マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。

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小話「母親」 BYアヤ




ねえ、お母さん。
私は、ちゃんと「母親」出来ている?
ほぼ毎朝の様に、可愛い自分の子供の泣き声を背中で聞きながら、家もしくは保育施設を後にする。
仕事に向かう車の中で、一日のスケジュールを確認しながら考えてしまう。
可哀想かなと思って、ちょっと罪悪感。
そう思うのなら、仕事を辞めれば済む話。
経済面から言っても、アルトくんのお給料だけでも十分だから。
だけど、そうじゃないんだよね。
アルトくんは飛ぶ事を。
私は歌う事を、辞められはしないんだ。
ユウに寂しい思いをさせてしまう事は、分かってる。
私も記憶にあるよ。
ブレラお兄ちゃんと一緒に、寂しさからお母さんの研究室に忍び込んだこと。
すっごく怒られて、悲しくなって。
だけど、仕事が終わった後はぎゅうっと抱き締めてくれた。
寂しくない様に、暖かく笑ってくれてた。
だから私も、一緒に居る時間を大切にするしかないんだよね。
帰ったら抱き締めて、アルトくんと一緒に沢山笑おう。
「ただいま。」
夕日が差し込む部屋に帰ってきたら、大きな塊と小さな塊がリビングに転がってた。
子供の様な顔で、寝息を立てるアルトくん。
アルトくんのお腹の上で、すぴすぴと鼻を鳴らしながら眠るユウ。
微笑ましい姿に、頬が緩む。
ソファに置きっ放しのお昼寝用ブランケットを、二人にかけてキッチンに向かう。
二人の笑顔の為に、美味しい夕ご飯作らないとね。





「また出張?!」
摩り下ろしたりんごを、小さなスプーンでユウの口に運びながら、アルトくんを見た。
「ああ。悪いな。」
眉を下げて、苦笑いするアルトくん。
ユウが生まれる前に参加した、地球軍特務部隊の戦闘訓練。
そこの隊長さんに、かなり気に入られちゃったらしい。
何かある度に、呼び出されている。
といっても、危険な任務ではないから安心はしているんだけど。
「今回はどのくらいなの?」
「比較的近場からの呼び出しだから、一週間ってとこだな。」
長い溜息を吐いて、肩を落としてる彼。
でも、知ってるんだよ。
実は楽しくて、仕方無いって事。
平和なのは良い事だけど、実戦配備なんてかなり少なくなってる。
だから、自分の力を試せるのが楽しいんだよね。
それで良いと思ってる。
私が歌の世界を持っているように、アルトくんにも空の世界が必要なの。
彼の人生が、私とユウだけの狭い世界じゃ悲しい。
もっと沢山の歓びを知って、私とユウに教えて。
私もアルトくんとユウに、色んな事話したいんだ。
でも、ちょっぴり寂しいから意地悪させてね。
「あんまり出張ばかりだと、パパの事忘れちゃうかも。ね〜、ユウ?」
「あぅあ〜。」
「うっ・・・。ランカ〜。」
ふふっ。そんな情け無い顔しないで?
「う〜そ。ユウはパパ大好きだから、忘れないよね〜。」
ユウをアルトくんに渡せば、満面の笑みでアルトくんに抱きついていた。
その様子を、テーブルに待機させてあるカメラで写す。
リビングの大きなフォトスタンドには、溢れそうな思い出が幾つも映し出されている。
新しい発見があった日。
ユウの成長と溢れる笑顔が積み重なって、どんどん記念日が出来てる。
始めて寝返りをうった日。
はいはいを、始めた日。
ソファや壁があっても突進してくから、ちょっと心配にはなったけど。
そして、今日も。
「おいっ!ランカ、見てみろ。」
「えっ?」
そこには、ソファに掴まって震えながら立つユウの姿。
「だぁ!」
鼻息荒く、どうだ!って言いたげな我が子が可愛くて。
今度は、アルトくんがカメラを構えてた。
「「やった〜!!」」
アルトくんと二人して、ユウに抱きついて。
両側から頬にキスを送る。
歓声を挙げながら、笑うユウは我が家のアイドルだ。





アルトくんの出張が終わる日。
SMSのロビーで、ユウと二人でお出迎え。
オズマお兄ちゃんに遊んで貰いながら、彼を待ってた。
その時、ユウがぴくんと反応した。
さすがパパっ子。
足音が近づいて、アルトくんが帰ってきた。
「ただいま。ランカ。ユウ。」
怪我も無く、元気そうで安心した。
「さあ、ユウ。頑張ってみよう。」
オズマお兄ちゃんの腕から降ろしてもらうと、まだ覚束ない足取りで歩いていく。
よちよち、よちよち。
「さあ、来い。ユウ。」
腕を広げて待ち構えるパパを目指して、真っ直ぐ歩いていく。
たどり着いて、ぎゅっと握るアルトくんのシャツ。
一週間でも、子供にとっては長いもの。
寂しかったんだよね。
アルトくんが居ない時も、大泣きして大変なんだから。
「ぱぁ・・・。」
「ん?ユウ?」
「ぱ・・ぱぁぱ。」
「ユウ!今っ。」
「ぱぁぱ。」
「ランカ!俺の事パパって。」
「やったね、アルトくん。」
「ユウ?私は?ママって言ってごらん。」
「ま・・・まぁま。」
きゃあって歓声を挙げて、アルトくんごとユウに抱きつく。
私達家族の新しい記念日。
でも、ユウの初めての言葉が、パパでもママでも無く。
「まんま。」
ゴハンだった事と、ちょっと凹んだ事は内緒にしとこうかな。
そえから暫く、オズマお兄ちゃんと騒ぎを聞きつけたミシェルくんやルカくんも交えて。SMSのロビーは、大騒ぎだった。

END

このページへのコメント

元・凛です。陰ながらアヤさんの小説を応援しています。
ランカちゃんがしっかりお母さんしてて。奥さんしてて成長してるなと思いました。アルトとランカの家にはユウくんの記念日写真が沢山合って。楽しそうで、和みそうで早乙女家に行きたいですね。

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Posted by 七海 2013年02月20日(水) 17:56:39 返信

遅れてすみません!!
影炎院です!!今回も、心温まるお話でしたぁ〜
7つ年の離れた弟がいるんですけど、弟も初めて言った言葉が「まんま」だったんです(笑)
ついでに私は、「パパ」だったそうです。なんか競ってたらしいです…(涙) アヤさんこれからも頑張ってください(´▽`)ゞ

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Posted by 影炎院 無刻 2012年03月18日(日) 15:41:04 返信

いつもコメントありがとうございますm(_ _)m書けた〜!!っていう自己満足の世界なのでオカシイところもあると思いますが、次も読んでいただけると嬉しいです(^◇^)┛

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Posted by アヤ 2012年03月16日(金) 13:30:21 返信

こんにちは!紫陽花です♪
毎回、楽しく読ませて頂いております(*^_^*)
今回の小話もランカちゃんが母親らしくなってきて、いいですね♪二人とも親バカになっていて、笑えます(笑)最初の子供の時はかなり写真を撮ると聞いてるので、普通なのでしょうか?
優しい母親にランカちゃんはなりそうですね♪
出張と訓練が好きなんですね、アルトは(笑)空好きバカなんですね(笑)それを理解してるランカちゃんがいいですね♪
アヤさんのアルラン小説は何度も読ませて頂いておりますm(_ _)m
これからもがんばって下さいo(^o^)o

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Posted by 紫陽花 2012年03月15日(木) 11:57:56 返信

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