マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。

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小話「長期出張中」 BYアヤ





生まれて初めて目にした地球は、蒼かった。
只、そこにあるだけで美しかった。
何度もデータベースで見た地球とは段違い。
子供の様に、高揚していく気持ち。
ここに本物の地球の空がある。
何も無ければ、思う様地球の大気を感じてみたいところだ。
「チェックオールグリーン。着艦を許可する。3番ゲートから着艦せよ。」
「了解。」
オペレータの指示に従って、俺は自分の機体をゲートへ向けた。
向けた先は、軌道衛星と同じように回る宇宙ステーション。
ここで、3ヶ月に及ぶ対特務部隊戦闘訓練が行われる。
着艦してみれば、各船団から集った男達の姿があった。
年の頃は、俺やミシェルとそう変わらないだろう。
一見しただけでも、色んなタイプがいるもんだ。
「お前か?大戦の英雄ってのは。」
「・・・・。」
最初に声をかけてきたのは、体格の良いいかにもな男。
「ハッ。どんな男かと思ったら。女みたいな優男か。」
またかと思いながら、俺は黙っていた。
どこに行っても、同じような事を言う輩はいるもんだ。
俺も大人だし、着いて早々問題行動は慎むべきだ。
「どうせ民間軍事会社の男は、腕より機体の性能だろ。」
「「何?」」
俺とミシェルの声が重なった。
「運良く英雄になれたお坊ちゃんは、早く帰えんな。」
胸倉を掴んできた男を睨み付ける。
聞き捨てならなかった。
運良く英雄になれたってのは、まあ当たっている。
自分自身「英雄」だと思った事は無いが。
ただ、俺達のパイロットとしてのスキルが、目の前の男に劣るとは思わない。
これだから、正規軍の軍人様は好かない。
「ミシェル。」
「良いんじゃない?」
俺の胸倉を掴む腕を払うと、相手の力を利用して、男の身体を宙に浮かせた。
硬い音と共に、背中から落ちた男。
そいつはただ、痛みと羞恥に耐えるのみだ。
「何をしている!」
特務部隊の上役らしき男の怒声が上がった。
結局、全体責任で格納庫を走らされた。
懐かしき、動力を切ったEXギアで。
まあ、緊張もへったくれも無い初日だった。





目覚めたら、隣の温もりが無い。
探す様に隣に手を這わすと、空間が広がっていた。
求めていた柔らかな感触ではなく、誰かの拳とぶつかった。
完全に目を覚ませば、隣のベッドの男の拳だった。
「「お前も、か。」」
そこは家ではなく、訓練施設の大部屋。
8人一部屋の宿泊部屋に押し込められて、狭いベッドが個人の空間だ。
訓練はかなりハードなものだった。
基礎体力の測定から始まり、シミュレーションでの技術測定。
戦略や機体性能についてのディスカッション。
バルキリーでの実践訓練(勿論、模擬弾で)。
自分のレベルがハッキリと数値化される事で、自分に足りないものがハッキリ分かる。
今回集められた殆んどの者は、レベル的には大差無い状態だ。
しかし、特務部隊員ともなれば話は別。
上には上が居るもんだと、向上心も自然と上がる。
新しい戦略や技術も学べ、オズマ隊長が言った通りスキルアップが望める。
訓練が始まって一週間は、食事と風呂が終われば真っ直ぐにベッドへ沈んだ。
それはミシェルも同じで、泥のように眠った。
俺をからかう余裕も無かった。
まあ、一週間も過ぎれば身体も慣れる。
寝ぼけて、毎日腕に抱いて眠るランカの温もりを探してしまう。
その度に、隣に眠る男と拳をぶつけてしまっていた。




隣のベッドにいる男は、到着時に怒声を上げた男だった。
特務部隊の上役というか、隊長だった。
「あんた、何でここに居るんですかっ!」
宿泊部屋の自分に与えられた寝床の隣には、隊長が既に寝転がっていた。
隊長ならば個人の部屋があって当然。
「訓練中は大部屋に宿泊なんだよ。むさい男の隣よりは、お前達の隣のほうが良いだろうが。俺が。」
俺とミシェルに挟まれたベッドで、鼻歌を歌っていた。
しかも、ランカの歌を・・・、ファンなのか?
特務部隊の隊長は、年の頃は俺とそう変わらなく見える。
細身で、顔も悪くない。
日本人の俺から見ても、童顔の部類には入るが。
一緒に暮らしてる女が居るらしく、俺と同じように隣の女を探して拳をぶつける。
最近は、「お前も、か。」と同じ様にため息を吐く俺達を、笑うミシェルの姿が朝の決まりパターンとなっている。




「そう言えば、隊長の歳って?」
一日の訓練も終わって、各々が寛いでいる時に気になっていた事を聞いてみた。
「何だ、アルト。俺の事気になるのか?」
「否、それは無い。只、童顔だから判り辛くて。」
「即行で否定するなよ。ってか、童顔って言うな!!!」
同じ部屋の男達が、一斉に笑い声を上げた。
「まあ、お前よりは年上だな。」
「それも信じ難いんですが。」
「隊長!俺より年上だって言ってやれよ!」
「「「はっ??」」」」
何人かの男達と俺の頭に?が浮かんだ。
特務部隊員の男は、あきらかに30代後半であったからだ。
「ちっ!これでもあと数年で、40歳になる・・・。」
「「「何〜〜〜?!」」」
童顔にも程がある。
うん、内面も若いはずだ。
「おいっ、アルト!そろそろ時間だ。」
「おう。今行く。」
「彼女に定期通信か?」
軍の訓練だけあって、携帯など訓練中は没収。
外部への通信も3日に一度で、時間も決まっている。
身重のランカを残して来ている為、定期通信だけは必ずしている。
「ええ。彼女じゃなくて、妻ですが。」
「「「何〜〜?!」」」
思わず耳を塞いだ。
そんなに、俺に妻がいるのが可笑しいのか。
「そう言えば、妻帯者だったな。嫁さん可愛いのか?」
隊長には、俺のデータが行ってる。
まあ、知っていて当然か。
流石にランカだとは、知らないだろうけど。
「そりゃ、まあ。」
「当たり前ですよ。なんせ、超時く・・ぶふっ!」
「黙れ、ミシェル!」
「あっ?何だ?」
「何でも無いです。」
ミシェルの口を塞いだまま、俺は部屋を後にした。
ミシェルの首根っこを掴んで、引き摺りながら。




通信部屋にあるのは、昔なら小さな電話だろう。
しかし、今はLAIが開発したでかいモニター付の通信機器である。
どんなにフォールド断層に隔てられていても、タイムラグ無しで通信できる優れ物。
本当に便利になったものだ。
いつもの時間に通信回線を開けば、ランカの笑顔が映った。
「アルトくん、お疲れ様!」
尻尾があったなら、振り切れるほど喜んでいるのが想像できる。
それ程の、満面の笑顔だった。
「ランカもお疲れ。身体大丈夫か?お腹の子供も。」
「大丈夫!赤ちゃんも順調だよ。」
最近まで、少し苦しんでいた悪阻も治まってきたと言っていた。
顔色も悪くないし、大丈夫そうで安心した。
本来なら、ランカの傍で世話を焼いて、抱き締めて生活していたはずだ。
それが出来ないのは仕方無い。
過ぎた時間は戻らない。
帰ったら甘やかしそうだ、と内心苦笑しながらランカと今日の出来事等話していく。
「あのね、アルトくん。」
「ん?どうした?」
「今日はこの会話、公開中なの?」
ちょっと困った様に、眉を八の字にさせて笑うランカ。
嫌な気がして、ゆっくりと後ろを振り返った。
「お前等・・・。」
隊長を先頭に同室の男達が目を見開いていた。
「・・・ランカ・リー。」
「本物・・・だよな?」
「じゃあ、早乙女の嫁って・・・。」
「「「ランカ・リーなのかっっ?!」」」
俺もランカも、二人して耳を塞ぐほどだった。
その声を聞いた他の男供も集まってきて、収集が付かなくなってきた。
「えっと・・・。夫がお世話になってます。よろしくお願いしますね。」
キラッと挨拶なんかするもんだから、野太い歓声が沸く。
こいつ等にサービスなんて、しなくて良いんだぞ。
まあ嫁としての挨拶には、照れると言うか嬉しいんだが。
「悪いな、五月蝿くて。」
「ううん。大丈夫。皆、良い人そうで安心したし。」
「色々な奴、居るけどな。」
「訓練もあとちょっとだね。」
「ああ、直ぐ帰るよ。調子悪くなったら、すぐ親父達に言えよ。」
「分かってる!もう、心配しすぎ。・・・でも、ありがとう。」
「じゃあ、そろそろ切るな。」
「うん。・・あっ、アルト君。」
「ん?」
「愛してるよ。」
「俺も・・・愛してる。」
頬を赤らめて笑うランカが最後に映って、通信は終了。
本当に早く帰りたいと思う。
その前に、この男達にどう口止めしたもんか。
頭を抱えながら、通信機の前から離れた。


END

このページへのコメント

まさか、知り合い(こんな解釈で大丈夫か?私的な感じですが)の奥さんが、トップアイドルだなんて知ったら周りが驚くのも無理ないなという感じで読ませて頂きました。
収集付かなくて、周りに知れ渡ったらアルトどうするんだって感じです。

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Posted by 凛 2012年08月07日(火) 20:18:02 返信

こんばんは!
今回もとってもほのぼの、素敵なお話でした(*^^*)次も期待しています☆(o^^o)

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Posted by きらら 2012年02月16日(木) 00:51:33 返信

いつも丁寧なコメントありがとうございますm(_ _)m頭の中で一つのお話しがカチッと繋がらないと書き出せないので時間はかかってしまいますが、次のお話しも頑張って書きますね〜(^◇^)┛

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Posted by アヤ 2012年02月14日(火) 09:21:59 返信

こんばんは。
紫陽花です♪

今回の小話、いいですね♪アルトは、ランカちゃんを抱きしめたくて、仕方ないようですね(笑)
毎日、ランカちゃんを抱きしめながら、アルトは眠っているんですね。
朝でもアルトはランカちゃんを食べそうですね(笑)すっかり習慣になっていただけに、寂しそうです。帰ったら、思いっきりランカちゃんを甘えさせてあげてほしいです!
ランカちゃんはさすが大人気の歌姫ですね♪相当うらやましがりそうで、アルトは大変そうです(笑)それだけ素晴らしいいいお嫁さんをゲットしたわけです。
いつも楽しく読ませて頂いております。ありがとうございますm(_ _)m

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Posted by 紫陽花 2012年02月13日(月) 22:46:30 返信

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