『光の女神シャイン』

プロローグ

鳴りやまない警報音、襲い来る強烈なG、そして炎と煙。
墜落して行く防衛軍の万能型VTOL機ビートルのコックピットで真は意識の薄れていく中、もう死ぬのだと悟った。

―だが、その時である。彼の体は赤くあたたかな光を帯び、赤く輝く光の玉に包みこまれていた。

そして、その赤い玉の中で優しげな声を聞いたような気がした……。

  • 数時間前 地球防衛機構 極東支部 東京基地

 「物体は大気圏外より北極圏に侵入、南下をつづけています」

 北太平洋全域が表示されている大型モニターの前で森田涼花はそう告げた。
 彼女がその飛翔物体に関しての情報を伝えている間にも、その光点はちょうどアラスカの北の端の上空からベーリング海峡、
そしてカムチャツカ半島の方へと向かおうとしている。

 「これでこの飛翔体に関して、こっちが正式に受け持つことになるな。 カムチャツカの方の特捜隊はどうしている?」
 防衛機構特別捜査隊東京チームで隊長を務める影丸隼人は部下である涼花にそう尋ねる。

 「はい、カムチャツカ基地もこちらと同様飛翔体に関して監視と情報収集に努めているとのことです、ただし……」
 「何だ?」
 「カムチャツカ基地周辺が悪天候で偵察の為の航空機などは出せないと……」
 「そうか、ではこれに関しては俺達で引き受けよう。そう向こうに伝えておいてくれ」

 影丸が周りにそう命じ、更に言葉を続ける。

 「こうしている間にもこの飛行物体はどんどん我々の方へと向かってきている。 このままこっちに来るまで待っているというわけには行かないからな、すぐにビートルの発信準備に入ってくれ。 涼花それに星野」
 「はい!」
 「必要な対応を頼む」
 「了解」

 鈴村真、年齢19歳。
  防衛機構のアカデミーを卒業し、親代わりであった星野亜希が副隊長を務めるこの特捜隊に配属されて一年半足らずのまだまだ新米の隊員だが、持ち前の正義感とその小柄な体格からは思いもよらないほどの度胸で、隊長である影丸は勿論、先輩である山木大介や梶拓馬からも一目置かれる存在である。
 隊員一人一人に支給されている携帯端末のモニター画面の情報に目をやりながら、彼はビートルの地下格納庫へと下りる大型エレベーターに乗っていた。

 「今現在の状況はこの通りだ。なにか新しい動きがあればすぐこちらに送る」
 「了解しました。隊長」
 「いいか、くれぐれも深追いはするな。それがどんな物であってもだ」
 「えぇ」

 ちょうど、その会話を終えたのと同時にガクンッという少し大きめの振動と共にエレベーターが目的の場所へとたどり着くと、ガラガラと大きな音を立て、分厚い鉄の扉が開いた。
 地下とは思えないほどに広々とした空間の中心にこれから真が乗るビートルΔが発進の準備を終え、待機していた。
 そこで、真の存在に気付いた職人気質な整備班長に急かされるように真はコックピットへと乗り込んだ。

 「チェック完了!」
 (よしっ!行くぞ)

 準備完了のサインを伝え、ビートルはゆっくりと動き出す。まず向かうのは地下から地上、そして上空へとまっすぐ伸びるカタパルト。そして、そこから一気に大空へと駆け上がる。

  そしてそれと時を同じくして、その青い光の玉を猛スピードで追いかける赤い光の玉が地球へ向かっていた……

ウルトラ作戦第一号

  • 7月中旬 午後 関東地方西部 竜が森湖上空

 日が落ち、やや涼しさが増してきた湖畔の上空で青い球体と航空機、そしてそれをかばおうと両者に割り込むように前に出た赤い球体が空中で激しくぶつかり合い、そして大きな閃光とともに激しい衝撃波が湖畔へと襲いかかる。
 その中から青い球だけがいち早く抜け出ると、湖へと着水し潜っていった。

「おい! 飛行機と隕石が衝突したぞ!」
 丁度、連休という事もあってキャンプに訪れていたグループの一人が湖面を指差す。
「行くぞ!」
 飛行機のパイロットを救出すべく、キャンパーは飛行機の墜落した所へと向かう事にした。

「おい、あそこだ……」
 キャンパー達から連絡を受けた地元の警官とも合流し、キャンパーはビートルの墜落した地点へとたどり着いた。
「あのマーク……、確か科特隊の……」
 決死の思いで飛行機を安全な所へ不時着しようと試みたらしいパイロットが機体の残骸の陰に倒れている。
「おい、あそこに倒れてるぞ……!」
 キャンパー達がパイロットの元へと駆け寄ろうとした瞬間だった。
「うわっ……!」
 上空から現れた赤い玉が強烈な光とともにパイロットの体を持ち上げ、そしてどこかへと連れ去ってしまった。


 同じころ、科特隊の指令室では。
「鈴村隊員、応答せよ!鈴村隊員!応答して……!」

 影山の命令で、通信担当を務める森田涼花が必死に真の無線に向け、必死に呼びかける。
「……はい、こちら特捜隊本部。……はい、了解しました」
「どうした、涼花?」
「隊長、埼玉県警から青い発光体と航空機が衝突したと連絡がありました」
「場所は?」
「埼玉県北西部……、龍が森湖付近の上空だそうです」
「丁度、ビートルがロストした地点と重なるな……他には?」
「それとは別の赤い玉が付近に降下してくるのが目撃されたそうです」
「よし、そっちも調査だ。全員、出動準備!」
「はい!」

 影山は涼花に引き続き真との更新を試みるよう命じると、射撃の名手山木大介、チームのアイディアマン梶拓馬、そして副隊長の星野亜希と共には現場へと急行した。

  • 数時間後

「どうやら、あそこに真のビートルが……」
 墜落地点の上空で哨戒を続けるビートルから、影山たちは様子をうかがっていた。
「あの損傷具合ではやはり……」
「いや。真に限ってそんな事は」
「あぁ、とにかくもう少し降りてみよう」

 既に日の暮れた湖畔にビートルがゆっくりと着陸し、影山たちは墜落現場へと向かう、その途中で。
「おい、あそこに人が倒れてるぞ!」
「おい大丈夫か!」
 影山たちが出あったのは先ほど墜落地点に近づこうとして気を失ってしまったキャンパー達であった。
 倒れている彼らに影山たちは駆け寄りると、体を揺すって起こそうとする。
「うぅ……、確か俺達は……」
「おい何があったんだ!」
「科特隊の方ですか……、実はあのビートルのパイロットが……」
「鈴村が!? おいどうしたっていうんだ!?」
「赤い玉の……、中に……」
 そういってキャンパーが墜落地点の上空を指差した。
「赤い玉だって……?」
「とにかく、色々と調べる事がありそうね……」
「あぁ……」
2 
  • 翌朝

「あれ……っ……、俺は……確か……?」

 小鳥のさえずりと自分へ呼びかけるようなさっきも聞いたような優しげな声、そしてまぶしい朝の日差しを覆い隠した影から何か水が滴り落ちる感覚で真は目を覚ました。
(ん……、そうか俺助かったのか……、あれっ……誰かこっちに来るみたいだ……)
「よかったぁ〜、呼吸も脈拍もあったからこのまま起きなかったらどうしようかとぉ……」
「そうか……、君がたすけて……!?」

たゆんっ!

真が声の主の方へ目線を向けると、目の前にあったのは真っ赤なビキニ水着に包まれ、水の滴る瑞々しく豊かなバストであった。
「うわっ!」
「ど……、どうかしました?」

顔を少し赤らめて、自らから目をそらした真に黒髪の少女が心配げに問いかける。

「いや……、もしかして俺を助けてくれたの?」
「えぇ……」
「ありがとう……、それで君に聞きたい事があるんだけど、良いかな?」
「はい……?」
 黒髪の少女のくりっと丸く凛々しい瞳と目が合った。
(随分ときれいな瞳だなぁ……)
「いや……、やっぱりまず着替えてくれませんか?」
「えっ…、はい!着替えてきますね」
 そういうと黒髪の少女は真の視界から木陰の方へと隠れると着替えを始めた。
「墜落したかと思ったら今度は一体なんなんだよ……、今日は……」
 すこし脱力した真はなんだか今日はついてないのかついているのだろうかと少し考えつつ、自身の後ろの物陰で着替えている少女の事を考えていた。
「あの娘、俺と同じくらいかなぁ……、良いよなぁスタイル良くって。俺なんか背も小さいし、亜希さんからは未だに可愛い子供扱いされているというか……、この前なんてふざけて女装なんてさせられたし……、あ〜あ……」
そんな愚痴と共に溜息をつくと、何かをふと思い出した。
「おっと、そうだ本部に連絡しないと……! こちら鈴村、本部応答してください!」
「真君!? 良かった……!」
「森田隊員? 隊長たちは?」
「隊長、副隊長はそちらに向かっているはずですよ」
「……そう、了解」
「お待たせしました」

 そう言って彼女は木陰から再び真の前に現れた。
「これで良いでしょうか?」

 まだ湿り気を帯びた黒髪をサイドポニーに結い、服装もさっきの大胆なビキニ水着から少女らしさを意識しながらも、彼女は動きやすさを重視したのかアウトドアな服装に着替えていた。

「うん、似合って……じゃなかった」
「?」
「俺が聞きたいのは、青い光の事なんだけど……」
「あぁ……、その事でしたら……」
「何か知ってるの!?」
 その時、二人の頭上よりジェットエンジンの音と共にゆっくりとNEOビートルが湖畔へと着陸し、タラップから影山たちが真の元へと駆け寄った。
「鈴村!生きてたのか!」
「真ちゃん……、良かった……!」
「隊長、それに亜希さん……、すいません心配かけたみたいで」
「そちらの娘さんは?」
「えっと……、どうやら俺を助けてくれたみたいで……」
「柚本紗希と申します」
紗希は特捜隊の面々にそう名乗ると、ぺこりと丁寧に頭を下げた。

「わたしは星野亜希、特捜隊副隊長……と、この真の保護者役ってところね」
「ちょっと!亜希さん!」
「ははは、俺は影山。この隊の隊長だ」
そう言って影山が紗希に手を差し出した。
「オレは山木。そしてこっちが……」
「梶拓馬と申します。どうぞ、よろしく」

隊長に続いて大柄な山木、そして理知的な雰囲気の梶が紗希へ手を差し出した。

「それで紗希さんはあの青い玉についてもなんか知ってるみたいで……」
「そうか! 何か知ってるのか?」
「えぇ……、実はあの青い玉なんですが、先程私が潜って確認しようとしたのですが……」
「な、なんだって!?」
 紗希の思わぬ行動に特捜隊といえども驚かされた。
「ずいぶんと大胆な行動に出たな……、それでどうでした?」
「深いのと水が思いのほか濁っていてよく解らなかったのですが、何か湖の底に青い光と目の様な物が見えたような……」
「それなら、俺もさっき青い玉を追っていた時に見えたような気がする。やっぱり湖の中に……」
「そうです、アレは怪獣です!」
「か、怪獣だと!」
「はい、ですからすぐに調査と攻撃を……」
「そ、そんな急に言われてもだな……」
 少し戸惑いを浮かべた山木達に対し、真は紗希に同調する。
「俺はこの人の言う事を信じる。だって、この人は俺を助けてくれたんだ。それに嘘を言ってるようにも見えない」

「鈴村がそういうなら……」
「えぇ、少し調査して見る価値はありそうね……、それにまだ湖の水中調査はまだだったわね」

 そうして、すぐさま湖底の調査を行う事となった。
「どう?反応の方は?」

 亜希が水中探査機のモニターを覗き込む。
「確かに湖底に何かいるようではありますが、これが怪獣だと断言はまだ……」
「これね。なら直接見てくるしかないわね。捜索用でシー・ドルフィンは積んできたわよね。それを湖に下ろして」
 そういうと、NEOビートルの格納ハッチからビートルと同じく赤と銀色に塗り分けられた小型潜航艇シー・ドルフィンが姿を現すと、ゆっくりと湖面へと下ろされた。
「準備完了です!」

 梶、そして山木がそう隊長へと報告してきた。
「さて、作戦の方だが。亜希、もう何か閃いたんだろ?」

 影山が亜希に声をかける。
「えぇ、まず隊を二つに分けるわ。シー・ドルフィンに乗るのは私と……紗希ちゃん!」
「えぇっ!?」

 亜希の意外な言葉に一同が驚いた。
「一体どうして……!? 柚本さんは民間人ですよ!」
「この中で実際に青い光の玉について知ってたのは紗希ちゃんだけ、それに安全ならこの私が絶対に保障するわ。そ・れ・に……」

 大人っぽい美貌の亜希の表情が少し愛らしくおどけて見せる。
「それに……?」
「狭いシー・ドルフィンの中で男女2人っきりなんて、この私が許しません!」
「おいおい……」

 そう言い切られ、男性陣は亜希の悪い癖が出たなぁ……なんて思いながらも特捜隊の一同はなんとなく無理矢理に納得させられてしまった。
「そういう事なんだけど、紗希ちゃん、良いかしら?」
「はい、わかりました!」
「じゃあ、のこるメンバーはビートルで上空待機。何かあったらお願いね」
「あぁ、地上の事は俺たちに任せろ」
 その影山の言葉と共に総員持ち場へと向かった。

 確かに亜希の言った通り、シー・ドルフィンの内部はただでさえ小さい船体にさまざまな機器が詰め込まれているせいか狭苦しかった。
外部の様子を知るのには座席の横にある小窓とシー・ドルフィンの鼻先についたカメラモニターからの映像かレーダーが頼りであった。

〈こちらビートル、上空より監視を開始します〉
「了解、こっちも探査開始するわ。紗希ちゃんシートベルトしっかりつけた?」
「はい」
「なら、開始ね」

 その亜希の言葉と共にシー・ドルフィンは潜航を開始する。すぐさま小窓の外はあまり何も見えなくなったが、その代わりに目の前のモニターに外の様子が映し出された。
「ねぇ、紗希ちゃん?」
「はい?」

 亜希は隣に座る紗希の少し緊張した感じをほぐそうと声をかけた。
「さっき自分で調べに潜って調べようとしたそうだけど……」
「えぇ、丁度この辺までは潜ったかと……」
 そう言って紗希は水深のメーターを指し示した。
「素潜りで?」
「はい……?」
「そう……、随分と潜りに自信あるのね。ここって水深60メートルは越えてるのよ。オリンピック選手も顔負けじゃない」
「紗希ちゃんってホント面白いわね、あなた。このままウチに来ない?」
 亜希は顔を紗希へとぐっと近付けると、秋の少し大人な雰囲気の漂う色香に少し紗希は気押された。

「えっ……?」
「ふふっ、冗談よ。半分は」
 そんなやり取りをしているうちにシー・ドルフィンは湖底近くへと近づく、するとモニター越しに水中に何か青い煙の様な物が立ち上っているのを見つけた。
「亜希さん、近いですよ。……あっ、あれ!」

 紗希がモニターを指差した先に半透明な青い膜のカプセルに包まれた明滅する物体の存在を確認した。
「あれが……」
「至急、ここで退治すべきです!でないと……っ!」

 先程までの和やか雰囲気から一変して、紗希の表情が真剣な物となって亜希にそう迫る。
「ちょっと紗希ちゃん、落ち着いて」
 そう言って亜希は紗希を制した。
「こちら、星野。隊長、物体を発見しました。どうやら巨大生物のようです」

〈そうか、亜希。よし、作戦を第二段階へと移行する。水中と水上で怪獣を撃退する〉
「了解!」
「第二段階って……?」
「第一段階は探索、そして第二段階が撃退よ。

 そう言って亜希は怪獣に悟られないよう、慎重にスクリューを回しながら怪獣の視界の背後へと回りこむと、魚雷発射管のトリガーを引くと二発の魚雷が怪獣へ向け一直線に放たれた。
「何かかが、湖面に出てきます!」

 上空のビートルで操縦桿を握る梶、そして真が声を上げた。
水面に黒い影が浮かび、そして巨大な水しぶきがあがる。
「あれが!」

 水しぶきの中から黒い岩山の様な体の怪獣がはっきりとその姿を特捜隊の面々の前に姿を現す。
「あいつを湖から絶対に出すな。こっちも攻撃開始!」
「了解!」

 ビートルは即座に怪獣へ向けて、ミサイルやバルカン砲で攻撃を開始すると怪獣は即座に反転し湖底へと逃げようとする。
「亜希!そっちへ逃げたぞ!」
「!?」

 亜希に連絡を入れる影山だったが、それよりも早く怪獣は水中へと潜ると追跡してきたシー・ドルフィンと思いがけず向き合う形になってしまった。
「まずいっ!亜希さん!」
「わかってるわ……!」

 舵を切ってかわす間もなくシー・ドルフィンは怪獣の口に捕えられ……
「あっ……!見てください、隊長!」
「亜希……!」

 再び地上へ浮上してきた怪獣の口にシー・ドルフィンが咥えられていた。
「亜希……!大丈夫か?」
「えぇ、今のところは……紗希ちゃんの方も無事よ」
「しかし、このままじゃ攻撃が……」
「わたしに構わず、攻撃をお願いします!」
 影山と亜希の会話に紗希が割り込む。
「紗希ちゃん……、わかったわ。隊長、こっちには構わず攻撃を。紗希ちゃんの事は私が命に代えても保障するわ」
「わかった……、背後に攻撃を集中させろ!」

 ビートルが背後に回り込み、攻撃を再開させる。
怪獣の背中に火花と爆炎が飛び、怪獣は思わず大きく口を開けシー・ドルフィンを放り投げてしまった。
「亜希!」
「星野副隊長!」
 NEOビートルから必死にシー・ドルフィンに呼びかけるも亜希たちからの応答は無く、ノイズのみがスピーカーから聞こえるだけであった。
  • 湖畔

「亜希さん……!亜希さん……!」

 シー・ドルフィンの頑丈な船体は放り投げ捨てられたダメージにも耐え、外からは目立った破損は見られなかったが、一方の内部では大きな衝撃で亜希はシートにもたれかかったまま気を失っていた。
亜希に必死に呼びかける紗希がちらりと船外モニターそして小窓の方へと目をやるとそこには地上へと上陸しようとする怪獣と上空からそれを阻止しようとするビートルとの激しい戦いが繰り広げられていた。

「よし……っ!こうなったらわたしが……」

 何かを決心した紗希は亜希をシートから開放して、ゆっくりと抱え上げると一人ハッチを開け、外へと出ると亜希を木陰であおむけにして休ませた。
そして、一度確認するようにまわりを見渡すと胸のポケットからペンライト状のスティックを取り出し、掲げるとそのスティックのスイッチを入れる。
すると、その瞬間。紗希の体は眩い光のビームの渦の中へ包みこまれ……。

「しゅわっー!」
そして、その光の渦の中から光り輝く女性型の巨人が地上に姿を現した。

 その巨人の姿はまるで天使か女神が現出したような美しい美貌と健康的なスタイルの完璧なプロポーションで、赤いビキニスーツの様な薄布とそれとは対照的な白銀に輝くボディアーマーのみが彼女を包む。

 サイドポニーに結われた桜色に輝く髪が風になびき、優しさと凛々しさを持つ整った顔立ちの中に澄んだ瞳が凛々しく、そして瑞々しくハリツヤのある白くきめ細かさを持つ柔肌、美しく丸みを帯びる弾力を持つバストからキュッと引き締まったウエスト、そして形のよいヒップという理想的なSラインを描いている。
そして胸元ではハート型の蒼いクリスタルが神秘的な輝きを放ち、「ウルトラレディ・シャイン」という名前通りの輝きにその女神は満ちていた。

 凛と仁王立ちした光の女神を前にしても黒く刺々しい容姿の宇宙怪獣はその邪悪な目と牙を剥き出しにして威嚇する。

 だが、そんな怪獣に光の女神は臆することなく一歩足を怪獣へと踏み出し。
「たぁっ!」
 ぐっと距離を詰めたかと思うと、一発のパンチを怪獣へとお見舞いすると、どんどんと湖へと押し返していく。

「あの巨人はいったい……?」
 上空のビートルから影山、そして真たち隊員は巨体同士が湖でぶつかり合う光景を眺めながら、その女神の可憐さに思わず見とれてしまっていた。
「どうやら、あの“女神”の方は我々の味方になってくれているようですが……」
「なるほど、そのようだな」
 その中で影山と梶は冷静にこの状況を分析している

「き、キレイだ……」
 操縦桿を握る真は思わず、そう呟いた。

「あの巨人はいったい……?」
 両者の激しい戦いによって波立つ水音と地響きでようやく目が覚めた亜希もまたその戦いを見守っていた。
「こちら、星野。応答願います」
「おぉ、亜希か。大丈夫だったか?」
 影山は亜希から通信が返ってきた事に安堵した。

「えぇ……、ところで隊長、あの巨人は一体……?」
「こちらにもまだ詳しい事はわからない。だが、どうやら“彼女”は我々に味方してくれているという事だ。……ところで亜希、一緒に乗っていた一般人の娘はどうした?」
「あっ…… そういえば…… では、私は柚本さんを捜します。隊長は作戦の続行を」
「了解。そっちも気をつけてくれ」
「はい!」
「……あの娘ったら、助けを呼びに行ったのかしら? それにしても“あの娘”も紗希ちゃんに負けず劣らずのナイスバディじゃない……」
 亜希はシャインの美貌を見て、ニヤリとしてそう呟いた。
 怪獣相手にシャインはパンチそしてキックで圧倒していく。その戦いぶりはしなやかな美しさと意外なほどの豪快さであった。

「せいっ!」
 怪獣の巨体を首投げで投げ飛ばすと、怪獣の体へと飛び移り馬乗りになると、暴れる怪獣を押さえつけマウントポジションからパンチとチョップを振りおろす。
だが、怪獣もそんなシャインの攻撃にひるまず、振り落とそうとして体を大きく揺すって暴れた。

「きゃあっ!」

 怪獣が大きく体を揺すった瞬間であった。シャインの体は振り落とされるように湖に落とされ、更に喰らいつこうとするように覆いかぶさり、組みついてきた。

「うぐぐ……っ……!」
 怪獣はシャインの体を上空から覆い隠すように被さると、更に興奮したようにしっぽを上空へ向けて振り上げた。そして、一つ咆哮を上げるとその胸元あたりを目がけて牙をむき出しに迫った。

「何の……っ!これぐらい……」
 迫りくる怪獣の腕をつかみ取ったシャインは半ば湖の上でもつれ合い転がりながら強引に引き倒した。

 「はぁ……、はぁ……っ!」
 シャインは少し息を荒立たせながらも起き上がった。
その身体からは水が流れ落ち、よりセクシーさを際立たせていた。

 そして引き倒れされたままも怪獣の体を引き上げるようにつかみ、思いっきり放り投げ。更に尻尾を掴んでグイグイと引っ張り上げていく。

 その時。

<ピコンピコンピコン……>
胸元のクリスタルが青から赤へと変化し、そして点滅を始めた。

 (ここまでエネルギーの消費が早いなんて……!)
 赤く点滅を始めたクリスタルに目をやったシャインの多少の動揺が浮かんだ。
そして、その隙をついた怪獣が一気に尻尾を大きく動かし振り上げると弾き飛ばされ、後ろへとよろめき、そしてドシーンと尻もちを付いた。

「いたた……っ!」

 シャインは少しよろめきながら、すぐに立ち上がろうとする。
だが、先程よりも息は荒くその豊かな胸を上下させている。 

「どうしたんだ……、一体?」
「もしかすると、あの赤く点滅しているのは何かの危険を知らせる信号なのではないでしょうか?」
梶は冷静にそう分析して見せた。
「信号?」
「はい、活動限界を知らせる為の一種のサインなのかもしれません……、例えば交通信号の赤だったり、携帯端末や電話のバッテリー切れを知らせる機能の様な」

 NEOビートルから見守っている隊員達がそんなやり取りをしている間。怪獣は先ほどまでのお返しとばかりにシャインの体に尻尾を鞭のように使って打ちすえ、二回三回と足蹴にすると、胸元に足を乗せて点滅しているクリスタルを踏みつけだした。
「ぐぁああっ……っ……!」
怪獣の足が胸元ごと踏みつけ押しつぶすごとに苦しげな声と共に体をじたばたさせる。
そして見下ろした怪獣の体からバチバチと静電気の様な光を帯び始めた。

(まずい……! この距離じゃ……!)
それはこの怪獣の必殺技とも言うべき青い破壊光線。

「させるかっ!」
 思わず真は怪獣へと向けてミサイルを放っていた。

「おい、鈴村……っ! よし、我々も続くぞ」
そしてそれに続けと怪獣へとNEOビートルから援護の攻撃が放たれ、怪獣の意識をシャインからこちらへと向けさせた。

(よしっ、チャンス!)

 この機を逃さず、シャインは力を振り絞り怪獣の鳩尾あたりと思しき場所を蹴り飛ばしてようやく怪獣から逃れることに成功する。
そして、脱出を許し悔しがるような怪獣から放たれた青い熱線をシャインは体をそらしてかわした。

(特捜隊の方達だって戦ってる……だから、わたしも!)
特捜隊からの援護がシャインを奮い立たせ、勇気づけていてた。

 シャインは宙へと飛びあがったかと思うと、全身を使ったボディプレスで押し倒すと、脚そして尻尾を掴み上げて、ぐるぐるとハンマー投げのように激しい回転スイングを始めた。

「うああああああああああああああっ!」

 そして、一気に身体から手を離し、放り投げる。
更に今度は高々と抱え上げてから投げ落とされるとブクブクと湖底深くへ沈んでいった。

「はぁ……、はぁ……」

 満身創痍といった感じでシャインが息を切らし、立っている。

「勝ったのでしょうか?」
「いや……まだだ。ほら湖をよく見ろ」
影山の指差した先の湖面が青白く発光を始め、あの青い光の玉が浮上してきた。
「あの青い玉、まだ逃げるつもりか、あの怪獣は……」

「はぁ……、はぁ……っ……逃がさない……っ!」
 それを見てシャインは両腕をLの字に組むと、シャインの残りエネルギーの全てがその両腕へと向けて集束を始めた。

「スペリオル光線……っ!シュート!!」

 その瞬間、シャインの両腕かピンク色の光線が一直線に青い玉ごと怪獣を撃ち貫き、ガラス玉のように瞬時に爆発粉砕させた。
閃光そして爆風が周囲に広がる。その様子を隊員達は息をのんで見下ろしていた。

「すごい威力だ……!」
「……おそらくウチで実用化しているビームガン、いや試験段階のものですら及ばないレベルかと……」

 シャインは隊員達の方へ笑顔で軽くウインクを飛ばすと、空を見上げ飛び上がると、遥か空の彼方へと飛び去っていった。
その様子をただ隊員達は見えなくなるまで、その方角をずっと見上げていた……。

「なんだったんだ、あの光の巨人は……」

「おそらく、あの怪獣を倒しに来たのでしょう」
「また、今回のように怪獣が現れたら、また来てくれるのかな?」
「来てくれると信じたいですね……」
「よし、着陸するぞ」
「ラジャー!」


 その頃、紗希を探していた亜希も同様にシャインが飛び去った方を見上げていた。
「あの巨人。……いや、あの女神は一体何だったのかしら」
「……ウルトラレディシャインっていうのはどうでしょう? 亜希さん」

 突然の物音とともに背後に現れた存在に亜希は突然背後から声をかけられ、ハッとなった。
「誰……!? ……って、あなたは」

 振り返るとそこにいたのは紗希であった。
「亜希さん、けがの方は大丈夫ですか?」
「どうやら、助けを呼びに行ってくれていたようね。大丈夫よ、だって私は特捜隊の副隊長よ。むしろ、安全なところまで運んで、助けを呼びに行ってくれてたのに勝手に動いてしまって申し訳ないわね」

「それにしても……さっき話した事の続きなんだけど……」
 亜希の表情が大げさっぽく感心するような表情になり、そして亜希は何かを閃いたように紗希へ話を続けた。

「ねぇ、紗希ちゃん!」
「はい!?」

 困惑する紗希と対照的に亜希は話を続けた。

「えっと…… そうね。紗希ちゃん!あなた、このまま特捜隊に入る気は無いかしら!」

「えっ……!? えぇええええ!」
 亜希からの唐突な提案に紗希は突然驚いた表情になった。
「えっと……? それって確か特捜隊に来ないかって事ですよね……、そんな急には……」
「えぇ、だって私は本気って言ったじゃない、大丈夫よ。そこは副隊長権限で何とかしてするわ。なんなら住む所の世話までしてあげるわ! いいわよ〜、特捜隊の隊員寮は大浴場からスポーツジムまで完備で快適な生活を保障するわ。大丈夫、あなたの様な行動力と勇気のある子なら合格間違い無しよ!」
「……わかりました。私にできる事があるのなら……柚本紗希、入隊試験受けさせていただきます!」
そう、亜希の前で言い切った紗希の表情はぐっと引き締まり真剣そのものだった。

「おーい!」
「副隊長!」
 そんな紗希の決意のほぼ同時のタイミングで隊長や森田ら隊員達がようやく二人の元へ駆け寄ってきた。
「二人とも無事だったか」
「はい、それと…… この娘、このまま基地まで連れて帰りましょ。隊員候補生としてかなり有望よ」

「……えっ? うーん、君は本当に大丈夫なのか?」
「はい!柚本紗希。皆様と一緒に地球平和の為に力を貸す所存であります!」
 と言って紗希は可愛らしく隊長へ敬礼を向けた。

「……って、いやまだ本当に隊員にするとは……しかしあの巨人は……」
「この娘曰く、ウルトラレディシャインだそうよ」
「えっ……!?」
 隊員達の一様に驚いたような表情を浮かべる様子に、紗希は続けて取り繕うように説明した。

「……えっと、さっき、あの巨人に私も助けられたんです。その時名前を教えてもらって……」

「ふーん、ウルトラレディシャインか。また、何かあったら助けてくれるだろうか……?」
 紗希の説明でうまく丸めこめたと言うべきか、一応の納得はしたようであった。
「助けてくれますよ」

 紗希がニコニコしながら、そう答えた。
―だって、ウルトラレディは平和を守る為に戦っているんですから……

エピローグ

 すっかり日が落ちて、現場検証と調査を終えた特捜隊の面々は一旦基地への帰路へとついた。

「えっと……、特捜隊の試験受けるんだってな……」
 隣のシートに座り、窓の外の景色を眺めている黒髪の少女に真がそう尋ねた。
「はい」
「そっか、じゃあよろしくな。紗希」
 そう言って、真は紗希へと満面の笑みを浮かべ、手を差し出した。
「こちらこそ、真」

「へぇ、随分と仲良くなったじゃないか?」
 意地悪い笑みを浮かべながら影丸が2人の方へ振り向いた。
「隊長?」
「よし、それなら真一つ任務を与える。柚本が正式に隊員になるまでの間、お前が隊の中での面倒を見るんだ。良いな!」
「お、オレが……ですか?」
「どうした、こんな美女でも不満だと言うのか?」
「い、いえ…… そんなことはありません」
「なら、決まりだな!」
「は、はい……!」
 完全に隊長に言いくるめられ、こうして真が紗希の面倒をしばらく見ることとなったのであった。

「ふふふ……」
(姉さん、しばらくこの星に留まります)
 そんな様子を笑いながら眺めていた紗希は、窓の外へと目をやると遠い故郷であるM78星雲へとテレパシーを送った。

「紗希、そのスティックって一体……?」
「え、えっと…… 大切なものなんです!かなり」
「そうか、まぁいいや。紗希、これからもよろしくな!」
「えぇ、真!」

 光の戦姫と地球人。この二人がこれから地球の平和のため共に戦うという使命を共有することを決めた瞬間であった。
第一話 完

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