マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。

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「続・新未来3」  BYアヤ




親父の笑顔を、始めて見た気がする。
母親である早乙女美代。
彼女の為に作られたあの庭と寸分違わない庭。
其処に母ではなく、ランカと親父の姿。
二人が談笑しているのを、俺は縁側から眺めていた。
空は晴れ渡り、鳥の囀りが微かに聞こえてくる。
こんな実家の姿は、きっとランカが居てこそなんだ。




「でかるちゃ〜」
ランカの小さな声を聞きながら、気付いて貰えた事にほっとした。
眠っている彼女の指に指輪をはめて、起きて気付くのを待つ。
自分でもベタな事してるって自覚はしている。
だけど驚かしてやりたくて、寝たふりでランカの目覚めを待った。
プロポーズを断られる確立は、・・・まぁ無いと思う。
自意識過剰かもしれないが。
しんと静かになったランカに一抹の不安を感じながら、そっと目を開けて彼女を見た。
「おっ・・おい!ランカ?」
ランカは大粒の涙をシーツに吸わせながら静かに泣いていた。
「アルトく・・・。」
「ランカ!何でそんなに泣くんだよ。・・・迷惑か?」
「そんなわけ無い。」
「だったら泣くなよ。焦るだろ。」
「だって、こんなの泣くよ!」
ランカは勢い良く起き上がった。
「アルトくんは解ってない。私がどんなに夢見てきたか。」
「何年経っても諦めきれないくらいアルトくんが好きだった。ずっと一緒に居たかった。その約束の証を手にして泣かないでなんかいられない。」
「ランカ。」
震えるランカを、起き上がって抱き寄せた。
「こういうの苦手だけど、ちゃんと言うから聞いてくれ。」
「月並みだけれどこれから先お前の事、離したりしない。ココに居る。だからずっと傍に居てくれ。」
「アルトくん。」
「結婚して欲しい。」
そう言ったら、またもやランカの涙腺が決壊した。
義務感、友愛、そんなものはとっくに脱している。
今俺の中にあるのは、はっきりとした愛情だけ。
一番傍に居てやりたい。
そして、俺がランカを求めている。
ひくひくとしゃくり上げながら、しがみ付いてくるからNOでは無いはず。
「ああ〜もうっ!」
ベッドに組み敷いて、至近距離で視線を合わせる。
「YES以外、聞かないからな。」
「はい。」
泣き笑いのランカが愛しくて、啄む様なキスを幾つも交わした。
俺達は恋人から婚約者になった。




婚約を交わして直に、親父との約束を取り付けて実家の門を叩いた。
「お久しぶりです。おじ様。」
親父の居る庭が一番綺麗に見える部屋に通されて、ランカが挨拶を始めた。
・・・はっ?おじ様?
「ああ。よく来たな。」
「って、おい。顔見知りなのか?」
穏やかに対応する親父とランカを見て、多少混乱した。
「同じ芸能界の人間ですし。先生の治療の為の病院でもお会いしていますよ。」
いつの間にか姿を現した矢三郎兄さんが、お茶を配っていた。
「ランカさんは直ぐにアルトさんの父親だと分かったみたいですよ。」
「アルトくんとおじ様の瞳は良く似ているから。アルトくんと出会った頃の話とか色々したの。」
「・・・変な話、しなかっただろうな。」
「してないよ〜。」
「歳を重ねられても、アルトさんは相変わらずですね。ランカさんと居るからでしょうか。」
顔が不機嫌に歪むのが自分でも分かる。
見透かすような矢三郎兄さんが、今でも苦手だ。
着物の袖で口元を隠してくすくすと笑っている。
「そう言えば、兄さん「早乙女嵐蔵」継いだんだな。おめでとうございます。」
「ありがとうございます。でも、本音を言えばアルトさんに継いで欲しかったんですがね。」
「今更だろっ!」
「アルトくん。」
焦った様に俺のシャツを引いたランカに、気を落ち着けて浮きかけた腰を下ろした。
「それで?話とは。」
「ああ。」
親父の言葉にすっと居住まいを正すと、隣のランカも座り直す。
「ランカを嫁に貰う事にした。了承して欲しい。」
「あの。不束者ですがよろしくお願いします。」
二人で頭を下げた。
親父の言葉を待つ間が、とにかく長く感じた。
頭上からした親父の声は、ランカへの問いかけ。
「私の息子だが、この男の事は貴女の方が良く知っているだろう。良いのか?」
「はい。アルトくんだから一緒に居たいんです。」
「そうか。アルト。」
「・・・。」
「お前の望む通りにすると良い。こちらに拒否する理由は無い。」
「ありがとう。親父。」
あの親父が微笑んだりするから、素直にありがとうの言葉が滑り出ていた。




「好きにしろ。」
それが義兄になる男の答えだった。
親父に了承を得る前。
俺はオズマに了承を得る為に、ランカとリー家に居た。
目の前には察していたらしいニコニコと笑顔のキャサリン。
そして、鬼の形相のオズマ。
ランカと二人して生唾を飲み込み、冷や汗を流したのは記憶に新しい。
「まだまだ俺がひよっこだって事は自分で理解している。それでも、もうランカを一人にしないと約束した。だからランカを俺の嫁に下さい。」
定番中の定番なセリフ。
それでも、それが俺の素直な気持ち。
「お兄ちゃん。」
「ほら。オズマ。」
嫁と愛しすぎている妹に諭されて、オズマ隊長は深くて長いため息を吐いた。
「何時までも過保護すぎるのも何だしな。ランカも大人だ。自分の事は自分で決めるだろう。」
「「それじゃあ。」」
「好きにしろ。」
「良かったわね。二人とも。」
「キャサリンさん。」
後は親父の了承を得るだけだと思ったら、やっと脱力した。
ランカの手を握って、二人で笑い合った。
やっと大きな関門を突破したのだ。
「ありがとう。お兄ちゃん。」
「まあ、お前たちが付き合うって時にケジメは付けたからな。」
「???」
オズマからの拳一つで付いたケジメ。
それだけで済んで良かったが、あの時の頬の痛みがぶり返してきた気がした。




「アルトさん。どうかしましたか?」
頬を擦っていると、矢三郎兄さんが縁側で座っている俺の隣に腰を下ろした。
新しいお茶を受け取って啜りながら庭を見れば、談笑している親父とランカの姿。
「親父があんな風に笑っているのを、初めて見た。」
「美代さんが亡くなってからずっと男所帯でしたからね。先生も初めて「娘」が出来る事が嬉しいんですよ。」
「親父の背中も小さくなったしな。」
何時も大きく立ちはだかる壁だった。
その背中がいやに小さく感じる。
そう感じる程に、俺は成長できたんだろうか?
否、成長していかなければ。
もう、一番大切なものを背負っていく覚悟をしたのだから。
「それにしても残念ですねえ。本当はランカさんを私の伴侶に貰いたかったんですがね。」
「はっ?何言ってんだ、兄さん!」
「才能は言うまでもありませんし、何より良い娘さんですからね。」
「年齢考えろよ!」
「大人になった今、年齢は然程問題ではないでしょう。」
「そうだとしても、アイツは俺のだ!」
こんな所に危険人物が居たとは。
笑う兄さんは、本気なのか冗談なのか。
以外に本気だったのかもしれない。
なんだか背筋が震えた。
そんな俺を見て、兄さんがまた笑っていた。




空が茜色に染まる頃、俺たちは実家を後にした。
二人で手を繋いで、帰路を歩く。
「ランカ。親父と何話していたんだ?」
「おじ様、実は恋愛結婚だったんだって。知ってた?」
「そうだったのか・・・。そんな話、親父と出来なかったからな。」
「アルトくんのお母さん、身体弱かったんでしょ?反対押し切って結婚したんだって。けっこうロマンチックだよね。」
芸一筋の親父。
そんな親父が、あの母とどんな時を経てきたのかは知らない。
そんな親父の一面を知ることが出来たのも、ランカだからだろうな。
結局、俺と親父は良く似ているのかもしれない。
あまり認めたくはないけれど。
「それとね。」
ふいにランカが俺の腕にぎゅっと細い腕を絡めてきた。
「私、お父さんの記憶がほとんど無いでしょ。だから、「お父さん」って呼べる事が嬉しい。そう言ったら喜んでくれて、嬉しかったの。」
「そっか。」
俺達は、家族になる準備を初め出した。
これから先の事は、まだ未定。
けれど、この手は絶対に離したりなんかしない。



続く

このページへのコメント

ランカとアルトのお父さんが顔見知りって所が良かったです。
ランカがいなかったら、アルトはお父さんと和解出来なかったと思います。ランカは、人を和ませたりする気がしますし、目だけでアルトのお父さんだと解る辺りが良いですね。

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Posted by 七海 2013年12月19日(木) 12:58:18 返信

「新未来」の続編は見られまして本当によかったです!ありがとうございます。
ランカとアルトパパのシーンはすごくいい!どうか続けてください!

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Posted by ナオ 2011年10月20日(木) 01:01:45 返信

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