2-298 「I Just Called To Say I Love You」

「I Just Called To Say I Love You」

私、高木真秀(たかぎまほ)に初めての彼氏ができて、その彼との初デートの夜。
そのことをぼんやりと思い出してたら、その、やっぱり、声が聞きたくなってしまったわけで。でも・・・

「いいのかなあ・・・」
付き合ってまだ間もない私たち。友人からは最初のうちは距離をとれと言われたりしたが・・・
「でもやっぱ聞きたいな、声」
思わず今日のデートを思い出し、また胸が高鳴ってしまう。
昼間散々2人きりでいたのに、もうこんなに会いたくなってる。うわあ・・・
よし、決めた。電話しよう。
よっしゃあ!と妙な気合いを入れ電話帳を開き、「仲澤隼人」と書かれた箇所を探す。
えいっとばかりに発信ボタンを押した。

      • 出ない。
は、はやく出てよぉ。緊張で胸が激しく鼓動を打ってる。
そういえば、電話したはいいけど何話すか全然考えてなかった。やば、どうしよう。

けれど私のそんな苦悩を嘲笑うように、無情にもその時は来たのだった。
「もしもし、高木さん?」
「あ、隼人くん?」
「どしたの?」
「いや、その、隼人くんの声が聞きたかったな〜なんて」
おいおい何言ってんだ私。電話の向こうは無言。
「あ、うそうそ冗談冗談!ほら、こうやって電話するのってなんか恋人っぽいじゃんだから1度やってみたかったのねいいでしょ隼人くん!はぁはぁ」
緊張のあまりもの凄い早口になってしまった。
「お、落ち着いて!別にいいよ、そういうことなら」
「ほんと!?ありがと!えっと、今日ね・・・」

それから私たちはひときしり話し込んだ。
今日のデートについてとか、学校の友達や先生についてとか、どれも他愛ないこと。
昼間も思ったけど、隼人くんは相手ををすごくリラックスさせる会話ができる人だ。
おかげで電話した時の緊張はすっかり解けていた。
そんなこんなで、気づいた時には時計の針はもう12時。

「そろそろ寝よっか?」
「そだね。あ、ちょっと待って」
不意に聞きたいことが浮かんだ。
「その、次のデート、いつにする?ほら場所とかさ」
「あ、そうだね。う〜ん・・・」
しばし無言。やがて返ってきた答えは・・・
「どこ行きたい、とかそういうんじゃないんだけどさ」
「その・・・手」
へ?
「今日は一度も繋げなかったから・・・次はぜひ宜しくお願いします、なんて」
そういえば今日は一切そういうことはできなかった。
どんなカップルも、やっぱりスキンシップっていうのはその辺から始まるのかなあ?
そうやって、やがてはキスしたり、抱きしめあったり、その先も・・・え、その先?
やば、私ったらなんてこと考えてるんだろ・・・
「高木さん?」
「きゃあっ?ごめんなさいっ!」
「ちょ、どうしたの?」
「な、なんでもない!あ、そうそう手ね!次は絶対繋ごうね!」
「う、うん、それより、もうほんとに寝ないと。明日遅刻しちゃうよ」
「そうだね、じゃあえーっと、こういうのってどっちが切ればいいのかな、私?」
「1、2の3で切ろう。じゃあ数えるよ、1、2の・・・」
あ、言われてる最中で気づいた。こういうのって大抵・・・
「3!」
      • ・・・・・・・。
「・・・隼人くん」
「高木さん?」
案の定、向こうは切ってなかった。まあ私もだけどさ。
「ベタなことしないでよ、もう」
「あはは、ごめんごめん・・・じゃあ、今度こそ切るよ。おやすみ高木さん」
「あ、待って!」
「?」
「その・・・今夜は、私の夢を見てくれたら嬉しいな、なんて」
「・・・・・・」
「お、お休みっ!」

大慌てで電話を切った。
息が荒い。胸は激しく鼓動を打って、顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。

『私の夢を見てくれたら嬉しいな』

なんてことを思わず口走ってしまったんだろう。思い出すだけで顔から火が出る。
ああもう、明日はどんな顔をして会えばいいんだろう、考えただけで恥ずかしくて死にそうだ。

      • でも。
将来、あんなことも緊張しないで普通に言い合える関係になれたらいいな。
そんなことを考えながら、その夜は眠りについたのだった。
2008年10月04日(土) 20:34:54 Modified by bureizuraz




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