最終更新:ID:ua4BptOMXw 2012年01月24日(火) 19:52:59履歴
小話「婚約指輪」 BYアヤ
きらきらと輝くエンゲージリング。
女の子なら、一度は夢見るもの。
それが朝日を浴びて、自分の薬指で輝いていた。
ベッドの中での、アルトくんからのプロポーズ。
ロマンティック、ではなかったかもしれない。
それでも、私にとって最高の瞬間。
私達は、恋人から婚約者になった。
シーツの波の中で、抱き寄せられて抱き合って。
何度もキスを交わして、微笑み合って。
見上げた彼が優しく笑うから。
アルトくんの頬をちょっと抓ってみた。
「おいっ。ランカ?痛いって。」
「夢かと思って。夢じゃない?」
「当たり前だろ。・・・こうしてやる。」
私の抓ってる手を外すと、アルトくんが私の頬にかぷりと噛み付いた。
「あははは。いひゃいよ、アルトくん。」
二人で笑い転げて、また抱き合って。
幸せすぎて、時間を忘れてた。
気付いた時には、マネージャーのナナちゃんが迎えに来る一時間前。
慌ただしくシャワーを浴びて、身支度を整えた。
そうこうしている内に、インターフォンが鳴ってナナちゃん到着。
急いで玄関で靴を履いていたら、キッチンからアルトくんが出てきた。
「サンドイッチ作ったから、車の中で食っていけ。」
渡された小さな包みとボトルは、ほんわかと暖かい。
「ありがとう。行ってきます!」
精一杯背伸びして、アルトくんにキスをして部屋を出た。
車の中で頬張った、サンドイッチが美味しくて。
薬指に輝く指輪を見ては、頬が緩んだ。
「「「カンパ〜イ!!」」」
琥珀色の液体を満たしたグラスが、綺麗な音を立てた。
アルトくんのお父さんと、オズマお兄ちゃんの承諾をなんとか得る事が出来た。
今日は、晴れて皆に報告。
皆と言ってもいつものメンバー。
シェリルさんと、旦那様のカインさん。
ルカくんと、ナナちゃん。
それから、ミシェルくんとクランちゃん。
ジェシカちゃんは、キャシーお義姉さんが引き受けてくれた。
リー家のチビ達と一緒に水族館へ行くらしい。
「「「「婚約おめでと〜」」」
「ありがとう、皆。」
「まあ、ありがとな。」
何だか照れくさくて、グラスのシャンパンを口に含んだ。
喉で弾ける美味しいシャンパンは、シェリルさんがお祝いにくれた高級品。
皆もグラスを傾けて、シャンパンを味わう。
皆がお祝いに開いてくれたのは、ちょっとしたパーティと言うより飲み会?
アルトくんと同棲を始めてから、集まるのは何故か私の家。
きっとアルトくんが作るご飯目当て、なんだろうな。
「さあ、今日の主役のランカ姫。指輪のお披露目お願いしますよ。」
「・・・はい。」
記者会見よろしく、ミシェルくんがカメラを構える。
私は、皆に見える様に、左手を掲げる。
「へえ〜。良い指輪ね。アルトにしては上出来よ。」
「うん。ランカのイメージに合うデザインだな。」
シェリルさんとクランちゃんに褒められた指輪。
それはプラチナの台座が花の様なモチーフになっていて、その中心に輝く石が納まっているもの。
今や私の一番のお気に入り。
「早乙女君、こんな素敵なのをよく見付けてきましたねぇ。」
「先輩、結構値が張ったんじゃないですか?」
「オーダーメイドで作った。値段はノーコメントだ。それ言ったら粋じゃないだろうが。」
「ふ〜ん。オーダーメイドねぇ。そんな前から準備していたとは、ね。お前にしちゃ用意が良いんじゃないか?」
「うるせえ。ミシェル!」
照れたのかアルトくんはキッチンに行ってしまった。
「逃げたわね。」
「逃げたな。」
アルトくんの耳が真っ赤になっていたのは、皆分かっている。
皆が笑いながら、キッチンを覗いていた。
「ところで、プロポーズの言葉は何だったのかい?」
「カイン。貴方いい事言ったわ。さあ、ランカちゃん。白状して貰おうかしら?」
「えぇ〜〜!!」
「「「さあっ!」」」
「それはぁ〜・・・・。ひっ秘密です。」
恥ずかしくって、そんなの言えないよぉ。
耐え切れなくて、私もキッチンに逃げ込んだ。
「あんなに恥ずかしいとは思わなかった。」
「わたしも。」
キッチンで鍋のスープをかき混ぜながら、アルトくんがボソリと言った。
二人して真っ赤な顔して、苦笑い。
リビングからは、賑やかな笑い声が聞こえてきている。
きっと、私達のネタで盛り上がっているんだろうな。
頬の熱が冷めるまで戻れそうもない。
リビングに戻る前に、皆が持ち寄ってくれた料理をお皿に盛り付ける。
足りなさそう分は、アルトくんと二人で簡単に作る。
「うぅ。」
「ランカ?」
「玉ねぎが目に沁みる〜。」
サラダのドレッシング用に、刻んだ玉ねぎ。
珍しくよく沁みる。
涙目になった私の目じりに、アルトくんがそっと唇を寄せた。
「アッ・・アルトくん?!皆いるのに。」
「向こうで盛り上がってるから、大丈夫だろ。」
「・・・もう。」
少し背伸びして、アルトくんにキス。
アルトくんのキスは、彼が作っていたスープの味。
「美味しいだろ?」
なんて言うから、アルトくんと笑ってしまった。
私達はまだ知らない。
キッチンの入り口からカメラのレンズが光っていた事を。
それが発覚したのは、また数ヶ月後の事だった。
END
このページへのコメント
ランカちゃんとは同じ誕生月なので、ぜひアルトがダイヤモンドの婚約指輪を贈っていたら嬉しいなと思いました。
ランカちゃんの気持ちに漸く気づいたアルトにはランカちゃんを幸福にしてあげて欲しいです。
正にアヤさんの小説は私が好きな「無理に描く理想より笑い合える今」が堪能できるので楽しみです。
こんばんは。紫陽花です。久々に来ましたら、新しいアルラン小説がありまして、嬉しいです!
やっと婚約指輪ですね♪アルトは結婚を前提に付き合っていましたからね(^-^)手を出すのも早かったですし(笑)
ランカちゃんには花がよく似合うと思います!石は誕生石のダイヤモンドですか?
しかし、裏からこっそり映すとは、抜け目がありませんね(笑)
イチャイチャもバレバレですね(笑)
とても楽しかったです!ありがとうございます。