最終更新:ID:NsmsU6k7zg 2013年10月03日(木) 22:11:31履歴
劇場版で、アルトくんが帰って来なかったお話です。
一応アルランかな?
「ホシキラ」 BYアヤ
クランちゃんとミシェル君が暮らしている部屋で、私達はテーブルを囲んでいた。
白木にベージュのカントリー風なリビング。
クランちゃんが好きそうなリボンやレースが少しだけ色を添えている。
まあ、ミシェル君の趣味とは真逆かな。
お土産に焼いてきたパウンドケーキの甘い香りと、紅茶の香りが部屋を満たしていく。
用意されたカップは5つ。
クランちゃんとミシェル君、私とシェリルさん。
もう一つのカップに紅茶を注ごうとした時。
「もう、止めましょ。」
シェリルさんはカップに手で蓋をした。
このカップはアルトくんの分。
だけど、ここにアルトくんは居ない。
無事にこの惑星に着陸して、平和な生活を楽しめる様になっても、アルトくんの行方は分からなかった。
いつかアルトくんは帰ってきて、眠り続けるシェリルさんを目覚めさせてくれる。
根拠なんて何処にも無かったけれど、そう強く思っていた。
けれど、私の輸血で容体が安定したシェリルさんは、奇跡の様に目覚めた。
王子様を待たずに。
シェリルさんの復活コンサートで、一緒に舞台に立てる様になっても、アルトくんは帰ってこない。
そして、早乙女アルトというパイロットが居た事も、皆の記憶から薄れていってしまう。
だから、かな。
皆で集まればアルトくんの席を用意して、彼の話しをした。
あんな事があった。
アルトくんなら、ああ言うよ、きっと。
早く帰ってこないと、恥ずかしいあの話し、ネットに流しちゃうぞ!
なんて、笑い合って。
それも5年が経った。
「止めるって・・・、シェリル。」
ポットを持ったまま、クランちゃんは苦い顔をした。
「アルトのことは、もう?シェリル。」
ミシェル君も同じ、苦い顔。
「もう、忘れましょ。なんて、言うつもりは無いのよ。」
帰って来なくても、私達の大事な仲間で、大好きな人。
ただ、空席を見て寂しくなるのは、もう止めようって事だと思う。
「バジュラ達とフォールドして行ったなら、帰って来ることも出来るはずでしょ?」
帰って来ないと言う事は、帰れない何かが起きたか。
フォールドした先で、新しい自分の未来を見つけてしまったか。
きっと、そのどちらか。
死んだなんて、思えなかった。
その事実は、ブレラお兄ちゃんだけで十分。
戦場跡に漂う、デブリの中に残ったデータ。
私達を守って逝ってしまった、その事実。
哀しみはそれだけで、もう十分。
「今思えばアルトへの想いは、先のない私が初恋に縋っただけ、なんじゃないかって。」
嘘だ。
あの想いが嘘なはずない。
惹かれあってた二人が、嘘であるはずない。
だから皆、押し黙ってしまった。
「なんて、ね。色々、考え過ぎちゃって・・・。だから、堂々巡りはもうお終い。未来を見ないと、ね?」
カップの琥珀色の液体からは、もう湯気は立ってなかった。
グリフィスパークに似た、緑溢れる丘にアイモが響く。
シェリルさんが回復してから、傷ついたデュランダルを見詰めて、シェリルさんと2人でよく歌う様になった。
今日は一人だけど。
クランちゃんとミシェル君の部屋からの帰り道。
私は、習慣のように丘に向かった。
シェリルさんは、これから仕事。
「まだ、好き?・・・アルトの事。」
別れ際、急にそう言われて、私は答えられなかった。
シェリルさんがお腹に手を当てているのを見て、自分も無意識にお腹に手を当てている事に気付いた。
「もうあの時から、遠くまで来ちゃったのよね。」
「えっ?」
「何でもないわ。じゃあね、ランカちゃん。」
迎えの車に乗り込んだシェリルさんを、見えなくなるまで見送っていた。
シェリルさんとは繋がっているから、きっと分かっているんだ。
今でも、大好き。
だけど、アルトくんの隣には、シェリルさんがお似合いなんだとも思っている。
この想いが恋なのか、友愛に変わったのか。
宙に浮いたままだよ。
きっと、誰か好きな人が出来たら、アルトくんで占められてた心の場所が少しづつ減っていっちゃう。
きっとそれでも、特別で大好き。
「ホシキラ」の歌に乗せたように、愛していく事を私は選んだ。
アルトくんに選ばれない事が、分かっていても。
哀しくても、寂しくても。
そんな感傷を吹っ切る様に、今日もアイモを歌い始めた。
気が付けば、真っ暗だった。
そんなに、歌っていたんだっけ?
それにしたって、街灯の灯りさえ無くって、少し怖い。
そう思った時、白い紙飛行機が目の前を飛んで行った。
アルトくんが好んで折っていた、紙飛行機。
まさかね、と思いながら振り返れば・・・。
「アルト、くん?」
大きな背中が振り向いて、ポニーテールが揺れた。
「ランカ・・か?」
堪らなくなって、走った。
躊躇う事なく抱きつけば、しっかりとした温かみが広がって、知った香りが鼻を擽った。
「アルトくん。」
「本当にランカ、か?」
見上げて、私は目を見開いた。
彼の瞳に映る私は、いつも通りの私。
といっても、あの日から5年も経ってるから、少しは大人っぽくなってるんだよ。
なのに、彼は私が知る彼よりもっと、もっと年上だった。
「なんで・・・。」
「こっちのセリフだ。」
なんで、こんなに年が離れてしまっているんだろう。
私は20代前半、アルトくんとは一つ違いのはず。
「時空を超えた所為か・・・。ははっ、老けただろ?俺。」
アルトくんは30代に見えた。
オズマお兄ちゃんと同じくらいに。
「夢?」
「じゃ、ないだろうな。感覚もしっかりしているし。」
バジュラの歌の所為かもな、なんて。
丁度バジュラ達が他の群れに出会って、歌い出したんだって。
フォールドクォーツと歌の奇跡。
真っ暗な空間に、私とアルトくん、2人。
「あの、さ・・・・シェリルは?」
不安げに聞いてくるから、私は微笑んだ。
「大丈夫。奇跡的に回復したの。2人で復活コンサートもしたんだよ。」
「良かった・・・。」
姿はかわっても、アルトくんはアルトくんだった。
ぶっきらぼうだけど、優しい大好きなアルトくん。
だから、聞いたんだ。
「もう、帰ってこないの?」
「ああ。こっちで大事なモノ、出来たし、な。」
ああ、やっぱりそうなんだ。
時空を超えたどこかで、バジュラ達と共存して。
そして、自分の未来を見つけたんだね。
それが恋なのか、友情なのか。
それとも別の何か、なのか。
聞くのが怖くて聞けないけど、生きて元気でいてくれた。
「そっか。」
「だから、俺の事は忘れて元気で、って。シェリルにも。」
「うん。」
分かってる。
もう、アルトくんの居ない未来を、見詰め始めてるよ。
「だけど、忘れないよ。近くに居なくたって、アルトくんが大好きだもん。」
「ランカ・・。」
もう、ハッキリと恋とは呼べない想いだけど。
「サヨナラなんて、言わないからね!こうして、また会えるから。」
きっと遠い未来で、また巡り会えるから。
「その時には、覚悟してよね。アルトくん!」
シェリルさんにだって、負けるつもりはないの。
「分かったよ、ランカ。めちゃくちゃ早い予約、受けとく!」
凄く嬉しくなって、もう一度アルトくんに抱きついた。
もう、過去の想い出を振り返ったりしない。
寂しいとは思っても、きっと哀しくはないから。
きっと、永遠の彼方から希望の優しい光が、瞬くから。
その日まで。
「「またね(な)。」」
アルトくんの笑顔、忘れないよ。
気付いた時には、街の灯りと星が優しく瞬いてた。
END
一応アルランかな?
「ホシキラ」 BYアヤ
クランちゃんとミシェル君が暮らしている部屋で、私達はテーブルを囲んでいた。
白木にベージュのカントリー風なリビング。
クランちゃんが好きそうなリボンやレースが少しだけ色を添えている。
まあ、ミシェル君の趣味とは真逆かな。
お土産に焼いてきたパウンドケーキの甘い香りと、紅茶の香りが部屋を満たしていく。
用意されたカップは5つ。
クランちゃんとミシェル君、私とシェリルさん。
もう一つのカップに紅茶を注ごうとした時。
「もう、止めましょ。」
シェリルさんはカップに手で蓋をした。
このカップはアルトくんの分。
だけど、ここにアルトくんは居ない。
無事にこの惑星に着陸して、平和な生活を楽しめる様になっても、アルトくんの行方は分からなかった。
いつかアルトくんは帰ってきて、眠り続けるシェリルさんを目覚めさせてくれる。
根拠なんて何処にも無かったけれど、そう強く思っていた。
けれど、私の輸血で容体が安定したシェリルさんは、奇跡の様に目覚めた。
王子様を待たずに。
シェリルさんの復活コンサートで、一緒に舞台に立てる様になっても、アルトくんは帰ってこない。
そして、早乙女アルトというパイロットが居た事も、皆の記憶から薄れていってしまう。
だから、かな。
皆で集まればアルトくんの席を用意して、彼の話しをした。
あんな事があった。
アルトくんなら、ああ言うよ、きっと。
早く帰ってこないと、恥ずかしいあの話し、ネットに流しちゃうぞ!
なんて、笑い合って。
それも5年が経った。
「止めるって・・・、シェリル。」
ポットを持ったまま、クランちゃんは苦い顔をした。
「アルトのことは、もう?シェリル。」
ミシェル君も同じ、苦い顔。
「もう、忘れましょ。なんて、言うつもりは無いのよ。」
帰って来なくても、私達の大事な仲間で、大好きな人。
ただ、空席を見て寂しくなるのは、もう止めようって事だと思う。
「バジュラ達とフォールドして行ったなら、帰って来ることも出来るはずでしょ?」
帰って来ないと言う事は、帰れない何かが起きたか。
フォールドした先で、新しい自分の未来を見つけてしまったか。
きっと、そのどちらか。
死んだなんて、思えなかった。
その事実は、ブレラお兄ちゃんだけで十分。
戦場跡に漂う、デブリの中に残ったデータ。
私達を守って逝ってしまった、その事実。
哀しみはそれだけで、もう十分。
「今思えばアルトへの想いは、先のない私が初恋に縋っただけ、なんじゃないかって。」
嘘だ。
あの想いが嘘なはずない。
惹かれあってた二人が、嘘であるはずない。
だから皆、押し黙ってしまった。
「なんて、ね。色々、考え過ぎちゃって・・・。だから、堂々巡りはもうお終い。未来を見ないと、ね?」
カップの琥珀色の液体からは、もう湯気は立ってなかった。
グリフィスパークに似た、緑溢れる丘にアイモが響く。
シェリルさんが回復してから、傷ついたデュランダルを見詰めて、シェリルさんと2人でよく歌う様になった。
今日は一人だけど。
クランちゃんとミシェル君の部屋からの帰り道。
私は、習慣のように丘に向かった。
シェリルさんは、これから仕事。
「まだ、好き?・・・アルトの事。」
別れ際、急にそう言われて、私は答えられなかった。
シェリルさんがお腹に手を当てているのを見て、自分も無意識にお腹に手を当てている事に気付いた。
「もうあの時から、遠くまで来ちゃったのよね。」
「えっ?」
「何でもないわ。じゃあね、ランカちゃん。」
迎えの車に乗り込んだシェリルさんを、見えなくなるまで見送っていた。
シェリルさんとは繋がっているから、きっと分かっているんだ。
今でも、大好き。
だけど、アルトくんの隣には、シェリルさんがお似合いなんだとも思っている。
この想いが恋なのか、友愛に変わったのか。
宙に浮いたままだよ。
きっと、誰か好きな人が出来たら、アルトくんで占められてた心の場所が少しづつ減っていっちゃう。
きっとそれでも、特別で大好き。
「ホシキラ」の歌に乗せたように、愛していく事を私は選んだ。
アルトくんに選ばれない事が、分かっていても。
哀しくても、寂しくても。
そんな感傷を吹っ切る様に、今日もアイモを歌い始めた。
気が付けば、真っ暗だった。
そんなに、歌っていたんだっけ?
それにしたって、街灯の灯りさえ無くって、少し怖い。
そう思った時、白い紙飛行機が目の前を飛んで行った。
アルトくんが好んで折っていた、紙飛行機。
まさかね、と思いながら振り返れば・・・。
「アルト、くん?」
大きな背中が振り向いて、ポニーテールが揺れた。
「ランカ・・か?」
堪らなくなって、走った。
躊躇う事なく抱きつけば、しっかりとした温かみが広がって、知った香りが鼻を擽った。
「アルトくん。」
「本当にランカ、か?」
見上げて、私は目を見開いた。
彼の瞳に映る私は、いつも通りの私。
といっても、あの日から5年も経ってるから、少しは大人っぽくなってるんだよ。
なのに、彼は私が知る彼よりもっと、もっと年上だった。
「なんで・・・。」
「こっちのセリフだ。」
なんで、こんなに年が離れてしまっているんだろう。
私は20代前半、アルトくんとは一つ違いのはず。
「時空を超えた所為か・・・。ははっ、老けただろ?俺。」
アルトくんは30代に見えた。
オズマお兄ちゃんと同じくらいに。
「夢?」
「じゃ、ないだろうな。感覚もしっかりしているし。」
バジュラの歌の所為かもな、なんて。
丁度バジュラ達が他の群れに出会って、歌い出したんだって。
フォールドクォーツと歌の奇跡。
真っ暗な空間に、私とアルトくん、2人。
「あの、さ・・・・シェリルは?」
不安げに聞いてくるから、私は微笑んだ。
「大丈夫。奇跡的に回復したの。2人で復活コンサートもしたんだよ。」
「良かった・・・。」
姿はかわっても、アルトくんはアルトくんだった。
ぶっきらぼうだけど、優しい大好きなアルトくん。
だから、聞いたんだ。
「もう、帰ってこないの?」
「ああ。こっちで大事なモノ、出来たし、な。」
ああ、やっぱりそうなんだ。
時空を超えたどこかで、バジュラ達と共存して。
そして、自分の未来を見つけたんだね。
それが恋なのか、友情なのか。
それとも別の何か、なのか。
聞くのが怖くて聞けないけど、生きて元気でいてくれた。
「そっか。」
「だから、俺の事は忘れて元気で、って。シェリルにも。」
「うん。」
分かってる。
もう、アルトくんの居ない未来を、見詰め始めてるよ。
「だけど、忘れないよ。近くに居なくたって、アルトくんが大好きだもん。」
「ランカ・・。」
もう、ハッキリと恋とは呼べない想いだけど。
「サヨナラなんて、言わないからね!こうして、また会えるから。」
きっと遠い未来で、また巡り会えるから。
「その時には、覚悟してよね。アルトくん!」
シェリルさんにだって、負けるつもりはないの。
「分かったよ、ランカ。めちゃくちゃ早い予約、受けとく!」
凄く嬉しくなって、もう一度アルトくんに抱きついた。
もう、過去の想い出を振り返ったりしない。
寂しいとは思っても、きっと哀しくはないから。
きっと、永遠の彼方から希望の優しい光が、瞬くから。
その日まで。
「「またね(な)。」」
アルトくんの笑顔、忘れないよ。
気付いた時には、街の灯りと星が優しく瞬いてた。
END
このページへのコメント
新作ありがとうございます(*≧∀≦*)
嬉しいです!
Zionさん、いつもコメントありがとうございます。
本当に久しぶりの投稿で、コメントいただけて嬉しいです。
アルランの萌えは、もはや自分の妄想くらいなんで近いうちにまた投稿したいと思ってます。
またコメントいただけると嬉しいです。(*´ω`*)
涙が出そうになりました(´;ω;`)
感動です!