5-258 あぁ あいしゅうのききまつがい

「お兄ちゃん…まゆ、迷惑だった…?」

と、涙目+上目遣いで見つめてくるのは妹のまゆ(15)、見つめられてる俺は一洋(かずひろ,17)。
もうやめて!! 俺のライフはとっくに0よ!!

「うぇぇ…『やめて』って…ひっく…やっぱりめーわくだったんだぁ」
「あっ、いや!これはそうぢゃなくてただのネタで!」
「ふぇぇぇ…」

あぁぁぁぁ!どーすりゃいいんだ俺はっ!?



今日は俺の誕生日。
生憎両親ともに出張で家にいないが、まゆはその二人を補って余りある働きをして俺の帰りを待っていた。
リビング一面を彩る飾り付け、豪華ではないが俺の好物ばかりが並ぶ夕食。
そして極めつけに―――

「じゃんじゃじゃ〜ん♪」

その効果音は古いぞ、とツッコミを入れなかったのは、別に突然発話機能に異常を来したからではない。
一言で言うと、「唖然」。
幸せ100%の笑顔でまゆが取り出したのは、いちごがたっぷり乗った、どでかいデコレーションケーキ。

「まゆが全部つくったんだよ〜♪」

だそうだ。いや限度ってあるだろ…
両親がいないことを承知で、なおこのでかさのケーキを作ったのか…

とはいえ、兄想いな妹の努力を無駄にするのは忍びないし、そもそも俺の可愛い可愛いまゆが他ならぬ
俺のために作ってくれたケーキだ。これを食わずして何を食う!シスコン!?上等だっ!!

「ゼハー…ゼハー…」

興奮しすぎたようだ…

「と、ともかく、一緒にケーキ食おうか。」
「…?うんっ!」

30分後。
そこにはなんと元気に…ではなく、苦しそうに腹をさする俺の姿があった!

「やっぱり完食はむりだったなぁ…」
「え、えへへ…ちょっと失敗しちゃった…」

まゆが少し申し訳なさそうに謝る。
ここでやめておけばよかったものを、俺はあの一言を言ってしまったのだ。

「あぁ胃が重い…」ゲフゥ
「……ふ…」
「…腑?」
「ふぇぇ…」
「なぬ〜〜〜!?」

突然泣き出したまゆに戸惑いつつ声をかけてみる。

「どうしたまゆ!?お腹痛いのか!?」
「お、お兄ちゃん…」
「なんだ…?」
「まゆ、迷惑だった…?」

と、こうして冒頭のシーンに戻るわけだ。



回想を巡らせていたところで問題は解決されない。
とりあえずまゆが泣いてる理由を聞かなければ…

「まゆ?何で泣いてるのか教えてくれないか?」
「だ、だって…お兄ちゃん、『愛が…おっ、おもっ、重い』って…ふゅぇぇぇ…」

なにをおさるのうさぎさん。そんなこと言った覚えなどない。

「まゆ…いつもお兄ちゃんに甘えてばっかりだから…今日はがんばって、ちゅ、ちゅくったのに…うぇぇ
あんな失敗しちゃって…ぐす…これじゃお兄ちゃんに嫌われちゃうよぉぉ……」

そんなこと言った覚えなどないが、とりあえず否定すべきところはしておかねば。

「まゆ」
「ふぇ…?」
「俺は愛が重いなんて全然思ってないし、まゆのこと絶対に嫌いになんてならないよ」
「おに…ちゃ…」
「俺のためにあんなに準備してくれて、すごく嬉しかった」
「…お…おにいぢゃぁぁぁ…」むぎゅぅぅぅすりすり
「お〜よしよし、まゆはいいこだね〜」なでなで

このあとまゆの部屋で延々とむぎゅむぎゅすりすりされ続け、解放されたのは翌朝のことだった。
あれだな、今後はもっと言動に気をつけよう。
と、思ってはみるのだがなあ…
こうして、俺たちのおバカな日常は続いていくのである。


2009年04月30日(木) 00:28:58 Modified by amae_girl




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