強制女性化小説ない?スレ保管庫 - アルタン王子の敗北 第6章
アルタンは部屋で身なりを整えていた。
ここで生活しているうちに、彼の化粧や髪を整える手際は大分板に付いてきていた。
滑らかな髪を梳かしながら、彼は先日の出来事を思い出していた。
あの日、目隠しされたまま客の相手をした後の事だ。

客と入れ替わりで入ってきたセラナにより、彼は縛られたまま弄ばれた。
彼女の女性的で柔らかな愛撫により、彼は何度も快感を極めたが、
男に体の内側を荒々しく擦られる悦びには及ばなかった。
自分の体、そして心さえもが女として抱かれる悦びを覚えてしまった事は、
彼にとって恐ろしいことだった。

彼は自分の感情を持て余していた。
確かに、セラナのような美人の何気ない仕草に男として引き付けられる時もあった。
しかし、彼の心にはまた、女性としての感情も生まれ始めていた。
アルタンがそれを意識することは無かったが、
彼はここでの生活を快適に感じていて、女の体、女の生活を楽しんでいた。

彼は頭を振って取り留めの無い考えを振り払うと、今日の準備を進めた。
今日の客は重要な人物で、彼には入念な準備が命じられていた。



身繕いを切り上げると、彼はエメラルドのドレスを纏った。
他の女達に言わせると、緑色のドレスは彼の赤い髪とよく似合っているそうだ。
彼も、自分が女として性的魅力に溢れている事は既に認めていた。

そのドレスは肩紐が無く、
スカートはストッキングで包まれた脚の大部分を見せる短い物だった。
ドレスの下の下着も肩紐のないタイプであり、
彼はこのタイプのドレスを着る度に、ドレスがずり落ちる心配をしていた。

ドレスを着終わると、彼はハイヒールを履いた。
ハイヒールでの歩き方にはまだ慣れていなかったが、初めて履いた時よりは格段に様になっていた。

約束の時間にやや遅れていたので、彼はマデリーンの部屋へと急いだ。
部屋へ入り、マデリーンに向かって優雅に礼ををすると、
彼女はその女性らしい仕草に満足して微笑んだ。
アルタンのそばへ歩み寄ると、彼女は彼の髪を撫でながら話し掛けた。


「こんばんは、とても素敵よ。」
「ありがとうございます。」アルタンは滑らかに答えた。
「今夜のお客様は非常に重要な方です。粗相が無いように。」
「分かりました。」
マデリーンは彼から離れると、別の部屋へと彼を連れて行った。

彼女は部屋の中に立つ軽く男の肩に触れて言った。
「バロン様、エラナを紹介します。」

男が振り向いてアルタンに微笑むと、アルタンは衝撃で固まった。
目の前にいるバロンこそ、彼の幼馴染であり、彼の親友でもあった。
バロンを前にまず思った事は、女の姿の自分を見られることへの恥だった。
しかし、当然ながらバロンは彼に気づく様子は無い。

次にアルタンが考えた事は、バロンの力があれば
この状況から彼を助け出すことができるのではないか、という事と、
このままだとバロンはこの体を求めてくるだろう、という事だった。


マデリーンが軽く咳払いをすると、アルタンはバロンを失礼なほど見つめていた事に気づいた。
彼はすぐに気を落ち着けて、マデリーンの前では事を荒立てない事に決めた。
バロンは手を伸ばし、そっと彼の手を取ると軽くキスをした。
鋭敏な手の甲に唇が触れた感触で、彼の頬は少女のように真っ赤になった。

バロンはアルタンとの挨拶を終えると、個室への通路を身振りで示した。
まだ顔の赤いアルタンは頷くと、バロンの手を取り寝室へと向かっていった。

バロンと歩きながら、アルタンは彼に全てを打ち明ける決心をした。
彼の身に何が起きたか、バロンに説明するのはとてつもない恥辱だったが、
このチャンスは是非物にしなければならず、
バロンであれば彼を確実に助けてくれることを確信していた。

ドアが閉じるとすぐに、彼は話を始めた。
自分が王子アルタンだと彼に納得させるのは容易ではなかったが、
二人にしか分からない話をいくつかすると、バロンも彼を信じたようだった。


アルタンは大きく息を吐いた。
この姿になってから初めて、アルタンは道が開けたように感じた。

「じゃあ・・・アルタン。まずはここから出よう。」
「女主人に話をつけてくる間に君の荷物を取ってきてくれ。」バロンは言った。
「今の私には何も無いんだ。」アルタンは神経質に返した。
「分かった。そのうちに服屋を呼んで君に似合うドレスを作らせよう。」

アルタンが作るのならドレスでは無く男物を、と頼もうとした時、バロンは既に部屋から出ていた。
彼はバロンが自分を女性として扱っているように感じた。
その部分はバロンとよく話し合う必要がありそうだった。

「ほら。」数分後、バロンは長い緑色のローブと共に戻ってきて、アルタンに手渡した。
「外に馬車を待たせてある。」


馬車での移動はかなり長い物になった。
アルタンは彼が思っているよりずっと疲れていたが、それに気づく前に彼は眠りに落ちた。

目を覚ますと、彼はバロンに抱きかかえられる様に城へと運ばれていた。
彼は女のように抱かれる事に抵抗を覚えたが、
バロンと自分とが気まずくならないように降ろして貰うように頼む方法は思いつかなかった。
バロンは彼を寝室まで運び、ベッドの上に下ろした。
アルタンが話し始めようとすると、バロンは夜遅いことを理由に部屋から出て行った。

バロンが退出した後、二人のメイドが絹のナイトドレスを持って現れた。
当然アルタンは断ろうとしたが、彼の事を単なる主人の客の若い女としか思っていない
メイドには説明のしようが無かった。
彼女らの助けを借り頭からドレスを着ると、彼はベッドに潜り込み、眠りについた。




アルタンは目覚めると、大きく深呼吸をした。
ついに長い悪夢が終わったのだ。
バロンへの借りはかならず返さなければならないだろう。

室内を見渡すと、それはまさに女の子のための部屋だった。
ぬいぐるみがいくつも置いてあり、ベッドはレースとフリルから出来ていた。
なぜバロンがこの部屋を彼にあてがったか不思議だったが、自分の正体を隠すためだろうと納得した。
ベッドから出ると、ナイトドレスの滑らかな絹が彼の素肌を撫でたが、、
彼がその感触に違和感を感じることはほとんど無くなっていた。
何をするべきか考えた後、まずはこのナイトドレスを脱ぎ、適当な服(できれば男物の)に着替える事にした。

彼は衣装棚を開いたが、そこには女物の服しかなかった。
バロンに悪気が無いのは分かっていたが、それは彼をとても苛立たせた。
メイドがノックと共に部屋に入ってきたとき、彼は未だに何を着るか決めかねていた。
「おはようございます、エラナ様。」


彼女の挨拶に、彼はどう答えていいか分からなかった。
やはりバロンは自分の正体を使用人らに話していないようだった。
メイドは風呂の準備を始め、洋服を衣装棚から出して広げた。
彼女が広げたドレスには、レースの袖があり、ボディスには小さな花の刺繍があった。
それにげんなりしながらも、アルタンは初めて口を開いた。

「ええと、着替える前にバロンに会うことはできませんか?」アルタンは尋ねた。
女性が寝巻きのまま男性に会う、という考え自体にメイドは驚いているようだった。
「残念ながら、バロン様は今朝早くアロリアの協議会へお出かけになりました。」
「これからしばらくあなたのお世話をさせていただく事になります。」
「バロン様からお手紙を預かっています。」
メイドはエプロンから封筒を出し、アルタンに渡した。
アルタンはすぐにそれを開けると、中身を読んだ。


「友へ
私はアロリア協議会のメンバー達との会議に出かける。
上手くいけば彼らは君の存在を認め、君は以前の立場を取り戻せるかもしれない。
ともかくはしばらくの間、君の存在は隠す必要があるだろう。
私の城から出ずに過ごし、目立たぬようにしてもらいたい。
悪い噂を抑えるため、失礼を承知で、君は僕の婚約者だということにした。
恐らく二週間以内には戻るだろう。
バロン」

アルタンはため息をついた。
バロンの意図は理解できたが、将軍から逃れるためとはいえ、来週までバロンの恋人であるかのように振舞うのは苦痛だった。
彼はベッドの上のフリルのピンクのドレスを再び見た。
二週間くらいすぐに過ぎるだろう、そうすれば協議会も彼を元の体に戻す方法を見つけ出すに違いない。
彼はメイドに頷くと、風呂のためにゆっくりと服を脱ぎ始めた。


次の週はとてもゆっくりと過ぎた。
彼はとても退屈していたが、メイドに薦められるままに女性的な暇つぶしを始めると、
いつの間にか花の柄をペチコートに縫う作業に熱中していた。

彼は乗馬に出かける夢を見た。それは男性的な欲求ではあったかも知れないが、
夢の中での彼は女性用の乗馬用上着を着て、サイドサドル(横乗りできる女性用の鞍)に乗っていた。
メイド達は、エラナは新しいドレスのために採寸をすべきだ、と主張し、
アルタンは気づくと下着姿でメジャーを持ったメイドの前にいた。

彼はしばしば自分がメイドの前で女を演じているのか、それとも自然に女として生活しているのかが分からなくなった。
男としての人生ははるか遠くへと行ってしまい、彼の夢であったかのようにすら思えた。
柔らかな絹のドレスとレースの下着に慣れてしまうと、皮の硬い鎧の感触を思い出すことは難しくなった。


メイド達はまた、とても話好きだった。
彼女たちは毎日のようにバロンとアルタンの関係を噂し、
アルタンの答えを求めた。
彼はバロンの情熱的なキスの話や、彼がいかにバロンが帰ってくるのかを心待ちにしているのか、
などといった話をでっち上げる必要があった。

次の週、アルタンは活発に洋服のデザイン作りに参加していて、どこを改良すべきかの提案すらしていた。
様々な服を着て、女たちと噂話に花を咲かせることは、これまでに考えもしなかった楽しみだった。
メイドは彼の髪を様々にアレンジし、化粧の技術を教えあった。
自分が男である、という事を丸一日考えてなかったことに気づいたとき、彼はかなりショックを受けた。

二週間目はあっという間に過ぎ去り、メイドがバロンの帰還を彼の部屋に知らせに来た。
アルタンは急いで美しい青のサテンのドレスを着て、ペチコートが許す限りの速度で階段を下りた。
バロンの前に立つと、彼は強くアルタンを抱きしめてキスをした。


「エラナ、とても君のことが恋しかった。」バロンは言った。
アルタンは突然の情熱的なキスに動転したが、
離れ離れになっていた婚約者との再開の場面では普通のことだ、とも思った。

バロンが彼を解放すると、彼の膝は小さく震え、息も上がっていた。
バロンはアルタンの赤くなった顔を見て微笑んだ。
「君は僕が覚えているよりずっと綺麗だ。」
アルタンが恥ずかしがる様子はバロンにとって素晴らしいものだった。

抱擁からやっと抜け出したアルタンは彼へと尋ねた。
「ねぇあなた、協議会はどうでした?」
バロンが首を振ると、使用人たちは静かにドアから出て行き、
彼はアルタンへと向き直った。

「失礼な事をしてすまない。彼らに信じさせるにはああするしかなかった。」
アルタンは首を振ったが、まだ頬は紅潮していた。


「悪いニュースだ。」バロンは続けた。
「アロリアの魔法使いによると、君にかけられた呪文は永遠に解くことができない。」
「残念ながら君が元の姿に戻ることは無い。」

アルタンは全身から力が抜けるのを感じた。
恐れていた事が現実になってしまった。
深呼吸をしようとしたが、コルセットによって阻まれた。
全てものが暗く、遠くなり、彼はバロンの腕の中へと倒れこんだ。
バロンは声を出して笑うのを止めることができなかった。
ここにいるのは王子アルタンではなく、ドレスに身を包み、可愛らしく気絶している女エラナだけだった。
ここまで女のような反応を示すとはバロンは予想してなかった。
彼は女王子を抱き上げ運ぶと、寝椅子に降ろした。


アルタンはゆっくりと目を覚ました。
彼は寝椅子に横たわっていて、バロンがそばにいた。

「何が起こった?」
彼は起き上がりながら弱々しくしく尋ねた。
「君は気絶していた。」
「君にとってとてもショックな事だったろう。僕にとっても残念だ。」バロンは答えた。
「どうすればいいんだろう?」
彼は呟いた。
バロンはこの時を待っていた。
今のアルタンなら、元の生活へ戻るためならなんでもするだろう。

「それでも、君は王族の唯一の生き残りだ。君はまだ我々の国を率いることができるかも知れない。」
「私が君を支持しよう。」

アルタンは頭を横に振った。
「ありがとう。しかし協議会は女の統治者は認めやしないだろう。たとえ彼女が以前男であったとしても」
と悲しげに答えた。


バロンはしばらく間を空けて言った。
「別の案も一応ある。」彼は言った。

「言ってくれ、これ以上悪い状況になんてならないだろう。」
「分かった、まず、君の言ったことは事実だろう。協議会は女に従うのを嫌がるだろうし、国民もそうだろう。」
「そこで、必要なのは君の前に立ち、政治を代行できる男だ。
君が信頼できる人なら誰でもいい、君は裏から彼に指示を出せばいい。」

アルタンは考えた。悪くない考えだったが、彼の周りに信頼できるような男はいるのだろうか。
誰かの裏切りによって彼は将軍との戦いに負けた。
裏切り者が協議会にいるはずなのだ、協議会の人間は信頼できない。

バロンはどうだろうか?
彼はアルタンを救い出してくれたし、彼の復権に協力してくれている。

「しかし、協議会はその男に従うのか?」
「統治者にはなんらかの形式的権限が必要だ。」
「協力な権限を持った王族がいなければ、国は小さな派閥に分かれてしまうだろう。」
「人々を纏める為に、その男には王族との繋がりが不可欠だ。」バロンは言った。


「私が最後の王族だ。王族に繋がりのある人物はもういない。」アルタンは混乱して言った。
「その通り、しかし居ないなら作ればいい。」
「アルタン、君がその男と結婚するんだ。」

「結婚?!」アルタンは叫んだ。
「冗談だろう?私は誰の妻になるつもりも無い。」
「分かっている。」バロンは答えた。
「当然それは名目上の物だ。結婚した相手は王族との繋がりを持てるし、君は再び国へと関与することができる。」
アルタンは頭を振った。
「分からない。考える時間が欲しい。」彼はゆっくり答えた。

「もちろん、君は好きなだけここに居てもいい。しかし、君の決断が遅れれば遅れるほど、
我らの国はばらばらになってしまう。」
「そうなれば元に戻すのは至難の業だ。君には国民の事を第一に考えて欲しい。」


あまりに急な話で、彼は考えがまとまらなかった。
「私はどうすればいいんだ?」
バロンはアルタンの大きな緑色の目を見ていった。
「私と結婚するんだ。」
「私は君の意見に従うし、君もしかるべき立場に据えよう。」
アルタンは未だに戸惑っていた。

「この国を復興させる事は君の王族としての義務だ。」バロンは言った。
「義務」という単語はアルタンの心に響いた。
あの日、国民へ対する義務のため、全てが始まった。
ここでそれを曲げる事はできない。

彼は言った。
「分かった。結婚しよう。」