6-73 甘え吸血娘


 トントンとドアを叩く音がした
 何かと思って玄関に出てみると、肌の真っ白な美少女が立っていた
「血を吸わせて下さい」
 とりあえず血をあげることにした。とても嬉しそうに、彼女は血を吸った

 またある日、トントンとドアを叩く音がした
 玄関に出てみると、見覚えのある美少女が立っていた
「血を吸わせて下さい……あれからまた、何日も……」
 可哀想に思った俺は、また血をあげることにした。ありがとう、と何度もお礼を言われた

 何日か経って、またトントンとドアを叩く音がした
 玄関に出てみると、すっかりおなじみの美少女が立っていた
「お願いします、どうか血を吸わせて下さい……誰からも断られて……あなたしかいないんです」
 少々貧血気味ではあったが、今回までは、と思って血をあげることにした。彼女は涙を流して喜んでいた

 それ以来、ドアを叩く音はしなくなった
 病院なんかに無理言って血糊を用意したり
 俺の体にもなるべく血になるものをと、嫌いなレバーを口にするようにもした
 なのに彼女は来ない

 すっかりそのことを忘れ始めていた時、トントンとドアを叩く音がした
 玄関に出てみると、すっかり痩せ細ってはいたが、あの美少女が立っていた
「私……あの……」
 俺は何も言わず、彼女を抱き締めた

 ドアを叩く音はもうしない
 それを聞いて、玄関に出ることもない
 情が移ってしまっただけかもしれないが、俺を頼ることに遠慮なんてしなくて良い
 彼女は今日も、嬉しそうに俺の血を吸う


インターホンあってもドアを叩く方が風流で好きです
2009年10月28日(水) 19:41:47 Modified by amae_girl




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