1-866 風邪ひいた甘えんぼう

「うう……先輩、ほんとうにすいません」
 申し訳そうな表情でそう言ったのは隣人にして後輩の橘七海ちゃんだった。
 いつも丁寧で常に一歩ひいた感じのある彼女であるが、風邪をひいてもその点は
変わらず看病に来た俺に対してひたすら恐縮していた。
「わざわざ休みの日に先輩の手を煩わせるなんて」
「七海ちゃんは風邪をひいてるんだからさ、遠慮することはないよ」
 熱に浮かされ紅潮した顔を半分布団で隠すと俺の顔を潤んだ目で見上げる。う
ん、正直理性にダメージが来る。
「でもでも」
「七海ちゃんには普段世話になってるしさ、こんな時くらい俺に甘えてよ」
 これは俺の本音である。
 だいたい我が日向家がゴミ屋敷にならず、健康で文化的な生活を送れているのは
間違いなく七海ちゃんの献身的なお世話があったおかげだ。
「先輩にはいつもお世話になってますし……」
「いや、それは明らかに逆だから」
 七海ちゃんがいなかったら俺はきっとあのダメ親とともにゴミ屋敷に埋まっていた
だろう。日向家の生活能力のなさをなめてもらっては困る。
「ううぅー」
 七海ちゃんが布団ごしに潤んだ目を向けてくる。だからその目は(以下略)。
「そうだ七海ちゃん、お見舞いに桃缶を買ってきたよ」

 俺は持ってきた鞄の中から一つの缶詰を取り出した。
 風邪の時は桃缶。お約束である。
 ちなみにわが家では風邪をひくと桃缶を一つ枕もとに置かれて以後放置される。
 お粥といったもうワンランク上の看病メニューになると隣家の応援が必要になるの
だ。
「桃缶ですか……」
「そう。七海ちゃん好きだったよね」
「はい。好きですけど……」
 そこで七海ちゃんはじっと俺の顔を見て逡巡した。
「?」
「あ、あの先輩」
「どうしたの?」
「風邪、風邪の時くらい甘えちゃってもいいとおっしゃったりおっしゃられなかったりし
ましたよね」
「う、うん、じゃんじゃん甘えてもらっていいけど」
 なかなか舌の回っていない七海ちゃんに少々苦笑しながら返す。ちなみに普段か
ら俺にだけは甘えて欲しいなんて思っているのは内諸だ。
「じゃ、じゃあですね、も、桃缶を……」
「桃缶を?」
「食べさせてもらっていいですか?」
「え?」
「そ、そのあーん、って」

 熱でただでさえ赤い顔を真っ赤にして彼女は言う。
 え、いやそれって……。
「それって俺がフォークで桃を突き刺して七海ちゃんの口にあーんって持っていくとい
うこと?」
「うう、説明しないでくださいよぉ。そういうことですけど、ああのそのやっぱり、イヤで
した?」
「そ、そんなことないよ」
 羞恥心はこの際無視だ。普段世話になっている七海ちゃんに頼まれて断れるわけ
がない。
「じゃ、じゃあ……ちょっと待ってて」
 俺は橘家の台所を借りると桃缶を開け、黄桃を一口サイズに切る。少々不格好な
のは……許して欲しい。血筋的に考えると包丁が使えるだけでも奇跡なのだ。
「七海ちゃん、持ってきたよ」
「は、はい!」
 何だか真っ赤な顔をしてベッドに腰掛けている彼女を見て不安になる。いや、さっ
きよりかなり顔が赤いんだけど。
「な、七海ちゃん大丈夫?」
「な、何がですか!?」
「顔が凄く赤いから熱あがったの!」
「いえ、あのそのこれは多分そういうことじゃなくてですね、羞恥心とか興奮とか羞恥
心とか興奮です」

「…………」
「…………」
 うん、深くは聞くまい。俺の理性が(以下略)
「じゃ、じゃあ」
「はい」
「あ、あ〜ん」
「あ〜ん♪」
 嬉しそうな表情で口を開ける七海ちゃん。いや、意外に元気そうだな……。少し安
心だ。
「えへへ、ありがとうございます。先輩」
「どういたしまして」
 少なくとも知り合いには見せられない光景である。が、にこにこと真っ赤な顔(熱の
せいだと思う)で微笑む彼女を見ていると気分が和む。
「あの、先輩」
「ん?」
「お返しいいですか?」
「お、お返しって」
「先輩にもあ〜んって」
 この娘さん、熱で少々キているのではないだろうか? 多分、元気な時の彼女に
見せたら恥ずかしさで悶えまくるはずだ。

「いや……ですか?」
 俺は黙って首を振る。
 その捨てられた子犬目線は禁止ですよ。
「じゃあ、先輩あ〜ん」
 俺の手から器を奪い取ると黄桃を一切れ差し出してくる。
「あ〜ん」
 男の子なら一度は夢見るシュチュエーションである。素直に嬉しい自分がいた。
「えへへ」
 真っ赤な顔で微笑む彼女。ああ、もう。
「というか七海ちゃん、熱あがってない?」
 俺がおでこに手を当てるとなんだかぽおーっとした目で俺を見上げてきた。やっぱ
り熱がある?
「せ、せんぱい……」
「やっぱり寝たほうがいいよ。熱いよ」
「いや、これは単に風邪のせいだけじゃないといいますか、ごにょごにょ」
「七海ちゃん、桃缶食べたらやっぱりもう少し寝よう」
 フォークにさした桃を一切れ差し出しつつ俺は言った。大事をとるに超したことはな
い。
「はぁい…………あの先輩、」
「ん?」
「その前にもうひとつだけお願いしていいですか?」
「いいよ」
 俺はろくに訊かずに言った。
 彼女にしてあげることがあるなら何でもしてあげたかったし、そもそもこちらが困る
ようなことを彼女がお願いするとは思えなかった。
「じゃ、じゃあその……寝る前にキス……してもらっていいですか?」

 布団で顔を半分隠しながら紅潮全開で彼女は言う。恥ずかしさがこちらまで伝わっ
てきた。
「き、キス!」
 キス!?
 キスと言えば、kissでキスのことか!?
 ……いかん狼狽えてどうする。たかがキスごときで……いや、まぁ、たかがキスす
らしたことのない俺ですが。……あれ? 小学生くらいの時七海ちゃんとしたっけ?
 とにかく、まぁキスなんてものは俺とはほとんど無縁の儀式であることはたしかだ。
「あ、あぁー、そのキスね」
「やっぱりダメですよね」
 だからその捨てられた小動物の目は禁止ですよ。
「いやいやいや。そんなことはない」
 据え膳(?)食わぬはなんとやら、キスごときで狼狽えてどうする。
「分かったちゅーだね、ちゅー」
「そうですちゅーです、ちゅー」
 俺の顔は今、七海ちゃんに負けないくらい真っ赤になっていることはたしかだった。
「わかった。よし、行くよ」
「はい」
 布団で覆われていた彼女の顔をさらす。七海ちゃんは少し驚いたみたいだったけ
ど、俺は構わず顔を近づけていく。
 いつも見慣れた七海ちゃんの顔。だけどいつも以上の近くに彼女はあった。

 ちゅ

 唇と唇が触れあうだけのキス。しかもほとんど触れるか触れないかの。俺の根性
無し。
「あううう」
「七海ちゃん?」
 彼女の顔を再び見ると何故か真っ赤な顔で目を白黒させていた。
「あ、あのおでこにちゅーって……」
「…………」
「して欲しかった……ですけど……」
「…………」
 えーとつまりなんだ。俺の早とちりというか、何というか、おでこにちゅーをご所望
でしたか。いや、まぁそうなのか……、うん、つまり。
「ご、ごめん」
 素直に謝った。
「うう……キスするなんて予定外と言いますか……ほんとはもっとロマンチックな場
所で先輩と……でもでも決して嬉しくないわけはないのでして、ううう」
 何だかとても悪いことをしてしまった気がする。うん。
「せんぱぁい〜」


 七海ちゃんの顔はもう今にも泣き出しそうだった。そんな目をされると俺の心にズ
キズキとダメージが入る。
「ほんとにごめん。お詫びに俺に出来ることだったら何でもするよ」
「ほんとうですか?」
「ほんとうだよ」
「……だったら先輩、もう一つだけお願いしてもいいですか」
 じっと熱のこもった視線で俺を見上げる。怒った目とかではなくて、そこにはある種
の期待みたいなものが見え隠れしていた。
「うん」
「キス、もっとしてください」
 甘えた声で彼女は言った。
 もちろん、俺に断ることはできなかった。


「あのさ、七海ちゃん」
 唇と唇が触れそうになるその瞬間、キスの直前で俺は動きを止める。目を閉じて
俺を待っている少女がそこにはいた。
 俺の言葉に彼女は目を開け、きょとんとした表情で俺を見る。
「一言だけ言わせて欲しい」
「は、はい」
「好きだ」
「はいははぅうぅはい!」
 あまり言語化できそうにない言葉を七海ちゃんは叫ぶ。驚いたのはたしかなのだ
が、喜びの雰囲気が混じっているのは何となく分かってのでよしとする。
「キス……するんだったらその前に言っておかないと、な」
 最初の一回はまぁおいとくにしても、やっぱりこの点ははっきりとさせておきたかっ
た。
「うう、先輩〜」
「七海ちゃんは俺のこと……」
 この状況において聞くことにさほど意味は無いのだが、そこは聞いておきたい部分
である。
「大好きです!」
 熱を出しているはずの娘さんがぶつかってきた。いや、もう何も言うまい。
「せんぱぁぃ〜」
 俺の口が七海ちゃんにふさがれる。彼女はキスをせがんだはずだが何故か俺に
抱きつくように唇を寄せていた。


 本日二度目のキス。
 当たり前なのだが、彼女の唇からは桃の味がした。
「七海ちゃん、そんなに暴れると」
 忘れないで欲しい。さっき持ってきた桃の缶詰。まだ残っているんだ。
 勢いよく抱きついてきた七海ちゃんに手元がずれる。まだ器に入っていた桃と、シ
ロップが……。
「あ……」
「七海ちゃん……」
 俺と七海ちゃんの身体の間でぐっちょりと潰れていた。
 湿った感触が俺の身体に染みてくる。もちろん俺だけじゃない。七海ちゃんのパ
ジャマも桃の残骸がこびりついていた。
「…………」
「…………」
 二人で顔を見合わせる。どうしたものだろうか。いや、七海ちゃんはもちろん俺も着
替えなければならないのは決まっているのだがどうにも興を削がれた気分である。
「あ、あの先輩……」
「ああ」
 ため息をついた。とりあえずタオルでも探してこよう。
 俺がそのことを伝え、立ち上がろうとした時だった。
 何というか、七海ちゃんが予想外の行動に出た。
「な、七海ちゃん!?」
「……うう、先輩あのですね」


 七海ちゃんはパジャマのボタンを外している。ほんのりと赤く染まった胸元が俺の
視線に晒される。ブラジャーもつけておらず、たった一枚彼女を覆っていた薄布が今
……落ちた。
 少々小振りではあるがはっきりと女性であることを主張する二つの膨らみが目の
前にあった。
 七海ちゃんとは昔なんどもお風呂に入っていた。だけど、その時とは大きく違う体
つき。
「な、ななみちゃん……」
 ゴクリと喉が鳴った。
 いや、好きな女の子の裸みたらそうなってしまうでしょ。
「だって、私も先輩も着替えなきゃいけないし。だったらその前に」
「その前に……?」
「えへへ」
「いや、そこで照れた感じに笑われても」
「先輩……お願いします」
 う……お願いって……そんなとろんとした顔と声で言われても。何というか文字通
り据え膳食わぬは……である。
「せんぱいは、私のこと好きじゃないんですか?」
「そんなことない!」
 間髪入れずに俺は断言した。
「だったら……きゃ」
 そこから先は言わせなかった。俺は七海ちゃんを押し倒しベッドに戻すともう一度
俺からキスをする。

「せんぱぁい……」
 うん、もうさすがにここまで来たら覚悟を決める。決まってしまう。
「だぁぃすきです」
「うん、俺もだ」
 彼女に応えながら俺は彼女の身体に触れる。
 俺が胸に手を当てると七海ちゃんはピクリと身体を震わせた。安心させるようにもう
一度キスをすると満面の笑みを浮かべ俺に全てをまかせるように力を抜いた。
「七海ちゃん……」
 彼女の乳房をゆっくりと揉みはじめる。小さい頃には存在しなかった柔らかな感触
が俺の手に伝わってきた。
 柔らかく暖かな感触を楽しむように何度も揉んでいると、七海ちゃんの身体にもだ
んだんと変化が現れてきた。
 ピンク色をした先端はムクムクとその存在を主張し、七海ちゃんの声も変わる。
「せ、せんぱ……い」
 初めて聞く七海ちゃんの声。
 七海ちゃん、感じてるんだ。
 俺でもはっきり分かるくらい熱っぽい声でそこには艶があった。
「んんんっ!」
 大きくなった乳首を摘まむと七海ちゃんがひときわ大きい声をあげた。
 自分の手で七海ちゃんが感じているのが嬉しくて俺はさらに指でつまみ上げた。


「うぅ〜、先輩おっぱいばっかり弄らないでください」
「じゃあどこ弄ればいいの?」
 ちょっと意地悪く俺は言った。
「先輩の意地悪」
 ぷくぅ〜と子どもみたいにほっぺを膨らまして七海ちゃんが拗ねた。
「あはは」
 俺は軽く笑う。うん、でも俺自身もこれ以上は限界だった。
 パジャマのズボンにそっと手をかけると七海ちゃんがびくりと震える。やっぱり怖い
のだろうか?
「だ、大丈夫です」
 ちょっとだけ震える声の七海ちゃんにもう一度キスをする。間違いなく今までの人
生分のキスをこの数分でしてると思う。
「えへへ……せんぱい」
「じゃあ脱がすよ」
「は、はい」
 七海ちゃんのズボンを脱がしていくと真っ白な下着が目に入る。飾り気のないシン
プルなものだった。
 はじめて見る七海ちゃんの下着……でも俺にはそんなことよりももっと気になること
があった。
 七海ちゃんの股間の中央。白い下着にほんのりと濡れた染みがあった。
 感じてるんだ……。
「うぅ〜……これはその……恥ずかしいので見ないでください」
 七海ちゃん自身もそのことに気が付いていたのか俺の視線を感じてうなる。


「でもさ、七海ちゃん俺もほら」
 苦笑しつつ自分の股間を指さした。先ほどからの七海ちゃんの姿で俺のムスコは
ズボンの中からバンバン自己主張をしていた。
「あ……」
「七海ちゃん……いいんだよね」
「はい」
 意を決した表情で頷く。俺だって表情は似たようなものだろう。ズボンもトランクスも
一気に脱ぎ捨てると七海ちゃんがじっと視線を注いでくる。何というか非常に恥ずか
しい。
「それが……今から私の中に入るんですね……」
「そうだよ」
 努めて平静を装いながら俺は七海ちゃんの上にのしかかっていく。
「先輩……来てください」
「うん」
 残された最後の衣服をゆっくりと脱がしていく。恥ずかしそうに顔を隠しながら彼女
は「うううぅ〜」と謎の声をあげていた。
 俺は自分の分身を七海ちゃんの股間にあてがって、ゆっくりと七海ちゃんの中に侵
入していく。
「んっ」
 まだあまり濡れていない七海ちゃんの中はきつく先っちょを入れるのも一苦労だっ
た。
「先輩! 先輩!」
 あきらかに苦痛と分かる声をあげ七海ちゃんが叫ぶ。


「七海ちゃん大丈夫?」
 俺は思わず侵入を止めた。
 痛がる彼女にムリはさせたくなかったし、何より彼女は風邪である。
「だ、大丈夫です。だから最後まで……」
「本当に?」
 七海ちゃんの必死な言葉。
 俺は念を押すようにもう一度問いかけた。
「うぅ、たしかに怖いし痛いですけど……先輩にして欲しいんです!」
 勢いよく断言する七海ちゃんに感動すらしてしまう。う、嬉しい……。
「辛くなったらいつでも言ってよ」
「は、はい」
 せめて七海ちゃんの苦痛を早く終わらせようと、次の瞬間俺は七海ちゃんを一気に
貫いた。
「ああああああぁぁぁ!」
 七海ちゃんの絶叫。そして俺の肉棒に何かを破る感触が伝わってきた。
「あ……」
 奥まで差し込んだ七海ちゃんの中は痛いくらいに締め付けてきたけど……温かく
心地よかった。このまま達してしまいそうだった。
「これで私先輩のものになったんですね」
 七海ちゃんは幸せそうに微笑むと俺の頬に唇を寄せる。


 ん……。
 お返しにすぐ目の前に迫っていた首筋にキスをする。
「んぅ、先輩ぃ」
 甘えた声で笑う彼女。
 七海ちゃんがいとおしくて俺は彼女の身体にキスを繰り返していく。自分のものだ
という証をつけている気分だった。
 きつく締められた下半身はすぐにでも動き出したかったけど、目尻に涙を溜める七
海ちゃんを見ていると動けなかった。
「あ、あの先輩……」
「ん?」
 七海ちゃんの首筋に強烈なキスマークを残しながら俺は聞いた。
「な、名前で呼んでいいですか? あのその昔みたいに……こ、恋人になったんで
すから」
「もちろんだよ」
 恋人、と言ってくれたことが嬉しくて、妙にこそばゆい。
「せ、せーやくん」
「うん」
「……んぅ……」
 答えると同時にキスをする。七海ちゃんの甘い声が漏れた。
「ねぇ、せーやくん動いてください」
 次に続いた言葉に俺は眉を寄せて聞き返した。
「大丈夫なの?」

「せーやくんにだけ我慢させるのイヤです。初めての時も気持ちよくなって欲しいで
す」
 七海ちゃんの笑顔。
 どちらかというと、それは俺のセリフじゃないかな。
 でも精いっぱい笑ってくれる彼女に応えないわけにもいかなかった。
「分かった」
 七海ちゃんの想いに胸が熱くなる。
 俺はゆっくりと腰を動かし始める。七海ちゃんの表情を見落とさないようにゆっくり、
ゆっくりと思いを込めていく。
「七海ちゃん、痛くない?」
「まだちょっと痛いですけど、……そんなことよりせーやくんは気持ち良いですか?」
「ああ」
 七海ちゃんの処女地は動くのも一苦労だったけど、それでも俺の肉棒は甘くきつく
締め付けられて充分すぎる快感を与えてくれた。
「よかったです」
 時間をかけて七海ちゃんの身体を動いていく。


 最初は苦痛しか与えなかっただろう俺の肉棒も徐々に七海ちゃんの顔に変化をも
たらしてきた。
 七海ちゃんの口からは小さなあえぎ声が聞こえ、異物をきつく締めあげていた膣内
からは湿った音が聞こえる。
「あぁ、あ、せーやくぅん」
「七海ちゃん、ひょっとして気持ちよくなってきた?」
 俺の言葉に七海ちゃんはすまなさそうに視線を逸らす。
「せ、せーやくんは初めてで気持ち良くなるえっちな女の子は……いやだよね?」
 七海ちゃんの表情は今までで一番泣き出しそうだった。
「俺が好きなのは七海ちゃんだよ。えっちとかえっちじゃないとかはどうでもいい。七
海ちゃんが好きなんだ」
 小さなことに泣きそうな七海ちゃんに向かって、一番素直な思いを告げる。
「せ、せぇーやくぅん」
 まるで俺に飛びかかるような勢いで首に手を回し抱きついてきた。
 唇が塞がれ、舌が差し込まれる。
 テクニックなんてものじゃない。口の中をめちゃくちゃに動き回る……でも七海ちゃ
んの思いが伝わる口付けだった。
 ……やっぱり彼女はえっちかもしれない……本人に言うと泣きそうだけど。
「七海ちゃん」
 俺は七海ちゃんのディープキスに応えながらも腰の動きを早めていく。
 すでに苦痛より快感のほうが上回ったのか、甘い声を吐きながら俺の身体にキス
をする。
 どうやら今度は俺がマーキングをされる番だったようだ。


 湿った水音が響く。慣れてきた七海ちゃんの膣内は俺と……そして七海ちゃんの
二人に快楽を与える。
 技術の無い、単純な腰の往復作業だったけど初めての俺たちにはそれでも気持ち
良かった。七海ちゃんの顔も今まで見たことのない表情で、快感を得ているのは明
らかだった。
「せーやくん、気持ち良いです……せーやくんは?」
「あぁ、俺も気持ち良いよ」
 いつもの笑顔を真っ赤に染める七海ちゃん。
 う……やばいかも。
 下半身に爆発しそうなむずがゆさが集まる。射精が近いのは感覚でよく分かった。
「せーやくぅん、私、私!」
 七海ちゃんの声にも変化があった。
「イキそうなの?」
「わ、わかりませんよ! そんなこと! でも私、私! なんだかおかしく……あぁ
ん」
 七海ちゃんは絶頂に向かって昇りつめていく。
 そのことを感じたので俺も限界に近い射精感に耐え肉棒で貫いていく。
「せーやくん、せーやくん!」
 七海ちゃんの足が、俺の腰に回される。両腕で俺を抱きしめ声を高くする。
「七海ちゃん」
「な、なんだか私、ああ、ああああ!」
 俺が肉棒を最奥まで叩きつけた瞬間、七海ちゃんの声がひときわ大きくなった。七
海ちゃんの膣が痙攣し、俺の肉棒を締め付ける。
 ほぼ同時に俺も七海ちゃんの胎内にほとばしる精液を放っていた。
「え、えへへ……せーやくん」


「ん」
 一緒に絶頂した。
 そのことが嬉しかったのかはにかんで俺に優しいキスをした。
 うん、この一時間だけでどれだけキスしたんだろうな。
 少し前からでは想像はできない……いや、まぁ妄想はしていたけど……。
「あのぉ……」
 七海ちゃんが潤んだ目で俺を見上げる。なぜだか彼女が言いたいだろうことは視
線を合わせることで通じた気がする。
「七海ちゃん」
 俺は彼女の横に倒れ込みながら、
「もう少しこのままでいいかな」
 彼女が望んでいるだろう言葉を口にした。だって目が雄弁に語ってるよ七海ちゃ
ん。
「うぅ……はい」
 心の底から嬉しそうに彼女は笑った。


 で、その後どうなったかというと。
「あのあの、せーやくん、す、すいません」
「だいじょう゛ぶ」
 ガラガラで鼻のつまった声になりながら俺は答えていた。
 翌日、七海ちゃんの体調は快復した。
 で、俺が倒れた。
 当たり前である。
 風邪ひいた七海ちゃんとその……やってそのあと一緒に寝ていたのだ。
 うつらないほうがおかしい。
「あー」
「ほんと、ほんとにすいません」
「ほんどだいじょうぶだから……」
 だるいし、寒い。でもたかが風邪である。おまけに自業自得。大人しく寝ているべ
きだろう。
「だ、ダメです。私が責任もって看病を……」
 しかし、おかゆも作ってもらった氷枕も用意してもらった汗も拭いて貰った。
 もう充分です。というかこれ以上看病は思いつかないんですけど。
 七海ちゃんの気持ちは嬉しいんだけど病み上がりの彼女に看病してもらうのもなぁ
……。


「あの、それで七海ちゃんは何をしてるの?」
 何故かもぞもぞと俺の布団の中に潜り込もうとしていた七海ちゃんに向かって俺は
聞いた。
 え? 看病?
「ひ、人肌で暖めるといいんじゃないかと思うんです……せーやくん寒そうですし」
「たしかに寒気はするけど……それが風邪の治療に有効かどうか」
「私で昨日実証済みです」
「いや、また七海ちゃんにうつるからね、それ……」
 ちっとも説得力の無い言葉を口にしながら彼女は俺に抱きついてきた。おーい。
「大丈夫です。私バカですから風邪はうつりませんよ」
「バカって……」
「ほら、昨日から私、バカップルです」
 ぎゅー。
 そう嬉しそうに笑うと七海ちゃんは俺の腕に巻き付いた。
 あー。たしかに。

 たしかに?
2008年07月20日(日) 13:19:17 Modified by amae_girl




スマートフォン版で見る