マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。

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「新未来6」 BYアヤ




雲ひとつ無い青い空の下、小鳥達が大合唱。
住居エリアの端に建っている小さな教会にアルトくんと私の二人きり。
ステンドグラスを通して降り注いでくる光がすごく綺麗。
床に移った七色の光には、マリア様と天使達が舞っていた。
二人の他には誰も居なくてしんと静まり返っている。
ついさっきまで行われていた結婚式の余韻に浸りながら参列席の長椅子に。
右手には花嫁さんが放った白い花のブーケ。
左手にはアルトくんの手の温もり。
自分の心臓の音がやけに煩くて、静かなはずの教会に響くんじゃないかって更に心拍数が上がりそう。
「俺は・・・。」
手をぎゅっと握られて、話し始めたアルトくんの声に耳をかたむけながら彼の綺麗な横顔を見つめた。




「わ〜、結婚式ですか!」
手にした白い結婚式の招待状に歓声を上げた。
白い招待状には手書きの文字が並んでいる。
「アルトも帰ってきたし、まぁいい頃合いかと思ってね。」
幸せそうに微笑むシェリルさんが隣に腰を下ろす。
二人で企画したコンサートツアーもファイナルを迎えた。
流れ出る汗と弾む息を落ち着かせる為に控え室のソファに身体を沈める。
けれど、倦怠感もシェリルさんがもってきた結婚式の話題で吹っ飛んでしまった。
「この招待状、手書きですね。やっぱり仲間内だけで?」
「ええ。一生に一度の結婚式だもの。」
「でも、聞いて頂戴。アルトは乙女心分かってないわ。」
先日、結婚式の招待状を渡す為にSMSへ行ったらしい。



「「結婚式?」」
「そうよ。何があっても来なさいよ。」
SMSのカフェスペースでコーヒーを飲みながら招待状をアルトとミシェルに渡した。
もちろん、ルカやオズマ達にも渡してある。
「へ〜、手書きなんだ。結構コンパクトな式?」
「はぁ?シェリルの結婚式ならTVカメラ入ったりで大規模だろ。俺的にはパス・・。」
アルトはひらひらと招待状を振っていた。
「アルト・・・あんた、相変わらずね・・。」
「アルト姫〜、姫のくせに乙女心わかってないねぇ。」
「一生に一度の式なのよ!プライベートなんだからメディアに囲まれるのはまっぴらよ。私にだって女の夢ってものがあるのよ!」



なんとなく想像できてしまって、苦笑を浮かべた。
「人のこと言えないけれど、ランカちゃんもとんだ恋愛音痴に恋しちゃったわね。」
「アハハハ・・。」
「で?気持ち伝えないの?アルトはきっと。」
「この前、伝えようとはしたんですけど。」
SMSにお兄ちゃんの差し入れを持って行った日、アルトくんに抱きしめられた。
でも、あの後お約束の様にお兄ちゃんに見つかって、アルトくんは差し入れを手に呼び出しと言う名の強制連行をされていった。
別れるときに「続きはまた今度言う。」って耳元で言われて、残されたのは真っ赤な私だけだった。
受付のお姉さんが、「脈アリなんじゃない?」なんて言って親指立ててくれちゃうもんだからかなり恥ずかしかった。
「あれから、なかなか会えなくって。」
「そう。」
早く続きを聞きたいような、聞きたくないような。
「ねえ、ランカちゃんには感謝しても仕切れないわ。今私が歌っていられるのも貴女のおかげ。」
「そんな。」
「だから貴女にも幸せになって欲しいの。ランカちゃんの気持ち、きっと届くわ。ハッキリしないなら、思い切って押し倒しちゃいなさい!」
「ハイッ!」
がっしりと肩を引き寄せられて、二人で笑った。
きっと良い未来が待ってると信じて。



小さい教会で、でも大きな幸せの結婚式。
新郎新婦の二人とも親族は既に鬼籍に入っていて居なかったけれど、友達や仲間が集まった温かい式だった。
シンプルだけれどレースの綺麗なウェディングドレスのシェリルさんは本当に綺麗だ。
誓いのキスでルージュが付いてしまった彼の唇を拭う姿も格好良くて。
あんな結婚式をしたいなと、ちょっと羨ましかった。
「ランカちゃん、受け取って!」
宙を綺麗な放物線を描く影。
歓声と共に私の手元に落ちてきた真っ白なブーケ。
「次は、一番幸せにならなきゃいけないランカちゃんの番よ。」




「俺は・・・まだ餓鬼だから、自分の気持ちにも鈍感らしい。」
教会の庭で開かれる披露宴から抜け出して、ランカを隣に座らせて教会の長椅子で話し始めた。
「学生の頃、話しただろ?俺は歌舞伎に嫌気が指して逃げ出したんだって。」
「うん、夜中の電車の中だったよね。よく覚えてる。」
俺は男なのに女である歌舞伎役者の早乙女有人を求められて、自分自身が曖昧になっていく様で歌舞伎の世界から逃げ出した。
ランカが、俺が何をしていても俺は俺だと言ってくれて凄く嬉しかったんだぜ。
「いざ逃げ出しても、他人とコミュニケーションとるのが苦手でな。」
それでも、航宙科に転科してミシェルやルカに出会って初めて友が出来た。
「お前とも出会って、最初は変な女だと思ったんだ。」
「え〜!ひどいよ、アルトくん。」
「ハハッ!でもランカといると何故か安心するんだよ。いつの間にか俺の日常の中に入り込んでいたんだよな。」
笑ったり、怒ったりころころと変わるランカが一番傍に居た。
「他のヤツには話せない事でも素直になれた。最初の女友達で、妹の様で。こいつはきっと離れていったりしないって勝手に思っていたよ。」
そして、シェリルがフロンティアに来艦したあの日。
俺たちの運命が急加速して廻り始めた。
バジュラからランカやシェリル、皆を守るためにSMSに入隊しバルキリーで闘う事を決めた。
バジュラ、ギャラクシー、その他の色々なものに翻弄されて、そんな中でシェリルに惹かれていってあの日の別れを迎えた。
「あんなに近くに居たのに、ランカに告白されるまでお前の気持ちも見えてなかった。お前の事ちゃんと見てやれなくて悪かった。」
バジュラと共に旅立つ時、もう帰ってくる事はないのだと覚悟を決めた。
命の灯が消えていくシェリルと気持ち繋げて、最後に何か与えてやれたのか?
そう思うと、シェリルに対して望まれた役を演じてただけなのかもしれない。
ハッキリとした恋情を抱いてはいたんだ。
けれど俺が帰ってきた時には、もう気持ちが揺れる事も無かった。
それは、そう言う事なのだいう可能性も拭いきれない。
「でも、お前の事はいつも守りたいって大事に思ってた。」
それだけは信じて欲しいと思う。
「バジュラとの旅の中で、お前の歌が俺を繋ぎとめていて生きているんだと安堵していた。」
「私も歌っている時、お腹が温かくてきっと繋がっている、生きているって希望が持てたの。」
二人してお腹に手を当てて、クスクスと笑った。
「帰ってきて、ランカと会ってちょっと戸惑った。・・綺麗になった。」
「おっ・・おだてても何もでないんだから!」
「女友達で妹の様で・・・。だけど、知らない奴と一緒にいるのを見て、コンサートの事故で失うかと思った時、もやもやしていた気持ちも何もかも吹っ飛んでた。」
「・・・。」
「こんな鈍感で馬鹿な男のどこが良いんだか。」
「そんなの私だって分からないよ。ちょっと口が悪くて。沸点低くて直ぐに不機嫌になるし。乙女心分かってないし。」
痛いところ突かれて視線があっちこっち。
「でも、優しくて何時だって守ってくれてた。」
「ランカ。」
「外面だけで8年も想ったりしない。」
涙で滲んだランカの目尻に親指を滑らせて、コツリとお互いの額を合わせる。
「バカだな。こんな男に引っ掛かって。」
「バカだね。でもバカで良いの。」



「「好き(だ)。」」
お互いの言葉を飲み込む様に唇が重なった。
じんわりと温かさが滲みる優しいキス。
温もりが離れて、瞼と開けば真っ赤になった顔がお互いの瞳に。
「ダメだぁぁぁ。カッコこけられねえ。」
アルトくんは片手で顔を覆って俯いてしまったけれど、もう片方の手は離れたりしない。
「経験値足りないな。」
「だったら、一緒に経験値貯めていこう?」
繋がっているアルトくんの手を、ぎゅっと握り返した。
「最初の一歩は少し怖くてどきどきしちゃうけれど、二人一緒ならきっと大丈夫。」
「ああ、そうだな。二歩目も三歩目も一緒にな。」
じゃあ、さっそく。なんて言って2回目のキス。
3回目も4回目もずっとアルトくんと、が良いな。



アルトくんとの別れが今この未来に続いていた。
永遠なんてほど永い時じゃなかったけれど、これからの一歩がまた新しい未来へと続いている。
だからこの手を離さない様に強く握って新しい一歩を貴方と。
嫌だって言ったって、もう離してあげられないからね。
「お二人さん!やっとまとまったのは良いけど、いい加減みんな待ちくたびれたぞ〜。イチャつくのも後に頼むわ。」
「うるせぇ、ミシェル!!」
ミシェルくんにはいつだって筒抜けなの?
いったい何時から聞いていたの?
「行くぞ、ランカ。」
「はい。」
だけど、アルトくんの笑みがすごく優しくて、幸せだからまあ良いや。
繋がれた手を引き寄せられて、教会を出た。
未来はまだ全然見えもしないけれど、きっと大丈夫。
新未来は希望と共に。



END


以上「こうだったら良いのにな」的、私の妄想でした。
妄想を文に起こすのは難しいけれど楽しいですね。
長くて読みづらい小説を読んでいただいてありがとうございました。

このページへのコメント

アヤさんのアルランにはいつも癒されてます。
アルトは8年経っても恋愛下手な所が良いですね。
初々しい感じが好きです。

2
Posted by 七海 2013年12月29日(日) 11:11:37 返信

コメントありがとうございます(^O^)
アルトくん誕生日おめでとう!ですね。やっぱりアルラン大好きなんで二人に幸せになって欲しいです。
後日話など書けたら投稿してみたいです。

1
Posted by アヤ 2011年07月28日(木) 23:33:06 返信

アヤさん・・
ありがとう〜(TT)
久しぶりにきゅんきゅんしたよ
自分にはこんな才能ないので
すんごくうらやましいっす

1
Posted by アマテ 2011年07月27日(水) 23:54:42 返信

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