マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。

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小話「父親」 BYアヤ



「父親、か。」
毎度お馴染みの娘々である。
ヌードルを啜るミシェルの隣。
俺はテーブルにある紙ナプキンで、飛行機を折り始める。
無意識である。
「まーた、何か悩んでるワケ?」
もぐもぐとヌードルを咀嚼しつつ、ミシェルが視線をよこしてきた。
「父親って、どんなもんかと思って、な。」
「あ?」
俺とランカの遺伝子を継いで生まれてきた息子が、我が家にやってきた。
赤ん坊は、泣くのが仕事。
昼間であれ夜中であれ、数時間おきに泣き出して乳をせがむ。
目の下に濃いクマを作りながらも、授乳するランカ。
すぐ隣で泣くユウに気付かないくらい、疲れて寝ている時もある。
それでも、嬉しそうに乳を与えるランカは、母親の顔。
俺は、どうなんだろうな。
生まれてきたユウは、可愛いと思う。
一家の大黒柱として二人を守る事が、俺の最重要任務。
ランカの隣でユウを抱いてあやして、笑い合って幸せだと思う。
けれど、これから先。
ユウが大きくなって、色んな事に直面する時。
俺は、ちゃんと「父親」が出来るんだろうか。
「俺の親父は、芸人の顔しか見せなかったからな。」
物心付く頃には、もう芸の道に足を踏み入れていた。
父としてではなく、芸の師としての顔しか見ることは無かった。
だから「父親」というものが、ハッキリ言って分からない。
「俺だって父親の記憶なんて、持ってないぞ。」
今の時代、両親揃っていることの方が少ないのかもしれない。
「理想像なんて持ったって、うまくいきっこ無いんだから考えるだけムダだぜ?」
自分の周り、見てみろよ。
そう言われて、思う。
オズマ隊長は二児の父だ。
ランカの兄としての姿を見ても、石頭でかなりの過保護だ。
しかし、ランカの性格を知れば、良い家庭人だと分かる。
外見からは想像も出来ない、飛行機乗りだが。
ルカの父親は、LAIのトップである。
大企業のトップともなれば、仕事仕事で家庭など二の次というのが普通だろう。
しかし、ルカが真っ直ぐ育ったのを見れば、そうでも無いらしい。
結局は、人それぞれ。
自分次第って事だ。
「まあ、何とかなるか。」
「そう言う事。俺でも、何とかなってるんだから。」
今から悩んでも、ムダムダ。
そう笑うミシェル。
これでも、父親としてのキャリアはあるミシェル。
頼るべき親友が近くに居て、とりあえずは安心なんだろう。



ユウのゴハンが、母乳から離乳食に変わった頃。
ランカは、仕事を再開した。
スケジュールはゆったりしたもので夕方には帰宅できる。
ナナセが、上手くスケジュール管理してくれてるおかげだ。
それでも、まだ赤ん坊のユウを残して仕事に行くことに、ランカは罪悪感があるらしい。
仕事へ出掛ける準備を始めると、今まで機嫌よかったユウが静かになる。
玄関にて、ユウと俺とでランカの見送り。
「ほら、ユウ。いってらっしゃい、だ。」
ユウの手を掴んで、ひらひらと手を振らせる。
「早く帰ってくるからね。」
そう言って、ユウの頬にキス。
俺ともキスを交わして、眉を下げたランカが扉の向こうに消える。
ユウがじっと見詰めている玄関が開くことは無く、ランカが居ないと盛大に泣き始めるのだ。
可哀想だとは思うが、二人に仕事がある以上どうしようもない。
普段は、保育施設に預けている。
しかし、今日は俺が休日。
休日はユウを預ける事なく、ちゃんと俺が家事・子育てをする。
家事は学生の頃からしていたから、問題は無い。
問題は子育てだな。
泣き喚く我が子を何とか宥めて、涙や涎を拭ってやる。
ランカの歌を聞かせながら、抱いて背中をぽんぽんと叩く。
瞼が下がってきて寝息を立て始めれば、やっと一息つける。
ベビーベッドにそっと寝かせると、朝食の洗い物や洗濯物を片付けて。
お茶を飲みながら銀河航空ジャーナルを読む。
収集癖は無いが、この雑誌だけは毎号欠かす事無く購読している。
ウォークインクローゼットの片隅には、書棚に並べきらないこの雑誌が積み重なっている。
「本当に、お兄ちゃんに似てきたよね。」
そう言ってランカは、積み重なった雑誌を見つつため息を吐く
掃除もしない隊長よりましだろうと思いながらも、何も言わない。
言わないに越したことは無いだろう。
我が家の平穏の為に。




お茶を飲みながら、ゆったりしていた時間も泣き声で終了。
「はいはい。どうした〜、ユウ?」
泣き喚くユウを抱き上げる。
宥めておむつを替えて、ご飯を与えて寝かしつけて。
一日その繰り返し。
ランカの歌を聞かせたりしても、泣き止まず。
お気に入りのタオルケットを握らせて、やっと落ち着き始める。
「はぁ〜。母親ってマジで尊敬する。」
ユウをお腹に乗せて、リビングの床に寝転がる。
毛足の長いラグマットが心地良い。
ランカ含め、世の母親達はこんな重労働をこなしているわけで。
赤ん坊を守って育てるっていう重要任務が、仕事とは別にあるわけで。
本当に頭が下がる一方だ。
「だぅ〜。あ〜。」
「ん〜?どうした?」
「・・・まぁ〜。」
「ユウ?!」
「すぴ〜。」
どうやら眠った様だ。
一瞬「ママ」と言ったのかと思った。
にしても、まだ早すぎる。
ようやく「だぁ〜」とか「あう〜」と、言い始めたばかり。
でも、ちゃんとしゃべり始める準備が出来てきているのは感じられ。
親っていうのも楽しいもんだ、と思った。
同時にユウが始めて発する言葉は、「ママ」なんだろうなと思って少し凹んだのは秘密だ。
眠ってしまった暖かいユウを、お腹に乗せたまま。
眠気に誘われて、俺も瞼を閉じた。


END

このページへのコメント

ランカもアルトも忙しいけど、きちんと子育てしたいし、しているって気持ちとか感じました。
ランカちゃんの歌の子守唄ならやはり癒し系の歌を選択するのに悩むアルトが目に浮かびます。
ランカちゃんの歌は、子守唄に合ってるなと思いました。

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Posted by 凛 2013年02月06日(水) 20:03:45 返信

子供できると大変だなとしみじみ思いました。
しかし、ユウくんはアルト似って所とかお母さん好きな所とか、夢を見つけたりお父さんとお母さんそっくりですね。
アルトとランカの幸せを陰ながら願う私としては幸せです。
応援してます。

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Posted by 凛 2012年08月05日(日) 14:09:47 返信

夜遅くにこんばんは!紫陽花です♪
今回の小話、いいですね♪ランカちゃんの苦労を知るアルトですね(笑)しかも1日でへとへとになるとは(笑)家事ができる父親もなかなかいないと思いますし、いい父親になりますね(^-^)ユウくんはアルトの子守歌を聞きながら、育っていくんですね(^-^)♪聞いてみたいですね♪
しかし、出かける時はいつもキスをするとはラブラブですね(笑)
いつも楽しく読ませて頂いております♪
無理せずにがんばって下さいませm(_ _)m
今日は中島愛さんのアルバムが発売されるので、楽しみです♪

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Posted by 紫陽花 2012年03月07日(水) 01:08:01 返信

どうも影炎院です!!今回も素敵なお話でしたぁ☆これを見て、母親かぁ〜なんてひたってました(笑)一応私、女なんで…
まぁおいといて…(-、-;)これからも頑張ってださい!!

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Posted by 影炎院 無刻 2012年03月05日(月) 21:09:26 返信

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