マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。

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小話「受け継ぐもの」 BYアヤ




結婚とは、面倒なものだ。
否、違った。
結婚式は、だ。
ランカと結婚できるのは、凄く嬉しい。
それは、間違いない。
面倒なのは、式の準備だ。
「皆に感謝の気持ち、伝えなきゃね。」
ランカがそう笑うから。
二人で話し合って式と小さなパーティを、身内といつものメンバー+αでしようかと言う話になった。
売れ子芸能人としては、かなりの地味婚である。(シェリルも似たもんだったが。)
まあ、貧乏性というか庶民派の俺達にはそれくらいがちょうど良い。
式を何時にするかで、ナナセを交えて相談した。
が、さすが売れっ子である。
スケジュールはびっしりと詰まっている。
なんとか空けられるのは、半年後のある3日間のみ。
次の機会を待っていたら、何時になるのか分かったもんじゃない。
籍だけ先に入れることも出来たが、結婚というのは女の夢ってやつが詰まってる(らしい)。
出来ることなら、ちゃんと式を挙げて籍を入れてやりたい。
そう思ったから、大変だとは思ったが空けられる3日間の内で決める事にした。
したのだが、何から何まで決める事が多い。
会場に衣装に招待状、その他諸々。
ランカのウエディングドレスは、ナナセが。
「ドレスとタキシードは、私に任せて下さい。ランカさんにぴったりなドレス作りますからね!」
と、妙に張り切っていた。
「ありがとう!ナナちゃん。」
ランカは嬉しそうにしていたから、それは任せた。
会場は、ランカの中ではもう目星がついているらしい。
「この前、雑誌の撮影で使ったレストランが良かったんだよ。」
食事も美味しかったとの事で、下見を兼ねて食事に。
確かに美味しくて、ロケーションも申し分ない。
海が見える緑の丘。
「ここで式も挙げたいの。駄目?」
なんて上目遣いで言われたら、YESの返事しかできないだろ?
レストランのオーナーと交渉したら、二つ返事で受けてくれた。
ランカのファンらしく、式後に宣伝しても良いかとの交渉も忘れなかったオーナー。
張り切り具合に、苦笑しつつお願いしますと交渉成立。
その後は指輪を二人で見に行ったり、その他諸々を合間に準備していく。
はっきり言って、なかなかに面倒臭いものだ。
そうは思っても、機嫌の良いランカを見ればもう一頑張りしますかという気持ちになってしまう。
そんな時に親父に呼び出されたのは、式の一週間前だったか。




座敷に広げられた着物。
薄桃色で、裾に上品に花の染めが入った着物。
見間違えようもない、お袋の愛用品。
「親父。これをどうするんだ?」
「新しく早乙女家の人間になる君に、これを受け取って貰いたい。」
「私に、ですか?」
親父は深く頷きながら、床の間に飾られたお袋の写真を見詰めていた。
「アルトの母親の愛用品だ。本来なら先祖代々受け継がれていく品があるんだが、地球を出る時に処分してしまったり、先の大戦で燃えて手元に無い。母親から娘に受け継がれていくものがあったらと思ってな。」
風呂敷ごとずいっとランカの前に置かれた着物。
記憶にある幼い頃のままの、綺麗な保存状態のものだった。
幼い自分が擦り寄った、お袋の膝。
今でも、ひどく懐かしい。
「本当に私が受け取って、良いんですか?」
「君が母親になり、娘が出来たらまた継いでいって欲しい。」
「はい。ありがとうございます。」
ランカは着物をそっと手に取ると優しく撫でて、初めて触るそれに微笑んだ。
「ありがとう。親父。」
親父は、ただ頷くだけだった。
けれど、対戦の避難中も手元に置いただろう着物。
それだけお袋の事を、大事に想っていったんだろうと分かった。




家に帰って、さっそく着物用の衣文賭けに着物を掛けた。
ランカは、その前に座るとじっと着物を眺めていた。
「綺麗だろ?」
俺もランカの隣に腰を下ろした。
幼い頃と変わらず、カビの痕一つ見つからない。
「お義母さんの着物なんだね。本当に綺麗。」
「もう処分されたか、対戦で燃えたんだろうって思ってた。」
「お義父さんに聞いたんだけど、反物からお義父さんが指示して作らせたんだって。」
すごいよね〜、なんてランカは呟いていた。
梨園の人間なら、幼い頃から「美」というものに敏感になる様に教育される。
それでも自らデザインに口出す人間は、滅多にいないだろう。
それが、分かりづらい親父の愛か。
「ねえ、アルトくん。お願いがあるんだけど。」
着付け出来るよね?なんてこのタイミング。
なんとなく考えている事が分かって、ランカの頭をぽふぽふと撫でて携帯を手に取った。




指輪の交換も、誓いのキスも終えた。
皆を前に、誓いを交わして俺とランカは夫婦になった。
披露宴なんて立派なもんじゃないけど、パーティ会場は賑やかに笑い声が響いている。
俺達は、会場から少し離れた小部屋にいる。
レストランの従業員が休憩場所に使っている部屋だ。
「お義父さん、喜ぶかな?」
瞳を揺らして今更ながらに心配になったらしい。
背後に屈んでいる俺を、首を傾けて見下ろしていた。
「大丈夫だって。よく似合ってる。」
俺は今、ランカに着物を着付けている。
お袋から継いだ、あの着物。
お色直しはしない予定だったが、これがランカのお願いだった。
継いだ以上は、親父に見せたかったらしい。
昔とった杵柄ってやつで、俺が着付けを。
何年も着物を着る機会なんて避けてたのに、結構覚えているもんだな。
ランカの帯を結って、帯締めを留める。
髪は、ドレス用にカールさせたのを、緩く三つ編みに結ってサイドに垂らす。
小花の飾りも使った。
俺も、灰色の着物に羽織姿だ。
全体をチェックしてランカに草履を履かせていると、ノックがして戸が開いた。
「これはこれは、可憐な花嫁さんですね。」
「「(お)兄さん。」」
入ってきたのは、矢三郎兄さんだった。
「アルトさんも、着物姿は懐かしいですね。私が揃えたもので、用が足りましたか?」
「ああ、助かったよ。兄さん。」
お袋の着物を継いだ日、ランカのお願いで連絡を取ったのは兄さん。
俺の着物と、ランカの足袋や帯等、和装に必要な物を揃えて貰った。
流石に現役役者だけあって、素晴らしいものが揃えられていた。
かなり値の張るものらしいが、これが兄さんからの結婚祝いだと言われれば、文句など無い。
「さあ、そろそろ皆さんが呼んでいらっしゃいますよ。」
「じゃあ、行くか。」
「うん。」
慣れない着物で歩きづらいランカに合わせて、ゆっくりと会場に向かった。




「お義父さん。」
しんと静まった会場で、ランカは静かに親父を呼んだ。
振り返った親父は、一瞬目を見開いた。
俺の手に掴まりながら、立つランカはどこかお袋に似ている気がした。
親父はゆっくりと目を閉じると、破顔して深く頷いた。
「よく似合っている。」
「ありがとうございます。
親父は、ランカには甘いらしい。
親父の笑顔なんて、まだ数回しか見ていない。
余程満足したらしい。
酒を美味そうに飲んでいた。
「良かったね。アルトくん。」
「ああ。」
ランカと微笑みあっていれば、カメラのフラッシュの光が俺達を包んだ。
「おっと、お二人とも目線コッチな。」
「ミシェル!」
ミシェルは、カメラマンに徹しているらしい。
ご馳走そっちのけで、次々とシャッターをきっていた。
「着物姿も素敵ね。ランカちゃん。」
「ありがとうございます。」
「素敵です!ランカさん!」
「ありがとう。ナナちゃん!」
皆もぞろぞろと寄ってきて、俺達は動物園のパンダ状態。
ん?今パンダって存在しているのか?
まあ、良いか。
笑顔が溢れて、皆が祝福してくれた俺達の記念日だ。




(おまけ)
「お二人さん、ラブラブねぇ。」
ボビーが俺達に、話しかけてきた。
「はっ?何ですか?」
「あら、まだ見てないの?会場入り口にあったホログラム。」
「「ホログラム??」」
ランカと二人で見に行けば、ホログラムで映し出されてた俺達。
「「っ?!」」
結婚式なんだから、映っているのは良い。
問題は、シーンだった。
「「ミシェル(くん)〜〜!!」」
俺は、逃げ出すミシェルを追いかけた。
笑い声が、あちこちから聞こえてくる。
ホログラムに映っているのはどう見ても、婚約パーティの時の俺達の部屋のキッチンで。
エンドレスで、あの時のキスシーンが映し出されていた。
ミシェルの俺をおちょくる癖は、大人になっても変わらんらしい。
これから先も、友人達とのこんな日常が待ってるんだろう。


END

このページへのコメント

こんばんは。
最近、アヤさんのアルランを読んでランカちゃんの癒しや二人の初々しさを感じて楽しませて貰っています。
ランカちゃんの「お義父さんに」受け継いだ着物を見せたいって気持ちは優しいです。
アニメもですがランカちゃんには人を和ませる力や癒されてしまいますよね。
着物姿のランカちゃんとアルトの結婚式シーンをイラストに描いてみたくなりました。

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Posted by 七海 2013年12月21日(土) 19:26:22 返信

コメントありがとうございます。やっぱりランカちゃんは癒しだと思うんですよ!皆がランカちゃんに甘くなるのも仕様がないかと( ̄∀ ̄)っていうか書いてる私が甘いのか…まあこんな感じで次も書きます(^◇^)┛

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Posted by アヤ 2012年01月29日(日) 22:51:08 返信

こんばんは。紫陽花です♪深夜に失礼します。
続けて、アルラン小説の話が読めて、嬉しいです(*^_^*)
いよいよ結婚式ですね♪着物を着たランカちゃんの姿が見たいですね!こうして、受け継がれていくんですね(^-^)
しかし、男性陣はランカちゃんに甘いですね(笑)アルトの親父さんも落としましたし、お兄さんにはお嫁さんと盗られそうで危ないし(笑)アルトに至っては、上目遣いでノックダウンですから(笑)最後はホログラムにうけました(笑)こっそり映して流すとは、さすがミシェルですね(笑)
アルラン小説、ありがとうございますm(_ _)m

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Posted by 紫陽花 2012年01月29日(日) 01:15:40 返信

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