アマチュア衛星通信初心者のためのWiki - Step0:衛星通信の準備 《無線機、アンテナなど》

□AO-51、ISS(FM衛星系)への準備

■無線機

 FM同時送受信ができる144/430MHzの無線機を用意してください(ハンディ機、モービル機も可)。同時送受信ができない機種では、送信用にFM機1機、受信用にFM機1機必要になります。無線機は多少古くても結構ですが、「受信周波数ステップを最低ステップ(5kHz以下)にかえられるもの」「受信のスケルチは開放できるもの」が必須です。現行機ではなくなってしまいましたがIC-911(IC-910も)は、FMの受信周波数がずれていくと自動的に追随してくれる回路が内蔵されており、FM衛星には使いやすい無線機です。
 またFM衛星は「弱肉強食」の世界なので、可能であれば自局の免許の範囲内で最大出力が送信できる送信機を準備しておきましょう。
 なおAO-51、SO-50は、地上のレピータ同様、アクセスするのに67Hzのトーンが必要になります。最近のFMハンディ・モービル機ではトーンがあらかじめ内蔵されて販売されていますが、一昔前の無線機ではトーンは内蔵されてなく、多くはユニットが別売りになっています(ヤフオクでたまに出品されますが価格も高めとなります)。自分の使用予定の無線機の説明書で、トーンの内蔵有無、トーンの設定について確認しておきましょう。
■アンテナ

 低軌道FM衛星による通信には「多エレメントのクロス八木、仰角ローテータが必要」なんてことは絶対にありません!

 原則として送信用に1系統、受信用に1系統必要です。144/430MHzの2バンドGPや、ダイヤモンドのA1430S7、RadixのAY-207SAT、ナガラのDO-11、古くはマルドルのFOX727やマスプロのWH59などの共用八木を使用すれば、アンテナが1系統で済み運用は楽ですが、受信・送信能力ともに、個々に1系統要した場合と比較して劣ることは確かです。可能な限り送受信別系統のアンテナを準備しましょう。なお、受信側のバンドには、デュープレクサをハイパスフィルタの代用品として挿入すると、送信による受信バンド側への「かぶり」を軽減させることができます。(送信側に挿入する、あるいはデュープレクサを2段重ねにしても効果があります)
 同軸ケーブルは、極力、太く短くで結線します。アンテナを高いタワーに上げている場合は、同軸ケーブルの損失を確認してみてください。
 FM衛星だけが目標であるなら、条件がよければモービルホイップやGPでも交信可能です。より安定した交信には八木アンテナが必要ですが、144MHzは3〜5エレの八木、430MHzは5エレ〜10エレ程度で十分です。その際に「20〜30度の仰角」をつけておきましょう。仰角をつけることにより、天頂(真上)付近に衛星がいる場合を除いて、広い範囲の仰角に対応できます。この仰角のついたアンテナを方位ローテータ、あるいは「手回し」で回しても十分対応できます。ただし、QSBの谷間に陥ると聞こえなくなる場合もあります。仰角を計測するには、100円ショップダイソーで売っている傾斜計(下)が容易に入手できて便利ですよ!



 水平偏波に設置できると、垂直偏波を使用しているトラッカー(ダンプやトラックで衛星通信バンドで不法に無線を運用する無法者のこと)の混信を軽減することができます。

■パソコン(+インターネット)

 衛星通信では、予め衛星の飛来してくる時間を計算して準備することが必要です。そのためにはパソコンが必要ですが、計算に使われているソフトウェアは、Windowsで動くものが主流ですので、Windowsをオペレーティングシステムにしたパソコンを用意してください。スペックは現段階の最高のものがあれば、他の用途にも使えて結構ですが、いささか古くなってしまったシステムでも十分使用できます。
 使いやすい日本語の衛星軌道計算ソフトウェアについては、別ページで詳しく解説していますので、Step0:衛星通信の準備 《軌道計算ソフトウェア》をご覧下さい。また数はWindowsと比較して少ないですが、MacOSのソフトウェアやiOS(iPhoneやiPad)やAndroidで動くアプリもあります。
 もちろんインターネットを使えば、さまざまな情報を得ることができます。このWikiからも参考になるサイトや、このWikiに協力いただいている衛星通信愛好家の掲示板やブログを衛星通信関連サイト集からリンクしていますので、そこで遠慮なく質問してみてください。
■その他

・プリアンプ・・・なくても交信できますが、あればより安定した受信ができるでしょう。市販のキットなどを利用して自作し、受信用の無線機に直結して動作させることも可能です。その場合、プリアンプの入力側に送信側の電波に対する保護回路が必要です。
・ヘッドフォン、イヤホン・・・ハウリング防止の為、受信ではヘッドフォン、イヤホンを使用しましょう。
・時計・・・・正確なものを準備しましょう。「電波時計」を推奨します。
・携帯電話・・・仲間同士の連絡に使えるほか、外出先からも可視時間を調べるにはSatellite Forecast 携帯版(JM1WBB)が便利です。スマートフォンならばアプリで軌道計算もできます。
・ボイスレコーダなど・・・慣れないうちは焦ってしまいメモもとれないことも多いので、あると役に立つかもしれません。珍しい局と交信できたときは記念にもなりますね。

 〜 準備できましたか? FM衛星での通信は、あと少しの興味と勇気で、もうできたも同然です。次の項目へどうぞ。

Step1:FM衛星を受信してみよう!
Step2:FM衛星で交信しよう!
国際宇宙ステーション(ISS)の交信を聞こう!

□VO-52(CW/SSB衛星系)への準備


 CW/SSB衛星には、当然のことながらCW/SSBが同時送受信できる無線機が必要です。現行機であればTS-2000、IC-9100、中古であればIC-911、IC-910、FT-847、TS-790、IC-821、FT-736などを入手されると良いでしょう。送受信が別の無線機でも問題ありません。VO-52では、送信FT-817単体、受信はTH-F7でもOKという実績もあります。弱肉強食のFM衛星と違い、CW/SSB衛星への送信は必要最小限のパワーで、そして高い受信能力が要求されます。
 CWを運用される方は、メモリキーヤがあると便利だと思います。
 送信側のバンドには、デュープレクサーをハイパス(ローパス)フィルタの代用品として挿入すると、送信時に受信側への「かぶり」を軽減させることができます。(受信側に挿入する、あるいはデュープレクサを2段重ねにしても効果があります)
 古いV/UHFの無線機では受信感度が低下していたり、表示周波数がずれていたりする場合があります。可能であれば点検・調整するとよいでしょう。

 SSB/CW衛星での交信については、詳しくは低軌道SSB/CW衛星で交信しよう!をご覧下さい。