ウルトラ戦姫・ヒロインピンチの書斎 - ライバル対決!(萩原さくら対鈴元千夏)

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ストーリー

 ジャッカル東条戦に向けて弾みをつけていきたい萩原さくらと先日そのブルーパンサーの乱入もあって流れた先輩鈴元千夏との一戦。 このリーグ戦さくらはここまで一勝一敗。さくらとしてはここで勝って東條戦に向けて勢いをつなげたいところ。一方の千夏もそのブルーパンサーの乱入で流れた「雅」の南沙理菜との改めての試合に臨むにあたって弾みをつけたいところ。お互いに譲れない一戦であります!』

 そんなアナウンスがアリーナに流れている最中、当の本人である萩原さくらは控室にて胸元の谷間を大きく開かせ、少しハイレグ気味の白と赤の2色のリングコスチュームに着替え、軽くウォーミングアップを行っていた。
「さくら、もう少しで試合ね」
「あっ、千夏さん!」
 控室のドアが開き、入ってきたのは黒とオレンジのビキニタイプのコスチュームに身を包んだ今回の対戦相手鈴元千夏であった。さくらにとって千夏は同じベルセルクの大先輩であるトップレスラー豊田美咲の指導を受ける姉弟子での間柄であり、デビュー戦では逆エビ固めで沈められ、以後先輩レスラーからの執拗な逆エビ固め責めに苦しめられた経緯を持つ因縁の相手でもあった。
「えぇ、今日はお互いがんばりましょう!」
 そんな過去の因縁は気にしない素振りでさくらは笑みを浮かべると千夏に向けて手を差し出した。
「あぁ、互いに因縁はなしで、精一杯試合をしましょう!」
 その差し出されたさくらの手を千夏はぐっと握りしめると笑顔でそう答えた。
 千夏にとっても前回の試合では逆エビ固めで沈めたが、あの時とは違いメキメキと実力をつけ、今ではベルセルクのルーキーの中では自身と二分するアイドルレスラー萩原さくらの存在は気にせずにはいられない存在となっており、彼女との対戦は千夏にとっても一度試合が流れたこともあって心から待ちわびた胸の高鳴るものであった。

「おい!萩原そろそろ出番だぞ!」
「はい!紅亜さん、今行きます!」
 さくらは控室に伝えにきた小宮山紅亜にそう返事をすると、さくらは千夏にくるっと背を向けて入場ゲートへ向けて一足先に控室を出ていった。
「ほら、千夏もこんなところで油を売ってないで、さっさと自分のところに……」
「えぇ、わかったわ」
 そう言って千夏も紅亜に促され、自身のゲートの方へと急いで戻ることにした。


『さぁ、お待たせしました。まずは青コーナー萩原さくらの入場です!』

 その場内アナウンスと共にさくらの入場テーマが流れ、さくらが入場ゲートから姿を現すと場内がどっとわき上がり、もはや恒例となったさくらコールが巻き起こった。
その歓声にさくらは愛らしい笑顔を振りまきながら、さくらはそのトレードマークの黒く艶やかな長い髪を靡かせ花道を疾走すると、トップロープを掴み、リングへと飛び込んだ。
「流石にさくらは違うなぁ……負けてられないわね」
 自身の番を待っていた千夏はその様子を見て思わずそんな感想を抱いていた。

『さあ続きまして赤コーナーから鈴元千夏の入場です!』
 そして今度は千夏の入場テーマが流れ、さくらほどではないが自身に浴びせられる歓声にこたえながら千夏はリングインすると、リング中央で待ち構えていたさくらへと歩み寄った。

「じゃあ、さっき言った通り」
「えぇ、お互い全力でぶつかり合いましょ!」
 そう言葉を交わし、2人は改めて手をぎゅっと握りかわすと、両コーナーへと戻りゴングが鳴るのを待ちわびていた。

カーン!

 そして、遂に試合開始のゴングが鳴り響き、会場からは割れんばかりの歓声が上がった。

「さぁ、来なさい!さくら」
 リングが鳴るや、いなやリング中央へと進み出た千夏はさくらにそう呼びかけて力比べへと誘い込んだ。
「千夏さん……、えぇ!行くわっ!」
 その誘いに乗ってさくらもこくりとうなずいてみせると千夏とがっちり組み合った。

「ふん……っ!」
「うぅ……っ!」
 リング中央で組み合いぶつかり合う両者。体格差ではほぼ互角に見えたが、流石に力では千夏に分があるのかさくらの体はじりじりと後ろへ反らされながら下がっていった。そして、両者がぴったりと重なると千夏の胸がさくらの豊満な胸をグイッと押し上げるようにして潰れてしまった。
「ぐぐぐ……っ……。ま、負けないわ……っ!」
 そう言うと、さくらも負けじと脚を踏ん張り踏みとどまると、逆に千夏を押さえ込もうとした。
「そぅ、なかなかやるわね……はあぁ!」
 押さえにかかってきたさくらに対し、千夏は突然フッと力を抜き、そのまま手を組み合わせたまま後ろへと倒れた。
「きゃあっ!」
 思わず前のめりに姿勢を崩されたところでくるりとさくらの身体は投げ飛ばされてしまった。
そして2人ともマットへと激しく倒れた。

「さて、まずはこれよ……。どこまでさくらが耐えられるようになったか試させてもらうわ!」
 その中で素早く立ち上がった千夏は立ち上がろうとしていたさくらの両脚をしっかりと脇に挟めて捕えてしまうと、背中へと腰かけると逆エビ固めを極め始めた。
「あああああああっ!」
 思わず上がったさくらの悲鳴に、会場内がどっと沸いた。

『おっと、鈴元早速の逆エビ責め!萩原耐えられるか!』

「ふふふ……、美咲さんとの特訓の成果見させてもらうわ」
 そうさくらに囁きかけ、そのまま千夏はゆっくりと力を込めながら、更に腰を極めていった。

(ま、まだ……負けられない……)
 これでまで何度も苦しめられ、その度に負けを積み上げられてきた逆エビ固め。未ださくらにとって苦手なものではあったが、その意識を振り払うようにさくらは視線の先に映るロープへとのがれようと動いた。

「……!?」
(流石に美咲先輩に鍛えられただけあるわね……あの時とは一回りも二回りも違うじゃない)
「……でも、まだまだ!そう簡単に逃がしはしないわっ!」
 じわじわとさくらがロープへと逃げようとしているのを見て、千夏はさくらがロープを掴むタイミングを見計らっていた。
「よし……っ……!ロ、ロープ!」
 さくらが目の前に伸びるロープを掴み取るとそう叫んでレフェリーにアピールした。
「ふふっ、やるわね……でも、こっちも予測済みよ」
 そう言うと千夏はさくらの脚を持ったまま、すこし腰を上げて立ち上がったかと思うとレフェリーがブレイクを認めるよりも一足先にグイッとさくらの身体を思いっきり引っ張りロープからひきはがし、その勢いのままさくらの身体をずるずるとマットに引きずりながら中央の方へと引き戻した。

『あっと、鈴元そう易々と萩原にブレイクは許しません!』

「そ、そんな……!」
 手をかけたと思った瞬間。あっという間にロープから手を離されてしまい、思わず声を上げた。
「悪いけど、これがプロレスだから」
 そう千夏はさくらに言い放つと再び千夏はさくらの腰に腰かけると再び逆エビに反り上げた。
「うあ……ぁ……!」
「もうギブアップ?」
そう挑発気味に尋ねてきた千夏に、さくらはノーと答え大きく頭を横に振った。
「ギ、ギブアップなんて……しません!」
「あはは、そうこなくっちゃね!」
さくらからの強い拒否に千夏はむしろ嬉しそうに答えると片方の脚だけ脇から解放してやる事で逆エビ固めから片エビ固めへと移行して見せた。
その結果、さくらの腰だけではなく股関節部が逆エビ固めよりも厳しく極められる形になってしまった。

「ん……//////、んあ……っ……//////!」
 大きく股間部を開かされた事でさくらの顔は羞恥に染まった。
 観衆の前でこう大きく股間を開かされるような姿勢にされる事はアイドル時代では考えられなかった事である。事実、これまでもさくらは対戦相手から胸や尻、股間を強調させられるような攻めやそこを触られるようなセクハラじみた攻撃を受ける事もしばしばあったが、プロレスの世界に飛び込んだ以上は耐えるしかなかった。
「うぅ……//////、でもっ!」
 再びさくらはロープへと逃げだそうとした。

「さくら……!」
 再び引き戻そうとする千夏だったが、今度は更に強いさくらの気迫に押されたのかじりじりとロープの方へと逃げられていく。そして……。

(今度こそ……!)
「ロープ!」
 そして、さくらはロープへとたどり着くと、今度は引き戻されまいとかじりつくように掴みとった。

『おっと、今度はさくらロープへの脱出に成功しました!』

 それを見て、少し悔しげに千夏はブレイクを確認するとようやく逆片エビを解いて立ちあがり、そしてさくらが立ち上がるのを待った。

「はぁ……、はぁ……」
 ようやくブレイクを取れたさくらはロープに身をよりかかりながらもゆっくりと立ち上がった。執拗に責められた股間がまだ少し痛んだが、さくらは立ち上がった自身に向けて飛び込み、ラリアットを撃ち込もうとしてくる千夏の胸元目がけて脚を伸ばし、キックを撃ち込んだ。

(早い……っ!)
「ぐあっ!」
一方、ゆっくりと立ちあがったさくらを見てラリアットを撃ち込もうとした千夏だったが、それよりも素早く攻勢に移ったさくらのドロップキックを胸元に受け、背中から勢いよくリングへと倒れた。

「よしっ!」
立ち上がってすぐの鮮やかな速攻に思わず上がった歓声に応える間もなく、さくらは千夏の足もとへと回り込むとそのまま脚を組み付かせた。

『おっと、萩原 豊田直伝の足4の字固めだ!』
「うあ……っ!」
(美咲さん、こんなのまでさくらに教えていたのね……)
「どうですか?千夏さん」
 そう言って、さくらは更に千夏の脚を極めていく。
「なかなかやるわね。さくら……」
「そうですよね。千夏さんギブアップしますか?」
「あはは、まだよ。さくら」
「そうですか、なら!」
「うあぁ……!」
 するとさくらは何度か絞める力を強めたり弱めたりを繰り返すことで千夏の脚を痛めつけることをしばらく繰り返した。
そして、ようやく千夏を解放するとそのまま千夏の身体へと覆いかぶさった。
  
「フォール!」
そのさくらの言葉にレフェリーがすこしゆっくりとしながらも寄ってきた。

1……

「くっ……、はぁ!」
ドンッ!

 フォールを取られ、カウントが始まった途端。千夏はさくらを体から退かせると立ちあがった。
「やるわね……!でも、そんなんじゃフォールは奪えないわよ」

 あっさりとフォールを退けられたさくらだが、立ち上がり再び千夏と距離を取った。すると千夏もさくらから離れ、様子をうかがった。

「はぁ、はぁ……」
「はぁ…っ、はぁ……」
 向かい合う両者の中で先に動いたのは
「ふぅ……!」
そう千夏は大きく息を吸い込むとさくらに組み付こうと走り寄った。だが、それを見てさくらは千夏をかわし、ロープへと振った。
「それっ!千夏さん、行きますよ!」

「しまっ……!」
 千夏はロープから戻ってきたところでさくらから自身のお株を奪うラリアットで、その場に倒れた。
「どうですか?千夏さん」
さくらはそう言って千夏へとダイブした。
「えぇ、良いわね。でも……っ」
 千夏が横に転がり、さくらのボディプレスを間一髪でかわす。
「うぁっ!」
 千夏にプレスをかわされ、さくらの体はマットにうつぶせに思いっきり叩きつけられ、その場にうずくまった。

「さぁ、さくらお返しよ……」
 そう言って千夏はさくらをグイッと半ば強引に引き起こした。
「そーれ!」
そして、未だ足もとがふらつくさくらをロープへと振り飛ばした。
「うあ……っ!」
 強引に走らされ、さくらは前のめりになって走り寄ってくるのを見て千夏もロープの反動を利用するように走り出すと。
「ふふふ……、ちょうどお顔が突出してるわね。それなら……はぁ!」
千夏はさくらの前でクルッと回るとヒップアタックを、それもさくらの端正なマスクに向けてヒップアタックをお見舞いした。
「うぁ……っ!」
 千夏の引き締まった尻に弾かれるように、さくらはその場に倒され尻もちをついた。

「こちらもあなたの得意技でお返しよ。どうかしら?」
「ちょ……っ、千夏さん!?」
 そう言って千夏は尻もちをついて倒れているさくらの顔に向けて腰を下ろすと尻を突き出すようにしてさくらの顔を押し潰した。
「んー、んんー……っ……//////ち、千夏さん……//////」

『おっと、これは鈴元のヒッププレス!これは萩原にとって屈辱的!』

 千夏の尻を顔にどっしりと乗せられてしまったさくらは慌てて自身の顔からどけようとするが、千夏は構うことなくそのままを腰をさらに沈ませて押さえつけてしまった。
「ほら、このままフォールしちゃってもいいの?」
(そ、そんな!)
 屈辱的な体勢のままフォールを奪われそうになり、さくらは必死になって腰を浮かせると千夏の尻を持ち上げてどかすことでようやく千夏の尻から脱出した。

「はぁ……、はぁ……。ち、千夏さん……!」
 さくらのそんな怒気を含んだ問いかけを無視するようにして千夏はさくらに組み付くと、肩を押さえ抱え上げボディスラムでマットへと激しく叩きつけた。

「ああっ!」
 背面から叩きつけられ、悲鳴を上げながらさくらはその場に身体を大きく仰け反らせた。
「うぅ……」
 背中を押さえながら、身体を大きく仰け反らせているさくらに追い打ちをかけようと千夏はボディスラムで飛び込んだ。
「それっ!」
だが、その瞬間。今後はさくらが間一髪で身体をそらしかわすという先程とは正反対の展開となった。
「くっ!」
 ボディプレスが自爆し、その痛みに千夏の顔をゆがめるも立ち上がった瞬間。
千夏はさくらの平手打ちを食らい、そのままコーナーへと振られた。

「くぅ……。いたた……」
身体をぶつけ、コーナーに持たれるようにうずくまった千夏。そして、ようやく立ち上がろうとしたところ……
「ちょっと!?さくら!?」
「さっきのお返しです!」
今度はさくらの形の良い少しばかり大きめの尻が千夏の目の前に飛び込んできた。

「お返しよ!」
 その声と共にさくらは千夏の頭を尻で弾き飛ばし、その勢いでコーナーへと押しつけると顔へと強く押しつけるように千夏に座り込んだ。
「んー!んーっ……!」
「お返しさせてもらいましたよ。千夏さん」

『こんどは萩原のヒッププレス! これはちょっとうらやましい!』
「……って、アナウンサーさんも何言ってるんですか!」

 千夏とは対照的な小ぶりながらもボリュームを兼ね備えた形の良い尻によるヒッププレスを仕掛けられ、千夏は息苦しさと恥ずかしさに襲われた。
(くぅ……、このままじゃ息が……)
 「どうですか?千夏さん……」
 そう言ってさくらは全体重で千夏の上半身を抑えつけながら、更に柔軟な身体を生かして下半身のほうもがっちりと押さえフォールを取った。
「ううぅ……、さくら……」

1・2……

 そして、レフェリーがカウントを数え始めた時。千夏は力を振り絞って何とか両腕を動かし、さくらのお尻をグッと掴むとそのままムニュムニュと揉みしだいてみた。
「ふにゃあ!?ち、千夏さん……!?」
 千夏からの悪あがきに思わず間の抜けた声を上げたさくらのその隙を突いて千夏はそのまま強引に押し上げるようにして退かされてしまった。

『鈴元、カウント2・5で返したー!』

「流石ですね。千夏さん」
 そう言って、さくらは腰を上げ立ち上がると思わず千夏に揉まれた尻をさすりながら少し深く食い込んだショーツを直して見せた。
「はぁ……はぁ……、さくらの体重が軽くて助かったわ」
 そう答えて立ち上がった千夏はさくらの腕をつかみ取り、そしてロープへと振ると、その反動を生かしてさくらへ向かって走りこむとラリアットを見舞った。

「げふ……っ!」
そんな声と共にその場にさくらは背中から大きく倒れ込んだ。
「これがラリアットよ。ほら起きなさい」
 さらに千夏はラリアットを食らって崩れ落ちたさくらを強引に引き起こすと、そのまま身体を掴んだまま首投げで投げ飛ばした。

「はぁ……はぁ……」
 続けざまに技を食らい、さくらはマットに四つん這いになるようにしてうつぶせになっていった。
「ち、千夏さん……」
「まだまだよ、さくら」
 そう千夏が言い放つとさくらを強引に仰向けにすると、自分の座り込んだ方へと引き寄せ股間の上に頭を置かせるようにする。
 そして、その引き締まった太ももで首を絞め上げ始めた。

「うぁあああああああああ!」
 会場内にさくらの悲鳴が響き渡った。
『さくら、これは苦しそうだ!』

「んぐ……、ぐ……!」
 逆エビ固めとは違う首4の字による絞め技はさくらにとっても未体験の領域であった。
さくらの脳裏にこのまま千夏に殺されてしまうのではないかというくらいの恐怖感さえよぎっていた。
「まだよ、さくら。本番はここからよ……!」
そう言って更に千夏は両腕をリングにつけたかと思うと、その腕で腰を浮かせてより強くさくらの首を絞め出した。
「かは……っ!い、息ができ……ない……っ……」
(うぅ……ここから早く抜け出さないと……)
 呼吸すら許されず、顔色がみるみると変わっていく酸欠寸前のさくらの様子に思わず会場も不気味なほどに静まり返った。観衆の中に思い出されたのは以前別団体のスターレスラーがライバルレスラーにこの技を長時間かけられ続けた結果イップスとなり、その後しばらく執拗な首を狙った攻撃に苦しめられたという話であった。
このまま鈴元は萩原のレスラー生命を潰す魂胆なのだろうか……、そんなムードとざわめきの中ただ一人怪我で今大会を欠場し解説席に座る豊田美咲だけは違った目で2人のせめぎ合いを見ていた。
「美咲さん、まずくないですか?」
「いえ、もう少し2人を見てみましょう」
(千夏はさくらを試しているのね……実力、そして根性を……)

「どう、脚の力って凄いでしょ?このままギブアップ?」
 千夏は腰を少しおろして少し絞めを緩めてやるとさくらの顔を見下しながらそう言った。
「はぁ……、はぁ……」
 ようやく息をすることが出来、思いっきりさくらは新鮮な空気を吸った。そして千夏からの降参するかの問いかけに対し。
「ノー……、ノーォー……!」
「そう……じゃあ……!」
さくらの返事を聞くとすぐさま千夏は再び、腰を浮かせだすと更に強く絞め上げた。
「ぐえ……ぇ……」
 再び呼吸を断たれ、苦しげなうめき声と共にさくらの目が泳いだ。だが、さくらは目線の先にロープを見つけた。
(そ、そうだ……ロープ……お願い……)
 顔を真っ赤にして苦しげな表情を浮かべながら、さくらは何とか傍らにあるロープへと手を伸ばした。
(そうよ、さくら……でも、もう少し付き合ってもらうわ)
「くっ、それなら!」
 ギブで絞め落とすことを諦めたのか、千夏はさくらの体力を更に削るべく絞める力を強めながらも、身体と脚を巧みに動かしさくらの身体をぐりぐりと左右に揺さぶり始めた。
「ん、んん……っ!そ、そんな……ぁ……!」
 なんとか手繰り寄せるようにロープに手をかけようとした瞬間。急に千夏はマットの上で腰を大きく左右に揺らしさくらを振りまわしだした。
「あ……ぁ……っ!」
さくらは悔しげな表情で顔の上で見下ろしている千夏の顔を見上げながら悶えていた。
「ち、千夏さん……」
 だが、なんとかさくらは何とかロープを掴んだ。

『萩原、ようやくロープを掴みました!』

「くっ……、でも良いわね」
 そう呟いて、千夏は首4の字を解くとスッと立ちあがると。対照的にしばらく起き上がれない様子のさくらを強引に起こした。

「はぁ…、はぁ……」
「ほらっ、行きなさい!」
そう言ってさくらの頭を掴むと、ロープへと振り飛ばすとそのまま追いかけた。
だがさくらは残された力でクルッと千夏の猛ダッシュをかわし背後を奪い取ると腰をその両腕でがっちりとつかみ取った。
「うわぁ!この!」
 思わず千夏は振りほどこうともがくが、そのままさくらは千夏を捕えたままロープへとタックルして挟み込むとさくらの胸が押しつぶされるほどにがっちりと組みついた。
「行きますよ……千夏さん」
 そう千夏に囁きかけると、一気にさくらはその身体を大きく後ろへ反らした。
「うわっ!」
「たあぁっ!」
 さくらはジャーマンで千夏を後ろへと放り投げた。投げたさくらの方もやや投げるには不十分な力であったためか、あまりうまくは決まっていない様子であった。

「うぅ……」
 反動で少し頭を押さえて座り込んでいるさくらの背後を取る
「そろそろとどめね……!」
 そのまま倒れているさくらの首をスリーパーで絞め上げるように組み付かせた。
「す、スリーパー……?」
「ううん、違うわよ」
そう言って千夏はずるずるとさくらをリングの中央まで運ぶと、よいしょっとさくらの両脚を脇で挟みながら、ステップオーバーした。

『おっと、鈴元このまま逆エビ固めかー!』

「いいえ、これがわたしの新技!名付けてウォール・オブ・チナツよ!」
 そう言って千夏はさくらの腰には座らず、そのまま腰をきつく反り上げた。
 この技は本来なら先日の沙理菜戦で使うはずだったのだが、ブルーパンサーの乱入でお流れになってしまい、この試合が初披露となったのである。

(そうか……この技が美咲さんと特訓したっていう……)
「ぐあ……ぁ……! いや……ぁ……負けたくない……」
千夏の新技によって高々と腰が反り上げられ、思わず悶絶しそうになる。だが、さくらも残っている力の限りでロープへと逃げようとする。

(流石に新技で逃げられたなんて……)
「ロープまで耐えられるかしら?ふんっ……!」
 逃げようとするさくらを見て、さらに腰を反り上げた。

ミキッ!
「ぐ、ぐぁああああああ!」
(た、耐えなきゃ……っ……)
ミキミキと腰が悲鳴を上げ、全身がそれに合わせてビクビクと震えるたびさくらの口から悲鳴が漏れた。

「うおぉぉぉぉ!」
(何としてもこれで決める!)
この新必殺技で決着をつけようと千夏も残された体力のほぼすべてでさくらの腰を反り上げていく。一方のさくらも目の前のロープへと必死に手を伸ばしあがいていた。

「うぅ……あぁ……っ……!」
「さくらっ!ギブアップしろ!そうしないと腰がどうなったって知らないわよ!」
「そ、そんな……でもギブアップなんて……絶対に……しな……ぃ……」
「なら……仕方ないわね」
 だが遂にさくらの腰が限界以上まで反り上げられてしまった。
ミシ……ッ!
「うぁあああああああああああ!」
 目を見開き、アリーナ内にさくらのまるで断末魔の様な悲鳴が響き渡り、ビクッと千夏が腕に力を入れるたびに上半身跳ね上がるように震えた。

『これはエグい角度まで反らされたー! さくら大丈夫か!』
「そうだ、どうする?さくら」
ミシ……ッ……ミシ……ッ……
「う……あ……ぁ……」
だんだんと声が絶え絶えとなり、さくらは必死に掴み取ろうともがいた視線の先のロープが遠くにかすみ遠ざかっていく感覚を感じていた。

(頼む……さくら、一言ギブって言って……)
「おらっ!早くギブしなさい!」
もはやギブしてくれと言わんばかりに極め続ける千夏。
「ひぃ……!うぅ……、ぎ……ギブ……」
バンバンッ!
そしてようやくさくらの口からその言葉が漏れ、最後の力で必死にマットを叩いてタップした瞬間。そのままさくらの意識はリングへと沈んでいった。

『萩原、ここまで粘りましたがギブアップです!』

「ふぅ……」
千夏は安堵の表情でさくらがギブアップしたのを見届けると、さくらの脚からようやく手を離して技を解くと、そばに寄ってきたレフェリーから勝ち名乗りを受けた。

『勝者、鈴元千夏!萩原もここまでよく粘りましたが、最後は鈴元の意地の前にギブアップとなりました! この試合、萩原のさくらスペシャルを許さなかった鈴元の完全勝利といったところですね!』

観客席からの歓声に満面の笑みで応えている千夏の傍ら。未ださくらはリングにうつ伏せになったまま横たわっていた。
「はぁ……はぁ……」
 そう呟きながら、ようやく立ち上がろうとした。だが……
ズキッ!
「はうっ!」
 先程のウォール・オブ・チナツを食らい続けていたせいか、立ち上がろうとしたさくらの腰がまだズキッと痛み、思わずその場に崩れ落ちそうになった。
「おっと、さくら。肩、貸そっか?」
それを見て千夏はとっさにさくらのそばによると肩を差し出した。
「ち、千夏さん?」
「さくら……、よく頑張ったね。わたし……必殺技を使った時、そのままにロープに逃げられるんじゃないかって無我夢中だったから……ごめん」
「いえ……、千夏さんありがとうございます。でも、次は勝ちますから……!」
 そう言って千夏の肩に持たれかかりながら、さくらはようやくリングの上に立ち上がると歓声は両者のぶつかり合いと健闘を称える一層大きなものへと変わっていた。
「その意気よ、さくら。ジャッカル戦頑張りなさい!あ……でも、次だって私が勝ってみせるわよ」
 そう笑顔で返すと千夏は再び上がった歓声に手を振ってこたえていた。

「ほら、さくら。あなたにも声援送られてるわよ」
「は、はい……」
 自身の健闘を称える歓声に気付きさくらも観客へと手を振った。それは以前のものとは違う純粋に意地と根性で戦い抜いた本物に対するものであった。その声援に応えながら次こそは千夏さんに勝つんだ。そうさくらは心の中で呟いていた……


 後日、さくら対ジャッカル東条の前座として組まれた千夏対南沙理菜の試合。千夏は見事ウォール・オブ・チナツで勝利を飾っていた。
「ほら!さくら、そろそろ試合よ!」
「はい、千夏さん!」
「ちゃんとわたしは勝ってきたわ。だから、さくらもジャッカル東条相手でもきっちりと自分のスタイルでぶつかっていきなさい!」
「はい!」
 元気よくそう言うとさくらはジャッカルとの試合へと臨むべく、控室をあとにした。