1-415 直接的エロ無し サンタコス女の子(?)

直接的エロ無し サンタコス女の子(?) by唐突に(ry

「はい……プレゼントはわ・た・し♥」
 目の前にいる幼馴染、里崎絵里の口から飛び出した、脳味噌沸いてんじゃねえのかと
思わせるような台詞に対して、一体どう反応していいかわからず、とりあえず俺は
聞こえなかった振りをする事にした。
 はぁー、今日もいい天気だなぁ。もう夜だから外真っ暗だけどなー。
「いやん、ナイススルーだねカッちゃん。でもそこが好きかもぉ♪」
 ええい、くっつくな。サンタ衣装のゴワゴワが暑苦しいっ!
「わたしも暖かくして欲しいしー」
 ……絵里、お前はもう十分暖かくなってるだろ?
「ほえ? なんで?」
 だって、お前の脳味噌は年中春じゃないか。脳の芯から温かいだろ?
「あははー。サワヤカにひどい事言うカッちゃんも好きー♪」
 だから離れ……ああ、もう、ちょっと!
「ぎゅー」
 ぐえっ。
 右腕は俺の左肩から背中に回り、左腕は俺の脇を通って背中に回っている。
 その体勢で、渾身の力を込めて俺に抱きつく絵里。俺の首は当然、絞まる。
 それは見事な肩固めだった……。
「もう、カッちゃんったら……そんなに顔青くしてはずかしがらなくても……青く?」
 ………………。
「きゃー! カッちゃんが落ちたぁ!?」
 抱きついていた力が緩み、俺は意識を失う寸前で何とか踏みとどまった。
 げはっ……ごほっ……落ちてない。落ちてないから、とりあえず、離れろ。
「はーい。ごめんね、カッちゃん……」
 しゅんとした表情で、俺の身体から離れる絵里。
 ……被害者は俺なのに、何故その表情に罪悪感を覚えなきゃいかんのだろう。理不尽だ。
「世の中のりふじんに耐える事で、少年は大人になるんだよっ?」
 お前が言うなコラ。
「ふぇーん」
 嘘泣きもするな。
「えへ♪」
 可愛く笑っても許さん。
「じゃあ、どうしたら許してくれるのー?」
 ……。
「カッちゃーん? 克己さーん? 相沢克己さーん?」
 ……ちゃんと、見せてくれ。
「ほえ?」
 せっかく着てきたサンタコスなんだからさ……いきなり抱きつかれても、ほら、
しっかり見れないだろ? だから、まずはだな……ちゃんと見せなさい、俺に。
 ……ああ、俺の脳味噌も段々沸いて来たみたいだ。なんだよもう。
「うん!」
 にっこりと笑う絵里の顔を、何故か正面から見れない。
「えへへー、なんか改めてじっくり見られると思うと、照れちゃうねー」
 じっくり見れんから安心しろ……とは口が裂けても言えんな。
「これねぇ、もこもこのフワフワで暖かいんだよぉ?」
 視界の端で、彼女は赤い服とスカートの裾をひらひらさせ、クルクルと回っている。
 ……ああ、確かに暖かそうだな、うん。
「……カッちゃん、ちゃんと見てるー?」 
 ……ああ、もちろんちゃんと見てるぞ、うん。
「チラチラとしか見てないのに?」
 ……。
「いひひ。照れてるねー、カッちゃん」
 ……悪ぃかよ。
「別にぃ。わたしだって恥ずかしいし、同じだね!」

 ……はぁ。俺の口から、ため息がこぼれる。
「な、なんでため息っ!?」
 いやな……俺はなんでこんな奴の事を……。
「こんな奴の事を?」
 ……い、言えるかっ、恥ずかしいっ!
「えへへー。言ってくれなくてもわかってるからいいよー♪」
 そう言うと、絵里は俺の胸めがけて飛び込んできた。
「もう、"ラッピング"の方はたんのーしたでしょ?」
 ……ああ、まあな。
「じゃあ、今度は"中身"を……召し上がれ♥」
 まったく、もう……こいつは、どうしてこう……。
「あっ……」
 俺は絵里の身体を強く抱きしめると、耳元で囁いた。
 ……ありがたくいただくよ、可愛いサンタさん。
「……えへ」
 真っ赤になって俯く彼女の頤に手をかけ、顔を上に向かせる。
「……ん」
 瞳を閉じ、軽く唇を突き出し、その瞬間を待つ彼女。
 俺の視界の中で、段々彼女の顔が大きくなっていき――
 ちゅっ。
「……ふえ?」
 はい、ごちそうさまでした。
「お、おでこー!? くちびるにすらしてくれないのー!?」
 当たり前だっ! 小学生相手にそれ以上できるかっ!?
「……ぶすぅ。すえぜん食わぬは男のはじだよぉー!」
 どこで覚えてくるんだそんな言葉……。
 とにかく、俺の事をそういう風に想ってくれるのは嬉しいが!
「うれしいんだ?」
 ……ああ、嬉しいさ! 嬉しいとも!
「えへへ……わたしもうれしい♪」
 とにかく、だ! ……もう七、八年経たないと、俺とお前はそういう事はできないのっ!
「えー」
 えーじゃないっ!
「……ちぇっ。きせいじじつを作っちゃえば、後はどうにでもなると思ったのにー」
 やけに鋭い目で、そんな事を呟く絵里。こえぇよ、おい、小学生。
 ……頼むから、な? 俺もお前を傷つけたくないし、もっと大きくなってからにしよう?
「うん、カッちゃんがそう言うなら、わたし早く大きくなるよ!」
 わかってくれればいいんだ。
「じゃあ、早く大きくなるのにカルシウム取らないといけないから……」
 ……?
「カッちゃんのおまたから出るミルク、ちょうだい!」
 わかってねえぇえええええええ!!!!



 クリスマス当日、俺が絵里に贈ったプレゼントは、牛乳一年分だった。
 とりあえず、俺の忍耐が尽きる前に、早く年月が経ってくれることを願ってやまない。

                                                   おわり
2008年07月20日(日) 12:50:29 Modified by amae_girl




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