最終更新:ID:ua4BptOMXw 2012年01月18日(水) 23:09:54履歴
小話「二人暮し2」 BYアヤ
二人暮しを始めて、驚いた事がある。
ランカは、芸能人として忙しい毎日を送っている。
歌姫として分刻みの仕事量の日だって少なくない。
だけど、家事は自分でこなしている。
オズマ隊長との二人暮しだった為、家事が得意なのは知っていた。
「ちょっとずつやれば、大丈夫だよ?」
大丈夫って言っても、この部屋けっこう広いぞ。
その所為か?
女の部屋にしてはシンプルだった。
ランカのイメージとしては、可愛い物で囲まれている感じだ。
確かに、花やフォトフレーム等が飾られてはいる。
が、想像していたよりも物が無い。
「この方が掃除し易すくて。」
ハウスキーパーでも雇えば楽なのに。
と思っても言わないのは、俺もランカも貧乏性だからだろうか。
日が暮れ始める頃、俺はランカと一緒に近所の商店街を歩いていた。
ランカは、スキニージーンズにフリルキャミにカーデガンというラフなファッション。
キャップに眼鏡の緩い変装で、手を繋いで歩く。
「なあ。その緩い変装で大丈夫か?」
「自然にしていれば案外バレないもんだよ?こてこてに変装しても、ね。」
あそこじゃ、ほとんどバレてる様なもんだし。
「はっ?」
「何でも無い。大丈夫だから早く行こう?」
ぐいぐいと引っ張られながら、お目当ての店を目指した。
先日予定を合わせて、ミシェルとシェリルを部屋に招いた。
部屋がどうこう二人暮しがどうだのと、質問攻めに。
仕事の話から他愛も無い世間話にと盛り上がった。
その内、迎えに来たシェリルの旦那であるカインが加わって。
クランとジェシカまで増えて、更に盛り上がり。
「このスープ美味しいわ。ランカちゃん、レシピ教えて貰える?」
「はい!後でレシピデータ携帯に送りますね。」
「どうせ、カインに作ってもらうんだろ?シェリル。」
「五月蝿いわよ、アルト!私だってこれくらいは作れるんだから。」
「じゃあ、今度ご馳走してもらわないとな?」
「ミシェル!・・・余計なことを〜。」
皆で大笑いして、ジェシカが眠くなった頃に解散。
俺とランカの作った料理を、腹一杯満たして帰って行った。
その後の冷蔵庫の中は、見事にスッカラカン。
翌日、早く仕事が上がったとランカからメールが来た。
大きなエコバッグを持って、いざ買い物に。
買い物先は、フォルモでもスーパーでもなく。
昔懐かしい商店街。
昔懐かしいなんて言っても、フロンティアで通った商店街しか知らないんだが。
和風でレトロな、活気ある店が並ぶ。
八百屋に肉屋、魚屋にベーカリー。
雑貨、洋品店に貴金属店まで、何でもござれだ。
長い商店街の屋根には、ランカやシェリルのCM等のホログラムが彩り。
ゼントランやマイクロンが入り混じって、そこかしこで笑い声と客寄せの声が響く。
どんなに科学が発展しても、人間はこういう生活からは離れられないらしい。
フロンティアが環境船だったこともあるんだろうが。
「おや、ランカちゃんじゃないか。いらっしゃい。」
早くもバレてる。
と言うか、ランカが常連なんだろうな。
恰幅の良い八百屋のおばさんが、にこやかに話し始めた。
「おばさん、こんにちは!」
「今日は何にするんだい?キャベツが美味しいよ。」
店先にはところ狭しと、野菜が積まれていた。
まだ土が付いたままの、新鮮なものだ。
「えっと、人参とじゃがいもと玉ねぎと・・・。キャベツも美味しそうだよね。」
どうする?と目線で訴えてくる。
「半分のヤツ貰おう。重さは心配するな。」
まだ肉屋も魚屋も行く予定だ。
重さを気にしてるみたいだが、きっちり鍛えているから大丈夫だ。
そう言うと、良かったと笑った。
「じゃあ、キャベツも下さい。」
「はいよ。ところで、ランカちゃん。」
「はい?」
「そっちのお兄さんは、彼氏かい?」
手際良く野菜達を包んで、エコバッグに詰めながら八百屋のおばさんがにやり。
「ええぇ?!えと・・・・はい。内緒ですよ?」
「大丈夫。これでも口は堅いんだよ。良い男じゃないか。」
ランカは、顔を赤くして俯いてしまう。
「私もあと10年若かったらね〜。」
なんてお決まりのセリフを言いながら豪快に笑った。
「結婚しても、ご贔屓に!」
「結婚って?!まだ、あの・・・先の話しだし。」
「でも、いずれはするつもりなんだろ?」
俺の方を、じっとおばさんが見詰めるから。
「まあ、俺はそのつもりです。」
「アルトくん?!」
結婚の話なんてした事は、まだ無い。
けれど、いずれは夫婦にと思っている。
言葉にするのはかなり恥ずかしいもんだ。
顔に集まる熱を感じながら、おばさんを見れば満足そうな顔。
「もうっ!・・・先にお肉屋さん行ってるからね。」
「おい。こら、ランカ!」
「毎度ありっ!」
真っ赤になって、走って行ってしまった。
こういう所は、学生の頃と変わらないなと苦笑した。
「ちょいと、お待ちよ。」
ランカを追いかけようとして、八百屋のおばさんに捕まった。
「あんた、大戦の英雄さんだろ?」
「止めてくれ。・・・でも、知ってたんですか。」
「まあ、ね。」
おばさんはランカが駆けていくランカを見ながら、優しい顔をしていた。
「歌姫二人が戦場で歌い、あんた達戦士が戦場を駆けた。」
砲弾飛び交う中を歌い、命を懸けて戦場を駆ける。
仕方ないとは言え、若い人達に未来を託すのは申し訳無くてね、と。
「俺は戦う事を自分で選んだ。だから、そんな風に思わないで下さい。復興の為に闘ったのはあなた方なんですから。」
ここまで発展させたのは、戦士でも歌姫でも無い。
この商店街で言えば、各店主達の努力があったからだ。
「ありがとうね。」
人情に厚いらしいおばさんは、涙を滲ませながら笑う。
笑顔の良いおばさんだ。
「あんたもランカちゃんも、やっと一息つけたんだろ?幸せにおなりよ。」
「はい。ありがとうございます。」
「ああ、また来て頂戴ね。毎度あり!」
そう言って、笑顔を交わして八百屋を離れた。
先に肉屋に向かったランカは、肉屋の近くのジュエリーショップの前にいた。
肉屋での買い物は既に終えたらしい。
包みを抱えて、ショーウィンドウの中に夢中だ。
「何か良いものあったのか?」
「ひゃぁ!・・アルトくん。」
慌てて振り返ったランカは、見ていただけだと。
覗き込んでランカが見ていたらしきものを見れば、天然石の入った指輪だった。
ランカに似合いそうな、可愛らしいデザイン。
「こういうのが好きなのか?」
「好きだけど、見ていただけだから。」
次行こうと、肉屋で買ったものを俺が持つエコバッグに詰める。
コロッケおまけして貰っちゃったと、喜んで。
魚屋やベーカリーにも寄ったりして俺達は買い物を終えた。
ぎゅうぎゅうに膨らんだエコバッグを肩に掛け、片手はランカの手を握って帰路に着く。
もう大分薄暗くなっていた。
「今日は簡単にコロッケカレーにしようね!」
おまけで貰ったコロッケがいい匂いを漂わせている。
おまけコロッケで上機嫌になるフロンティアの歌姫。
広い部屋に住み、かなりの額を稼ぎ出していても、元々の生活は変えられないってとこか。
苦笑いしながらも、さっき見た指輪の事を思い出していた。
結婚か。
まだ早いなどとは、思わない。
実質付き合っている期間は短くても、俺達の絆は強いものだと思う。
そう遠くない未来に。
そう思いながら、二人の部屋に帰った。
END
このページへのコメント
ランカはオズマと二人で暮らしていたので家事には問題無いですし、アルトも一人暮らしだったので二人とも結婚しても家事に困る事は無いですね。
オズマの育て方は、なかなか良さそうなのでランカちゃんも良い性格なんでしょう。
いつも皆さんのコメントありがとうございます。ランカちゃんは大人になっても庶民的なイメージなんでこんな感じになりました(^O^)やっぱりオズマ兄の育て方が良かったんですかね〜
こんばんは。紫陽花です。
二人暮らしの続編が読めて、嬉しいです(*^_^*)二人でお買い物なんて、夫婦みたいですね。荷物持ちはやはり男性じゃないと!
さすがに歌姫だけあって広い部屋に住んでいますね♪アルトが同棲しても大丈夫わけですね(^-^)忙しくても家事をこなすなんてすごいです!すぐお嫁さんになっても大丈夫ですね(^-^)vこんな可愛いお嫁さんなら、アルト、大満足でしょう!
ジュエリーショップを眺めるなんて、ランカちゃん可愛いこと♪
いつもほのぼのとしたアルラン小説、ありがとうございますm(_ _)m
あやさんのSSは毎回心温まります。今回も、おまけコロッケに喜びつつ、アクセサリーを見ちゃったりするランカにキュンキュンしました。
アルトの本気も高まってきてる感じが出ていていい感じですね。
まあ、オズマお兄ちゃんの育てかたもよかったですよねW
また素敵なお話を楽しみにしてます。
ほのぼのとした素敵な小説ありがとうございます!とっても癒されました〜(*^^*)