最終更新:ID:bquMVGw66A 2012年11月29日(木) 00:23:03履歴
TV版終了後の話です。
始まりの向こうで BYアヤ
「俺達の未来(フロンティア)は、ここから始まるんだ!」
空と海との、青のコントラスト。
果てしなく続く、緑の大地。
この惑星は、美しかった。
戦争と旅の終わりに、胸膨らませ。
確かな未来を手に入れて、誰もが瞳を輝かせた。
もう、悲しみの時は終わりを告げたのだと。
全てが新しく始まり、前に向かっていくだけだと。
けれど、現実はそんなに甘くない。
アイランド1と生活に必要な農業プラント等の整備が始まった。
新しい大地への調査も始まった。
以前の様な安全な生活に近づいていく。
近付けば近付く程、それは輪郭を濃くしていく。
失ったモノが、より浮き彫りになる。
すぐ隣に居たはずの、家族・友人・恋人。
呼びかけても、もう応えも姿も無い。
あったはずの温もり。
その喪失感。
それを乗り越えて行ければいい。
そう出来ない人の、悲しみや怒りはどこに・・・。
気付けたはずだった。
俺は、まだまだ大人には程遠かった。
荒い息遣いと、足音だけが響いていた。
汗で肌に張り付くジャケットと、長い髪が気持ち悪い。
それでも街灯の青白い灯りの下を、アルトは走っていた。
何もこんなにも走る必要などないハズだ。
けれど、目の前に見える赤い十字マークの建物が視界に入った時から、アルトの足は止まらなかった。
夜間の人気のないロビーを抜け、壁のボタンを押す。
開いた青白く光るボックスに身体を滑り込ませると、透明なガラスに背を預けた。
ロビーが遠ざかり、アルトの乗ったボックスが上昇していく。
呼吸を整えながら、ついさっきの話しを思い出していた。
「アルト!ちょっと来い。」
一日の仕事を終えて、疲れた体を引き摺って。
あとはSMSの宿舎に帰って寝るだけ。
それなのに、ランカの兄オズマの一言でお預けとなった。
連れ込まれたブリーフィングルームには、ランカのもう一人の兄ブレラの姿も。
終戦後、ブレラはLAIに身体のメンテナンス名目で、インプラント技術の提供を。
SMSが身柄の保障をする事で、フロンティアでの自由を手に入れた。
SMSのクルーとして、オズマの義弟として落ち着き、今はランカと3人で生活している。
アルトへの接し方は相変わらずだが。
そんな二人が顔を揃えて、俺を呼ぶ。
その理由は一つだ。
「また、ランカとケンカで・・。」
「ランカを入院させた。」
俺の言葉を遮って、オズマが言った一言。
何の冗談だ?
「は?何言って・・・・。」
「精神的にちょっと不安定で、な。ずっと傍に居てやれないから、強制的に入院させた。」
出来れば会ってやって欲しいと。
何を言っているのか分からなかった。
ランカからはいつも元気だと、メールの文字踊っていた。
つい昨日も同じようなメールが届いたばかり。
シェリルと共にチャリティーコンサートに励んでいるものだと疑わなかった。
「お前なら分かると思ったんだがな。元梨園の御曹司なら。」
黙って壁に背を預けていたブレラが、口を開いた。
「会うなとは言わない。だが、軽々しく優しさを振り撒くな。」
表情豊かになりつつあるブレラの顔が、苦く歪んでいた。
復興が進み冷静になったつもりで、空と復興活動にのめり込み。
過去の後悔や悲しみや色んなモノがごっちゃになって、俺に余裕なんて無かった。
ただ必死になって、毎日をやり過ごすだけ。
ランカやシェリルのメールを真に受けて、正直あいつらの事を気に掛けることも・・・。
俺は、分かっていたはずだ。
芸に生きる人間のスキャンダルが何をもたらすのか。
スキャンダルなんて生易しいものじゃなくて、皆が固唾を飲んで見守っていたあの戦争だ。
操られていたとしても、ランカは一度フロンティアの敵になった。
そのランカにどんな目が向けられるのか。
「もう、あの頃のランカは見たくなかったんだが、な。」
オズマが言うあの頃とは、心を閉ざしてしまっていた幼少期の事だろう。
居ても立っても居られなくなって、俺の足は走り出していた。
俺は、あの頃のランカを知らない。
だからこそ、不安になった。
目の前のドアが開いたら、どんな彼女を見る事になるのか。
目的の病室に辿り着き、ノックして声をかけたが応答なし。
心配になって、ロックされてなかったドアを開けた。
「ランカ?入るぞ。」
機械音の後に開いた部屋には、思った通りの何もない無機質な空間が広がっていた。
中央に置かれたベッドには、予想していた毛布の膨らみは無い。
ベッドの端にぽつりと、月明かりで浮かび上がった少女の背中。
「ランカ・・・・?」
聞こえているだろうに、反応が無い。
仕方なくベッドを回り込んで、俺は息を呑んだ。
虚ろな瞳が目の前の俺を通り越して、どこかを見ている。
表情豊かだったランカの瞳が、光を失っている。
「おいっ!ランカ!」
思わず肩を掴めば、ふっと光が瞳に宿って俺を見た。
「あれ?アルトくん。」
「あれ?じゃないだろ・・・。」
「アルトくん。久しぶりだね?」
笑顔でベッドの空きスペースを、ぽんぽんと叩くランカ。
隣に座れと言うことだろう。
いつもと変わらない様子のランカに、脱力しつつ腰を下ろした。
「久しぶり。じゃ、ねえよ。あ〜まあなんだ、・・大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ?ちょっと疲れちゃっただけ。私、元気だもん!」
お兄ちゃん達が過保護すぎるんだよー、なんて口を尖らせて不服そうにしているその姿。
翡翠の髪を浮かせたり萎ませたり、大きな瞳でくるくると変わる表情。
さっき見た虚ろなランカとのギャップが、俺を不安にさせる。
空元気なんて、らしくない。
「元気な奴は、入院なんかさせてくれませんっ!お前、無理してるんじゃないか?」
「何で・・。」
「見てれば分かる。」
「そっか」と呟いて、ランカは俯いてしまった。
「えへっ。せっかくメールで誤魔化してたのに、バレちゃった。」
ほとんど毎日、届いていたランカからのメール。
思い出せば、同じようなメールの文面。
辛い気持ちを、ひた隠して。
冷静になって考えれば、ランカの今の状態がどんなものか想像がつく。
戦争の結末がどうであれ、過去の行動を責める者は、どこにでも居るもんだ。
ましてや、ランカは希望の歌姫とさえ言われていたのだから、何にも知らない奴等のバッシングが世間を煽るのだ。
「悪かったな。正直自分の事で精一杯で、気遣ってやる余裕無かったから。」
「そんなの、当たり前だよ。私の心配なんて。」
「バーカ。心配するに決まってるだろ。じゃなきゃ、来ねえよ。」
「お前、頑張りすぎなんだよ。身体壊す前に、兄貴達に発散しちまえ。何だったら、俺も聞いてやるから、な?」
ランカやシェリルに振り回されるのなんて、日常茶飯事になってしまったから。
ちょっと位の愚痴なんか、今なら受け止めてやれる。
ランカの笑顔が曇るのは、見たくないから。
「優しいね、皆。私、もっと強くならなきゃいけないのに・・。」
「ランカ・・・。」
「本当は歌っちゃダメなんだよね。きっと皆の神経、逆撫でしてるだけだから。」
だけど歌いたいのだと、自分の歌を求めてくれる人がいる限り、歌って償いたいのだとランカは言う。
歌を取り上げられたら、何も出来ない自分に戻ってしまうと。
だからと言って、辛くないわけ無いじゃないか。
負の感情に晒されるのは、誰だって怖い。
「辛いとか苦しいなんて言う資格、私には無いんだよ。」
「資格って・・・、そんなもの!我慢する事ないだろ?何時もだったら俺に何でも話してくるじゃないか。」
「アルトくんにだから言えないよ!」
「何でだよ!?」
「だって、私のせいで・・・私の歌でミシェル君亡くしちゃったんだよ。アルトくんと一緒に戦ってた仲間も。」
息が止まるかと思った。
確かに、俺にとっても大きな傷だ。
だけど、ランカにとっても大きな傷になっているなんて。
「あれは・・あの戦争は、お前が一人で背負い込む事じゃない。」
「だけど、あの時私が歌っていたんだもん。・・・歌手になりたいなんて思わなければ良かった。」
「・・・・。」
「歌なんて望まなかったら・・・。ううん、生まれてなんて来なければ・・・皆死ななかったよ!」
「ランカッ!」
振り上げた自分の手が、熱く痺れた。
今のランカが、混乱しているのはよく分かる。
だけど、生まれてこなければなんて、聞きたくない。
俺との、仲間との出会いさえ悔やんでるなんて、口にして欲しくないんだ。
「お前は生まれてこなければ良かったって言ったけど、俺は嫌だ。」
なんだか、目頭が熱くなって苦しい。
「ランカの事、お前の母親が、オズマが愛さなかった事なんて無かっただろ?」
ランカは、素直にこくりと頷いた。
オズマの溺愛っぷりは、よく知ってる。
疎むなんて、有り得ないだろ?
「ランカと出会わなかったら、シェリルと接点を結ぶ事もなかったし、ミシェルやルカとも学校の友人以上にはならなかったと思う。」
今でも窮屈だった現状に歯噛みするだけで、バルキリーに乗ることも無かっただろう。
きっとミシェルと親友になる事も無く。
あいつの死もただの事故死として、忘れていったかもしれないだろ?
そんなの、寂し過ぎるじゃないか。
「俺は、お前達が・・・。否、お前が居たから本当の意味で空を飛ぶことが出来たんだ。ランカとの出会いを悔やんだ事なんて、一度も無い。」
残念な事に、ランカの前で涙腺が決壊した。
女の前で泣く、だなんて情けない。
だけど、これが俺の本当の心だ。
「俺は嫌だぜ?ランカと出会わなかった世界なんて。」
「アルトくん。・・・ふぇ。」
ランカは遂に泣き出した。
俺はランカの肩を抱き寄せて、自然と頭を撫でてやっていた。
良いんだ、そのまま色んな物流してしまえ。
そうしたら又、元気な姿で歌って欲しい。
ランカの歌には、何時だって「愛」がある。
それは、過去も現在も。
そして、未来もきっと変わらないだろう。
それは揺らぐことなく、信じられる。
きっとその愛が、皆にも届くはずだ。
そう信じているから。
ちょっとでも、俺達仲間を・・俺を頼ってくれよな。
それ位の度量は、持ち合わせているんだぜ?
ふっと肩の重みが増したと思って、覗き見たら泣き疲れて眠ってしまったらしい。
俺のシャツを握り占めたまま。
「おいっ、ランカ?・・ったく、マジかよ。」
ランカの寝息を聞いていたら、俺の眠気もピークを迎えたらしい。
そういえば今日の仕事もハードだった。
眠ってしまったランカを起こすのもなと、ランカを抱き込みながらベッドに身体を預けた。
こりゃ見つかったら、あのシスコン兄貴達に殺されるな。
マズイよな〜と思いながらも、あっという間に夢の世界へと堕ちて行った。
続く
始まりの向こうで BYアヤ
「俺達の未来(フロンティア)は、ここから始まるんだ!」
空と海との、青のコントラスト。
果てしなく続く、緑の大地。
この惑星は、美しかった。
戦争と旅の終わりに、胸膨らませ。
確かな未来を手に入れて、誰もが瞳を輝かせた。
もう、悲しみの時は終わりを告げたのだと。
全てが新しく始まり、前に向かっていくだけだと。
けれど、現実はそんなに甘くない。
アイランド1と生活に必要な農業プラント等の整備が始まった。
新しい大地への調査も始まった。
以前の様な安全な生活に近づいていく。
近付けば近付く程、それは輪郭を濃くしていく。
失ったモノが、より浮き彫りになる。
すぐ隣に居たはずの、家族・友人・恋人。
呼びかけても、もう応えも姿も無い。
あったはずの温もり。
その喪失感。
それを乗り越えて行ければいい。
そう出来ない人の、悲しみや怒りはどこに・・・。
気付けたはずだった。
俺は、まだまだ大人には程遠かった。
荒い息遣いと、足音だけが響いていた。
汗で肌に張り付くジャケットと、長い髪が気持ち悪い。
それでも街灯の青白い灯りの下を、アルトは走っていた。
何もこんなにも走る必要などないハズだ。
けれど、目の前に見える赤い十字マークの建物が視界に入った時から、アルトの足は止まらなかった。
夜間の人気のないロビーを抜け、壁のボタンを押す。
開いた青白く光るボックスに身体を滑り込ませると、透明なガラスに背を預けた。
ロビーが遠ざかり、アルトの乗ったボックスが上昇していく。
呼吸を整えながら、ついさっきの話しを思い出していた。
「アルト!ちょっと来い。」
一日の仕事を終えて、疲れた体を引き摺って。
あとはSMSの宿舎に帰って寝るだけ。
それなのに、ランカの兄オズマの一言でお預けとなった。
連れ込まれたブリーフィングルームには、ランカのもう一人の兄ブレラの姿も。
終戦後、ブレラはLAIに身体のメンテナンス名目で、インプラント技術の提供を。
SMSが身柄の保障をする事で、フロンティアでの自由を手に入れた。
SMSのクルーとして、オズマの義弟として落ち着き、今はランカと3人で生活している。
アルトへの接し方は相変わらずだが。
そんな二人が顔を揃えて、俺を呼ぶ。
その理由は一つだ。
「また、ランカとケンカで・・。」
「ランカを入院させた。」
俺の言葉を遮って、オズマが言った一言。
何の冗談だ?
「は?何言って・・・・。」
「精神的にちょっと不安定で、な。ずっと傍に居てやれないから、強制的に入院させた。」
出来れば会ってやって欲しいと。
何を言っているのか分からなかった。
ランカからはいつも元気だと、メールの文字踊っていた。
つい昨日も同じようなメールが届いたばかり。
シェリルと共にチャリティーコンサートに励んでいるものだと疑わなかった。
「お前なら分かると思ったんだがな。元梨園の御曹司なら。」
黙って壁に背を預けていたブレラが、口を開いた。
「会うなとは言わない。だが、軽々しく優しさを振り撒くな。」
表情豊かになりつつあるブレラの顔が、苦く歪んでいた。
復興が進み冷静になったつもりで、空と復興活動にのめり込み。
過去の後悔や悲しみや色んなモノがごっちゃになって、俺に余裕なんて無かった。
ただ必死になって、毎日をやり過ごすだけ。
ランカやシェリルのメールを真に受けて、正直あいつらの事を気に掛けることも・・・。
俺は、分かっていたはずだ。
芸に生きる人間のスキャンダルが何をもたらすのか。
スキャンダルなんて生易しいものじゃなくて、皆が固唾を飲んで見守っていたあの戦争だ。
操られていたとしても、ランカは一度フロンティアの敵になった。
そのランカにどんな目が向けられるのか。
「もう、あの頃のランカは見たくなかったんだが、な。」
オズマが言うあの頃とは、心を閉ざしてしまっていた幼少期の事だろう。
居ても立っても居られなくなって、俺の足は走り出していた。
俺は、あの頃のランカを知らない。
だからこそ、不安になった。
目の前のドアが開いたら、どんな彼女を見る事になるのか。
目的の病室に辿り着き、ノックして声をかけたが応答なし。
心配になって、ロックされてなかったドアを開けた。
「ランカ?入るぞ。」
機械音の後に開いた部屋には、思った通りの何もない無機質な空間が広がっていた。
中央に置かれたベッドには、予想していた毛布の膨らみは無い。
ベッドの端にぽつりと、月明かりで浮かび上がった少女の背中。
「ランカ・・・・?」
聞こえているだろうに、反応が無い。
仕方なくベッドを回り込んで、俺は息を呑んだ。
虚ろな瞳が目の前の俺を通り越して、どこかを見ている。
表情豊かだったランカの瞳が、光を失っている。
「おいっ!ランカ!」
思わず肩を掴めば、ふっと光が瞳に宿って俺を見た。
「あれ?アルトくん。」
「あれ?じゃないだろ・・・。」
「アルトくん。久しぶりだね?」
笑顔でベッドの空きスペースを、ぽんぽんと叩くランカ。
隣に座れと言うことだろう。
いつもと変わらない様子のランカに、脱力しつつ腰を下ろした。
「久しぶり。じゃ、ねえよ。あ〜まあなんだ、・・大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ?ちょっと疲れちゃっただけ。私、元気だもん!」
お兄ちゃん達が過保護すぎるんだよー、なんて口を尖らせて不服そうにしているその姿。
翡翠の髪を浮かせたり萎ませたり、大きな瞳でくるくると変わる表情。
さっき見た虚ろなランカとのギャップが、俺を不安にさせる。
空元気なんて、らしくない。
「元気な奴は、入院なんかさせてくれませんっ!お前、無理してるんじゃないか?」
「何で・・。」
「見てれば分かる。」
「そっか」と呟いて、ランカは俯いてしまった。
「えへっ。せっかくメールで誤魔化してたのに、バレちゃった。」
ほとんど毎日、届いていたランカからのメール。
思い出せば、同じようなメールの文面。
辛い気持ちを、ひた隠して。
冷静になって考えれば、ランカの今の状態がどんなものか想像がつく。
戦争の結末がどうであれ、過去の行動を責める者は、どこにでも居るもんだ。
ましてや、ランカは希望の歌姫とさえ言われていたのだから、何にも知らない奴等のバッシングが世間を煽るのだ。
「悪かったな。正直自分の事で精一杯で、気遣ってやる余裕無かったから。」
「そんなの、当たり前だよ。私の心配なんて。」
「バーカ。心配するに決まってるだろ。じゃなきゃ、来ねえよ。」
「お前、頑張りすぎなんだよ。身体壊す前に、兄貴達に発散しちまえ。何だったら、俺も聞いてやるから、な?」
ランカやシェリルに振り回されるのなんて、日常茶飯事になってしまったから。
ちょっと位の愚痴なんか、今なら受け止めてやれる。
ランカの笑顔が曇るのは、見たくないから。
「優しいね、皆。私、もっと強くならなきゃいけないのに・・。」
「ランカ・・・。」
「本当は歌っちゃダメなんだよね。きっと皆の神経、逆撫でしてるだけだから。」
だけど歌いたいのだと、自分の歌を求めてくれる人がいる限り、歌って償いたいのだとランカは言う。
歌を取り上げられたら、何も出来ない自分に戻ってしまうと。
だからと言って、辛くないわけ無いじゃないか。
負の感情に晒されるのは、誰だって怖い。
「辛いとか苦しいなんて言う資格、私には無いんだよ。」
「資格って・・・、そんなもの!我慢する事ないだろ?何時もだったら俺に何でも話してくるじゃないか。」
「アルトくんにだから言えないよ!」
「何でだよ!?」
「だって、私のせいで・・・私の歌でミシェル君亡くしちゃったんだよ。アルトくんと一緒に戦ってた仲間も。」
息が止まるかと思った。
確かに、俺にとっても大きな傷だ。
だけど、ランカにとっても大きな傷になっているなんて。
「あれは・・あの戦争は、お前が一人で背負い込む事じゃない。」
「だけど、あの時私が歌っていたんだもん。・・・歌手になりたいなんて思わなければ良かった。」
「・・・・。」
「歌なんて望まなかったら・・・。ううん、生まれてなんて来なければ・・・皆死ななかったよ!」
「ランカッ!」
振り上げた自分の手が、熱く痺れた。
今のランカが、混乱しているのはよく分かる。
だけど、生まれてこなければなんて、聞きたくない。
俺との、仲間との出会いさえ悔やんでるなんて、口にして欲しくないんだ。
「お前は生まれてこなければ良かったって言ったけど、俺は嫌だ。」
なんだか、目頭が熱くなって苦しい。
「ランカの事、お前の母親が、オズマが愛さなかった事なんて無かっただろ?」
ランカは、素直にこくりと頷いた。
オズマの溺愛っぷりは、よく知ってる。
疎むなんて、有り得ないだろ?
「ランカと出会わなかったら、シェリルと接点を結ぶ事もなかったし、ミシェルやルカとも学校の友人以上にはならなかったと思う。」
今でも窮屈だった現状に歯噛みするだけで、バルキリーに乗ることも無かっただろう。
きっとミシェルと親友になる事も無く。
あいつの死もただの事故死として、忘れていったかもしれないだろ?
そんなの、寂し過ぎるじゃないか。
「俺は、お前達が・・・。否、お前が居たから本当の意味で空を飛ぶことが出来たんだ。ランカとの出会いを悔やんだ事なんて、一度も無い。」
残念な事に、ランカの前で涙腺が決壊した。
女の前で泣く、だなんて情けない。
だけど、これが俺の本当の心だ。
「俺は嫌だぜ?ランカと出会わなかった世界なんて。」
「アルトくん。・・・ふぇ。」
ランカは遂に泣き出した。
俺はランカの肩を抱き寄せて、自然と頭を撫でてやっていた。
良いんだ、そのまま色んな物流してしまえ。
そうしたら又、元気な姿で歌って欲しい。
ランカの歌には、何時だって「愛」がある。
それは、過去も現在も。
そして、未来もきっと変わらないだろう。
それは揺らぐことなく、信じられる。
きっとその愛が、皆にも届くはずだ。
そう信じているから。
ちょっとでも、俺達仲間を・・俺を頼ってくれよな。
それ位の度量は、持ち合わせているんだぜ?
ふっと肩の重みが増したと思って、覗き見たら泣き疲れて眠ってしまったらしい。
俺のシャツを握り占めたまま。
「おいっ、ランカ?・・ったく、マジかよ。」
ランカの寝息を聞いていたら、俺の眠気もピークを迎えたらしい。
そういえば今日の仕事もハードだった。
眠ってしまったランカを起こすのもなと、ランカを抱き込みながらベッドに身体を預けた。
こりゃ見つかったら、あのシスコン兄貴達に殺されるな。
マズイよな〜と思いながらも、あっという間に夢の世界へと堕ちて行った。
続く
このページへのコメント
最高です!どうなっていくか楽しみです(^v^)最近ピクシブにアップできてませんが(アルラン漫画描いてるから(笑))創作意欲がわいてきます!
了解しました。
気長に待ちま〜す
さっそくのコメントありがとうございます(^O^)話しの大筋は出来上がっていても間を埋めたり書き直したりで、オカシイ所もあるかもしれませんが、さらっと読んでいただけると助かります(o^v^o)続きも気長に待って下さいませm(_ _)m
さすがアヤさんですね
仕事が早い
それに自分が希望してたTV版その後のアルラン。
アルトが無意識に走るところなんて最高ですね。
次回の続きに期待しますよ。