6-93 はっとり

 既に桜も散り、緩やかな風が眠気を誘う。
 ここは甘味所『はっとり』の前。義姉さんの店だ。
 既に閉店間際の時間だが遠慮なく店内に入る。
 客は会計中の一組のカップルのみ。ずいぶんとラブラブだ。
 ぺちん。
 あ、彼女が額を叩かれた。あーあ、赤くなってる。
 左手が額をさすりながらも右手は彼氏の腕に絡んでいる。仲がよろしいことで。
 座敷席で待つこと少し、売上の確認を終わらせた義姉さんが隣に座り、自分の腕に抱きつく。
「いらっしゃい、かざくん」
 『かざ』君。自分のことだ。ちなみに風矢と言いますよろしく。
「?」
 どしたの?とでも言いたそうな顔でこちらを見ている彼女が義姉のつぐみさんだ。


毎日いつも腕に抱きついて飽きない?
「それはありえないなぁ。私にとって大事な日課だもん」
…日課て。
「う〜ん、相変わらずいい臭い」
 首筋に顔を埋め、フンフンと鼻を鳴らす。正直くすぐったい。
 それに義姉さんも甘味が混じった凄く甘い臭いがする。
 いかん、このままでは籠絡の危機だ。理性よ耐えろ。
「かざくん」
なんでしょうか義姉上。
「今日も私はいっぱい頑張りました」
だね。
「ご褒美を所望します」
…いつもの?
「今日は少し変わったことがしたいな」
 いやな予感がギュンギュンとする。
 ちなみにいつものメニューだと包容となでなで、時々キス。ごくまれにエッチ。
 …一体何を所望するのやら。


「う〜ん、いい気持ち〜」
ソウデスネ。
「背中向けてないでこっち向きなよ〜」
オカマイナク。
 ここは湯気立つところ。つまり風呂。義姉さんは自分との混浴を所望してきたのだ。
 しかもタオル不可。
「ム。…えい」
 義姉さんの声と同時に背中に柔らかな感触…って。
うわあ!ちょ、義姉さん?
「フフフ、お仕置き〜」
 ムニムニと自分の背中で義姉さんのが蠢いている。しかも何か堅いものの感触まで…。
「ん…どう?気持ち…いい?」
 ここまでされたら自分の理性など簡単に吹き飛ぶわけで。
 ぐるりと向きを変え義姉さんの唇を強引に奪う。
 自分を燃え上がらせた責任はしっかり取ってもらおう。
 夜はこれからだ。
2009年10月28日(水) 19:45:30 Modified by amae_girl




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