うちの子WIKI

賢者の石の発見から数年後、急速に蒸気機関が小型化されていくなかで、人間の身体に機関を埋め込む、あるいは肉体と機関を置換する、という発想が生まれた。
元々は事故や生来の障害、戦争等で損なわれた身体の機能を補うための技術であり、医術に錬金術を併用することで、手術の成功率を高め、術後の後遺症を大幅に減らす事も可能となった。
そうする内に、この技術をを失った機能の回復ではなく、より優れた機能を獲得するために利用しようとする動きが出てくる。
銃弾を弾く装甲を、鉄棒を捻じ曲げる豪腕を、馬よりも早い俊足を、外付けの蒸気機関装備に頼るのではなく、自らの身体に付与しようとしたのだ。
しかしいかにエーテルと錬金術をもってしても、外燃機関である蒸気機関…特に蒸気炉を人体に収まるサイズにすることは困難だった。
そのため、兵器としての肉体の機械化は、夢物語に終わる――筈だった。
しかしある魔術師が、人間の血液に宿るエーテルを体内で燃焼させ、沸騰した血を蒸気と変えて、肉体に内蔵した蒸気機関を駆動させるという新理論を提唱。
人体をそのまま蒸気炉に見立てるというこの狂気の技術は、当然表沙汰に出来るものでは無かったが……一部の裏社会の蒸気技師達の手により、それは密かに実用化された。
肉体の大部分の機械化に加え、魔術の保護があるとはいえ、肉体を焼き血液を沸騰させるエーテルの灼熱に耐えられる者は極僅かしかいない。
しかしその"極僅か"になることさえできれば。その者は生身で完全武装の蒸気騎士にも匹敵する力を有する鋼の超人に生まれ変わる事もできるだろう。
生存率１０％以下とも言われる生存への狭き門を、潜り抜けることが出来ればの話だが。
◆簡単に言うと：蒸気機関を内蔵したサイボーグ。

愚者の黄金を用いた特殊な銃弾を用いる、統一帝国の警察機構に最も多い職業。
愚者の黄金は、エーテルを蓄積、放出するバッテリーとして、既に世界の蒸気機関の大半に使用されていたが、これを更に錬成した特殊な銃弾、"魔弾"と呼ばれる特殊な弾頭を作り上げそれを用いる。
あらかじめエーテルを蓄積された魔弾は、撃ち出されると薬莢や弾丸そのものに刻まれた魔術式を起動させ、着弾と同時に様々な魔術を発動させる。
引き金を引くだけで、誰もが魔法使いのように様々な魔術を行使できるようになるこの新技術は、対象をスタンさせたりするスタンバレットなどとして用いられ捕縛に重宝された。
しかし魔弾は通常弾より脆くデリケートなため、火薬の爆発で銃弾を射出する通常の銃器では暴発の危険があることが判明。
現在は蒸気の圧力で弾を撃ち出す、魔弾専用の蒸気銃（スチームガン）が製造され、これを所持する者は黄金銃士と呼ばれる。
またこれに倣い、正規の兵士でない者でも、蒸気銃を持つ魔弾の使い手を、黄金銃士と総称する場合もある。
◆簡単に言うと：魔法を撃ち出すガンナー。

蒸気機関の力で駆動する甲冑、動甲冑は、蒸気機関を利用した兵器の中でも特に歴史が古い存在である。
錬金術で作られた、生身では到底動けない程に分厚く重いエーテル鋼の重層鎧。
それに蒸気機関を搭載し、着用者の動きに合わせて鎧自体を駆動させるこの兵器は、かつては防御力だけが取り得の鈍重な歩兵と考えられていた。
しかし蒸気機関と錬金術の急速な発展に伴い、動甲冑の性能も大幅に向上。
鎧の重量自体も軽量化され（それでも蒸気機関無しでは歩く事もできないが）、それを駆動させる蒸気機関の出力も上がったことで、動甲冑を纏う者、通称蒸気騎士は防御力のみならず機動力、膂力においても、生身の人間を遥かに上回る性能を発揮できるようになったのだ。
後に戦車や機神といった新型兵器が現れるようになってからも、蒸気騎士は人間大のサイズというそれらには無い利点を活かし、強力な歩兵としてだけでなく要人警護、破壊工作など様々な局面で運用され続けている。
現在は軍隊だけでなく各国の警察組織等にも配備が進んでおり、輝くエーテル鋼の鎧に身を包んだ蒸気騎士の姿は、子供達の憧れの的になっている。
これには動甲冑がその構造の複雑さから量産や整備体制がなかなか整わなかったことから、蒸気騎士となれる者が一部のエリートだけだったことにも由来する。
故にこそ彼らは"騎士"と呼ばれ、その士気や練度は総じて高い。
◆簡単に言うと：パワードスーツに身を包む戦士。

急速な発展を遂げた蒸気機関の恩恵は、それまで馬車や帆船が主流だった交通にも影響を与えた。
蒸気船や蒸気機関車の発明から僅か数年で大陸横断鉄道が作られ、大陸の物流はそれまでと比べ物にならないほど活発になった。
それと共に作り出されたのが、戦闘を目的に作られた騎乗兵器、新時代の騎士たちの馬となる兵器達だった。
まず強固な装甲と大砲による火力を備えた蒸気戦車（スチームタンク）が作られ、そのノウハウと動甲冑の技術、更に錬金術や魔術も組み合わせ、巨大人型兵器、蒸気機神（スチームギガント）が作成された。
蒸気機神はその巨体から来る圧倒的な馬力のみならず、搭乗者のエーテルと感応し、その意思を直接操縦に反映するという機能を持つ。
搭乗者が自らの肉体のように機体を操ることで、戦車を遥かに超える、等身大の蒸気騎士並の運動性能を獲得した蒸気機神の力は、単機で一軍にも匹敵するという。
人の精神と繋がる性質上、機神は人型を大きく外れた形状にできず、そうでなくとも戦車や機神といった大型兵器は製造と整備に多大なコストを必要とする。
個人で運用するには、少々手厳しいものがあり、専ら民間では蒸気戦車や、装甲車、戦闘用車両などが用いられるのが常である。
◆簡単に言うと：戦車や巨大ロボ、バイクといったヴィークル乗り。

現代の蒸気機関文明を支える立役者。それが蒸気技師達である。
錬金術師はエーテルから様々な素材を作り出すことは出来ても、それを加工する技術は持っていない。
彼らはエーテルをより効率的に燃焼させ、エーテルからなる素材の性能を検証して組み合わせていく。
蒸気機関の更なる改良と新たな可能性を追求する彼らがいなければ、蒸気機関はここまで発展する事はなかっただろう。
彼らの中には、蒸気機関の発展のためなら、人の命を機関の部品程度にしか考えていない人種も存在する。
帝国軍に属してその力を振舞うものも多いが、最も多いのは、特定の組織に所属することなく、自分の工房に篭ってひたすら研究に明け暮れるような技師である。
こうした者達でも、蒸気技師同士の横のつながりはあるものだが、彼らの多くは自分の技術を秘技として秘匿したがり、公に開示するタイプの技師は少数派である。
◆簡単に言うと：蒸気機関の扱いに長けたメカニック。

古来より世界に蔓延る神秘、奇跡、怪奇現象。それらオカルトを解明しようとする者達の存在は絶えた事が無い。
それは産業革命の光が世界を照らす現代でも変わらず、隠秘学と呼ばれ研究され続け、それを学ぶものを隠秘学者と呼ぶ。
そして彼ら隠秘学者の中には、研究の成果か生来の素養か、机上の理論を越えた本物の「魔術」を行使する者、すなわち魔術師が存在する。
魔術師の存在は太古から伝承として確認されていたが、彼らが操る魔術の理論は解明されていなかった。
ただ定められた呪文や魔法陣、儀式の手順（多くは"魔術式"と呼ばれる）を踏む事で、様々な超常現象を引き起こす事だけが、経験則として分かっていた。
しかし魔術師の体系の一つ、錬金術師がエーテルを発見したことから、恐らくは他系統の魔術も、エーテルに干渉する事で様々な現象を引き起こしているのだ、と現在では考えられている。
即ち、錬金術師がエーテルを様々な物質に変化させるように、魔術師は己のエーテルを「現象」そのものに変化させるという。
例えばエーテルに「燃焼」という現象を付加すれば炎が生まれ。「凍結」という現象を付加すれば大気中の水分を氷に変えることもできる。
高位の魔術師であればより抽象的、概念的な現象を引き起こすことも可能で、大魔術師となれば杖の一振りで人に死を与え、星すら落とすという。
その存在は錬金術に比べメジャーとは言い難いもの、彼らの多くは魔術結社や研究会に所属し、互いの知識を交換し、自らの魔術の研鑽を行っている。
◆簡単に言うと：魔法使い。