Phantasy BLOOD 4日目 中編

場所 図書館の入り口 5時59分

 俺達は図書館から脱出した後、刑事は新たな被害者が出ているかの確認を取
った。結果、被害者はまだ出ていないそうだ。とりあえず、俺は
「朝ご飯を食べに行かないか?」
と提案した。それに対して、
「こんな時間に開いている店なんてあるのか」
と言う。
「ああ、店員がいればやっている店がある」
そう、組織が運営するレストラン。あそこは基本的に24時間営業だ。
「よっしゃ、そこに行こうか」
刑事は賛成してくれた。そして、俺は
「そうだ、アクア」
「何?」
俺はアクアを呼んで、クィーンの駒の首飾りを渡す。
「これ・・・」
「クィーンがお前にだってさ」
アクアは小さな手に握ったクィーンの駒の首飾りを見ている。
「貰っていいの?フロー」
心配そうな顔してアクアは言う。
「ああ、俺には首飾りとか合わないからな」
と俺は答えた。フローは笑顔で
「ありがとう」
とお礼を言う。そして、俺は空を見上げた。


場所 第3課 Killer Queen (キラークィーン) 8時45分

 私が第3課に着くと
「百舌鳥さん」
百舌鳥さんがいた。けど、観光客姿だ。でも、どうしてここに?
「よお、綾」
「おはようございます」
私は挨拶をする。
「でも、どうしてここに?」
私は尋ねる。すると、
「アヤ君に渡したい物があって、わざわざ日本から来たそうだよ」
と部長が答える。
「そういうことだ。ほれ」
百舌鳥さんが私に茶色の大きな封筒を渡す。
「お前が調べてほしいといったやつの資料だ」
百舌鳥さんは何時もとかわらない口調で言う。私はお礼を言って、封筒の中身
を確認する。
「・・・」
その資料にはあの事件の内容の詳細が書かれている。そう、私の悪夢の始まり
の事が書いてある。それで、私が調べたいのは今回の事件と15年前に日本で
起きた事件の関連性だ。私は二日目に異界に行った。その時、鐘の音を聞いた。
あの時はよくわからなかった。けれど、あの鐘の音はどこかで聞いた事がある。
そう、15年前の事件に鐘がなったはずだ。
「・・・」
思った通りだ。15年前の記録に鐘が鳴ったと書いてある。それと同時に怪物
が出てきた。さらに鐘が鳴ると世界が悪夢となった事が書かれている。
「おい、綾」
「?」
私は百舌鳥さんを見た。
「綾、資料を見るのはいいが・・・ほれ」
百舌鳥さんから渡されたのは平らな長方形の木箱だった。なんだろうと調べて
見たら・・・
「おお!」
葉巻だった。何処から手に入れたかはわからない。ただ、部長から貰った葉巻
が残り1本だけなので嬉しい。私は早速、木箱を開ける。中には葉巻が入って
いる。当たり前なのだが、うれしい。けれど、火を点けるのは部長に止められ
たので諦めて木箱の蓋を閉めた。ちなみに、葉巻を何処から手に入れたかを訪
ねると
「昨日、小夜ちゃんとデパートに行った時にね」
「え、小夜がアメリカに来ているの?」
まさかと思った。
「ああ、こっそりとアメリカに行こうとしたけど。小夜ちゃんに気が付かれて
しまってね」
何か言うにも言う気になれなかった。とりあえず、百舌鳥さんと一緒なら大丈
夫だろう。
「じゃあ、わしは用事があるんでこれでな」
もう少し、百舌鳥さんと話したかったが用事で第3課を後にした。残された私

「私も現場へ行きますね」
現場に行く事にした。けれど、
「すまんが、アヤ君。君には別の事をやってから行ってもらいたい」
何だろうと思って私は部長の話を聞く。
「実はフローから連絡があって、異界に迷い込んだそうだ。けれど、無事に脱
出して、事件の事で話したいそうだ」
「・・・それで」
「それで、今後の事を考えて装備の支給をお願いした。この書類を第7課に見
せれば好きな物をもらえるだろう」
私は1枚の書類を受け取った。そして、フローのいるレストランへ向かった。


場所 シェリルのお気に入りのレストラン 9時12分

 レストランに着くと、店員がすぐに席に案内してくれた。
「・・・」
案内された席にはフロー以外の人がいた。一人の男の人に子供が二人だ。私は
店員にジンジャーエールをお願いて、席に座る。
「おはようございます。アヤさん」
「おはよう。何かあったそうだが」
私は挨拶をされたので、適当に返す。フローは何時もとかわらない口調だ。や
はり、組織の人間なだけあって、異界に行ったからといって大丈夫なようだ。
「それで、話はなんだ?」
とりあえず、話の本題に入る必要がある。フローは2冊の本を私に見せた。私
はその2冊のうち1冊のほんの題名を見る。すると、この街の歴史について書
かれた本だった。なんだろうと思って、適当にぱらぱらとめくって見る。
「実は事件の関連性と思われるものを見つけました」
私はそれを聞いてなんだろうと思った。私がフローの話を聞こうとしたら、二
人の子供のうち女の子のほうが
「すみません、おかわり・・・いいですか」
と尋ねてきた。フローは笑顔で大丈夫だよという事を伝えて店員を呼び止めて、
リゾットを注文する。しかし、この子供は一体?私が気になって聞いて見ると
異界で出会った子供らしい。正確に言うと人形らしい。
「ふむ」
と頷いて納得した。さほど、驚く事もない。私が頷いていると注文したジンジ
ャーエールが来る。私は一口飲んで、フローは話を始めた。
「今回、起きた事件」
この一連の事件が起きた場所は必ず21人の殺人が起きた場所だという事。そ
れで、犯人は事件を起して死んでいる事だった。さらに、その事件の後には幽
霊話などの怖い話が出回っているそうだ。
「それで?」
「だけど、次の事件の場所を予測してその場所で起きた過去を新聞で調べたら
見つからなくて、歴史の本をハンクが調べたおかげで見つけたんです」
それで、次の事件が起きると思われる場所では、過去にアメリカ大陸に移民し
た貴族が起した事件らしい。それは実質上ここを支配していたらしく、20人
を虐殺して自殺して犯人と被害者を含めて21人が死んだという記録があった。
「ふむ、事件が起きた場所は何かあった場所か」
フローは地図を取り出して、一つ目の事件の場所に印をして、二つ目に起きた
事件の場所に印を付ける。さらに、その貴族が事件を起した場所に印を付ける
と正三角形になった。
「けど、場所が違うな」
「はい、3つ目の事件は・・・」
フローは3つ目の事件の場所に印を付ける。すると、正三角形にならない。犯
人の目的は正三角形を作りたかったのではないのか?
「とりあえず、劇場に行く必要があるな。それと、魔方陣は見つかっているの
か?」
私がフローに訪ねると
「まだ、事件が起きた事意外は知らされていません」
私はコップに入ったジンジャーエールを飲みながら窓を見る。犯人は一体何を
考えている。フローは地図をしまってポケットの中にしまった。いずれにしろ、
今の私にはわからなかった。


場所 シェリルのお気に入りのレストラン 10時20分

 私は2杯目のジンジャーエールを飲みながら、図書館から持ってきた本を読
む。けど、手がかりになるような情報は見つからない。行き詰った。私は本を
読むのを止めた。
♪〜♪〜♪
「すみません」
フローの携帯電話がなった。すぐにフローは携帯電話にでる。
「もしもし・・・はい・・・はい、わかりました」
誰からの電話だろう。私はフローの電話が終わるまでまった。フローが電話を
終えると誰からの電話か尋ねる。すると、
「刑事さんです。昨日、いろいろあって刑事さんと仲良くなったんですよ」
あの刑事も異界に行ったのか。私はすごいなと思いながらジンジャーエールを
飲み干した。
「それで、大変です。3つ目の殺人現場が異界化しました」
フローは真剣な顔で言う。私はシガレットケースから葉巻を取り出しながら
「なら、すぐに行くか?」
と言った。


場所 劇場 10時18分

 鐘がなった。シェリルは辺りを見回す。シェリルは異様な空気の気配を感じ
取っていた。
「シェリルさん、あの」
マりーエは不安な顔をしている。
「どうしたんですか」
シェリルが尋ねると
「う、うわぁああああ」
「な、何だ、こいつ」
「にげろおおおおお」
マリーエが尋ねる前に叫び声が聞こえた。


場所 劇場前 10時45分

 劇場は大きな敷地の中にあった。途中、門を抜けて辿り着いた。劇場に着く
と警察の車とが沢山あった。さらに、劇場の前には直径1mの円盤に書かれた
魔方陣があった。すぐに刑事が私たちを見つけると近寄ってきた。フローと刑
事が軽く挨拶をして状況を聞く。
「最悪だよ。現場を調べていたら急に怪物が何処からともなく出てきやがっ
た」
被害状況を聞くと、わかっている範囲で怪我人が何人かいるものも、全員命に
は別状はないそうだ。けど、シェリルやマリーエの姿が見当たらない。私は何
か嫌な予感がした。


場所 劇場 10時19分

 舞台から怪物が出てきた。シェリルはすぐに危険だと思ってマリーエの右手
を引っ張って走り出す。けれど、すぐに目の前に怪物が現れた。怪物は手足を
縄で固定されて芋虫みたく動き背中から触手が3本生えている。
「マリーエさん、下がっていてください」
マリーエは深く息を吸って吐く。
「すぅーはぁー」
触手はシェリルを威嚇するように蠢く。けれど、シェリルは臆する事なく急接
近する。
夜叉流 飛翔(やしゃりゅう ひしょう)
シェリルは怪物を蹴り上げて中に浮
かせた。
弐ノ義 貫通(にのぎ かんつう)
何が起きたかわからない怪物に対して、頭を狙って突きを行う。ただし、怪物
は吹っ飛ばずに突いた部分だけが破壊される。
参ノ義 飛来(さんのぎ ひらい)
空中に未だに浮いている怪物を前蹴りで蹴り飛ばした。怪物は壁に
がしゃん
大きな音を立て壁に激闘
ばきん、がしゃん
劇場の備品の花瓶とかを破壊して地面に落ちる。そして、怪物は動かなくなる。
マリーエは唖然としていた。ものすごい速さで目の前の怪物を倒しているのだ。
実際、この動きに3秒もかかっていない。シェリルは怪物の倒したか確かめる
事もなく
「さあ、行きましょう」
と右手を引っ張った。このまま、何もなければ階段を下りていけばすぐに出口
に向かう事ができる。けれど、そううまくいかない。3体の怪物に囲まれた。
今度は両手を拘束されて、顔がない怪物だった。
「下がっていてください」
そう言うと、目にも留まらぬ速さで敵を倒す。
夜叉流 貫通飛翔飛来参激
まず、目の前にいる敵に突きを行い、すぐに上段の前蹴りで顎を狙って蹴り上
げる。怪物は中浮いてに地面激闘して動かなくなる。ただし、敵が空中に浮いている間に
「はっ」
今度は背後にいる敵を相手に水月という鳩尾の部分を蹴って相手を吹き飛ばす。
さらに、残ったもう最後の敵を突き、蹴り上げ、前蹴りで蹴り飛ばす。シェリ
ルが全ての動作を終えた同時に最初に倒した敵が地面に
どさり
という音を立て落ちた。
「・・・」
マリーエは言葉が出ない。動きが人間の速さを超えている。それに怪物に対し
て何も恐れていない。シェリルは倒した怪物に見向きもせずに、またシェリル
は右手で手をつないで走り出した。階段まで辿り着き階段を下りる。
「助けてくれ」
一人の警察官が怪物に襲われていた。警察官は腰が抜けて地面を這うように逃
げる。
夜叉流 飛来拳
鋭い突きで相手を突き飛ばす。
「逃げてください」
シェリルが言うと新たに怪物が5体ほど現れた。マリーエは警察官と共に逃げ
る。シェリルは深く息を吸って吐いて、瞬時に心を沈めて集中する。怪物はく
ねくねと動きながらシェリルへと向かって行く。それに対して、臆する事もな
くシェリルは立ち向かった。


 一方、シェリルは警察官と共に一緒に逃げて無事に逃げる。劇場へ続く出口
では他の警察官が銃を構えて逃げる人たちを助ける。シェリルも劇場の出口へ
と走る。一緒に逃げていた警察官が先に出口から出る。マリーエもその後に
がしゃん
いきなり、ドアが閉まった。
ごーんごーん
さらに鐘の音がなる。ドアに近寄っても開かない。必死にドアを叩いても誰も
反応してくれない。それどころか、建物内に霧が出てきた。マリーエがドアを離れると
じゃらじゃら
と金属の音がしてドアが鎖で封鎖されてしまった。


場所 劇場前 10時55分

 劇場は異様な空気に包まれている。さらに、霧が出てきている。
「そういえば、鐘の音とか鳴らなかったか」
私は刑事に尋ねる。
「ああ、2回なったよ。はぁ・・・もう聞きたくないよ」
刑事はため息をつくぐらい嫌な記憶だったのだろう。
「そんなに悪夢だったのか?」
試しに聞いて見る。
「・・・知るか。今では幻のようでわからん」
刑事は刑事なりに解釈をしているのだろう。私はこれ以上を止めた。
「刑事、開きました」
一人の警察官が刑事に話しかける。
「おお、わかった。すぐに行く」
刑事はすぐに返事をする。警察官はそれを聞くと何処かへ走って行く。
「何があったんですか」
「実は、逃げている途中に急にドアが急に閉まって開かなくなったんだ。まあ、
ちょっとついて来い」
そう案内されたのは、劇場の正面入り口だった。
「おい、逃げ遅れた女の子はいたか」
刑事は一人の警察官に話しかける。すると、
「いえ、見つかっておりません」
と答える。それを聞いて刑事は頷きながら次の事を聞く。
「じゃあ、人集めの方はどうなっている」
「ただいま、20人程」
刑事はその返答を聞いて
「だめだ、もっと集めろ」
と厳しい口調で言う。
「わかりました、すぐに集めます」
警察官は人を集めるために走り出した。そして、フローが刑事に
「あの、ここを調べに女の人と女の子が来ませんでしたか」
と尋ねる。すると、
「そういえば、来ていたが姿が見当たらない」
それを聞いて、私とフローは顔を見合わせる。
「あの、逃げ遅れた女の子ってわかりますか」
フローが尋ねる。
「それなら・・・ちょっと、待ってくれ」
刑事がそう言って、刑事はその場からしばらく去って、一人の警察官を連れて
きた。
「はい、なんでしょうか」
警察官はとても真面目そうな顔していた。刑事の話だと、入り口で逃げる人達
の手助けをしていたそうだ。
「フロー逃げ遅れた女の子の特徴を教えてくれますか」
フローが尋ねると、警察官は
「わかりました」
と答える。


「15歳ぐらいの女の子で、紙は赤毛。それから身長は156僂阿蕕い任后
あとは・・・」
話を聞く限りにはマリーエの可能性が高い。けれど、マリーエとはわからない。
けれど、マリーエやシェリルの姿が見当たらない以上はその可能性は否定でき
ないだろう。
「フロー、劇場に入るぞ」
いずれにしろ、劇場に残っている人を助けにいかなくてはならない。
「アヤさん、俺も行きます」
フローは懐にある銃のスライドを引きながら言う。
「実践経験があるからいいか」
私はフローの同行を許す。
「さてと、まずは地図を手に入れたからだな」
私がそう言うと、すぐに劇場の地図を持ってきた。私とフローは二人で地図を
見る。
「意外に広いですね」
私はフローの意見に頷く。
「刑事さん、死体があった場所は何処ですか」
フローが尋ねる。それに対して
「お前ら二人で行くのか?」
と尋ねる。
「まあ、そうだが」
それに対して私が答える。刑事は苦虫を噛み潰したような顔で
「ここだ」
と指差す。私はお礼を言って
「行くぞ」
とフローに言う。フローは地図をポケットにしまいながら
「わかりました」
と答える。
「おい、本当に二人で行くつもりか。なんなら、誰かを同行させようか?」
刑事は私とフローを引き止める。
「怪物との実践経験はあるか?」
私は尋ねる。
「いや、ないが。せめて、応援ぐらい待ったほうが」
私は立ち止まって
「大丈夫だ」
と言って刑事の提案を断った。そして、私は後ろにいる刑事を振り向いて
「こんな台詞があった。援軍は俺だという台詞がね。なら、この場合は・・・」
「・・・」
「私とフローが援軍だ」
そう言って、私とフローは劇場に足を踏み入れた。


場所 劇場 11時11分

 劇場は絨毯が敷き詰められて、貴族の館のような装飾がなされている。けれ
ど、霧が立ち込めて視界がわるい。
「・・・行くぞ」
そう行って、通路をまっすぐ進む。丁字路に差し掛かる。目の前にはドアがあ
って観客席に通じる。さらに、左右にも同じように観客席に通じるドアがいく
つかある。私は目の前のドアから通おって観客席を通って舞台へと行こうとし
た。けれど、
「開かないですね」
鍵が掛かっているのか何かで開かない。仕方がない。別の所から行く事にした。
けれど、
「・・・観客席に通じるドアは全部駄目でしたね」
どれ一つとして、ドアが開かない。
「とりあえず、調べる場所から調べよう」
私はそう言って、劇場の1階を調べる。けれど、全てのドアが開かない。かわ
りに、ドアがない2階ぐらいしか通れる場所はなかった。2階を調べる。この
階も全て、ドアが開かない。私とフローはすぐに諦めて3階へ行く。
「そういえば、何も出てきませんね」
フローがぽつりと言う。私はフローの方を見て
「確かにそうだな」
と言う。実際、ここまで来るのに誰一人とも会ってない。おかしい。けれど、
調べなければ話は始まらない。
がちゃ
「!」
そして、一つだけ開くドアを見つけた。それは特等席に通じるドアだ。
私はナイフを右手に持つ。フローは先ほどから銃を持って戦える状況で準備完
了だという意思を、首を縦に振って答える。私は音を立てないようにドアを開
けて中へ入る。
「・・・」
誰もいない。特等席はボックス席で4人ほど座れる。フローは後から入って、
ドアを閉める。
「何もないですね」
特等席を調べたが、何もなかった。それに、霧が立ち込めて舞台や1階の観客
席の様子がよく見えない。私達は諦めて別の場所を探す事にした。けれど、調
べられる場所は全て調べてしまった。
「どうしますか?」
私は考える。すると、フローが何か気が付いたように
「アヤさん、あれ見てください」
「?」
私はフローに言われた方向を見る。そこには階段があった。けれど、地図をフ
ローと私は確認する。
「4階なんてないはずだが」
そう、この劇場に4階はないはずだ。けれど、ある。
「何か、嫌ですね」
「そうだな」
明らかに危険な気がする。けれど、話が先に進まない。私とフローは4階へ上
がる事にした。


場所 11時28分

 4階に着くと私とフローは言葉を失った。ただ、長い廊下だった。曲り角も
見当たらない廊下だった。
「・・・」
私とフローはその廊下を歩き始める。
すると、すぐに
「闇が・・・」
という声がする。
「!」
私はすぐに後ろを振り向く。そこには老婆がいた。
「誰だ」
私は問う。私とフローは警戒するが、老婆に関しては飄飄としている。
「闇がこの世界を包もうとしている」
「?」
老婆は歌うように語る。
「悪魔がこの世界をさ迷い、世界を飲み込もうとしている」
老婆は演説するかのように語る。
「悪夢が世界を包もうとしている」
老婆は伝えるように語る。
「だが、愚か者は気が付いてくれない。だから、闇は深まっている」
老婆はそう言うと
「あたしの名前はキャリー」
と自分の名前を語る。
「どうやって、ここまで来た」
私は警戒を解かずに問う。老婆は
「簡単な事だよ。私は魔術師だからね」
と答える。老婆の話を聞く限りは頷ける。私は老婆を信用したわけではないが、
ナイフを仕舞う。
「どうやら、信用してくれたみたいだね」
老婆は所々掠れた声で言う。私は
「信用しているわけではない」
と答える。まだ。信用できるわけではない。ただ、このキャリーという老婆か
ら話を聞く必要がある。
「お前の目的はなんだ?」
私が訪ねると、老婆は
「ひっひっひっ」
という笑い声を上げて答える。
「あんた達、この先に行くつもりだろう。けど、この先は、それはもう恐ろし
い場所だ。あんた達が腕に自慢があっても危険だ」
そう言って老婆は赤い血の色をしたルビーを取り出した。


「けど、あんた達は行くつもりだ。なら、これを持って行きなさい」
ルビーを私とフローに差し出してきた。私はヴァンパイアだ。だから、これは
フローが持つべきだ。だから、
「フロー、私には必要ない」
と言ってフローが老婆からルビーを受け取る。
「さあ、急ぎなさい。あたしは怖くて先に進めない」
そう言って私とフローの前から去ろうとする。その時、フローが
「あの、あなたは何を伝えたかったのですか」
と尋ねる。老婆は首だけを動かして私達を見て
「闇が覆う。それを阻止するお手伝いだよ」
と言って私達の前から去った。
「フローどう思う」
私は老婆が去った後、フローに話し掛ける。
「どう、思うって?」
私は部長から貰った最後の1本の葉巻を取り出して吸い口をナイフで作ってガスライターで火を点ける。
「すぅーはぁー」
煙を深く肺まで吸って煙を吐き出す。
「お前、ルビーを受け取るまで銃を構えたままだろ」
私はそう言うと葉巻を吸う。
「あ、確かにそうですね」
フローは何時もの調子で答えて、手にあるルビーを見る。私はフローの手にあ
るルビーを見た。何かを秘めた宝石だと感じた。フローはしばらくルビーを眺め、ポケットに仕舞って
「先へ進みましょう」
と言う。私は、それに対して
「そうだな」
と答えて葉巻を吸いながら先へ進んだ。


場所 たぶん劇場 11時34分

 廊下はとても長くて後ろを振り向いても霧で上って来た階段の入り口すら見
えない。ためしに、フローが窓の外を見たが、霧で何も見えなかった。私は葉
巻の香りを楽しみながら廊下を歩いた。しかし、長い廊下だ。私もフローも黙
って黙々と歩く。
「・・・」
けれど、先は見えない。そうと思えば、霧が晴れてきて辺りが少しずつ暗くな
っていった。そとの様子を見ても太陽がどうなっているかはわからない。ただ、
少しずつ暗くなって夜になった。けれど、正確に夜になったかはわからない。
何故なら、今は昼で太陽が出ている時間帯だ。
「・・・」
完全に暗くなる同時に廊下にある照明が蝋燭に火を灯すように点く。しかも、
その照明が蝋燭の火の明りのような明るさで完全に明るくない。そのため、明
らかに怖い映画にでてきそうな不陰気だ。
「・・・フロー」
私は立ち止まってフローに話し掛ける。
「何ですか?」
「何かでそうだと思わないか?」
私は灰が落ちそうなので携帯灰皿で灰を少し落としてやる。
「確かにそうですね」
フローも神妙な顔をして答える。明らかに不安を隠せない状況だ。とりあえず、
私とフローは長く遠泳と感じられる廊下を歩く。そして、やっと階段が見えた。
「・・・3階へ通じる階段ですね」
フローが階段の前に立って言う。私はポケットに入っているナックルダスター
のケルベロスを両手の人差し指、中指、薬指にはめて
「行くぞ」
と言う。私とフローは階段を下りる。階段を下りた先には劇場とは別の場所だ
った。
「まるで、貴族の館みたいだ」
フローは思った事を口にする。実際、そうだった。あきらかに劇場とは違う場
所だとわかる。
がちゃ、がらがらがらがらがらがしゃん
「!」
降りてきた階段の方で音がする。後ろを振り向くと、上ってきた階段が鉄格子
で塞がれた。さらに、
がちゃん・・・どん
周りの壁と見分けのつかない壁が降りて完全に降りてきた階段を塞いだ。どう
見ても、後戻りできない。
「先に進むしかなさそうだな」
そう言って葉巻を吸い終わっていないのにのシガレットケースを取り出す。
「・・・」
不謹慎だが。そういえば、シガレットケースって煙草を入れるやつだ。だけど、
なんで葉巻をそれに入れているんだろう。
「あ・・・」
たしか、部長から葉巻を貰ったときに、シガレットケースとか持っているかと
聞かれた事がある。普通シガーケースじゃなくて・・・百舌鳥さんから聞いて
いれば問題はないか。



「アヤさんあの」
「ん?」
「どうしたんですか?」
フローが心配そうな顔している。だから、
「大丈夫だ」
と答えて理由を説明した。それを聞いたフローは
「そうですか」
と答えてくれた。私はシガレットケースを仕舞う。今日の帰り道にでもシガー
ケースでも見に行こうと私は思った。私が
「行こうか」
と言うとフローが
「そういえば、このケースだいぶ使ってますよね」
とシガレットケースの事を言う。私は歩き出す。それにフローは私についてく
るように歩き出す。私は歩きながらフローの言った事に対して返事をする。
「そうだな。私が葉巻を始めた時に買ったケースだ。それで、後でこれがシガ
レットケースだとわかった時は驚いたよ」
私は過去を思い出すように言う。フローは私の言っている事がわからなくて首
をかしげる。だから、私はシガレットケースとシガーケースの事を説明した。
すると、フローは私の言った事を理解して微笑んだ。
「そういえば、アヤさん葉巻を始めたのは?」
「21歳の時かな。仕事でヨーロッパに行った時に」
私は天井を見上げる。本当なら警戒しなければいけないのだが、私は葉巻の煙
を肺まで吸い吐く。体に悪い。けど、ヴァンパイにしてみれば無毒に等しい。
「そういえば、フローお前は?」
私が尋ねると、フローは首を横に振って
「健康のために吸っていません」
と答えた。私は
「そうだよな。健康が1番だよな」
と言いながら前へ進む。フローも銃を構えながら前へ進む。まったく、緊張感
のない二人だ。逆に言えばそれほど余裕があると言う事だ。今のところ、危険
は感じられない。
「そういえば、この先どうしますか」
フローが私に尋ねる。それに対して
「マリーエやシェリルを探しながら先へ進もうと思う」
と答える。すると、フローは確認するように質問をする。
「朝、部長に聞いた、えっと、マリーエさんってシェリルさんと同行した子ですか」
「そうだ」
フローは私の返事を聞くと
「わかりました」
と答えた。一応、私はフローにマリーエの事を説明した。フローは私の説明に
いくつかの質問する程度であっさりと理解した。本当に物分りのいい奴だと思
った。私はそう思いながら葉巻を吸った。
そして、私とフローが廊下を歩いた。ただし、闇雲に歩くのではなく、私と
フローは舞台へ向かう事にした。理由はここが舞台の場所からかけ離れている
位置にいると思ったからだ。
「・・・」
実際、廊下の端まで来て、曲がり角に差し掛かり、左に曲がって窓を見る。空
には月が見える。さらにこの建物を囲むように霧が立ち込める。けれど、建物
内には霧は立ち込めておらず、2階から行ける屋上が見え、その奥にはここに
来る前に見えた劇場の横から見た外観が見える。けれど、私達が見た劇場とは
違う。この建物と繋がっている。
「広大だな」
私はぽつりと言葉を漏らす。一方、フローは
「ここは何処ですかね?」
と窓の外を見ながら言う。正直、ここが明らかな異界である事は確かだ。とり
あえず、ここがよくわからない建物だと私達は思う事にした。


場所 よくわからない建物と劇場に繋がる屋上 12時6分

 私はすでに葉巻を吸い終えて、私とフローは階段を下りて2階へ行き、2階
から行ける屋上へと行く。屋上の中心には噴水があって、ベンチにお茶が飲め
る白いテーブルとかある。空を見上げると月が見えて、風はないが肌寒かった。
私達はこのまま屋上を通って劇場へ向かう。しかし、
「!」
死体があった。焼死体で見るも無惨だ。しかも、有刺鉄線といういくつもの刺
が付いた鉄線が上半身に巻きついている。明らかに、残酷だ。だが、ここが異
界だと知らしめるには十分すぎるだろう。私は一応、焼死体を近づく。皮膚が
黒く焦げている所もあれば赤く腫れている部分もある。まるで、生きて
「!」
息をしている。微かに胸が上下している。死んでいるかと思っていたら生きて
いた。
だっ
「えっ・・・」
俊敏な動きで立った。起用に手を使わずに立った。意味がわからない。フロー
も何が起きたかわかっていない。ただ、目の前に何かがいて足が震えている。
その前に何故立てる。しかも、体をくねくねとしながら私の方を向く。
「・・・」
目の前にいるのが危険なのか安全なのかわからない。ただ、
しゅう
口から垂らした液体が目の前にいる何かを溶かしている。
「フロー、ゆっくりでいいから離れろ」
私はフローにそう言ってナイフを構える。私はナイフを構えて
「動くな」
と言う。しかし、相手が動きを止める事はしない。
ぶしゃ
「!」
いきなり、口から黒い液体を吐いてきた。私は咄嗟に避けた。
ぱんぱんぱん
フローが銃で目の前にいる何かに3発撃つ。けれど、狙いが定まっていなくて
目の前の何かは立っている。私は目の前にいる何かの攻撃を避けながら近づき
ずば
首をナイフで切り裂いた。目の前にいる何かは動脈を切られて血を噴出して
どさり
と音を立てぴくぴくと痙攣して動かなくなった。
「・・・」
一体、何なのだろうか?これが異界の住人だという事だろうか?
ぱたん
「!」
何か音がした。私は咄嗟にナイフを構える。フローも銃を音がした方向に向け
る。
「・・・メモ帳?」
メモ帳があった。空からでも降って来たのだろうか。私はメモ帳を拾い上げて
読んでみる。
「これを見た者へ・・・」
どうやら、異界に迷い込んだ人の記録らしい。呼んでみると事の起こりが書い
てある。そこには鐘が鳴った事も書かれている。さらに、人が異界の住人とな
る事が書かれている。私はメモ帳をぱらぱらとめくりながら必要だと思う所を
読む。


「怪物になってしまうという事ですよね」
フローは不安な顔で言う。それに対して、私は
「フロー、許せ」
と言ってフローの指先をナイフで少し切って血を舐めた。
「あ、アヤさん?」
「・・・覚えた」
「?」
私はフローの血の味を確かめた。味は意外に美味しかった。
「血の確認だ。異界の住人は接触すると異界の住人化する者もいる。さらに、
接触した者に体を変形してなりすます事もするとメモ帳に書かれている。

 どうやら、怪物化する人たちにある共通点が見つかった。それは怪物に接触
した人が怪物化している。ただし、攻撃を受けた者は怪物化していない。かわ
りに、怪物の触手から出される何かを飲んだ者が怪物化している事がわかった。

 怪物の事でわかった事がある。怪物は襲った人を怪物化させずに、その人の
外見をコピーする能力があるようだ。実際に、俺が怪物化した怪物に襲われた
時に助けてくれた人が怪物化した人だった。一応、始めは警戒した。けれど、
怪物化する様子は見られない。一応、話を聞いた。すると、怪物に襲われて触
手を口にねじ込まれたが何も飲まされなかったそうだ。つまり、怪物に何か飲
まされなければ怪物化しないそうだ。


 それで、私の予想だと異界の住人になると同時に血の味が変わると思った。
「だから、血の味を覚えるために」
「そうだ」
私はナイフを綺麗な布で拭きながら言う。
「ちなみに血に美味しいとか不味いとかあるんですか」
私は自身を持って答える。
「もちろん、ある。ヨーロッパでは世界中のヴァンパイア達が集まって、血の
飲み比べがあるほどだ。さらに、世界美男美女を集めて誰の血が美味しいかコ
ンテストが日本で行われている。ちなみに、男女混合とか、男女別とか、それ
から、地域別とか細別かされて、かなり、大規模に行ったりもしている。それ
から、世界規模で誰の血か当てる大会が行われる程だ。ちなみに一般人も参加
できる」
「・・・なんか、いろいろありますね」
フローは少し遠慮しているように言う。ちなみに、私は血にこだわりがある。
だから、基本的に他人の血は飲まない。なので、私は
「けど、参加しないけどな」
と言う。もちろん、フローは理由を聞いてくる。だから、私はきちんと理由を
説明した。ようは、譲れないこだわりだ。
「フローもあるだろう」
フローはそう聞かれて困った感じで
「こ、こだわりですか?」
「うむ」
私は目を輝かせて言う。けれど、フローは困っている。
「えっと・・・俺はこだわりとかは・・・あまりないですね」
そうか、こだわりがないか。いい奴すぎて、何でも受け入れられるからこだわ
りの何かが出来ないのかな?
「フロー、お前は趣味とかあるか?」
私は趣味を聞いてフローのこだわりを見つけようとした。けれど、フローは
「ない・・・・・・ですね」
と答える。話を聞くと休日は家族と一緒にのんびりしているそうだ。たまに、
同僚に誘われて何処か行くそうだ。
「えっと、前の土曜日にハンクと一緒に射撃場へ行って、それからシェリルさ
んにアクション映画を一緒に見に行きませんかと誘われて日曜日に見に行きま
したね」
フローは何時もどおりの口調で答える。
「そうか。ちなみに、自ら誘った事はあるか?」
試しに聞いてみる。
「ないです」
即答だった。あまり、積極的ではないなと思った、たぶん、この積極的でない
部分がいい人という性格を加速させているのだろう。
「そういえば、このメモ帳って、どうして空から降ってきたんでしょうね」
フローが思った事を口にした。
「・・・」
よく考えると誰の者だろう。ただ、この異界に迷い込んできた者だとはわかる。
私とフローは顔を見合わせて
「先へ進もうか」
と私が言って
「はい、そうしましょう」
と返事をする。互いに深く考えるのは怖いので何も議論も追及もせずに先に進
んだ。


場所 劇場 12時32分

 劇場は、始めに見た内装とあまり変化がなかった。劇場内に入ると辺りを見
回す。
「!」
人がいた。しかも、
「た、助けてくれ」
と助けを求めている男の人がいた。私とフローは急いで駆け寄る。けれど、
ぶしゃ
「?」
とても不快な音がした。
「うぐうぐぐぁああああああ」
「・・・」
私もフローも言葉が出ない。目の前に助けを求めた男の人が異界の住人化した。
背中に2本の触手が生えている。それが私達に襲ってくる。
ずば
すぐにナイフで触手を切り裂いた。怪物は叫び声みたいな声を上げて怯む。け
れど、その先に進めない。
「・・・倒せるか」
「無理です」
私もフローも目の前にいる異界の住人が倒せない。理由を互いに聞いてみれば
同じ理由だった。人間の原型を留めすぎている事だった。これなら、異界の住
人になった人を元に戻す事が可能だと思われる以上は異界の住人を殺す事はで
きなかった。ならば、どうするか。
「偉大な戦術を使うぞ」
こうなったら、とっておきの戦術を使うしかない。それに対して、
「俺も実は壮大な戦術を使おう思っていたんです」
とフローが言う。
「そうか、ならお前はそれを使え」
なぜか、その戦術をお互いに何も説明しなくてもわかった気がした。だから、
私とフローは
「「せーの」」
だっ
駆け出す。そして、
「うぉおおおおおお」
フローは大きな声を上げて、私は
ぼっ
葉巻に火を点けて
たったったっ
その場から逃げ出した。


場所 劇場の舞台 12時11分

 どれだけの時間がたったのだろうか?貼り付けにされてから、何度も鞭で叩
かれたりしている。とても痛かった。けれど、声も出す気にもなれなくて、虚
ろな目で世界を見る、目の前にいる蒼の女王はそんな自分を見て苛立ち、他の
者を苛める。終わる事のない永劫なる地獄で叫ぶ必要などあるのだろうか?そ
れでも、目の前で誰かが喚き泣き叫ぶ。けれど、こうなるまで自分には生きる
気力なんてなかった。


場所 劇場 12時42分

 俺とアヤさんは怪物から逃げ出した。それで、今はと言うと劇場の3階にい
る。それで、怪物から逃げながら舞台へ行こうとした。けれど、3階から舞台
に通じるドアは鎖で閉鎖されて、鍵が掛かって通れない。俺とアヤさんは喫煙
所に隠れて劇場の地図を見ていて、今後どうするかの話し合いをする。いずれ
にしろ、闇雲に歩き回っても無駄になるだろう。ならば、何処へ行くか相談す
る必要がある。
「とりあえず、異界の住人に見つからないように舞台へ行けられる場所を探せ
ばいいと思う」
アヤさんは地図を見ながら言う。それに対して俺は
「そうですね」
と返事をした。
べたべた
「どうやら、やっかいなのが来たようだ」
アヤさんは右手にナイフを握っている。
「フロー、お前は先に行け。私はここで足止めをする」
アヤさんは物陰から、怪物の様子を伺っている。
「わかりました。では、舞台に集合でいいですか」
俺は地図をしまいながら言う。
「わかった。お前にメモ帳を渡す」
そう答えて、俺はメモ帳を受け取った。そして、俺とアヤさんは別々の方向へ
駆け出した。


場所 劇場 11時34分

 助けを求めていた人が怪物になった。知っていたはずなのに、怖かった。マ
リーエは机の下に隠れながら助けをまった。けれど、いくら待っても助けは来
ない。気が付けば何処かの部屋にいて、暗くてあまり見えない部屋にいる。今
は誰もいない。人の気配も感じられない。孤独だ。いつまで、この孤独の薄ぐ
らい場所にいればいいのだろう。マリーエは思った。正直、今の自分は死んで
いる者同然だった。マリーエは自分の左手を見た。過去を見る能力。それは自
分にとって不必要な能力だった。この能力で他人を信用できなくなってしまっ
た。
「・・・」
けれど、マリーエは自分の意思で能力を使った。理由は簡単だった。すぐに会
って、自分の能力をなんとも思わなかった人達に会うためだ。始めは自分の能
力を利用するかと思って過去を見た。けれど、何とも思ってなかった。だから、
戻りたい。だから、悪夢のような場所の過去を見てもマリーエは耐えた。


場所 劇場 11時34分

 舞台の上では、蒼いドレスを着た女の人がいた。蒼いドレスを着た女の人は
自分の事を
「蒼の歌姫」
と名乗った。自分は怪物に捕らえられて、この舞台の上に連れられて来られて
変な液体を飲まされて女になった。それで、今は張り付けされている。ただ、
その前から、逃げる事も喚く事もせずになすがままされた。少し、思い出して
見た。




 目が覚めると、数人の男がいて自分も同じ檻の中にいた。舞台は闘技場のセ
ットで闘技場には怪物がいた。女は鎖で縛られて怪物に遊ばれられる人や、観
客席で怯えながら見る者、どきどきしながら見る者。まるで、劇の世界に迷い
込んだようだった。けれど、その劇に二度目と言う言葉はない。すべてが一度
きり、同じ舞台を演じる事はない。蒼の歌姫が兵士の格好をした男を連れて舞
台に現れわれ、闘技場の真ん中で女を遊んでいる怪物を檻の中にいれるように
命じる。すると、兵士の格好した男たちがロープを使って怪物が檻に入れられ
る。そのうち、兵士の格好した男が捕まる。けれど、捕まった者の事も気にせ
ずに檻は閉じられる。捕らえられた者は着ている者を省かれて、女にされた。
自分たちと同じように檻に入っている人達は目の前で行われている光景から目
が話せられなかった。女にされた男は必死に助けを求める。けれど、助ける者
は誰もいない。さきほどまで、男だった人間が涙を流して、泣き叫んでいる。
怪物が凶悪な棒を取り出して、女の中に入れる。舞台に絹を裂くような女の泣
き声が響く。股からは血が出ている。女にされた男は涎を口から垂らして感じ
てまでいる。正直、女ではない自分にはわからない。ただ、あれだけ泣き叫ぶ
のだから気持ちいいのかもしれない。自分は死んだ人のような目で見ていた。
生きる意思も消えた自分にはどうでもよかった。それなのに、目の前の光景か
ら目がそれなかった。もしかしたら、気になったのかもしれない。それとも、
目の前にあるからだったからなのだろうか?いずれにしろ、生きる意志もない
自分がこんな事を考えていたのかと思うと、自分が矛盾していると気が付いた。
たぶん、自分は心が死んでいるのだろう。今、自分が考えられているのは体が
生きているからだろう。しかし、自分と同じように檻の中にいる男達は目の前
の光景を見ながら興奮していた。その証拠にズボンに山が出来ている。けれど、
自分は冷めていた。理由はわからない。ただし、女にされた男の顔はそれなり
にいい。それに、体系もいい。蒼の歌姫には及ばないがそれなりに綺麗だ。顔
が重要なのか、声が重要なのか。体の形が重要なのか?わからない。ただ、自
分の周りには怯えながら興奮している男達がいる。怪物は白濁した液体を元男
の中にぶちまけた。白濁した液は女の中に納まりきらずにもれ出ている。元男
はぐったりしている。初めてだというのに絶頂を迎えていた。男から女になっ
たものは女の快楽に耐えられないのだろうか?まあ、いい、女にされた男は絶
頂した。今は、白目を向いた女が怪物に抱きかかえられている。もう、逃れる
事はできないだろう。すでに男の心は失われて女になっているのだろう。女の
体はぴくぴくと痙攣している。そして、
ずしゃ、ぴしゃり
怪物は大きな口を開けて首筋に噛みき、凶悪な歯で肉を引き裂き
ばりばりもぐもぐ
食べた。
ずしゃ
血が噴出す。怪物を血の色で染める。
もぐもぐばりばり
人が食べられている。
ばりばりもぐもぐ
何故か女は生きている。右肩は肉によって繋ぎ止められ、食いちぎられた所か
らは血があふれ出ている。怪物は女が食べられ泣き叫ぶのを楽しむように足か
ら食べ始める。
ばりばりくしゃくしゃもぐもぐごくり
下半身が全部食べられる。涙を流しながら、喚く事もなく怪物を見て大きな口
が女の口で飲み込む。叫ぶ事もなく、檻の中にいる自分たちを見た。一瞬だけ、
自分と目があった。だけど、自分があのようになった時にあのような目になれ
るだろうか?わからない。すべてはこの檻が開けて怪物と対峙すればわかるだ
ろう。





 舞台の上で貼り付けされている。そういえば、ここは何処だろう。体は生き
ようとしている。けれど、心は死んでいて、目は死人のように抵抗もせずに自
分は貼り付けされていた。


場所 劇場 12時52分

 目の前には怪物ではなく、大男がいた。しかも、
「あはっ、あははは」
赤ん坊のような声を上げて、涎を垂らしている。外見から見るとただの変体だ。
まるで、体は大男で心は赤ん坊のようだ。大男の様子を見る限りには敵意は感
じられない。むしろ、遊んでいるようだ。ただ、問題は目の前にいる大男が人
の形をしているという事だ。それで、私のこだわりというかルールと言うか、
人を殺さないと決めている。ただし、人でなくても、いいやつも殺さない。そ
れで、それに引っ掛かる。いずれにしろ、フローが戦っても手を抜くだろう。
ならば、生命力の強い私が足止めをする必要がある。私はナイフを構える。大
男は楽しそうだ。
どだどだどだ
大きな体のわりに意外に早く走り、私を捕まえようとする。けれど、大降りの
動きに私に当たるはずはない。簡単に体を屈めて避けられる。むしろ、そのお
かげで簡単に攻撃できた。相手は攻撃を行って空きがある。私は足をナイフで
突き刺す。
「!」
しかし、ほんの少し突き刺さっただけで、完全には突き刺さらない。
「ごふ」
動揺している私に対して大男はナイフに突き刺されていない足で私を蹴る。し
かも、それに当たってしまった。


「えへへへ、あっはあっは」
大男は右手で口元を隠して、左手で私を指差しながら声を出す。どうやら、私
を馬鹿にしているようだ。
「・・はぁ」
葉巻を吸いたいなと思った。だけど、吸うならば目の前にいる大男をなんとか
してからがいいだろう。それで、ウィスキーとか飲みながら葉巻を楽しみたい。
まあ、ウィスキーを今は持っていないんだけどね。
「ふひぃふっひ」
大男が私に向かってくる。私は大降りの攻撃を避ける。
ぶん
右パンチが来る。私は前に出ながらそれを回避して
がっ
大男の顎を至近距離で上段の前蹴りを行う。私の足先は垂直に突き上げられ、
大男の顎に前蹴りが当たる。けれど、すぐに足を戻す。顎を蹴られたのに意識
を保って反撃をしてきた。左パンチが私を襲う。すぐにしゃがみ込んで、金的
と言う男の股にある急所を狙って突く。
「つぅ〜」
金属の股当てでも装備しているのか、攻撃をした私がダメージを受けてしまっ
た。なんて、頑丈な股をしてやがる。いや、たんに股当てをしているだけか。
しかも、ズボンに手を入れて股を掻いている。私は動きを封じて、死なない程
度に動けないぐらいに痛めつけようかと思った。
「・・・」
私は考え直してやめた。そのかわり、今度は自分から攻撃を仕掛ける。
相手の攻撃は遅い。だから、私の攻撃を当てるのは簡単だ。けれど、切れない。
ほんのかすり傷程度しかならない。ならば、相手が倒れるまで攻撃をするしか
ない。
ひゅんばこ、ずが、すぱ、がこ、すぱひゅんばし、びし、ばこ
素早い攻撃で攻撃をする。しかし、思ったように効果はない。かすり傷程度だ。
打撃での人の弱点に当たる部分を攻撃しても効果が薄い。けれど、相手は怯え
るように両手でガードしている。一応、攻撃し放題だが、効いている気配はな
い。そうと思えば
「ふがぁあああ」
と大きな声を上げて両手を広げて突き出してきた。
「え・・・」
けど、切れた。ナイフでガードした時に大男の左手の甲にナイフの刃が当たっ
て切れた。しかも、ちゃんと血が出ている。大男は左手を見て痛そうな声を上
げて、私に背を向けた。
「ひぃいいいひぃいひぃ」
そして、逃げ出した。意外な弱点だった。けれど、次に会った時は楽に撃退で
きるだろう。私は大男が逃げた方向とは別の方向へと歩きだした。


場所 11時45分

 蒼の歌姫は鞭で叩いてきた。女の肉体は男と違って簡単に傷つき、鞭で叩か
れた所は赤くはれ上がる。
ばちーんばちーん
何度も何度もの鞭で叩かれる。痛みで気絶すれば、水を頭からかけられて、目
を覚まされる。蒼の歌姫が飽きるまで、鞭で叩く。しばらくして、一人の薄汚
い服を着た女の人が蒼の歌姫に舞台の準備が整った事を伝える。蒼の歌姫はそ
れを聞くと鞭で叩くのを止めて、新たに行われる劇を楽しむ。力尽きた自分は
貼り付けになったまま、ぐったりとしていた。そういえば、鎖で手足は張り付
けたのは何故だろう、少し思い出して見た。



 目の前で食べられた女はもういない。もう、死んでいる。蒼の歌姫は自分の
名前を名乗り、これから行われる事を説明した。それは二つの檻を両方開ける。
そう、怪物が入った檻と自分と数人の男が入った檻が。それで、もし怪物に勝
てば自由を得られる。ただし、一人だけだ。怪物を倒しても生き残った場合は
最後の一人になるまで戦わされる。そう、ルールは単純だった。蒼の歌姫はル
ールを説明した後、綺麗な歌を歌った。

ここでは力がすべて

すべては力で示される

勝者は生を敗者は死

ここは戦う場所

さあ、見せてくれ

力と力のぶつかり合いを

そして、美しく散ってゆく敗者に楽園を

なぜなら、ここはアンフィテアトルム

ああ、勝者に

ああ、栄光を

人々とアンフィテアトルムの栄光を




誰もが見とれる歌。ただ、綺麗な歌声が終わって、音楽が流れる。綺麗な歌に
合わせた音楽は聴けるならば何時までも聞きたかった。けれど、聞くことは願
わない。次は戦いの音楽が流れ、ラッパが鳴らされる。それと同時に檻が開い
た。ゆっくりと、檻から出た。目の前には怪物がいる。怪物は4本足で歩く白
い犬だ。けれど、とても大きくて背中から触手が生えている。先ほど、起用に
女を犯した触手だ。けれど、それを避ける気力もなく捕まる。それで、触手に
甘い液体を飲まされる。それで、他の何人かも触手に捕まったりしている。叫
び声が聞こえる。けれど、戦って死ぬ叫び声ではない。恐れた人の声だ。男が
泣き叫ぶ。女にされた男が泣き叫ぶ。果たして、この叫び声に違いはあるだろ
うか。触手から逃れた女にされた男の一人が逃げ出す。けれど、逃げ場はなく。
これが仕組まれた事もしらずに
ずしゃ
足を踏み潰される。それで、
ばりばりもぐもぐばりばりもぐもぐごくり
食べられた。何人か腰が抜けて失禁している人もいる。何人かは触手で犯され
ている人もいる。別の場所を見れば男が女にされた男が犯している。どうやら、
頭が変になってしまったようだ。そして、怪物は男と女になった男のしている
行為を見物し始めた。ちなみに、檻に入ってい時、服は着ていた。男にされた
女は衣服を無理やり引きかされて、男と男にされた女は犬や獣が行うバックの
体制で犯した。女にされた女が逃れようとしても腕を掴んで離さない。もう、
男だった面影なんてない。誰が見ても女だった。そして、自分を捕らえていた
触手が動き出した。どうやら、犯すつもりだ。凶悪な棒が迫る。はたして、女
の快楽はどんなものだろう。死ぬ前には面白い経験になるだろう。だから、抵
抗することもなく。受け入れた。けれど、死ぬ事はなかった。蒼の歌姫が怪物
に鞭で叩いて、さらに自分を助けてくれた。蒼の歌姫は後ろに待機している兵
士の格好をした男達に命令する。兵士の格好をした男達は自ら闘技場に入った。
それにより戦いは中止されて、自分達が触手に捕まろうと、怪物の牙で切り裂
かれようと、助けてくれた。兵士の格好をした男は勇敢に立ち向かった。死ん
だ人の屍を踏みつけて怪物に立ち向かって怪物を倒す。気が付けば、肩に抱え
られて蒼の歌姫の前に連れてこられる。それで、名前を聞かれた。けれど、何
も言わない。ただ、死んだような目で蒼の歌姫を見た。兵士の格好をした男に
支えられて立っている。けれど、もう立つ気力すらない。蒼の歌姫はそんな自
分を見て貼り付けを命じた。張り付けにされた。それで、戦いが再開される事
はなかった。なぜなら、自分が自由を得た勝者だったからだ。ただし、すぐに
捕らえられた勝者だった。戦う場に残った人たちは、文句を言う事もできずに
蒼の歌姫は歌で伝える。


勝者は一人だけ

それ以外は楽園へ

笑いながらお行きなさい

華やかに散りなさい

だけど、慈悲あるならば

もし与えるのならば、夢を

さあ、歌さない、最後の歌を

最後は華やかに

美しき物語の終焉

それは一つの物語

あなただけの物語

蒼の歌姫の歌が終わる。その後は綺麗な音楽と共に現れた仮面を付けた男が綺
麗な音楽と共に切り裂いた。戦う場にあった武器も意味をなさない。ただ、男
が音楽に合わせて舞い、音楽が終わると同時に、戦う場に立つのは仮面を付け
た男しかいない。

それで、張り付けされている。けど、それに意味があるのか知らない。けれど、
不思議だ。自分は耳が聞こえないはずだ。なのに、なぜ蒼の歌姫の歌や言って
いる事がわかるのだろう。


場所 劇場 12時52分

 俺は階段を駆け下りた。それで、2階へ辿り着く。しかし、怪物がいた。こ
ちらには気が付いていない。なので、すぐに1階へ向かった。1階に着くと、
怪物の姿は見当たらない。それでも、銃を構えながら前と進む。一つ一つ、舞
台に続くドアが開くか確かめる。けれど、
「ここもだめか」
端から調べているが、開きそうなドアはない。地図を見て舞台裏から行こうと
しても、そこに続くドアは鎖や鍵などで閉鎖されている。まるで、誰も入る事
も許されない場所に思えてきた。
「!」
けれど、手がかりを見つけた。劇場の入り口から一直線に観客席に行けるドア。
そのドアは綺麗な絵が描かれて、レリーフを埋め込む事ができる。さらに、そ
のドアには

紅と蒼の歌姫

二人は楽園の扉を開く

けれど、楽園は閉じられ

紅は空へ蒼は海へと引き裂かれた

二人が歌う事はもうないだろうか

と書かれている。正直、わかりすぎる。けれど、これしかない。それで、紅は
空、蒼は海・・・どういうことだ。よく考えろ。調べろ。この絵にもヒントが
あるはずだ。空と海が描かれている。真ん中では二人の歌姫を彫ったレリーフ
が抜け落ちている。えっと、考えろ。絵は二人の歌姫が抜け落ちて、空と海の
絵が描かれている。空は青く描かれているのに、太陽が海に落ちて絵の一部が
紅に染まっている。昼と夕方が無理やり混ぜ込まれている。
「・・・」
東か?夕日が沈んでいるのは絵の左がわだ。まさか、戻らなければいけないの
か?俺は考える。正直、ここにいてアヤさんが来るのも待つのもいいだろう。
けれど、何もしないのも嫌だ。ならば、探すしかない。俺は覚悟を決めて歩き
出した。



場所 劇場 12時58分

 私はふと、劇場の外を見た。
「!」
少女が隣の建物と劇場を繋ぐ屋上を走っている。しかも、その少女はマリーエ
だ。劇場に向かって来ている。これならば、2階に行けば合流ができる。しか
し、逆戻りをした。なぜだ?何が起きたかと見ていると劇場の建物から異界の
住人が出てきた。
「!」
私はこのままマリーエを見失うは避けたかった。だから、私は窓を開けて
たっ
飛び降りた。
どん
地面に着地。マリーエを探す。けれど、マリーエの後姿が建物に入って行くの
が見えただけだった。代わりに、
「!」
背後には怪物がいた。それは先ほど逃げた異界の住人だった。私は首を少し見
て後ろを見た。変態にしか見えなかった。だから、私は
かつかつかつ
革靴の足音と共に近づいてくる異界の住人に対して
「はっ」
左の足の回し蹴りを行った。無論、上段で顔を狙った回し蹴りだ。
ばこ
私の靴がめり込んで異界の住人は吹っ飛んでしまった。異界の住人は空中にし
ばらくまって、受身も取らずに地面に激突する。それで、体をぴくぴくして、
触手だけがうようよとしていた。私はその場から動けなくなる事を確認して走
り出した。もう、この異界の住人は何も出来ない。だから、私は劇場の隣にあ
る建物へと入っていた。



場所 11時41分

 過去を見た。けれど、この世界から戻る方法は見つからなかった。それどこ
ろか、能力の使いすぎで頭がくらくらする。そもそも、この能力は1分が限界
だ。それなのに、1分以上も使ってしまった。例え、過去であろうとも、痛み
も感覚も感情もすべてリアルに体験できる。だから、能力を使い過ぎれば心と
体に影響がくる。けれど、今はそうでもして、出る方法を見つけなくてはいけ
ない。
きぃ〜
誰かが入ってくる気配を感じた。誰だろ?マリーエは息を潜める。それで、様
子を伺う。窓は開いている。まだ、相手は気が付かれていない。それでいて、
不快な音が聞こえる。マリーエは静かにゆっくりと、無事にドアの所まで辿り
着いた。そして、入ってきた相手を見ようとしてしまった。薄暗くて余りわか
らない。ただ、首が長い。それは首と胴体が太くて赤い何かで繋がれていた。
その何かが赤い背骨からずるりと取り出された神経のようにも見える。それで、
首だけが別の生き物ように動き、マリーエの方を見る。目が光っているのがわ
かる。目の前にいる何かが怪物だとわかったのと同時に相手は暗闇でも見えて
いるのかもしれないと思った。
「いやぁああああ」
私は叫びながらドアを閉めた。怪物は首を伸ばして向かってきたのですぐにド
アを閉めた。
ごん
と嫌な音がしてマリーエは走り出した。曲がり角ですぐに曲がって、それで、
階段を上って、真っ直ぐ走って逃げた。けれど、思うように早く走れない。さ
らには何かとぶつかってしまう。驚いた。けれど、能力の使いすぎで足の力が
入らない。それで、私の意識はここで途切れた。



場所 11時43分

 叫び声を聞いたので、向かってみれば一人の少女と激突してしまった。少女
はスカートがめくり上がっていることも気が付かずに発狂している。けれど、
足に力が入らないらしく、床を這いつくばっている。けれど、それも力尽きて
気絶してしまった。
「・・・」
目の前に首が現れた。本体は首と繋がる赤く背骨ほど太さのある赤い尻尾のよ
うな物に繋がれているのだろうと推測できる。どうやら、進化したようだ。そ
れでいて、必死に何かを探しているようだ。少女を見る。気を失っている。し
かも、こちらに向かってきている。ただし、首だけだ。
「止まりなさい」
静止をかける。すると、止まってくれた。どうやら、話が通じるようだ。
「これは私の獲物です。なので、別の獲物をお探しください」
そう言ってはみたものも、願いは聞きどけてくれないようだ。だから、住人は
威嚇的な行動を取る。顔が縦に二つに割れた。それで、目がある。そうやら、
獲物の体液を好む住人のようだ。とりあえず、壁に立てかけている。剣を手に
取る。住人はものすごい勢いで首だけで襲ってきた。けれど、簡単に避けられ
る。右によけて
ずどん
体と胴体をつなぐ何かを剣で突き刺して、さらに剣は壁に突き刺さる。もちろ
ん、首の根元に刺した。だから、胴体をもって来なければ抜けない。けれど、
それをさせるつもりはない。壁に立てかけられている剣は3つあった。それで、
その1本は壁に突き刺さっている。とりあえず、2本の剣両手で取る。胴体が
やってきた。胴体は綺麗な女の人の体をしていた。けれど、血に塗れて黒いド
レスは台無しだった。胴体が走ってやってくる。
どん
住人の攻撃に当たる事もなく簡単に胴体で突き刺して、壁に突き刺す。けれど、
これで終わりではない。これでは抜かれてしまう。殺すつもりはなくても相手
の動きを封じなくてはいけない。だから、
どすん
右手を剣で壁に張り付ける。これでは足りないので、エプロンのポケットに入
った食べ物を食べる時に使うナイフで
どすん
左手を固定した。血が出ているけどこの程度は死ぬことはない。急所も外して
ある。やさしい住人がいれば助けてくれるだろう。もっとも、そこまで進化し
た住人がいればの話ですが。さて、床に倒れている少女を抱きかかえて
「・・・」
安全なお部屋にご案内することにした。



場所 劇場とよくわからない建物つなぐ屋上 13時7分

 屋上へ行くと、体を痙攣させている怪物がいた。警戒しながらも、よく見る
と、顔を殴られた後があって顔が腫れている。
「・・・」
なぜか、変態に見えた。けれど、攻撃をしてくる様子も見えない。俺は怪物に
背を向けて歩いた。けれど、
「・・・」
ふと、後ろを振り向くと、触手を使って立ち上がった。どうやら、相手は隙を
狙っていたらしい。怪物は4本の触手で支えられて体は空中に浮いている。そ
れでいて、変態に見えてしかたがない。
どんどんどんどん
怪物の体を支えている4本の触手を銃で撃ち抜いた。
どさり
支えを打ち抜かれた怪物は地面に激闘した。それで、体を痙攣させて攻撃を止
めた。とりあえず、時間が無駄なのでその場から逃げ出した。


場所 12時41分 部屋

 気が付くと、マリーエはベッドの上にいて、飛び上がるように起きた。辺り
を見回すと、メイドが二人の女の子がいる。それで、二人とも色違いでお揃い
の洋服を着ている。蒼と紅の服で綺麗なフリルとか付いている。マリーエには
わからないが、ゴシックロリーラといえる服装をしている。女の子は二人とも
楽しそうで、メイドはチェスの遊び方を教えている。それで、二人は話し合い
ながらバックギャモンをしている、一方、そのメイドは無表情だった。それで、
感情すら、元から無い感じだ。笑う事もない。それで、私が起きている事に気
が付いて
「調子はどうですか」
と聞かれた。マリーエは怯えながらも
「だ、大丈夫です」
と答えた。メイドは
「そうですか。では、お腹が空いていると思いますので、私はこれからお料理
を取ってきます」
そう言ってメイドは立ち上がる。女の子二人は、もっと遊ぼうよとメイドを困
らせる。けれど、メイドは無表情でありながらもやさしく、女の子二人を納得
させた。メイドは部屋から出る時
「ここの鍵を閉めとけば安全です。出るのはご自由ですが、その際の安全は保
障しません。それと、仮面を着けた私には注意をしてください」
そう言って、メイドは部屋から出た。女の子二人はマリーエを見ていた。けれ
ど、この子達に構っている暇はない。それにあのメイドが味方どうかはわから
ない。とりあえず、しばらくは安全だ。私は過去を見た。
「!」
アヤが見えた。部屋に隠れていた時は見えなかったけど、今は見える。マリー
エはアヤさんの過去を辿る。それで、自分が何処にいるのかを過去を見て確め
る。すると、メイドが怪物を剣とナイフで壁に張り付けをしているシーンが見
える。その時、メイドが獲物とか何かを言っている。けれど、感情まではわか
らない。けれど、体の感覚が伝わってこのメイドがすごいのがわかる。いずれ
にしろ、ここから出なくてはいけない。
「ねえ、お姉ちゃん」
「ねえ、遊ぼう」
「えっ」
マリーエは女の子に服を引っ張られて、気が付く。
「きゃあ」
そして、マリーエは小さな悲鳴を上げる。女の子二人は
「ねえ、遊ぼう」
と言ってくる。けれど、遊んでいる暇はない。いずれにしろ、
「ごめんね。用事があるから行かないといけないんだ」
女の子二人がこれで納得してくれるかは疑問だが、ここから早く去らなければ
いけない。
「どうしても、だめ?」
蒼の服を着た女の子が上目遣いでお願いしてくる。ちょっとだけなら、遊んで
いいかもしれない。けれど、
「・・・」
首を横にふって
「ごめんね。やっぱり無理なの。二人で遊んでいられないかな」
とマりーエは言う。女の子二人は
「わかった。でも、遊びたくなったら、一緒に遊ぼう」
と紅の服を着た女の子が言う。マリーエは
「わかった。じゃあ、お姉ちゃん行くね」
と言って部屋を後にした。マリーエは過去の記憶を元にアヤへの元と向かう。



怪物が途中道を邪魔していたりもした。なので、回り道しながらも劇場と劇場
の隣にある建物をつなぐ屋上へと着いた。マリーエは深呼吸した。劇場をつな
ぐ道は2つある。一つはこの屋上と、もう一つは1階の通路だ。1階の通路は
過去を見た時、怪物がいたので諦めた。けれど、ここはアヤと知らない男の人
が倒したから安全だ。だから、安心していた。だけど、目の前にいた存在を見
て劇場とは反対の方向へ走り出した。すぐに劇場の隣にある建物へ逃げ込む。
「いひぃ」
「きゃあ」
けれど、過去に見た大男がいた。マリーエは走る。後ろでは、言葉でない言葉
を出して追ってくる。隠れて安全化と思えば匂いで追ってくる。大男に見つか
れば見つかるほど、マリーエの精神は狂い、体力も奪われる。けれど、急に大
男が追ってこなくなった。理由はわからない。けど、今がチャンスだとマリー
エは思った。今のうちに安全な場所に逃げようと思った。けれど、廊下が真っ
直ぐに長く、廊下の奥はいくつもの穴があって、壁には釘や針が刺さっている。
けれど、道は一つしかない。それで、次の角を曲がると。
「!」
仮面を付けた男が廊下に立っていた。過去を見た時は見なかった人だ。だけど、
見て危険だと本能が告げている。文字通り
「こんにちは、お嬢さん」
と言って壁にあるレバーを下げた。マリーエは仮面の男がレバーを下げる前に
逃げた。それによってマリーエは助かる。男の前に太い釘や針を大量に一斉に
発射される装置がでてきて、文字通り一斉に発射された。マリーエは長い廊下
を走る。だけど、隠れる場所まで距離がある。マリーエは後ろを見ないで走る。
目の前には釘や針で突き刺さった女の人が何人かいる。一方、仮面の男はレバ
ー引いた後、まっすぐ進み、曲がり角手前で止まり、壁を押す。すると、壁か
らレバーが出てくる。仮面の男はマリーエを見る。まだ、安全な場所までたど
り着いていない。仮面の男は考えた。これならば、ぎりぎりのところでレバー
を下ろそう。そして、あと少しの所で後ろを向いた。仮面の男はいない。そう
安心した
がしゃん
次の瞬間。
「あっ・・・」
沢山の釘と針が飛んできた。死ぬとマリーエは思った。だから、黒い闇が目の
前を覆った。それから、痛くなかった。


だけど、一応・・・暗くなった後にすぐに目を閉じた。それで、目を開けると、
あの人の声がした。平然としている。背中には刺さっているはずだ。言葉が出
ない。なんて言えばいいのかわからない。だけど、生きている。この時、目の
前で誰かが死んでしまう事が怖かった。だけど、生きてくれてうれしかった。
「・・・」
そして、あの人の後ろに長剣を持った仮面の男がいた。



場所 13時7分

 マリーエを探して、私は走った。この際、怪物に見つかっても気にしない。
早くマリーエを見つけなければいけない。
「きゃああああ」
マリーエの叫び声が聞こえた。私は叫び声のする方へ走った。それと同時にあ
の大男の声もする。まさか、マリーエが追われている。どうやら、大男も追っ
ているらしい。ならば、なお更の事だ。急ぐしかない。そして、ついに大男を
発見した。私は大男に気が付かれない様子を見た。
「・・・」
けれど、落ち込んだ顔してその場から動かない。
「!」
しかも、戻ってきた。私は建物丁字路の曲がり角から様子を伺っている。だか
ら、この状況では見つかる。すぐに、物陰隠れた。
「・・・」
大男は私に気が付く事もなく去ってくれた。とりあえず、マリーエを追わなけ
れば。私は丁字路を曲がって、さらに次の曲がり角を曲がる。すると、マリー
エの後姿が見える。
しゅぱん
「あっ・・・」
しかも、マリーエに向かって太くて刺さったら痛そうな釘や針が飛んできてい
る。私はナイフでは弾き切れないと判断して、自分自身を立てにした。
ざしゅ、ざしゅ
背中や後ろの部分の筋肉に力を入れて釘や針の貫通を防ぐ。
「かっは」
血が口からあふれ出た。
「けほっけほっ」
それで咽た。それでも、釘や針は貫通していない。
「マリーエ大丈夫か」
私はマリーエに声をかける。
「ア・・ヤ・・・・・さん・・・」
マリーエは下を向いていた顔を上げる。けれど、泣きそうな顔をしている。け
れど、これくらいで死なない。本当にヴァンパイアは便利な体をしている。
「あっ・・・あ・・・」
あれ、私がヴァンパイアだっていうのを知らないのかな。
「大丈夫だ。これくらいで、死なないから」
そう言って、私は立ち上がる。だけど、マリーエは泣きそうだった。とりあえ
ず、背中の刺さった針を抜く
びしゃ
血があふれ出す。けれど、すぐに直る。けれど、マリーエは元気にならない。
どうしたのかなと思った。まあ、ゆっくり話せる場所で話そう。そう思った。
ぱちぱち
長剣を持ちながら拍手をする仮面の男がいた。
「すごいですね。自ら盾にするとは」
仮面の男は私を褒めた。だけど、右手に持つ長剣を見る限り、戦わなくてはい
けないようだ。
「・・・つぅ」
ごと
痛みに声を上げながら、私の体に刺した釘を抜いて地面に落とす。
「・・・」
私は仮面の男を見ながら次から次へと釘や針を抜く。そして、全ての釘と針を
体から抜き終えると・・・仮面の男はこう言った。
「私と踊りませんか」
私は黙ってナイフを構えた。


場所 怖い場所 11時32分

 マリーエを先に逃がして、気が付いたら知らない場所で薄暗くて怪物だらけ
の怖い場所にいた。
「うぅ〜怖いです」
シェリルは体を縮込ませながら、ラウンジを歩く。一応、怪物が出てきても倒
せる。けれど、いきなりでてきたらどうしようかと思うとシェリルは怖くて、
思うように動けない。とにかく、マリーエさんを見つけなくてはいけないと思
いながら足が動かない。気が付けば
「・・・」
怖くて1歩も歩けなかった。


場所 蒼の歌姫の部屋 13時分14分

 まずは1階へ向かって走る。天と地、天はたぶん屋上だろう。なららば、地
はその下だろう。
「・・・」
そして、俺は一つの部屋に辿り着いた。そこは少し薄暗く部屋の置くに1枚の
海の絵が壁に飾られて、蒼い床の部屋だった。
「どうやら、床は海を表しているみたいだ」
床は海を思わせる模様をしている。俺は部屋の中を調べる。けれど、気になる
のは部屋に唯一かざってある一枚の絵だ。俺は1枚の絵の前にたって調べる。
海の絵だ。その絵は海の中の絵で絵の中には魚が泳いでいる。俺は絵に触って
見る。特に気になる事はない。それで、絵から音楽が聞こえる。気持ちが悪い。
けれど、調べなければいけない。俺は壁に飾られている絵を取り外して見る。
「・・・」
すると、絵をどかした場所には部屋に続く穴があった。部屋の中は先ほどとは
比べ物にならない薄暗さだった。俺は隠れた部屋の中に入る。部屋の中は
「・・・」
海の音がして、魚が泳いでいる。俺がその魚に触れようとしたら、触れる事も
できずに通りすぎてしまった。それで、音楽がはっきり聞こえ、その音は部屋
の奥からだった。俺はその音に近づく。まさかと思うが、目の前のレリーフが
震えている。そして、それから音が鳴っている。壁にはめ込まれたレリーフが
震えて、まるでレリーフがん泣いているみたいだった。そのレリーフは蒼の歌
姫の形をしていて、歌っているようにも見える。俺はそのレリーフを壁から外
した。その時、そのレリーフが生暖かかった。それで、レリーフを外した後も
生暖かかった。まるで、生きているようでもあった。




場所 劇場の隣の建物 13時11分

 私の目の前には、仮面を着けた男がいた。男は
「私と踊りませんか」
と言って、自分の事を
「私はDといいます」
と名乗った。私はナイフを構える。そして、Dという男も長剣を構える。そし
て、
「では、参ります」
とDが言って戦いが始まった。Dが私へ向かってくる。私も引く事なく前へ出
て、ナイフで突く。
きん
けれど、当たる事もDが持っている長剣で弾かれる。Dは私のナイフを弾いて、
長剣で突く。それをうまく避けて、次の攻撃に転じる。ナイフを横に振る。す
ぐにDは後ろへ下がって避ける。私とDは攻撃と防御を交互に繰り返すように
戦う。その時に金属と金属のぶつかる音が、二人の戦いの奏でる音楽となり、
その案額に合わせて踊っているようにも思った。けれど、あまり気に食わない。
このDという男に踊らされているようで、嫌だった。
「嗚呼、愉快だ。そして、美しい」
相手は話す余裕があるようだ。
「あなたは美しいのに」
私はDの攻撃を左に体を動かして避ける。
「けれど、心は男のように燃えるように私にぶつかってくる」
私は左手にナイフを持って攻撃をして、右足で至近距離の回し蹴りをする。
「でも、体は女」
男は体を後ろに反らして、私の回し蹴りを避ける。
「まるで、自分を呪っているようだ」
「黙っていろ」
回し蹴りの勢いをいかして、男が起き上がる瞬間を狙ってナイフを振る。
「くっ」
ぴしゃ
血が出る。Dは長剣を引いて私のわき腹を斬る。すぐに引き下がってわき腹を
押さえる。一応、傷はすぐに治った。けれど、嫌だった。踊らされている。そ
れがとても嫌だった。ならば、それに合わせなければいい。この戦いのテンポ
を狂わせればいい。けれど、Dという男は起用にテンポを狂わせても、そのテ
ンポに合わせてテンポを狂わす事を許さない。
「はっ」
傷が治ったら、自らDへ立ち向かう。Dは仮面で隠されていない口元は嫌な笑
みを浮かべている。すぐに戦いが再開される。けれど、
「ぐっ」
斬られた。体から血が出る。けれど、すぐに直る。だから、戦いを休む事なく
戦いを続ける。斬られて、血が出ても気にしない。なぜなら、私はヴァンパイ
アだから、傷ついても何度も立ち上がろう。
「・・・はぁ」
相手と距離を取り、ため息をつく。



「どうしましたか」
Dは私に問いかける。それに対して
「葉巻に火を点けてもいいか?」
と尋ねる。すると、
「こんなに美しい方が、嗚呼・・・どうして」
Dは嘆く。けれど、私は葉巻の吸い口を作る。けれど、
「すみませんが、ここは禁煙です」
とDに注意された。残念だ。私は葉巻を吸うのを止めてナイフを構える。けれ
ど、Dは戦う気配がなくなり
「すみませんが、蒼の歌姫にお呼びがかかったので・・・私はこれで」
と言って長剣を鞘に収めた。
「・・・」
私はナイフを仕舞う。けれど、それがまずかった。
「あなたが助けた方はお姫様のお土産とさせていただきます」
とDは言う。それを聞いて、まさかとおもってマリーエのほうを見る。
「あ、アヤさん」
マリーエは仮面を着けたメイドに長剣で拘束されている。
「良くやりました。ジェシカ。では、この方を私に」
Dは仮面を着けたメイドを呼び寄せる。
「ご主人様、あの方は」
「お好きにしていいですよ」
そして、マリーエを連れていかれ、何も出来ない私は
「・・・」
今度は仮面を着けたメイドと対峙する。
「はぁ・・・」
もう、ここが禁煙だとか気にしない。私は葉巻に火を点けた。
「ここは禁煙です」
メイドは言う。けれど、気にしない。私はナイフを構える。
「おとなしく、私の人形になれば痛い事もないです」
と言って長剣を構える。
「すぅーはぁー」
紫煙を私は吐き出し、また葉巻の煙を吸い込む。葉巻の煙が体に染み込むようで心地よい。
「・・・」
一方、メイドは
すぱん
私の吸っている葉巻を切り落とした。
「ここは禁煙です」
私は切り落とされた葉巻を見る。勿体ないなと思った。



場所 紅の歌姫の部屋 13時31分

 俺は劇場の隣の建物の最上階に行き、太陽の絵が飾られ、白い雲が浮ぶ空の
壁紙に暖炉がある。
「・・・」
俺はまさかと思って太陽の絵を調べ、壁に飾られている絵をどかそうとした瞬

「!」
蒼の歌姫のレリーフが震えだし、音を発する。俺は絵から手をとっさに離す。
すると蒼の歌姫のレリーフの震えが収まり、音も止む。
「・・・まさか」
俺は絵に触れる。すると、蒼の歌姫のレリーフが震えだし、音を発する。しば
ららく、絵に触れ、手を離すと音が止み、震えが収まる。共鳴している。もし
かしたらと思って絵を壁から外して見て、絵が飾ってあった壁を調べる。けれ
ど、隠し部屋は見当たらない。俺は音がうるさいので絵を元に戻す。
「・・・」
絵を戻した瞬間、音が止んだ。いや、もしかしたら・・・俺は絵の厚みを調べ
た。妙に厚い。俺は、絵の材質を調べる。絵の材質は紙でなく硬い木だった。
俺は暖炉のほうを見る。暖炉には薪が組まれている。俺はこの絵を燃やすのに
気がひける。けれど、俺は暖炉に絵を放り込み、暖炉の近くにあったマッチで
火を点ける。ぱちぱち
と音を立て燃える音がする。俺は燃え盛る炎を眺め、火ばさみで暖炉の炎から
紅の歌姫のレリーフを探す。
「ん?」
火ばさみの先に硬い物が当たった。すると、蒼の歌姫のレリーフが震えだした。
もしかしたらと思って、それを火ばさみで挟んで、炎の中から取り出す。
「・・・」
火ばさみに挟まれたのは紅の歌姫だった。俺は、レリーフが熱くないかを確か
める。熱くない。俺はレリーフを手に取る。すると、
「「くすくす」」
という笑い声が聞こえた。俺は辺りを見回す。けれど、誰かの気配を感じる事
もない。もしかしたら、本当にこのレリーフは生きているのかもしれないと思
った。


場所 舞台 13時5分

 今まで生まれて、ここまで生きてきて音を聞いた事はない。今まで音のない
世界で生きてきた。それで、今まで楽しい人生なんてなかった。けれど、友人
は音が聞こえなくてもオペラを見に行こうと誘ってくれた。どうせ、何もしな
いから暇で行く事にした。そして、今の状態だ。
「・・・」
けれど、どうしてだろう。蒼の歌姫の歌だけが聞こえる。理由はわからない。
ただ、不思議な感覚だとはわかる。それでいて、蒼の歌姫はこの生きる気力の
ない自分にいろんな事を見せてくれた。ある意味、いい事も悪い事も含めてだ。
それで、今回は張り付けにされている状態で見た事を思い出してみた。

 張り付けにされて、鎖で体の自由を奪われて、なおも生きている。それで、
蒼の歌姫が満足する劇が用意された。今まで、愛する恋人の劇や恥辱される劇、
虐殺される劇、子供たちの楽しい生活の劇がこの舞台で演じられた。そして、
また一つの劇が演じられようとしていた。



場所 劇場 6時21分

 私は蒼の歌姫。この世界の主役。全ては私、世界は私の中心で回っている。
けれど、張り付けにした女の子は泣き叫ぶ事もなく、虚ろな目をしている。始
めにこの子を見たときはつまらなそうな15歳の男の子にしか見えなかった。
けれど、自分が酷い目にあうというのに、この子は何一つの抵抗もしなかった。
それでいて、とても気になった。この子はどんな声をしているのだろうか?ど
いうふうに話すだろうか?どんなふうに笑うのだろうか?それが気になった。
けれど、この子は何一つの表情も変えない。始めは穏便にこの子声を聞こうと
した。けれど、何一つ答えない。だから、仕方がなく貼り付けを命じた。それ
で、何とかしてこの子の声を聞こうとあの手この手を行ってきた。けれど、こ
の子の声を聞くことはできなかった。試しに、快楽と言うもの処女を奪わずに
与えてみた。けれど、無口だ。ただ、だまってそれを受け入れるだけ、抵抗す
る気配も見えない。それで、何も感じないのか、快楽で喘ぐ声も聞こえない。
「・・・つまらない」
つまらなかった。この子と出会ってから、自分の思うようにいかない。それが
とても嫌だった。だからと言って、この子を壊してしまうわけもいかない。こ
の子の声を聞くまでは何があっても壊す事はしない。それに外見もいいし、私
はこの子の声がよければ私の側近にしようかとも思っている。
「さて、次はどんな劇をはじめましょうか」
私はDを呼んで次の劇の準備を命じる。本当にDという男はこの世界が生まれ
てすぐに忠誠を誓いよく動いてくれる男だと思っている。
「女性化した女の監獄の劇などはいかがでしょうか」
Dは私に提案する。正直、面白ければなんでもよい。私はDにそれでよいと命
じる。
「かしかまりました」
Dはそう言ってすぐに準備を取り掛かる。私は豪奢な椅子に座って、舞台の準
備を眺める。さて、今度はどんな事が始まるのか楽しみだ。
 準備が終わると、すぐに劇が始まった。まずは可愛い男の子達が監獄で怯え
ている。それで、女の看守が男の子達に厳しく扱う。
「ご、ごめんなさい。許してください」
監獄の生活は厳しい。囚人達は舞地に過酷な仕事が課せられて、看守達はとて
も厳しい。だから、仕事を失敗した男の子が怒られている。男の子は女々しく
「すみません」
と泣きながら誤る。それに対して看守は
「お前は女々しすぎる。ならば、お前にぴったりの罰を与えてやる」
にやりとしながら、失敗を犯した男の子を連れて、白い壁に一つの椅子がある
部屋に連れてくる。看守は男の子を裸にしてから、椅子に座らせて拘束をする。
「蒼の薬と紅の薬がある。蒼の薬は夢の世界にいる事ができる薬だ。紅の薬は
今の現実の世界にいる事ができる薬だ」
看守は二つの薬を男の子に見せて説明をする。男の子は怯えながら看守を見て
いる。
「それで、お前の好きなのを選べ。それで、お前の罰が何になるか決まる。ま
あ、あたしは蒼の薬を進めるけどな」
男の子にどちらの薬の選択を迫られた。けれど、男の子に考える力などない。
厳しい監獄の生活に自由はない。全ては看守が決める事である。だから、男の
子は怯えるしかできない。


「おや、選べないかい。なら、蒼の薬を飲みな」
そう言って看守は優しく蒼の薬を飲ませた。だけど、それと同時に激しい吐き
気と頭痛が男の子に襲った。男の子は余りの気持ち悪さで気絶してしまった。
看守は
「じゃあ、100人斬りの罰がんばってね」
と言いながら白い部屋から出てゆく。その後、その部屋に残された男の子に来
たのは6人の看守だった。男の子が目を覚ます看守達はにやりとする。男の子
は自分がどんな状況になったかわからず唖然としている。首は固定されてない
ので首だけを動かして周りを見る。自分がどうなったかわからない。すると、
一人の看守が鏡を持って男の子の顔を映す。けれど、自分の顔ではなかった。
「・・・」
声がでない。鏡に映っているのは男ではなく、女の顔だった。まさかと思って
ゆっくりと、首を動かして自分の体を確かめる。すると、そこには二つの山が
ある。それが女の乳房だと男の子はすぐに理解した。男の子は声がでない。そ
れどころか、唖然として、声がでない。頭が真っ白で何を言えばいいかわから
ない。ただ、看守が
「お目覚めかい。お嬢さん」
と言って看守は男の子の股をなめる。性格には女の子の股である。
「ちゃんと濡らさないと、壊れるからな」
そう言ながら
ぴちゃぴちゃ
と音を立てる。気が付くと自分がとんでもない格好をしている事に気が付いた。
拘束される時には気が付かなかったが、股を開いた状態で椅子に拘束されてい
る。
「おい、早くしろよ」
一人の看守が叫ぶ。男の子は叫んだ看守を見る。すると、股をなめている看守

「待てよ、けっこう締りがよさそうだからな。しっかり、濡らさないと」
「ちょい、まてよ。100人もいるんだからよ。早くしろよ。待てねぇよ」
看守達は大きな声で話す。男の子はまだ自分の状況を把握してはいないが、す
でに男の子から体は女の子になっている。けれど、元から女々しい男の子だか
ら、対した変化はないのかもしれないと私は思った。けれど、やはり元から女
と元から男では違うはずだ。だから、女々しい男の子が女の子になったらどん
な反応するかは見ものである。女の子になった男の子、否、すでに女の子は1
人目の男の肉棒を受け入れようとしていた。
ずぶ
男は女の子が処女だというのに、遠慮なしに自分の肉棒を入れる。
「う、ぐぐぁぁあああああ」
やはり、元が男のだけに叫び声は女の子とは違う。
「へっへっへっ、これで立派な女だな」
看守は笑いながら腰を振る。一方、待てない男の1人が
「おい、早くしろよ」
と急がせる。けれど、意外に女の子の中は締りがよく気持ちいい。なので、
「無理だ。久しぶりの女なんだからよ」
と喧嘩を始める。このままでは、話が進まないので
「おい、こいつを吊るすぞ」
と女の子に自分の肉棒を入れた看守が言う。それに対して、たの看守達は
「あいよ」
「わかったよ」
「しかたがねぇな」
といろんな事を言ながら女の子を吊るす。女の子は何をされるのか理解して顔
が青くなっていた。どうやら、何をされるのか理解したようだ。ふ、う、可愛
い顔をしていたけど、そういう事に興味があって見ていたようだ。
「人は見かけによらないわね」
と言いながら行為を見る。男の子なら興味をもってもしかたがない。だけど、
自分がする側でなくされる側になるとは思ってないだろう。だいたい、自分が
男の子から女の子になるなんて、夢物語に等しいくらいだ。ある意味、貴重な
体験とも言える。


「うぐ、痛い」
女の子のアナルに肉棒が入れられる。女の子は歯を食いしばりながら耐えてい
る。さて、これがどれだけ続くだろうか?私は見ものだと思った。男の子の精
神で100人に恥辱されて耐えられるか?私は一言も話さない、あの子に話し
掛ける。
「ねえ、どれぐらい耐えられると思う?」
けれど、貼り付けにされているあの子は今、行われている劇を虚ろな目で眺め
るだけだった。
「・・・」
やはり、一言も話さない。まあ、どうでもいい。今は、どれだけ耐えられるか
が見ものだ。
「うっ、出る」
「くぅ・・・うぅ・・・」
一人目の看守が己の欲望を吐き出したようだ。それに対して、女の子は目を閉
じて耐える。
「どけ」
それで、後ろで待っていた、看守が一人目をどかして、固くなった肉棒を入れ
る。女の子に休む暇などない。ただ、自分に行われる行為に耐えるだけである。
一方、アナルを楽しんでいた看守は
「はぁはぁ、そろそろイキそうだ」
そう言って己の欲望の塊を吐き出す。
そして、すぐに4人目の看守が女の子のアナルに自分の肉棒を入れる。
「あがあ・・・あつがあ・・・」
一応、必死に耐えている。一方、胸を楽しんでいる看守が
「あーあー、よりによって二人目でこの監獄でぶっといやつ入れられちゃうと
は」
と呆れたように言う。
「おい、なんでこいつがここにいるんだよ。アナルががばがばになっちまうじ
ゃねえか」
後ろで待っている看守が叫ぶ。一応、列を作ってはいるものもすでに意味をな
していない。1人の女に対して100人の男が群がっている。胸を楽しむ男が
いれば、足、手、顔。とにかく、あらゆる場所で女は恥辱される。そして、1
4人目ぐらいに、びくりと体を痙攣させる。声は出てないが、目を見開いてい
る。どうやら、女になって初めて絶頂を迎えたようだ。看守隙を見逃さずに
「おや〜、いっちまったのか」
と問いかける。一方、女の子は何もしゃべらない。それに対して
「まあ、いいけどな」
と言いながら、女の中に己の欲望を吐き出した。一方、私は男の子の時より
女々しくなかった。今は、黙って看守達の恥辱に耐えている。
「さて、俺が50人目か」
ずぶり
「おおお、50人目だというのにしっかり締めつけてやがる」
50人目も必死に耐える。けれど、すでに限界が来ていた。
「あっ・・」
声が漏れて、看守が腰を振ると
「うぅ・・・あっあ・・あっあはぁはぁ」
女の子は喘ぎ声を出す。どうやら、100人まで持たなかったようだ。女の子
は看守達のなすがままに泣いた。それに対して、看守達は女の子に反応にそそ
られ、女の子をもっと激しく恥辱する。


「あっあ・・・やめて・・・むり・・・あっあぁつあ・・・いい・・そこ・・・ぅっ」
女の子は今までの態度と変わって、正直に反応する。さて、100人斬りが終
わった後の女の子はどうなっているだろうか?私はジュースを飲みながら眺め
る。
「ふぅ」
一応、一人目から見ているが飽きてきた。けれど、100人目まで我慢する。
女の子の精神は
「もっと・・・もっと・・・精液をかけてください」
正常を保っているかわからない。
90人目
「あっあ・・・イク・・・っあああああああ」
女の子は90人目、アナルに己の欲望を吐き出されて絶頂に達する。
94人目
「もっと、ごりごりしてぇ」
女の甘い声で看守達を誘惑しはじめた。
96人目
「あっ・・・そこ・・・もっと激しく」
自分が気持ちよくなるために、看守達に要望を出すようになった。
97人目
「はぁはぁ・・・あはははは」
ちょっと、女の子の目を見ると、何か危険な雰囲気がある。
98人目と99人目と100人目
「うぅ・・・ぷはぁ」
98人目の肉棒を自ら加えて看守をイカせる。そして、99人目と100人目
は股にある膣とアナルを二人で犯す。最後なので、じっくりと楽しむ。それに
対して女の子も楽しむ。けれど、
「あぁ・・きもちいぃ・・・あぅ・・はっ・・」
完全に頭がおかしくなっていた。そして、100人目が終わる時には拘束も解
けていて、白い壁紙の部屋に女の子はいた。女の子は自分の体に付いた白濁し
た液体を自分の体に刷り込むように自分で塗りたくった。そこに女の看守が来
て、
「はい、お疲れ様」
と言って、罰の感想を聞く。女の子は
「ねえ、男はもういないの?」
と聞いてくる。もう、女の子とか男の子とか関係ない状態まできていた。快楽
を好きなまま味わう肉の塊にすぎなかった。女の看守は
「そう、そんなによかったの」
と言って女の子に湯浴みをさせて綺麗な服を着させる。そして、
「あなたにふさわしく仕事をあげるわ」
にやりと女の看守はして女の子にふさわしい仕事を与えた。それは永劫に老い
る事のない館で男と寝る仕事だった。女の子はすぐに、その仕事を引き受けた。
その後、その女の子はその館で終わることもない永遠の幸せを手入れたそうだ。
こうして、1人の物語が終わった。けれど、私は100人の看守に恥辱されて
耐えた人が見て見たかった。だから、最後まで罰に耐えられる人を探した。そ
して、いた。その女の子は罰を受けた後も謙虚だった。最後までがんばったと
思う。私はDを呼び、この劇の続きがあるか尋ねた。すると、Dは
「実は予想外で、耐えるとは思いませんでした」
どうやら、100人の恥辱の罰に誰も耐えられない結末だったらしい。ならば、
私はDに命じた。


「ならば、この地獄の世界から開放してやれ。できれば、元の世界に帰してや
れ」
それに対してDは
「かしこまりました。けれど、おもしろい提案があります」
何かを提案しようしてきた。私は気になって尋ねると、Dはこの100人の恥
辱に耐えた女の子のその後の劇を提案してきた。私はこの女の子を元の世界へ
帰そうと思ったが、幸せなその後の劇を見たかった。ならば、この女の子のそ
の後を見た後でこの世界に帰してもいいと思った。だから、
「よろしい。許可をする」
と答えた。Dは
「かしこまりました」
とお辞儀をしながら劇の準備をした。しかし、あのDという男は一体、何奴な
のだろうか?私に楽しませるためにいろんな事を提案してくる。私はその劇が
どんなものか気になって、Dのする事を許す。けれど、あの男は私に忠誠を誓
っているはずなのに私はDを信用する事ができなかった。


場所 劇場の隣の建物 13時27分

 私は切り落とされた葉巻を拾って、私は葉巻の火を消した。まあ、禁煙だか
らしょうがない。
「・・・」
けれど、あのメイドもDという仮面の男と同じぐらいにやっかいだと思った。
いずれにしろ、
だっ
戦わなければいけないようだ。メイドが踏み込んで長剣で攻撃をしかける。そ
れに対して、後ろに下がって避ける。けれど、
ずば
「!」
腕を切られた。さらに、動きが早く
ざしゅ
ナイフで防御したはずが、私のお腹に長剣が刺さっていた。すぐに、ナイフが
抜かれて次の攻撃が来る。すぐに、避ける。メイドは避けられても、次の攻撃
へ転じる。私はナイフで防御するか避けるしかできない。とにかく、相手の動
きが私よりはやい。
「ぐふ」
ナイフで防御して安心した所にメイドの蹴りをくらってしまった。でも、すぐ
に体制を立て直す。けれど、メイドは私に休む暇を与えない。攻撃は最大の防
御といわんばかりに攻撃をしてくる。私は相手に反撃する隙を待ちながら防御
に集中する。それでも、私の防御に隙を狙って、どんどんと攻撃を当てていく。
「おしまいです」
ばこ
私はメイドに蹴られて、壁に激突する。そして、このまま倒れるはずだった。
けれど、
どすん
私のお腹をランスが貫いた。壁に飾られたランスをメイドは投げたのだ。私は
それによって壁に固定され、私はナイフを落とした。私はナイフを拾うために
ランスを抜こうとする。けれど、血まみれの手がランスをうまく掴む事ができ
ずに抜けない。それどころか、抜く力すらなくなっていた。一応、すでに死ん
でいてもおかしくないが生きている。けれど、力が入らない。
「まだ、生きているとは。便利な体をしていますね」
そう言って、メイドは私に長剣を胸に突き刺した。
「死ねないとは辛いですね」
今度は、左肩を長剣で貫いた。
「けれど、許さない。あなたにはご主人様を奪おうとしている」
今度は左肩に刺さっていた長剣を抜いて、右肩に長剣を貫いた。
「すぐに治ってしまう。そして、汚い肉の穴で男を誘惑し」
今度は右足の太ももを長剣で突き刺す。一応、意識は保てている。けれど、焼
け死にそうな痛みが私を襲う。
「そして、自分も快楽を楽しむ汚い存在」
メイドは左足の太ももにゆっくりと長剣を突き刺した。
「うぐが・・・けれど・・・お前だって同じ・・・ぐぅ・・」
私は指摘した。けれど、メイドは
「私は完璧な人間として作られた清らかな存在です」
と私に向かって言う。けれど、私に理解する事などできない。メイドは私から
離れて、壁に立てかけられた槍を取ろうとしている。
「・・・」
私の手は震えながら太ももに刺さった長剣を抜こうとした。けれど、その前に
「あぁぁああああ」
心臓に槍が突き刺さった。私は叫ぶしかできなかった。そして、叫び声が終わ
る時、本当に力尽きた。



場所 劇場の隣の建物 13時25分

 俺は蒼の歌姫と紅の歌姫の二つのレリーフを持って劇場へ向かった。そして、
「「くすくす」」
笑い声が聞こえる。辺りを見回しても、人の気配は感じられない。俺は黙って
嫌な予感がしながら廊下を歩く。それに、アヤさんと早く合流しなければいけ
ない。そして、俺の目の前に怪物がいた。だから、俺は銃を撃った。


場所 劇場の隣の建物の廊下 13時26分

 俺は廊下を歩いていた。
ず、ず、ず
「!」
足音がする。けれど、姿は見えない。曲がり角を曲がればすぐに相手の姿が見
える。けれど、自ら行くのは危険だ。だから、銃を構えて待つ。
ず、ず、ず
足音が近づく。けれど、
「・・・」
足音が止まった。俺は
「誰だ。出て来い」
と言った。それに対して、反応はない。このまま、相手が姿を現すのを待つ。
けれど、
「・・・」
我慢できなかった。だから、俺は曲がり角に近づく。そして、
「動くな」
と言って俺が見たものは
「・・・」
「・・・」
そこにはネグリジェを着たシェリルがいた。俺は開いた口が閉じない。しばら
く、その場の時間が止まったようにも思えた。けれど、
「しぇ、シェリル」
俺はシェリルの名前を呼ぶ。すると、
「は、はい」
シェリルは頬を赤く染めている。
「な、何で・・・こんな大胆な格好を?」
俺は銃を拾いなが言う。それに対して
「途中に住人と出会ってしまって、それで洋服が」
「あ、そうなんだ」
俺は頷く。そして、俺は尋ねる。
「マリーエを見なかったか」
「マリーエさん?」
シェリルは首をかしげた。そして、
「あ、マリーエさんですね」
思い出したように言う。どうやら、思い出してくれたようだ。しかし、ここに
いても安全とは限らない。俺は
「とりあえず、安全な場所へ移動しましょう」
と提案する。すると、シェリルは
「なら、安全な場所を知っています。そこに行きましょう」
と言ってきた。それに対して
「そこにマリーエはいるのか?」
俺が尋ねる。
「はい、そこにマリーエさんはいます」
と答えた。それに対して、
「わかった。じゃあ、そこに行きましょう」
とシェリルの提案に頷いた。シェリルは自ら前にでて案内しようとする。けれ
ど、俺は
「動くな」
首筋にナイフを当てた。
「え、な、何を?」
「お前、シェリルじゃないだろ」
俺は無表情にシェリルを見る。それに対して
「え、どうしてですか。私は本物です」
必死に自分がシェリルとシェリルは主張をする。でも、こいつは偽者だ。
だん
「あ・・・」
銃声が鳴った。そして、世界がぐらりとして、倒れた。


場所 劇場の隣の建物廊下 13時32分

 俺は自分の偽者を撃った。そして、唖然とするシェリルさんに近づく。
「大丈夫ですか?シェリルさん」
それに対して
「あ、ありがとうございます」
ネグリジェを着たシェリルさんがお礼を言ってきた。でも、何故だ?何故こん
な格好をしているかわからない。とりあえず、何かあったのだろう。俺は
「アヤさんと舞台で合流の約束をしています。一緒に行きましょう」
と提案した。それに対して
「そうですね。そうしましょう」
とシェリルさんは頷いた。
夜叉流 飛来落激(ひらいらくげき)
シェリルさんが俺の目の前で舞い上がった。そして、地面に叩きつけられた。
「・・・」
俺は言葉が出なかった。

場所 劇場の隣の建物の廊下 13時34分

 目の前には、シェリルさんがいる。何時もの格好のシェリルさんがいる。で
も、あまり、疑問はない。なぜなら、俺が提案した時にマリーエさんという人
について、何も言わなかったからだ。
「まさか、自分に技を仕掛けるとは思いませんでした」
と顔が変形したもう1人の自分を眺める。
「シェリルさん、怪物と接触しましたか」
俺が尋ねると
「沢山、しました。だけど、とても怖くて、怖くて、不意を疲れて触手が口に
入ってきましたが。噛み切ってやりましたよ」
とシェリルは答える。俺とは違って、とても強い人だ。そう思っていると、今
度はシェリルさんが同じ質問をしてきた。俺はその返事に
「助けを求めた女の人を助けてです」
と正直に答えた。すると、シェリルさんは
「もう、フローさんは優しいですから」
と笑顔で言った。けれど、喜んでいる暇はなかった。俺とシェリルさんのコピ
ーが動き出した。そして、不快な音を立てながら怪物らしい姿になった。
「フローさん。先に行ってください。私はこの方たちを倒します」
と言う。それに対して、俺も戦おうとした。けれど、俺がいると集中して戦え
ない。だから、
「シェリルさん。劇場の舞台で合流しましょう」
と言って俺は、劇場へ向かって走った。



場所 ある部屋 14時7分

 私が目を覚ますと、暖かいベッドの上で寝ていた。首だけを動かして辺りを
確かめると、どこかの部屋だった。ここは天国か?それにしても現実味があり
すぎる。それに体もだるい。
「・・・よっこいしょ」
とりあえず、私は上半身だけを起して、あたりを見回す。誰もいない。それで
いて、私は何処かの部屋にいるみたいだ。自分の体を見ると、裸だった。
「・・・」
寒かった。こう、恥ずかしいとか感じると思うかもしれない。けれど、私はあ
まり思わない。もう、なれた。もう、15年も女をやっている。それに、もう
30歳だ。私は慌てる事もなく、着るものを探した。すると、
がちゃ
誰かがこの部屋に入ってきた。私は誰だか確かめようとすると・・・メイドだ
った。仮面を着けたメイドとそっくりだ。けれど、仮面をこのメイドは着けて
いない。そして、メイドは部屋に入ってくるなり
「ご気分はどうですか」
と尋ねてきた。


場所 劇場 13時45分

 なんとか、劇場に辿り着いた。あとは、1階に行き、そこから舞台へ行ける。
俺は1階への階段へ走る。
「くすくす」
声が聞こえ、俺は1階へ続く階段で止まった。目の前に女の子がいる。燃える
ような紅のドレスを着た女の子がいる。
「・・・」
しかも、空中に浮いて、透けて見える。どいうことだ?しかも、襲ってきた。
俺は近づかれたまずいと思って逃げ、別の階段から1階へ行こうとした。
「くすくす」
こんどは蒼のドレスと着た女の子が現れた。しかも、先ほどの、子と同じよう
に空中に浮いて透けて見る。けれど、どちらも・・・悪意を感じる。銃を向け
て撃とうにも、女の子に銃を向けるのはよくない。とにかく、逃げなくてはい
けない。それで、なんとかして、傷つけずに撃退しなければならない。俺はな
んとか3階に逃げる事ができた。けれど、
「くすくす」
背後からいきなり、紅のドレスを着た女の子が現れた。俺は、後ろへ下がる。
けれど、
「くすくす」
その後ろからは蒼のドレスを着た女の子が現れる。まずい。囲まれた。俺は後
ろと前を見る。けれど、前も後ろから逃げる事はできない。ならば、横からだ。
そして、俺の目に額縁で壁に飾れた1枚の絵が飛び込んだ。それは、1枚の白
紙の楽譜だった。俺は白紙の楽譜を見た瞬間、その楽譜に吸い込まれた。










 気が付くと、劇場とは別の場所にいた。


「ここは?」
劇場の隣にある建物と内装が似ている部屋にいた。けど、雰囲気が違う。なん
というか、明るくて暗い雰囲気がない。その場から、窓の外を見るとまだ明る
くて、昼だと理解できた。元の世界に戻ったのか?不思議だなと思いながら窓
に近寄って外を見ると俺が住んでいる場所とは違う風景が見えた。その事から
元の世界に戻れたわけではないみたいだ。では、ここは何処だ?そんな疑問が
俺の頭のなから生まれた。けれど、この場にいてもわからない。俺は今いる部
屋から出た。そして、廊下にでて左を向く・
「・・・」
似ていた。劇場の隣の建物と似ている。もしかしたら、ここは劇場の隣の建物
と同じ場所なのかもしれない。俺は右を向いた。蒼のドレスを着た女の子が泣
いていた。俺はどうしたのかなと思って近づいた。すると、女の子が俺に気が
付いた。女の子は泣くのをやめて、話し掛けてきた。
「おじちゃん。誰?」
まだ、若いのにおじちゃんと言われた。少し、ショックだけれど気にしない事
にした。俺は
「フロー・ローガン」
と名前を教える。すると、女の子は
「私、ルナ。お月様の意味なの」
と名前とその名前の意味を教えてくれた。けれど、元気がない。俺がどうして
元気がないか尋ねると
「サンちゃんと喧嘩したの?」
と答えた。俺はどうして喧嘩したか尋ねた。
「あのね、あのね・・・私は悪くないんだよ。あのね・・・」
「怒らないから、ゆっくり話してごらん」
俺はルナの頭を撫でながら言う。
「・・・うん。あのね、楽譜を無くしちゃったの。それで、怒られるのが怖くてサンちゃんが隠したって嘘をついちゃったの」
下を俯いて言う。
「そうなんだ。じゃあ、えっと・・・ルナちゃんはどうしたい?」
俺はやさしい声で言う。そして、俺の問いかけにルナは
「謝りたい。だけど・・・楽譜」
下を俯いて言う。俺は
「じゃあ、一緒に探そう」
と提案する。すると、うれしそうに
「うん」
と頷く。よし、元気が出たようだ。でも、何処を探せばいいのだろうか?かな
り、大きな建物だから探すのが大変だろう。とりあえず、そういう時には・・・
「ねえ、楽譜を探すだけど。最後に楽譜を見た時の事を思い出して教えてくれないかな」
必要な情報を集める事が重要だ。ルナは
「えっとね。こっちに来て」
俺はルナに案内されて、ある部屋に案内された。
「ここで、無くした事に気が付いたの」
部屋を見回して
「じゃあ、一緒に探して見よう」
と言って楽譜をルナと二人で探す。けれど、楽譜は見つからない。
「う〜ん、見つからないな」
気になる所はほとんど調べた。後は、
「ねえ、楽譜を無くしたのに気が付く前に何をしていたか覚えている?」
すると、女の子は
「えっとね、えっとね・・・ここで本を読んでいたの」
と答える。俺はどんな本を読んでいたのか尋ねる。そして、その本はこの部屋
にあるみたいだ。
「・・・」
俺はすぐにその本を探した。その本はすぐに見つかった。この部屋にある机の
上にあった。本を俺はぱらぱらめくって調べる。すると、1枚の楽譜が本に挟
まっていた。


「ねえ、探していた楽譜ってこれかい?」
俺が尋ねると、ルナは
「うん、これだよ」
と答えた。俺はルナに楽譜を渡した。けれど、ルナは俯いている。理由がわか
らない。俺がどうしたのか尋ねる。
「えっと・・・もしかしたらね。まだ、怒っている気がして」
楽譜を見ながらルナは言う。それに対して、俺は
「一緒に謝りにいこう」
と言う。すると、ルナはうんと頷いた。そして、サンがいる部屋へ向かった。
途中、誰かに出会うと思ったが、誰も出会わずにサンのいる部屋に着いた。け
れど、
「・・・サンちゃん」
サンの部屋に着くと、紅のドレスを着たサンがお腹から血を出していて倒れて
いた。俺はすぐに駆け寄って止血をする。
「あ・・・ルナ」
サンはルナを見て安心した顔をした。
「おじちゃん。サンちゃんを助けて」
「わかっている」
けれど、血が止まらない。それどころか、紅のドレスが血によって深い紅の色
になってゆく。
「ルナ」
「喋ったらだめだよ」
ルナは涙を流しながら言う。それに対して
「ごめんね。私も・・・楽譜を無くしたの。だけど・・・正直に・・・言
え・・・なくて」
と言って、俺に楽譜を手渡した。
「・・・」
そして、
「私もサンちゃんのせいにして、ごめん。だから、死なないで。それで、この
歌を歌おう」
サンの願いもむなしく、サンは静かに目を閉じて長い眠りについた。俺はサン
をベッドの上で寝かした。そして、俺は楽譜をルナに手渡した。けれど、ルナ
は鳴いている。楽譜をぎゅっと持ちながら泣いている。そして、
「あのね・・・この歌は太陽と月の歌なの。それで、約束したのに・・・一緒
に歌おうって約束したのに」
「・・・」
俺は黙っていた。そして、泣き止むのをまった。ルナが泣き止んだ後、
ざしゅ
目の前でルナが長剣で刺された。クローゼットに隠れていきなり出てきてルナ
を切ったのだ。俺は銃を構かめて撃つ。
ぱん
銃声が部屋に鳴り響いた。ルナを刺した主の髪を掠めた。すぐさま、2発目を
撃つ。
ぱん
けれど、相手は銃を見て逃げて行った。俺はすぐにルナに駆け寄った。


「おじちゃん」
苦しそうにルナは息をしている。俺はすぐに止血をする。けれど、血が止まっ
てくれない。
「・・・おじちゃん。これ」
ルナは俺に太陽と月の歌の楽譜を渡してくれた。そして、
「ねえ・・・死んじゃったら・・・サンに会える・・・かな?」
と俺に尋ねてきた。
「・・・大丈夫だよ。絶対に会える。けど、今、ここで死んだらサンちゃんが
悲しむ」
俺はルナを必死に励ます。
「だいじょうぶ・・・だよね」
ルナもまた・・・ゆっくりと瞼を閉じる。俺は
「大丈夫だから・・・大丈夫だから」
何もする事ができなかった。そして、俺の手には太陽と月の歌の楽譜が握られ
ていた。











 俺の手には太陽と月の楽譜が握られていた。そして、今ならわかる。今、左
右にいる女の子二人はルナとサンだ。あの子達は出会ったけれど、探している。
たぶん、俺が過去にいなかったら、あの二人は・・・誤る前に死んでいたのか
もしれない。
「・・・」
ルナとサンは
「「くすくす」」
と笑いながら向かってくる。それに対して、俺は怖がる事もなく。
「・・・これを探していたんだろう」
俺は楽譜を差し出した。
「これは・・・」
ルナから悪意が消えた。
「二人で歌おうって約束した楽譜」
サンから悪意が消えた。二人は一緒に太陽と月の歌の楽譜を受け取り
「「一緒に歌えるね」」
二人はそう言って消えていった。
「・・・はぁ」
天井を見上げため息をついた。今頃は天国で太陽と月の歌を歌っているのかな
と俺は思った。


場所 劇場 13時45分

 ついに、舞台につながる扉の前まで辿り着いた。俺は二つのレリーフをはめ
込む。すると、
ごごごごごごごご
という音がして
どーん
という大きな音を立て勢いよく扉が開いた。
「・・・」
俺は唖然として、
「ようこそ、ここに辿り着いたのはあなたが始めです」
舞台の上で豪奢な椅子に座っている蒼のドレスを着た女の人が透き通るような
声で言う。俺は劇場のホールへと入る。観客席に空きがあるものも、人が座っ
ている。けれど、その中にはぼろぼろの服をきた老人がいれば、豪奢な服を着
ている者、女の人が男の人を楽しむ者、自らの髪を撫でるのに夢中な女の人と
かがいた。一つだけわかる事は、あの扉の詩の楽園とはかけ離れたものだった。
「私がこの世界の全てをつかさどる、蒼の歌姫」
蒼の歌姫は自分の紹介をした。舞台の上では蒼の歌姫が豪奢な椅子に座り、そ
の隣では裸の女の子が貼り付けにされていた。
「おや、やっと来たみたいですね。遅いわよ・・・D」
Dという仮面を着けた男がいて、女の子を抱えていた。けれど、その前に俺は
ぱん
Dという男に銃を向けて撃った。



場所 劇場の隣の建物 14時15分

 メイドは
「ご気分はいかかがでしょうか」
と聞いてきた。私はそれに対して、メイドを睨む事しかできなかった。けれど、
悪意を感じられない。
「こちらに、お召し物を」
メイドは洋服一式をテーブルの上に置いた。私はメイドがテーブルに置いた洋
服を手に取ってみて
「私の服は?」
と尋ねる。すると、メイドは
「申し訳ありません。あの服はぼろぼろで着られないと思って、勝手に処分さ
せていただきました」
と答えた。私は洋服に視線を移す。その洋服は女性らしい洋服だった。けれど、
私の好みではなかった。私はメイドに視線を移して
「動きやすい服はないか?」
と尋ねた。すると、
「男物でよかったら」
と言ってくれた。私はそれを要求すると、メイドは黒いスーツを持ってきた。
「こちらでよろしいでしょうか」
メイドは尋ねる。私は
「ありがとう」
とお礼を言ってスーツを受け取る。メイドは
「今、お食事をこちらにお持ちします」
と言って部屋からさった。私はすぐに黒いスーツに着替える。
「・・・普段着ている服とあまり変わらないな」
私は苦笑いしながら、辺りを見回した。すると、机に私のシガーケースとガス
ライターと携帯灰座と布に包まれたナイフが置いてあった。それから、ケロベ
ロスと呼んでいる指輪も置いてある。私は指輪をポケットにしまって、シガー
ケースから葉巻を1本取り出して、ナイフで吸い口を作り、ガスライターで火
を付ける。
「はぁ」
口から葉巻の煙を吐き出す。ここが禁煙だとか気にしない。私が吐き出した煙
を眺めて何も考えない。ただ、葉巻を楽しむ。
がちゃ
ドアを開ける音がしてメイドが料理を持ってきた。メイドは私に席を案内して、
すぐに料理を並べる。
「・・・どうぞ」
メイドは料理を並べ終えると私の後ろに立って言う。私は出された料理を見る。
どれも美味しそうだ。私はまず、スープを飲むことにした。
「・・・」
美味しかった。だから、
「いただきます」
と言って食べた。とにかく、食べた。
もぐもぐもぐ
料理はかなり美味しい、さらに血を消費しているためか、料理がさらに美味し
く感じられる。私は10分もかからずに全ての料理を平らげてしまう。


場所 館 13時45分

 3人の女がいた。1人はランスがお腹を貫通して壁に貼り付けられて、残り
の二人はどちらもメイド服を着ていた。それで、二人とも長剣を持っていて、
無表情だった。外見で唯一違うのは仮面を着けているか、着けていないかでし
た。
「・・・その人を私に譲ってくれませんか」
仮面を着けていない女が言います。すると、
「駄目です。この女はご主人様を誘惑します」
と返事をする。その後は何も話さなかった。二人の女は持っている長剣で戦い
を始める。戦いは長剣の金属と金属がぶつかる音が響き、足音や服が擦れる音
しかせず、それ以外の音は無い戦いだった。どちらも、一歩も引かずに戦い。
勝敗が決まらないと思わせる戦いだった。けれど、仮面を着けてないメイドが
膝を付いてお腹から血を出した。これで、勝敗が決まったと仮面を着けた女は
思います。仮面を着けてないメイドはお腹を押さえながらランスがお腹に刺さ
った女を見た。ランスがお腹に突き刺さった女は息をしていて必死に生きてい
るように見えた。その時、二人の女に違いが生まれた。だから、
きん
仮面をつけないメイドがこの戦いに勝利した。勝利した後は、お腹にランスが
刺さった女に刺さったランスと胸に刺さった槍を抜いた。それから、太ももに
刺さった長剣も抜く。それで、抜く時に血が噴出したが気にしない。一方、助
けられた女の傷はすぐに治った。ありえない速さで治った。その後、仮面を着
けてないメイドは地面に落ちているナイフを拾った。
「・・・」
この女の人のものだろうかと仮面を着けてないメイドは思った。だから、拾
い。安全な部屋へ運んだ。



場所 劇場 14時5分

 俺は銃を構えて撃った。しかし、Dという男に当たるまえに、Dが持ってい
る長剣ではじかれた。
「あぶないですね」
Dは女の子を抱えながら言って、首を横にふり、俺のほう向く。
「私はDです。今、あたなの相手をしている暇はないので、アントがお相手を
してくれるでしょう」
Dは仮面を着けていて、口元の表情しかわからない。
ばん
後ろでドアを思い切って開ける音がした。後ろを振り向くと大男がいた。
「アント、しばらくこの男の相手をしてください」
Dはアントという大男に命令して、俺から目線を蒼の歌姫に視線を移す。一方、
Dに抱えられている女の子は気絶をしているようだ。俺は
「動くな」
と言って大男に銃を向ける。けれど、
「いひいひひ」
と奇妙な声を上げながら近づいてくる。俺は後ろに探す。けれど、壁際まで追
い込まれてしまった。人に銃を撃ちたくないがしかたがない。
ぱん
俺は足を撃った。けれど、
「何」
効いていない。俺は何発か急所を外して撃つ。けれど、効果がない。相手は銃
が効かない相手か、
ぶん
相手の攻撃範囲に入ったため、男は攻撃をしてくる。けれど、腕力に頼った大
振りの攻撃のため、落着けば避けられる。けれど、
がしゃん
壁を破壊する威力だ。あんな攻撃をまともに当たったら、ただでは済まない。
俺は銃の弾を補して、大男に銃を向ける。けれど、
「うひひひ」
と笑いながら走ってきた。俺は、とっさに横に避けた。体が大きい癖に足は速
い。走りながら、パンチをしてきた。無論、パンチも脅威だが、あの大きな体
で当たってもまずい。いずれにしろ、相手は強い。いずれにしろ、何とかして
相手の動きを封じるしかない。ならば、どうすればいい。今、手持ちの道具で
どうにかできない。俺の能力で相手を倒す事も無理だ。なら、どうする。相手
の動きを封じる事ができる何かを探すしかない。それまでは、大男の攻撃を避
けるしかない。とにかく、いい考えを探すしかない。どれだけ、体力が保てる
かわからないが、どこにある。どこにあるんだ。
「いひひひ」
大男は両手を挙げて俺をあざ笑う。けれど、それに構っている暇は・・・あっ
た。
ぱん
「いひい!」
貫いた。手の平を俺の撃った銃が貫く。大男は手に風穴が開いて、血が出てい
る。それで、
「ふがぁああああ」
「うわ」
観客席を投げてきた。俺は避けようとした。
夜叉流 撃破
観客席が粉砕された。それは大男とは対極的で外見は華奢な格好をしているけ
ど、実際はものすごいシェリルさんだった。


「フローさん。お待たせしました。敵を倒すのは数秒だったのですが。ここに
来るのに・・・」
と笑顔で言う。それに対して
「シェリルさん、あの大男には手の平以外の攻撃は通用しません」
と警告をする。
「大丈夫ですよ」
シェリルさんは笑顔で言って
だっ
幅跳びの人も真青の跳躍で一気に大男に距離を詰めて
夜叉流 電波
シェリルさんは相手のお腹に拳を作らずに手を開いて突く。すると、大男がび
くりと痙攣して倒れた。
「・・・」
あれは夜叉流 電波か。確か、体には電気が流れている。それを体の1点に集
中してそれを相手に思い切ってぶつける技だ。何も知らずに受ければ、大抵の
人は気絶する。だけど、大男も頑丈だった。一度、地面に倒れたものも起き上
がった。大男は反撃をしてくる。しかし、シェリルさんの敵ではなかった。
夜叉流 飛来電脚
大男を蹴り上げる。大男は空中に舞い上がり、シェリルさんも跳躍して、大男
に空中で回し蹴りをする。大男は下に落下せず、水平に吹っ飛び壁に受身を取
ることもできずに当って地面に落ちる。大男は体を痙攣させて気絶している。
だが、全てが終わったわけではない。


場所 劇場 14時24分

 誰かが、この場所に来た。誰だかはわからない。だけれども、止まった時が動いた気もする。
「・・・」
仮面を着けた男が少女を抱えて、蒼の歌姫と話している。だけど、何を話しているかわからない。そして、最初で最後の大きな劇が始まるような気がした。


場所 劇場の隣の建物 14時24分

 私がメイドに案内された部屋は倉庫だった。二人の少女も一緒に来ている。
私は連れていくのは危険だと思った。けれど、何処にいても同じだから、結局
連れていく事になっている。メイドの話だと、いろいろあったらしい。詳しく
聞くことはできないが、このメイドにとって大切な存在だとはわかった。そし
て、倉庫にはいろいろな物があった。
「Dは・・・マリーエを劇場の舞台に連れて行ったんだよな」
私は倉庫にある物を漁る。
「はい、たぶん。蒼の歌姫様のお土産として連れて行ったのでしょう。だから、
しばらくは安全です」
「そうか。確かに、今の武器だと大変だな。おっ、これは、美味しそうなウィ
スキー」
ウィスキーが入った木箱を見つけた。
「もしよろしければ、あげましょうか?倉庫にある物ならば、どれも大丈夫で
すよ」
「何!」
私はウィスキーを物色するのを止めて、メイドを見る。
「ほ、本当に貰ってもいいのか」
私は真剣な目でメイドを見る。
「はい、持てるならばですが」
メイドは無表情に言う。それに対して、私は倉庫にある鞄を探した。沢山の物
を入れられる物を探した。すると、背負い袋を見つけた。
「よし」
私はウィスキー4本を丁寧に布に包んで背負い袋に入れる。それから、葉巻が
入った木箱に1800年代のワインを5本入れて
「これは、シガレットケース」
シガレットケースを私は見つけた。私は手に取って
「・・・えい」
地面に投げつけた。さらに、蹴ったり、踏んだり、ケロベロスと呼んでいるナ
ックルダスターを装備して殴った。シガレットケースは形が変形してしまった。
「だめか」
この程度で壊れてしまうシガレットケースではだめだ。たとえ、爆発に巻き込
まれても、水の中でも、たとえ、竜巻に呑み込まれても耐える事ができるシガ
レットケースでなければだめだ。
「・・・」
私は耐久性を求めたシガレットケースを探す。
「・・・」
さらに、そこから気に入った形を探す。結果、一つだけ私が望むシガレットケ
ースを見つけた。


「・・・これ」
「はい、ダイヤモンドの固さを超える飛竜の甲殻から作った物ですね」
どうりで、頑丈なわけだ。私は新しく手に入れたシガレットケースを見ながら、
先ほど手に入れた葉巻を入れていった。
「・・・」
はっきり、本来の目的を忘れて、私の趣向品を背負い袋に詰め込んだ。結果、
背負い袋に入っているのはDに対抗するようなものは入っていない。
「よし、行くか。舞台」
「よろしいのですか」
メイドが尋ねる。メイドの背中には自分と同じぐらいの大剣を背負って、さら
に大砲とかも背負っている。
「・・・」
完全武装だった。それに対して、私が持っているのは私の趣向品だった。私は
あたりを見回した。
「あれがいい」
私は望む武器を見つけた。それを私は持って
「舞台にはどうやって行くんだ?」
と質問をする。
「鎖を解く鍵を持っております。それを使って舞台の裏から行けます」
メイドは私に鍵を見せてくれた。
「そうか、それと後一つ聞いてか?」
私は無表情のメイドを見る。
「私は綾だ。夕霧 綾。お前の名前は?」
「私に名前は存在しません」
「自分で決めるんだな」
私はそう言って、舞台へ向かう。



場所 劇場 14時24分

 Dは私にお土産を用意してきた。それは、1人の少女だった。
「D、お前は何をするつもりだ」
Dの考えがわからない。すると、Dが
「面白いものが見られます。蒼の歌姫様」
そう言って、舞台の準備をする。私は舞台の端に追いやられ、舞台は本物のス
テンドグラスをバックにした舞台で、連れてきた少女を貼り付けにする。
「蒼の歌姫様、少々、劇に参加したいとは思いませんか」
Dが私に尋ねる。私は
「歌を歌えるのならばかまわない」
と返事をする。
「歌えます」
Dは私の質問に即答した。結果、私は劇に参加する事にした。けれど、Dは言
う。
「しばらく、お待ちください。蒼の歌姫様の出番はこの後、拍手喝采の部分で
ございます」
私はそれに興味はない。ただ、歌を歌いたいだけだ。Dは長剣を持って、ここ
まで辿り着いた男と女へ歩いてゆく。
「・・・」
しかし、あの男はすごい。レリーフを守る者たちをどうにかして、ここまで来
たのだ。正直、褒めてもよかった。けれど、男はDを見たとたんに銃を構えて
撃ってきた。だが、あの男は優しすぎる。そして、あの女もDに勝てないだろ
う。なぜなら、この世界で一番の強さを持つ存在なのだから。



場所 劇場 14時34分

 目の前には長剣を持った男、Dがいた。
「フローさん。この人は危険です。下がっていてください」
シェリルさんが真剣な顔で言う。
「わかりました」
そう言って、俺は下がる。
「おや、あなたも美しいですね。私はDです」
Dという男はシェリルさんに挨拶する。一方、シェリルさんは
「シェリルです」
と一言で返事をして、それが戦闘の合図だった。シェリルさんが自らDという
男に向かって行く。それもものすごく速い。
「くっ」
けれど、素手のシェリルさんは不利だった。相手は長剣を持っている。さらに、
シェリルの攻撃を長剣で受ければシェリルにダメージを与える事ができる。だ
から、自ら攻撃を仕掛けたのに下がるはめになる。
「・・・動きがはやいです」
シェリルは相手の動きの事を言う。
「ありがとうございます。動きだけは誰にも負けないように努力しております
ので」
そう言って、こんどはDから攻める。それに対して、シェリルさんも負けない。
隙あれば、そこを狙って攻撃をする。
夜叉流 水流
時には相手の攻撃を受け流して、
夜叉流 飛来
相手に攻撃をしけたりする。けれど、それが当らない時がある。Dも強い。だ
から、シェリルさんの攻撃を避けたら、すぐに攻撃を掛ける。それに対してシ
ェリルさんは
夜叉流 水流激
長剣の突きを受け流し、さらにその攻撃の勢いをつけてやり、その力を相手に
返す。
「!」
けれど、Dはその前に長剣を離して、長剣はものすごい勢いで壁に刺さった。
「ふぅ、危なかったです」
悠長に話しながら、舞台へ歩いて行く。
「はっ」
一方、シェリルさんは追い込みを掛ける。けれど、
「無駄ですよ」
Dもまた、シェリルさんと同じぐらいの速さで新たに長剣を手に入れる。
夜叉流 斬撃
手刀をシェリルは作り、長剣を根元から切断した。ただし、刃と素手で戦うつ
もりはなく、横から剣身を切断したのだ。その時点で、現実を逸脱している。
ばこ
シェリルさんはDとうい男に蹴られて吹き飛ばされた。さらに、Dの男の追撃
を怠らない。それに対して、反応が遅れたシェリルさんはDのパンチやキック
の連続攻撃をくらってしまう。最後にDは思い切ってシェリルを蹴った。シェ
リルさんは地面に激突して転がった。


「うぅ・・・」
シェリルさんは意識があるものも、体が思うように動かなかった。俺が銃をD
に向けた。
「遅いですよ」
俺の目の前にいて、持っている銃を手から弾いた。俺はすぐにシェリルさんか
ら習った格闘術で応戦する。けれど、Dに通用する事もなく、俺はカウンター
を食らって地面に平伏した。
「・・・・」
絶体絶命だった。Dは壁に突き刺さった長剣を抜きにいく。それに対して、体
を動かそうにも痛みで体が思うように動かない。
ばきん
そして、俺とシェリルさんが諦め欠けた時にステンドグラスが割れる大きな音
がした。誰もが注目した。しかし、そこには誰もいない。変わりに
「・・・ブロンズ像」
ブロンズ像が舞台の真ん中で堂々と立っていた。でも、理由がわからない。
「おお、投げたブロンズ像が立った。なんという偶然だ」
割れたステンドグラスの奥は暗闇で、その暗闇のなからから聞き覚えのある声
が聞こえた。



場所 舞台の裏 14時56分

 私は舞台の裏に辿り着いて、目の前にはステンドグラスがある。どうやら、
舞台のセットらしい。それで、この先が舞台に通じるそうだ。ならば、このス
テンドグラスを割ってかっこよく登場してみようかと考えた。
「・・・」
考え直して止めた。ガラスを突き破る時、怪我したら嫌だ。だから、私の目に
止まったブロンズ像を見て閃いた。
「何をするのですか」
メイドが尋ねる。
「見ればわかる」
私はブロンズ像を持って、思い切ってステンドグラスに向かって投げた。
がしゃん
大きな音を立てステンドグラスは割れて、ブロンズ像は舞台の上で立っていて、
輝いていた。
「おお、投げたブロンズ像が立った。なんという偶然だ」
私はそう言いながら、舞台の上に登場した。後から、メイドと少女二人がつい
て来た。
「アヤさん」
貼り付けにされているマリーエが叫ぶ。
「大丈夫か」
私はそう言って、あたりを見回す。舞台には蒼のドレスをきた人がいて、観客
席にはDという男がいる。それから、いろんな人と異界の住人もいる。
「・・・」
フローとシェリルもいて地面に倒れていた。私は舞台から降りてフローに駆け
寄って
「フロー大丈夫か」
と尋ねる。
「はい、なんとか」
フローは何とか起き上がる。それに対して、
「お前はシェリルを助けて、マリーエを助けろ。それから、助けられるのは助
ける。それから、あそこにいる無表情のメイドと綺麗なドレス来た少女二人も
助けろ」
私は背負い袋を下ろした。
「これは?」
「お前が持っていろ、中身は・・・私の趣向品が入っている」
私はそう言って、視線をDに向ける。
「よお、今度は負けないから」
私は右手に持っている両手剣を構えた。
「ふむ、おもしろそうですね」
Dは長剣を持って舞台へあがる。それに対して、私も舞台の上に上がる。
「大丈夫ですか?」
メイドが尋ねる。私はそれに対して
「大丈夫だ。それと、さっき話してた男、わかるか?」
メイドは頷く。


「フローっていう。そいつと、協力しろ。きっと、この子達を守ってくれる」
「わかりました」
メイドは二人の少女の手を引っ張ってフローへの所へ行く。そして、舞台に残
った私は両手剣を構える。それに対してDは長剣を構える。私の使う両手剣の
長さは2mに重さは3kgある。一見、素早く剣を振るえる長剣が有利に見え
る。けれど、実際にやらなければわからない。
「ふむ、愚者の構えですか」
「そうだ、アルバーの構えだ」
左足を下げ、右足を前に、腕を左に下ろし、切っ先を正面下に下げた構えがア
ンバーだ。一見、無防備な構えに見える。けれど、それが最大の特徴だ。
「なるほど、勢い込んで来た所を切っ先で下腹を切り裂くおつもりですか」
どうやら、この構えを知っているようだ。なら、普通に中断に剣を構えた。足
を肩幅に開き、左足は前にして、方の力を抜いて両手剣を構える。
「ふむ・・・面白いですね」
Dは口元をにやりとさせて言う。それに対して、私は両手剣を投げた。
「なっ」
いきなりの事でDはあせる。それに対して私はDに一気に近づいて
ずば
Dの上半身を切り裂いた。血が噴出して、私に血が降りかかる。一方、Dは
「ふははは、おもしろい。これなら、蒼の歌姫様も満足でしょう」
「?」
意味がわからない。けど、私に向かって
「あ・・・あ・・・紅の歌姫」
蒼の歌姫は立ち上がった。さらにDはこう言った。
「さようです。蒼の歌姫様。この方はあなたから歌を奪った人でございます」
蒼の歌姫とかよばれる女の人は椅子から立ち上がり、鞭を手に取る。
「私は紅の歌姫じゃない」
私は否定する。けれど、蒼の歌姫は
「やっと、倒せる。ようこそ、私の世界に」
蒼の歌姫が私に戦いを挑んできた。



場所 14時54分 劇場前

 人数が揃って、突入したのはしたが、誰もいない。一体、何処に行ったとい
うのだ。刑事は次から次へと起きる謎に気がおかしくなりそうだった。
「まったく、意味がわからん」
現在も劇場の調査をしているが、何もわからなかった。
「はぁ・・・」
ため息をついて、1台の車がやってきた。



場所 劇場 15時2分

 私は二人の少女の手を引っ張ってフローという男のところへ行く。
「あ、よろしくお願いします」
フローという男はやさしい顔で言って、地面に倒れている女の元へ行く。
「大丈夫ですか、シェリルさん」
シェリルと呼ばれた女は
「すみません、私・・・やられちゃいました」
笑顔で言う女は言う。それに対して、
「大丈夫ですよ。それたより、助けられる人達をたすけましょう」
フロー呼ばれた男はシェリルを起すのを手伝う。
「あなたはご主人様を裏切るのですね」
「・・・」
後ろを振り向くと仮面を着けた、私の悪夢がいた。私と同じで一緒に作られて、
この子たちを白から色を染めた人だ。
「・・・」
私は何も言わない。
「シェリルさん、無理です」
フローがシェリルと呼ばれる女を制止する。
「すみません、この子達をお願いします」
私は二人をフローの男に任して、背中に背負った大砲を地面に下ろして、背中
にある幅広の片刃で自分と同じ背丈の長さのはる両手剣を構えた。
「あの時は、倒したと思って油断して負けたけど次は負けません」
それに対して、私の悪夢も両手に持った長剣を構える。
「ジェシカ。私はわかりません。体の痛みも快楽も・・・けれど、心は感じま
すか」
私が私の悪夢、ジェシカに問うとこう答えた。
「心など、完全な人間に不要です」
「・・・」
もう、何も聞く必要はない。しばしの沈黙のあと、ほぼ同時に前にでた。私が
1撃目の斬撃を行う。それを左の長剣で受け流して、右手の長剣で攻撃をする。
それに対して、両手剣を離さず、片手で持ちながら避けて、水平になぎ払う。
けれど、その攻撃は後ろに下がられて避けられてしまう。ジェシカは後退した
後、すぐに攻撃をしかけてきた。それを私は両手剣の剣身の幅の広さを利用し
て、ジェシカの斬撃から身を守り、後ろへ跳躍する。
「やはり、甘いです」
跳躍した、私は壁を蹴ろうとする前にジェシカは私の近くにいた。反撃をする
つもりが防御に転じる事になった。地面に落ちるまで、両手剣で全ての攻撃を
防御する。
「はっ」
地面に着いたら、すぐさま攻撃を行う。けれど、ジェシカは後ろに10メート
ルほどジャンプして距離を取る。それを今度は私が追って第2撃の斬撃を行う。
両手剣を肩に構えて、一気に振り下ろした。けれど、また、避けられて、私は
上を向く。ジェシカは天井を蹴って、私に向かってくる。それに対して、私は
地面を蹴って立ち向かう。


ばきん
剣と剣がぶつかり合う音がして、
ばきん
さらに、その音がなり
ばきんばきんばきん
何度も何度も鳴り響き、しばらく、空中で私とジェシカの攻防が続く。私は左
から両手剣を水平に振って攻撃を行う。それに対して、ジェシカは両手に持っ
た長剣でガードを行う。たぶん、片手では受け止められないと判断したのだろ
う。私とジェシカは剣を押して相手を倒そうとする。けれども、力は同じで決
着はつく事がなく、私とジェシカはほぼ同時に後ろへ下がる。
「・・・」
私は両手剣を構えなおす。一方、ジェシカは長剣を構えずに
「私にはわからない。私と同じように完璧なあなたが・・・私と違う事を考え
なさる」
「・・・」
左手に持つ長剣を向けて言う。
「けれど、わかりました。あなたはご主人様に名前を貰っていない。名も無い
未完成品だと理解しました」
私には理解できない。完全と、未完成とかがわからない。生まれた時から、わ
からなかった。ただし、この世界に生まれた時の記憶ではない。その前の、も
っと昔の記憶だ。
「名も無い未完成品が同じ存在だとは恥ずかしいです。今、ここで楽にしてあ
げます」
ジェシカが私に向かってきた。私は防御をする事しかできなかった。わからな
かった。わからなくなってしまった。戦う意味がわからなくなってしまった。
そもそも、私は戦う必要なんてなかったのかもしれない。私は壁に追い込まれ
た。
ざしゅ
ジェシカの持つ左手の長剣で右肩を突き刺された。
「・・・」
今、私の目の前で右手の長剣が輝いている。
「・・・」
私は何も感じない。痛みも快楽も感じない。だから、何も感じないのならば、
何もする必要は無く、戦う理由もない。
「・・・」
蒼の歌姫様、私はここでお別れみたいです。私は心の中でお別れを言った。だ
けど、なんで、心の中で言ったのだろうか?そういえば、遠い昔、蒼の歌姫様
は名前を下さらなかった。理由はわからない。自分の好きな名前を自分の名前にしなさいと言われた。
「・・・」
でも、今ならわかる気がする。そして、アヤという人も同じ事を言った。そし
て、ジェシカは完璧じゃない。完璧に作られている。けれど、その完璧が未完
成にしていると私は思った。それが、悲しい。
「感情もないあなたが、私を悲しい目でみる。やはり、あなたは未完成です」
私は初めて無表情でなく、感情を表した表情でジェシカを見た。


「ジェシカ、ごめんなさい」
私は右肩に刺さった長剣を素手で抜いて、壁に突き刺した。その時、痛みは感
じない。ジェシカは驚いて、右手の長剣で攻撃をする。それに対して、私は両
手剣でガードして、縦に両手剣を振るう。
ぱきん
私はジェシカを切らずに仮面を斬った。ジェシカは後ろへ下がる。私は自分の
髪の乱れを治す時に使うコンパクトを取り出して、ジェシカの顔を映す。
「あなたは、私と形は似ていますが、違うのです。この鏡を見て私と自分の顔
を比較してみてください」
「あ・・・嫌・・・嫌」
ジェシカは長剣を落として頭を抱えて地面に膝を付く。
「・・・」
元から違ったのだ。ジェシカは自分と違う事が怖くて仮面を付けた。そして、
違う事から逃げてきた。もし、違うとわかったら、どちらが本当の完璧かわか
らなくなってしまう。だから、仮面を着けた。
「・・・」
ジェシカは必死に自分の顔と私の顔の違いが嘘だと必死に思い込もうとしてい
る。けれど、それができなかった。
「・・・」

例え、痛みも快楽も感じなくても心は感じられる




場所 15時1分

 Dはナイフで切られた傷を抑え立っていた。一方、私はケロベロスを両手に
装備する。
「お前、わざとか」
私はDを睨む。
「いいえ。あなたが蒼の歌姫様に相応しい人か試しただけです」
何が本当かわからない。はっきり言って、Dという男が好きになれない。とり
あえず、
「・・・紅の歌姫。私と歌いましょう」
手には鞭を持って、私と戦うつもりらしい。
「では、蒼の歌姫様失礼いたします」
「うむ、お前はよくやってくれた」
Dは舞台から去って行った。一応、傷を負っているから何もできないだろう。
ならば、目の前にいる蒼の歌姫をなんとかするしかない。
「さあ、歌いましょう」
蒼の歌姫は私に歌を歌う事を強要してくる。
「私、正直・・・歌下手だよ」
私は、地面に落ちたDに投げた両手剣を拾う。けれど、この両手剣をあまり使
いたいとは思えない。
「・・・」
一応、同姓だけど、元は男だ。女の子を殴るというのは気が引ける。あ、で
も・・・だから同性いいのかな。
「ふざけているのですか?紅の歌姫」
「いや、本当に歌は音程が合わなくて、音楽はハーモニカしか吹けないんだ」
そうやって、懐からハーモニカが入ったケースをポケットの中から3つほど取
り出して見せる。
「ね・・・」
でも、蒼の歌姫は信じてくれない。
「紅の歌姫、あなたが歌わないというのならば・・・私があなたを歌わせてあ
げましょう」
蒼の歌姫が空中に浮いた。私はナイフを仕舞って、両手剣を構える。
「さあ、歌いましょう」
それ言って、蒼の歌姫は歌う。すると、蒼の歌姫の周りに氷の結晶が現れ、歌
に合わせて氷の結晶が私に襲い掛かってきた。
「!」
私はすぐさま、その場から身を引いた。でなければ、あの氷の結晶に当って大
怪我をしているところだ。いくら、頑丈なヴァンパイアでもまずい。
ばちん
「ぐっ」
蒼の歌姫は私が凍りの結晶を避けた所を狙って鞭で攻撃をしてきて、当ってし
まった。私は体制を崩しまう。けれど、すぐに体制を整える。けれど、その時
は間に合わない。すぐさま、氷の結晶の雨が私に降り注いだ。私は両手剣を地
面に突き刺して、自分の体を縮ませて、必死に氷の結晶の雨を耐える。先が鋭
く尖った氷の結晶は私に突きれば、私の体をえぐる。そうと思えば、丸い形を
した氷の結晶が私に容赦なく体にぶつかってくる。そして、氷の結晶の雨が止
むと私は反撃に移る。体の傷はすでに治っていて、両手剣を持って、蒼の歌姫
まで走って行く。一応、中に浮いているが、蒼の歌姫は向かってくる私に対し
て鞭で対抗する。しかし、私はそれを避けて、両手剣を投げた。蒼の歌姫はそ
れに対して、冷静に対処する。周りに浮遊する氷の結晶で自分に向かってくる
両手剣を落とせばいいのだ。さらに、その方向は私を向いている。私はそれに
気が付いて走り出す。けれど、
ばき
「あっ・・・ぐぅ」
足に当って、足の骨が折れた。私は舞台の上で倒れて、ハーモニカを落とした。
けれど、気にしている暇はない。次の攻撃がくる。


ばちん
私を鞭で思い切って叩く。私の足は治って立ち上がったが、鞭の攻撃で倒れる。
また、私は立ち上がり、鞭の攻撃を避ける。けれど、ピンポイントで狙った氷
の結晶が私のお腹を貫く。
ぴしゃあああ
血が出る。けれど、すぐに治る。
「紅の歌姫さん。ずいぶん、便利なお体をしています事」
そう言って、氷の結晶の雨がもう一度降り注ぐ。しかも、今度は鋭く尖った氷
の結晶だ。当れば出血する。出血すれば、私の回復力も落ちる。ならば、立ち
上がって逃げるしかない。
だっ
すでに体は治っている。ならば、体は動く。私が走るのと同時に氷の雨が降る。
「・・・・っ」
お腹を抉られる。
「ぐぅ」
肩も抉られる。
「がは」
足を氷の結晶が貫いて、私は地面に倒れる。
「はぁはぁ」
息は荒く、血を消費する。傷はすぐに治るが出血した血は戻らない。
「つまらないわ。紅の歌姫。そして、さようなら、紅の歌姫」
蒼の歌姫の周りにこれまでとは桁違いの氷の結晶が集まる。
「・・・」
私は立ち上がる。このまま、負けるつもりはない。私はナイフを取り出す。
「はぁ」
葉巻を取り出して、ナイフで吸い口を作り、ガスライターで火を点けて吹かす。
私は葉巻の煙を吐き出して、蒼の歌姫に視線を移して、走り出す。地面に突き
刺さった両手剣を抜き取る。それと同時に氷の結晶の雨が私を襲う。けれど、
関係ない。そもそも、はじめからそうしていればよかった。私は余り幅広とは
言えない両手剣を盾にして、蒼の歌姫に接近する。
どさり
例え、倒れても立ち上がって、また走り、蒼の歌姫へ近づく。たとえ、どんな
傷を負っても構わず、どんな攻撃にも臆する事もなく前に行き、
「うぉおおおおおおお」
ばちん
蒼の歌姫に平手打ちをする。蒼の歌姫は呆然として、地面に落ちる。すぐに、
蒼の歌姫は立ち上がり
「何故、持っている武器で私を斬らない」
動揺した声で言う。それに対して、奇跡的に無事だった葉巻を吸って、煙を吐
き出してからこう言う。
「お前、女の子だろう。女の子は大切にしなくてはいけないからね」
ただ、それだけなのだ。それさえ、無ければ、蒼の歌姫を倒す事なんて簡単だ
ったのだ。



場所 劇場 15時4分

 俺はアヤさんに言われた通りにマリーエを助けに行く。二人の少女はシェリ
ルさんに任して、床に落ちている銃を拾って舞台へあがる。
「大丈夫かい」
俺が尋ねると
「うん」
と頷いてくれた。俺はナイフを取り出しながら
「君がマリーエかい?僕はフロー・ローガン」
自己紹介をしながら、ナイフで拘束を解いてあげる。マリーエは
「ありがとう」
と言う。それに対して、シェリルさんの所へいくように指示した。一方、アヤ
さんは蒼の歌姫と一生懸命に戦っている。俺も頑張らなくてはいけない。そし
て、俺は舞台に貼り付けされた裸の女の子の所へ駆け寄った。



場所 舞台 15時10分

 目の前で戦いが繰り広げられる。その戦いはどれも心を奪われる何かがあっ
て、何かを伝える戦いだった。
「・・・」
そして、目の前に1人の男が来た。何かを話している。
「俺はフロー・ローガン。動かないでね」
何かを言っている。聞こえないはずの何かが聞こえた。男は銃を構えて、自分
を固定する鎖を撃ち、貼り付けから開放された。男はコートを掛けてくれた。
けど、そんな事はどうでもよかった。けれど、目の前に落ちているハーモニカ
が入ったケースだけが気になった。
「・・・」
男は舞台の上に落ちているそれを見て、
「ここで待って」
と言って取ってきてくれた。今、男の手とは違った女の綺麗な手にハーモニカ
が入ってケースがあって、中を開けると銀色に輝くハーモニカが入っていた。
男は
「立てるかい?」
と尋ねる。聞こえないはずの声が聞こえた。不思議だった。
「・・・」
でも、立つ気力がなかった。無表情で何もしない。だから、男は自分を抱え上
げて舞台から降りて安全な場所まで運んでくれた。この男は優しいと思った。
けれど、優しすぎると思った。
「・・・」
蒼の歌姫を見た。何か動揺している。それで、いて・・・一つの氷の結晶が蒼
の歌姫に挑んだ女の人に当る。さらに、沢山の氷の結晶の雨がその女の人に降
り注ぐ。それと同時に、コートが赤く紅のように光出した。



場所 劇場 15時16分

 俺は舞台の方を見る。舞台では蒼の歌姫が頬を押さえて動揺している。一方、
アヤさんは葉巻を吹かしたりしている。けれど、
「何故、何故なの。あなたは私から歌を奪った人なのに」
「いや、ちがうから」
「でも、今度と同じように歌を」
「奪わない」
アヤさんは蒼の歌姫と話をしている。けれど、蒼の歌姫はアヤさんの言う事を
信じられないのか
「嘘よ」
と言って氷の結晶を当てる。一方、アヤさんはよける事もなく、氷の結晶に当
った。さらに、アヤさんに氷の結晶の雨が降り注ぐ。助けなければいけない。
そう思った時、老婆からもらったルビーを思い出した。あれを使えば助けられ
るかもしれない。そう思った時、俺のコートに入ったルビーが紅に光始めてい
た。俺はコートを羽織らせた少女に
「ごめんね」
と言ってコートのポケットに入ったルビーを取り出す。するとルビーは空中に
浮いて、閃光のように蒼の歌姫を貫く。それに対して、蒼の歌姫は気が付いて
避けようとする。しかし、避けきれずにお腹から血が出て倒れる。動きを封じ
る事ができた。けれど、ルビーの効き目が残っていた。また、蒼の歌姫を狙っ
て、閃光が蒼の歌姫を狙う。俺は銃を構えてとっさに撃つ。けれど、当らない。
しかし、
「はっ」
ばきん
両手剣で閃光を断ち切り、ルビーが砕けた。アヤさんは俺の方をみて
「あのルビーか?」
と尋ねてきた。それに対して
「はい、ですが。すみません」
と俺は謝る。
「気にするな。あれ、使わなければ私が力尽きていた」
しかし、アヤさんは気にする様子もなかった。けれど、別の声がした。
「あのまま、ほっとけば楽だったのにな」
男の声がした。その男はまったく気配を感じられず、黒のコートを着て、
黒のサングラスを掛けていた。



場所 劇場 15時21分

 私の目の前に、私の悪夢が現れた。それは15年前の悪夢の元凶だった。
「お前の仲間だろう」
私は悪夢の男に向かって言った。それに対して
「弱者に興味はない」
と返事をする。私は表情を変えずに、両手剣を持って悪夢の男と対峙する。
「お前をここで倒す。そして、全てを終わらす」
男は口元をにやりとさせて
「ふっ・・・お前にできるか。俺を倒せるか」
と言ってナイフを右手に持つ。私は悪夢の男へ一気に距離を詰める。それに対
して、男はナイフを構えずに立っている。私は斬撃が当る位置に入ったら両手
剣を振るう。しかし、
きん
受け止められてしまった。けれど、気にせずに次の攻撃へ転じる。けれど、
きん
また、受け止められる。
きんきん
さらに、受け止められて、また、受け止められる。
きん
五回目の斬撃も受けとめられる。
ざしゅ
けど、次の攻撃は受け止められない。なぜなら、懐にしまったナイフで男の首
を切り裂いたのだ。けれど、これで死ぬ男ではない。すぐに、次の攻撃に転じ
る。けれど、その攻撃は当らない。
「小細工だな」
男は私と距離をとって軽蔑するように言う。それに対して、私は気にしない。
「お前は・・・ヴァンパイアの戦いを知らない。お前はヴァンパイアじゃない。
人間だ」
男はそう言うと、自ら手首を切った。血が出る。それに対して、私は両手剣を
地面に突き刺してナイフを持って構える。
「・・・」
悪夢の男は自ら作った傷は無くなっていた。そして、
「来い」
悪夢の男が言う。それに対して、言うまでもなく男へ向かって行く。男の手に
は赤黒い弾が握られていた。それを私に投げてくる。私はとっさにその弾から
身をかわす。けれど、爆発した。洋服に火が点く。
「ヴァンパイアは血を使って戦う。例えば、血を爆発物に変えたりする事だ。
けれど、お前はしない」
悪夢の男は近づく。一方、私は体についた火は私を蝕む炎となった。
「何をしても無駄だ。水でも消えない。そして、呼吸が出来ずにもがき苦しみ
死ぬがいい」
「はぁはぁ」
確かに息をしても苦しい。このままだと、まずい。
「・・・くぅ」
本当はしたくないけど、するしかない。私は叫んだ


「フロー、背負い袋に入っている物を投げろ」
すると、シェリルが背負い袋の物を投げた。私は中に入った物が割れないよう
に手で掴みとり、まだ燃えてない右手で背負い袋を開けて、ウィスキーを3本
取り出す。それを持って、男へ近づく。
「ふっ、何をするつもりだ」
私は2本のウィスキーを地面に叩きつけてボトルを割った。それと同時に炎の
勢いが増した。
「馬鹿か?所詮、未熟者か」
男は私に背を向ける。けれど、それが間違いだった。
だっ
「ん?」
男が私に振り向いた時には遅い。あの時、私は一か八かで、急激に爆発的燃焼
を起した。そうする事により、一時的な酸欠状態になる。酸素の内ところで炎
は燃え続けられない。あとは気力を絞って男に飛びつく。そして、ナイフで首
を切り、傷が塞がるのを防ぐためにナイフを食い込ませる。この近距離で、血
の力は使えない。悪夢の男は私を必死に私を振りほどこうとする。けれど、離
さない。絶対にここで悪夢を終わらす。けれど、
ぼぎ
「あぁあああああああああああ」
悪夢の男が観客席に私を叩きつけて、右足の骨が折れた。
ぼぎ
さらに左足の骨が折れた。けれど、すぐに治らない。ヴァンパイアの治癒能力
が私の怪我に追いつけないのだ。それでも、腕のちからで悪夢の男にしがみつ
く。けれど、悪夢の男にはそれだけで十分だった。悪夢の男は私を投げ飛ばす。
私は受身も取れずに観客席に激突して観客席の一部を破壊する。
「くっ・・・動けない」
背骨が折れていて神経がやられている。下半身に力が入らない。けれど、悪夢
の男は
「・・・ふっ」
私に背を向けて去っていった。
「後はその場にいる者たちでなんとかなるだろう」
そう言って、悪夢の男は去って行った。



場所 劇場 15時37分

 あの男が去ったあと、フローが私に駆け寄って来た。すぐに平らな床に寝か
してくれた。私の体は焼けどで、酸素を求めた。私は酸素を求めて呼吸をする。
体に十分な酸素が送られると同時に体の傷は治る。傷が治れば、何もなかった
ように立ち上がる事ができた。
「・・・」
本当に皮肉だが、便利な体をしていると思う。私は蒼の歌姫の元へ歩いて行く。
「大丈夫か?」
私はお腹を押さえている蒼の歌姫に問いかける。それに対して、
「どうして、私を助けたの」
私の質問には答えずに、質問を投げかけてきた。私は天井を見上げてこう言っ
た。
「女の子は大切にしないといけないって、姉さんに教わったからね」
私は姉さんの事を思い出しながら言う。
「今、手当てをします」
そこにフローが来て、蒼の歌姫の手当てをする。幸い、急所は外れていたよう
だ。
「これなら、大丈夫ですね」
フローは蒼の歌姫の手当てを行い、真剣な顔して私にこう言う。
「まだ、Dという男が残っています」
「そうだな」
私は舞台の上から観客席を眺めながら言った。



場所 劇場 15時51分

 俺は蒼の歌姫の手当てを終えると、アヤさんに話しかける。
「何だ?」
俺はまず、ここに来る時に二人の女の子の話をした。それから、不思議な出来
事の話もした。その時、一緒に聞いていた蒼の歌姫が同様していた。
「まさか、ルナとサンを殺したのはDだというのですか?」
「はい、あの時、ルナを殺した犯人を見ました。それで、その犯人はDです」
ぱちぱちぱち
突如、拍手する音と共に舞台の上に1人の男が現れた。その男は
「こんにちは、皆さん。Dです」
自らをDと名乗る仮面を着けた男だった。



場所 劇場 15時59分

 Dという男は拍手しながら舞台に登場した。そして、私達の前に現れた。蒼
の歌姫は
「どうして、どうして、ルナとサンを殺したの?」
とDに問う。すると、
「それは、この世界を作るためですよ。私が望む世界を・・・」
と答える。つまり、蒼の歌姫は踊らされていたのだ。
「まあ、予想外は紅の歌姫があんなにも強情だとは思いませんでした」
Dは両手を広げて言って
「さて、最後のフィナーレといきましょうか」
Dがそう言うと
がくん
という音がして
ぐぃいいいいいいいいいいいいいん
下へと下がり始めた。舞台と観客席を含めて下へ下がっていく。
「D、紅の歌姫は何者だ」
私は問う。
「紅の歌姫。私が始めに殺し、この世界の束縛から逃れた人ですよ」
何かを思い出すように言う。
「この世界を作るのに、自分を含めて21人の人を殺す必要があります。その
時、この世界の住人として魂は永遠に束縛されます。ですが、それは永遠なる
不滅なる世界です」
「・・・」
「しかし、紅の歌姫は愚かで、この世界が逃げ出しました。ここにいれば、永
遠が手に入ったというに。まあ、私の作る世界が気に入らないのなら仕方がな
いです」
つまり、蒼の歌姫は踊らされたのか。悲しいな。自分がこの世界の支配者だと
思っていたのに。
「ただ、大変でしたよ。20人殺したからと言って、必ずしもこの世界の支配
者になれるわけではありません。けれど、私には才能がありました」
まるで、舞台役者のようにDは話す。
「そして、私の望む世界が生まれた。けれど、あなたはそれを壊そうとしてい
る。ならば、この世界の支配者としてあなたを排除しなければなりません。そ
して、私の最大最高の劇で感動のフィナーレを飾ってあげましょう」
私は話が長くて飽きてしまった。私は葉巻に火をつけて、葉巻を吹かす。
「はぁ」
私は煙を吐き出しながらため息をついた。そして、
がくん
という音がして舞台の置くには大きなホール。否、舞台がり、あの魔方陣があ
った。Dという男は、魔方陣の真ん中までいき
「さあ、この世界の麗しき支配者。神の姿を見よ。そして、平伏せ、崇め。崇
めない者には死を」
天に手を伸ばしながらDは言う。
「フロー、蒼の歌姫を安全な場所へ運べ」
私はフローに指示をして、私は観客席に落ちた両手剣を拾いに行く。私が両手
剣を拾った時には、Dという男の原型は見当たらずに巨大な花が魔方陣の中心
にあった。けれど、その花はうねうねと動いている。花の中心にある蕾が開き、
Dという男が現れ
「さあ、かかってきなさい。私があなたに相応しいフィナーレを」
と両手を広げて言う。そして、劇場で最後の戦いが始まった。



場所 劇場の地下かもしれない場所 16時14分

 私はうねる巨大な花を見上げる。気色が悪いと思った。匂いも悪い。葉巻の
ほうが、とってもいい匂いだ。けれど、油断はできない。
だっ
私は両手剣を肩に背負って走る。狙いは花の中心だ。だが、そこまで点くには
いろんな障害がある。巨大な花は複数の蕾と花咲いており。Dを守るようにあ
り、それが私に襲い掛かる。蕾が開くと、凶悪な牙を見せて私を丸呑みにしよ
うとする。それを私は茎を容赦なく両手剣で斬り、突き進む。しかし、数が多
すぎる。突き進もうにも、数が多くて前に進めない。
どかーん
そこに爆音が響く。何が起きたと思うと、花の一部が吹っ飛んでいる。私が後
ろを振り向くと、あのメイドが巨大な大砲を持っていた。
「ありがとう」
私は大きな声で言う。けれど、それがまずかった。後ろに私を丸呑みにしよう
と花が迫る。
夜叉流 貫通電脚(かんつうでんきゃく)
シェリルがするどい突きで、怪物の攻撃を阻み、強力な蹴り上げで花を退く。
「アヤさん、走ってください」
私はそれに対して頷く。私は中心へ向かって走った。



場所 劇場のどこかだと思う 16時21分

 俺は見ているしかなかった。けれど、
「おい、手伝ってくれないか」
俺は男の人に声を掛けられた。俺が声のほうを振り向くと、俺にダイナマイト
を手渡した。
「な、何を?」
「これで、あの怪物をぶっ飛ばすんだ」
男はにやりとする。それに対して、俺は大きな怪物を見て、男を見てにやりと
する。
「いいですね」
「だろう」
俺と男は密かに準備を始めた。
「そういえば、あなたの名前はなんですか?俺はフロー・ローガンです」
俺は男に名前を聞く。
「すでに知っているよ。ロバート、ロバート・マクレディ」
男はそう言った。



場所 知らない場所 16時24分

 大きな剣を持って立ち向かう勇敢な人は苦戦していた。だけど、自分に出来
る事はない。でも、ハーモニカを見た。
「・・・」
もしかしたら、自分が奏でるハーモニカと蒼の歌姫の歌で変えられるかもしれ
ない。自ら立ち上がった。それに、聞きたかった。
「なによ」
蒼の歌姫はお腹を押さえながら言う。それに対して、自分は声が出ない。どう
やって話せばいいかわらかない。だけど、心で必死に伝える。
(あなたの歌だけが聞こえた)
「・・・」
(だから、歌って・・・ハーモニカを演奏するから)
自ら望んだ。だから、ハーモニカ演奏した。
「・・・あ」
蒼の歌姫は目を見開く。そして、蒼の歌姫は
「なぜ、その歌を」
(わからない。だけど、ごめんね)
何故か、涙がとまらない。それで、演奏していくうちにわかった。
「・・・あなたは何もしていない」
(ごめんね。でも、もう一緒だよ)
全てを思い出した。今、自分の記憶には紅の歌姫の記憶があった。それで、今
わかる。音が聞こえる。




 夢の中で

 僕はさ迷う

 君を探しても

 君はいない

 それでも、僕は歩いていくんだ

 それでも、君を僕は探す

 何か、忘れたとしても

 必ず、思い出せるから

 君は歌が好きだった

 だから、僕は奏でるから

 昔の事

 覚えているかな

 あの時、僕は

 謝れなかったね

 それでも、僕は君に伝えたい

 僕の本当の気持ち

 何を、君は望むの

 僕は、一緒いたい

 僕は奏で続けるよ

 君に届くまで、何時までも

だから、歌って

 僕は何時も、奏でるよ

 君は何時も、歌うよ

 何時も、傍にいるよ

 だから、一緒にいよう

 忘れないよ、君の事

 この歌共に、何時までも奏でるから

 だから、歌ってみて



場所 劇場の地下かもしれない場所 16時24分

 私は花の中心へ走った。そして、私は両手剣を使って突き進む。
「・・・歌」
歌が私に体を軽くした。これが、歌の力。昔、戦場で疲れた兵士に気力を与え
て勝利に導く歌にも思えた。私は走る。そして、
だっ
花の中心で剣を突き刺さそうとする。だが、止められた。別の花が私に体当た
りをしてきた。すぐに、私は体制を整え、体当たりしてきた花は私を飲み込も
うと向かってくる。けれど、それを避ける。
「・・・」
私は跳躍して、剣を突き立てる。
夜叉流 楽撃
私の攻撃を妨害する花をシェリルが止め、
どかーん
さらにメイドが撃つ砲弾が花の動きを鈍らせる。
ざしゅ
両手剣はDの胸に突き刺さった。
「アヤさん、シェリルさん。離れてください」
フローの声が聞こえた。私は両手剣を抜かないで、花から逃げ出す。私が花と
ある程度の距離を取った瞬間
ぼかーん
ものすごい爆発の音がした。その音と同時に伏せて、衝撃が体に伝わる。「・・・」
私は後ろを振り向いた。花が燃えていた。そこに知らない男が来て
「ダイナマイトだ」
と言う。私はそれに対して
「そうか」
と言って葉巻を吸うか尋ねた。それに対して、
「遠慮しとく」
と断られた。



場所 劇場の地下かもしれない場所 16時41分

 花は爆破され、炎が消えるのを私は待った。そして、Dは生きていた。胸には両手剣が刺さっている。
「どうやら、私の負けです。さあ、止めを刺しなさい」
私はDに対して、止めを刺す事はしなかった。
「お前は何もできない」
私がそう言うと、Dは笑った。けれど、気にしない。
「面白い。面白い。あなたは面白いです。そうか、そうか」
Dは1人で納得して
「楽しかったですよ。敵役でしたが、最高の劇でした」
とうれしそうに言う。そして、仮面が粉々に砕けた。そこには優しい顔のDだった。
「楽しい劇のお礼に、私の命を代償に元の世界にもどしましょう。そして、私が犠牲になれば、住人化した人を元の人に戻せるでしょう」
そう言って、胸に刺さった両手剣を水らか抜き取って、剣を地面に突き刺した。そして、Dは
「さらば、美しき人」
と言って自らの命を絶った。Dの身体が赤い液体となって魔方陣に染み渡る。
ごーんごーん
鐘の音がした。そして、視界が白く霧が出てきて何も見えなくなる。
しばらく、霧が視界を覆った。




場所 劇場 16時56分

 霧が晴れる。すると、劇場の観客席の間の通路に立っていた。
「・・・」
どうやら、元の世界に戻れたようだ。私はフローのところへ行き
「先に、外で待っている」
と言って、あれを探す。
「・・・あった」
私は背負い袋手を拾う。それと同時に警察が駆けつけた。私は背負い袋を手に
持って劇場の外へ向かって歩く。警察やレスキュー隊は忙しそうに働いている。
私は劇場の外に出て、葉巻の吸い口を作ってガスライターで火を点ける。
「すぅーはぁー」
葉巻を楽しみ、私は背負い袋に入ったシャンパンを取り出して開けて飲む。
「綾」
そして、聞き覚えがある声がする。私が声の方を向くと小夜がいた。
「小夜」
小夜は私に駆け寄ってきた。私はシャンパンを適当な場所に置いて、小夜へ歩
み寄る。だけど、小夜を抱きしめる前に、私は倒れてしまう。それを小夜が受
け止めてくれて、私を抱きしめてくれた。
×

この広告は60日間更新がないwikiに表示されております。

管理人/副管理人のみ編集できます