女に変えられる手術を受けて、この場で目を覚ましたのだった。

だが、そこがどこだかはわからなかった。でも、ベッドの上に寝ていたことだけはわかった。
「ゆめだったのか・・・」
そう、一言つぶやいてみた。全てが夢だったらよかった。そんな期待も込めたかもしれない。

「!」
自分の出した声が信じられなかった。
いつもの自分の声ではない。もっと高い声だった。
僕は声を出すのが怖くて、声を出さないように飛び起きた。
おきあがるそのわずかな間、朦朧とした意識の中で聞いた言葉を思い出していた。

それが現実の出来事だとしたら・・・
起き上がる瞬間に、体の感覚がいつもと違ったから、覚悟は出来た、
でも、ベッドの周りは大きな鏡が取り囲んでいて、僕の姿を映し出した。


体は布団で隠れていた。だが、正面に見えたのは自分ではなくて、
今までの自分ではなくて・・・目の大きな、肩まで綺麗な髪の伸びた、美少女だった。

肩から上だけでも、その少女が・・・・少女から大人へと変わろうとしているその女が、
とても美しい女だということはわかった。

「これは・・・」
僕は確認するようにつぶやいてみた。やはり、自分の声ではない。女の声だった。
左を向いてみた。
左側にも大きな鏡があって、布団で隠した胸から下・・・腰へといたる背中のライン、
そして、布団が隠しているふんわりとしたふくらみがわかった。

周りにあるのが鏡であることを疑ってみたところで、それが鏡であることは間違いなかったし、
自分の体を確かめることくらいはいやでも出来てしまう。

裸のまま、僕は起き上がって、鏡の前に立ち、自分の姿を確認する。

「これが・・・理想の・・・AV女優・・・」
気を失う前のことはむしろはっきりと頭の中に残っていた。
自分が眠っている間に、この体は、女性のものにされてしまって、
今目が覚めたという、そのことは明らかだった。

信じられない現実を受け入れられないまま、僕は歩き出す。
部屋の中・・・誰もいないようだったが、シャワーの音がどこかから聞こえる。

ここは・・・ラブホテルだろう。来たことはなかったが、
ビデオやテレビで見たものから想像する豪華なラブホテルそのものだった。

シャワーの音をたどり、曇りガラスになっているドアを開けると、
その中でシャワーを浴びていたのは、真優だった。
その傍らにあるジャグジーつきの風呂に、中野先輩が座って、何か本を読んでいた。

僕と二人の間にはもう一枚のドアが隔てていた。透き通って曇り止めも施されたガラスの向こうで、
真優が僕の姿に気づいた。



そのドアの向こうに入ってしまったら、本当に後戻りできなくなるような気がした。
もう、体をこのように変えられてしまっても、
まだどこかで受け入れがたい現実に抵抗したいと思う、
自分がどこかにいた。

裸のまま、真優がドアの方へ駆けてきて、運命のドアを開く。
「亮、はいんなよ。」
真優に引っ張られて、僕は無抵抗で浴場へと入った。
真優に、この選択の責任を押し付けているような気がした。

「さ、まずは生まれたての体を洗わなきゃね。」
そう言って、真優はシャワーの方へ向かう。
「真優、待って・・・」
「なに?抵抗する気?」
真優は僕をまっすぐな視線で見つめた。
「これから、セックスするんだよ。その生まれたての体をまずはきれいにしなきゃ。
中野先輩に失礼でしょ。」
真優の言葉はあまりにも狂っていて、僕は抵抗する方がおかしいような気がしてしまった。

ジャグジーに腰掛けたままの中野先輩が、首だけこちらの方を向いた。
「おきたか。可愛がってやるから、まずは真優に女の体のことを教わっておけよ。」

「!」
ぼくは、その瞬間何かが体を駆け抜けたのがわかった。
中野先輩には、不思議な魅力がある。不思議な感覚だった。
「は・・・い・・・」
気づくと、そう答えていた。
中野駿・・・ぼくの高校のサッカー部の先輩で、あこがれの人・・・
それだけでも、十分なのかもしれない。でも、今の一瞬で、
生まれたばかりの少女は完全に堕ちてしまったことを自覚した。

「可愛がってやる」
その言葉が何度も頭の中でこだました。
どこか温かくて、不思議な説得力のある、言葉だった。

よろけそうになりながら、真優の待つシャワーの方へ向かった。
真優が、AV女優になってしまったことを「だって好きなんだもん」の一言で説明しようとしたことが、
いま、ものすごく納得できた。


真優は、その意味で仲間だった。ぼくの先輩だった。
そして、その仲間として生まれ変わる男に・・・
ぼくを指名してくれたことの意味もなんとなく納得できた。

「さぁ、亮、じゃなかった、あなたには新しい名前があるの、私が考えたの。
あゆこ、っていうのはどう?かわいいでしょ。」
「うん・・・それでいいよ、あゆこ・・・かわいいなまえ・・・」

なし崩しに物事が進んでいくのを受け入れる気分が出来ていた。
「よかった。しゅん〜、あゆこでいいって、なまえ。」

そういうと、真優は十分に泡立てた石鹸をぼくの柔らかい胸にのっけた。
「ふふ、きれいなおっぱい。これが、駿プロデュースの"理想のAV女優"のおっぱいか・・・」

ぼくの胸は、細身の体からみれば大きいかもしれないが、
歩くたびにゆれるようなものではなかった。ふんわりとした、上
向きのふくらみにピンク色の可愛い乳輪がついていた。

「とってもやわらかい・・・すべすべ・・・この鎖骨も・・・」
シャワーが出しっぱなしの空間でたまにお湯が体に飛んでくる。
僕の肌は、その水をはじくほどみずみずしく、そんなしぶくが鎖骨と肩の間にたまっていた。

「いい?あゆこ、ここが女の子の大事なところ・・・おしっこの仕方とか、
知らないでしょ。後で教えてあげるね・・・」
そういうと、真優はしゃがんで、生まれたばかりの僕の「大事なところ」を丁寧に洗ってくれた。

「まゆ・・・あっ・・・そんなことまで・・・」
「いいの・・・あゆこは・・・わかってくれたから・・・あたしのきもち・・・」
「・・・まゆ・・・」
「二人で、行くとこまで行こう・・・女として・・・生き抜こう・・・よ・・・」

そういうと、真優は生まれたての僕の「大事なところ」に舌を這わせた。
「あっ・・・」
僕の声からはじめての喘ぎ声が漏れた。
「あっ・・・真優・・・きもちいい・・・」

僕は普通に考えれば、狂乱しなければいけないはずだった。
でも、この、現実とは思えないほど急な展開は、現実への精一杯の順応が、
あまりにも気持ちいい殻、それでいいように思えてしまうのだった。

「ふぅ・・・ん・・・あっ・・・」
どこが気持ちいいのかはわからない。とにかく、気持ちよくて、そして、真優が・・・
僕のアイドルである真優が・・・
こうして僕の「大事なところ」にかいがいしく奉仕してくれていることがうれしくて、気持ちよく感じた。



体を小刻みに震わせて、感じた。
「ふふ、かわいいあゆこ・・・」
そういうと、真優は、「奉仕」をやめて、
右手の指で僕の「大事なところ」をもてあそびながら、
左手は僕の足を洗い始めた。

「はぁんん・・・あぁ・・・」
快感が止まらない。足から、「大事なところ」から・・・
「綺麗にしてあげるからね・・・」
真優は十分に泡立てた石鹸で僕の全身を洗い続けた。

真優の匂いが・・・大好きな真優のにおいが僕を包んだ。
ぼくの体からも同じ匂いがするような気がした。

「先に待ってるぞ」
そう言って、浴室を後にした中野先輩の後を追うように、
真優はぼくの体を洗い終えて、大きなタオルでぼくの体を拭いた。

「さ、行こう。」
僕は一瞬ためらった後、深くうなずいた。

裸のまま、僕と真優はベッドで待つ中野先輩の前へと向かった。
先輩はたくましく鍛え抜かれた体で、短い髪の似合う端正な顔立ち・・・
シンプルなトランクスでベッドの上に座っていた。
「注文どおりの体だな・・・」
裸の僕をじっくりと見つめて、先輩はそう言った。
はずかしい・・・そう思ったけど、口には出来なかった。

「どこまで覚えてる?」
「AV女優としての僕を、先輩が、プロデュースするって・・・
最初は性同一性障害の治療のために作られた技術だって・・・それから・・・」

僕はあせったように答えた。
「セックスするために作られた自分のカラダをどう思う?」
ひどいことをいわれた、とおもった。
僕は何も答えなかった。


そして、心の中では、ようやく男としての自分が戦いだした。
この男に、これから抱かれるなんて、ふざけるな・・・
そんな思いが急にわきあがってきた。

だが、ふとわれに返って、こちらを見つめる中野先輩の目を見ると、
そんな考えは吹き飛んでしまう・・・
「でも、中身の方はどうかな・・・」
中身・・・女としての体が、「注文どおり」かどうか、という意味だ。

僕の胸はきゅん、となった。これから、僕とセックスするという、確かな宣言だった。
僕は、この人に堕ちてしまいそうだった・・・いや、もう堕ちていた。

「あゆこ、お前は俺がプロデュースした理想のAV女優だ。
もちろん、俺が楽しめるような最高の体をもった、な。」
身長154cm、上から80(c)、56、82、これがプロデュースされた「最高の体」のサイズだった。
でも、そんな数字だけからは計れない、
さまざまな作られた魅力がこの体には埋め込まれているのだという・・・

意識を失う前に言われたことを、真優から聞いたことを、繰り返された。
嫌悪は、まだ消えてない。こんな男に抱かれてなるものかという・・・
でも・・・それすらも消してほしいと思う心もあった。

「さ、あゆこ、そこに座れ。」
命令口調にも慣れている。この人の言うことには、僕はもとから逆らえない。
逆らおうとも思っていない。こんなにひどい男だと知ったのは、
つい、昨日のこと。もう、遅すぎた。

「はい・・・」
そういって大きなベッドの端にちょこんと座った。
後ろから、先輩が抱き付いてきた。

「あっ・・・」
僕は、体をすこしこわばらせた。嫌悪ではない。恐怖が、軽い恐怖が生まれた。
「怖いか?」
「は・・・い・・・すこし・・・」
素直に答える僕。

「大丈夫だよ、可愛がってあげるから・・・」
その優しい一言にぼくのカラダはとろけそうになった。
ココロは、とろけてしまった。魔法のような彼の声・・・


「力を抜いて・・・」
その言葉がなくても、「可愛がってあげる」の優しい一言がぼくの体から力を奪っていた。

その力が抜けた僕の首を回して、僕の顔と先輩の顔がすぐ近くで向かい合った。
先輩が目を閉じようとするのを確認して、僕もあわてて目を閉じた。
ファースト・キスの瞬間だった。

「ん・・・」
とろける・・・口から・・体中に電流が走るようだった。
体に力など入らなかった。
でも、目を閉じてその電流を受け入れている僕の、
柔らかい胸に、男の手が・・・先輩の手が伸びてきた。

「ぁ・・・ん・・・」
快感、きっとそう呼ぶにふさわしい感覚が全身を包んだ。
女の体は・・・ただ敏感なだけではないんだ。
きっと、男に抱かれるという喜びで、快感を生み出すのだろう。僕は、そう感じた。

でも、そんな理屈などどうでもいい。
「んふ・・・ぁ・・・」
ふさがれている口の中は、まだ先輩の舌が暴れまわっていた。

両手は、まだ胸をもんでいた。
だが、しばらくすると、少しずつ右手が下のほうへと手が移っていく
僕は、胸と口をふさがれて、自由になる首と、頭を小刻みにくねらせて快感を現してしまう。
そんなしぐさこそが、先輩が「プロデュース」した重要な部分だった。

僕のカラダは、初めから、男を「萌えさせる」最高のカラダで、しぐさの一つ一つすらそうだったという。
だから、先輩も自分でわかっていながら、萌えたのだろう。

「ぁ・・・ん・・・あぁん・・・」
次の瞬間、口が解放された。
くるおしいほど気持ちのいいキスが終わってしまったことの残念さと、
体をまさぐられてそこから生まれる快感を、正直に口から外に出せることの安心が同時に生まれた。

そう思ったら、先輩の右手はお腹から、腰を経て、ついに、「大事なところ」へと近づく。
「あぁん・・・」
正直な喘ぎ声が・・・セクシーな声が・・・



ふと、目を開くと、目の前で裸の真優が立っている。
真優と同じように気持ちよさそうに声が出てるかな・・・
もう、僕はそんなことを考えるようになっていた。

同時に、真優の姿が、僕を現実に引き戻した。
急に、こうして中野先輩に抱かれようとしていることへの疑問が、再びわきあがった。

体がまたしても、こわばる。
胸をもまれていたことの快感が急に止まった。
気持ちのよい感覚は走る、でもそれを気持ちいいとは感じなくなってしまった。

体はこわばったまま。
先輩の右手が近づこうとしていた、僕の「大事なところ」は、
今まで悦んでそのときを待っていたのに、急に脚を閉じて、拒否の姿勢をとっている。

僕の意思がそうさせているわけではない。
感情の動きが急すぎて、僕の心がついていけない。
先輩も今まで従順に体を許していた僕が急に体を硬くしたことにすこし戸惑ったようだった。

「だいじょうぶ、あゆこ・・・こわがらないで・・・かわいがってもらうんでしょ・・・」
真優がそう言って、僕の脚のところにしゃがみこんで、優しく脚を開いた。
「かわいがってあげる」先輩のその言葉が、真優によってよみがえった。

「ふぅん・・・」
体から、また、力が抜けた。いや、「かわいがって」もらうことの期待にとろけたのだ。

とろけたのは、カラダだけではなかった。
先輩の右手の人差し指と中指がたどり着いた、僕の「大事なところ」は、
気持ちのよさと、かわいがってもらうことへの期待で、とろとろの蜜をあふれさせていた。

「ほおら、処女なのに、こんなに濡れちゃって・・・」
先輩は僕の目の前でねばねばの液体が指についたのを見せた。
僕は恥ずかしさに目を伏せた。

「あゆこ、お前は最高の淫乱女だ。AVにでて、エッチに、
淫乱なあゆこを日本中の男たちに見せ付けてやるんだ。」
「いや・・・そんな・・・」
恥ずかしさで目を伏せたまま僕は、首を横にふった。


「どうして?お前の喘ぎ声も、そのカラダをくねらせる様も、
まさに俺が望んだとおりだ。もっと、かわいがってほしいだろ?」
「は・・・い・・・」

「かわいがってやる」、その言葉は呪文のように響いた。
ぼくが、素直にそう答えると、先輩は
「よし、いい子だ。」
といって、ぼくの体から手を離した。

そして、ベッドの端から、枕の方へと僕を導いた。
広いベッドには、僕と先輩だけでなく、真優が乗っても十分なほどスペースがあった。

僕は枕を頭にして寝転がった。だが、先輩はベッドの上に立ち上がった。
その姿に見とれてしまう僕・・・その意味を理解する前にただただ見とれてしまっていた。
だが、真優は先輩が立ち上がった意味を理解した。

「さぁ、あゆこ、起きて。」
真優は、先輩の前にちょこんと座って、先輩のトランクスの上から、
その肉棒をまさぐる。

「このなかに、あなたがこれから処女をささげるおちんちんがあるのよ。さわってみて。」
とろけきっていた体に力を取り戻そうとして、僕は起き上がる。
心臓のどきどきは一度も収まっていなかったことに気がついた。

ペニス・・・先輩のそのモノは何度も見たことがある。
勃起していない状態でも、
そのたくましい体に似つかわしい立派なものだったことは覚えている。
そして、いま、僕の処女をささげようとしている。

ゆっくりと先輩のトランクスの前に近づいて、手を伸ばした。
「せんぱぁい・・・」
上目遣いで、何かを訴えた。

僕は先輩のトランクスの上からそのたくましい肉棒をまさぐった。
少しずつ、大きくなっていった。これが、いまから僕の中に入ってくるんだ・・・
「真優・・・お手本を見せてやったらどうだ?」

「あ、そうね・・・」
そういうと、僕の触っているトランクスに真優も手をかけた。
「せぇの!」
そういうと、僕の手をとって、一緒に先輩のトランクスをズリ下げた。
目の前に立派な肉棒が現れた。


「フェラチオは後からでいい。お前が見せてやれ。」
「はぁい・・・んぐ・・・ふう・・・ん・・・」
真優がその小さな口に立派な肉棒を含んだ。首を振ってピストン運動をしてみたり、
亀頭をいとおしそうに舐めまわしたり・・・

僕もやってみたい・・・
そんな気持ちを抑えるのに精一杯だった。
股間からは蜜がとどまることなくあふれ続けていた。

「あぁん・・・」
僕はその蜜を自分でどうすることも出来ず・・・
自ら「大事なところ」に手を伸ばしてしまった。

その姿を先輩と真優に見られてしまった。
「んぐ・・・あ、あゆこ、なにやってんの、あなた・・・」
「いや、やらせてみよう。」

真優が僕の行為を止めようとしたのを、先輩が制止した。

「あ、あぁ・・・ふぅん・・・」
まだ女の子の「大事なところ」の構造も良くわかってない僕は、
とにかくあふれる蜜をどうにかしたくてその秘唇をまさぐり続けた。
真優が舐めてくれたり、先輩が触ってくれたりしたように、気持ちよくはならない。
だが、どうにかしたかった。

「あぁ・・・ん・・・!」
二人がフェラチオをやめて僕の行為を見つめていることに気がついた。
「そ・・・そんな・・・」
僕の手が止まった。

「やめるな、あゆこ」
先輩の命令が僕を縛る。
「は・・・はい・・・ぁ・・・あん・・・」
みようみまねで何とかしようとするものの、どこをどう刺激すれば気持ちいいのか、
いまいち良くわからないのがもどかしい。

「ふぅん・・・あぁん・・・」
無理に喘ぎ声を出そうとしているのが二人ともわかったようだった。
「あんまり気持ちよくなさそうだな。」


「せん・・・ぱい・・・そんなぁ・・・」

それが、先輩が僕に仕掛けた、僕に「あゆこ」としての人生を決断させる、
最後の攻撃だった。

「もっと気持ちよくなりたいか?」
「はい・・・なりた・・・い・・・です。」
「じゃあ、どうしてほしい・・・」
「・・・」

「しょうがないな・・・もうちょっと、頑張ってみるか?」
「はい・・・せんぱ・・い・・あぁん・・・」
気持ちよくなろうとするのに必死だった。

股間をまさぐり続ける僕の目の前で、先輩は僕の目を見つめ続けた。
それだけでも体がとろけそうだったが、やっぱり、僕の指は、
生まれたての処女の指は、技術を伴わなかった。

苦しくなってきた。先輩が、真優が見守ってくれるから、この行為を続けることが出来た。
それでも、技術を伴わないこの行為が苦しくなってきたときに、
自然と僕の口から言葉が出た。

「せんぱい・・・あゆこの、オナニー、見ててください・・・」

先輩は驚いたように目を丸くした。
真優は、手で口を押さえて、目は笑っていた。
「あゆこ、無理することはないよ・・・」
先輩の優しい一言がまた、僕を包み込んだ。

「こうするんだ・・・」
先輩は、そういうと、僕の手を取って、僕の股間に、「大事なところ」に顔をうずめた。

「あ、あっあん、あっ・・・」
先輩の舌が僕の「大事なところ」の入り口で、動き始めた。
「そんな、せんぱ・・イ・・きたな・・・い・・・ぁ・・・あぁん・・・」
自分の指と何が違うのかわからない。

でも、とにかく次元の違う快楽が僕の体を駆け巡った。
「あぁぁぁぁぁ、あぁん、あん・・ん・・・ふぅ・・・あぁん!」
その瞬間、僕は枕に倒れこんだ。
今までとは違う、鋭い衝撃が体を貫いて、
体から一瞬にして全ての力が抜けた。


心臓のどきどきも、一瞬にして収まった。

「イっちゃったか・・・」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
僕は、息を激しく荒らして先輩の言葉に何も答えることが出来なかった。
イく・・・これが、イくっていうことなんだ・・・そう思うしかなかった。

決定的だった。この感覚は、もう、忘れることが出来ない。
このカラダは、気持ちいい・・・
もっと、かわいがってほしい。そう思った。

「さぁ、次はどうするんだ・・・?」
ようやく息を整えた僕に、先輩が意地悪く聞いてきた。
「もっと・・・かわいがって・・・ほしいです。」
「それって、どういうこと?」

「・・・」
「言ってみろ」
「・・・」

その先の答えは知っていた。でもいえなかった。
女の子になったばかりの恥ずかしさだけではない。

ここに来て、僕の中の「男」が最後の抵抗を見せていた。
まだ、自分は男だというプライド・・・いや、ただのこだわりが、
心の中に残っていた。

枕の後ろに真優が現れて、僕の体を抱きかかえた。
僕の耳元にささやいた。
「したいんでしょ、セ・ッ・ク・ス」
かぁっ、と顔が赤くなった。
「ほら、やっぱりそうなんでしょ。じゃあ、そういわなきゃ。」
「そ・・・んな・・・真優・・・」
真優に甘えていた。
そう、真優が先輩を説得して先輩のぎんぎんに反り返った肉棒を
僕の中にぶち込んでほしかった。
痛くてもいい。きっと、すぐに気持ちよくなると知っているから。
そうなるとわかっているから。

もう、僕はこの作られた肉体が、先輩の「プロデュース」したとおりのものであり
だから、先輩にかわいがってもらえば、必ず気持ちよくなれると、気づいていた。
先輩を信じていた。

心からの欲望が僕を支配して、たまに僕の中の「男」が騒ぎ出したところで
決定的な欲望は否定のしようがなかった。
かわいがってほしい。もう、僕は女の子でいい・・・淫乱女でいい。


「言ってみろ、お前は誰だ?」
懇願することが出来ない僕に、先輩が別の質問をぶつけてきた。
「ぼくは・・・」

「ぼく?」
「あ、あたしは・・・あゆこ・・・あゆこです・・・」
自分の呼び方が、間違っていたことに気づいた。

「おまえはまだわかってないみたいだ。お前は男なのか?」
先輩の目が「そうじゃないだろ」と命令している。それを否定すれば、きっと、
かわいがってもらえる。

「あゆこは・・・あたしは・・・女です。女の子です。」
「おまえは、こんなにおまんこをぐしょぐしょにして、これからどうしてほしいんだ?」

「あゆこは・・・あゆこは・・・セックスしてほしいです。
先輩に、セックスしてほしいです。そのおちんちんを、あゆこのおまんこに入れて!」

まだ先輩は許してくれなかった。
「セックスして、その後はどうするんだ。」

「あゆこは・・・あゆこは・・・セックスするために生まれた女の子です。
AV女優になって、日本中の男の人にオナニーしてもらうために・・・もっと、もっとエッチになります。」

恥ずかしさも、プライドも、全部捨てて、ここまで自分の意思で言い切った。
はやく、もっと、かわいがってほしかった。

「よくできたわね・・・あゆこ。さぁ、脚を開いて・・・」
ぐしょぐしょの女芯は、生まれたてでも、もう準備万端だった。

「力を抜いて・・・痛かったらそういってくれよ。」
「はい・・・せんぱい・・・」
真優が僕の体を離して、僕は大きな枕に肩から上を全部うずめた。
自ら脚を開いて、先輩が入ってくるのを待っていた。

その脚を先輩が持った。
僕は、右手を自分の足から離して、真優のほうを見つめた。
真優はその意図を察したのか、僕の手を握ってくれた。

「あは・・・ぁ・・・」
そんな嗚咽が漏れる。先輩の亀頭が僕の「大事なところ」の入り口にたどり着く。
僕は、これから襲ってくるであろう痛みに耐えるために、目を閉じた。


「だめよ、あゆこ、しっかりみつめてて」
強く、手を握って真優がそう言った。

すこしだけ首を挙げて、先輩が僕の中に入ってくるのを見つめる。
「ん・・・はぁ・・・あぁん・・・」

ずぶ、ぬぷ・・・そんな音を立てて、少しずつ先輩が入ってくる。
「ん・・・」

唇をかんで、目を閉じようとする。そのたびに真優が手を強く握って、
もう一度目を開く。

グロテスクで、いやらしい光景だった。
でも、その痛みを伴う光景は、あゆこにとって、最高の幸福だった。

ぬぷ・・・ずぷ・・・にゅる・・・

「よし、最後まで入ったぞ。」
そういうと、先輩は少しずつ腰を動かし始めた。

「あァ・・・はぁ・・・んぁ・・・」
僕の「大事なところ」の中の肉ひだは、初めてとは思えないほど男を悦んで迎え入れ、
痛みと快感の入り混じった不思議な感覚が・・・襲ってくる。

真優の手を握って耐えた。
痛みにも・・・快感にも・・・
痛みと、快感の比率が少しずつ変わってくる。

「あぁん・・・あ・・・ぁ・・・ふぅうぅん・・・」
僕はその結合部分を見つめるのをすっかり忘れて、首を斜めにくねらせながら、
いやらしい声でよがり始めた。
もう、真優が手を強く握っても、その結合部を見つめる余裕がなかった。

「こんなにはやく・・・あゆこ・・・すごい・・・」
作られた、淫乱な僕のカラダに真優も驚嘆の声をあげた。
そして、同じように、快感が痛みを上回ったことを見て取ると、
先輩も少しずつ激しく腰を振り始めた。

「あぁん・・・いや・・・いやぁ・・・」
「あは・・・ぁん・・・ぁン・・・きもち・・・いい・・・」
気持ちいい・・・本心からそう思った。
同時に、僕の上で腰を振る先輩が見えた、
先輩の上半身が動くリズムで、僕は気持ちよくなっていく。
「あぁん・・・せん・・・ぱい・・・ぁぁん・・・」
「おぉぉぉ・・・いくぞぉ!」

次の瞬間、僕の股間から何かがすっぽり抜けた感覚があって、
さらにその次の瞬間、僕の胸に暖かい、白い液が発射された。


「あぁん・・・はぁん・・・」
先輩は、そういって、余韻に浸って喘ぐ僕の口元に、
僕の股間からあふれ出た蜜と先輩のスペルマでいっぱいの肉棒を差し出した。

「はぁん・・・せんぱい・・・んぐ・・・」
僕はその肉棒をいとおしそうにほお張った。

「はぁ、とっても、よかったよ・・・あゆこ・・・」
心を込めて、先輩の肉棒をお掃除するぼくに、先輩が語りかけた。
僕はそのまま上目遣いで先輩を見つめながら、その行為を続けた。

たった今、僕を完全にオンナにしたこの肉棒が、とてもいとおしい。
先輩は、ぼくの上目遣いを見て満足そうに頭をなでてくれるのだった。

「これからまだいっぱいかわいがってやるからな。次はフェラチオもしっかりおぼえるんだぞ。」

精一杯しゃぶっていたぼくの「お掃除」が、まだまだ未熟なことがすこし切なかった。
でも、先輩が喜んでくれているし、とってもかわいがってもらったから、
ぼくのココロは幸福感でいっぱいだった。


いつのまにか、自分が男だったことなど忘れてしまいそうだった。


「ふぅ・・・ん・・・」
真優の、「安藤しずか」としてのデビュー作でも最初の相手役を務めた佐藤さんが
ワンピースの間からぼく、「井川桜子」の女芯を刺激しだす。

先輩に抱かれているのとは違う。でも、先輩よりもうまいかも・・・
「はぁ・・・ぁ・・・ん」
目を閉じて、すこしずつカラダに走る快感を口から吐き出す。
「ちょっと、すごいよぉ・・・」

パンティの上から僕の「大事なところ」のスジをなぞって、
濡れていることをぼくに伝える。
そんな予定調和すら、僕の、淫乱な気持ちを刺激してしまう。

「いやぁ・・・」
ワンピースの後ろのボタンを全部外され・・・下着も外され、
そのたびにぼくは恥ずかしがる。
パンティも脱がされ、秘唇から、蜜を搾り出されると、
早くも、僕はわれを忘れて喘ぎ声を出してよがってしまう。
でも、男優さんが目の前に仁王立ちになると、照れ隠しでも笑顔になってしまう。

「ああ、おおきい・・・」
ぼくはその男優さんの大きな肉棒を最初、舌の先でちろちろとなめて、
それから口いっぱいにほお張る。

そして、初めての、AV女優としてのセックス。
僕は、最高レベルのアイドル女優だったが、
作られた淫乱AV女優には、擬似セックスなどという選択肢はない。

真優の初めてのときがどうだったかは知らない。
でも、男優さんの肉棒を受け入れる体勢はしっかり整っていた。
「あぁん・・・いれてください・・・」
そんなことを言わされて、ふと、周りを見渡すと、
全ての人が、そして、そのほとんどが男なのだが、
僕のセックスを撮影することに集中している。

「神に選ばれた」僕は、同じ男として生まれながら、
この男たち全ての中心にいて、男優さんですら、
僕を気持ちよくするためにここにいるに過ぎない。
そして、カメラの向こうにいる男たち・・・僕でオナニーする。




僕のビデオは、発売されると同時にどこのレンタル店でも何枚も並び、
セルとしても空前の売り上げが見込まれていると、聞いた。
今年一番の新人であるといわれる、「安藤しずか」つまり、真優よりも、
高いお金をもらっていることも知っている。

その分、中野先輩に搾取されていることも知っている。

それでも、いい。
DVDが出回って、ネット上で僕のセックスが出回る。
そんなにたくさんの男たちに痴態を見られ、オナニーされる。
それがどんなことか、元男だった僕は知っている。

お金にしたって、東大に通いながら、先輩がスカウトとして、
とてつもない信用を得ていることの裏返しなのだ。
それすらも幸せに感じるように、きっと、
「プロデュース」された僕の感情もいじられているのかもしれない。

たくさんの男たちが、僕のビデオを見てオナニーする、
その全ての男に犯されているのと、同じなのだ。
それが、幸せに感じられる。
見てほしい、そしてオナニーしてほしかった。たくさんの男たちに・・・

僕は、中野先輩がプロデュースした、生まれながらの天才AV女優である自分が、
選ばれた人間であることを自覚して、
さっきまで口に含んでいた男優さんのたくましい肉棒が入ってくると同時に、
恥じらいながらも堂々と喘ぎ始めるのだった。
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