マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。

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劇場版でアルトの帰還が8年後だったらの話です。
公式設定などまるっと無視な妄想です。



「新未来1」 BYアヤ



何かを選ぶという事は、何かを失うという事。
「戦争の傷跡とはこういうものだ。誰もが何らかの犠牲を払う。悲しいがそれが現実だ。だからこそ残された者がその未来を切り開らくんだ。」
そうオズマお兄ちゃんは言って私を抱きしめてくれた。
この惑星に降り立って、皆が新しい未来を歩き始める。
そこには私の大切な人たちが生きて、未来を信じて前に進んでいく。
でも私の心はまだあの時から一歩も踏み出せていない。
ブレラさんには「お兄ちゃん」って言いたかったな。
アルトくんにはこの大気を感じて飛んで欲しかったな。
女王バジュラとの短いコンタクトで君は決めてしまったんだね。
君の瞳は大きな決意を秘めていたから。
もう帰ってくる事は無いのだと後になって何となく分かってしまった気がした。
「お前の気持ちに応えてやることはできない。」
アルトくんにそうハッキリと言われたのにね。
私は、馬鹿みたいにこの想いを手放せないでいるよ。
友達でも妹でも何でも良いから、アルトくんにもう一度会いたい。
会いたいんだ。



あの日、このバジュラ本星に降り立ってもう8年が過ぎていた。
フロンティアの街が広がって広告塔のホログラムが街を飾る。
そんなフロンティアで24歳の誕生日を迎えた。
アルトくんがバジュラと共にフォールドして姿を消し、シェリルさんが倒れて意識不明に。
ブレラお兄ちゃんの捜索もしてもらったけれど見付からなかった。
大切なものが一気に両手からこぼれ落ちて、それらを拾い集めようと今までの時間を費やしてきた気がする。
喪失の悲しみに浸る間も無かったな。
アイドル歌手としての役割が当たり前の様に待ち構えていて、チャリティーコンサートやその他にも出来る事には片端から手をつけて突っ走ってきた。
アルトくんが残してくれた、バジュラたちが譲ってくれたこの大地に感謝して生きていく為に。
色んな事に没頭できて正直助かった。
悲しみに溺れてしまったらきっと浮上できなかったから。



平行してシェリルさんの治療の為に私の血液を採取して輸血を繰り返す日々が続いた。
もう一度シェリルさんと歌をこの銀河に響かせる為に。
一人ぼっちなんかじゃないと感じたかったから。
日常を取り戻す為に必死になって一年後、シェリルさんはその瞼を開いた。
すごく嬉しくてシェリルさんに抱きついて離れられなかった。
目覚めたばかりなのにね。
シェリルさんのフォールド細菌がお腹に定着しつつあってこのまま順調にいけば歌うことも可能だって聞いてすごくほっとした。
アルトくんの事を聞かれるまでは。
「アルトは・・・どこ?」
シェリルさんの問いかけにただ首を振ることしかできなくて。
「そう・・・。」
涙を流すシェリルさんを必死になって抱きしめて、私の服をぎゅっと握って震えているのを感じていた。
同じ人を愛したから、その辛さも少しは分かり合えたのだと思う。
シェリルさんを励まして、自分の心を奮い立たせて何とかやってきた。
シェリルさんのスパイ容疑に関しては、政府も無駄な混乱を避けたいという意向ですんなりと無罪を勝ち取れてしまった。
それでもフロンティアの皆の行き場の無い怒りや悲しみがシェリルさんに集中してしまう。それでもプロのシンガーとして歌う事で償おうとするシェリルさんを微力ながらサポートしてV型感染症の治療も続けて、自分の仕事もこなしてハードな毎日を送ってきた。
そうして付いた自信と経験がランカを支えていた。
あれからすごい勢いで時は流れた。
そんな中、あの日から手付かずのデュランダルのそばで歌うことが最早習慣となっていた。
アルトくんはもう帰ってはこないのだとどこかで分かっていても。
それでもここで歌っている間、見えない絆に導かれて彼のオトが聞こえた気がして暖かかった。
それが幻や他の何かであっても。



あの日から7年経って、シェリルさんはアルトくんとは違う愛を見つけて婚約した。
入院中もその後も一番近くでシェリルさんを励ましてくれたシェリルさんの担当医師だった人。
どんなに愛していても約束も無く、生きているかどうかもしれない人を待つのは誰だって辛い。
長い時を共に歩いてくれた人を選ぶのはきっと自然な事。
すごく悩んでいたシェリルさんの背中を押したのは私。
誰にだって幸せになる権利があって、そのチャンスがこの時だと思ったから。
そんな私をアルトくんは怒るかな。
それとも仕様が無いなと許してしまうのかな。
お前はどうなんだ?自分の幸せに一歩でも進めているのかって聞かれそうだよね。
私にだって心惹かれる人が居なかったわけじゃない。
でも、ふとした瞬間にその人を通り越してアルトくんが見え隠れして。
「ランカちゃんは相当な頑固者だねぇ。」
なんて、心配するミシェルくんにも茶化す様に言われてしまった。
私自身もつくづく頑固者なんだって思う。
そして今日もデュランダルの傍で歌いだす。
紙飛行機に想いを乗せて、君に届けと歌いだす。
そんな8年目に奇跡は起きた。
眩しいフォールドの光と共に懐かしい人の温もりを感じて、ランカはその温もりをぎゅっと抱きしめた。


続く

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