4-124 おにーさんとお泊りデート0日目

帰り支度をしていたら、突然美香に声をかけられた。
「おにーさん、お疲れさまですっ!」
「おう、美香、お疲れさん。」
ちなみに俺――本名は増田佳祐(21)――は美香――本名は柊美香(18)――の実兄ではないし、幼馴染とかでもない。

2年前の春から、ここ――某有名揚げ鳥の店――で働き始めたとき、一緒に働き始めたのがコイツなのだが、
何を思ったのか、『おにーさんは、おにーさんです!』などと意味不明な持論を述べ、それ以来『おにーさん』が定着してしまった。
時より社員やバイト仲間からも『おにーさん』とニヤニヤとした笑顔で呼ばれるから困ってるんだが、それはまた別の話。

「あの、この後、時間大丈夫ですか?」
美香が珍しく、困ったような表情をしている。ほんのり頬が赤いのは気のせいか?
「家に帰って飯食って寝るだけだが、どうかしたか?」
「じゃあ、この後話したいことがあるので、駅前の喫茶店で行きましょう。」
いつの間にか、社員(♀)がニヤニヤと俺らを眺めていた。
「ちゃーんとシフト確認してから帰ってねー♪」
なんのこっちゃいと思い、シフト表を見てみたら。

明日から、4日間の休暇が与えられていた。

「ほい、おまっとさん。」
「あ、ありがとうございます。おにーさん。」
場所を鶏屋から喫茶店に移し、美香に紅茶を渡す。

「で、話したいことって、何だ?」
「えっとですね。」
「おう、なんだ?」
「おにーさん、明日から4日間休みじゃないですか。」
「そうみたいだねぇ。」
なぜ突然4日も休みが入ったのかさっぱりわからんのだが。
「で、私も、明日から4日間休みなんですよ。」
「ほう、それは珍しい偶然だなぁ。」
「で、ココに夢の国の3デーチケットが2枚あるんですね。」
「ほう、友人とでもあの国に潜入するのか。楽しそうだな。」

「違いますよ〜。これは、私と、おにーさんが使うんです。」
…は?美香さん?なんと仰いました?
「よくわかってないみたいなので、もう一回言いますね。」
「私は、おにーさんと、お泊りデートしたいんです。だから、一緒に行きましょう?」
ほんのりはにかんで、頬が少し赤くなった美香は、ちょっと、いや、かなり可愛かった。

…じゃなくて。
「…お前が俺と行きたいのはわかった。だが、お泊りって、部屋は「一緒ですよ。」おい!」
「ダメですか?」
「あのさ、曲がりなりにも俺は男、お前は女。」
「そうですね。」
「だから、俺が狼にならないとも限ら「おにーさんは優しいから狼さんになんてなりませんよね?」だからわからんと言ってるだろうが〜!」
「それでもいいですよ。いい思い出になると思いますし。」
…無条件に信頼されるのも、困り者だな。

「…わかった。一緒に行ってやろう。」
「えっ!?本当ですか!?」
「…『本当ですか!?』ってダメ元かい。」
「はいっ!まさかOKしてくれるとは思いませんでしたから!ありがとうございますっ!」
美香はとても喜んで、俺に抱きついてくる。

「こ、こらっ!抱きつくな!恥ずかしいだろうが!」
「私は恥ずかしくありませんもんっ!」
ものすごくいい笑顔で喜ばれたら、ぐうの音も出なくなる。
「うれしーなぁ…おにーさんとお泊りデートできるなんて…♪」
俺は苦笑しながら、美香の頭を思わず撫でてしまう。あぁ、恥ずかしいったらありゃしない。
「で、あそこまでどうやって行くつもりだ?」
こんなこと聞かなければ良かった。

「おにーさんのバイクで行きます♪私の初タンデムですっ!」
俺とっても初タンデムなわけだが、どうやら初めては美香に頂かれてしまうようだ。
期待と不安が交差するお泊りデートは、もう半日もしないうちに始まろうとしていた。
2009年01月16日(金) 22:18:04 Modified by amae_girl




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