大阪府公文書館の移転構想や大阪市公文書館の体制見直しが明らかになったことを受け、経過やその問題点についてまとめています。

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最終更新： archives_osk archives_osk 2012年05月31日(木) 21:33:40履歴

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０．前提

・2009/3　第17期会長（全国事務局）を終えた時点で全国歴史資料保存利用機関連絡協議会（全史料協）から退会
・2009/4　組織改編により現用文書を対象とする情報公開担当セクションと統合、府民文化部府政情報室情報公開課・公文書館グループに
・2009/4より嘱託職員を減員（7→5名）
・館運営費も大幅削減
・これにより歴史的公文書であっても個人情報保護のため閲覧が困難に（以前にも増して）
・館の老朽／狭隘化
・用地売却、移転のうごき

１．運営体制見直し方針の表明(09/12/17)

・12/17（木）府公文書館運営懇談会が臨時召集、移転・資料移管問題について協議→大紛糾
・10名が傍聴→議事内容は特設会場をご覧ください
運営懇談会における府の説明で明らかになったこと
  • 大阪府公文書館は、大阪府府政情報センターと統合し、独自館は廃止（館長・職員の削減）
  • 現在地からの移転を検討中。ただし一部報道のあった児童文学館跡は借地料など管理コスト増のため希望していない。府政情報センターはWTCへの移転を希望しているが未決定。引っ越し時期も未定。
  • 現在の敷地は売却、隣接していた旧女子大の建物は既に撤去・整地済
    • 航空写真でもまだ旧校舎・植物が見えてます
  • 書庫は減らすので、各部局から引き継いだ公文書と府が作成した行政刊行物のみ収集する
  • ついては府立図書館（中央・中之島）へ要らない資料4600点を移管（リストアップ完了済）。中身は不明。移管資料の選定に館内の専門職は関与せず、図書館の希望したものが移管リストに。自治体史や法令全書、辞書なども含まれる
    • ？古文書の行き先は…各部局から引き継いだ「公文書」ではない…中之島図書館は古文書・古典籍も収集している→中之島図書館移管分4000点の中身は？（山中浩之委員指摘済も提示なし）
  • 規程があるので府公文書管理条例は不要
  • 公文書館として収集した資料を他機関に移管・廃棄するしくみがないので、規程を改正する予定＝なお現在は規程がないので府独自の判断で移管・廃棄ができる
12/17運営懇談会の結論
  • 館内の専門職である専門員に中央図書館および中之島図書館への移管文献リストを再点検させ、さらに運営懇談会に了承を得ること
  • 文書移管手続等を定めている「歴文規程」を改正する場合、移管文献リストと同様、まず専門員に諮り、さらに運営懇談会に諮り了承を得ること
懇談会での府の説明が予想させる「公文書館」機能像には大きな問題→弊サイトたちあげ
  • 現用文書と歴史的公文書の性格の違いを踏まえた組織・公開基準が担保されていない
  • 書庫削減による資料の移管は公文書館の利便性・調査研究機能を削ぐ
  • 一連の経過に館外有識者（運営懇談会）、館内アーキビスト（専門員）が関与していない
  • 大手前本庁の部局がWTCへ移転することにより、未登録文書が廃棄される危険性も
→移転による公文書館機能のあり方について、府の構想が全く分からない。
→府の文書管理のあり方・情報公開のあり方にも関わる
    • 設置場所、書庫の質と量、公文書館機能の機構（現用文書公開機能との関係）、収集・公開における手続・基準の明確化とその法的位置づけ（条例か内部規定か）などなど

論点

２．児童文学館跡への移転構想の浮上(09/12/29)

　12/29の(朝日新聞)で、12/27に閉館した府立国際児童文学館跡を中央図書館と公文書館の書庫として活用することを知事が決定したと伝えられました。引き続き情報の収集につとめ、こちらでも紹介していきたいと思います。しかし、報じられた内容は12/17の運営懇談会で示されたものと異なります。府の公文書管理の全体像はいつ・どこで・どのように練られているのでしょう。運営懇談会で事実と異なる説明がなされたか、運営懇談会の結論を大きく踏み越えた方針であると考えざるを得ません。資料移管・廃棄の問題についても全く説明がされていませんし、府は早急に公文書管理の全体像を示すべきです。
そもそも、児童文学館という良質な図書館を廃止したことも問題。


なお、大阪府HPでは、「公文書館のあり方について」という資料がまとめられています。→現在こちらでも内容確認中です

参考・関連する施設の場所　


北から順に「大阪府立国際児童文学館」「大阪府立中之島図書館」「大阪府庁」「大阪府立中央図書館」「WTC」「大阪府公文書館」




３．要望書等の提出・交渉(10/1〜)

  • 2010年1月18日　大阪に拠点を置く歴史学会である、大阪歴史科学協議会・大阪歴史学会から橋下知事に対して大阪府公文書館の統合・移転に関する要望書が提出されました。本文はこちらをご覧ください。府の一連の措置の問題点を指摘した上で、公式の場を設けて説明を行うことなどを要望しています。
在阪2学会で要望書を提出していますが、日本史研究会・歴史科学協議会・歴史学研究会・歴史資料ネットワークからご賛同いただきました。（大阪歴史科学協議会研究委員　佐賀朝さん）

    • 2010年1月28日　上記要望書について、大阪歴史科学協議会の担当者が府庁を訪問し、情報公開課長・公文書館長と折衝を行いました。その後、府議会各会派への説明、記者クラブへの情報提供などを行いました。その結果、2月12日に在阪2学会役員と府政情報室長以下府の担当者との交渉が行われています。この内容は学会でまとめられることになります。
      • 大阪府による要望書への回答内容についてのまとめはこちら
      • 当日参加された佐賀朝さん（大阪歴史科学協議会）によるまとめ→以下の灰色部分は「大阪府・市公文書館問題と地域資料保存・活用の課題」（2010年4月17日日本史研究会4月例会報告レジュメ）より転載
    • 2010年2月12日に二団体〔注：要望書を提出した大阪歴史学会と大阪歴史科学協議会〕と大阪府との第1回交渉を実施した（二団体からは大阪歴科協委員長、大歴企画委員長ら5名が、大阪府からは府政情報室長・情報公開課長・公文書館長の3名が出席）
    • 大阪府側の説明・確認事項
      • 「統合」というが統合ではなく、今回の措置は、本来、公文書館設立以来の方針であった、現用・歴史的公文書双方を一体として扱う組織の本庁設置を実現するものと考えている。
      • 文献移管については「統合」とは別に保存スペースの問題から検討してきたものだが、年末に新たな書庫利用の条件が出てきたので「リセット」した（白紙に戻した）。
      • 現用文書と歴史的文書は一体で管理するのが望ましいが、保管スペースの問題があり、全庁の文書を一か所に集中管理することは困難。ただ、情報公開課が全庁の現用・歴史的文書双方を担当し、統一した文書管理ルールを全庁で運用することができる。また府民の窓口を一つにすれば統一した対応が可能となり、府民の利便向上に役立つと考える。
      • 運営懇談会や専門員との意思疎通については内部からも指摘があり、1月25日に運営懇談会委員と意見交換を行うなど、連絡を緊密化している。今後も、運営懇談会や専門員の意見を聞きながら運営を進めたい。
      • 歴史的公文書の公開基準については検討したい。専門家の知恵も借りたい。
      • 本庁移転は秋以降になるが、移転後のスペースや機能・人員の配置については現在、内部で協議中であり、基本的な方向性が固まった段階で提示はしたい。話し合いを継続することにもやぶさかではない。
      • WTCへの移転にともなう廃棄文書についても、全庁的に声をかけ、対応をはかりたい。
    • *大阪府としても、各方面からの批判もあったために、当初、文献移管問題が出た際に危惧されたような統合・解消方針からはシフトした模様だが、閲覧と書庫が分離されるという問題や、歴史的文書の固有な扱いが確保されるのかといった問題は依然として不透明である。

  • 2010年1月23日　1950年に結成され、歴史学に関する研究者および学会・研究機関相互の連絡をはかり、歴史学界の重要事項を審議してその実現に努め、また、歴史学に関する国際的な学術交流をはかるための事業を行っている日本歴史学協会が、大阪府公文書館の機能の充実に関する要望書を提出しました。公文書館の移転・統合や資料移管の問題が、公文書管理法の趣旨に逆行することを指摘し、一連の措置の再検討と公文書館機能の拡充を求めています。本文はこちらをご覧ください。

  • 2010年1月28日　各地の地方史研究者および研究団体相互間の連絡を密にし、地方史研究を推進することを目的としている地方史研究協議会（1950年発足、会員約1500名）が、橋下知事に対して大阪府公文書館の機能充実を求める要望書を提出しました。情報公開制度と公文書館機能の一体的な運用について、双方の機能的な相違などを検討せずに実施することになれば、従来の公文書館機能が大きく損なわれる結果を生じるのではないかとの危惧から、府に対して公文書館機能の充実を要望するものです。本文はこちらをご覧下さい。

  • 2010年2月18日　全国の資料保存利用機関および関係者からなる全国歴史資料保存利用機関連絡協議会が、橋下知事に対して大阪府公文書館の機能拡充に関する質問書を提出しました。WTCへの移転に伴う文書管理の問題や、今後の公文書管理・公開に関する方針、公文書管理法が要請する地方自治体としての取り組みなど4点について質問し、3月中旬までの回答を求めるものです。全文はこちら（全史料協）をご覧ください。

  • 2010年3月2日　日本史ならびにこれに関連する諸問題の自由かつ民主的な研究、およびその普及活動に取り組んでいる日本史研究会（1945年創立、2010年1月現在の会員2533名）が、橋下知事に対して大阪府公文書館の統合・移転および所蔵資料の移管・廃棄に関する要望書を提出しました。今回の計画が公文書管理法や橋下知事の方針にも反するものであることを指摘し、公文書館機能の維持・発展のために必要な人員と予算、スペースを確保すること、歴史的公文書と現用公文書との性格の相違を踏まえて、適正な公開基準を策定し、公文書の管理・保存と公開を促進することを要望しています。本文はこちらをご覧下さい。
    • 2010年4月17日　日本史研究会が4月例会「地域歴史資料と歴史研究」を開催。概要はこちら。当日の内容は一部を除きインターネット中継されました。

４．2010年2月定例府議会

  • 2010年3月12日　2月定例府議会府民文化常任委員会で、横倉廉幸府議（自由民主党・大阪市西区）が公文書館のあり方について質問を行いました。→質疑の影像はこちらから（視聴する会議の選択>3月12日（金）>府民文化常任委員会>午前の部、を選んでください。冒頭に横倉府議の質問があります）
    • 主なやりとりは次の[+]をクリックしてください。

質疑のようす（暫定版）

  • 質疑の様子は次のように報じられています。
公文書館、府庁本館へ　WTC移転「空き」活用　2010年3月13日朝日新聞（大阪市内版）
府の公文書のうち歴史的、文化的な価値のある約14万点を保管し、閲覧できるようにしている府公文書館（大阪市住吉区）について、府は12日、歩調本館（同市中央区）に来年度移転させる方針を明らかにした。府が購入予定の大阪ワールドトレードセンタービルディング（同市住之江区）に今秋以降、部局を順次移転させるため、空いたスペースを活用する。　この日の府議会府民文化常任委員会で、府の担当者が答弁した。保存期間内の公文書の閲覧や、情報公開の申請窓口となっている府庁本館1階の「府政情報センター」と統合し、新たに「公文書管理センター」（仮称）とする方針。　公文書館は1985年11月、府の歴史的文書が散逸するのを防ぐ目的で、旧府立女子大の図書館を改装して開設。だが、昨年度の来館者が1520名など利用の低迷が続いており、移転も含めた活性化策を検討中だった。（春日芳晃）
    • 記事からは、公文書館全体が府庁本館に移転するかのような印象を受けますが、質疑では閲覧スペースは府庁本館、書庫スペースは児童文学館跡地に分離移転することが表明されています。

  • 2010年7月、大阪府が「有効活用を進めるべき施設の進捗状況」（大阪府HPのPDF）を公表しました。有効活用を進めるべきとした各施設について、2009年度末時点での活用方策の検討状況を報告した文書です。公文書館関係施設も含まれますので転載します。
    • 活用方策を検討する38施設
      • 公文書館（大阪市住吉区）…平成22年度中に府政情報センターとの一元化を図り府庁本館に移転予定。一部書庫は旧国際児童文学館建物を利用予定。cf.2007年2月時点の活用方策案=本庁舎整備の検討を視野に入れながら、移転先を検討する。
    • 特に検討が必要と考えられる22施設
      • 高倉書庫（大阪市都島区）…平成22年度中に旧国際児童文学館建物に移転予定。cf.2007年2月時点での活用方策案=本庁舎整備の検討を視野に入れながら、移転先を検討する。

５．運営懇談会意見交換会の開催（2010年7月29日）

当日の模様はこちら（大阪府公文書館）に掲出されています。
    • 大阪府公文書センター（仮称・本館1F200�屐砲豊仝粛儻�文書の情報公開機能�⇔鮖謀�公文書の調査研究機能を集約する
      • これにより、展示機能の充実（年4回程度の入れ替えと特別展示の実施）を開架資料の増加（43fm→92fm）が図れる。収蔵スペースは本館地下書庫に約2700fm+旧児童文学館建物に約1000fm ）とする。
    • スケジュール案…2010年12月末に休館、2011年１月〜３月に移転作業、2011年4月中旬に新センター開設
    • 委員からの意見（HPより抜粋転載）
      • 「公文書センター」では、歴史公文書を扱っているというのが分からない。
      • 官報、国会議事録は本館地下書庫で保管したほうがよい。
      • 今後資料が増えていくなかで、本館地下書庫でもっと書庫を確保する必要がある。
      • 30年ぐらい先を見据え書庫の確保を考えるべき。
      • 資料に公文書館の機能として「情報公開機能」があることが分かるよう明記したほうがよい。
      • 専門員の研究場所の確保、講座などの実施場所の確保、新しい記録媒体への対応、地域にある歴史資料の収集強化など。

６．運営懇談会→休館・移転(2010/12)　

  • 2010/12/22　14時から大阪府公文書館第25回運営懇談会が開催されました。プレスリリース
  • 2010/12/28をもって大阪府公文書館は休館し、2011年4月中旬に大手前本庁舎内に移転・再開することを発表
  • 現用文書に関する情報公開機能との「一体的」運用を行うとのこと
  • 当日の議論・配布資料などはこちらに掲載しています。

７．本庁舎への移転

  • 2011/4/18　情報公開機能と受付窓口を一体化した「大阪府公文書総合センター」の一部門として再開→新ホームページ
  • 2012/9　文書管理システムの再構築に必要な次期システムの想定仕様、概算経費、スケジュール等を検討し、再構築計画を策定するための「行政文書管理システム再構築計画策定業務の企画提案公募」が実施されました。
    • 公募に関する資料として、「現行システムの概要」が添付されています（pdf）。
  • 2012/1/15　大阪府庁の「正庁の間」が復元され、府庁舎を近代美術館に転用できないか府市統合本部で検討したいと松井府知事が発言しました共同通信1/15付。今後の動向に注意したいと思います。yahoo!ニュースのカテゴリ：大阪府庁舎の移転問題
  • 2012/3/27　大阪府公文書館運営懇談会が開催されました。
    • 会場は本庁（大手前）4F共用第4会議室（大阪府公報）
    • 議事録（非公式版）
      • 移転したことで来館者は増加したそうです。公文書管理法の要請する意思決定過程の記録をどうのこすか、電子文書をどう残すか、などについて議論される一方、古文書の位置づけなどについては議論がされませんでした。

８．中・長期的に必要なこと

・文書移管の本格化（まず、府民／職員の役に立つ施設でないと）
・現用文書と異なる情報公開基準の整備
・体制の充実
・府公文書館設置条例／府公文書管理条例の制定
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