主要イベント

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出会い

二人の共通の知人の祥子を交えて京都のホテルで出会う。冬香は地味で控えめ、取り立てて美しいというわけではないが、風の盆を思わせる美しい手に惹かれた菊治。ファンである冬香が持っていない本があるというので、サイン本をあげると誘いかけ、住所(のちにメールアドレス)を聞き出す。幾度かの手紙のやり取りの後、二人は携帯でハート付きのメールをかわすようになる。

初キス

顔を合わせるのは2回目。ホテルの最上階のラウンジという、景色を見るには絶好の場所で会っているにもかかわらず「部屋で景色でも」と自室に誘う菊治にあっさりついていく躾の厳しい家に育った人妻冬香。「いまだ…」という菊治の心の叫びを合図にキスは執り行われた。いきなりのディープキスも抵抗しない慎ましい人妻冬香。その後冬香はなぜか化粧直しに10分もかかっている。

初肉体関係

会って3回目。初キスのあと「接吻までできたのだから」と納得するが、セックスまで出来なかったことに落ち着かない気持ちになった菊治は、きちんと「かた」をつけるべく、ゆっくり時間を作るようにと冬香にメールを送り、午前ならという約束で前回の京都のホテルのコーヒーラウンジで朝待ち合わせる。誘っておきながらホテルや新幹線の料金が割高になることに躊躇する菊治。売れっ子の時は銀座の華やかなクラブの女と付き合っていたのに、30台半ばの3人の子持ちの女を追いかけることに敗北感を感じる菊治。10時頃にラウンジで再会した後は、前回と同じく「部屋の方がゆっくりできるから」とすぐさま部屋に誘い、やはり冬香ものこのこついていく。ディープキスで感じた冬香がベットに倒れこみ、一旦慌てるそぶりを見せるが、自ら服を脱いでセックスへともつれ込む。再会からセックス開始まで約10〜20分位しか要しておらず、躾の行き届いた人妻としては空前絶後の速さで貞操を喪失している。冬香が支度している間菊治は自分の陰茎に触れ固さを確認するなど妙にリアリティある描写もある一方、言葉もほとんどかわしたことがない会って3回目の男性と恥らいをちらつかせながらもすぐさま「感じ」「乱れ」「ください」と動作に淀みがなく、潔癖であったはずの冬香が玄人はだしと思わせる描写は常識を逸脱しており、対照的である。相手は人妻で初めての関係であるにも関わらず、避妊具は装着していない。むしろ冬香から「ください」と言われ、菊治はいたく感激する。

正月

冬香は帰省先の富山から飛行機で上京。菊治宅に泊まる。「どこかで食事でもとも思うが、まずいったん菊治の家に行く」はずが、なぜか菊治の部屋に荷物を置いたあと、新宿で「予約済み」の一人前二万円のフランス料理のフルコースを一時間で平らげる。その後、正月2日なのに初詣でに出かけ待望の「姫始め」。その夜初クンニ。冬香の携帯が鳴るが何もなし。翌朝はセックスの後どこへも行かず二度寝。冬香は高槻へ帰って行ったので、富山に残してきた三人の子供たちは、夫がひとりで高槻まで連れ帰ったと思われる。

2月の三連休

夫の転勤に伴い、義母に子守を頼んで夫婦で家を探しに上京。「新居の周囲を見たいから」という理由で冬香だけ延泊。夫婦で泊まっていたホテルをキャンセルして菊治宅に泊まる。夕食は信濃町のふぐ料理。酒に弱いという割にはヒレ酒をおいしそうに飲む。

3月末

夫の転勤で上京。以降、冬香は週2回(後に週3回)菊治宅に来訪する。ちなみに、冬香宅に近い小田急線は関東でも屈指の乗車率を誇り、朝の通勤ラッシュの凄まじさは殺人的であるともいえる。新百合ケ丘8:36→代々木上原乗り換え→新宿乗り換え→千駄ヶ谷9:15で週に2回(のちに3回)通うのは、かなりの体力を要するであろう。また往復の電車代は860円でひと月に換算すると結構な出費である。菊治が冬香に交通費等と称してお小遣いやパスネットをプレゼントする記述が皆無のため、冬香の自腹(イコール冬夫の稼ぎ)から捻出されていると思われ、この点においても冬夫への同情の声が多数上がる。

幻の花見

4月上旬花見をする約束をし「ついに初めて外でのデートか?」と読者を期待させるが、約束の日に菊治のマンションに来た冬香はなぜか目の前で服を脱ぎ始め、菊治もそれに応える形でセックス。結局その日は時間がなくなり、後日改めてということになるが、冬香の子供が風邪をひき中止。この時菊治は冬香や子供のことを思いやるどころか「熱のある子供など寝かせて出てくればいいのに」と不満たらたらの中「ひとり散る」。

夫の薬物レイプ疑惑

下着がスリップでなくキャミソールであったことに怒った菊治はおしおきと称し冬香の局部にブランディを流し込む。心ゆくまでプレイを楽しんだ後、突然冬香の口から語られたのが「わたし、犯されたかもしれない」。昨夜夫に勧められるまま酒を飲むと猛烈に眠くなり、朦朧とした意識の中、服を脱がされたような気がするという。しかし冬香いわく「何度も洗ったから大丈夫」。菊治はその話に「妖しい気持ち」になり、愛する女をレイプされた男とは思えない反応をみせる。夫にレイプされた翌日に、プレイとはいえ愛人に「ブランディわかめ酒」の「おしおき」をされて楽しめるか?また、いくら夫が製薬会社勤務だからといって、そんなあやしげな薬を簡単に持ち出せるのか?という疑問もあり、この事件が冬香の作り話ではないかと考える読者も少なくないが、作者にそのような意図はないようである。またこの頃、「子供たちは新しい学校や幼稚園に慣れてきた」という記述も見られるが、冬香の死後、末の子も小学生ということにされてしまった。

GW

作中で初めて冬香が生理であることが判明するがセックスを敢行。事後、菊治のみシャワーを浴び、経血で汚れたシーツは冬香が持って帰って洗濯する。尚、この際菊治は「生理中はセックスしても絶対妊娠しないから安全」と、中学生並みの誤った性知識を披露している。その後、二人は携帯のメールを交わすが、離れれば離れるほどつらいと訴える冬香に対し菊治は「待たせた罰にあそこに長い長い接吻をもう許してといっても、許しません」「君も、きちんとあそこに鍵をかけて、誰にも触れさせないでね」と卑猥な内容で返し相手の心情よりもセックスのみに関心を向けていることがわかる。

冬香の誕生日(5/20)

冬香の誕生日に旅行に行こうと誘う菊治。しかし、どのように障害を乗り越えるかなどを悩んでいるうち連載月が替わり行き先の箱根は本文ではなく月初めの「あらすじ」にてあきらかになる。結局冬香の実母に「東京見物させるから」と上京させ子守を頼み、「昔働いていた会社の会があるから」という口実で二人で箱根に旅行する。宿泊先はプリンス系の「龍宮殿」。二人を乗せたタクシーは小田原駅から龍宮殿まで何と15分で移動している。ホテルの詳細は、曖昧さが目立つこの作品にしては実に具体性に富んでいる。食事は「カート」で移動しホテルのメインダイニングで。アミューズから始まるフランス料理のフルコースを、躾の行き届いた人妻冬香は「おいしくて全部平らげてしまいました」。食事の最後に「ハッピーバースディ・冬香さま」と書かれたろうそくに火がついたままのケーキが箱に入って出されるが、結局食べずに翌日子供達への土産とした。この旅行での土産はこの「(前日に作られた)バースディケーキ」と箱根園のベーカリーで買った動物の顔の「ついた」菓子パンのみ。実母の東京見物は、冬香の留守中に夫が連れて行ったのか、箱根旅行の後に冬香が連れて行ったのか、不明。なお、後にバースディケーキの表記は一般的なバースデーケーキに改められる。翌日、二人は芦ノ湖に出かける。冬香は唐突に「ここで、遭難した人はいますか」などと旅行気分を吹っ飛ばすようなことを尋ね、水死しても遺体が上がることはないとの情報を得るが、何のつもりでそのようなことを知りたかったのかは不明。

義父上京(7月下旬)

義父の心臓検査のため、義父母が上京した。東京在住の息子の家でなく、冬香の負担を慮ってか新宿のホテルに投宿。とはいえこのために二人の逢瀬がキャンセルとなるが、冬香は家族とのホテルでの食事をボイコットして帰宅し菊治とテレフォンセックスをする。

出版社めぐり

「虚無と熱情」の出版を頼みに、つてのある明文社と新生社を訪問する。どちらでも「昔のような甘い華やかさがなく」「地味で暗い」「5千部でも難しい」などと酷評された挙句にボツになり、昔は先生と擦り寄ってきたのに、と悔しさが抑えきれず壁に拳を叩きつけて「お前はなにさまなのだ」と菊治は叫ぶ。その後荒木町のママと冬香に慰めてもらい少し気を良くするが、「その人たち間違っている」「あなたには才能があるわ」「私が原稿を持って出版社を回ってあげる」と激励してくれた冬香は菊治に絞殺されたため、実行されず。

神宮花火大会(8/1)

近所をうろうろしたあげく、人が多いのでマンション屋上で見る羽目に。すぐ飽きて近所の寿司屋に行き、帰宅後情交。夜中、菊治がトイレに立った後にまた情交中、「げおっ」「ごわっ」の音を最後に、冬香はこときれる。死亡は心停止、呼吸停止、瞳孔の拡大などといった一般的な基準ではなく、菊治の腰振りへの反応の有無という独特の基準により確認された。

逮捕

死んだ冬香を置いて散歩に出たりするシーンが数日続くが、死斑を確認してついに警察に電話する菊治。(数時間のこの空白は取調べで触れられていない。)通報しただけで人事のように「役目を果たした」と安堵する。現場検証で冬香の写真を撮られそうになると「何をするんだ」と叫びそうになったりするが大して行動は起こさず連行される。その際やたらと持っていく下着のたぐいを心配するがボイスレコーダは持っていかないことにする。

取調べ

若い取調官の脇田に担当される菊治。相手が性愛のことをわかっていないと感じ、自分の主張を認められないと感じる。しかし、口に出して言うことはあまりせず自己問答を繰り返す。また、夜中には幽霊のように冬香が現れたりもし、分かってもらえない自分たちの愛のすばらしさを確認する。このとき、ボイスレコーダーは渡さない、と約束して見せるが家宅捜索でとっくに見つかっている可能性は考慮されていない。また、脇田は冬香の検視報告を菊治に聞かせるという「冷酷な」方法で殺意を認めさせようとする。2週間の留置期間(延長は考慮されていない)に対し「規則正しい生活がつらい」「不満はあるがないといえばない」などと文句ばかり言っているが、「重大な犯罪」のために独居房に入れられ落ち着いている時間の方が多く、また一切冬香の家族に対する感情は見られない。

「虚無と熱情」出版へ

中瀬が留置場まできて400枚の大作「虚無と熱情」を出版したいと提案。倫理面の問題は無視されているのか他社と原稿の取り合いになりそうだと言う。菊治は人を殺して初めて注目され、出版社に「優しく」されることを可笑しいと思うが、幽霊で表れた冬香に相談して出版を許可する。せめて印税で遺族に償おうとは思いつかないらしい。

拘置所に移される

20日間の拘留期限が過ぎ、菊治は代々木署から小菅の拘置所へ移される。冷暖房完備だが窓がなく不安を覚える。壁が厚くてふゆか(「あらすじ」で妄想確定)が舞い降りて来れないのではないか。弁護士に筆記具と辞書を頼み、日記をつけることを思いつく。「今を善しとする」と自分に言い聞かせ、国家権力への反抗として毎晩みずからを慰める(どくどく)。ボイスレコーダを持ち込みたいと考える。弁護士からは顔色がよくなったといわれるが、ボイスレコーダは押収されている可能性があると聞かされ、織部検事がそれを聞いているところを想像する。

「虚無と熱情」出版

本当に出版され、増刷も期待されるほどの売れ行きとなる。グレイ地にタイトルは黄と赤、男女の絵を表紙に、また自筆で「Fへ『捧』げる」と見開きにかかれた「豪華な装丁」を菊治は気に入るが、誰かに贈ることはあまり希望しない。中瀬は「汚名返上になる」といい、弁護士は弁護の資料にするという。菊治は房に持ち込んで読み直し、これで自分の気持ちが分かってもらえるかも知れないと期待する。また現れ、煙のように消える冬香。

裁判

裁判の日は10月10日。体育の日だが、祝日でも行うのか。弁護士に「悪びれることは無い」と促され出廷。黙秘権のあることを告げられ、裁判官に親しみを覚える。読み上げられる内容をひとごとのように聞いているが、ことの経緯など「素っ気ない」と感じる。なお、職業は逮捕時とは異なり「作家」と答える。弁護士との「打ち合わせどおり」家族に対する謝罪を述べる。出身地が東京だったことになる。検事は司法解剖の報告書を「練習してきたかのように」述べる。殺人罪という刑法を持ち出され、菊治は不安になる。北岡弁護士は、菊治の主張をほぼ正確に伝え嘱託殺人を主張する。「白馬の王子」のように見える。次回に証人を呼ぶこと申請して裁判は終わる。

中ぶらりん

次の審理を待つ日が続く。明鏡止水という言葉を思いつく菊治。ボイスレコーダを証拠として提出できるかどうか弁護士と相談する。弁護士は「菊治が常識ある人間であることを示す証人」がいないか訊く。虚無と熱情の増刷が決まり、中瀬が報告に来る。その際、印税の振込先を確認され、印税がいくら入ってもおいしいものを食べたりできない菊治は運命(殺人犯の汚名)の皮肉さを知る。中瀬は裁判の傍聴席に冬香の母親がいたかもしれないと教える。

手紙、誕生日

荒木町のバーのママ菊地麻子から「女性はセックスの頂点で、死を願うことはあると思います」と言った手紙が届く。なぜか看守によって手紙は開封されていないことになっている。手紙によるとある評論家は「殺してと言ったなど女性蔑視に他ならない」と言っているが、むしろその方が女性蔑視であるし、マスコミが騒ぎ、主婦は冬香を「叩き」、殿方は酒の肴にしているとのこと。また、彼女は冬香の幸せに嫉妬するという。菊治は彼女に証人になってもらいたいと考える。そのご颱風が来て、菊治は虚子などの句を思い浮かべる。その3日後56歳の誕生日を迎える。毎日頭を下げていたためか背中が丸くなったように感じる。冬香は「素敵で頼もしいわ」だの「童顔で、笑顔が可愛いわ」といってくれていたことを思い出す。息子から誕生日を祝う手紙が届く。「僕は父さんを誇りに思っています」といい、どんな罪になろうが信じているといい、また小説を絶賛する。 2つの手紙で菊治は落ち着き 「自分らしく凛として」いようと誓う。


2回目の審理

法廷の仮監に入れられ「だから、どうした・・・」と居直る。入廷し今回も織部検事の装い( 秋らしい、淡いベージュのスーツを着て、前回よりやや胸元を開き、そこに小さなネックレス)が気になる。証人として冬香の夫「入江徹」が呼ばれる。菊治は誰よりも彼に関心があるのだと思う。身長175cmもある「すらりとした長身」で白縁のメガネをかけている「普通のサラリーマンと変わらない」入江徹が現れる。名前で冬香と夫婦であったことを思い出す。徹は東西製薬の東京本社営業部に所属し、東京への栄転は冬香も「よかった」と言っていたという。 入江の冬香への印象は大人しくて従順な妻で子どもをかわいがる母親だったといい、自分は忙しく妻の昼間の行動まで把握していなかったという。菊治に対して妻は 「この男に、たぶらかされた」のだと声を荒げ、注意される。また、子供たちには「出先で亡くなった」と伝え一番上の子供はうすうす感づいているとのこと。次に弁護士が質問をする。徹が冬香を旅行に連れて行ったことはあるか、プレゼントをしたことはあるかとたずねる。仕事ばかりで家庭を顧みない男ということを強調したい弁護士。仕事はそのまま続けていると答え、菊治に厳罰を与えて欲しいと言って、証言を終わる。弁護士はボイスレコーダを証拠として提出したいと申請する。菊治がこっそり録っていたのに冬香が認めていたことになっている。絶対公開したくないと考えていたわりに「人目に晒し好色と受け止められることを少し考える」程度に迷う菊治。また、証人は中瀬と麻子ママを呼ぶと申請するが麻子が女性の性について証言するのは個人の感覚に過ぎないと「女性である検事が女性の感性を否定する」

審理の後

弁護士は「これは被害者も、あのご主人も、みなで起こした事件です」 という。冬香が光臨。弁護士とボイスレコーダの公開について相談する。あまり聴かれたくないと思う菊治は傍聴人を退席させる方法があると(何度も)聞く(そのたびに驚く)。中瀬が訪れ菊治に協力を惜しまないこと、増刷が決まったことを伝えるが印税の使い道もない菊治はあまり関心を示さない。突然仏教徒であることを思い出して、仏像に思いをはせてみたりする。マンションのオーナーから手紙が来て自室を1500万円で買い取るよう持ちかけられる。冬香との思い出の部屋を残すことを考え、同意する。周りの部屋の住人はそれでいいのか。ボイスレコーダを聴く人は「結婚しているのか不明の」検事などであることを確認する。聴いているときの様子を妄想する。

審理

前夜スリップ姿で現れた冬香(幻覚)に手伝われ自慰をした菊治は頭が重いと感じながら車に乗る。一緒に乗っている未決囚に「同じ納豆を食った仲」と勝手に親近感を覚える。法廷に着き、自分がやつれて見えるのは自慰のせいだとは誰も気づかないであろうことに自信をもつ。中瀬が証人として呼ばれ菊治との「馴初め」や「優しく誠実で本が売れても偉ぶらない」ことを証言するが、さんざんたかられていることは忘れたのか。冬香を殺したことは愛するゆえの「無意識下の行為」と「文学的に」表現する。いわく「虚無と熱情」は共著であると言う。主題が男女の性の乖離であると説明すると、検事に「男は虚無でさめていたのか」と指摘される(ネックレスを光らせながら)。弁護士が著作を現実と一緒にしないよう言う(意思統一するつもりはないのか)。判決も出る前に猥本を出版した責任などは問われないらしい。録音が証拠として提出される。傍聴人が退席し、公開禁止の紙が張られる。聴きながら検事ばかり伺う菊治。殺害当時のことを思い出す(死ねとばかりに押し付け、息をしなくなった冬香に話しかけている)。

再び審理のあと及び年越し

菊治は女性である検事と「気持ちが通じ合えなかった」と感じそれに比べると弁護士は分かってくれたので、それなりに恋愛をしていたようだと勝手に解釈する。天皇誕生日にみかんが出るだの、正月に餅が出るだの、そんなことばっかり気になる日々。新年に際し「どんな判決でも毅然としている」ことを誓う。

論告求刑

印税などから冬香の子供たちへ5〜6千万円の「援助」を出来ると弁護士と相談して決める。前夜腹の調子を下す。相変わらず検事の胸元ばかり見ている。検察は殺人罪であるとするがそれは耐えられないと感じる。嘱託ではないといわれるが心のなかでばかり反論している菊治。懲役十年が求刑され、長期にわたって自由が奪われることに驚く。弁護士はまだ嘱託を主張し殺意がないだの遺族に「援助」を申し出ているなどと主張する。菊治は最後に一言言うことを許されるが中途半端な反省の言葉をつぶやく。帰り、「なにを呆や呆やしていたのだ」とへこむ。

判決

調子が悪く、医者にかかると「メニエール症候群」と診断される。それだけ。判決の日、朝食を「平らげて」出廷。殺人罪で懲役8年を言い渡される。ついに脳内ではなく「違う」と叫ぶ。頼まれてやっただけだとかいろいろ叫んで、手錠をかけられてしまう。でも言いたいことを言ったとすがすがしく感じる。

拘置所にて

大変なことをした、とへこんだり「違う」とつぶやいてみたり。平和な時代に秀才の勝手に作った法律で情もなく裁かれるのはいやだと興奮したり忙しい菊治。弁護士から控訴をするかどうか聞かれるがどうでもいいらしい。でも悩む。法律は情がない例として、夫からもとめられるのがいやで冬香が市の法律相談に行ったときの話を思い出す。浮気などの証拠がないと離婚は難しいと言われたらしい。自立するつもりはやっぱりなかったらしいな冬香。独身であろう織部が性の悦びを知らないと決め付け、仕事をする上で必要なことだと勝手に思い込む。自慰。織部を襲う妄想。判決が下りたのに誰も関心を持ってくれないことに寂しく思う。高士が訪れる。こっそり傍聴していたことを告げ「父さん、かっこよかった」「厳しそうな人たちが間違っている」「恥じることはない」などと危険思想全開。喜んでしまう菊治。高士は婚約者を紹介する。婚約者美和は、一緒に傍聴し高士と同じ意見になったらしい。結婚式も披露宴もするという。費用が足りなかったら言ってくれと妙に張り切る菊治。だれもそんな披露宴行きたくない。

マコからの手紙

再びバーのママ「マコ」から手紙が届く。刑が厳しすぎるなどと書き、「女性を快くするのは罪だ」などと実は冬香にあったこともないのに勝手に気持ちを代弁する。エロスとタナトスは表裏一体なんだそうな。自分も自殺未遂をしたらしい。冬香とのことは「理想の愛」だとか。なんだか丸め込まれている菊治。「愛の流刑地でお元気で過ごされるよう祈っています」と締めくくられる。次第に自分が言いたかったことがこれなのだと納得する。刑は冬香が自分を忘れないようにと与えたものだと考え控訴しないことにする。「死ぬほど女を快くした男だけに与え」られる「愛の流刑地」で冬香に自慰を手伝ってもらいながら8年を過ごすことにする。
2006年01月31日(火) 23:56:21 Modified by ainorukeichi




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