6-6 淫魔の使い魔

 完敗だった。
 いかに隙をつかれたといってもこれは実戦。不意打ちも卑怯な手も何でもありだ。実
戦では結果が全てなのだから。
 激しく地面に叩きつけられた身体が痛む。とは言うものの身体ダメージ自体はさほど
高くない。
 ただ首にくくかれた枷が問題だった。退魔師の霊力のほとんどを封印してしまう首
輪。これがある限り普通、退魔師に逆転の機会はない。
 まさか淫魔程度の存在に負けるとは思わなかった。
 そんな油断もあったのだろう。その結果の惨敗だ。目も充てられない。
「まさかお前が淫魔だったとはなぁ……」
 馬乗りになった幼なじみの少女を見上げ俺は感心したように言った。
「ふ、ふんっ! あんた、退魔師らしいけど、今まで気づかれなかった私の隠形が優れ
てただけよ!」
 黒いボンテージ風の衣装に身を包んだのは隣に住む飯間咲夜(いいまさくや)だっ
た。普段は絶対に着ないようなぴっちりと身体のラインが出る衣装で……今にもこぼれ
そうなふたつの膨らみが刺激的だった。
「んー」
 隠行が上手かったのかと言われると答えはノーだと思う。
「っていうか、咲夜が今まで淫魔の血に目覚めてなかっただけだろ」
「え、あぅ、な、何を根拠に」
 いくらなんでも十何年付き合いがあって幼なじみが淫魔と気づかないなんてありえな
い。こちらはプロの退魔師なんだ。
「いや、角も羽根も無いし……感じる妖気が弱すぎる。ハーフか隔世遺伝だろうな
……」
「う、うぅ!」
 おそらく図星なのだろう。咲夜の顔が引き攣った。
「さらに言えば淫魔として覚醒したのもつい最近だろ」
 確信を持って俺は断言する。
「じゃ、じゃあ、そんな私に負けたあんたは何なのよ」
 まぁ、たしかにそれはもっともである。が、あれは仕方ない。霊能力はあるがブービト
ラップに対応できるスキルなんかない。普通妖怪や妖魔はブービトラップなんか使わな
いぞ。


「まったく、何かに憑かれたんじゃないかと心配して来てみれば」
 呆れたように俺はつぶやいた。
 人の心配に対する返答がトリモチだもんなぁ……。
「え?」
 きょとんとした顔の咲夜に俺は当たり前のことを告げる。
「そりゃお前の家から妖気が出てたら心配するだろ」
「うぅ……」
 人に馬乗りになって顔を赤くするな。
「まぁ、いいや。お前が変なモンに憑かれてたんじゃないなら。で、俺はどうなるん
だ?」
「え?」
「淫魔に負けた退魔師がどうなるかなんて決まってるようなもんだけどな……」
「……え、えっと……」
 若干の逡巡。付き合いの長い俺はそれがどういう意味かすぐに分かった。
「考えてない、とか?」
「だ、だって! いきなり襲ってきたのは正義じゃない!」
 いきなり襲ったって……トラップで先制攻撃を受けて負けたの俺だぞ?
「正義に正体ばれちゃうって思って私、……」
「…………」
 正体ばれる、……ね。
「普通は精気を全て吸い尽くされて殺されると思うけど」
 咲夜が俺を殺すことなんてありえない。
 確信があったからこそ俺は軽い言葉に出した。
「そんなことありえないわよ!」
「ま、そう言うと思ったけど」
「わ、私が正義とえっちするなんて!!」
「そっち、なのか?」
 思わず俺はつぶやいた。いや、そっちが重要なのか? おい。
「でもさ、だったらどうするんだ?」
 俺が言うのも何だが退魔師と淫魔なんてあまり仲良く無い関係だぞ。基本的に。
「よし、決めた、正義、今日から私の使い魔になりなさい!」
「は?」
 大きな胸を揺らして断言した咲夜に俺は目を丸くした。いや、え? 使い魔?
「正義みたいな雑魚ならともかくこれからどんな強敵が現れるか分からないもん。盾と
情報源は必要でしょ。おばあちゃん直伝のトラップは正義に使っちゃったし」
「……あ、あのなぁ……」
「正義に拒否権なんてないんだからね!」
「…………」
 こうして俺、上倉正義(かみくらまさよし)は淫魔の使い魔になったのだ。


 その、はずなのだが……。

「正義、ご飯出来たよ」
 上機嫌な咲夜の声がする。いかにも淫魔と全身で表現していた服から一変、咲夜は
いつも俺が目にしているような服にエプロンという姿だった。
 テーブルの上には煮魚にみそ汁などなど、ごくごく普通の日本食が湯気を立ててい
る。素朴な家庭料理だった。
 全て咲夜の手作りである。
 …………。
 ん〜。
「早く座りなさいよ」
 自分の隣の席を指し咲夜が命じる。
「何で隣なんだ?」
 俺が使い魔になる少し前から咲夜の両親は出張中であった。だから今、飯間家にい
るのはふたりきり。
 何も好き好んで隣同士になる理由はなかった。
「つ、使い魔なんだから私の隣に座るのは当然でしょ!」
 そうかもしれないが、そのくっつきすぎだと思う。
 椅子と椅子と隙間がほとんど無いぞ。
「何か文句あるの! 下僕は黙ってご主人様の命令を聞いていればいいのよ!」
 俺の表情から読み取ったのだろう。怒った調子で咲夜が言った。
「はいはい。分かりましたご主人様」
 彼女の命令どおり食卓につくと、すぐ隣ですごく嬉しそうな顔をしている幼なじみがい
た。
「あ、あの咲夜さん……」
 思わず敬称をつけながら俺はうめいた。
 咲夜は箸を構え、にくじゃがを掴むと俺の方に差し出した。何かを期待するようにじっ
と俺を見上げ一言。
「あ、あ〜ん」
「!!??」


 あ、あ〜ん、っておいおい。
「あ、あのなぁ」
「つ、使い魔に餌を与えるのはご主人様として当然でしょ!」
 ……いや、ツッコミたい所は多々ある。
 だからといってツッコむ気も逆らう気もなかった。俺は素直に咲夜の箸を受ける。う
ん、咲夜の料理は相変わらず美味いけど……なぁ……人に見られたら切腹ものだ。まぁ、
ここには俺と咲夜しかいなかったけど。
「次は私の番なんだからね。あ〜ん」
 まるで俺が食べさせてくれることを前提にしたように咲夜が口を開けて待つ。その顔
は羞恥で真っ赤に染まっていた。
 恥ずかしいならそんなことしなけりゃいいじゃん。
「ご主人様の食事の面倒みるのは使い魔なら当然でしょ!」
 便利な言葉だな、使い魔。
 口を開けて待つ咲夜にふと俺は悪戯を思い付いた。
「あーん」
「ん」
 咲夜に餌をやる(?)ふりをして彼女が食べようとした瞬間、箸を引く。
「ぇ」
 空を切った自分の口に一瞬、咲夜は目をしばたかせるがすぐに事情を理解し、むくれ
た。
「ま〜さ〜よ〜し〜」
「ごめん、ごめん」
「使い魔のくせに生意気なんだから!」
 咲夜はぷんっと怒る。
 その怒った表情はまぁ、何と言うか拗ねてるみたいで……その萌えた。
「もうしないからさ」
 笑顔(というかニヤニヤが止まらなかっただけだが)で俺は再び咲夜に箸を向ける。
「次やったら承知しないんだから」

 ヒョイ

 もう一回箸をひいた。舌の根も渇かぬうちにとかそんな話じゃない。即決だ。
 咲夜はもう今度こそ涙目になって俺を睨む。あ、ごめん癖になりそう。
「うぅ〜正義のばかばかっ!」



 まぁ、その後は食事は順調に『食べさせあった』。
 料理を作ってもらったし、食べさせてもらったということで皿洗いは俺がやるとご主人
様(笑)に申し出たのだが、ご主人様(笑)いわく、
「皿洗いは二人でやるの! 命令よ!!」
 とのことで、俺達はさながら新婚夫婦のように仲良く皿洗いをしていた。俺が洗って
咲夜が拭く形だった。
 咲夜よ、そんなことしてるから使い魔にご主人様(笑)とか言われるんだぞ?


「んー」
 それで、だ。
 使い魔といっても何をさせたいのかいまいちよく分からない……というか咲夜本人分
かっていないのだろう。食後、最初にもらった命令は、
「正義、あんた椅子になりなさい!」
 とのことだった。
 椅子……。椅子?
 淫魔という属性と椅子という言葉から俺が連想したもの……それは四つん這いの俺
の上に咲夜が腰掛けるという女王様風のものだった。
 幼なじみに……咲夜にそんな趣味があるだなんて……俺は真剣に軽蔑した目で咲
夜を見る。
「咲夜……お前いくらなんでもそれは……」
「使い魔に拒否権なんかないんだからね! 早くそこのソファーに座りなさいよ」
 リビングにでん、とある三人掛けのソファーを指差し声をあげる。
「?」
 ん? ソファー?
 その時点で俺は違和感というか思い違いに気がついた。
「あのさ、それってソファーの上で、俺の膝の上に乗るってこと?」
「え、他に何かあるの?」
 …………。
 そうだよな、うん。淫魔以前に咲夜だもんな。思い違いも甚だしいな、俺。
「いや、素直にだっこしてって言えばいいのに」
「だっこ、してくれる?」
 俺のぼやきに、咲夜は上目使いに真っ赤な顔で俺を見上げた。
「はいはい、分かりましたよ、ご主人様」
 いや、咲夜にそんな顔されたら断れるわけないじゃん。



「ん」
 ソファーの上に座ると、俺は咲夜を手招きした。鼻歌でも歌いだしそうな上機嫌な顔
で咲夜は俺の膝の上に乗る。
「ん〜」
 気持ちよさそうに心地よさそうに咲夜が俺にもたれ掛かる。長い髪が鼻先に当たり、
甘い匂いがする。ん……これは……結構理性を惑わせるものがある。
 淫魔の力ではない。力は封じられても退魔師である俺に淫魔の力は効かない。そこ
にあるのは俺が昔から知ってる咲夜のものだった。
 つまり、俺、上倉正義っていう奴は飯間咲夜って女の子に弱いってだけの話だ。
「重くない?」
 咲夜が俺を見上げ聞いてきた。
「軽いな」
 正直に感想を告げ、腕の中にすっぽり収まる大きさの咲夜をそっと抱きしめた。
「ん」
 何だか赤い顔のままだったが咲夜が嬉しそうに鳴いた。
 うん、何と言うか、持って帰っていい? これ? テイクアウトするよ?
 安心しきったように頭を寄せる咲夜を前に俺はそんな感想を抱く。
 というか、咲夜……自分が優位に立ったからってすき放題しすぎだと思う。
 咲夜の気持ちは気づいてないわけではないし、咲夜も俺のことを気づいていないわ
けではないはずだが……急激な変化すぎると思う。大歓迎だけど。
「テレビでも見よっか」
 咲夜が俺の膝の上というポジションは崩さず、テーブルにあるリモコンに手を伸ば
す。
 電源を入れ、最初にテレビに写ったのは映画のキスシーンだった。
「うひゃ!」
 淫魔のはずの少女はテレビのキスシーンに奇妙な悲鳴をあげ、電源を切る。
 うわー、なんて狙ったようなタイミングが出来るんだ……と俺としては感心するばかり
だ。
「うぅ……」
 真っ赤な顔で俺を見上げる咲夜。そういえばこのご主人様(笑)は漫画のキスシーン
でも赤くなれる奴だった。ほんとに淫魔か? こいつ。



「どうしたんだ咲夜」
「べ、別になんでもないわよ! ただテレビ見るのやめただけよ!」
「どうして?」
 意地悪く俺が聞くと、咲夜はやっぱり真っ赤な顔で俺を睨む。
「どうしても! 使い魔がご主人様に逆らうんじゃないの!!」
 いやー、もうどうしてくれようか、この娘さんは。
 退魔師として修業してきただけに意志は強いつもりだが……限界っていうものはあ
る。
「では、ご主人様……」
 力をこめて咲夜を抱きしめる。そこにこめられた意味は先程とは違う。彼女の耳元に
そっと口を寄せながら俺はささやく。
「夜伽の準備しましょうか?」
 小さく笑いながら告げる。
「よよよよよよ、夜伽って!?」
 予想通りパニックに陥った咲夜の声。
 もちろん、意味が分からないわけじゃないだろ。赤く染まった耳たぶがよくそれを現し
ていた。
「私が正義となんてあのそのあううううう」
 一息にわたわたと咲夜がうろたえる。俺の腕の中で。
「ご主人様の夜のお相手も使い魔の仕事だろ」
 そんなわけないじゃん。と自分で言いつつ思うのだが、それはまぁ気にするな。
「…………」
 怒った?
 俺の言葉に対する返答はなく、ただ咲夜は赤い顔でうつむいていた。そして、咲夜の
肩は小さく震えていた……。
「咲夜?」
「いいの?」
 俺とは目を合わせず、うつむいたままで咲夜がつぶやく。
「私、淫魔だよ。ひょっとしたら正義の精気吸い取って殺しちゃうかもしれないよ。私、
化け物なんだよ?」
 咲夜の懸念は俺にとって何と言うことは無い問題だった。
 彼女が淫魔であることは取るに足らないことであるし、咲夜が俺を殺すことはないと
確信している。
 例え、淫魔の血に目覚めたとしても彼女の本質が変わるわけがない。
 そのことを咲夜に伝えたかったが……うん、彼女が望んでいるのはそんな言葉じゃ
ないだろう。
「咲夜、好きだ」
 ずっと抱いてきた、でも初めて口にする想い。
 咲夜を抱きしめながら、俺は告白した。
「………私も、大好き…………」
 咲夜が顔をあげる。ゆっくりと目を閉じ、咲夜のピンク色の唇が俺に重なった。


「シャワー浴びてきなよ」
 何度か唇と唇が触れ合うキスをした後、俺は咲夜に言った。
 もちろん、俺はこれから咲夜を抱くつもりだった。告白した直後に、とも思うが……両
親の不在という絶好の機会、そして今日の咲夜の行動。我慢できるわけがない。
「やー」
 咲夜は俺の言葉を拒絶し、俺の服の袖を掴む。まるで逃げるのを恐れるように。
「シャワーしてる間に、正義がいなくなったらやだもん」
「いなくなるわけないぞ……」
「こんな正義が私となんて……夢みたいだもん……一人になったら不安になるもん」
 ……夢なわけないだろ? 馬鹿だな、このご主人様(笑)は。俺の気持ちなんか昔か
ら分かってただろうに。
 もしかすると……自分が淫魔ということで一歩引いてた部分もあるのかな、こいつ。
「咲夜……」
「早く夢じゃないって教えて欲しいもん」
 はぁ……、そう言われて断ることは出来るわけがなかった。
「じゃあ咲夜の部屋、行くか?」
 場所を選ぶとしたら、そこになるだろう。自分の部屋なら咲夜も落ち着くだろうし。
 咲夜を促し、部屋に行こうとするが彼女は何故か俺の袖を掴んだまま動こうとしな
い。
「あんたは私の使い魔でしょ」
「あ、あぁ」
「だったら私を歩かせるんじゃなくて……」
 かぁ〜。
 今にも湯気が出そうな赤面で咲夜がうつむいてしまう。小声になりすぎて最後のほう
は聞こえなかったが、咲夜の言いたいことは予想できた。
「ん? どういうことだ?」
「だ、だから私を……」
「おんぶして欲しい?」
「ちがう」
「だっこして欲しい?」
「おしい」
 うん、絶対分かった。咲夜のして欲しいこと。
 でもそれは咲夜の口から言わせないとつまらない。
「あ〜、ちゃんと言ってくれないと分からないんだが、咲夜さん」
 う〜、と可愛いく唸りながら、咲夜が視線をあげる。咲夜の目にはニヤニヤと意地悪
な笑顔の俺が写っているはずだ。
「お、お姫様だっこ、しなさいよ」
 あくまで命令口調で恥ずかしさのあまりそっぽを向く。
「りょーかい」
 俺は咲夜の身体に手を回すと彼女を軽々持ち上げる。うん、やっぱり咲夜軽いぞ。そ
れとも女の子はみんなこうなのか?
「えへへ」
 小さく……けど明らかに喜色満面の表情で咲夜が俺の首に手を回す。
 はいはーい、もう少しの我慢ですよ。俺。
 正直、理性は限界だった。


「きゃっ」
 咲夜の部屋。
 俺は咲夜をベッドに横たえるとそのまま彼女に覆いかぶさっていった。
「ま、まさよし!」
 咲夜が悲鳴をあげる。
 だけど、その悲鳴は口だけのもので、全く抵抗する様子は無く、咲夜は俺の唇を受
け入れていった。
「んんううっ」
 俺が乱暴に舌を差し込んでいくと咲夜は一瞬、驚いたように震えたがすぐ応えてくれ
た。
 むしろ積極的に俺に反撃をする。咲夜の舌は俺を弄び、すぐに俺の口の中に侵入し
てきた。俺も更なる攻撃をしようとするが、相手は淫魔。分が悪かった。キスは明らか
に咲夜のほうが上手かった。
 咲夜も初めてのくせに……。
 悔しかったので、俺は別の場所を攻めることにした。
 咲夜の服を破るように脱がしていく。咲夜のブラウスをはだけると、真っ白い下着が
あった。
 そして、今にも下着から零れそうな、大きな膨らみが二つ。
 手の平からなお余る膨らみを俺は乱暴に握る。下着の下から手を差し込み揉んでい
く。
「ひゃん、正義ぃ〜」
「ん?」
 舌を離し、咲夜が抗議の声をあげる。
「そんな所、触らないでよぉ〜」
「大丈夫、もっと凄い所も触るから」
「そういう問題じゃない! 使い魔のくせにぃ〜!! ひゃん!」
 言葉の通り、俺は乳房を触るのとは逆の手を咲夜のスカートのなかに潜り込ませて
いった。
 太ももを撫であげていき、咲夜の足の付け根に到着する。

 ぐちゅ

「〜〜〜〜!!」
 俺の右手が湿った音を立てた。
 その音は咲夜にも聞こえたのだろう。両手で顔を覆い、指と指の間から潤んだ目で
俺を覗き見ていた。


「こ、これは、その……ち、違うのよ!」
 何がどう違うのか分からない。
「うぅ〜、さ、触られただけでびしょびしょになる女の子はイヤじゃない? 私、淫魔だか
ら……」
「淫魔とか、濡れやすいとか、そういう問題じゃないよ。俺は目の前にいる女の子が好
きなだけだ」
「…………」
 あ、黙った。
 しかも、もう首筋まで赤くなってるし。照れて言葉にならないなら好きにさせてもらう
よ、と。
「んっ、んん!」
 仰向きに寝転がっても形を崩す様子のない大きな乳房。その先端にはしっかりと存
在を主張する突起があった。
 俺はその突起を指でこね回し、もう一方は優しく噛む。俺の指と口で咲夜はくぐもった
声をあげていた。声をあげるのが恥ずかしいのだろうか、懸命に唇を結び快感に耐えている。

 じゅく

「っっっっ!」

 咲夜の中に指を沈めていく。
 入り込む指は咲夜の湿り気であっけなく飲み込まれたが、まるで俺の指を食いちぎ
るようにきつく、けれど甘く迎え入れた。
 指を軽く出し入れするだけで、咲夜の中から蜜が溢れ出す。
「……ま、正義ぃ……」
 潤んだ咲夜の目が俺に訴えていた。
「正義と、ひとつになりたい……」
「あぁ」
 その想いは俺も一緒だった。
 シャツもズボンも脱ぎ捨てる。咲夜の目は、すでに大きく勃ちあがり、反り返るものを
見ていた。


「や、優しくしてね」
 恐る恐る咲夜がつぶやく。
 当たり前だろ。
 そう言葉にするかわり、咲夜の唇に軽いキスをする。
 咲夜は弾けるような笑みに代わり、そして俺にキスを返してきた。


「いくぞ」
「うん」
 ゆっくりと照準を定める。肉棒に手を添え、咲夜の入口を探る。すでに完全に整った
咲夜の秘処。亀頭で擦られる度に卑猥な水音が鳴る。
「ん」
 咲夜の中に、入っていく。濡れそぼったそこは俺を迎え入れ沈んでいく。
 狭い、きつい。けど、気持ちいい。
「っっっ」
 途中、何かを破るような感覚が伝わってきた。けれど咲夜はわずかに眉をしかめただ
けで決して声を出そうとはしなかった。
「大丈夫か? 咲夜?」
 繋がった箇所からは愛液に混じり、赤い血が流れていた。苦痛を感じてないわけが
ない。
「大丈夫、大丈夫だから」
 気丈につぶやきながら咲夜は俺を見つめる。痛みを我慢しているってことは、俺には
分かる。咲夜の表情でそんなことは容易に窺い知れた。
 俺の心配そうな表情を察したのだろう、咲夜は笑顔を作りながら言った。
「もう一回、キスしてくれる。そうしたら頑張るから」
 キス。
 俺は咲夜にキスをしながら肉棒を押し込んでいった。
 咲夜が苦痛にあえぐ声も俺はキスで打ち消した。互いの息を止めるような強烈な口
づけで。


17 :淫魔の使い魔 :2009/04/08(水) 22:18:17 ID:78frDBLS
「んんんっ」
「全部、入ったよ」
 俺の肉棒が咲夜の膣内に収まる。肉棒を包む柔肉はそれだけで心地良く、すぐに動
き出したい衝動を与えてきた。
「正義とひとつになれたんだぁ」
 咲夜の、心の底から幸せそうな声。
 繋がりあった部分と抱き合う身体。ぴったりと密着し、俺達の距離はゼロになってい
た。
「そうだな」
 嬉しさが込み上げて、俺はまた咲夜にキスをしていた。咲夜も同じ気持ちだったのだ
ろう。俺の首に手を回し、キスで応える。何度も何度も交わしあうキスだった。
 やがて、唇を離すと咲夜はか細い声で言った。
「動いてくれる?」
「大丈夫なのか?」
 咲夜を気遣う俺の言葉に咲夜は首を振り、
「動いてくれなきゃ、いや」
 そして、飛び切りの笑顔で告げた。
「私で気持ちよくなって、私も気持ちよくして。これは命令なんだから!」


「ああああっ」
 咲夜の言葉に俺は動く。さすがにいきなり激しくは動けない。そう思っていたが、気
がつけば俺は全力で咲夜に身体を打ち付けていた。
 肉棒を包む咲夜はきつく、何重ものうねりになって俺を締め上げる。
 そのくせ後から後から湧き出る蜜で潤滑な動き与えてくれるのだ。
 淫魔の力だろうか、その快感は俺の頭を咲夜一色に染め上げていく。
「あぁあ、まさ、よしぃ!」
 快感は咲夜も感じていた。
 見たこともない淫らな、綺麗な表情で俺を呼ぶ。初めて見る、俺だけが見る咲夜の顔
だった。
「咲夜!」
「あああ、ん、ま、あああ!」
 咲夜の表情に苦痛の色は消えていた。ただ一突きする度に淫らに喘ぐだけだった。
「気持ちいい?」
「奥、まで届いて、んんぅぅ!」
 髪を振り乱し、乳房を揺らし、快楽に翻弄される。俺がキスをすると、まるで獣のよう
に俺の舌を貪った。
「ああ、あぁ」
「ん、ぅん、咲夜」
「まさよしぃ……」
 あとは獣だった。
 ただひたすら腰を動かし、貪りあう。
 長年の付き合いの結果か、相性がいいのか、俺達の動きは高みに向かって完全に
シンクロしていた。
「あああ、きもちぃ、あああ、ひゃん」
「ん、ああ」
「まさよし、は、良い?」
「あぁ、気持ちいいよ。咲夜」
 俺の言葉に笑みを浮かべる。そして、キス。その間も互いを求め合う身体は止まらな
かった。激しく湿った音が耳に届く。だが、そんなものは俺達が燃え上がる材料にしか
ならなかった。
 激しくまぐわりあう獣。だが、やがて限界は訪れる。
 今までで最高の猛烈な射精感が沸き上がる。肉棒が震え今にも暴発しそうだった。
「さく、や!」
「うん、私も」
 言葉無くとも互いに終点が近いのは感じていた。達する時も一緒だと予感もあった。
「っっ、出るぞ」
 限界が近づく。それでも腰の動きは止まらなかった。
 外にだそうとは思わなかった。咲夜の膣内に注ぎ込みたいという衝動。
 そして俺を包み込む咲夜は決して俺を離そうとはしなかった。
「来て、……私のなかにっ!」
 ぎゅ
 力強い抱擁で咲夜が俺の背中に手を回す。
「っ」
「ああああっっっ!」
 咲夜の絶叫が響く。同時に俺は咲夜の一番奥で滾りを解き放っていた。
 ドクッ、ドクッ
 肉棒が震え咲夜の中に注ぎ込まれていく精液。彼女は余すことなくそれを受け入
れ、どこかうっとりとした表情で俺を見つめていた。
「正義……んっ」
「ん」

「ん……」
 ものすごく心地良さそうな声をあげて、咲夜が微笑む。うつぶせで俺の上に寝転がっ
ている。咲夜の豊かな双丘は俺の胸で潰れ、うん、凄まじい光景だ。
「咲夜、大丈夫か?」
「??」
 デレデレと笑顔を変えず咲夜がちょこんと首を傾げる。
「初めてで痛かったり、そういうのは」
「嬉しかった」
 さいですか。
 ぽふん、と音をたてそうないきおいで咲夜は俺の胸に顔をうずめる。
 この調子だと大丈夫のようだ。というか可愛いな、おい。
「正義……」
 俺の顔を見ず、咲夜が声をかけてきた。何を言うつもりか、もうすでに耳まで真っ赤
だった。
「ん?」
「こ、これからもずっと一緒だからね。命令」
 思わず吹き出しそうになった。そんな命令……だいたい今までだって一緒だったが
なぁ……。
 その命令に対する答えは決まっていたし、それは命令されるまでもないことだった。
だから、
「おう」
 俺は短く答え、彼女の頭を撫でる。
 ま、こんなご主人様(笑)の使い魔なら悪くないな、と思う。
2009年10月28日(水) 19:36:38 Modified by amae_girl




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