6-506 梨佳3

「じゃあそのDVD、今からゆーくんちで見せてよ」
「え?」
 コーヒージェリーフラペチーノから突き出たストローを唇から離して、彼女はにっこり微笑んだ。
 土曜、PM2:00、渋谷、スタバ2F。
先ほどTUTAYAで購入したDVDを、思わず落としかけた。
「せっかく渋谷に来たのに? 俺ん家、こっから一時間以上はかかるぞ」
「いいじゃん。まだ2時なんだし」
 ゆるふわにカールするセミロングの髪をくるりと指でいじって、彼女が笑う。
待てよ、いきなり俺の部屋に来るだなんて、そもそも俺の部屋だなんて、掃除……この前したばかりだった。
黒いぱっちりとした瞳がぱちぱちと瞬いて俺を見た。
「そうと決まったら早く行こっ」
フラワードットのワンピースの裾を、花びらのようにひるがえして彼女は席を立つ。
その脚線美にしばし魅入る。
どうやら俺に選択権は無いようだ。
 スクランブル交差点の人ごみを掻き分けて駅に向かう。
手を繋いでやると、彼女は嬉しそうに俺の腕に擦り寄る。
 本当は街中で手をつなぐなんて、こっ恥ずかしくて嫌なんだが、
まあ、なんだかんだあったことだし、何より彼女が喜ぶから、なるべくつなぐことにしている。
現代版の美女と野獣のような俺らを見て、驚く周囲の視線は、いまだ慣れないけどな。
 移動の電車のなかで始終、俺の脳内は算段めいたものでいっぱいだったのは言うまでもない。
 親父は出張で来週半ばまでもどらないし、ここぞとばかりお袋は、友人と出かけると言っていた。
あと残る唯一の問題は、姉貴だ。
奴も出かけていれば、パーフェクト。そうしたらもう、誰もいない。
その俺の部屋にくるってことは……くるってことは……してもいいのか? いいよな。
先週はすごいイイところまでしたわけだし。
今度こそ、まともに、人目を気にせず、俺の部屋で、ふたりっきりでっ。
そう考えると、健全な俺の下半身が反応しだす。
ああ、待て。はやるな。まだ早い。
* * *
 電車を乗り継ぎ、揺られること予告どおり一時間、俺の家につく。
「ただいま」
「お邪魔しまーす」
 彼女は緊張した面持ちで、履いていた焦げ茶のグラディエーターサンダルを脱いだ。
とりあえずリビングに顔を出すと、俺の願いはむなしく散り、姉貴がそこに居た。
「おかえり、裕二。おや、その子は?」
「俺の彼女。瀬川梨佳。梨佳、これ、俺の姉貴な」
「はじめまして。瀬川梨佳です」
 彼女は緊張に頬を赤らめながら、ぴょこんと頭を下げる。
「うわっ。かーわいーー。梨佳ちゃん? よろしく。姉の羽純です。
 いやあ、うちの裕二を選り抜くとは、君、良い目をしてるね」
 嫌味のようだが、姉貴は本気で言っているらしい。
その少年めいた美貌の効果を最大限に生かして、爽やかな微笑みを梨佳に向けた。
ムサ苦しいオジサンを絵に描いたような父の遺伝子を見事に受け継いだのが俺ならば、
見た目麗しい母の遺伝子を余すところなく受け継いだのが姉だ。
 その美貌から放たれる微笑をまともにくらって、梨佳の頬がさらに薔薇色に染まる。
姉貴は俺の袖を引っ張って、小声で耳元で囁いた。
「裕二、こんな可愛い子を捕まえるなんて、さすがじゃないか」
反応の仕様がなく、肩をすくめる。
「飲み物とかお菓子、用意してやりたいとこだが、友達と待ち合わせで、ちょうど家を出るとこなんだ。
 裕二、ちゃんとおもてなし、しなよ」
 それだけ言い残すと姉貴は、軽やかに身をひるがえして玄関に向かう。
よく見れば姉貴は、この昼の暑い中、長袖をきっちり着込んで、右手にはキー。愛車のバイクで行くのだろう。
姉貴さえ消えれば、俺は彼女と、二人っきり。
俺は姉貴を見送りながら、心の中でガッツポーズをしたのは言うまでもない。


* * *
「ゆーくんの部屋、ゆーくんの匂いがする」
 彼女は俺の部屋に入ると、きょときょとと辺りを見回し、くんくん鼻を鳴らしてそう言った。
「え……。そんなの匂うのか? くさい?」
 ぎょっとして、すんと鼻を鳴らしてかいでみる。俺の鼻には何も匂いはしない。
「んーん。いい匂い。すっごく好き」
 彼女はゴロゴロと喉を鳴らしそうな勢いで俺の腕に擦り寄り、甘えてきた。
これは……これは、いきなりOKってことなのか? そうなのか?
「私、ゆーくんのお姉さん見て、納得しちゃった」
 彼女はくすすと笑いながら、黒々と輝く瞳で俺を見る。
「何を?」
「ゆーくんってさ、すごい可愛い子とか、すごい綺麗な子とかいても、まるで反応しないじゃない?
 人を見かけで判断しないとか、そーゆーことかと思ってたけど、そーゆーことだけじゃなくて、
 あんな綺麗な人と一緒に暮らして、毎日見てるんだったら、
 そのへんの美人な子なんて、まるでフツーの子だもんねぇ。ナットク、ナットク」
 そう言いながら、彼女は部屋のテレビの向かいのベッドに腰掛ける。
そこに座るとは! もういいってことなのか? そうなのか?
彼女は手を伸ばし、ベッドの上に転がっていたリモコンをとると、ぱちりとテレビをつけた。
「DVDデッキこれ?」
 彼女はテレビの前にしゃがみこむと、DVDの包装を手際よくはいで開くと、カセット口にセットする。
そうだ。DVDを見にきたんだったっけ。忘れてた。
メインメニューから本編再生を選ぶと、有名アーティストのライブ映像が始まった。
「ねえ、もっとくっついて一緒に見ようよ」
 彼女は甘えた声を出す。ベッドサイドの壁を背もたれ代わりにして、二人並んで座った。
彼女は俺の腕に自分の腕を絡ませ、俺の肩に頬をくっつけて、ライブ映像を見入っている。
だーかーらっ。腕におっぱい、当たってるっ、おっぱい。
ぶっちゃけ、テレビに映る映像も流れる音声も、俺の脳にはまともに入ってこない。
まだ明るい真昼間だけど、誰もいない家、俺の部屋、彼女と二人っきり。
こんな状況で、どーしてDVDなんてまともに見れる?
しかも彼女の柔らかい胸が俺の腕に密着して、髪からシャンプーのいい匂いが俺の嗅覚を突く。
すでに俺の股間は戦闘態勢に入り気味。
しかし……だめだ。俺は。
まったくのチキン。チキン野郎だ。
きらきら目を輝かせて映像に見入る彼女を、どーいうタイミングで切り込めばいいのか、全くわからん。
彼女が飲み物のおかわりが欲しいと腰をあげるまで、ほとんど身動きも出来ず、固まっていた。
「おかわりなら俺が持ってくるよ」
「いいよ、ゆーくんはここに居て。冷蔵庫からついでくるだけだもん。大丈夫。
 そのくらいさせてよ。いいでしょ?」
 彼女は空のグラスを手にして部屋を出る。
しばらくの間があり、アイスコーヒーに満たされたグラスを手に彼女が戻る。
「はい、ゆーくん」
「ありがとう」
 一時停止を再開させて、手渡されたグラスに口付ける。
彼女がまた、ぺたりと俺に密着して隣に座る。
彼女の視線が、テレビに流れる映像ではなく、俺にあることに気付く。
「どうした? もう再生してるよ」
「うん。それは、わかってる……けど」
 俺を見つめる瞳が、黒く瞬いてうるうると光る。
彼女は突然、俺の身体に抱きつくと、俺の胸にすりすりと頬を押し付けた。
「ゆーくん、いくら待っても、さっきからちっとも、何もしてくれないだもん。もう、待ちくたびれちゃった」
 えええっ! 待ってたって、何を……って、聞くまでもないよな。
しかし、えええ? ずっと俺から仕掛けるのを、待ってたって言うのか?
俺は見た目ムサイ通りの超鈍感男だったのか。全く気付かなかったぞ。
「せっかく、二人っきりだったのに。ゆーくん、わかってないよ」
 彼女の言葉に何かひっかかった。
そういえば、彼女が席を立っている間、何かに違和感を感じたことを思い出す――が、
彼女の次のセリフを聞いて、俺の理性は吹き飛んだ。


「女の子はね、好きな男の子には……むちゃくちゃにされたって、かまわないんだよ?
 かまわない……というより、私は、ゆーくんに、むちゃくちゃに、されたい」
 彼女は眉根を少しよせて、悩ましげな表情で俺を見つめる。
 例によって色黒でわからないだろうが、すっかり真っ赤に染まっているであろう俺の顔を、
うるんだ瞳でじいと見つめて、彼女の柔らかい唇が魅惑的に動いた。
「ねぇ……キスぐらい、いいでしょ? ゆーくん、お願い。キス、して」
 迷いなんて微塵もなかった。俺は彼女の唇に、噛み付くように自分の唇を重ねた。
柔らかく、あたたかい彼女の唇の感触。
しっとりと味わって、唇を離した。俺を見上げる彼女の瞳を見つめ返して呟いた。
「俺はその……知ってると思うけど、初めてだからさ、……うまくないけど、いいか?」
彼女はうっすら涙に濡れた瞳で、くすりと微笑む。
「そんなの全然、関係ない……よ。
 私のほうこそ……っ……初めて、じゃなくて、ごめんね」
 ふるりと怯えた目で俺をみて、睫を伏せる。
「ばーーーか。それこそ関係あるか」
 ぐしゃぐしゃと頭をなでた。彼女は涙目で微笑む。
 震える彼女の唇に、何度も唇を重ねる。
まともな思考が溶け出す。本能がそそり立つ。
待ちに待って、我慢に我慢を重ねていたのは俺のほうで、すでに性欲の塊と化してた俺は、
勢い止まらず、抱きしめた腕の中の彼女をベッドにそのまま押し倒すと、貪るように唇を吸っていた。
俺の分厚い舌を彼女の咥内に押し込み、彼女の舌を絡めとる。
「ふ……は、ぅぅん」
 甘ったるい声が彼女の鼻からもれる。
既に彼女の肌を知っていた俺の手のひらは、留まっているわけがなく、
ミニのワンピースの裾をめくりあげて脱がせると、その下の輝くような白い肌をむきだして触れた。
ブラジャーを外すのになんとか成功し、その豊かな胸を部屋の空気にさらけださせた。
仰向けにころりと横になった状態でも、重力に負けずしっかり盛り上がる胸の膨らみ。
その頂点にピクンと色付く、赤みを増した突起。むしゃぶりつくように、その先端を口に含んだ。
「ひゃっ……ゆー、くん……っ」
 押し殺した小声で囁いて、彼女の華奢な背中がびくんと反る。
その反応が、たまらなくかわいいなと思う。
俺の心臓がばくばくうなってる。血が頭から吹き出てもおかしくないくらい、興奮している。
彼女の身体はこんなにも、柔らかい……あたたかい。触ってるだけで、気持いい。
すっかり硬くなったその胸の先端を口に含み、舌で舐めまわしながら、もう片方は指でこね回した。
胸の膨らみ全体の、その柔らかさを味わいながら、手のひらで揉み解す。
十分というほど堪能して、胸から口を離すと、もう一度彼女にキスをする。
「んっ……んんっ……、ゆーくん、もっと」
 消え入るような声で、彼女は必死の感じで俺に甘えてくる。俺の背中に腕を回し、抱きついてくる。
すでに下着一枚になった彼女は、なやましく身体をくねらせ、股をすり合わせている。
「こっち、触ってもいいか?」
 そのすり合わせている股の間にそっと手を這わす。
顔を真っ赤にした彼女は、こくこくとうなずいた。
「んっ……ん、んんんっ!」
 下着の間に手を差し入れ、その股の間の彼女の裂け目に指を這わすと、
ぬめぬめとした触感が指に触れて、声を押し殺した彼女の身体が敏感に跳ねた。
「すごい濡れてる」
 あえて口に出して言ってやると、彼女は堪らなそうに眉をしかめて、ひぅぅと情けない声を出した。
「ゆ……くん、ゆーくん、お願い、もっと、もっとそこ、触ってぇ」
 顔をしかめながら、泣きそうな声で、俺にねだってくる。
俺は微笑んで、自分の無骨な指を、彼女の中にうずめた。
「ひ……んんっ」
 彼女の狭い粘膜が、俺の指をきゅうと締めてくる。指が溶けそうなほど熱い。
この中に、俺のを入れたら……想像を絶するくらい気持よさそうだ。
今日ついに、それが出来るかと思うと、無理やりにでも、もう彼女のなかに突っ込みたい衝動が押し寄せる。
それをぎりぎりで押し止めて、彼女のなかに差し込んだ指で、彼女のなかをかき回す。
「んっ……、んっ……んんっ」
 ぷちゅくちゅと卑猥な水音が、俺の指を動かす度にそこからあがる。

 彼女は桜色の唇をかみ締めて、背中をのけぞらせながら必死に快感に耐えている。
はっきり言って、どこをどう刺激してやれば、彼女が気持よくなれるかイマイチ分からんが、
彼女の様子をつぶさに観察して、彼女がぴくんと震えるところ、彼女の声が高くもれるところを
探り当てて、押し込んで、重点的に責める。
ふいに指をそこから引き抜くと、閉じてた目をしっかり開けて、彼女が悲しそうに俺を見た。
「やっ……ゆーく、ん。やめちゃ……やだぁ」
「下着、脱いだほうがいいだろ?」
 俺がそう言うと、彼女はうぅと呻いて、やはり、こくりとうなづいた。
俺は彼女の下着に手をかけて、その長い脚から引き抜いていく。
「なあ、その……見てもいいか?」
「やだ……ゆーくん、いちいち……そんなこと、聞かないでよ」
 彼女は真っ赤にうつむきながらも、俺の腕の力に任せて、おずおずと脚を開いた。
思わずまじまじと見つめてしまった。
開かれた細く白い太ももの肌とは対照的に、赤みを増した肌。
綺麗なピンク色のひだひだが、誘うようにひくりと震えて、愛液にぬめって光って艶かしい。
こういうことは、彼女とが初めてなわけで、女の子のその部分を見るのは、当然初めてなわけで、
いや、もちろん、動画とか写真とかでその部分を見たことはあったんだが、
直に目の前にするのはやはり、その視覚的刺激は特別だった。
しかも、好きな女の子のその箇所。愛しくないはずがなかった。
「っ……ゆ……くん……恥ずかしい、よっ」
 彼女は泣きそうな小声で訴えながらも、しっかりと脚開いたままだ。
ぴんと伸ばした彼女のつま先が、かりりとシーツをひっかいて震えている。
その艶かしく光るひだに、つつと指を這わしてみる。
「っ……」
 びくんと彼女の身体が跳ねる。
思いつきのままに、その箇所に口付ける。
「ひッ……は、あぁ、ゆーくぅ…ん」
 指でその裂け目を押し開くと、ぷつりと膨らむ小さな突起が飛び出してきた。
顔を出す植物の芽のように、葉の間から顔を覗かせる蕾のように、赤く色付いている。
たぶん、これが彼女の、とても敏感な部分なのだろう。
そこにちゅっと口付けて、舌を這わせてみる。
「ん、きゃっ……んッ、――――っ!」
 電撃に触れたように、彼女の身体がびくびくとのたうつ。
予想以上の反応に満足した俺は、容赦なくぺろぺろと舌を使った。
「ひぅ……ひゃ、ひぃぃ、ひ、もち……いいよぅぅっ」
 彼女は情けなくも可愛らしい声をもらす。
その声が可愛くて、もっと聞きたくて、夢中で弄るように、その突起を舌全体で舐め続けた。
時折、唇で吸い込んで、ちゅっちゅとついばむ様にキスを重ねた。
「あぅ……やっ……ゆー、く……も、いっちゃぅ」
 彼女はまるで、悲しそうに小さく訴えると、息を止めて、全身をびくびくと痙攣させた。
すっかりとろとろになった下の口は、あふれる涎のような愛液を垂らしている。
「ぁっ……ゆーくぅん、お願い、入れてほしーよぅ……
 もう、あ、たし……これ以上、我慢したら……どーかなっちゃぅ」
 ぱっちりした大きな瞳を涙でいっぱいにして、俺に抱きつき、くぅんと子犬のように甘えた声を出す。
耳元にそんな声で囁かれるだけで、俺の下半身の膨張は、はちきれそうになる。

 ジーンズとトランクスを素早く脱ぎ捨て、外装を破りゴムをとりだす。
とっくに準備満タンだった俺のイチモツに装着させようとした。
えーと、これ……どっちが裏で表だ?
まったく慣れない作業なものだから、もたもたと戸惑ってしまう。
彼女の熱い視線が、じーっと俺のものに向けられているから、余計に。
ここぞというときになって、こんなことにもたつく男なんて、なんとも情けなく見えるだろう。
くっそ。こんなことなら、つける練習でもしておけばよかった。
いや、でも、そんな虚しいことを試して見る気は起きなかっただろうが。
 仰向けにベッドに寝そべっていた彼女がむくりと起き上がると、
魅惑的な笑顔を浮かべながら俺のものに手を伸ばした。
「ゆーくん、私がつけてあげる」
 ネイルジュエリーが光る指先が、その爪が当たらないように器用に動いて、
俺の張り詰めたものにゴムを装着させた。
おまけに俺のものに、愛おしそうに、すりすりと指先を絡める。
その刺激だけで、敏感な俺の先端は、ビクンと反り返る。
「梨佳……ありがと、もういいよ」
 このままじゃヤバイと思って、彼女の身体をそっと離す。
彼女はまたベッドにゴロンと仰向けになり、恥ずかしがりながらも、その長い脚を折り曲げ、開いた。
「きて、ゆーくん……」
 白い頬を赤く染めて、甘えた声をだす。
堪らず彼女の身体に覆い被さり、とろとろに涎をたらす彼女の下の口にあてがった。
先端部分が入り込むだけで、蕩けるような熱がそこから伝わる。
「は、ぅぅっ、あ、ゆー、くん、の、はいって、きたぁ……」
 彼女が小さく息を飲んで、喘いだ。
予感に震える。頭の血管が全部、逆流を開始するようで、彼女を気遣う余裕も全く無く、
本能のまま腰を突き立てることしか頭に無かった。彼女の身体を押し開いて突き貫く。
包まれ、締められ、蕩けるような快感。
自分の身を最後まで撃ちつけて、しばらく今にも飛び出しそうな衝動に耐えた。
「ひ、……ひぃ、いん……ぅ、うぅぅ」
 酷く追い詰められたような彼女の声で、俺は我に返る。
彼女を見ると、長い睫は伏せられて、顔をしかめて、ぼろぼろと大粒の涙をこぼしている。
――――泣いている?
思わぬ事態に、俺はすっかり動揺してしまった。
「梨佳……? 大丈夫…か? どーしたんだ」
 声を掛けたものの、俺に組み伏されたまま、喉をひきつらせる彼女に、どうしていいかわからず、混乱する。
やめて抜いたほうがいいのだろうかと迷ったが、そんな気はまったくない俺のイチモツは、
むしろ前より凶悪に張り詰めて、彼女の奥底に深く入り込んでいる。より深く、入り込もうとしている。
……まったく引く気がないぞ、俺。
「やめて、ほしいのか。やめよう……か?」
 もし彼女がそう望むなら、迷うことじゃない。
俺が腰を引きかけた時、彼女のかすかな声がした。
「ちが……うよ、ゆーく……。やっと、ゆーくんと、ひとつに、なれたと思ったら、
 うれ……しくて、すごく、きもち……良くて、なみだ……とまらなく、なっちゃった……」
 ぐすと鼻を鳴らして、覆いかぶさる俺を下から見上げる彼女が可愛くて、
俺は腕を伸ばすと、彼女の頭をよしよしと撫でた。
えへへと、泣きながらも彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「えっと……動いても、いいか?
 正直、けっこう限界だし、よくわかんねーし、むちゃくちゃかもしれないけど……」
「……ゆーくん、そんなこと、聞かないでってば……。
 何度も……言わせないで。私は、ゆーくんに……むちゃくちゃにされたい、んだよ?」
 まるでゴロゴロ喉を鳴らす子猫のように、甘えた声を彼女は出した。
腕を俺の背中に回して、渾身の力で俺にしがみつく。
「ゆーくんの、熱いね」
「うん……お前のなかも、すごく熱いよ」
 俺も、渾身の力で彼女の細い身体を抱き返す。
「ねぇ、早く……私のことむちゃくちゃに、して」
 甘くて、聞くだけで歯が溶けそうな言葉を彼女が俺の耳元で囁く。


 大きくつぶらな瞳から、まだ大粒の涙を滴らせながら、彼女は俺に懇願した。
小さなキスをその瞼に落とすと、俺は本能の衝動に従うままに、
腰をひいては打ち付ける動作をがむしゃらに開始させた。
律動を繰り返す。その動きとともに、聴覚を刺激する水音があがる。
彼女の内面を深くえぐり、荒々しく渦巻くような
摩擦からくる快感に、俺は達しそうになる。
ここでいってしまっては、あまりにもあっけない。歯を食いしばって堪える。
責めが弱まったことで、息を噛み殺すように耐えてた彼女の赤い唇が開き、ひうぅと小さく悲鳴を上げた。
「ゅ……くん、ぁた、し、もう、だめ。
 それ以上した、ら、声、我慢でき、ないよぅ」
 涙で光って、わなわな震える唇がかわいくて、またキスをした。
強烈な欲望が湧き上がるのを感じた。
自分の中に、こんなに狂暴な部分があるとは知らなかった。
「声、我慢するなよ」
「だって――――」
 彼女の唇が何か動いた気がしたが、もうそんなことにも、
彼女への僅かな気遣いさえも、する余裕がなくなっていた。
 リミッターが外れたみたいに猛り狂って、彼女の華奢な身体に容赦なく腰を打ち付けた。
「ああっ……ああぁっ……ゆーくっ! あっ、あ、だめ、いっちゃうっ……!
 ……ひあっ、あふ、あっ、いくっ、ああ、いく、いっちゃうぅぅーーーっ!!」
 身体をなかから壊されそうなほど揺さぶられ、悲鳴をあげて彼女はガクガクと痙攣する。
俺を包み込む熱い襞が強烈に締まる。思わず俺の口から獣じみた呻き声が出る。
一瞬の間を置いて、俺も膨らみきった硬い緊張を解放する。大量の白い濁流が吹き出ていく。
腰から溶けていきそうなほど気持ちいい。
「……ゆーくぅ…ー、ゆーくぅん」
 涙を滴らせて彼女は、両手を広げて幼い子供のように俺に抱擁を求めてくる。
いじらしいとしか言いようのない彼女の仕草と表情と声に、俺の胸は鷲掴みにさ
れる。すぐさま彼女の身体を抱き締めてやる。
彼女が苦しげでも心底嬉しそうに、ふぐぐと小さく悲鳴をあげるほど強く。

 快感の大半が過ぎ去って、ようやく俺も彼女も荒い呼吸を整える。
硬さを失った自身から、先端に白い液を貯めて膨らむゴムを引き剥がす。
ねっとりと自分の白液で汚れるそれを、ティッシュで拭きとろうとしたとき、
彼女の細いしなやかな指が伸びてきて俺の手を止めた。
「だめだよ、ゆーくん。私がきれいにするっ」
 彼女は甘えた声をだし、魅惑的な唇の両端をにっこり引き上げる。
まるでそうしたくてたまらなかったように、嬉々として目を輝かせて、俺のものをパクリと口に含んだ。
「……っ!」
 舌でぺろりと転がされると、大量の液を吐いて萎縮したはずのそれが、またむくむくと膨らみだす。
さっき果てたばかりなのに、こいつが、俺のものを口に含んでいるなんて、
そう考えただけで興奮していきそうだ。
考えだけじゃなく、実際に彼女は俺のものにしゃぶりついている。
彼女のなかとはまた違った咥内の感触に、俺はたまらず呻き声をあげる。
きっと吐き気すら催すに違いない俺の精液で、まみれていたはずたけど、
彼女はそれが甘い蜜であるかのように丹念に舌を這わして、美味しそうに喉を鳴らして飲み込む。
 やばい。想像以上に気持ちいい。
挿入のときと違って、ある程度持たせなきゃというリミットがないだけあって、
彼女の淫らな愛撫に射精感が一気に高まる。
「り……かあっ」
 もうワンストロークで達してしまうという時に、彼女はそそり立つそれから、ちゅぽんと口を放した。
「〜〜〜っ!」
 もう少しで、というところでおあずけをくらって、情けない悲鳴が上がりそうになるのを必死で噛み殺す。
ぎんぎんに張り詰めた俺のものから口を離した彼女は、びくびくとそそり立つ俺のを見つめ、
うふふうと甘い溜息を漏らしながら、それが愛しくてたまらない様子で、
脳裏に焼きつきそうなほど可愛らしい満面の笑みで、すりすりとそれに頬擦りをしだした。


柔らかい頬の感触が上下に擦られるだけで、炎があがるような快感が走る。
俺のイチモツが、先端を最大に膨らませ、ビクンと反り返る。
「っ……ばかっ、おまっ……なにしてっ――っ、う、あっあっ」
 ほとんど達しかけていたから、もう止まらない。
そう間も置いていない二度目の射精なのにかかわらず、大量の白濁液がどびゅると宙に噴出した。
「きゃっ」
 驚いた彼女が小さく悲鳴を上げる。
きょとんと大きな瞳を瞬く彼女の小さな鼻を跨って、逆さにしの字を書いて、俺の精液がどろりとかかってる。
うわっ……これって、狙ったわけではないにしろ、思いっきり顔じゃないか。
AV女優じゃあるまいし、彼女の顔にかけてしまうとは。
「っ、ごめん」
 慌ててティッシュを引き抜き、彼女の顔を拭いてやろうとすると、彼女は嫌がって抵抗を示した。
「やだっ、とっちゃだめ!」
 彼女は自分のバックを引き寄せて、中からコンパクトミラーを取り出すと、
うっとりとした瞳で、俺に汚された自分の顔を見つめた。
「うわあ……、ゆーくんにかけられちゃった」
 ほぅと満足げな溜息さえ吐く。
「そーだ! 写メとっておこっと!」
 しまいには携帯を取り出し、精液のかかった自分の顔の写真を撮ろうとしだした。
「待て待て待て待てっ! そんなもん撮るなっ!」
 慌てて携帯を取り上げると、彼女は不満そうにかわいい唇を尖らせる。
「えーっ、なんで? 返してよっ、せっかく初めてゆーくんにかけてもらったのにーっ」
 取り上げられた自分の携帯を奪い返そうと俺につかみかかる。
その鼻の頭には、しっかりとぬらぬらと光る白濁液がかかったままだ。
「あーーーっ、もう! そんなのいつでもかけてやるからっ」
 俺は半ば強引に、ティッシュで彼女の顔の上の自分の液をふき取る。
あれ? 自分で言ってて何だが、この発言なんかおかしくないか?
彼女は名残惜しそうに顔を拭かれながらも、俺の言葉を聞くと頬を赤くして、ふにゃりと微笑んだ。
「ほんとに? 約束だからね、ゆーくん。絶対だよ」
 嬉しそうに俺の胸に抱きつくと、すりすりと頬をすり寄せる。
 こんなことを言う俺も俺だが、そんなことで喜ぶ彼女も彼女だ。
柔らかい髪とすべらかな背中をなでてやると、ますます嬉しそうに彼女は微笑んだ。

* * *
 さきほど持ってきたおかわりもすっかり飲み干して、喉の渇きを訴える彼女に、
今度は俺がと、ジーンズとシャツを羽織って空のグラスを手にリビングに向かう。
ドアを開くと中央のソファーに、いるはずもない人影を見つけて、俺は飛び上がった。
「っ……姉……貴っ!? なん……で、出掛けたんじゃ……なかったのか?」
 姉貴は柔らかなショートカットの髪を揺らし、気まずそうに俺から視線を外して、
姉貴にはめったに見られないやや恥じらんだ表情で、頬を赤く染めた。
「いやあ……その……、バイク突然、エンジン掛からなくなっちゃって、
 修理屋呼んで、一応引き取ってはもらったんだ……」
 いつもなら、姉貴が出てった後には必ず近所迷惑気味に響くバイクのエンジン音がしなかったことを思い出す。
あの時感じた違和感はそれだったのか。
「んー……で、足がないし面倒だしで、予定キャンセルしたんだよ。
 えっと、まあ、その、気にするな。ぜんっっぜん聞こえてないから。
 声とか、音とか、声とか、まーったく、なんっにも、聞いてないから、気にするな!」
 あははと、乾いた笑いをその美貌に苦しく浮かべる。
 それって……思いっきり聞こえてたってことじゃねーかっ……!
お互い微妙にギクシャクしながらも、俺はのみものを手にして自分の部屋に戻る。
「んん……ゆーくん、どーしたの?」
 まだ素肌のまま、俺のベッドでまどろみかけてた彼女が半目を開ける。
「……姉貴が……家にいた」
 ローテーブルになんとかグラスを置くと、壁によりかかってずるずると腰を落とした。
ああ、これで向こう数ヶ月、いやもっと、姉貴と気まずい空気が漂うのは確定だ。
「んー……、あれ? ゆーくん、私、言わなかったっけ」
「え?」
「私がのみもの取りにいったとき、お姉さんちょうど携帯片手に戻ってきた時だったんだよね。
 なんだっけ……バイク、壊れちゃったのかな? 携帯で話してた感じじゃ……」
 眠そうにごしごし目を擦りながら、ゴロリと寝返りをうって横になる。
――――こいつ、……知ってやがったのかあああっ!
「おーーまーーえーーわーーっ」
「ふにゃっ」
 彼女の柔らかいほっぺたをおもいっきり両側から摘んで引き伸ばす。
「なんでそれをちゃんと言わないんだっ! わざとか? そーなんだなっ」
「ちーがふよぉーー、言ったちゅふほりだったんだってぶあー……」
 もう二三度、ぐにぐにとほっぺをひっぱって、ぱっと放す。
「いたひよー、声、我慢しなくていいって言ったの、ゆーくんなのにー」
「……っ、だからお前はっ!」
 寝転ぶ彼女に襲い掛かると、彼女は嬉しそうに両手を広げた。
ぽかんと呆気にとられる俺に、彼女のほうから抱きついてくる。
「お前なっ……俺は怒ってるんだぞ?」
「えへへ、うん。だって、ゆーくんが私に怒ってくれるの、初めてなんだもん」
 少し赤くなった頬で俺に擦りつきながら、甘ったるい声を出して、えへへと彼女は微笑む。
ああ、もう、わかってるよ。お手上げだ。
諦めと、ほんの小さな憎ったらしさと、溢れかえる愛しさで、彼女の頭をぐりぐりと撫でてやる。
まったく、これだから。
俺は彼女には敵わない。




2009年10月28日(水) 20:32:04 Modified by amae_girl




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