Monte Of Ages - 映画 【 絶唱浪曲ストーリー 】
2023年9月19日





  プロ       



ジャンル ドキュメンタリー / ヒューマン
製作国 日本
製作年 2023
公開年月日 2023/7/1
上映時間 111分
製作会社
配給 東風
レイティング 一般映画
アスペクト比
カラー/サイズ カラー
メディアタイプ ビデオ 他
音声
上映フォーマット デジタル








    STAFF    




監督 川上アチカ
プロデューサー 赤松立太
川上アチカ
土田守洋
撮影 川上アチカ
整音 川上拓也
編集 川上アチカ
秦岳志
カラリスト 西田賢幸
アソシエイトプロデューサー 藤岡朝子
矢田部吉彦
秦岳志
写真撮影 五十嵐一晴
本編タイトル 大原大次郎





   CAST   




出演 港家小そめ
港家小柳
玉川祐子
沢村豊子
港家小ゆき
猫のあんちゃん
玉川奈々福
玉川太福





   解  説   



浪曲という伝統芸能の魅力とともに、浪曲師・港家小柳、曲師・玉川祐子、沢村豊子といったレジェンドたちの芸が、港家小柳の弟子である港家小そめたち若い世代に継承されていくさまを記録したドキュメンタリー。短編ドキュメンタリー「港家小柳IN-TUNE」(15)、「鈴の音のする男」(16)、「河内の語り屋」(18)を発表してきた川上アチカ監督が8年の歳月をかけて完成させた初の長編映画。迫力満点の口演場面はもちろん、玉川奈々福、玉川太福など、当代きってのスターたちの出演も見どころ。


   あ ら す じ   



浪曲師の独特の唸り声、エモーショナルな節回し、キレのよい啖呵。曲師の三味線とのスリリングなインタープレイが、初めて見る者の心をたちまち鷲づかみにする。平成生まれの浪曲師や曲師が育ち、女性の演者が増え、浅草木馬亭の客席は昔ながらの愛好者と新たなファンが入り混じって新時代の到来を予感させる。伝説の芸豪・港家小柳に惚れ込み弟子入りした小そめが、晴れて名披露目興行の日を迎えるまでの物語。映画のもう一つの主役というべきは関東唯一の浪曲の常打ち小屋である木馬亭。舞台裏では、さまざまな人生が交錯し、ベテランから若手へと芸が継承されていく。カメラは、小柳と曲師の玉川祐子、そして小そめが大切な何かを育んでいく様子を克明に写し出す。









7.その他



2023年7月上・下旬合併号
「絶唱浪曲ストーリー」:作品評

「絶唱浪曲ストーリー」:監督は語る

UPCOMING 新作紹介:「 絶唱浪曲ストーリー」






8. 


―生きる肩身のせまさを克服するため修行を重ね、その結果の芸を伝える。―
芸に生きる性(さが) がそこにある

 映画を観終わった時、自宅に帰ったらもう一度読んでおきたいと思った本がある。
永六輔著の「芸人 その世界」である。

寄席や演芸場をつぶさに観る機会のない地方に住む者にとって、映画館や催事会場と
は異なる「粋」な、金銭の余裕のある恵まれた境遇のなかで選ばれた人達、大衆芸能
の面白さを幼少期から経験し、日頃の生活にその芸を取り込んでいるような人達が目
利きをしている空間は、憧れでもあり、敷居の高い別世界と感じる。
そんな世界を、独特のエピソードで綴り、さすが芸人と納得させる笑いとペーソスが
ちりばめられていた、いわば粋な江戸っ子の本と記憶している。
 
 その本「芸人 その世界」のまえがき、口上には、「日本では、あらゆる芸人が肩
身のせまさを克服するために修行を重ね、その結果の芸を伝えてきたのである。・・
・・芸の修行と上達だけにすべてを賭けて、人並みの生活に這い上がり、河原乞食か
ら人間国宝と呼ばれるようになったのである。」とある。
 
 人間が生きていくため周囲の空気を読み、安住するために職業を持ち決まりきった
組織の中で生きることの不自由さを感じた小そめは、二十代でチンドン屋の世界に飛
び込み、年の離れた先輩に揉まれながら、ただ修行に邁進していたのが、突然、浪曲
師・港屋小柳の芸に魅了され、遅まきながらの弟子入りをする。
しかし、全てが遅すぎ、師匠港屋小柳は高齢で糖尿の持病で、舞台途中で絶句し、降
りざるを得ない。そして闘病生活を送る師匠を弟子の子そめが心配しながらの言葉を
放ち、まもなく看取ることとなる。

 小そめに見えていたものは、芸への修行と上達こそが自分を自分らしく、しあわせ
にしてくれるものであり、木馬館のデビューに駆けつけてくれた観客こそ、支えとな
る信じられる柱なのだろう。そして、新たに師匠となり稽古を付ける100歳まぢかの玉
川祐子に辛うじてつながる芸の綱渡りにより歩き出す。
舞台で修業し芸を極める事こそ、観客の期待を膨らませ、伝統芸能の浪曲の生きる道
と一途に生きる小そめとこの映画を撮り続けた監督には見えていたのだろう。浪曲師
という世界を描きながら、広い世界に導かれたような、魅力的な気になるスポットラ
イトを見た気分になった。