6-996 女の子目線

起きたら、彼がいなかった。それが、どんなにアタシを不安にさせるかって気づいてる?

来て早々、人のベッドで昼寝始める女に呆れちゃった?
彼の匂いに満ちている部屋なのに、彼の気配が無い。一人ぼっち。
嫌などろどろした考えが、どんどんと胸を支配していく。
「ただいまー」
玄関のほうから声がした。まだ靴を脱いでいる途中の大きな背中に飛びつく。
「ばか!なんで黙ってどっか行っちゃうの!」
「飲み物切れてたから、コンビニ行ってきただけですよ?ついでに、おまえの好きなプリンも」
「あ、コンビニ行ってただけ・・・?」

確かに、ここは彼の家だし、昼寝が終わったら2人で出かけようとも言っていた。
黙って一人で遠くに行くなんて、彼らしくない。
なのに、起きたら、彼がいなかった。―それだけで不安になった自分が急に恥ずかしくなり、
鼻をぐずぐず言わせながら、ごまかすように彼の背中に回す腕に力をこめる。
「ばかはそっち。なに泣いてんのさ。」
「泣いてないもん!」
「じゃあ、オレの背中がやけに湿っぽいのは鼻水?それとも汗?」
「〜!知らないっ!」

彼が笑いながら、あたしの腕をほどくとそのまま向かい合うように座らせてくれた。
仕事中とは全然違う、アタシだけに見せてくれる優しい表情。
「よく寝てたから、起こさなかったんだけど、不安にさせてゴメンな。」
ああ、やっぱり彼は、アタシの気持ちなんてお見通しだ。
彼の顔が近づき、涙を掬い取るようにキスの雨が降り注ぐ。
目尻、頬、おでこそして唇。
彼がアタシの肌に触れるたびに、見えない印を付けられているようで胸が高鳴る。

この温もりがある限り、何度不安になってもアタシは絶対幸せ者だ。
2009年10月28日(水) 21:45:32 Modified by amae_girl




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