最終更新:ID:prrr0fALOw 2013年07月19日(金) 23:06:13履歴
「ねこ日記」 BYアヤ
時々、ネコになりたいなって思うの。
大好きな彼に摺り寄って、撫でて貰って。
彼の膝の上で、ゴロゴロと喉を鳴らして、至福の時を過ごす。
抱きかかえられて、チュッと唇にキスして貰えたら最高!
忙しいアイドル業から離れられない、私の現実逃避なんだけどね。
「ランカ?今からSMSに来れないか?」
昨晩から急降下していた気分が、この一本の電話で急浮上した。
急降下の原因は、アルトくんのお仕事。
異星生物学者さんのボディガードで、生態系研究の為のサンプル採取に行くんだって。
「そのクライアント。かなりの美女らしいぞ。」
「・・・ふ〜ん。」
「・・・・・・。」
聞いても無いのに、オズマお兄ちゃんの余計な一言。
お仕事なのは分かっていても、嫉妬しちゃうのは仕様がないじゃない。
さすがにそんな事で、アルトくんに文句言ったりなんかしないけど。
だけど、やっと取れた丸一日のお休みなんだもん。
アルトくんと会えるのが夜からだったとしても、気分良く待ってたかったのに。
結局、朝になっても何だかモヤモヤ。
歌の為の腹筋づくりと、プロポーションの為のストレッチなんかを済ませたら、何にもする気が起きなくて。
ソファの上でジタバタ。
だから、携帯からアルトくん専用の着信メロディが流れた時には、ネコの様に耳がピンと立ったみたい。
実際には、髪がふわっと跳ねたんだけど。
短くなったアルトくんの髪が、潮風でふわふわ。
蒼い海がキラキラと輝いて、誰もいない砂浜に二人きり。
だけどアルトくんはお仕事中だから、静かに波と戯れる。
「ランカ?今からSMSに来れるか?」
「えっ?」
「個人的に、俺の恋人ランカ・リーに依頼だ。」
アイドル、ランカ・リーじゃない依頼って?
そう思いながら超特急で身支度して、SMSに急行。
何故かSMSの裏から連れ込まれて、詳しい話を聞いたらクライアントが事情で行けなくなったらしい。
だけど、仕事はきっちりやった事にしたい、と。
「まあ、事情はどうあれ、金さえ貰えれば任務は実行するさ。それが軍事プロバイダー、SMSだからな。」
ずいっと、ヘルメットとスーツが目の前に差し出された。
「よろしく頼む、学者殿。まあ、デート付の内緒のミッションって事で。」
「了解です。」
内緒のミッション、ってだけで気分が上昇。
鼻歌が零れそうだけど、フル装備でバルキリーの後部座席に乗り込んだの。
バレない様に、静かに、静かに。
広い海岸に降り立って、アルトくんはリスト通りにサンプル採取。
生態系とか、色んな研究に役立てるんだって言ってた。
私はスーツを脱いで、黄色いキャミソールワンピースに着替えた。
誰もいないから、バルキリーの影で着替えちゃった。
サンダルもあるけど、素足で砂を踏む。
何となく歌いたくなって、歌いながら波と戯れる。
「ランカ?」
歌が途切れると、アルトくんが呼ぶ。
「は〜い。」
心配してくれるのが嬉しくて、アルトくんの所に駆けよる。
アルトくんは、ほっと安心した笑みを見せて、またサンプル採取に戻る。
真剣な横顔が恰好良くて、じっと見つめるけど仕事に夢中。
だから、そっと離れて浮かんでくる音に声を乗せる。
「ランカ?」
「ここだよ。」
歌が聞こえなくなったら呼ばれて、その繰り返し。
ふふっ。私ってネコみたい。
かまって欲しくて摺り寄って、だけど気まぐれに離れて。
砂浜にはアルトくんの靴跡と、私の足跡だけ。
爪先立ちで、アルトくんの靴跡に沿って歩いていく。
まるでネコの足跡みたい。
でも、何だか物足りなくなって、アルトくんの背中にぎゅっと抱きついた。
「どうした?もう飽きたんだろ?」
「飽きてないけど、かまって欲しいの。」
「それが飽きたって言うんだろ。海水のサンプル採ったら最後だから、もうちょい我慢、な?」
「は〜い。」
なんとなく「ネコ日記」が浮かんで、歌い出した。
ネコの日記にはお昼寝の回数が書いてある。
それなら私の日記には?
何回目のデート?
何回呼んだ?
何回呼ばれた?
何回キスした?
何回・・・、ってそこまでは書いてない。
だけど、全部憶えているよ。
それが何時か覚えきれない位、積み重なった時。
その時もアルトくんに、隣に居て欲しい。
「ランカ。悪いな、待たせて。」
「お疲れ様。じゃあ、ご褒美ちょうだい。」
目を閉じて、唇を尖らせれば。
「ったく、ご褒美ってイヌかぁ?」
私はネコの気分、なんだけどな。
だけど、大きな両掌で私の頬を包んで、優しいキスをくれたから、良いかな。
嬉しくなって、彼の首に両腕をまわそうとした時だった。
轟音と共に、思いっきり水をかぶった。
「えっ?クジラ?」
「まさか・・な。」
2人で目を瞠って、呆然と海を見たら、大きな尾ヒレが海中に消える所だった。
「って、映像データ!!」
アルトくんは、機材を担いでEXギアのエンジンを噴かした。
「テイクオフ!アルトくん、頑張れ〜。」
気持ち良さそうに飛ぶアルトくんを見て、こんなデートもありかな、って。
キラキラと光る海に、目を細めた。
END
このページへのコメント
ランカちゃんとアルトはちょっとした事でもデートに変換できて可愛いですね。
ランカのねこ日記は何気ない日常の中に好きな人との日常を掛けているあたりがかわいらしくて好きな曲です。
のぞいてみたら
新しいお話が…!!
ありがとうございます(*≧∀≦*)
猫の気分(笑)
可愛すぎます!!!
お久しぶりです(^◇^)┛
コメントありがとうございますm(_ _)m
ちょっとネタがないのと忙しいので投稿出来ないんですが、カチッと妄想が(笑)固まったので投稿してみました〜
楽しんで頂けたら嬉しいです。
お久しぶりです(*≧∀≦*)
アヤさんの小説待ってましたwww
ランカちゃんの乙女心最高です!
また楽しみに待ってます